JP2020084097A - ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】近年の空気入りタイヤには、さらなる高速操縦安定性および低転がり抵抗性が求められ、この点を満たすためにビードフィラーに関しては高硬度であること、また低発熱性であることが求められている。さらに優れた加工性も求められる。【解決手段】天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴム50〜80質量部と、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムおよび/またはブタジエンゴム20〜50質量部とを含むジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを40〜90質量部、および炭素数6〜24の脂肪酸を由来とするポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5〜20質量部配合してなり、かつ加硫後の硬度(20℃)が70以上であることを特徴とするゴム組成物によって、上記課題を解決した。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、硬度、発熱性および加工性を高め得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
近年の空気入りタイヤには、さらなる高速操縦安定性および低転がり抵抗性が求められ、この点を満たすためにビードフィラーに関しては高硬度であること、また低発熱性であることが求められている。従来、高硬度化を図るために小粒径のカーボンブラックを使用する、カーボンブラックの配合量を増加させる、熱硬化性樹脂を配合する、等の手法があるが、加工性や発熱性が悪化してしまうという問題点があった。とくに加工性に関しては、経時タック性(経時粘着力)が求められている。高い経時タック性を備えることにより、スプライス作業性が向上し、各部材の貼り合わせを容易となすことができる。
当業界において、硬度、発熱性および加工性を高次にバランスすることは困難な事項とされている。
下記特許文献1には、グリセリン脂肪酸エステルからなり、該グリセリン脂肪酸エステルが、グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのエステルであって、該グリセリン脂肪酸エステルを構成する2種以上の脂肪酸のうち、最も多い脂肪酸成分が全脂肪酸中に10〜90質量%であり、さらにモノエステル成分をグリセリン脂肪酸エステル中に50〜100質量%含むシリカ配合ゴム組成物用添加剤組成物が開示されている。
しかし、特許文献1に開示された技術では、硬度、発熱性および加工性を高次にバランスするには至っていない。
国際公開WO2016/139916号パンフレット
したがって本発明の目的は、硬度、発熱性および加工性を共に改善し得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成のジエン系ゴムに対し、カーボンブラックを特定量で配合するとともに、さらに特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを特定量でもって配合し、かつ組成物の硬度を規定することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴム50〜80質量部と、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムおよび/またはブタジエンゴム20〜50質量部とを含むジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを40〜90質量部、および炭素数6〜24の脂肪酸を由来とするポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5〜20質量部配合してなり、かつ加硫後の硬度(20℃)が70以上であることを特徴とするゴム組成物。
2.前記脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸であることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに熱硬化性樹脂を1〜20質量部配合してなることを特徴とする前記1または2に記載のゴム組成物。
4.前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが下記式(1)で表されることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
Figure 2020084097
式(1)中、Rは前記脂肪酸に由来する炭素鎖を表し、nは0〜8を表す。
5.前記式(1)中、nが0または1であることを特徴とする前記4に記載のゴム組成物。
6.タイヤビードフィラーに用いられる、前記1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
7.前記1〜5のいずれかに記載のゴム組成物をビードフィラーに使用した空気入りタイヤ。
本発明によれば、特定の組成のジエン系ゴムに対し、カーボンブラックを特定量で配合するとともに、さらに特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを特定量でもって配合し、かつ組成物の硬度を規定したので、硬度、発熱性および加工性を共に改善し得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)および/または合成イソプレンゴム(IR)と、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)および/またはブタジエンゴム(BR)とを必須成分とする。NRおよび/またはIRの配合量は、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに50〜80質量部であることが必要であり、60〜75質量部であることが好ましい。またSBRおよび/またはBRの配合量は、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに20〜50質量部であることが必要であり、25〜40質量部であることが好ましい。NRおよび/またはIRと、SBRおよび/またはBRの配合量が上記範囲を外れると本発明の効果を奏し難い。なお、上記以外の他のジエン系ゴムを用いることができ、例えばアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
(カーボンブラック)
本発明で使用するカーボンブラックは、硬度および発熱性の観点から、窒素吸着比表面積(NSA)が25〜85m/gであることが好ましく、35〜75m/gであることがさらに好ましい。なお、窒素吸着比表面積(NSA)はJIS K6217−2に準拠して求めた値である。
(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数6〜24の脂肪酸を由来とするエステルである。
脂肪酸としては、具体的には、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の直鎖脂肪酸類が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、1種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の効果をさらに高めるという観点から、前記脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸が好ましい。
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ペイン効果を低減するとともに、分子量が適切でありゴム組成物外部にマイグレーションしにくい、という理由から、硬度、発熱性および加工性を同時に高めることができる。なお、当該効果は、モノグリセリン脂肪酸エステルには奏されない作用効果である。
また、本発明の効果をさらに高めるという観点から、本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、下記式(1)で表されるモノ脂肪酸エステルであることが好ましい。
Figure 2020084097
式(1)中、Rは前記脂肪酸に由来する炭素鎖を表し、nは0〜8を表し、0〜3が好ましく、0または1であることがとくに好ましい。
なお、ポリグリセリンの第2級ヒドロキシ基を選択的にエステル化したグリセリンエステル化合物では、前記式(1)で表されるモノ脂肪酸エステルに比べて、硬度、発熱性および加工性を同時に改善するという効果に乏しい。
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、市販されているものであることができ、式(1)で表されるモノ脂肪酸エステルとして、例えば理研ビタミン株式会社製DS100A(ジグリセリンモノステアレート)、DO100V(ジグリセリンモノオレート)、S71D(ジグリセリンステアレート)、ポエムJ−4081V(テトラグリセリンステアレート)、J−0021(デカグリセリンラウレート)、J−0081HV(デカグリセリンステアレート)、J−0381V(デカグリセリンオレート)等が挙げられる。
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを40〜90質量部、および炭素数6〜24の脂肪酸を由来とするポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5〜20質量部配合してなることを特徴とする。
カーボンブラックの配合量が40質量部未満であると硬度が低下し、逆に90質量部を超えると発熱性が悪化する。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が0.5質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量部を超えると加工性(とくに経時のタック性)が悪化する。
また、本発明のゴム組成物において、カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、50〜80質量部であることが好ましい。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1〜20質量部であることが好ましい。
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
なお本発明におけるゴム組成物は、硬度を高めるという観点から、熱硬化性樹脂をさらに配合するのが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、ノボラック型フェノール系樹脂が好適であり、具体的には、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型レゾルシン樹脂、オイル変性フェノール樹脂のいずれかあるいはそれらの混合物が挙げられる。
また本発明で使用するノボラック型フェノール系樹脂は、市販されているものを利用することができ、例えば田岡化学工業(株)製スミカノール610、620、インドスペック社製ペナコライトレジンB−18−S、住友ベークライト(株)製スミライトレジンPR−YR−170等が挙げられる。
また硬化剤を使用することもでき、その種類としてはとくに制限されないが、例えばヘキサメチレンテトラミン、HMMM(ヘキサメトキシメチロールメラミンの部分縮合物)、PMMM(ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテルの部分縮合物)、ヘキサエトキシメチルメラミン、パラ−ホルムアルデヒドのポリマー、メラミンのN−メチロール誘導体等が挙げられ、本発明の効果の観点から、ヘキサメチレンテトラミン、HMMMおよびPMMMからなる群から選択された1種以上が好ましい。
熱硬化性樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、例えば1〜20質量部であり、3〜15質量部が好ましい。硬化剤の配合量は、前記熱硬化性樹脂に対し、例えば5〜15質量%であり、8〜12質量%が好ましい。
本発明におけるゴム組成物は、 K6253に準拠して20℃にて測定した硬度が70以上であるのが好ましく、80以上であるのがさらに好ましい。このような硬度を備えることにより、優れた高速操縦安定性および低転がり抵抗性が得られる。
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造することができ、硬度、発熱性および加工性に優れることから、タイヤビードフィラーに用いることがとくに好ましい。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
標準例、実施例1〜3および比較例1〜3
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
硬度:JIS K6253に準拠して加硫ゴム試験片の硬度を20℃にて測定した。
粘度:JIS K6300に準拠して、L形ローターを使用し、ムーニー粘度ML(1+4)100℃を求めた。結果は標準例の値を100として指数表示した。指数が小さいほどムーニー粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
tanδ(60℃)(発熱性):JIS K6394に準拠して60℃で試験した。結果は、標準例の値を100として指数表示した。指数が小さいほど、低発熱性であることを示す。
経時タック性:得られたゴム組成物を、シート状試料(幅10mm×長さ200mm×厚さ2mm)に未加硫のまま成形し、これを金属円盤にセットした。更に同じゴム組成物で被圧着用試料(幅70mm×長さ100mm×厚さ2mm)を未加硫のまま成形した。この被圧着用試料にシート状試料を4.9Nで圧着し、3時間経過後、貼り付けたシート状試料(未加硫)を剥がし、剥がすのに必要な粘着力をPICMA式タックメーター(東洋精機製作所社製)により測定した。得られた結果は、標準例の値を100として指数表示した。この指数が大きいほど経時タック性(経時粘着力)が高く、各部材を貼り合わせを容易となすことができるため、加工性に優れていることを意味する。
結果を表1に併せて示す。
Figure 2020084097
*1:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*2:NR(STR)
*3:モノグリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社製S100)
*4:ジグリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社製DS100A、前記式(1)においてn=0であり、R−COOはステアリン酸に由来する)
*5:ジグリセリンモノオレート(理研ビタミン株式会社製DO100V、前記式(1)においてn=0であり、R−COOはオレイン酸に由来する)
*6:ジグリセリンステアレート(理研ビタミン株式会社製S71D、前記式(1)においてn=0であり、R−COOはステアリン酸に由来する)
*7:カーボンブラックGPF(東海カーボン社製商品名N660)
*8:熱硬化性樹脂(住友ベークライト(株)製スミライトレジンPR−YR−170)
*9:硬化剤(大内新興化学工業(株)製ヘキサメチレンテトラミン)
*10:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸YR)
*11:亜鉛華(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*12:老化防止剤(Solutia Europe社製Santoflex 6PPD)
*13:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*14:硫黄(軽井沢精錬所社製油処理イオウ)
*15:加硫促進剤CBS(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*16:加硫促進剤H(大内新興化学工業(株)製17セラーH)
表1の結果から、実施例1〜3のゴム組成物は、特定の組成のジエン系ゴムに対し、カーボンブラックを特定量で配合するとともに、さらに特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを特定量でもって配合したので、標準例に比べて、高い硬度を有し、粘度、発熱性および経時タック性を共に改善し得ることが分かった。
これに対し、比較例1はモノグリセリンモノ脂肪酸エステルを配合した例であるので、標準例に対し経時タック性が悪化している。
比較例2はポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、標準例とほぼ同様の結果を示した。
比較例3はポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、標準例に対し経時タック性が悪化した。

Claims (7)

  1. 天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴム50〜80質量部と、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムおよび/またはブタジエンゴム20〜50質量部とを含むジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックを40〜90質量部、および炭素数6〜24の脂肪酸を由来とするポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5〜20質量部配合してなり、かつ加硫後の硬度(20℃)が70以上であることを特徴とするゴム組成物。
  2. 前記脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに熱硬化性樹脂を1〜20質量部配合してなることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
  4. 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが下記式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
    Figure 2020084097
    式(1)中、Rは前記脂肪酸に由来する炭素鎖を表し、nは0〜8を表す。
  5. 前記式(1)中、nが0または1であることを特徴とする請求項4に記載のゴム組成物。
  6. タイヤビードフィラーに用いられる、請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物をビードフィラーに使用した空気入りタイヤ。
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