JP7188110B2 - ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
トレッド部は、キャップトレッドとアンダートレッドとからなり、このアンダートレッドとカーカス層との間に、ベルト層が配設されている。
このベルト層には、強い衝撃や大きな荷重がかかるため、補強材としてスチールコードが用いられている。このようなスチールコードを被覆するゴムは、スチールコードとの良好な接着性が必要とされる。
スチールコードとゴムとの接着性を高めるために、スチールコードにはブラスメッキを施し、ゴムには有機酸コバルト塩を配合する手法がよく知られている。
このように、加工性、経時タック性、発熱性を同時に満足させることは当業界では困難な事項であると認識されている。
しかし、特許文献1に開示された技術では、加工性、経時タック性、発熱性を同時に十分に満足するには至っていない。
すなわち本発明は以下の通りである。
2.前記脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸であることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが下記式(1)で表されることを特徴とする前記1または2に記載のゴム組成物。
4.前記式(1)中、nが0または1であることを特徴とする前記3に記載のゴム組成物。
5.タイヤベルトコートに用いられる、前記1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
6.前記1~4のいずれかに記載のゴム組成物をベルト層に用いた空気入りタイヤ。
本発明で使用されるジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)および/または合成イソプレンゴム(IR)を必須成分とする。NRおよび/またはIRの配合量は、本発明の効果の観点から、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、90質量部以上が好ましい。なお、NR、IR以外のジエン系ゴムを使用することもでき、例えばスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等を挙げることができる。また、ジエン系ゴムの分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
本発明で使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(N2SA)が30~100m2/gであることが必要である。窒素吸着比表面積(N2SA)が30m2/g未満であると、補強性が大きく低下する。逆に窒素吸着比表面積(N2SA)が100m2/gを超えると、発熱性が悪化する。なお、本発明の効果が向上するという観点から、35~95m2/gであることが好ましい。なお、窒素吸着比表面積(N2SA)はJIS K6217-2に準拠して求めた値である。
本発明で使用する有機酸コバルト塩としては、例えばナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト、ホウ酸ネオデカン酸コバルト、アセチルアセトナートコバルト等を例示することができる。また、ホウ素を含む有機酸コバルト塩、例えばオルトホウ酸コバルト等も使用できる。
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数6~24の脂肪酸を由来とするエステルである。
脂肪酸としては、具体的には、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の直鎖脂肪酸類が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、1種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の効果をさらに高めるという観点から、前記脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸が好ましい。
本発明で使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリン脂肪酸エステルと比較して分子量が高いため、ゴム中での移行速度が遅く、ブルームを緩和することができるため経時におけるタック低下による作業性悪化を防止することができ、この効果により加工性、経時タック性および発熱性を同時に改善することができる。なお、当該効果は、モノグリセリン脂肪酸エステルには奏されない作用効果である。
なお、ポリグリセリンの第2級ヒドロキシ基を選択的にエステル化したグリセリンエステル化合物では、前記式(1)で表されるモノ脂肪酸エステルに比べて、加工性、経時タック性および発熱性を改善するという効果に乏しい。
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(N2SA)が30~100m2/gのカーボンブラックを40~80質量部、有機酸コバルト塩をコバルト量として0.01~0.30質量部、および炭素数6~24の脂肪酸を由来とするポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5~20質量部配合してなることを特徴とする。
前記カーボンブラックの配合量が30質量部未満では、粘度が低くなり過ぎて加工性が悪化する。または80質量部を超えると、加工性、経時タック性および発熱性がいずれも悪化する。
前記有機酸コバルト塩の配合量がコバルト量として0.01質量部未満では配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に0.30質量部を超えると経時タック性および発熱性がいずれも悪化する。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が0.5質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量部を超えると経時タック性が悪化する。
前記有機酸コバルト塩の配合量は、コバルト量として、ジエン系ゴム100質量部に対し、0.15~0.30質量部であることが好ましい。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1~10質量部であることが好ましい。
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤;樹脂;硬化剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で170℃、10分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
結果を表1に併せて示す。
*2:SBR(日本ゼオン(株)製Nipol 1502)
*3:モノグリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社製S100)
*4:ジグリセリンモノステアレート(理研ビタミン株式会社製DS100A、前記式(1)においてn=0であり、R-COOはステアリン酸に由来する)
*5:ジグリセリンモノオレート(理研ビタミン株式会社製DO100V、前記式(1)においてn=0であり、R-COOはオレイン酸に由来する)
*6:ジグリセリンステアレート(理研ビタミン株式会社製S71D、前記式(1)においてn=0であり、R-COOはステアリン酸に由来する)
*7:カーボンブラック1(東海カーボン(株)製シースト300、窒素吸着比表面積(N2SA)=84m2/g)
*8:有機酸コバルト塩1(DIC CORPORATION社製ステアリン酸コバルト、コバルト含量=9.5質量%)
*9:有機酸コバルト塩2(DIC CORPORATION社製DICNATE NBC-II、ホウ酸ネオデカン酸コバルト、コバルト含量=22.2質量%)
*10:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*11:老化防止剤(FLEXSYS社製SANTOFLEX 6PPD)
*12:フェノール系樹脂(INDSPEC社製PENACOLITE RESIN B-18-S、レゾルシン樹脂)
*13:硬化剤(CYTEC INDUSTRIES社製CYREZ 964RPC、ヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM))
*14:硫黄(四国化成工業(株)製ミュークロンOT-20、硫黄含有量=80質量%)
*15:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製DZ)
*16:カーボンブラック2(東海カーボン(株)製シースト7HM、窒素吸着比表面積(N2SA)=126m2/g)
これに対し、比較例1は特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを配合せず、有機酸コバルト塩を単に増量した例であるので、標準例に対し発熱性が悪化した。
比較例2は、モノグリセリンモノ脂肪酸エステルを配合した例であるので、標準例に対し経時タック性が悪化した。
比較例3はポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、標準例とほぼ同様の結果を示した。
比較例4はポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、標準例に対し経時タック性が悪化した。
比較例5はNRの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、発熱性が悪化した。
比較例6はカーボンブラックの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、粘度が低くなり過ぎて加工性が悪化した。
比較例7はカーボンブラックの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、標準例に対し粘度、経時タック性および発熱性がいずれも悪化した。
比較例8はカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が本発明の範囲外であるので、標準例に対し粘度、経時タック性および発熱性がいずれも悪化した。
Claims (6)
- 天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを90質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(N2SA)が30~100m2/gのカーボンブラックを40~80質量部、有機酸コバルト塩をコバルト量として0.01~0.30質量部、および炭素数6~24の脂肪酸を由来とするポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5~20質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
- 前記脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
- 前記式(1)中、nが0または1であることを特徴とする請求項3に記載のゴム組成物。
- タイヤベルトコートに用いられる、請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
- 請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物をベルト層に用いた空気入りタイヤ。
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