JP2020086238A - 感光性樹脂組成物、並びにその感光性樹脂組成物を用いた転写フィルム、樹脂パターン及び硬化膜パターン - Google Patents

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Abstract

【課題】現像性に優れた転写フィルム、並びに、透湿度及び保護膜端部からの基材変色が低減された硬化膜パターンを提供することができる、感光性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性重合体、(B)光重合性化合物、(C)光重合性開始剤、および(D)テトラゾール化合物を含む。上記(A)成分は、(A−i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体を含む。上記(D)成分は、25℃における水への溶解度が55g/L以下であり、かつ下記式(1):{式中、Rは1価の有機基を表す。}で表される化合物を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、感光性樹脂組成物、並びにその感光性樹脂組成物を用いた転写フィルム、樹脂パターン及び硬化膜パターンに関する。また、本発明は、硬化膜パターンを有するタッチパネル表示装置又はタッチセンサを有する装置にも関する。
近年、電子機器の高性能化、多様化及び小型軽量化が進むに伴い、液晶等の表示素子の全面に透明タッチパネル(タッチセンサ)を装着した機器が増えてきた。透明タッチパネルを通して表示素子に表示された文字、記号、絵柄等の視認及び選択を行い、透明タッチパネルの操作によって機器の各機能の切り替えを行うことも増えている。タッチパネルは、パソコン、テレビ等の大型電子機器だけでなく、カーナビゲーション、携帯電話、電子辞書等の小型電子機器及びOA・FA機器等の表示機器にも使用されており、タッチパネルには透明導電電極材から成る電極が設けられている。透明導電電極材としては、ITO(Indium−Tin−Oxide)、酸化インジウム及び酸化スズが知られており、これらの材料は、高い可視光透過率を有することから液晶表示素子用基板等の電極材として主に使用されている。
既存のタッチパネルの方式としては、抵抗膜方式、光学方式、圧力方式、静電容量方式、電磁波誘導方式、画像認識方式、振動検出方式、超音波方式等が挙げられ、各種の方式が実用化されている。近年、静電容量方式タッチパネルの利用が最も進んできている。静電容量方式タッチパネルでは、導電体である指先がタッチ入力面に接触すると、指先と導電膜との間で静電容量結合が起こり、コンデンサを形成する。このため、静電容量方式のタッチパネルは、指先の接触位置における電荷の変化を捉えることによって、接触位置の座標を検出する。特に、投影型静電容量方式のタッチパネルは、指先の多点検出が可能なため、複雑な指示を行うことができるという良好な操作性を備えるので、携帯電話、携帯型音楽プレーヤ等の小型表示装置を有する機器における表示面上の入力装置として利用が進んでいる。一般に、投影型静電容量方式のタッチパネルでは、X軸とY軸による2次元座標を表現するために、複数のX電極と、複数のX電極に直交する複数のY電極とが、2層構造を形成しており、かつ、電極材としてはITOが用いられる。
タッチパネルの額縁領域はタッチ位置を検出できない領域であるから、その額縁領域の面積を狭くすることが製品価値を向上させるための重要な要素である。額縁領域には、タッチ位置の検出信号を伝えるために、金属配線が必要となるが、額縁面積の狭小化を図るためには、金属配線の幅を狭くする必要がある。ITOの導電性は充分に高くないので、一般的には金属配線には銅や合金が使用される。
しかしながら、上述のようなタッチパネルでは、指先に接触される際に、水分、塩分等の腐食成分がセンシング領域から内部に侵入することがある。タッチパネルの内部に腐食成分が侵入すると、金属配線が腐食し、電極と駆動用回路間の電気抵抗の増加、又は断線の恐れがあり、これらを防ぐために金属配線上に防錆効果のある保護膜が必要である。一般に、保護膜の透湿度が低いほど、金属配線の防錆効果が高まる傾向がある。
また、検出信号を伝えるための金属配線は、端子部分で他の部材へと接続するため、導通を確保する必要があり、端子部分は保護膜を除去しなければならない。そのため保護膜には良好な現像性が求められ、円孔等の各種パターンでの良好な抜け性が必要とされる。現像液として、炭酸ナトリウム水溶液のような希アルカリ水溶液が最も多く用いられており、かつ、現像液濃度の長期安定性を保つためには30℃未満の低温での現像が所望されている。
更に、端子部分の保護膜を除去した部分に関しても、外観や良好な導通を維持するといった観点で変色や腐食が無い事が望ましい。保護膜の性能が不十分であると保護膜端部より保護膜成分が染み出し、保護膜周辺の端子部分を汚染することがあるが、信頼性の観点からそのような現象が生じない保護膜が望まれている。
特許文献1及び2には、エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体を含む組成物が、ソルダーレジストとして用いられている。一部、テトラゾール化合物を用いた組成も開示されているが、透湿度、保護膜除去部の変色や現像性については書かれておらず、これらの性能を満足するものではないと考えられる。
特許文献3には、テトラゾール化合物を用いたタッチパネル用保護膜が開示されており、透湿度及び硬化膜で被覆した部分の防錆性については記載されているが、現像性及び保護膜端部からの変色については述べられていない。また記載されている透湿度も、近年の要求レベルに対しては満足するものではない。
特許第5051460号公報 特許第4830051号公報 特開2016−157451号公報
特許文献1〜3に記載の技術は、上記で説明されたとおり、未だ改善の余地がある。したがって、本発明が解決しようとする課題の一つは、現像性に優れた転写フィルム、並びに、透湿度が低く、保護膜端部からの基材変色が低減された硬化膜パターンを提供することができる、感光性樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するアルカリ可溶性重合体と、特定の構造を有し、かつ特定の水への溶解度を有するテトラゾール化合物とを含む感光性樹脂組成物によって、上記課題を解決できることを見出した。本発明の実施形態の例を以下に列記する。
[1]
感光性樹脂組成物であって、以下の成分:
(A)アルカリ可溶性重合体、
(B)光重合性化合物、
(C)光重合性開始剤、および
(D)テトラゾール化合物、を含み、
上記(A)成分は、(A−i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体を含み、
上記(D)成分は、25℃における水への溶解度が55g/L以下であり、かつ下記式(1):
{式中、Rは1価の有機基を表す。}で表される化合物を含む、感光性樹脂組成物。
[2]
上記(A)成分は、すくなくとも上記(A−i)成分に対応する重合体を含む1種又は2種以上の重合体A−1、・・・A−n(nは1以上の整数を表す。)を含み、下記式(2):
{式中、W−1、・・・W−nは、上記重合体A−1、・・・A−nの重量平均分子量をそれぞれ表し、X−1、・・・X−nは、上記重合体A−1、・・・A−nの上記感光性樹脂組成物中の質量%をそれぞれ表す。}で算出される、上記(A)成分の重量平均分子量が6,000〜20,000である、項目1に記載の感光性樹脂組成物。
[3]
上記(D)成分は、(D−ii)25℃における水への溶解度が30g/L未満であり、かつ上記式(1)で表される化合物を含む、項目1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
[4]
(F)熱架橋剤を更に含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[5]
上記(C)成分がオキシム化合物である、項目1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[6]
支持体と、前記支持体上に設けられた、項目1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物から形成される感光性樹脂層とを備える、転写フィルム。
[7]
導体用保護膜に使用される、項目6に記載の転写フィルム。
[8]
項目6又は7に記載の転写フィルムの露光現像物から形成される、樹脂パターン。
[9]
項目8に記載の樹脂パターンの硬化物から形成される、硬化膜パターン。
[10]
項目9に記載の硬化膜パターンを有するタッチパネル表示装置又はタッチセンサを有する、装置。
本発明によれば、現像性に優れた転写フィルム、並びに透湿度が低く、保護膜端部からの基材変色が低減された硬化膜パターンを提供することができる、感光性樹脂組成物を提供することができる。硬化膜パターンの保護膜端部からの変色がより少ないことは、硬化膜パターンのより高い信頼性につながる。本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくは、電極等の導体部の保護に使用することができる。
実施例で用いたマスクパターンを示す図である。 実施例で用いたマスクパターンを示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<(A)アルカリ可溶性重合体>
本実施形態に係る(A)アルカリ可溶性重合体は、(A−i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し、主鎖に環構造を含むアルカリ可溶性重合体を含む。酸性基としては、カルボキシル基が好ましい。また、本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)成分は、(A−ii)酸性基を有しエチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体を更に含有することが、保護膜端部からの基材変色を抑制する観点から好ましい。
(A−i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体
本実施形態において、(A−i)は、1つ以上のエチレン性不飽和基と1つ以上の酸性基を有し、主鎖に環構造を有する重合体であれば特に制限はない。(A−i)としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート酸変性物が好ましい。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。以下、「(メタ)」について同様である。
主鎖に含まれる環構造の例としては、クレゾール骨格、フェノール骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、トリシクロデカン骨格、トリスフェノールメタン骨格、テトラキスフェノールエタン骨格、レゾルシノール骨格などが挙げられる。
クレゾール骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、CCR−1171H、CCR−1307H、CCR−1309H(日本化薬社(株)製)、PR−300(昭和電工(株)製)等が挙げられる。
フェノール骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、PCR−1222H、PCR−1173H、PCR−1221H、PCR−1220H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
ビフェニル骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZCR−1569H、ZCR−1761H、ZCR−1797H、ZCR−1798H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
ナフタレン骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZCR−1809H、ZCR−1835H、ZCR−1834H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
フルオレニル骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、FCA−954、FCA−293、FCA−506(ナガセケムテックス社製)又はTR−B201、TR−B202(常州強力電子材料社製)等が挙げられる。
ビスフェノールA骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZAR−1494H、ZAR−2001H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールF骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZFR−1491H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
トリシクロデカン骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZXR−1807H、ZXR−1816H、ZXR−1810H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
トリスフェノールメタン骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、TCR−1348H、TCR−1323H、TCR−1347H、TCR−1338H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
テトラキスフェノールエタン骨格を含有するエポキシ(メタ)アクリレート酸変性物の市販品としては、ZGR−1678H、ZGR−1844H(日本化薬社(株)製)等が挙げられる。
(A−i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体の酸価(mgKOH/g)は、50〜200であることが好ましい。酸価は、感光性樹脂組成物の硬化膜の透湿度低減及び導体の防錆性向上の観点から、200以下であることが好ましく、感光性樹脂組成物層の現像性向上の観点から50以上であり、両性能のバランスの観点から、60〜120であることがより好ましい。
酸価の測定は、平沼産業(株)製の平沼自動滴定装置(COM−555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化カリウムを用いて電位差滴定法により行われる。
(A−i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体の重量平均分子量は、1,000以上9,500以下であることが好ましい。(A−i)の重量平均分子量は、転写フィルムとした際のタック性、エッジフューズ性、カットチップ性等の未露光膜の性状の観点及び硬化膜端部からの基材変色抑制の観点から1,000以上が好ましく、転写フィルムの現像性、及び(A−ii)重合体等、他の重合性化合物との相溶性の観点から、好ましくは9,500以下、より好ましくは6,000以上8,000以下である。ここで、タック性とは感光性樹脂組成物を転写フィルムとした場合の粘着性を示し、タック性が大きすぎるとカバーフィルムや支持体の剥離不良となり、弱すぎるとカバーフィルムが貼れない、支持体が意図しない工程で剥離するなどの不具合が生じる。エッジフューズ性とは、転写フィルムとしてロール状に巻き取った場合にロールの端面から感光性樹脂組成物層がはみ出す現象である。カットチップ性とは、未露光膜をカッターで切断した場合にチップが飛ぶ現象のことである。飛散したチップが転写フィルムの上面等に付着すると、後の露光工程等でマスクに転写して不良の原因となる。
重量平均分子量の測定は、以下の条件に設定された日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行う。得られた重量平均分子量はポリスチレン換算値となる。
ポンプ:Gulliver、PU−1580型
カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、
移動層溶媒:テトラヒドロフラン
検量線:ポリスチレン標準サンプルを用いて規定された検量線{ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)による検量線使用}
アルカリ可溶性重合体、特に(A−i)成分は、現像性が悪化しない範囲で分子量が大きい方が、保護膜端部の基材変色の観点では好ましい。その理由として、本発明者らは以下のように推定している。
保護膜の信頼性評価、すなわち保護膜端部からの変色の評価は主に、高温高湿環境下による加速試験にて実施される。導体基材上に保護膜をパターニングしたものを信頼性評価に掛けると、パターニングで形成した保護膜の端部(壁面下部)から何かが染み出したように基材上に変色が生じ、外観不良や導通不良となることがある。
分子量の小さいアルカリ可溶性重合体は、感光性樹脂組成物を露光した際、露光部と未露光部の境界でわずかに移行し、露光部と未露光部の境界が曖昧になり、現像時に露光膜の端部が膨潤しやすくなると推定される。すると、信頼性評価の際、保護膜端部から保護膜成分が溶出しやすく、保護膜周囲に基材の変色が生じやすいと考えられる。これに対し、分子量が大きいアルカリ可溶性重合体は、露光した際に露光部と未露光部の境界で移行しにくく、露光膜端部の膨潤を抑制し、保護膜端部の基材の変色をより低減することができると考えられる。
(A−ii)酸性基を有しエチレン性不飽和基を有さない重合体
本実施形態において、(A−ii)は、エチレン性不飽和基を含まず、かつ、1つ以上の酸性基を有する重合体であれば特に制限は無い。(A−ii)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等のアクリル系共重合体、ポリイミド前駆体、カルボキシル基含有ポリイミド、カルボキシル基含有ウレタンなどが挙げられる。後述する(B)光重合性化合物との相溶性や、透明性から、(A−ii)としてはアクリル系共重合体が好ましい。
アクリル系共重合体
(A−ii)成分に含まれるアクリル系共重合体としては、分子中に酸性基を含有する単量体を少なくとも1種を重合して得られるものが好ましく、分子中に酸性基を含有する単量体を少なくとも1種と、後述される他の酸性基を有さない単量体の少なくとも1種とを共重合して得られるものがより好ましい。
酸性基を含有する単量体の例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル等が挙げられる。
酸性基を有さない単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸芳香族エステル;スチレン及びその重合可能な誘導体等が挙げられる。
これらの共重合体の中でも、透湿度の低減及び導体の防錆性向上の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位と、(メタ)アクリル酸芳香族エステル又はスチレン及びその誘導体に由来する構成単位とを含有する共重合体がより好ましい。
芳香族基を有するユニットを共重合することにより、アクリル系共重合体の疎水性が高くなり、透湿度及び防錆性が向上する。また、アクリル系共重合体が芳香族基を有することで、感光性樹脂組成物の硬化後の膜密度が高くなり、透湿度及び導体の防錆性が向上すると考えられる。現像性と透湿度低減及び防錆性を両立できる点でアクリル系共重合体として、(メタ)アクリル酸由来の構造を7.7質量%以上30質量%以下、及びスチレン又はその誘導体由来の構造を30質量%以上80質量%以下で含むものがより好ましい。
ポリイミド前駆体
(A−ii)成分に含まれるポリイミド前駆体は、イミド化されていないポリアミド酸のみを意味するものではなく、ポリアミド酸の一部がイミド化したものも意味する。
ポリイミド前駆体は、例えば、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとをモル比で0.8:1〜1.2:1で混合して反応させることによって得ることができる。使用するテトラカルボン酸二無水物に制限はなく、従来公知のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族テトラカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸二無水物などを適用することができる。また、使用するジアミンに制限はなく、従来公知のジアミンを用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物としては、ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−フェニレンビス(トメリット酸モノエステル酸無水物)、o−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ペンタンジオールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、デカンジオールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、無水ピロメリット酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、メタ−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタトリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、及び、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、などが挙げられる。上述したテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ジアミンとしては、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4、4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエ−ト)、4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエ−ト、2−メチル−4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、及び、1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)などが挙げられる。また、ポリイミド前駆体に適度な柔軟性、耐折性を付与する目的で、シロキサン骨格を有するジアミン及び/又はポリアルキレンオキシド骨格を有するジアミンを組み合わせて使用してもよい。
ポリイミド前駆体の主鎖末端は、性能に影響を与えない構造であれば、特に制限はなく、ポリイミド前駆体を製造する際に用いる酸二無水物、又は、ジアミンに由来する末端の構造でもよく、その他の酸無水物、又は、アミン化合物などにより末端を封止した構造でもよい。
ポリイミド構造及びポリアミド酸構造をそれぞれ繰り返し単位として有するポリイミド前駆体は、酸二無水物とジアミンを非等モル量で反応させて1段階目のポリイミド部分を合成する工程(工程1)、続いて2段階目のポリアミド酸部分を合成する工程(工程2)により作製することができる。ポリイミド前駆体の製造方法として、工程1は必ずしも含まなくともよい。以下、それぞれの工程について説明する。
工程1
1段階目のポリイミド部分を合成する工程について説明する。1段階目のポリイミド部分を合成する工程としては、特に限定されず公知の方法を適用することができる。より具体的には、以下の方法によりポリイミド部分を合成できる。まず、ジアミンを重合溶媒に溶解及び/又は分散し、これに酸二無水物粉末を添加する。そして、水と共沸する溶媒を加え、メカニカルスターラーを用い、副生する水を共沸除去しながら、0.5時間〜96時間、より好ましくは0.5時間〜30時間加熱撹拌する。
ポリイミド部分は、公知のイミド化触媒を添加することによっても、無触媒によっても、合成することができる。イミド化触媒としては、特に制限されないが、無水酢酸のような酸無水物、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−テトロン酸、γ−フタリド、γ−クマリン、及び、γ−フタリド酸のようなラクトン化合物、並びに、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、及び、トリエチルアミンのような三級アミンなどが挙げられる。また、必要に応じて1種、又は2種以上のこれらの混合物を用いてもよい。これらの中でも、反応性の高さ及び次反応への影響を低減する観点から、γ−バレロラクトンとピリジンとの混合系及び無触媒が特に好ましい。
ポリイミド部分の合成の際に使用される反応溶媒としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及び、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物;アセトン、及び、メチルエチルケトンのような炭素数2以上炭素数6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及び、デカリンのような炭素数5以上炭素数10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、及び、テトラリンのような炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、及び、安息香酸メチルのような炭素数3以上炭素数12以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、及び、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上炭素数10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及び、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。これらは必要に応じて単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。特に好ましい溶媒としては、炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物、炭素数3以上炭素数12以下のエステル化合物、炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物、及び、炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物が挙げられる。これらは工業的な生産性、及び、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能である。
ポリイミド部分の合成においては、反応温度は100℃以上250℃以下であることが好ましい。
工程2
次に、2段階目のポリアミド酸部分を合成する工程について説明する。2段階目のポリアミド酸部分の合成は、工程1で得られたポリイミド部分を出発原料として用い、ジアミン及び/又は酸二無水物を追添して重合させることで実施できる。2段階目のポリアミド酸部分の合成の際の重合温度としては、0℃以上80℃以下が好ましい。反応に要する時間は、目的又は反応条件によって異なるが、通常は30分から30時間までの範囲である。
工程1を行わずに工程2を行う場合においては、まず、ジアミンを重合溶媒に溶解及び/又は分散し、これに酸二無水物粉末を添加する。重合溶媒としては、工程1で例示したものと同様である。重合温度は0℃以上80℃以下が好ましい。反応に要する時間は通常30分から30時間までである。
カルボキシル基含有ポリイミド
(A−ii)に含まれるカルボキシル基含有ポリイミドは、例えば、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることによって合成することができる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比は、例えば、0.8:1〜1.2:1であってよい。カルボキシル基含有ポリイミドは、イミド化した後にもカルボキシル基を骨格中に含み、部分的にポリアミド酸構造を有していてもよい。
カルボキシル基含有ポリイミドは、カルボキシル基含有ジアミンを用いて合成することができる。有機溶媒への溶解性の観点又は入手性の観点から、カルボキシル基含有ジアミンとしては、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどを用いることができる。これらのジアミンは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
テトラカルボン酸二無水物、カルボキシル基含有ジアミンと組み合わせて使用するジアミン、合成に用いる溶媒、及びイミド化触媒の例としては、(A−ii)の「ポリイミド前駆体」の項目で前述した例と同様である。
カルボキシル基含有ポリウレタン
(A−ii)に含まれるカルボキシル基含有ポリウレタンは、例えば、ジイソシアネート化合物及びカルボキシル基含有ジオール化合物及びその他のジオール化合物を非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知な触媒を添加し、加熱することにより合成することができる。使用するジイソシアネート化合物及びジオール化合物のモル比は、0.8:1〜1.2:1が好ましい。ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形態で合成することができる。
ジイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の如き芳香族ジイソシアネート化合物:ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマ−酸ジイソシアネート等の如き脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は2,6)ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の如き脂環族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等の如きジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物等が挙げられる。
カルボキシル基含有ジオールとしては、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキジフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキジフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミド等が挙げられる。
カルボキシル基含有ジオール化合物と組み合わせて使用するその他のジオール化合物としては、ポリテトラメチレンジオール、ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオールなどの高分子量ジオール;又はエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2’−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタメチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、キシリレングリコール、1,4−ビス−β−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン、トリジクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、p−キシリレングリコール、ジヒドロキシエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−2,4−トリレンジカルバメ−ト、2,4−トリレン−ビス(2−ヒドロキシエチルカルバミド)、ビス(2−ヒドロキシエチル)−m−キシリレンジカルバメート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどの低分子量ジオールなどが挙げられる。
(A−ii)の酸価(mgKOH/g)は、60〜200であることが好ましい。酸価は、透湿度低減及び導体の防錆性向上の観点から、200以下であることが好ましく、現像性向上の観点から60以上であり、導体の防錆性と低温現像性のバランスの観点から、80〜180であることがより好ましく、90〜170であることが更に好ましい。また、(A−ii)の重量平均分子量は、11,000〜50,000であることが好ましい。(A−ii)の重量平均分子量は、転写フィルムとした際のタック性、エッジフューズ性、カットチップ性等の未露光膜の性状及び硬化膜端部からの基材変色抑制の観点から11,000以上であり、現像性及び(A−i)重合体との相溶性の観点から、50,000以下であることが好ましい。より好ましくは、15,000以上35,000以下である。相溶性が良化することで、現像性及び透湿度の性能が発現しやすくなる。
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記で述べた(A−i)、(A−ii)に該当しない(A)アルカリ可溶性重合体も必要に応じて含むことができる。例えば、感光性樹脂組成物は、1つ以上のエチレン性不飽和基と1つ以上の酸性基を有し、主鎖に環構造を有さないアルカリ可溶性重合体を含んでもよい。例えば、(A−ii)の「アクリル系共重合体」の説明で述べた、カルボキシル基を有する単量体と、酸性基を含まない単量体とを共重合させた、主鎖に環構造を有さないアクリル系共重合体に、グリシジルメタクリレートを付加させることで、側鎖にエチレン性不飽和基を導入することができる。これによって、上述した1つ以上のエチレン性不飽和基と1つ以上の酸性基を有し、かつ主鎖に環構造を有さない、アルカリ可溶性重合体を得ることができる。
(A)アルカリ可溶性重合体の重量平均分子量
上述した(A)アルカリ可溶性重合体は、少なくとも上記(A−i)成分に対応する重合体を含む1種又は2種以上の重合体A−1、・・・A−n(nは1以上の整数を表す。)を含み、下記式(2):
{式中、WA−1、・・・WA−nは、(A)成分に該当する各重合体A−1、・・・A−nの重量平均分子量を表し、XA−1、・・・XA−nは、(A)成分に該当する各重合体A−1、・・・A−nの感光性樹脂組成物中の質量%を表す。}で算出される重量平均分子量が、6,000〜20,000であることが好ましい。転写フィルムのタック性、エッジフューズ性及びカットチップ性等の未露光膜の性状の観点、並びに硬化膜端部からの基材の変色を抑制する観点から、(A)アルカリ可溶性重合体の重量平均分子量は、6,000以上であり、現像性の観点から、好ましくは20,000以下であり、より好ましくは10,000以上15,000以下である。
<(B)光重合性化合物>
本実施形態において、(B)光重合性化合物は、その構造中にエチレン性不飽和基を有することによって重合性を有する化合物を意味する。
(B)成分は、1分子中に1つ以上のエチレン性不飽和基を含む化合物であれば特に制限は無い。しかしながら、1つ以上の酸性基を更に有し、かつ主鎖に環構造を含む重合体は、同時に(A−i)成分にも該当することがあり、そのような重合体は、(A)成分としてみなす。
(B)成分としては、例えば、ポリアルキレンオキシドの片方の末端に(メタ)アクリル酸を付加した化合物、片方の末端に(メタ)アクリル酸を付加し、他方の末端をアルキルエーテル又はアリルエーテル化した化合物、等が挙げられる。
(B)成分としては、ポリアルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、又はポリエチレンオキシド鎖とポリプロピレンオキシド鎖とがランダム若しくはブロックで結合したアルキレンオキシド鎖の両末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビスフェノールAをアルキレンオキシド変性し両末端に(メタ)アクリロイル基を有している化合物等もまた挙げられる。
(B)成分としては、ジイソシアネート化合物と、一分子中にヒドロキシル基及び(メタ)アクリル基を有する化合物との反応生成物であるウレタン化合物等も挙げられる。
(B)成分としては、その他にも、一分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることもできる。このような化合物は、中心骨格として分子内にアルキレンオキシド基を付加させることができる基を3モル以上有し、これにエチレンオキシド基及びプロピレンオキシド基又はブチレンオキシド基等のアルキレンオキシ基を付加させて得られたアルコールを(メタ)アクリレートとすることで得られる。中心骨格になることができる化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、イソシアヌレート環等が挙げられる。防錆性の観点から、(B)成分としては、一分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むことが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又はジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
透湿度、防錆性及び硬化膜端部からの基材変色の観点から、本実施形態の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和二重結合を1分子中に3つ以上有する(B)成分を含有することが好ましく、感光性樹脂組成物全体の反応率の向上、及び硬化膜の透湿度の低減の観点から、エチレン性不飽和二重結合を1分子中に1つ有する(B)成分を更に含むことが好ましい。
(B)成分の感光樹脂組成物中の含有量は、解像性、密着性、透湿度及び防錆性の観点から、感光性樹脂組成物の固形分全質量に対して、20質量%〜60質量%であることが好ましく、30質量%〜50質量%であることがより好ましい。
<(C)光重合性開始剤>
本実施形態において、(C)光重合性開始剤は、活性光線によりラジカルを発生し、エチレン性不飽和基含有化合物などを重合することができる化合物である。(C)光重合性開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラ−ケトン)、N,N,N’,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等の芳香族ケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−3−シクロペンチルプロパン−1,2−ジオン−2−(o−ベンゾイルオキシム)、1,2−プロパンジオン,3−シクロヘキシル−1−[9−エチル−6−(2−フラニルカルボニル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン誘導体;クマリン化合物;オキサゾール化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。光重合開始剤は、単独で、又は2種以上混合して用いることもできる。
これらの中でも、導体の防錆性向上、硬化膜の透湿性低減、及び耐薬品性向上の観点から、オキシムエステル化合物が好ましく、更に365nmのモル吸光係数が高い化合物がより好ましい。波長365nmにて高い吸光係数を有するオキシム開始剤を用いることで、i線露光によって高感度な保護膜を得ることができる。これにより、高い表面硬化性が得られ、現像工程でのナトリウムイオンの侵入を抑制でき、その結果として導体の高い防錆性が得られると推察される。
具体的なオキシムエステル化合物としては、1,2−オクタンジオン,1−[(4−フェニルチオ)フェニル−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASFジャパン(株)製、Irgacure Oxe01、製品名)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASFジャパン(株)製、Irgacure Oxe02)、1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−3−シクロペンチルプロパン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)(常州強力電子新材料社製TR−PBG−305、製品名)、及び1,2−プロパンジオン,3−シクロヘキシル−1−[9−エチル−6−(2−フラニルカルボニル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,2−(O−アセチルオキシム)(常州強力電子新材料社製TR−PBG−326、製品名)、(7−ニトロ−9,9−ジプロピル−9H−フルオレン−2−イル)(オルトトリル)メタノン O−アセチルオキシム(ダイトーケミックス(株)製DFI−020)、1,8−オクタンジオン,1,8−ビス[9−(2−エチルヘキシル)−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル]−,1,8−ビス(O−アセチルオキシム)、3−シクロヘキシル−1−(6−(2−(ベンゾイルオキシイミノ)オクタノイル)−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル)−プロパン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)(常州強力電子新材料社製TR−PBG−371、製品名)、3−シクロヘキシル−1−(6−(2−(ベンゾイルオキシイミノ)ヘキサノイル)−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル)−プロパン−1,2−ジオン−2−(O−ベンゾイルオキシム)(常州強力電子新材料社製TR−PBG−391、製品名)等を挙げることができる。
(C)光重合開始剤の、感光性樹脂組成物中の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全質量を基準として、0.1質量%〜10質量%が好ましく、感度及び解像性の観点から、0.3質量%〜5質量%であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量が0.1質量%〜10質量%の範囲内であれば、光感度が充分となるとともに、活性光線を照射する際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不充分となること、可視光透過率が低下すること等の不具合を抑制することができる。
<(D)テトラゾール化合物>
本実施形態において、(D)テトラゾール化合物は、下記式(1):
{式中、Rは1価の有機基を表す。}で表される化合物であり、25℃における水への溶解度が55g/L以下であれば特に制限は無い。式(1)の構造を有し、水への溶解度が55g/L以下であることで、硬化膜端部からの基材変色が抑制される。
(D)成分としては、上記式(1)で表される構造を有し、かつ、(D−i)水への溶解度が30g/L以上55g/L以下であってもよく、(D−ii)水への溶解度が30g/L未満であってもよい。硬化膜端部からの基材変色抑制の観点から、(D−ii)水への溶解度が30g/L未満であることが好ましい。水への溶解度の測定方法については、実施例の「2.(D)成分及び(E)成分の水への溶解度」を参照されたい。
(D−i)水への溶解度が30g/L以上55g/L以下のテトラゾール化合物の例としては、5−アミノ−1H−テトラゾールが挙げられる。(D)テトラゾール化合物の疎水性が上がり、硬化膜端部からの基材変色抑制効果が向上するという観点で、式(1)中のRは、芳香環を含む1価の有機基であることが好ましい。芳香環を含む1価の有機基としては、限定されないが、例えば、フェニル基、ハロゲン化フェニル基、ベンジル基、ハロゲン化ベンジル基、ベンジルチオ基等が挙げられ、更にこれらの芳香環が置換基を有していてもよい。ハロゲン化フェニル基としては、例えば、ブロモフェニル基、及びクロロフェニル基等が挙げられ、ハロゲン化ベンジル基としては、例えば、ブロモベンジル基、及びクロロベンジル基等が挙げられる。(D−ii)水への溶解度が30g/L未満であるテトラゾール化合物の例としては、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−ベンジル−1H−テトラゾール、5−(ベンジルチオ)−1H−テトラゾール、5−(2−ブロモフェニル)−1H−テトラゾール、5−(2−クロロフェニル)−1H−テトラゾールなどが挙げられる。
導体基材上に保護膜を積層した場合、(D)成分のモビリティが上がることで(D)成分が導体界面に偏在しやすくなるため、硬化膜端部からの基材変色抑制効果が向上するという観点から、(D)成分の分子量は300以下が好ましく、より好ましくは200以下である。
(D)テトラゾール化合物の、感光性樹脂組成物中の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全質量を基準として、0.05質量%〜10質量%が好ましく、硬化膜端部からの基材変色抑制の観点からより好ましくは0.2質量%以上、現像性の観点からより好ましくは5質量%以下である。
本実施形態の感光性樹脂組成物が、(D)テトラゾール化合物を含有することで、保護膜端部からの変色を抑制することができる理由としては、発明者らは、以下のように推定している。
保護膜の信頼性評価、すなわち保護膜端部からの変色の評価は主に、高温高湿環境下による加速試験にて実施される。導体基材上に保護膜をパターニングしたものを信頼性評価に掛けると、パターニングで形成した保護膜の端部(壁面下部)から何かが染み出したように基材上に変色が生じ、外観不良や導通不良となることがある。
これは、保護膜の壁面下部の硬化が不十分であり、保護膜が吸湿及び膨潤することで保護膜成分が溶出しやすくなり、保護膜の端部から何かが染み出したように基材上に変色が生じると推定される。
感光性樹脂組成物が(D)テトラゾール化合物を含有すると、(D)成分が導体基材界面に偏在することで保護膜の壁面下部が疎水化し、吸湿しにくくなることで、保護膜成分の溶出を抑制することができ、保護膜端部からの基材の変色による不良を低減することができると考えられる。
<(E)複素環化合物>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、より高い防錆性能及び/又は密着性を発現させるという観点から、防錆剤及び/又は密着助剤(E)複素環化合物を含有してもよい。ただし、(E)複素環化合物としては、(D)成分に該当するものを除く。防錆剤とは、防錆効果を有する化合物をいい、例えば、金属表面に被膜を形成して金属の腐食又は錆を防止する物質等である。
(E)成分としては、本実施形態に係る感光性樹脂組成物への相溶性及び感度の観点から、N、S、O等を含む複素環化合物が好ましく、例えば、テトラゾール及びその誘導体、トリアゾール及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、インダゾール及びその誘導体、ピラゾール及びその誘導体、イミダゾリン及びその誘導体、オキサゾール及びその誘導体、イソオキサゾール及びその誘導体、オキサジアゾール及びその誘導体、チアゾール及びその誘導体、イソチアゾール及びその誘導体、チアジアゾール及びその誘導体、チオフェン及びその誘導体等が挙げられる。ここで記載した誘導体には、母体となる構造に置換基を導入した化合物が含まれる。例えば、テトラゾール誘導体であれば、テトラゾールに置換基を導入した化合物が含まれる。置換基としては、特に制限はないが、例えば、炭化水素基(飽和でも不飽和でもよく、直鎖型でも分岐型でもよく、構造中に環状構造を含んでもよい)、又はヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基及びハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)基等のヘテロ原子を有する官能基を1つ以上含む置換基が挙げられる。
(E)成分のテトラゾール化合物及びその誘導体の例としては、1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、1H−テトラゾール−5−酢酸、1−メチル−5−エチル−1H−テトラゾール、1−メチル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール及び1−(ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール等が挙げられる。
(E)成分のトリアゾール化合物及びその誘導体の例としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−メルカプトトリアゾール、3−アミノ−5−メルカプトトリアゾール、ベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−アセトニトリル、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−(2−ジ−n−ブチルアミノメチル)−5−カルボキシベンゾトリアゾール、1−(2−ジ−n−ブチルアミノメチル)−6−カルボキシベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−クロロベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
(E)成分のイミダゾール化合物及びその誘導体の例としては、イミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、5−カルボキシベンゾイミダゾール、6−ブロモベンゾイミダゾール、5−クロロベンゾイミダゾール、2−ヒドロキシベンゾイミダゾール、2−(1−ヒドロキシメチル)ベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、5−ニトロベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール、2−アミノベンゾイミダゾール、5−アミノベンゾイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンゾイミダゾール等が挙げられる。
イミダゾリン化合物及びその誘導体としては、2−ウンデシルイミダゾリン、2−プロピル−2−イミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等が挙げられ、チアゾール化合物及びその誘導体としては、2−アミノ−4−メチルチアゾール、5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾール、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール、(2−ベンゾチアゾリルチオ)酢酸、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸等が挙げられる。
イソチアゾール、チアジアゾール、チオフェン及びそれらの誘導体の例としては、3−クロロ−1,2−ベンゾイソチアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、4−アミノ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−1,2,3−チアジアゾール、2−メルカプト−5−メチル−1,3,4−チアジアゾール、2−チオフェンカルボン酸、3−アミノ−2−チオフェンカルボン酸メチル、3−メチルベンゾチオフェン等が挙げられる。
更に、インダゾール及びその誘導体の例としては、1H−インダゾール、5−アミノインダゾール、6−アミノインダゾール、1−ベンジル−3−ヒドロキシ−1H−インダゾール、5−ブロモインダゾール、6−ブロモインダゾール、6−ヒドロキシインダゾール、3−カルボキシインダゾール及び5−ニトロインダゾール等が挙げられる。
(E)成分の中でも、導体の防錆性、密着性及び現像性の観点から、5−カルボキシベンゾトリアゾール、5−アミノインダゾール及び5−アミノ−1,2,3−チアジアゾールが好ましい。本実施形態では、(E)成分の1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
感光性樹脂組成物中の(E)成分の含有量は、導体の防錆性又は転写フィルムの低温現像性の観点から、感光性樹脂組成物の固形分全質量を基準として、好ましくは0.05質量%〜10質量%、より好ましくは0.1質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.2質量%〜3質量%である。
<(F)熱架橋剤>
感光性樹脂組成物は、より高い防錆性能及び硬化膜端部からの基材変色抑制の観点から、熱架橋剤を更に含むことが好ましい。熱架橋剤とは、熱により(A)アルカリ可溶性重合体、未反応のエチレン性不飽和二重結合を有する(B)光重合性化合物、並びに同時に添加する熱架橋剤と付加反応、又は縮合重合反応を起こす化合物を意味する。付加反応又は縮合重合反応を起こす温度としては、100℃〜150℃が好ましい。付加反応又は縮合反応は、現像によりパターン形成をした後の加熱処理の際に生じる。
具体的な熱架橋剤としては、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、及び国際公開第2016/047691号の段落[0054]以降に記載の熱架橋剤が挙げられるが、これらに限定されない。
ブロックイソシアネート化合物とは、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物にブロック剤を反応させることにより得られる化合物である。
イソシアネート化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−水酸化ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,6−フェニレンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
ブロック剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン類、メルカプタン類、アミン類、イミド類、酸アミド類、イミダゾール類、尿素類、カルバミン酸塩類、イミン類、及び亜硫酸塩類が挙げられる。
ブロックイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、旭化成(株)製デュラネートSBN−70D、SBB−70P、SBF−70E、TPA−B80E、17B−60P、MF−B60B、E402−B80B、MF−K60B、及びWM44−L70G、三井化学(株)製タケネートB−882N、Baxenden社製7960、7961、7982、7991、及び7992など)、トリレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製タケネートB−830など)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製タケネートB−815N、大榮産業(株)製ブロネートPMD−OA01、及びPMD−MA01など)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製タケネートB−846N、東ソー(株)製コロネートBI−301、2507、及び2554など)、イソホロンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、Baxenden社製7950、7951、及び7990など)が挙げられる。これらのブロックイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
熱架橋剤は、転写フィルムの保存安定性及び硬化膜の透湿性低減の観点からブロックイソシアネート化合物が好ましく、更に、転写フィルムの現像性の観点から後述するジオール化合物と併用することがより好ましい。
熱架橋剤の感光性樹脂組成物中の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全質量を基準として、0.2質量%〜40質量%であり、現像性と低透水性の観点から、1質量%〜30質量%であることがより好ましく、2質量%〜25質量%であることが更に好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、現像によりパターン形成をした後の加熱処理において(A)アルカリ可溶性重合体又は併用したジオール化合物の水酸基と反応するため、硬化膜の透湿度が低くなり、基材、電極等を保護するための防錆性が良好となる。更に、多官能のブロックイソシアネート化合物を介して、(A)アルカリ可溶性重合体同士で架橋することで硬化膜の架橋密度が上がり、水の拡散性が低下するため硬化膜の透湿度が低くなり、導体の防錆性が向上すると考えられる。同時に、架橋密度が上がることで、硬化膜の膨潤が抑制されるため、保護膜端部からの基材変色も抑制することができると考えられる。また、ブロックイソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤により封止されているため、室温での(A)アルカリ可溶性樹脂又はジオール化合物との反応が抑制され、感光性樹脂組成物及び転写フィルムの安定性が保たれる。
<(G)その他添加剤>
ジオール化合物
感光性樹脂組成物は、転写フィルムの現像性の向上及び硬化膜パターンの硬化収縮低減のためジオール化合物を更に含むことが好ましく、硬化膜パターンの柔軟性、低透湿度及び防錆性向上の観点から、ブロックイソシアネートとジオール化合物を含むことが更に好ましい。ジオール化合物とは、分子鎖一本に対して2つの水酸基を含むものを指す。骨格中には、脂肪族、芳香族、脂環基等の炭化水素基を含むものが挙げられる。
ジオール化合物の具体例としては、ポリテトラメチレンジオール(例えば、三菱ケミカル(株)製P4TMG650、PTMG850、PTMG1000、PTMG1300、PTMG1500、PTMG1800、PTMG2000、及びPTMG3000など)、ポリブタジエンジオール(例えば、日本曹達(株)製G−1000、G−2000、及びG−3000など)、水添ポリブタジエンジオール(例えば、日本曹達(株)製GI−1000、GI−2000、及びGO−3000など)、ポリカーボネートジオール(例えば、旭化成(株)製デュラノールT5651、デュラノールT5652、デュラノールT4671、デュラノールG4672、デュラノールG3452、及びデュラノールG3450J、並びにクラレ(株)製クラレポリオールC−590、クラレポリオールC−1090、クラレポリオールC−2090、及びクラレポリオールC−3090など)、ポリカプロラクトンジオール(例えば、ダイセル(株)製プラクセル205PL、プラクセル210、プラクセル220、及びプラクセル220PLなど)、ポリエステルジオール(例えば、クラレ(株)製クラレポリオールP−530、クラレポリオールP−2030、及びクラレポリオールP−2050、並びに豊国製油(株)製HS2N−220Sなど)、ビスフェノール類(例えば、三菱ケミカル(株)製ビスフェノールAなど)、及び水添ビスフェノール類(例えば、新日本理化(株)製リカビノールHBなど)が挙げられる。これらのジオール化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ジオール化合物は、親水性の水酸基を有するため現像性が良好となる。また、現像によりパターン形成をした後の加熱処理において、ジオール化合物の水酸基はブロックイソシアネート化合物と反応するため、優れた導体の防錆性が保たれる。ジオール化合物の分子量は、現像性の観点から300〜3,000のものが好ましく、分子量が500〜2,000のものがより好ましい。一方で、熱硬化後に未反応の水酸基が残存していると硬化膜の透湿度が悪化し、導体の防錆性能を損なう要因となる場合がある。従って、ジオール化合物は、感光性樹脂組成物としての水酸基価が20mgKOH/g以下になるように添加することが好ましく、15mgKOH/g以下になるように添加することがより好ましい。感光性樹脂組成物の水酸基価が20以下であることで、感光性樹脂組成物の硬化物の透湿度を下げることができるため、導体の防錆性が向上する。
ロジンエステル化合物
感光性樹脂組成物は、硬化膜パターンの透水性をより低減するという観点から、ロジンエステル化合物を更に含むことが好ましい。本実施形態に係るロジンエステル化合物とは、松脂の不揮発性分である炭素数20の三環式ジテルペノイドであるロジン酸、ロジン酸の二量体、ロジン酸の水素添加物、及びロジン酸の不均化物から成る群から選ばれる化合物(以下、総称として「ロジン酸誘導体」と呼ぶ)とヒドロキシル化合物、フェノール化合物、グリシジル化合物のいずれかを反応させたことによりエステル結合を有する化合物、ロジン酸誘導体をグリシジル化し、カルボキシル化合物、フェノール化合物のいずれかを反応させたことによりエステル結合を有する化合物である。
ロジンエステル化合物の具体例としては、例えば、荒川化学(株)社の製品としては、エステルガムシリーズ、パインクリスタルシリーズ、スーパーエステルシリーズ、ペンセルシリーズ、ビームセット101等、ハリマ化成(株)社の製品としては、ハリエスターシリーズ、ネオトールシリーズ、ハリタックシリーズが挙げられる。
ロジンエステル化合物は脂環式構造とエステル構造を有することで、疎水性が高くなる化合物である。ロジンエステル化合物は、感光性樹脂組成物中の(A)アルカリ可溶性重合体及び(B)光重合性化合物、(C)光重合性開始剤との相溶性が良いため、現像性を阻害することがなく、そのため、転写フィルムの現像性、硬化膜の透湿度、導体の防錆性の各性能バランスに優れる。
導体の防錆性の観点から、(F)ロジンエステル化合物は、酸価が20mgKOH/g以下であることがより好ましく、その具体的な化合物としては、上記、荒川化学(株)社製品、ハリマ化成(株)社の製品では、例えば、パインクリスタルKE−100、エステルガム105、スーパーエステルA−115、スーパーエステルA−125、ペンセルA、ペンセルC、ペンセルD−125、ペンセルD−135、ペンセルD−160、ビームセット101、ハリエスターS、ネオトール125HK、ハリタックF105、ハリタックFK125、ハリタックPCJ等が挙げられる。
さらに硬化膜の透湿度低減の観点から、ロジンエステル化合物は軟化点が100℃以上であることがより好ましく、その具体的な化合物としては、例えば、エステルガム105、スーパーエステルA−115、スーパーエステルA−125、ペンセルA、ペンセルC、ペンセルD−125、ペンセルD−135、ペンセルD−160、ネオトール125HK等が挙げられる。ロジンエステル化合物は軟化点が110℃以上であることが特に好ましく、こその具体的な化合物としては、スーパーエステルA−115、スーパーエステルA−125、ペンセルA、ペンセルC、ペンセルD−125、ペンセルD−135、ペンセルD−160、ネオトール125HKが挙げられる。(F)ロジンエステル化合物は、単独、又は2種以上混合して用いることもできる。
ロジンエステル化合物の感光性樹脂組成物中の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分質量に対し、1質量%〜20質量%であり、透湿度と現像性の観点から、5質量%〜20質量%であることがより好ましく、基材への密着性の観点から、5質量%〜15質量%であることが更に好ましい。ロジンエステル化合物の含有量が1質量%〜20質量%の範囲内であれば、転写フィルムの低温現像性と硬化膜の透湿度の性能バランスが良好である。
また、ニトロソフェニルヒドロキシルアミンが3モル付加したアルミニウム塩等の重合禁止剤、酸化防止剤、密着助剤、レベリング剤、充填剤、消泡剤、及び難燃剤等も感光性樹脂組成物に含有させることができ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
<転写フィルム>
本実施形態の転写フィルムは、支持体と、該支持体上に設けられた、本実施形態の感光性樹脂組成物から形成される感光性樹脂層とを備える。本実施形態に係る感光性樹脂層は、厚みが15μm以下であり、かつ、感光性樹脂層の波長365nmでの吸光度が、感光性樹脂層の厚み1μm当たり0.01〜0.07であることが好ましい。感光性樹脂層の膜厚が厚過ぎると現像性及び柔軟性が悪化するため、感光性樹脂層の厚みは15μm以下が好ましく、配線の凹凸に追従するという観点、及び防錆性を確保するという観点から、3μm以上が好ましい。
転写フィルムは、支持体と、感光性樹脂組成物から形成される感光性樹脂層とを含む。具体的には、支持体上に、感光性樹脂層が積層されている。転写フィルムは、必要により、感光性樹脂層の支持体側とは反対側の表面に保護層を有してもよい。
本実施形態に用いられる支持体としては、露光光源から放射される光を透過する透明なものが望ましい。支持体は、例えば支持フィルムの形態であってよい。このような支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合体フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース及びその誘導体から成るフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じて、延伸されたものも使用可能である。支持フィルムのヘーズは、5以下であることが好ましい。支持フィルムの厚みは、小さいほど解像性及び経済性の面で有利であるが、強度を維持するために10μm〜30μmであることが好ましい。
転写フィルムのために用いられる保護層の重要な特性は、感光性樹脂層との密着力が、支持体よりも保護層の方が充分小さく、容易に剥離できることである。保護層は、保護フィルムの形態であってよく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が好ましく使用できる。
転写フィルムの作製方法は、支持体(例えば、支持フィルム)上に塗布液を塗布して、乾燥する工程を含み、更に必要に応じて感光性樹脂層上に保護層(例えば、保護フィルム)をラミネートする工程を含む。塗布液は、上記で説明された感光性樹脂組成物を溶媒に均一に溶解することにより得られることができる。
感光性樹脂組成物を溶解する溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類;メタノール、エタノール又はイソプロパノールに代表されるアルコール類等が挙げられる。
溶剤は、支持体上に塗布する感光性樹脂組成物の溶液の粘度が、25℃で10mPa・s〜800mPa・sとなるように、感光性樹脂組成物に添加することが好ましい。
塗布方法としては、例えば、ドクターブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。塗布液の乾燥条件に特に制限はないが、乾燥温度は、50℃〜130℃であることが好ましく、乾燥時間は、30秒〜30分であることが好ましい。
本実施形態では、転写フィルムは、導体部の保護膜を形成するために使用されることが好ましく、その場合には、導体部は、銅電極、ニッケル、パラジウム、銀、チタン、モリブデン等と銅との合金電極又は透明電極であることがより好ましい。より詳細には、転写フィルムは、タッチパネル(タッチセンサ又はフォースセンサ)の額縁領域における引き出し配線のための保護膜、センシング領域における銅や合金電極のための保護膜として、使用されることができる。また、ひずみゲージにより抵抗値の変化にてセンシングを行うひずみセンサの電極保護膜、AI関連の電子機器の配線保護膜や表示素子の保護膜としても使用できる。
<樹脂パターン、硬化膜パターン及びそれらの製造方法>
本実施形態の樹脂パターンは、本実施形態の転写フィルムの露光現像物から形成される。本実施形態の転写フィルムを用いた樹脂パターンの形成は、以下の工程:
基材上に、本実施形態の転写フィルムをラミネートする、ラミネート工程;
該ラミネートされた感光性樹脂積積層体に露光する、露光工程;及び
該露光された転写フィルムを現像する現像工程;
を含む樹脂パターンの製造方法によって行うことができる。
更に、樹脂パターンを導体部の保護膜として用いるために、硬化膜パターンを形成することが好ましい。本実施形態の硬化膜パターンは、本実施形態の樹脂パターンの硬化物から形成される。本実施形態の硬化膜パターンの形成方法は、上記現像工程の後に、樹脂パターンを後露光処理及び/又は加熱処理に供して、硬化膜パターンを形成する工程を更に含むことが好ましい。
以下、具体的な方法の一例を示す。基材としては、銅張積層板に銅配線が形成された基材、ガラス基材、透明樹脂基材に透明電極(例えば、ITO、Agナノワイヤー基材等)、又は金属電極(例えば、Cu、Al、Ag、Ni、Mo及びこれらの少なくとも2種の合金等)が形成されたタッチパネル基材又はタッチセンサ基材(例えばフォースセンサ等)等を使用することができる。フレキシブル銅張積層板、タッチパネル電極形成用基材、又はタッチセンサ電極形成用基材は、フレキシブルなフィルム上に、銅層、銅とニッケルの合金層若しくは透明電極、又は金属電極の原料となる金属層が形成されて成る基材である。
上記フィルムとしては、例えば、ポリイミド、ポリエステル(PET、PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)等のフィルム原料から成るフィルムが挙げられる。上記フィルムの厚みは、10μm〜100μmであることが好ましい。
上記のような基材に対して転写フィルムをラミネートする工程を行うことにより、基材の銅層上に感光性樹脂層を形成する。転写フィルムが保護層を有する場合には、好ましくは該保護層を剥離した後、ラミネーターで転写フィルムを基材表面に加熱圧着して積層する。この場合、転写フィルムを基材表面の片面だけに積層してもよいし、両面に積層してもよい。加熱温度は、一般に約40℃〜160℃である。加熱圧着は、二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用して行われてもよいし、転写フィルムと基材とを複数回に亘って繰り返してロールに通すことにより行われてもよい。また、真空ロールラミネーターを用いると、基材上の配線等による凹凸への保護膜の追従性が良好であり、転写フィルムと基材の間にエアーが混入する欠点を防ぐことができる。一方で、真空ロールラミネーターを用いた場合、ラジカル重合を抑制する酸素濃度が著しく低いため、光重合開始剤が開裂し、暗反応が進行し易くなる。従って、ロールの温度は、40℃〜100℃が好ましく、40℃〜80℃がより好ましい。
次に、露光機を用いて露光工程を行う。必要ならば転写フィルムから支持体を剥離し、フォトマスクを通して活性光により感光性樹脂層を露光する。露光量は、光源照度及び露光時間により決定される。露光量は、光量計を用いて測定してもよい。露光機としては、超高圧水銀灯を光源とした散乱光露光機、平行度を調整した平行光露光機、マスクとワークの間にギャップを設けるプロキシミティ露光機等を挙げることができる。更に、露光機としては、マスクと画像のサイズ比が1:1の投影型露光機、高照度のステッパー(登録商標)といわれる縮小投影露光機、又はミラープロジェクションアライナ(登録商標)と呼ばれる凹面鏡を利用した露光機を挙げることができる。
また、露光工程においては、直接描画露光方法を用いてもよい。直接描画露光とは、フォトマスクを使用せず、基板上に直接描画して露光する方式である。光源としては、例えば、波長350nm〜410nmの固体レーザー、半導体レーザー又は超高圧水銀灯が用いられる。描画パターンはコンピューターによって制御される。この場合の露光量は、光源照度と基板の移動速度によって決定される。
次に、現像装置を用いて現像工程を行う。露光後、感光性樹脂層上に支持体がある場合には、必要に応じて支持体を除き、続いてアルカリ水溶液の現像液を用いて未露光部を現像除去して、樹脂パターンを得る。アルカリ水溶液としては、NaCO又はKCOの水溶液(アルカリ水溶液)を用いることが好ましい。アルカリ水溶液は、感光性樹脂層の特性に合わせて適宜選択されるが、約0.2質量%〜2質量%の濃度、約20℃〜40℃のNaCO水溶液が一般的である。現像液の温度が高い場合、臭気対策としての排気等による陰圧環境下では水分が揮発し易くなり、経時で現像液が濃縮され、安定生産性が損なわれる傾向がある。そのため、現像液温度は30℃未満であることが好ましい。また、アルカリ水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。基材への影響を考慮して、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等のアミン系アルカリ水溶液を用いることもできる。現像速度に応じて、水溶液中のアルカリ化合物の濃度を適宜選択することができる。現像液の臭気が少なく、取扱い性に優れ、かつ、管理及び後処理が簡便であるという観点から、特に1質量%、25℃〜30℃のNaCO水溶液が好ましい。現像方法としては、アルカリ水スプレー、シャワー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の既知の方法が挙げられる。
現像後、樹脂パターンに残存したアルカリ水溶液の塩基を、有機酸、無機酸又はこれらの酸水溶液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の既知の方法により酸処理(中和処理)することができる。更に、酸処理(中和処理)の後、水洗する工程を行うこともできる。
上記の各工程を経て樹脂パターンを得ることができるが、更に後露光工程及び/又は加熱工程を実施してもよい。後露光工程及び/又は加熱工程を実施することにより、更に防錆性が向上する。後露光処理での露光量としては、200mJ/cm〜1,000mJ/cmが好ましく、加熱工程では40℃〜200℃での処理を行うことが好ましく、製造プロセスの観点から、加熱処理時間は60分以下が好ましい。加熱処理の方式としては、熱風、赤外線、遠赤外線等の適宜の方式の加熱炉を用いることができ、加熱処理の雰囲気としては、N雰囲気下、又はN/O雰囲気下が挙げられる。
本実施形態の感光性樹脂組成物によれば、現像性に優れた転写フィルム、並びに透湿度が低く、保護膜端部からの基材変色が低減された硬化膜パターンを提供することができる。保護膜端部からの基材変色がより少ないことは、硬化膜パターンのより高い信頼性につながる。そのような本実施形態の感光性樹脂組成物を用いた転写フィルムは、配線、電極等の導体部の保護に好適であり、好ましくは、例えば、タッチパネル、タッチセンサ、フォースセンサ、ひずみセンサ又はAI関連の電子機器用途の配線、電極等の保護膜又はプリント配線板のソルダーレジスト等として用いることができる。
<タッチパネル表示装置、タッチセンサ又はフォースセンサを有する装置>
本実施形態の、タッチパネル表示装置又はタッチセンサを有する装置は、本実施形態の硬化膜パターンを有する。本実施形態に係る転写フィルムの硬化膜パターンをタッチパネル用基材に形成することで、転写フィルムの硬化膜パターンを有するタッチパネル表示装置、及び転写フィルムの硬化膜とタッチセンサ及び/又はフォースセンサとを有する装置を提供することができる。
タッチパネル用基材としては、一般に、タッチパネル、タッチセンサ又はフォースセンサのために用いられる基材、例えば、ガラス板、プラスチック板、プラスチックフィルム、セラミック板等が挙げられる。この基材上には、保護膜を形成する対象となるITO、Cu、Al、Ag、Ni、Mo及びこれらの少なくとも2種を含む合金等のタッチパネル用電極又は金属配線が設けられ、基材と電極との間に絶縁層が設けられていてもよい。
タッチパネル用電極を有するタッチパネル用基材は、例えば、以下の手順で得ることができる。ポリエステル、COPフィルム等のタッチパネル用基材上に、銅とニッケルの合金をスパッタ法により金属膜を形成した後、金属膜上にエッチング用感光性フィルムを貼り付け、所望のレジストパターンを形成し、不要な合金を塩化鉄水溶液等のエッチング液で除去し、更にレジストパターンを剥離・除去する。
タッチパネル用基材上に保護膜としての硬化膜を形成する方法は、本実施形態に係る転写フィルムをタッチパネル用基材上にラミネートする第1工程、保護膜の所定部分を活性光線の照射により硬化させる第2工程、保護膜の所定部分以外(保護膜の活性光線が照射されていない部分)を除去して、パターニングされた保護膜の硬化物を形成する第3工程、及びパターニングされた保護膜を露光及び/又は熱処理する第4工程を、この順に含むことが好ましい。
上述のように転写フィルムの硬化膜パターンを有するタッチパネル用基材を作製することによって、転写フィルムの硬化膜パターンを有するタッチパネル表示装置、又は転写フィルムの硬化膜とタッチセンサ及び/又はフォースセンサとを有する装置を提供することができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.(A)成分について
(A−i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含むアルカリ可溶性重合体としては、市販されている下記の溶液を使用した。
A−1:ZCR−1797H(ビフェニル骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物、日本化薬社製)
A−2:ZCR−1569H(ビフェニル骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物、日本化薬社製)
A−3:ZCR−6001H(トリフェニルメタン骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物、日本化薬社製)
A−4:ZCR−8001H(レゾルシノール骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物、日本化薬社製)
A−5:FCA−954(フルオレニル骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物、ナガセケムテックス社製)
上記(A−1)〜(A−5)の重量平均分子量及び酸価については表1に示す。なお、重量平均分子量及び酸価の測定は、上記の<(A)アルカリ可溶性重合体>の欄に記載されている方法で行った。
次に、(A−ii)酸性基を有しエチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性重合体の作製について説明する。
<(A−6)の作製>
撹拌機、還流冷却器、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、メチルエチルケトンを100質量%仕込み、窒素ガス雰囲気下で75℃に昇温した。メタクリル酸(MAA)20質量%、メタクリル酸メチル(MMA)25質量%、スチレン(St)55質量%、及びアゾ系重合開始剤(和光純薬社製、V−601)を、2時間掛けて均一に滴下した。滴下後、75℃で10時間反応系の撹拌を続け、反応終了後に、メチルエチルケトンを用いて、得られた樹脂溶液を希釈し、固形分酸価が130mgKOH/g、重量平均分子量が約13,000であるアルカリ可溶性重合体溶液(固形分50質量%)(A−6)を得た。
<(A−7)の作製>
上記アルカリ可溶性重合体溶液(A−6)と同様の方法で、MAA22.5質量%、MMA12.5質量%、St60質量%、アクリル酸ブチル(BA)5質量%を用いて、固形分酸価が147mgKOH/g、重量平均分子量が約22,500であるアルカリ可溶性重合体溶液(固形分54質量%)(A−7)を得た。
<(A−8)の作製>
上記アルカリ可溶性重合体溶液(A−6)と同様の方法で、MAA25質量%、MMA20質量%、St55質量%を用いて、固形分酸価が163mgKOH/g、重量平均分子量が約31,000であるアルカリ可溶性重合体溶液(固形分50質量%)(A−8)を得た。
得られた(A−6)〜(A−8)の共重合組成、重量平均分子量及び酸価について表2に示す。なお、アルカリ可溶性重合体の重量平均分子量、及び酸価の測定は、上記の<(A)アルカリ可溶性重合体>の詳細に記載されている方法で行った。
2.(D)成分及び(E)成分の水への溶解度
(D)成分及び(E)成分の水への溶解度の測定法について説明する。
5mLのバイアル瓶に、(D)成分または(E)成分0.7gとイオン交換水4mLを入れて密閉した後、バリアブルミックスローター(アズワン(株)製、VMR−5)で24時間撹拌した。この時、回転速度は80rpmとし、室温(25℃)で撹拌を行った。
24時間経過後、ロート用ろ紙(桐山製作所製、桐山ロート用ろ紙 60mmφ、No.5B)を用いてサンプルを残さず吸引ろ過にかけ、未溶解物を採取した。この時、使用するろ紙の重量を事前に計量しておいた。採取した未溶解物は、ろ紙ごと50℃の真空乾燥機に15時間保管し乾燥させた。乾燥後、ろ紙ごと計量し、事前に計量したろ紙の重量を差し引くことで未溶解物の量を算出し、更に初期投入量の0.7gとの差分から溶解量を算出し、各種(D)成分及び(E)成分の水への溶解度とした。その結果を表3にまとめる。
3.評価用転写フィルムの作製
実施例及び比較例における評価用転写フィルムは、次のようにして作製した。
<転写フィルムの作製>
下記表4及び5に示す組成(但し、各成分の数字は固形分としての配合量(質量部)を示す。)に従って、各成分をそれぞれ250mlのプラスチックボトルに量り取り、固形分濃度が53質量%となるようにメチルエチルケトンを投入し、攪拌機を用いて5時間に亘って溶解・混合を行って、感光性樹脂組成物を得た。その後、感光性樹脂組成物を3μmのフィルターに通し、感光性樹脂組成物調合液(実施例1〜14、及び比較例1〜7)を調製した。
感光性樹脂組成物調合液を、支持フィルムである16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル(株)製、R310−16B)の表面に、ブレードコーターを用いて均一に塗布し、乾燥して支持フィルム上に均一な感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは8μm及び40μmとしたが、上記乾燥条件を8μmは95℃の乾燥機中で4分間、40μmは95℃の乾燥機中で9分間とした。次いで、感光性樹脂層の表面上に、保護フィルムとして33μm厚のポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、GF−858)を貼り合わせることにより、評価用転写フィルムを得た。
得られた評価用転写フィルムを、以下の方法で評価した。評価結果を表4及び5に示す。なお、表4及び5に表した感光性樹脂組成物調合液中の材料成分の名称等を表6に示す。
4.現像性
<サンプル作製法>
現像性評価用のサンプルは以下のようにして作製した。なお、本評価では、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に銅ニッケル合金(組成比率50:50)が、0.1μmの厚みで蒸着された合金基板(東邦化研(株)製)を、基材として使用している。
感光性樹脂層の厚みが8μmの転写フィルムの保護フィルムを剥がしながら、銅ニッケル合金基板の合金表面(サイズ:5cm×10cm)上に、ホットロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製、VA−400III)を用いてロール温度80℃の条件にてラミネートした。エアー圧力は0.2MPaとし、ラミネート速度は2m/分として設定した。ただし、80℃の条件で転写しない組成に関しては、100℃にロール温度を上げてラミネートした。15分静置後、支持フィルムの上にPETマスクとストゥーファー21段ステップタブレット(光学密度0.00を1段目とし、1段毎に光学密度が0.15ずつ増加するステップタブレット)を並べて置き、PETマスク及びステップタブレット側から各組成の最適露光量を、平行光露光機((株)オーク製作所社製、HMW−801)により露光した。PETマスクとしては、図1に模式的に示すようなパターンを有するものを使用した。図1中、影をつけた部分は遮光部分を表し、白い部分は光を透過する部分を表す。また、図中の矢印と数値は寸法を模式的に表すものであって、実際のマスクパターンではない。
次いで15分以上静置した後、支持フィルムを剥がし、(株)フジ機工製現像装置を用い、フルコーンタイプのノズルにて現像スプレー圧0.12MPaで、28℃〜30℃の1質量%NaCO水溶液を55秒間スプレーして現像し、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。現像工程の後、エアーブローにて乾燥し、次いで水洗を行った。水洗工程は、フラットタイプのノズルにて水洗スプレー圧0.12MPaで、現像工程と同時間に亘って行い、水洗されたサンプルをエアーブローにより乾燥させて、現像性評価用のサンプルを作製した。上記最適露光量とは、ストゥーファー21段ステップタブレットを介して露光した場合に残膜する段数が8〜9段となるような露光量と定義する。
<評価方法>
作製した保護膜付き基板の感光層を除去した部分の基材表面状態を顕微鏡で観察し、以下のように判定した。
A:28℃の現像条件において基材の合金上に現像残渣なし。
B:28℃の現像条件においては、基材の合金上に現像残渣があるが、30℃の現像条件においては基材の合金上に現像残渣なし。
C:30℃の現像条件においても現像残渣が発生する。
現像性評価においては、A及びBランクが導体の保護膜として実用上良好な結果であると考えられる。評価結果を表4及び5にまとめる。
5.透湿度試験
<サンプル作製法>
感光性樹脂層の厚みが40μmの転写フィルムの保護フィルムを剥がしながら、No.4ろ紙(アドバンテック製)にホットロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製、VA−400III)を用いてラミネートした。ロール温度は60℃、エアー圧力は0.2MPaとし、ラミネート速度は1.0m/分として設定した。ただし、60℃の条件で転写しない組成に関しては100℃にロール温度を上げてラミネートした。15分静置後、保護膜の支持フィルム側から散乱光露光機((株)オーク製作所社製、HMW−201KB)によって350mJ/cmの露光量で全面露光した。30分静置後、支持フィルムを剥離し、熱風循環式オーブンにて150℃で30分間処理して、サンプルを作製した。
<評価方法>
透湿度の測定は、JIS Z0208のカップ法に準じて行い、透湿条件は温度65℃/湿度90%で実施し、以下のように判定した。
A・・・透湿度150g/(m・day)以上、200g/(m・day)未満
B・・・透湿度200g/(m・day)以上、250g/(m・day)未満
C・・・透湿度250g/(m・day)以上、300g/(m・day)未満
D・・・透湿度300g/(m・day)以上
透湿度試験においては、A〜Cランクが導体の保護膜として実用上良好な結果であると考えられる。評価結果を表4及び5にまとめる。
6.保護膜端部の変色の評価(信頼性評価)
<サンプル作製法>
保護膜端部の変色評価用のサンプルは、<4.現像性>で用いたものと同じ合金基板を使用し、以下のようにして作製した。
感光性樹脂層の厚みが8μmの転写フィルムの保護フィルムを剥がしながら、銅ニッケル合金基板の合金表面(サイズ:5cm×5cm)上に、ホットロールラミネーター(大成ラミネーター(株)製、VA−400III)を用いてロール温度80℃の条件にてラミネートした。エアー圧力は0.2MPaとし、ラミネート速度は2m/分として設定した。ただし、80℃の条件で転写しない組成に関しては100℃にロール温度を上げてラミネートした。15分静置後、支持フィルムの上にPETマスクを置き、PETマスク側から<4.現像性>で照射した露光量と同じ露光量で、平行光露光機((株)オーク製作所社製、HMW−801)により露光した。PETマスクとしては、図2に模式的に示すようなライン:スペース=1:1のパターンを有するものを使用した。図2中、影をつけた部分は遮光部分を表し、白い部分は光を透過する部分を表す。また、図中の矢印と数値は寸法を模式的に表すものであって、実際のマスクパターンではない。
次いで15分以上静置した後、支持フィルムを剥がし、(株)フジ機工製現像装置を用い、フルコーンタイプのノズルにて現像スプレー圧0.12MPaで、28℃の1質量%NaCO水溶液を55秒間スプレーして現像し感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。現像工程を経たのち、エアーブローにて乾燥し、次いで水洗を行った。水洗工程は、フラットタイプのノズルにて水洗スプレー圧0.12MPaで、現像工程と同時間に亘って行い、水洗されたサンプルをエアーブローにより乾燥させた。
続いて、水洗乾燥したサンプルを散乱光露光機((株)オーク製作所社製、HMW−201KB)によって300mJ/cmの露光量で全面露光した。30分静置後、熱風循環式オーブンにて150℃で30分間処理して、サンプルを作製した。
<評価方法>
加熱処理まで行ったサンプルを、85℃、85%RHの恒温恒湿オーブン(エスペック(株)製、SH−641)にて200時間保管し、サンプルを光学顕微鏡にて500倍で観察した。その際、パターニングした硬化膜端部を観察し、硬化膜周囲に基材の変色が無いか以下のように判定した。
A・・・変色は保護膜端部から5μm未満である。
B・・・変色は保護膜端部から5μm以上10μm未満である。
C・・・変色は保護膜端部から10μm以上20μm未満である。
D・・・変色は保護膜端部から20μm以上である。
保護膜端部の変色の評価においては、A〜Cランクが導体の保護膜として信頼性があると考えられる。評価結果を表4及び5にまとめる。
表4及び5に示した結果から、実施例1〜14は本発明で規定された要件を満たすことで、現像性、硬化膜の透湿度及び信頼性に優れていることが示されている。一方、比較例1〜7においては、本発明で規定される要件の何れかを満たしていないため、現像性、硬化膜の透湿度及び信頼性のいずれかが劣ることが示されている。
比較例1〜5は実施例1〜3と比較し、(D)成分を含有しないため、硬化膜の信頼性が劣り導体の保護膜として相応しくない。比較例1〜4は、複素環化合物(E)を含有するものの、比較例1及び2におけるE−1及びE−2は、式(1)の構造は満たすが、水への溶解性が55g/Lを超えており、その結果、信頼性を向上させる効果が得られない。また、比較例3及び4における、E−3及びE−4は水への溶解度は低いものの、式(1)を満たす構造ではないため信頼性の改善効果が得られない。また、比較例6及び7は実施例3と比較し、(A−i)を含まないため、現像性及び透湿度が劣る。現像性が悪いため信頼性評価については未実施である。
続いて実施例同士を比較する。実施例2及び3では水への溶解度が30g/L未満である(D−ii)成分を含有するため、水への溶解度が30g/L以上である(D−i)成分しか含有しない実施例1と比較し、信頼性がより良好である。また、実施例4は実施例3と比較し、(A)成分以外は同じであるが、(A−ii)成分としてより高分子量の重合体を使用しており、(A)成分の平均分子量が20,000より大きいため、現像性が実施例3に比べ劣る結果になっていることが分かる。一方、実施例6は実施例5と比較し、(A)成分以外は同じであるが、(A−i)成分が多く、(A)成分の平均分子量が6,000未満であるため、信頼性が実施例5に比べ劣る。更に、実施例7は、実施例3の(A−ii)成分の一部を(A−i)成分に置き換え、(A−i)成分を増量した組成であり、透湿度は向上したものの信頼性はやや悪化していることが分かる。(A−i)成分による透湿度の向上は、信頼性とトレードオフの関係があるが、(D)成分による信頼性の改善効果と組み合わせることで性能バランス良好な組成物が得られる。
また、実施例9は実施例8から熱架橋剤を除いた組成であるが、実施例8に比べ透湿度及び信頼性が劣っており、熱架橋剤は、透湿度及び信頼性の向上効果があることが分かる。また、実施例11は実施例10の(C)成分をオキシム開始剤ではないものに変えた組成であるが、実施例10に比べて透湿度が劣っており、オキシム開始剤は透湿度向上に効果があることが分かる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明による感光性樹脂組成物から形成される転写フィルムは現像性に優れ、また、転写フィルムを硬化して得られる硬化膜パターンは、透湿度が低く、保護膜端部からの基材変色がより少ない。したがって、本発明の硬化膜パターンは、配線、電極等の導体部の保護膜として信頼性が高い。例えば、本発明の硬化膜パターンは、液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル、タッチセンサ、フォ−スセンサ、集積回路素子、固体撮像素子、半導体素子等の電子部品の平坦化膜、保護膜及び層間絶縁膜の形成、あるいは、リジッドプリント配線板、フレキシブルプリント配線板のソルダ−レジスト用途などの配線、電極等の保護膜として広く利用することができる。

Claims (10)

  1. 感光性樹脂組成物であって、以下の成分:
    (A)アルカリ可溶性重合体、
    (B)光重合性化合物、
    (C)光重合性開始剤、および
    (D)テトラゾール化合物、を含み、
    前記(A)成分は、(A−i)エチレン性不飽和基及び酸性基を有し主鎖に環構造を含む重合体を含み、
    前記(D)成分は、25℃における水への溶解度が55g/L以下であり、かつ下記式(1):
    {式中、Rは1価の有機基を表す。}で表される化合物を含む、感光性樹脂組成物。
  2. 前記(A)成分は、すくなくとも前記(A−i)成分に対応する重合体を含む1種又は2種以上の重合体A−1、・・・A−n(nは1以上の整数を表す。)を含み、下記式(2):
    {式中、W−1、・・・W−nは、前記重合体A−1、・・・A−nの重量平均分子量をそれぞれ表し、X−1、・・・X−nは、前記重合体A−1、・・・A−nの前記感光性樹脂組成物中の質量%をそれぞれ表す。}で算出される、前記(A)成分の重量平均分子量が6,000〜20,000である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
  3. 前記(D)成分は、(D−ii)25℃における水への溶解度が30g/L未満であり、かつ前記式(1)で表される化合物を含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
  4. (F)熱架橋剤を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
  5. 前記(C)成分がオキシム化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
  6. 支持体と、前記支持体上に設けられた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物から形成される感光性樹脂層とを備える、転写フィルム。
  7. 導体用保護膜に使用される、請求項6に記載の転写フィルム。
  8. 請求項6又は7に記載の転写フィルムの露光現像物から形成される、樹脂パターン。
  9. 請求項8に記載の樹脂パターンの硬化物から形成される、硬化膜パターン。
  10. 請求項9に記載の硬化膜パターンを有するタッチパネル表示装置又はタッチセンサを有する、装置。
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