本発明の光学フィルムは、少なくとも、極性基を有する脂環式炭化水素単量体を含む重合体と、分子内に脂環式構造を有するジオール単量体と分子内に脂環式構造を有するイソシアネート単量体とを含むウレタン重合体と、を含有することを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記ウレタン重合体の重量平均分子量が、1000〜100000の範囲内であることが、光学フィルムとしての物理特性を維持し搬送時の破断抑制の観点から、好ましい。
また、前記ウレタン重合体が、2種以上の分子内に脂環式構造を有するジオール単量体を含むことや、2種以上の分子内に脂環式構造を有するイソシアネート単量体を含むことが、当該ウレタン重合体の規則性が小さくなり、ウレタンそのものの凝集力が低下することで、脂環式炭化水素単量体を含む重合体との相溶性が向上し、延伸時のヘーズの低減や、搬送時の破断抑制に有利に働く。
また、前記極性基を有する脂環式炭化水素単量体を含む重合体(A)と、前記ウレタン重合体(B)の混合質量比率(A/B)が、50/50〜95/5の範囲内であることが、本発明の効果発現の観点から、好ましい混合範囲である。
さらに、有機マット剤を含有することは、マット剤の屈折率が脂環式炭化水素単量体を含む重合体の屈折率と近くなるため、光学フィルム内での光散乱の発生を抑え、ヘーズや透明性が向上する。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明の光学フィルムの概要≫
本発明の光学フィルムは、少なくとも、極性基を有する脂環式炭化水素単量体を含む重合体と、分子内に脂環式構造を有するジオール単量体と分子内に脂環式構造を有するイソシアネート単量体とを含むウレタン重合体と、を含有することを特徴とする。
前記極性基を有する脂環式炭化水素単量体を含む重合体(A)と、前記ウレタン重合体(B)の混合質量比率(A/B)は、本発明の効果を発現するために、50/50〜95/5の範囲内であることが好ましく、より好ましくは60/40〜95/5であり、さらに好ましくは80/20〜95/5の範囲である。
〔1〕脂環式炭化水素単量体を含む重合体
本発明に係る脂環式炭化水素単量体を含む重合体(以下、ポリシクロオレフィンともいう。)は、シクロオレフィン単量体の重合体、又はシクロオレフィン単量体とそれ以外の共重合性単量体との共重合体である。
本発明に係るポリシクロオレフィンは、極性基を有することが特徴であり、当該極性基の例としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子)が挙げられる。
シクロオレフィン単量体は、ノルボルネン骨格を有するシクロオレフィン単量体であることが好ましい。位相差値RoやRt(特にRt)等の光学特性を制御する観点から、非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体を含むことが好ましい。非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体の例には、下記一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体が含まれる。
一般式(A−1)のR1は、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又は炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表す。中でも、炭素数1〜5の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜3の炭化水素基がより好ましい。
一般式(A−1)のR2は、極性基を表し、前述のとおり、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子)を表す。中でも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基が好ましく、溶液製膜時の溶解性を確保する観点から、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基がより好ましい。
一般式(A−1)のpは、0〜2の整数を表す。pは、1又は2であることが好ましい。
一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体は、非対称な構造を有する。即ち、一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体の置換基R1及びR2が、分子の対称軸に対して片側の環構成炭素原子のみに置換されているので、分子の対称性が低い。そのような非対称な構造を有するシクロオレフィン単量体は、分子の対称性が崩れたためか溶媒揮発時の樹脂の拡散運動を促進し、それに伴い本発明に係るポリウレタンの均一な配向を促すことから、好ましい。
一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体の含有割合は、本発明に係るポリシクロオレフィンを構成する全シクロオレフィン単量体の合計に対して、例えば50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上とし得る。一般式(A−1)で表される単量体を一定以上含む本発明に係るポリシクロオレフィンは、前述のとおり、本発明に係るポリウレタンの均一な配向を促すことから、好ましい。
また、シクロオレフィン単量体は、必要に応じて一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体以外の他のシクロオレフィン単量体をさらに含んでもよい。他のシクロオレフィン単量体の例には、下記一般式(A−2)で表されるシクロオレフィン単量体が含まれる。
一般式(A−2)のR3〜R6は、独立して水素原子、炭素原子数1〜30の炭化水素基、又は極性基を表す。ただし、R3〜R6の全てが同時に水素原子を表すことはなく、R3とR4が同時に水素原子を表すことはなく、R5とR6が同時に水素原子を表すことはないものとする。また、R3〜R6の少なくとも一つは極性基を表す。
炭素原子数1〜30の炭化水素基は、炭素原子数1〜10の炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1〜5の炭化水素基であることがより好ましい。炭素原子数1〜30の炭化水素基は、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はケイ素原子を含む連結基をさらに有していてもよい。そのような連結基の例には、カルボニル基、イミノ基、エーテル結合、シリルエーテル結合、チオエーテル結合等の2価の極性基が含まれる。炭素原子数1〜30の炭化水素基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が含まれる。前記極性基の例は、前述のとおりであり、一般式(A−2)のpは、0〜2の整数を示す。pは、1又は2であることが好ましい。
一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体の具体例を例示化合物15〜34に示し、一般式(A−2)で表されるシクロオレフィン単量体の具体例を例示化合物1〜14に示す。
他のシクロオレフィン単量体の例には、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン等も含まれる。
シクロオレフィン単量体と共重合可能な共重合性単量体の例には、シクロオレフィン単量体と開環共重合可能な共重合性単量体、シクロオレフィン単量体と付加共重合可能な共重合性単量体が含まれる。
開環共重合可能な共重合性単量体の例には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン及びシクロオクタジエン等のシクロオレフィンが含まれる。
付加共重合可能な共重合性単量体の例には、不飽和二重結合含有化合物、ビニル系環状炭化水素単量体、(メタ)アクリレートが含まれる。不飽和二重結合含有化合物の例には、炭素原子数2〜12(好ましくは2〜8)のオレフィン系化合物であり、その例には、エチレン、プロピレン、ブテンが含まれる。ビニル系環状炭化水素単量体の例には、4−ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロペンテン等のビニルシクロペンテン系単量体が含まれる。(メタ)アクリレートの例には、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。
本発明に係るポリシクロオレフィンにおけるシクロオレフィン単量体の含有割合は、ポリシクロオレフィンを構成する全単量体の合計に対して例えば50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%とし得る。
本発明に係るポリシクロオレフィンは、ノルボルネン骨格を有する前記一般式(A−1)及び(A−2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体を単独重合又は共重合して得られ、例えば以下の(1)〜(3)が好ましく、(3)がより好ましい。
(1)シクロオレフィン単量体の開環重合体
(2)シクロオレフィン単量体と共重合性単量体との開環共重合体
(3)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体
(4)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体
(5)シクロオレフィン単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和重合体
(6)シクロオレフィン系単量体の付加型(共)重合体及びその水素添加(共)重合体
(7)シクロオレフィン系単量体とメタクリレート、又はアクリレートとの交互共重合体
本明細書では、本発明に係るポリシクロオレフィンの製造方法等については、特開2008−107534号公報の記載を援用することができる。
本発明に係るポリシクロオレフィンの数平均分子量Mnは、8000〜100000であることが好ましく、10000〜80000であることがより好ましく、12000〜50000であることがさらに好ましい。本発明に係るポリシクロオレフィンの重量平均分子量Mwは、20000〜300000であることが好ましく、30000〜250000であることがより好ましく、40000〜200000であることがさらに好ましい。本発明に係るポリシクロオレフィンの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。測定条件は、以下のとおりである。
(測定条件)
溶媒:ジクロロメタン
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000((株)日立製作所製)
流量:1.0mL/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜1000000の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
また、本発明に係るポリシクロオレフィンは、市販品を好ましく用いることができ、市販品の例としては、JSR(株)からアートン(ARTON:登録商標)G、アートンF、アートンR、及びアートンRXという商品名で発売されており、これらを使用することができる。
〔2〕ウレタン重合体
本発明に係るウレタン重合体は、分子内に脂環式構造を有するジオール単量体(脂環式ジオールともいう。)と分子内に脂環式構造を有するイソシアネート単量体(脂環式イソシアネートともいう。)とを含むこと特徴とする。
〔2.1〕分子内に脂環式構造を有するジオール単量体
分子内に脂環式構造を持つジオールとは、構造中にシクロ環を1個、又は2個以上持つジオールのことをいう。脂環式構造を持つジオールとして、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−及び1,3−シクロペンタンジオール、シクロドデカンジオール、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチルシクロブタン、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−メタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−メチルペンタン、水添ビスフェノールAなどの化合物が挙げられる。1分子中の環構造の数は、何個でも構わないが、作製したポリイソシアネート組成物の粘度を考慮すると、1個が好ましい。中でも、炭素数が10個以下がより好ましい。これらの脂環式構造を持つジオールは、単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
本発明に係るポリウレタンを得るには、下記の一般式(I) 又は(II)で表される脂環式構造を有するジオール単量体を用いることが好ましい。
一般式(I)中、Xはメチレン基、イソプロピリデン基、スルホン基、ケトン基、又はエーテル基を表し、一般式(I)及び(II)中、R1及びR2は各々独立して、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、m及びnは、0≦m+n≦4を満足する正の整数である。
一般式(I) 及び(II)におけるシクロヘキサン環には、更に、メチル基等のアルキル基、塩素、臭素等のハロゲン原子等の他の置換基が存在していてもよい。
これらの脂環式ジオールとして、具体的には、例えば、一般式(I) で表されるものとして、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシシクロヘキシルスルホン、4,4’−ジヒドロキシシクロヘキシルケトン、4,4’−ジヒドロキシシクロヘキシルエーテル、及び、それらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。又、一般式(II)で表されるものとして、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及び、それらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらは二種以上を併用してもよく、中で、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、2,2−ビス(4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。
なお、他の構造を有するジオールとして、ビシクロ[5,3,0]デカンジメタノール、ビシクロ[4,4,0]デカンジメタノール、ビシクロ[4,3,0]ノナンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,3−アダマンタンジオール(1,3−ジヒドロキシトリシクロ[3,3,1,13,7]デカン、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等も有用である。
〔2.2〕分子内に脂環式構造を有するイソシアネート単量体
本発明に係る脂環式構造を有するイソシアネート単量体は、脂環式構造を有するジイソシアネートであることが好ましく、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが好ましい例として挙げられる。
脂環式ジイソシアネートの中で、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートは、工業的に入手し易いため好ましい。
〔2.3〕高分子ジオール
本発明に係るウレタン重合体では、分子内に脂環式構造を有するジオール単量体及びイソシアネート単量体に加えて、高分子ジオールを用いることも好ましい。
高分子ジオールとしては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック又はランダム共重合体、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランのブロック又はランダム共重合体等のポリエーテル系、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエチレンアジペートポリオール、ポリブチレンアジペートポリオール等のポリエステル系、1,6−ヘキサンポリカーボネートポリオール等のポリカーボネート系等が挙げられ、これらは二種以上を併用してもよく、中で、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオールが好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが特に好ましい。
高分子ジオールは平均分子量が500〜5000であることが好ましく、800〜3000であることより好ましい。
本発明のウレタン重合体の製造法は、脂環式ジオールと脂環式ジイソシアネートとを重付加反応させることで得ることができ、又、脂環式ジオールと脂環式ジイソシアネートと前記高分子ジオールとを重付加反応させることで、得ることができる。
例えば、脂環式ジオールと脂環式ジイソシアネートと高分子ジオールを重付加反応させるに当たり、高分子ジオールと脂環式ジオールの量比を、モル比で1:2〜1:10の範囲とすることが好ましい。
また、重付加反応は、例えば、常法により、反応系を60〜100℃程度に加熱し、攪拌、混合し、その温度で1〜4時間程度反応させ、必要に応じて、40〜80℃程度の温度で一昼夜熟成することによりなされる。なお、これらの反応は、押出機等を用いる連続式、又は反応釜等を用いるバッチ式、単量体を溶媒に溶解した状態で反応釜中で反応させる方式、のいずれによってもよく、必要に応じてスタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート等の有機錫系触媒が用いられる。
〔3〕他の成分
本発明の光学フィルムは、必要に応じて上記以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分の例には、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤及びマット剤が含まれる。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、光学フィルムの耐光性を向上させる目的で添加され得る。そのような紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤が含まれる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例には、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノールが含まれる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品の例には、TINUVIN109、TINUVIN171、TINUVIN234、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN328、TINUVIN928等のTINUVINシリーズがあり、これらはいずれもBASF社製の市販品である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例には、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等が含まれる。
サリチル酸エステル系紫外線吸収剤の例には、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルサリシレート等が含まれる。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤の例には、2′−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3′,4′−メチレンジオキシフェニル)−アクリレート等が含まれる。
トリアジン系紫外線吸収剤の例には、2−(2′−ヒドロキシ−4′−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニルトリアジン等が含まれる。トリアジン系紫外線吸収剤の市販品の例には、TINUVIN477が含まれる。
これらの中でも、良好な紫外線吸収能を有する点では、トリアジン系の紫外線吸収剤が好ましいが、延伸によって位相差を発現しやすい傾向がある。したがって、延伸により位相差を発現しにくく、かつ良好な紫外線吸収性能を有する点では、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。
なお、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は、トリアジン系の紫外線吸収剤と比べると紫外線吸収性能はやや劣るため、フィルムにおける含有量を多くする必要がある。紫外線吸収剤の含有量を多くすると、湿熱耐久性は低下しやすい。
紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂の全質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が熱可塑性樹脂の全質量に対して0.1質量%以上であれば、光学フィルムの耐候性を十分に高めうる。紫外線吸収剤の含有量が熱可塑性樹脂の全質量に対して10質量%以下であれば、得られる光学フィルムの透明性が損なわれ難い。紫外線吸収剤の含有量は、本発明に係るポリシクロオレフィン及びポリウレタンの全質量に対して0.5〜10質量%であることがより好ましく、1.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
(可塑剤)
可塑剤の例には、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤を含む)、グリコレート系可塑剤、エステル系可塑剤(脂肪酸エステル系可塑剤を含む)、糖エステル系可塑剤及びアクリル系可塑剤等が含まれる。光学フィルムに含まれる可塑剤は、1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。中でも、熱可塑性樹脂と相溶しやすく、良好な可塑性が得られやすい点から、糖エステル系可塑剤が好ましい。
本発明に用いられる糖エステルとしては、ピラノース環又はフラノース環の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基の全て若しくは一部をエステル化した糖エステルであることが好ましい。
本発明に用いられる糖エステルとは、フラノース環又はピラノース環の少なくともいずれかを含む化合物であり、単糖であっても、糖構造が2〜12個連結した多糖であってもよい。そして、糖エステルは、糖構造が有するOH基の少なくとも一つがエステル化された化合物が好ましい。本発明に係る糖エステルにおいては、平均エステル置換度が、4.0〜8.0の範囲内であることが好ましく、5.0〜7.5の範囲内であることがより好ましい。
本発明に用いられる糖エステルとしては、特に制限はないが、下記一般式(B)で表される糖エステルを挙げることができる。
一般式(B)
(HO)m−G−(O−C(=O)−R2)n
上記一般式(B)において、Gは、単糖類又は二糖類の残基を表し、R2は、脂肪族基又は芳香族基を表し、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、nは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R2)基の数の合計であり、3≦m+n≦8であり、n≠0である。
一般式(B)で表される構造を有する糖エステルは、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R2)基の数(n)が固定された単一種の化合物として単離することは困難であり、式中のm、nの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。したがって、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R2)基の数(n)が各々変化した混合物としての性能が重要であり、本発明の環状ポリオレフィンフィルムの場合、平均エステル置換度が、5.0〜7.5の範囲内である糖エステルが好ましい。
上記一般式(B)において、Gは単糖類又は二糖類の残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
以下に、一般式(B)で表される糖エステルの単糖類残基を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物に限定されるものではない。
また、二糖類残基の具体例としては、例えば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロース等が挙げられる。
以下に、一般式(B)で表される糖エステルの二糖類残基を有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物に限定されるものではない。
一般式(B)において、R2は、脂肪族基又は芳香族基を表す。ここで、脂肪族基及び芳香族基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。
また、一般式(B)において、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、nは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R2)基の数の合計である。そして、3≦m+n≦8であることが必要であり、4≦m+n≦8であることが好ましい。また、n≠0である。なお、nが2以上である場合、−(O−C(=O)−R2)基は互いに同じでもよいし異なっていてもよい。
R2の定義における脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、1〜20のものがより好ましく、2〜15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシル等の各基が挙げられる。
また、R2の定義における芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニル等の各環が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環が特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも一つを含む環が好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等の各環が挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環が特に好ましい。
次に、一般式(B)で表される糖エステルの好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの例示する化合物に限定されるものではない。下記例示化合物はいずれも融点及び1%質量減少温度Td1が、本発明の範囲内である。
糖エステルは一つの分子中に二つ以上の異なった置換基を含有していても良く、芳香族置換基と脂肪族置換基を1分子内に含有、異なる二つ以上の芳香族置換基を1分子内に含有、異なる二つ以上の脂肪族置換基を1分子内に含有することができる。
また、2種類以上の糖エステルを混合して含有することも好ましい。芳香族置換基を含有する糖エステルと、脂肪族置換基を含有する糖エステルを同時に含有することも好ましい。
〈合成例:一般式(B)で表される糖エステルの合成例〉
以下に、本発明に好適に用いることのできる糖エステルの合成の一例を示す。
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖を34.2g(0.1モル)、無水安息香酸を180.8g(0.8モル)、ピリジンを379.7g(4.8モル)、それぞれ仕込み、撹拌下で窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエンを1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液を300g添加し、50℃で30分間撹拌した後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水を100g添加し、常温で30分間水洗した後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%で、糖エステルの平均エステル置換度が、6.57であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
当該糖エステルの添加量は、環状ポリオレフィン系樹脂に対して0.1〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、1〜15質量%の範囲で添加することがより好ましい。
当該糖エステルの含有量は、本発明に係るポリシクロオレフィン及びポリウレタンの全質量に対して1〜20質量%であることが好ましい。可塑剤の含有量が本発明に係るポリシクロオレフィン及びポリウレタンの全質量に対して1〜20質量%の範囲内であると、可塑化と延伸時や保存時のブリードアウトを抑制しやすい。当該糖エステルの含有量は、本発明に係るポリシクロオレフィン及びポリウレタンの全質量に対して1〜15質量%であることがより好ましい。
可塑剤は、その効果の一つとして、本発明に係るポリシクロオレフィンの含水率を低下させて耐水性と耐湿性を向上させ得る。従って、可塑剤以外の添加剤の疎水性が高ければ、可塑剤の添加量を少なくすることができる。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、高湿高温下に置かれた液晶表示装置に含まれる光学フィルムの劣化を抑制する目的;具体的には、光学フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等による樹脂の分解を遅らせたり、抑制したりする目的で添加され得る。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、その例には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等が含まれる。中でも、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。
酸化防止剤の含有量は、本発明に係るポリシクロオレフィン及びポリウレタンの全質量に対して1質量ppm〜1.0質量%であることが好ましく、10〜1000質量ppmであることがより好ましい。
(マット剤及び有機マット剤)
マット剤は、光学フィルムの表面の滑り性を高める目的で添加され得る。微粒子は、無機微粒子又は有機微粒子が用いられるが、後述する有機微粒子を含有する有機マット剤であることが、本発明に係るポリシクロオレフィンとの屈折率差を低減しヘーズ抑制の観点から好ましい。
微粒子は、0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成して光学フィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmの範囲であり、更に好ましくは0.2〜0.6μmの範囲である。
無機微粒子の例には、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等の微粒子が含まれる。有機微粒子の例には、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等の微粒子が含まれる。
二酸化ケイ素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)等が含まれる。
本発明に好ましい有機微粒子は、平均粒子径0.01μm以上1μm以下の範囲内のコア部となる粒子状重合体に、シェル部として(メタ)アクリル酸エステルを更に重合してなるコア部とシェル部とからなる多層構造を有する有機微粒子であることが好ましい。上記有機微粒子は、中心の部分(コア)のみに多官能性化合物由来の構造を有し、中心の部分を囲む部分(シェル)には、光学フィルムを構成する熱可塑性樹脂との相溶性が高い構造を有することが好ましい。これより、有機微粒子は上記熱可塑性樹脂中でより均一に分散することができ、有機微粒子の凝集などによって生じる異物の副生をより抑制することができる。これにより、光学フィルム成形時における濾過工程をより短時間で行うことができる。
このようなコア・シェル構造を有する有機微粒子は、例えば、上記有機微粒子の重合時に反応せずに残った反応性官能基(二重結合)をグラフト交叉点として、上述した(メタ)アクリル酸エステルと、α−ヒドロキシメチルスチレンやα−ヒドロキシエチルスチレン等の水酸基含有単量体と、アクリル酸やメタクリル酸及びクロトン酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、及び酢酸ビニル等から選ばれる少なくとも1種の単量体とをグラフト重合させることにより得ることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、重合性やコストの点より、アルキル基の炭素数1〜12のものを用いることが好ましい。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸フェニル、およびアクリル酸2−フェノキシエチル等が挙げられる。
上記コア部の平均粒子径は1〜500nmであることが好ましく、10〜400nmであることがより好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましく、70〜300nmであることが特に好ましい。ここで、粒子径は、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いる動的光散乱法により求めたり、濁度計を用いて単位重量辺りの重合液の透過度を測定する濁度法により求めることができる。
上記コア部とシェル部との質量比は、20:80〜80:20の範囲内であることが好ましい。
以下、上記コア・シェル構造のシェル部及びコア部についてさらに説明する。
〈シェル部〉
シェル部としては、光学フィルムを構成する熱可塑性樹脂との相溶性が高い構造であれば特には限定されない。
〈コア部〉
コア部としては、上記光学フィルムを構成する熱可塑性樹脂の可撓性を改善する効果を発現する構造であれば特には限定されず、例えば、架橋を有する構造が挙げられる。また、架橋を有する構造としては、架橋ゴム構造であることが好ましい。
上記架橋ゴム構造とは、ガラス転移点が−100〜25℃の範囲内である重合体を主鎖とし、多官能性化合物によって、その主鎖間を架橋することによって弾性を持たせたゴムの構造を意味する。架橋ゴム構造としては、例えばアクリル系ゴム、ポリブタジエン系ゴム、オレフィン系ゴムの構造(繰り返し構造単位)が挙げられる。これらの中でも、平均粒子径が300nm以下にコントロールし易く、樹脂中に均一に分散した場合にフィルムの透明性等の光学特性が良いことから、アクリル系ゴムが好ましい。
例えば、ゴム部の材質であるアクリル酸エステル系ゴム状重合体は、アクリル酸エステルを主成分としたゴム状重合体である。具体的には、アクリル酸エステル50〜100質量%及び共重合可能な他のビニル系単量体50〜0質量%からなる単量体混合物(100質量%)並びに、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体を重合させてなるものが好ましい。
アクリル酸エステルとしては、重合性やコストの点より、アルキル基の炭素数1〜12のものを用いることが好ましい。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸フェニル、およびアクリル酸2−フェノキシエチル等が挙げられる。
アクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体としては、耐候性、透明性の点より、メタクリル酸エステル類が特に好ましい。メタクリル酸エステル類としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル、およびメタクリル酸n−オクチル等が挙げられる。
また、芳香族ビニル類およびその誘導体、およびシアン化ビニル類も好ましい。これらのビニル系単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等があげられる。その他、無置換および/または置換無水マレイン酸類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル、ハロゲン化ビニリデン、(メタ)アクリル酸およびその塩、(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル等が挙げられる。
アクリル酸エステルを主成分とする単官能性の単量体と共重合される多官能性単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチルロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、及びこれらのアクリレート類等を使用することができる。これらの多官能性単量体は2種以上使用してもよい。
本発明におけるコア・シェル構造を有する有機微粒子の製造方法としては、コア・シェル型の粒子を製造し得る任意の適切な方法を採用することができる。
本発明におけるコア・シェル構造を有する有機微粒子を乳化重合、懸濁重合等により製造する場合には、公知の重合開始剤を用いることができる。特に好ましい重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過リン酸ナトリウム等の過リン酸塩、アゾビスイソブチロニトリル等の有機アゾ化合物、クメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、1,1ジメチル−2ヒドロキシエチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物、ターシャリーブチルイソプロピルオキシカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシブチレート等のパーエステル類、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機パーオキサイド化合物などが挙げられる。これらは熱分解型重合開始剤として使用してもよく、硫酸第一鉄などの触媒及びアスコルビン酸、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の水溶性還元剤の存在下にレドックス型重合開始剤として使用しても良く、重合するべき単量体組成、層構造、重合温度条件等に応じて適宜選定すれば良い。
本発明におけるコア・シェル構造を有する有機微粒子を乳化重合により製造する場合には、公知の乳化剤を用いて通常の乳化重合により製造することができる。公知の乳化剤としては、例えばアルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が示される。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に要すれば、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。
本発明におけるコア・シェル構造を有する有機微粒子の屈折率は、本発明に係るポリシクロオレフィンとの屈折率差が、0.015以下であることが好ましく、より好ましくは0.012以下、さらに好ましくは、0.01以下である。屈折率差が0.015以下であると、透明性に優れた光学フィルムを得ることが可能となる。 上記屈折率条件を満たすための方法としては、用いる各単量体の単位組成比を調整する方法、及び/又は、ゴム質含有粒子の各層に使用される重合体及び/又は単量体の組成比を調整する方法等が挙げられる。
屈折率の測定法は、有機微粒子をプレス成形し、当該成形体の平均屈折率をレーザー屈折計にて測定し求めることができる。その値を有機微粒子の屈折率とする。
同様に、本発明に係るポリシクロオレフィンについては、ポリシクロオレフィンを構成する材料(樹脂又は樹脂組成物)を成形し、当該成形体の平均屈折率をレーザー屈折計にて測定し、その値をポリシクロオレフィンの屈折率とする。
なお、当該屈折率とは、23℃における550nmの波長の光に対する屈折率をいう。
本発明の有機マット剤含有ドープを調製するにあたり、あらかじめ有機微粒子の分散液を調整しておくことが好ましい。分散液の溶媒としてはドープ溶媒種の中の一部又は全部から選択することが好ましい。分散液は有機微粒子が単分散状態で存在することが好ましく、そのために分散剤等も好ましく選択される。有機微粒子の分散性のため、従来公知の粒子分散安定化技術としてアニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤や、立体反発効果を得るためのポリマーも好ましく添加される。
分散液中の有機微粒子含有率は1〜50質量%が好ましい。含有率が低い場合、有機微粒子添加量が規定されたドープ中の分散液比率が上がり、他の原材料の溶解自由度が低くなる。また含有率が高い場合は有機微粒子が分散液中で凝集しやすくなるためハンドリングが難しい。
本発明の光学フィルム中における有機微粒子の状態としては、一次粒子が均一に単分散されている状態が最も好ましい。それとは逆に、本発明の主旨に反しない範囲で、緩やかな凝集や偏在があってもよい。
例えば、有機微粒子の存在濃度がフィルム表層付近に大きい形態や、逆にフィルム中心層付近に大きい形態なども目的に応じて選択できる。
個々の有機微粒子の粒子形状については、真球状、扁平状、棒状など任意に選択できる。フィルムの表面凹凸に影響が少ないため、扁平形状が好ましく、扁平な面がフィルム面と平行に存在することが好ましい。
有機微粒子の含有量は、本発明に係るポリシクロオレフィン及びウレタン重合体の合計量に対して0.05〜3.0質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であることがより好ましい。
〔4〕本発明の光学フィルムの製造方法
本発明の光学フィルムは、溶液流延製膜法で製造されたフィルムであることが好ましい。
本発明の光学フィルムは、少なくとも本発明に係るポリシクロオレフィン、本発明に係るポリウレタンとマット剤及び有機溶媒を含有するドープを調製する工程(ドープ調製工程)と、前記ドープを支持体上に流延してウェブ(流延膜ともいう。)を形成する工程(流延工程)と、支持体上でウェブから溶媒を蒸発させる工程(溶媒蒸発工程)、ウェブを支持体から剥離する工程(剥離工程)、得られたフィルムを乾燥させる工程(第1乾燥工程)、フィルムを延伸する工程(延伸工程)、延伸後のフィルムを更に乾燥させる工程(第2乾燥工程)、得られた光学フィルムを巻き取る工程(巻取り工程)によって製造されることが好ましい。
以上の工程を図をもって説明する。
図1は、本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程、乾燥工程及び巻取り工程の一例を模式的に示した図である。
分散機によって溶媒とマット剤を分散させた微粒子分散液は仕込み釜41から濾過器44を通過しストック釜42にストックされる。一方主ドープである本発明に係るポリシクロオレフィンは溶媒とともに溶解釜1にて溶解され、適宜ストック釜42に保管されているマット剤が添加されて混合され主ドープを形成する。得られた主ドープは、濾過器3、ストック釜4から濾過器6によって濾過され、合流管20によって添加剤が添加されて、混合機21で混合されて加圧ダイ30に液送される。
一方、添加剤(例えば、ウレタン重合体、紫外線吸収剤及び位相差上昇剤など)は、溶媒に溶解され、添加剤仕込み釜10から濾過器12を通過してストック釜13にストックされる。その後、濾過器15を通して導管16を経由して合流管20、混合機21によって主ドープと混合される。
加圧ダイ30に液送された主ドープは、金属ベルト状の支持体31上に流延されてウェブ32を形成し、所定の乾燥後剥離位置33で剥離されフィルムを得る。剥離されたウェブ32は、第1乾燥装置34にて多数の搬送ローラーに通しながら、所定の残留溶媒量になるまで乾燥された後、延伸装置35によって長手方向又は幅手方向に延伸される。延伸後、第2乾燥装置36によって所定の残留溶媒量になるまで、搬送ローラー37に通しながら乾燥し、巻取り装置38によって、ロール状に巻取られる。
以下、各工程について説明する。
(1)ドープ調製工程
本発明に係るポリシクロオレフィンに対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で当該ポリシクロオレフィン、場合によって、本発明に係るウレタン重合体、マット剤又はその他の化合物を撹拌しながら溶解しドープを調製する工程、又は当該ポリシクロオレフィン溶液に、前記ウレタン重合体、マット剤又はその他の化合物溶液を混合して主溶解液であるドープを調製する工程である。
本発明の光学フィルムを溶液流延法で製造する場合、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、本発明に係るポリシクロオレフィン、本発明に係るウレタン重合体及びその他の化合物を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
用いられる有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、ベンゼン、及びこれらの混合溶媒などの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、ジエチルエーテル;などが挙げられる。これら溶媒は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられる有機溶媒は、良溶媒と貧溶媒の混合溶媒であることが好ましく、当該良溶媒は、例えば、塩素系有機溶媒としては、ジクロロメタン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられ、中でもジクロロメタンであることが好ましい。当該良溶媒は、溶媒全体量に対して55質量%以上を用いることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上用いることである。
貧溶媒はアルコール系溶媒であることが好ましく、当該アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール及びブタノールから選択されることが、剥離性を改善し、高速度流延を可能にする観点から好ましい。中でもメタノール又はエタノールを用いることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ないときは非塩素系有機溶媒系でのポリシクロオレフィン及びその他の化合物の溶解を促進する役割もある。本発明の光学フィルムの製膜においては、得られる光学フィルムの平面性を高める点から、アルコール濃度が0.5〜15.0質量%の範囲内にあるドープを用いて製膜することが好ましい。
本発明に係るポリシクロオレフィン、本発明に係るウレタン重合体、及びその他の化合物の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載されている高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中の本発明に係るポリシクロオレフィンの濃度は、10〜40質量%の範囲であることが好ましい。溶解中又は後のドープに化合物を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
ドープの濾過については、好ましくはリーフディスクフィルターを具備する主な濾過器3で、ドープを例えば90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10〜100倍の濾材で濾過することが好ましい。
本発明において、濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行なわなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
このため、本発明において、前記ポリシクロオレフィンドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲が、より好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材がさらに好ましい。
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
本発明において、濾過の際のドープの流量が、10〜80kg/(h・m2)、好ましくは20〜60kg/(h・m2)であることが好ましい。ここで、濾過の際のドープの流量が、10kg/(h・m2)以上であれば、効率的な生産性となり、濾過の際のドープの流量が、80kg/(h・m2)以内であれば、濾材にかかる圧力が適正となり、濾材を破損させることがなく、好ましい。
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下が、より好ましく、2500kPa以下であることがさらに好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。
返材とは、例えば、本発明の光学フィルムを細かく粉砕した物で、光学フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでフィルムの規定値を越えた光学フィルム原反が使用される。
また、ドープ調製に用いられる樹脂の原料としては、あらかじめ本発明に係るポリシクロオレフィン及びその他の化合物などをペレット化したものも、好ましく用いることができる。
(2)流延工程
(2−1)ドープの流延
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属支持体31、例えば、ステンレスベルト、又は回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mの範囲、好ましくは1.3〜3mの範囲、さらに好ましくは1.5〜2.8mの範囲とすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下、さらに好ましくは−30〜0℃の範囲に設定される。温度が高い方がウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブという。)の乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃の範囲が更に好ましい。又は、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
ダイは、ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して積層してもよい。
(2−2)溶媒蒸発工程
ウェブを流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程であり、後述する剥離時の残留溶媒量を制御する工程である。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が、乾燥効率が良く好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを30〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。30〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜180秒以内で当該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
(2−3)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブはフィルムとして次工程に送られる。
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃の範囲であり、さらに好ましくは11〜30℃の範囲である。
本発明では、前記溶媒蒸発工程でウェブ中の溶媒を蒸発するが、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの残留溶媒量は、15〜100質量%の範囲内とすることが好ましい。残留溶媒量の制御は、前記溶媒蒸発工程における乾燥温度及び乾燥時間で行うことが好ましい。
前記残留溶媒量が15質量%以上では、支持体上での乾燥過程において、マット剤が厚さ方向に分布を持たずフィルム中に均一に分散した状態になるため、延伸によって所望の凹凸構造ができ、巻取り形状の変形を抑制しやすい。また乾燥時間が長くならず生産性も向上する。
また、前記残留溶媒量が100質量%以内であれば、フィルムが自己支持性を有し、フィルムの剥離不良を回避でき、ウェブの機械的強度も保持できることから剥離時の平面性が向上し、剥離張力によるツレや縦スジの発生を抑制できる。
ウェブ又はフィルムの残留溶媒量は下記式(Z)で定義される。
式(Z):
残留溶媒量(%)=(ウェブ又はフィルムの加熱処理前質量−ウェブ又はフィルムの加熱処理後質量)/(ウェブ又はフィルムの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
金属支持体からウェブを剥離してフィルムとする際の剥離張力は、通常、196〜245N/mの範囲内であるが、剥離の際に皺が入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
本発明においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃の範囲内とするのが好ましく、10〜40℃の範囲内がより好ましく、15〜30℃の範囲内とするのが最も好ましい。
(3)乾燥及び延伸工程
乾燥工程は予備乾燥工程(第1乾燥工程)、本乾燥工程(第2乾燥工程)に分けて行うこともできる。
(3−1)予備乾燥工程
金属支持体からウェブ剥離して得られたフィルムは第1乾燥装置34にて予備乾燥させる。フィルムの予備乾燥は、フィルムを、上下に配置した多数のローラーにより搬送しながら乾燥させてもよいし、テンター乾燥機のようにフィルムの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
ウェブの予備乾燥工程における乾燥温度は好ましくはフィルムのガラス転移点−5℃以下であって、30℃以上の温度で1分以上30分以下の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は40〜150℃の範囲内、更に好ましくは50〜100℃の範囲内で乾燥が行われる。
本発明では、この乾燥工程にて後述するフィルム中の延伸時の残留溶媒量を調整することが好ましいが、当該残留溶媒量は延伸工程の初期に行ってもよい。残留溶媒量の制御は、前記予備乾燥工程における乾燥温度及び乾燥時間で行うことが好ましい。
(3−2)延伸工程
本発明の光学フィルムは、延伸装置35にて特定の残留溶媒量下で低延伸率の延伸処理を行うことで、フィルム表面近傍の微小なクレーズの発生を抑制し、かつマット剤の均一な分布を促すことができる。さらにフィルム内の分子の配向を制御することで、目標とする位相差値Ro及びRtを得ることができる。
本発明の光学フィルムの製造方法は、当該フィルムを延伸する工程において、延伸開始時の残留溶媒量を1質量%以上15質量%未満とすることが特徴である。好ましくは2〜10質量%の範囲内である。
延伸開始時の残留溶媒量が1質量%未満であると、延伸時に応力がかかり過ぎて、フィルム表面近傍で微小なクレーズが発生しやすくなり、UV糊での接着性が劣化する。
一方、残留溶媒量が15質量%以上であると、延伸時に応力が掛かりにくくなるため、フィルム内のマット剤微粒子が樹脂の配向に沿って動きにくくなり、フィルム表面に所望の凹凸構造を形成できず、巻取り形状の変形故障となる。
本発明の光学フィルムは、長手方向(MD方向、流延方向ともいう。)及び/又は幅手方向(TD方向ともいう。)に延伸することが好ましく、少なくとも延伸装置によって、幅手方向に延伸して製造することが好ましい。
延伸操作は多段階に分割して実施してもよい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
すなわち、例えば、次のような延伸ステップも可能である:
・長手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
・幅手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
本発明の光学フィルムは、延伸後の膜厚が所望の範囲になるように長手方向及び/又は幅手方向に、好ましくは幅手方向に、フィルムのガラス転移温度をTgとしたときに、(Tg+5)〜(Tg+50)℃の温度範囲で延伸することが好ましい。上記温度範囲で延伸すると、位相差の調整がしやすく、また延伸応力を低下できるのでヘーズが低くなる。また、破断の発生を抑制し、平面性、フィルム自身の着色性に優れた光学フィルムが得られる。延伸温度は、(Tg+10)〜(Tg+40)℃の範囲で行うことが好ましい。
なお、ここでいうガラス転移温度Tgとは、市販の示差走査熱量測定器を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。具体的な光学フィルムのガラス転移温度Tgの測定方法は、JIS K7121(1987)に従って、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計DSC220を用いて測定する。
本発明の光学フィルムは、フィルムを少なくとも幅手方向に、元幅に対して5〜80%の範囲内の延伸率で延伸することが好ましく、さらにフィルムの長手方向及び幅手方向において、それぞれ5〜60%の範囲内の延伸率で延伸することがより好ましい。特に当該延伸率の範囲は、元幅に対して10〜50%の範囲内で延伸することがさらに好ましい。上記範囲内であれば、高倍率な延伸によるフィルム近傍の微小なクレーズの発生を抑制し、特にウレタン重合体を含む場合は所望の位相差値が得られるばかりではなく、フィルムを薄膜化できる。本発明でいう延伸率とは、延伸前のフィルムの長手又は幅手の長さに対して、延伸後のフィルムの長手又は幅手の長さの比率(%)をいう。
長手方向に延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、又は縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。
幅手方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程又は一部の工程を幅方向にクリップ又はピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
幅手方向への延伸に際し、フィルム幅手方向に250〜500%/minの延伸速度で延伸することが、フィルムの平面性を向上する観点から、好ましい。
延伸速度は250%/min以上であれば、平面性が向上し、またフィルムを高速で処理することができるため、生産適性の観点で好ましく、500%/min以内であれば、フィルムが破断することなく処理することができ、好ましい。
好ましい延伸速度は、300〜400%/minの範囲内であり、低倍率の延伸時に有効である。延伸速度は下記式1によって定義されるものである。
式1 延伸速度(%/min)=[(d1/d2)−1]×100(%)/t
(式1において、d1は延伸後の本発明の光学フィルムの前記延伸方向の幅寸法であり、d2は延伸前の光学フィルムの前記延伸方向の幅寸法であり、tは延伸に要する時間(min)である。)
延伸工程では、通常、延伸した後、保持・緩和が行われる。すなわち、本工程は、フィルムを延伸する延伸段階、フィルムを延伸状態で保持する保持段階及びフィルムを延伸した方向に緩和する緩和段階をこれらの順序で行うことが好ましい。保持段階では、延伸段階で達成された延伸率での延伸を、延伸段階における延伸温度で保持する。緩和段階では、延伸段階における延伸を保持段階で保持した後、延伸のための張力を解除することによって、延伸を緩和する。緩和段階は、延伸段階における延伸温度以下で行えば良い。
(3−3)本乾燥工程
本乾燥工程では、第2乾燥装置36によって延伸後のフィルムを加熱して乾燥させる。熱風等によりフィルムを加熱する場合、使用済みの熱風(溶媒を含んだエアーや濡れ込みエアー)を排気できるノズルを設置して、使用済み熱風の混入を防ぐ手段も好ましく用いられる。熱風温度は、40〜350℃の範囲がより好ましい。また、乾燥時間は5秒〜60分程度が好ましく、10秒〜30分がより好ましい。
また、加熱乾燥手段は熱風に制限されず、例えば、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等を用いることができる。簡便さの観点からは、千鳥状に配置した搬送ローラー37でフィルムを搬送しながら、熱風等で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は残留溶媒量、搬送における伸縮率等を考慮して、40〜350℃の範囲がより好ましい。
乾燥工程においては、残留溶媒量が0.5質量%以下になるまで、フィルムを乾燥することが好ましい。
(4)巻取り工程
(4−1)ナーリング加工
所定の熱処理又は冷却処理の後、巻取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。更に、幅手両端部にはナーリング加工をすることが好ましい。
ナーリング加工は、加熱されたエンボスローラーをフィルム幅手端部に押し当てることにより形成することができる。エンボスローラーには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。
本発明の光学フィルムの幅手両端部のナーリングの高さは4〜20μm、幅5〜20mmが好ましい。
また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜工程において乾燥終了後、巻取りの前に設けることが好ましい。
(4−2)巻取り工程
フィルム中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻取る工程であり、残留溶媒量を好ましくは0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
巻取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使い分ければよい。
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、延伸時の残留溶媒量を特定の範囲に制御することで、延伸時にフィルムに対して適度な応力をかけることができ、その結果、マット剤によってフィルム表面に均一に分布した凹凸構造を形成することが可能になり、均一なすべり性を確保することによって、安定な巻取り形状を達成できる。
〔5〕光学フィルムの物性
(位相差値Ro及びRt)
本発明の光学フィルムは、位相差フィルムとしての機能を持たせることが好ましい。例えば、VAモードの液晶表示装置の液晶セルの上下に2枚配置する位相差フィルムとしての機能を持たせる場合は、測定波長550nm、23℃・55%RHの環境下で測定される面内方向の位相差値Roは、50〜80nmであることが好ましく、厚さ方向の位相差値Rtは、100〜200nmであることが好ましい。液晶セルの片側に1枚配置する位相差フィルムとしての機能を持たせる場合は、面内方向の位相差値Roは、100〜200nmであることが好ましく、厚さ方向の位相差値Rtは、200〜400nmであることが好ましい。
また、IPSモードの液晶表示装置の位相差フィルムとしての機能を持たせる場合は、測定波長550nm、23℃・55%RHの環境下で測定される面内方向の位相差値Roは、0〜8nmであることが好ましく、0〜5nmであることがより好ましい。厚さ方向の位相差値Rtは、−10〜10nmであることが好ましく、−8〜8nmであることがより好ましい。
なお、光学フィルムのRo及びRtは、それぞれ下記式で定義される。
式(1a):Ro=(nx−ny)×d
式(1b):Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、nxは、フィルムの面内方向において屈折率が最大となる方向x(面内遅相軸方向)における屈折率であり、nyは、フィルムの面内方向において前記方向x(面内遅相軸方向)と直交する方向yにおける屈折率であり、nzは、フィルムの厚さ方向における屈折率であり、dは、フィルムの膜厚(nm)である。)
光学フィルムの位相差値Ro及びRtの測定は、以下の方法で行うことができる。
(1)光学フィルムを23℃・55%RHの環境下で24時間調湿する。
(2)調湿後の光学フィルムの、測定波長550nmにおける位相差値Ro及びRtを、それぞれ自動複屈折率計 Axometorics社製Axoscanを用いて、23℃・55%RHの環境下で測定する。具体的な測定手順や測定条件は、後述する実施例と同様である。
〈ヘーズ〉
本発明の光学フィルムは、ヘーズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。ヘーズを1%未満とすることにより、フィルムの透明性がより高くなり、光学用のフィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。
ヘーズ値の測定は、23℃・55%RHの環境下、ヘーズメーター(日本電色工業社製、NDH2000)により、フィルムの幅手方向に等間隔で10点の測定を行い、その平均値を求めヘーズとする。
〈フィルム長、幅、膜厚〉
本発明の光学フィルムは、長尺であることが好ましく、具体的には、100〜10000m程度の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、本発明の光学フィルムの幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.3m以上であり、特に1.3〜4mであることが好ましい。
延伸後のフィルムの膜厚は、表示装置の薄型化、生産性の観点から、10〜50μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が10μm以上であれば、一定以上のフィルム強度や位相差を発現させることができる。膜厚が50μm以下であれば、所望の位相差を具備し、かつ偏光板及び表示装置の薄型化に適用できる。好ましくは、フィルムの厚さは20〜35μmの範囲内である。
ム物性)
〔6〕偏光板
〔6.1〕偏光子
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、その例には、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが含まれる。
ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸した後、染色するか又はポリビニルアルコールフィルムを染色した後、一軸延伸して、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理をさらに行って得ることができる。
偏光子の膜厚は、5〜30μmの範囲内が好ましく、5〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
ポリビニルアルコールフィルムとしては、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。また、特開2011−100161号公報、特許第4691205号公報、特許第4804589号公報に記載の方法で、偏光子を作製し本発明の光学と貼り合わせて偏光板を作製することが好ましい。
〔6.2〕接着剤
[水糊]
本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムを完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水糊)を用いて偏光子に貼り合わせることができるが、本発明の光学フィルムと偏光子とが、活性エネルギー線硬化性接着剤により貼合されていることがより好ましい。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、下記紫外線硬化型接着剤を用いることが好ましい。
本発明においては、光学フィルムと偏光子との貼合に紫外線硬化型接着剤を適用することにより、薄膜でも強度が高く、平面性に優れた偏光板を得ることができる。
〈紫外線硬化型接着剤の組成〉
偏光板用の紫外線硬化型接着剤組成物としては、光ラジカル重合を利用した光ラジカル重合型組成物、光カチオン重合を利用した光カチオン重合型組成物、並びに光ラジカル重合及び光カチオン重合を併用したハイブリッド型組成物が知られている。
光ラジカル重合型組成物としては、特開2008−009329号公報に記載のヒドロキシ基やカルボキシ基等の極性基を含有するラジカル重合性化合物及び極性基を含有しないラジカル重合性化合物を特定割合で含む組成物)等が知られている。特に、ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の好ましい例には、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が含まれる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物の例には、N置換(メタ)アクリルアミド系化合物、(メタ)アクリレート系化合物などが含まれる。(メタ)アクリルアミドは、アクリアミド又はメタクリアミドを意味する。
また、光カチオン重合型組成物としては、特開2011−028234号公報に開示されているような、(α)カチオン重合性化合物、(β)光カチオン重合開始剤、(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び(δ)ナフタレン系光増感助剤の各成分を含有する紫外線硬化型接着剤組成物が挙げられる。ただし、これ以外の紫外線硬化型接着剤が用いられてもよい。
(1)前処理工程
前処理工程は、光学フィルムの偏光子との接着面に易接着処理を行う工程である。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
(紫外線硬化型接着剤の塗布工程)
紫外線硬化型接着剤の塗布工程としては、偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記紫外線硬化型接着剤を塗布する。偏光子又は光学フィルムの表面に直接、紫外線硬化型接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特段の限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の湿式塗布方式が利用できる。また、偏光子と光学フィルムの間に、紫外線硬化型接着剤を流延させたのち、ローラー等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(2)貼合工程
上記の方法により紫外線硬化型接着剤を塗布した後は、貼合工程で処理される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に紫外線硬化型接着剤を塗布した場合、そこに光学フィルムが重ね合わされる。又はじめに光学フィルムの表面に紫外線硬化型接着剤を塗布する方式の場合には、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子と光学フィルムの間に紫外線硬化型接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と光学フィルムとが重ね合わされる。そして、通常は、この状態で両面の光学フィルム側から加圧ローラー等で挟んで加圧することになる。加圧ローラーの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置される加圧ローラーは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(3)硬化工程
硬化工程では、未硬化の紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射して、カチオン重合性化合物(例えば、エポキシ化合物やオキセタン化合物)やラジカル重合性化合物(例えば、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物等)を含む紫外線硬化型接着剤層を硬化させ、紫外線硬化型接着剤を介して重ね合わせた偏光子と光学フィルムを接着させる。偏光子の片面に光学フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は光学フィルム側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面に光学フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ紫外線硬化型接着剤を介して光学フィルムを重ね合わせた状態で、紫外線を照射し、両面の紫外線硬化型接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
紫外線の照射条件は、本発明に適用する紫外線硬化型接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。紫外線の照射量は積算光量で50〜1500mJ/cm2の範囲であることが好ましく、100〜500mJ/cm2の範囲であるのがさらに好ましい。
偏光板の製造工程を連続ラインで行う場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1〜500m/minの範囲、より好ましくは5〜300m/minの範囲、さらに好ましくは10〜100m/minの範囲である。ライン速度が1m/min以上であれば、生産性を確保することができ、又は光学フィルムへのダメージを抑制することができ、耐久性に優れた偏光板を作製することができる。また、ライン速度が500m/min以下であれば、紫外線硬化型接着剤の硬化が十分となり、目的とする硬度を備え、接着性に優れた紫外線硬化型接着剤層を形成することができる。
〔6.3〕
偏光子の本発明の光学フィルムとは反対側に配置されるフィルムは、偏光子の保護フィルムとして機能するフィルムであることが好ましい。
このような保護フィルムとしては、本発明の光学フィルムを用いてもよいが、例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC2UA、KC4UA、KC6UAKC、2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フイルム(株)製)も好ましく用いることができる。
また、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の樹脂フィルム、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、シクロオレフィンコポリマー、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標))、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、アクリロイル化合物等の樹脂フィルムが挙げられる(括弧内はガラス転移温度Tgを示す。)。これら樹脂基材のうち、コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)、ポリカーボネート(略称:PC)等のフィルムが可撓性の樹脂基材として好ましく用いられる。
上記保護フィルムの厚さは、特に制限されないが、10〜200μm程度とすることができ、好ましくは10〜100μmの範囲内であり、より好ましくは10〜70μmの範囲内である。
〔7〕表示装置
上記本発明の光学フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に用いることによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。
本発明の偏光板は、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。好ましくはVA(MVA,PVA)型液晶表示装置及びIPS型液晶表示装置である。
液晶表示装置には、通常視認側の偏光板とバックライト側の偏光板の2枚の偏光板が用いられるが、本発明の偏光板を両方の偏光板として用いることも好ましく、片側の偏光板として用いることも好ましい。特に本発明の偏光板は外部環境に直接触れる視認側の偏光板として用いることが好ましく、その際は、本発明の光学差フィルムが光学補償フィルムである場合は、液晶セル側に配置されることが好ましい。
また、バックライト側の偏光板は本発明以外の偏光板を用いることもでき、その場合は偏光子の両面を、例えば市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC2UA、KC4UA、KC6UA、KC2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタ(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フイルム(株)製等)を貼合した偏光板が好ましく用いられる。
また、バックライト側の偏光板として、偏光子の液晶セル側に本発明の光学フィルムを用い、反対側の面に上記市販の保護フィルムや位相差フィルム、ポリエステルフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルムを貼合した偏光板も好ましく用いることができる。
本発明の偏光板を用いることで、特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、表示ムラ、正面コントラストなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
また、本発明の光学フィルムは溶液流延製膜法によって製膜した後、長手方向に対して45±10°の範囲内の方向に斜め延伸し、偏光子と長手方向を合わせるように貼合することで、円偏光板を作製することができ、当該円偏光板は、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置の偏光板として、反射防止性、色ムラの低減した円偏光板として有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
<脂環式炭化水素単量体を含む重合体(ポリシクロオレフィン)の合成>
脂環式炭化水素単量体(ノルボルネン系単量体)として、下記化合物(前記例示化合物27)を100質量部と、分子量調節剤である1−ヘキセンを3.6質量部と、トルエンを200質量部とを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これに、重合触媒としてトリエチルアルミニウム((C2H5)3Al)1.5モル/Lのトルエン溶液を0.17質量部と、t−ブタノ−ル及びメタノールで変性した六塩化タングステン(WCl6)を含み、t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35:0.3:1(モル比)であるWCl6溶液(濃度0.05モル/L)を1.0質量部とを加え、80℃で3時間加熱攪拌して開環重合反応させて、重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は98%であった。
得られた重合体溶液の4000質量部をオートクレーブに入れ、この重合体溶液にRuHCl(CO)[P(C6H5)3]3を0.48質量部加え、水素ガス圧を10MPa、反応温度160℃の条件で3時間加熱攪拌して、水素添加反応を行った。
得られた反応溶液を冷却した後、水素ガスを放圧し、この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収した。回収した凝固物を乾燥させて、ポリシクロオレフィン1を得た。
得られたポリシクロオレフィン1の重量平均分子量を前述の方法にて測定したところ、重量平均分子量は140000であった。また、このポリシクロオレフィンの屈折率を前述の方法にて測定したところ1.51であった。
<ウレタン重合体1〜14の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた四つ口フラスコに、下記表I記載の原料を加え、75℃で1時間反応させ、ポリウレタンのジメチルホルムアミド溶液を得た。
反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液をメタノール1500質量部へ激しく撹拌しながら投入すると、白色固体が析出した。
白色固体を吸引濾過により濾別し、60℃で終夜乾燥した。さらに、この白色固体をもう一度、大量のメタノールで洗浄し、吸引濾過により濾別し、得られた白色固体を60℃で12時間乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥してウレタン重合体1〜14を得た。
ウレタン重合体11〜14については反応時間を調整することで所望の重量平均分子量に調整した。
なお、用いたジオール及びイソシアネートの構造は、以下のとおりである。
<ポリエステル可塑剤の合成>
1,2−プロピレングリコールを251g、無水フタル酸を278g、アジピン酸を91g、安息香酸を610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.191g、それぞれを温度計、撹拌器及び緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中で230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温した。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、ポリエステル可塑剤を得た。常法により測定した結果、酸価は0.10mgKOH/g、数平均分子量は450であった。
<有機マット剤の製造>
(コア粒子の製造)
攪拌機、温度計を備えた重合器に、脱イオン水1000gを入れ、そこへメタクリル酸メチル200g、t−ドデシルメルカプタン6gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら70℃まで加温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム1gを溶解した脱イオン水20gを添加した後、10時間重合させた。得られたエマルジョン中のコア粒子の平均粒子径は、0.44μmであった。
(重合体粒子の製造)
攪拌機、温度計を備えた重合器に、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸アンモニウム3gを溶解した脱イオン水800gを入れ、そこへ単量体混合物としてアクリル酸メチル144g、スチレン22g及びエチレングリコールジメタクリレート34gと、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gとの混合液を入れた。次いで、混合液をT.Kホモミキサー(特殊機化工業社製)にて攪拌して、分散液を得た。
さらに、分散液にコア粒子を含む上記エマルジョン60gを加え、30℃で1時間攪拌して種粒子に単量体混合物を吸収させた。次いで、吸収させた単量体混合物を窒素気流下で50℃、5時間加温することで重合させた後、室温(約25℃)まで冷却することで重合体粒子を含むスラリーを得た。得られた重合体粒子(有機微粒子)の平均粒子径は、0.3μmであった。また、この重合体粒子の屈折率を前述の方法にて測定したところ1.51であった。
このスラリーを噴霧乾燥機としての坂本技研社製のスプレードライヤー(型式:アトマイザーテイクアップ方式、型番:TRS−3WK)で次の条件下にて噴霧乾燥して重合体粒子を得た。この重合体粒子を有機マット剤として用いた。
供給速度:25ml/min
アトマイザー回転数:11000rpm
風量:2m3/min
噴霧乾燥機のスラリー入口温度:130℃
重合体粒子出口温度:70℃
平均粒子径は、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ−1000Z)で測定した。
<マット剤添加液1の調製>
下記材料をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、マット剤含有量が4.0質量%のマット剤添加液1を調製した。
上記有機マット剤 4質量部
ジクロロメタン 96質量部
<ドープの調製>
はじめに、加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを投入した。次いで、前記加圧溶解タンクに、ポリシクロオレフィン1を含む重合体、ウレタン重合体1を撹拌しながら投入し、下記組成のドープを調整した。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244(濾過精度0.005mm)を使用して濾過流量300L/m2・h、濾圧1.0×106Paにて濾過した。
〈ドープの組成〉
ポリシクロオレフィン1 90.0質量部
ウレタン重合体1 10.0質量部
ジクロロメタン 300.0質量部
エタノール 20.0質量部
上記ドープにおける固形物は、ポリシクロオレフィン1(90.0質量%)、ウレタン重合体1(10.0質量%)の組成を有する。
<マット剤含有ドープの調製>
はじめに、加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを投入した。次いで、前記加圧溶解タンクに、ポリシクロオレフィン1、ウレタン重合体9を撹拌しながら投入し、さらに4質量%マット剤添加液を添加して、下記組成のドープを調整した。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244(濾過精度0.005mm)を使用して濾過流量300L/m2・h、濾圧1.0×106Paにて濾過した。
〈ドープの組成〉
ポリシクロオレフィン1 88.0質量部
ウレタン重合体9 10.0質量部
ジクロロメタン 250.0質量部
エタノール 20.0質量部
4質量%マット剤添加液1 50.0質量部(マット剤量:2.0質量部)
上記ドープにおける固形物は、ポリシクロオレフィン1(88.0質量%)、ウレタン重合体9(10.0質量%)、マット剤(2.0質量%)の組成を有する。
<溶液流延製膜による光学フィルムの作製>
上記調製したドープを加圧溶解タンクからギヤポンプで加圧ダイスまで送液し、ステンレス製無端支持体(ベルト)上に流延(キャスト)した。流延したドープ中の残留溶媒量が40質量%になるまで溶媒を蒸発させた後、得られた膜状物をステンレス製無端支持体上から剥離張力130N/mで剥離した。剥離した膜状物を乾燥しながらテンター延伸装置に搬送し、幅方向に延伸倍率50%(1.5倍)でテンター中を搬送した。このとき、延伸時の残留溶媒量が11質量%になるように、剥離からテンターまでの乾燥条件を調整した。また、テンター延伸装置の温度は160℃にし、延伸速度は200%/minとした。
次いで、乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。その後、得られた光学フィルムの両端部をスリットした後、エンボス加工を施し、乾燥膜厚が40μmの光学フィルム1を作製した 同様にして、表IIに記載の組成の光学フィルム1〜24を作製した。なお、光学フィルム23及び24は上記又はマット剤含有ドープを用いた。
≪評価≫
得られた光学フィルム1〜24を用いて下記の評価を実施した。
(1)ヘーズ
光学フィルムのヘーズは、JIS K−7136に準拠して、NDH−2000(日本電色工業株式会社製)を用い、光源は、5V9Wのハロゲン球を用い、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)とし、測定は、23℃・55%RHの条件下にて行った。
光学フィルムとして用いるためには、ヘーズが1%より大きくなると透明性の観点で劣るため好ましくない。好ましくは0.5%以下、さらには0.2%以下が好ましい。
(2)面内位相差値(Ro)
光学フィルムの面内位相差値(Ro)は、温度23℃、相対湿度55%の環境下、波長550nmで、前述の方法にて面内位相差値(Ro)を、Axometrics社製Axoscanを用いて、測定した。
(3)耐光性
光学フィルムを100mm×100mmの大きさにカットし、キセノンウェザーメーターとして、アトラス・ウエザオメーターCi3000+(アトラス社製)を用い、ISO4292−2に準拠して60W/m2の強度で100時間の光照射を行った。
照射前後の光学フィルムについてイエローインデックス(YI)を測定し、その前後の差を△YIの値とした。
イエローインデックスは、JIS K−7105−6.3に記載の方法で求める。具体的なイエローインデックス値の測定方法としては、(株)日立ハイテクノロジー製の分光光度計U−3200と附属の彩度計算プログラム等を用いて、色の三刺激値X、Y、Zを求め、下式に従ってイエローインデックス値を求めた。
イエローインデックス(YI)=100(1.28X−1.06Z)/Y
イエローインデックス(YI)が1.2未満であると、透明性が高く、光学フィルムに好ましく用いることができる。
△YI耐光後の値が0.8より大きいと光学フィルムに着色が生じているため、この光学フィルムを液晶表示装置に用いた場合に、耐久性の点で好ましくない。しがたがって△YIの値は0.8未満であることが好ましい。
(4)膜状物の強度
溶媒含有状態での膜状物の強度が十分でないと、膜状物の搬送および延伸時のテンターのクリップ部や、スリット時の端部から変形部や裂けや目が発生する。極端な場合は、この変形部や裂け目から、搬送中の膜状物(又はフィルム)が完全に破断してしまい、著しく生産性が低下する。
したがって、溶媒含有状態での膜状物の強度は、剥離からテンターでの延伸終了までの膜状物を目視観察し、1000mの製膜を行う間に変形部や裂けや目が確認された回数をカウントした。
変形部や裂けや目が発生しない :◎
変形部や裂けや目が5回未満 :〇
変形部や裂けや目が5〜10回未満:△
変形部や裂けや目が10回以上 :×
光学フィルムの構成及び以上の評価結果を表IIに示す。
表IIから、本発明の構成である光学フィルムは、ヘーズが低く、耐光性に優れ、フィルム製造時の破断が低減された、位相差発現性に優れる光学フィルムであることが明らかである。