本発明の画像形成方法は、少なくとも、離型剤と結着樹脂とを含有する静電荷像現像用トナーと画像形成装置とで転写材上にトナー画像を定着する画像形成方法であって、前記静電荷像現像用トナーが、90℃における貯蔵弾性率G´(90)が1.0×104〜2.5×105Paの範囲内であり、150℃における貯蔵弾性率G´(150)が1.0×103〜1.5×104Paの範囲内にあり、かつ、前記転写材を挟持して定着ニップを形成する定着部材と加圧部材の表面速度を調整して、前記転写材上にトナー画像を定着することを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記画像形成装置が、少なくとも、前記静電荷像現像用トナーを使用して転写材上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記転写材の上面に対向する定着部材と、前記定着部材と対向して定着ニップを形成する加圧部材と、前記定着部材又は前記加圧部材の少なくとも一方を駆動する駆動源と、前記定着部材と前記加圧部材の表面速度を制御する駆動制御部とを有し、前記駆動制御部は、前記定着部材と前記加圧部材で前記転写材を挟持し前記トナー画像を定着する際の、前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との差を調整することが、好ましい。
また、前記150℃における貯蔵弾性率G´(150)が、2.5×103〜1.0×104Paの範囲にあることにより、良好な低光沢度領域での光沢制御性と分離性を得ることができる。
さらに、前記静電荷像現像用トナーの高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定されるアルミニウムの濃度が、300〜1500ppmの範囲内であることにより、高温領域の弾性を高く保つことができ、良好な低光沢度領域での光沢制御性と分離性を得ることができる。
また、前記静電荷像現像用トナーが、結晶性ポリエステルを3〜15質量%の範囲で含有することにより、良好な低温定着性が得られる。
また、前記加圧部材のアスカーC硬度と前記定着部材のアスカーC硬度の差が、40°以上で前記加圧部材が硬いことにより、光沢制御幅をより効果的に広くすることができる。
加えて、前記定着部材と加圧部材の表面速度差が、±10%の範囲であることにより、良好な分離性を得つつ光沢制御幅をより効果的に広くすることができる。
本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置は、少なくとも、前記静電荷像現像用トナーを使用して転写材上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記転写材の上面に対向する定着部材と、前記定着部材と対向して定着ニップを形成する加圧部材と、前記定着部材又は前記加圧部材の少なくとも一方を駆動する駆動源と、前記定着部材と前記加圧部材の表面速度に差が生じるように、前記定着部材と前記加圧部材の表面速度を制御する駆動制御部を備える定着部を有することを特徴とする。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明の画像形成方法の概要≫
本発明の画像形成方法は、少なくとも、離型剤と結着樹脂とを含有する静電荷像現像用トナーと画像形成装置とで転写材上にトナー画像を定着する画像形成方法であって、前記静電荷像現像用トナーが、90℃における貯蔵弾性率G´(90)が1.0×104〜2.5×105Paの範囲内であり、150℃における貯蔵弾性率G´(150)が1.0×103〜1.5×104Paの範囲内にあり、かつ、前記転写材を挟持して定着ニップを形成する定着部材と加圧部材の表面速度を調整して、前記転写材上にトナー画像を定着することを特徴とする。
本発明において、「定着部材」とは、転写材に対向して静電荷像現像用トナーに接する側の部材、具体的には加熱ベルトや加熱ローラーをいう。また、「加圧部材」とは、前記定着部材に対向し、転写材を前記定着部材に押圧する部材をいい、加圧ローラーであることが一般的である。
本発明では、温度90℃のときの貯蔵弾性率を「G´(90)」とし、温度150℃のときの貯蔵弾性率を「G´(150)」と表記する。
また、前記貯蔵弾性率G´(90)及びG´(150)は以下のようにして測定される。
<貯蔵弾性率の測定>
トナー粒子0.2gを計量し、圧縮成形機で25MPaの圧力を印加して加圧成型を行い、直径10mmの円柱状ペレットを作製した。レオメーター「ARES G2」(TA instrument製)を使用し、直径8mmのパラレルプレートを上下セットで用いて、周波数1Hzの条件で測定を行った。サンプルセットを100℃にて行い、上記プレート間の隙間を一度1.6mmにセットした後にプレート間からはみ出したサンプルを掻き取り、1.4mmに上記隙間をセットし、上記ペレットに軸力をかけつつ25℃まで冷却し、10分間静置した。その後、当該軸力を止め25℃から200℃まで貯蔵弾性率(G´)の昇温測定を行った。昇温速度は3℃/分で測定を行い、温度分散のカーブを得た。当該温度分散のカーブに基づいて、測定温度が90℃及び150℃のときの貯蔵弾性率G´(90)とG´(150)とを測定した。貯蔵弾性率の単位は(Pa)である。
以下に詳細な測定条件を示す。
周波数(Frequency):1Hz
昇温速度(Ramp rate):3℃/分
軸力(Axicial force):0g
感度(sensitivity):10g
初期ひずみ(Initial strain):0.01%
ひずみ調整(Strain adjust):30.0%
最小ひずみ(Minimum strain):0.01%
最大ひずみ(Maximum strain):10.0%
最小トルク(Minimum torque):1g・cm
最大トルク(Maximum torque):80g・cm
測定間隔(Sampling interval):1.0℃/pt
〈アルミニウム含有量の測定〉
また、前記静電荷像現像用トナーの高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定されるアルミニウムの濃度が、300〜1500ppmの範囲内であることにより、高温領域の弾性を高く保つことができ、良好な低光沢度領域での光沢制御性と分離性を得ることができる。
[アルミニウム含有量の測定方法]
各トナーのトナー母体粒子中に存在するアルミニウム含有量を、以下の方法(酸分解:高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)により測定した。
<前処理>
得られたトナー3質量部をポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2質量%水溶液35質量部に添加して分散させた後、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、US−1200T)により25℃で5分間処理を行い、外添剤をトナー表面から取り除き、金属元素量測定用のトナー母体粒子を得た。
上記トナー母体粒子100mgを密閉式マイクロ波分解装置「マイルストーンゼネラル社製、ETHOS1」にて硫酸、硝酸による分解を行った。このとき、未分解物がある場合は塩酸、フッ化水素酸、過酸化水素などを用いて目的成分を溶出させた。分解液は超純水を用いて適宜希釈した。上記において、試薬は関東化学社製の超高純度試薬を用いた。
<測定>
高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−OES、エスアイアイナノテクノロジー社製、SPS3520UV)を用いた。このとき、アルミニウムの検出波長は以下の通りとした;
Al:167.079nm
〔1〕画像形成方法
本発明の画像形成方法は、少なくとも、離型剤と結着樹脂とを含有する静電荷像現像用トナーと画像形成装置とで転写材上にトナー画像を定着する画像形成方法であって、前記静電荷像現像用トナーが、90℃における貯蔵弾性率G´(90)が1.0×104〜2.5×105Paの範囲内であり、150℃における貯蔵弾性率G´(150)が1.0×103〜1.5×104Paの範囲内にあり、かつ、前記転写材を挟持して定着ニップを形成する定着部材と加圧部材の表面速度を調整して、前記転写材上にトナー画像を定着することを特徴とする。
より詳細には、本発明の画像形成方法は、少なくとも、離型剤と結着樹脂とを含有する静電荷像現像用トナーと画像形成装置とで構成される画像形成方法であって、前記静電荷像現像用トナーが、90℃における貯蔵弾性率G´(90)が1.0×104〜2.5×105Paの範囲内であり、150℃における貯蔵弾性率G´(150)が1.0×103〜1.5×104Paの範囲内にあり、前記画像形成装置が、少なくとも、前記静電荷像現像用トナーを使用して転写材上にトナー画像を形成する画像形成部と、定着部材を回転駆動する定着駆動部と、加圧部材を回転駆動する加圧駆動部と、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する駆動制御部とを有し、かつ、前記駆動制御部は、前記定着部材と前記加圧部材で前記転写材を挟持し前記トナー画像を定着する際の、前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との差を調整することを特徴とする。
本発明の画像形成方法は、画像形成装置の定着部材及び加圧部材の表面速度を変化することでトナー粒子上部と下部とに変形速度差(=ずり又はずり応力)が生じ、トナー粒子が転写材上に延展し、当該延展の度合いが変化すると画像表面の凹凸が変化するため光沢度が変化するものである。
〔1.1〕静電荷像現像用トナー
本発明に係る静電荷像現像用トナーは、少なくとも、離型剤と結着樹脂とを含有し、90℃における貯蔵弾性率G´(90)が1.0×104〜2.5×105Paの範囲内であり、150℃における貯蔵弾性率G´(150)が1.0×103〜1.5×104Paの範囲内にあることを特徴とする。
ここで本発明における静電荷像現像用トナーとは、トナー粒子の集合体をいう。また、トナー粒子とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをいう。なお、本発明においては、トナー母体粒子とトナー粒子とを区別する必要がない場合には、単にトナー粒子と称することがある。また、静電荷像現像用トナーは、以下単にトナーという。
また、本発明に係るトナーは、少なくとも離型剤、結着樹脂以外に着色剤を含有することが好ましい。また、トナーは、例えば、結着樹脂中に、離型剤、荷電制御剤、界面活性剤等の内添剤を含有することも好ましい。また、トナーは、通常、外添剤が添加されたものとして使用されることが好ましいが、当該外添剤は添加されていなくてもよい。
前記トナーの貯蔵弾性率を本発明で規定する範囲内にするには、下記結着樹脂の分子量、及び各結着樹脂の組成比率を制御することによって調整することができる。
例えば、非晶性樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量分布を示すクロマトグラムから算出される重量平均分子量が50000〜90000の範囲内であり、かつ、分子量分布を示すクロマトグラムにおいて、分子量が100000以上の樹脂成分の比率が、10〜20面積%の範囲内であることが望ましい。重量平均分子量が50000〜90000の範囲内にあることにより、G´(90)を所望の値に調整することができる。また分子量が100000以上の樹脂成分の比率が、10〜20面積%の範囲内であることにより、G´(150)を所望の値に調整することができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂量は、トナー中の3〜15質量%の範囲であることが望ましい。結晶性ポリエステル樹脂量がこの範囲にあることにより、G´(90)を所望の値に調整することができる。
さらに、トナー中のアルミニウム量は、300〜1500ppmであることが望ましい。アルミニウム量がこの範囲にあることにより、結着樹脂中の極性基との架橋構造の形成により、G´(150)を所望の値に調整することができる。
[結着樹脂]
本発明に係るトナーに用いられる結着樹脂は、非晶性樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含有するものであることが、本発明に係る貯蔵弾性率を有するトナーを実現する上で好ましい態様である。
〈結晶性ポリエステル樹脂〉
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)及び/又はヒドロキシカルボン酸と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な融解ピークを有する樹脂をいう。明確な融解ピークとは、具体的には、上述の結晶性ポリエステル樹脂単独の示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線において、2回目の昇温過程における融解ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、65〜85℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは75〜85℃の範囲内である。結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記範囲であることにより、十分な低温定着性及び優れた画像保存性が得られる。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。ここに、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、上述の結晶性ポリエステル樹脂単独の示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線において、2回目の昇温過程における融解ピークのピークトップ温度である。なお、当該DSC曲線において融解ピークが複数存在する場合は、一番吸熱量の大きい融解ピークのピークトップ温度を融点とする。
結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、吸熱ピークのピークトップの温度であり、ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)を用いてDSCによって測定することができる。具体的には、試料をアルミニウム製パンKITNo.B0143013に封入し、熱分析装置 Diamond DSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。1回目の加熱時には室温(25℃)から、2回目の加熱時には0℃から、10℃/分の昇温速度でそれぞれ150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/分の降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持する。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点として測定する。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1〜3のアルキルエステルなどが挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分としては、飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、上述の多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒下で反応させる一般的なポリエステルの重合法を用いて製造することができ、例えば直接重縮合やエステル交換法を、単量体の種類によって使い分けて製造することが好ましい。
また、直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸を、前記多価カルボン酸及び/又は多価アルコールと組み合わせて用いることができる。結晶性ポリエステル樹脂を形成するための直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、5−ヒドロキシペンタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、7−ヒドロキシペンタン酸、8−ヒドロキシオクタン酸、9−ヒドロキシノナン酸、10−ヒドロキシデカン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、14−ヒドロキシテトラデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、18−ヒドロキシオクタデカン酸:及びこれらのヒドロキシカルボン酸が環化したラクトン化合物、又は炭素数1〜3のアルコールとのアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、結晶性ポリエステル樹脂を形成する際に、多価カルボン酸と多価アルコール成分とを用いることで反応を制御することが容易になり、目的の分子量の樹脂を得ることができるため好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造に使用することのできる触媒としては、例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタン触媒や、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドなどのスズ触媒などが挙げられる。
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[−(OH)]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[−(COOH)]との当量比[−(OH)]/[−(COOH)]が、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2の範囲内である。
結晶性ポリエステル樹脂は、その酸価が5〜30mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜25mgKOH/g、さらに好ましくは15〜25mgKOH/gの範囲内である。この酸価は、1gの試料に含まれる酸の中和に必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmg単位で表したものである。樹脂の酸価は、JIS K 0070−1992に準じて下記手順により測定される。
〈樹脂の酸価の測定法〉
(試薬の準備)
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶解し、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を調製する。JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mLに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとする。炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を調製する。標定はJIS K 0070−1992の記載に従う。
(本試験)
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として調製したフェノールフタレイン溶液を数滴加えて、調製した水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時とする。
(空試験)
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液のみとする)こと以外は、上記本試験と同様の操作を行う。
本試験と空試験の滴定結果を下記式(1)に代入して酸価を算出する。
式(1) A=[(C−B)×f×5.6]/S
A:酸価(mgKOH/g)
B:空試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
C:本試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
f:0.1mol/リットルの水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
結晶性ポリエステル樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量分布から算出された重量平均分子量(Mw)が5000〜50000の範囲内、数平均分子量(Mn)が1500〜25000の範囲内であることが好ましい。
〈樹脂の分子量の測定法〉
GPCによる分子量測定は、以下のように行う。
すなわち、装置「HLC−8320」(東ソー社製)及びカラム「TSKgel guardcolumn SuperHZ−L」及び「TSKgel SuperHZM−M」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/minで流す。測定試料(結晶性ポリエステル樹脂)を、室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で、濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターで処理して試料溶液を得る。この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。
検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。
結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、3〜15質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜10質量%の範囲内である。結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が5質量%以上であることにより、十分な低温定着性を確実に得ることができる。また、結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が20質量%以下であることにより、トナーの製造においてトナーに結晶性ポリエステル樹脂を確実に導入することができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂としては、スチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合してなるスチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を用いてもよい。
ここで、「スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂」とは、結晶性のポリエステル分子鎖(結晶性ポリエステル重合セグメント)に、スチレン・アクリル共重合体分子鎖(スチレン・アクリル重合セグメント)を化学結合させた、ブロック共重合体構造のポリエステル分子から構成される樹脂のことである。
結晶性ポリエステル重合セグメントの形成方法は、特に制限されない。当該重合セグメントの形成に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの具体的な種類ならびにこれらの単量体の重縮合条件は、上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
一方、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を構成するスチレン・アクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。用いられるスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体は、特に制限されないが、例えば、下記のものから選択される1種又は2種以上が用いられうる。
(1)スチレン単量体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン及びこれらの誘導体など;
(2)(メタ)アクリル酸エステル単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル(n−ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体など;
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸双方を包含する。
スチレン・アクリル重合セグメントは、上記の単量体に加え、以下の単量体をさらに用いて形成されていてもよい。
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど;
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど;
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど;
(6)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなど;
(7)その他の単量体
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体など。
スチレン・アクリル重合セグメントの形成方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントの含有割合は、特に制限されないが、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂100質量%に対して、60〜99質量%の範囲内であることが好ましく、70〜98質量%の範囲内であることがより好ましい。
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂におけるスチレン・アクリル重合セグメントの含有割合(以下、「スチレン・アクリル変性量」ともいう。)は、特に制限されないが、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂100質量%に対して、1〜40質量%の範囲内であることが好ましく、2〜30質量%の範囲内であることがより好ましい。
スチレン・アクリル変性量は、具体的には、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、結晶性ポリエステル重合セグメントとなる未変性の結晶性ポリエステル樹脂を合成するための単量体と、スチレン・アクリル重合セグメントとなるスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体と、これらを結合させるための両反応性単量体を合計した全質量に対する、スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の合計の質量の割合をいう。
ここで、「両反応性単量体」とは、スチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとを結合する単量体で、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される基と、スチレン・アクリル重合セグメントを形成するエチレン性不飽和基と、の双方を分子内に有する単量体である。
両反応性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素数1〜3個)のエステルであってもよいが、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸が好ましい。この両反応性単量体を介してスチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合される。
両反応性単量体の使用量は、低温定着性を向上させる観点から、スチレン・アクリル重合セグメントを構成する単量体の総量を100質量%として1〜20質量%の範囲内が好ましい。
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントとスチレン・アクリル重合セグメントとを化学結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
(A)結晶性ポリエステル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該結晶性ポリエステル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、スチレン・アクリル重合セグメントを形成するためのスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させることにより、スチレン・アクリル重合セグメントを形成する方法;
(B)スチレン・アクリル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該スチレン・アクリル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸及び多価アルコールを反応させることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する方法;
(C)結晶性ポリエステル重合セグメント及びスチレン・アクリル重合セグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法。
上記(A)〜(C)の形成方法の中でも、(A)の方法は、生産工程を簡素化できる等の観点から好ましい。
〈非晶性樹脂〉
本発明において、非晶性樹脂としては非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂を用いることができる。
非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークが認められないものをいう。つまり、通常は融点(示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて測定されるDSC曲線において、明確な吸熱ピーク)を有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有するものである。より具体的には、非晶性樹脂の示差走査熱量測定装置によるTgは、35〜70℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50〜65℃の範囲内である。非晶性樹脂のTgが35℃以上であることにより、トナーに十分な熱的強度を与えることができ、十分な耐熱保管性が得られる。また、非晶性樹脂のTgが70℃以下であることにより、十分な低温定着性が確実に得られる。
非晶性樹脂のTgは、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82に規定された方法(DSC法)によって測定される。すなわち、測定試料(非晶性樹脂)4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、示差走査カロリメーター「DSC8500」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度−10〜120℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、昇温−降温−昇温の温度制御を行い、その2回目の昇温におけるデータを基に解析を行う。第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間における最大傾斜を示す接線との交点の値をガラス転移点とする。
非晶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、数平均分子量(Mn)が1500〜25000、重量平均分子量(Mw)が10000〜80000の範囲内であることが好ましい。非晶性樹脂の分子量が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性及び優れた耐熱保管性が確実に両立して得られる。非晶性樹脂のGPCによる分子量測定は、測定試料として非晶性樹脂を用いたことの他は上記と同様にして行われるものである。
(非晶性ポリエステル樹脂)
非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂である。
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5〜45mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは5〜30mgKOH/gの範囲内である。酸価が45mgKOH/g以下であれば、吸湿性が高くなることもなく、高湿度下においても帯電性が低くなるのを防止することができる点で好ましい。また、5mgKOH/g以上であれば、樹脂粒子の分散安定性を保持することができ、トナー製造が行い易い点で好ましい。なお、酸価は、結晶性ポリエステル樹脂の説明にて記載の方法と同様にして求めることができる。
非晶性ポリエステル樹脂は、1種の非晶性ポリエステル樹脂でもよいが、2種以上の非晶性ポリエステル樹脂の混合物であってもよい。
非晶性ポリエステル樹脂は、公知のポリエステル樹脂を使用することができる。非晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、BPA−PO(ビスフェノールAのプロピレンオキサイドnモル付加物)、BPA−EO(ビスフェノールAのエチレンオキサイドnモル付加物)等のジオールを用いることができる。また、例えば、グリセリン、ソルビトール、1,4−ソルビタン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールを用いることができる。これらの中でも、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、BPA−PO又はBPA−EOであることが好ましく、BPA−PO又はBPA−EOであることがより好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物又はビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物であることがさらに好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸;マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式多価カルボン酸;これらの塩、低級アルキルエステル及び酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸、これらの塩、低級アルキルエステル又は酸無水物であることが好ましく、テレフタル酸、フタル酸、これらの塩、低級アルキルエステル又は酸無水物であることがより好ましい。これら多価カルボン酸成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価カルボン酸成分として、3価以上のカルボン酸を含有することにより、高分子鎖が架橋構造をとることができ、当該架橋構造をとることにより、一旦非晶性ポリエステル樹脂と相溶した結晶性ポリエステル樹脂を固定化し分離しにくくする効果をさらに得ることができる。
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸や1,2,5−ベンゼントリカルボン酸等のトリメリット酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリト酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、これらの塩、低級アルキルエステル及び酸無水物等が挙げられるが、トリメリット酸、その塩、低級アルキルエステル又は酸無水物が特に好適である。
多価カルボン酸成分としてジカルボン酸と、3価以上のカルボン酸とを含有する場合、3価以上のカルボン酸の添加量は、多価カルボン酸成分の総モル数に対して、1〜30モル%の範囲内であることが好ましく、5〜20モル%の範囲内であることがより好ましく、10〜15モル%の範囲内であることが好ましい。
また、多価カルボン酸成分としては、前述の化合物の他に、スルホン酸基を有するジカルボン酸成分が含まれていてもよい。
非晶性ポリエステル樹脂の製造は、特に制限されないが、重合温度180〜260℃として、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との重縮合反応により行い、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させることが好ましい。重合時間は、特に制限されないが、1〜10時間であることが好ましく、2〜6時間であることがより好ましい。
重合性単量体(多価カルボン酸成分、多価アルコール成分)が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え、溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い重合性単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い重合性単量体とその重合性単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させるとよい。
非晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、例えば、ナトリウム、リチウム等を含むアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等を含む第2族金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等を含む金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、Mw/Mnをより小さくするとの観点から、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等を含む金属化合物であることが好ましく、スズの金属化合物(スズ系触媒)であることがより好ましい。スズ系触媒としては、特に制限されないが、例えば、ジブチルスズオキシド等が挙げられる。
触媒の添加量としては、特に制限されないが、多価カルボン酸全量に対して0.00001〜10質量%の範囲内であることが好ましい。触媒の添加量が増加するとより確実に反応を進行させることができ、触媒の添加量が減少するとより経済性に優れる。
非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂全体の5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。このような範囲であると得られるトナーが耐ブロッキング性に優れ、低温定着性も得ることができる。
(非晶性ビニル樹脂)
非晶性ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の非晶性ビニル樹脂の中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂(以下、「スチレン・アクリル樹脂」とも称する)が好ましい。したがって、以下では、非晶性ビニル樹脂としてのスチレン・アクリル樹脂について説明する。
スチレン・アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH2=CH−C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステルを含むものである。
以下に、スチレン・アクリル樹脂の形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用される単量体は、下記に限定されるものではない。
スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体等が挙げられる。これらのアクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。すなわち、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、又は、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
スチレン・アクリル樹脂中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、60〜85質量%の範囲内であることが好ましい。また、スチレン・アクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、15〜40質量%の範囲内であることが好ましい。
さらに、スチレン・アクリル樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が付加重合されてもよい。
スチレン・アクリル樹脂中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、0.1〜15質量%の範囲内であることが好ましい。
非晶性ビニル樹脂の含有量は、結着樹脂全体の40〜95質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは60〜90質量%の範囲内である。このような範囲であると得られるトナーが樹脂設計の自由度が高く、帯電制御が容易である。
[着色剤]
本発明に係るトナーには以下の着色剤を用いることができる。ただし、これに限定されるものではない。
イエロートナー用のイエロー着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等、また、顔料としてC.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等が使用可能で、これらの混合物も使用可能である。
マゼンタトナー用のマゼンタ着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等、顔料としてC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等が使用可能で、これらの混合物も使用可能である。
シアントナー用のシアン着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等、顔料としてC.I.ピグメントブルー1、同7、同15:3、同18:3、同60、同62、同66、同76等が使用可能である。
オレンジトナー用のオレンジ着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントオレンジ63、同68、同71、同72、同78等、顔料としてC.I.ピグメントオレンジ16、同36、同43、同51、同55、同59、同61、同71等が使用可能である。
グリーン用のグリーン着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントグリーン3、同5、同28等、顔料としてC.I.ピグメントグリーン7等が使用可能である。
黒色トナー用の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等が使用可能であり、カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用可能である。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが使用可能である。
白色トナー用の着色剤としては、無機顔料(例えば、チタンホワイト、ジンクホワイト、チタンストロンチウムホワイト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノケイ酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等)、又は有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子等)が挙げられる。
これらのうち、特にルチル型結晶の酸化チタン、アナターゼ型結晶の酸化チタンは白色度が高く、好ましい。10〜1000nmの範囲の粒径を持つ酸化チタンを使用することにより顔料分散性の高い白色トナーが得られ、好適である。中でも、隠蔽性の観点から、ルチル型結晶の酸化チタンを用いることが好ましい。
トナーの静電的特性を安定化させるために、着色剤に用いる顔料の電気抵抗率は1×108〜1×1012Ω・cmとするのが好ましい。
顔料表面を、例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル、ステアリン酸等の脂肪酸、アルコール、トリメタノールアミン等のアミンなどで表面処理することにより、極めて高い顔料分散性とトナーの帯電安定性の両立が容易に実現できる。
着色剤の含有割合は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して20〜170質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは、40〜80質量部、さらに好ましくは50〜70質量部の範囲である。
[離型剤]
本発明に係るトナーは、離型剤を含有する。離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
具体的には、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
離型剤としては、結着樹脂を構成する樹脂と相溶するなどの相互作用を有さないものを用いることが好ましい。
これらのうちでも、低温定着時の離型性の観点から、融点の低いもの、具体的には、融点が60〜100℃の範囲内のものを用いることが好ましい。また、離型剤としては、結着樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂の融点Mp1に対して、(Mp1−10)℃〜(Mp1+20)℃程度の融点を有するものを用いることが好ましい。
離型剤の含有割合は、トナー中に1〜20質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%の範囲内である。トナーにおける離型剤の含有割合が上記範囲であることにより、分離性及び定着性が確実に両立して得られる。
離型剤のトナーへの導入方法としては、後述のトナーの製造方法の凝集、融着工程において、離型剤のみよりなる粒子を非晶性樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子などとともに水系媒体中で凝集、融着する方法が挙げられる。離型剤粒子は、離型剤を水系媒体に分散させた分散液として得ることができる。離型剤粒子の分散液は、界面活性剤を含有する水系媒体を離型剤の融点より高い温度に加熱し、溶融した離型剤溶液を加えて機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、冷却することによって調製することができる。
また、非晶性樹脂が例えばスチレン・アクリル樹脂である場合には、凝集、融着工程に供される非晶性樹脂粒子(スチレン・アクリル樹脂粒子)に離型剤をあらかじめ混合させておくことによって、当該離型剤をトナーへ導入することもできる。
具体的には、スチレン・アクリル樹脂を形成するための重合性単量体の溶液に離型剤を溶解させる。この溶液を、界面活性剤を含有する水系媒体中に加え、上記と同様に機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、重合開始剤を加えて所望の重合温度で重合を行う、いわゆるミニエマルション重合法によって、離型剤を含有する非晶性樹脂粒子の分散液を調製することができる。
[その他の構成成分]
〈荷電制御剤〉
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、トナー中に0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1〜5質量%の範囲内である。
<トナー粒子の平均粒径>
本発明に係るトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、平均粒径が、例えば体積基準のメジアン径で3〜8μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5〜8μmの範囲内である。
この平均粒径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成などによって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
トナー粒子の体積基準のメジアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメジアン径とされる。
<トナー粒子の平均円形度>
本発明に係るトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930〜1.000の範囲内であることが好ましく、0.950〜0.995の範囲内であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
本発明において、トナー粒子の平均円形度は、「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて測定されるものである。
具体的には、試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−3000」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
<トナーの軟化点>
トナーの軟化点は、定着部材による画像の光沢度を制御する観点から、80〜120℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは90〜110℃の範囲内である。
トナーの軟化点は、下記に示すフローテスターによって測定されるものである。
具体的には、まず、20℃、50%RHの環境下において、試料(トナー)1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP−10A」(島津製作所社製)によって3820kg/cm2の力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、フローテスター「CFT−500D」(島津製作所社製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、軟化点とされる。
〔1.2〕トナーの製造方法
本発明に係るトナーは、以下の手順を含む製造方法によって製造することができる。ただし、ここでは一例を開示することに過ぎず、本発明は、以下の製造方法の例に制限されることがない。
本発明に係るトナーは、水系媒体中で作製される湿式法によって製造されることが好ましく、例えば乳化凝集法などによって製造することができる。
乳化凝集法は、結着樹脂を構成する樹脂粒子の水性分散液を必要に応じてその他のトナー構成成分の粒子の水性分散液と混合し、pH調整による粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナーを製造する方法である。
以下では、トナーの製造方法の一例として、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性樹脂を用いた場合について説明する。
このようなトナーの製造方法の具体的な一例としては、
(1)着色剤を水系媒体中に分散させ、着色剤粒子分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程;
(2)結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させ、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製する結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程;
(3)必要に応じて離型剤及び荷電制御剤などのトナー構成成分が含有された非晶性樹脂(非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂)を水系媒体中に分散させ、非晶性樹脂粒子分散液(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、非晶性ビニル樹脂粒子分散液)を調製する非晶性樹脂粒子分散液調製工程;
(4)上記(1)〜(3)で得られた各分散液を用いて、非晶性樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集、融着させて凝集粒子を形成する凝集、融着工程;
(5)凝集粒子を熱エネルギーにより熟成して形状調整を行い、トナー母体粒子分散液を作製する熟成工程;
(6)トナー母体粒子分散液を冷却する冷却工程;
(7)冷却したトナー母体粒子分散液より当該トナー母体粒子を固液分離し、トナー母体粒子表面より界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程;
(8)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程;
(9)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添処理工程;
から構成される。
本発明において、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒を使用することが好ましい。
(1)着色剤粒子分散液調製工程
着色剤粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
この着色剤粒子分散液調製工程において調製される着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で10〜300nmの範囲内とされることが好ましい。この着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800(大塚電子社製)」で測定されるものである。
着色剤は、後述の非晶性樹脂粒子分散液調製工程においてミニエマルション法を用いてあらかじめ非晶性樹脂を形成するための単量体溶液に溶解又は分散させることによってトナー中に導入してもよい。
(2)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程
結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、結晶性ポリエステル樹脂を界面活性剤が添加された水系媒体中に超音波分散法やビーズミル分散法などにより分散させる水系直接分散法、結晶性ポリエステル樹脂を溶剤中に溶解させ、これを水系媒体中に分散させて乳化粒子(油滴)を形成した後、溶剤を除去する溶解乳化脱溶法、転相乳化法などが挙げられる。
この結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程において得られる結晶性ポリエステル樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50〜500nmの範囲にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA−EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
(3)非晶性樹脂粒子分散液調製工程
非晶性樹脂が非晶性ポリエステル樹脂である場合は、合成した非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させることによって、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製することができる。非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、上述の結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法と同様の方法を用いることができる。
非晶性樹脂が非晶性ビニル樹脂である場合、臨界ミセル形成濃度(CMC)以上の濃度の界面活性剤を含有した水系媒体中に、非晶性ビニル樹脂を形成するための重合性単量体を加え、撹拌を行いつつ所望の重合温度で水溶性重合開始剤を加え、重合を行うことにより、非晶性ビニル樹脂粒子分散液を調製することができる。
また、同様に非晶性樹脂が非晶性ビニル樹脂である場合、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、非晶性ビニル樹脂を形成するための重合性単量体に対して、必要に応じて離型剤や荷電制御剤などのトナー構成成分を溶解又は分散させた液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して、液滴中において重合反応を進行させることにより、非晶性樹脂粒子分散液を調製することもできる。なお、前記液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。このような非晶性樹脂粒子分散液調製工程においては、機械的エネルギーを付与して乳化(液滴の形成)する処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
この非晶性樹脂粒子分散液調製工程において形成させる非晶性樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成のものとすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合、第3段重合)する方法を採用することができる。
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
(重合開始剤)
使用される重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤を使用することができる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化−tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸−tert−ヒドロペルオキシド、過ギ酸−tert−ブチル、過酢酸−tert−ブチル、過安息香酸−tert−ブチル、過フェニル酢酸−tert−ブチル、過メトキシ酢酸−tert−ブチル、過N−(3−トルイル)パルミチン酸−tert−ブチルなどの過酸化物類;2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2′−アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、水溶性重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸を好ましく用いることができる。
また、重合開始剤としては、過硫酸塩とメタ重亜硫酸塩、過酸化水素とアスコルビン酸のようなレドックス重合開始剤を用いることもできる。
(連鎖移動剤)
非晶性樹脂(特には非晶性ビニル樹脂)粒子分散液調製工程においては、非晶性樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
この非晶性樹脂粒子分散液調製工程において得られる非晶性樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50〜500nmの範囲にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA−EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
(4)凝集、融着工程
この工程は、上記の工程で形成した分散液に含まれる着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を、水系媒体中で凝集、融着させるものである。この工程では、水系媒体中に非晶性樹脂粒子分散液、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液及び着色剤粒子分散液を添加して、これらの粒子を凝集、融着させる。
着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集、融着する具体的な方法としては、水系媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となるよう添加し、次いで、非晶性樹脂粒子のガラス転移点以上であって、かつ、離型剤及び結晶性ポリエステル樹脂の融解ピーク温度以上の温度に加熱することによって、着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子などの粒子の塩析を進行させると同時に融着を並行して進め、所望の粒径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するために加熱を継続して行う方法である。
この方法においては、凝集剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くして速やかに結着樹脂に係る非晶性樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱することが好ましい。この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によっては粒子の凝集状態が変動して粒径分布が不安定になったり、融着させた粒子の表面性が変動したりする問題が発生することが懸念されるためである。この昇温までの時間としては通常30分以内であることが好ましく、10分以内であることがより好ましい。
また、昇温速度としては1℃/分以上であることが好ましい。昇温速度の上限は特に規定されるものではないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から、15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、反応系がガラス転移点以上の温度に到達した後、当該反応系の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、トナーの成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナーの耐久性を向上させることができる。
(凝集剤)
使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、少量で凝集を進めることが可能であり、凝集性の制御も容易であることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
(5)熟成工程
この工程は、具体的には、凝集粒子を含む系を加熱撹拌することにより、凝集粒子の形状が所望の平均円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間を制御して、トナー母体粒子を形成する工程である。この工程においては、熱エネルギー(加熱)によりトナー母体粒子の形状制御を行うことが好ましい。
(6)冷却工程〜(8)乾燥工程
冷却工程、濾過、洗浄工程及び乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。
(9)外添処理工程
この外添処理工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に、外添剤を添加、混合する工程である。
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に粉体状の外添剤を添加して混合する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を用いることができる。
〈現像剤〉
本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15〜100μmの範囲内のものが好ましく、25〜80μmの範囲内のものがより好ましい。
〔2〕画像形成装置
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る静電荷像現像用トナーを使用して転写材にトナー画像を形成する画像形成部と、定着部材と、前記定着部材を回転駆動する定着駆動部と、加圧部材と、前記加圧部材を回転駆動する加圧駆動部と、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する駆動制御部とで構成される定着部を有しし、前記駆動制御部は、前記定着部材と前記加圧部材で転写材を挟持しトナー画像を定着する際の、前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との差を調整することを特徴とする。
前記定着部材の前記定着駆動部によって回転駆動したときの表面速度が、前記加圧部材の前記加圧駆動部によって回転駆動したときの表面速度に対して、その差が±10%の範囲内に制御することが、光沢度の制御幅をより広げる観点と定着部材として破損等が生じない観点から、好ましい範囲である。
前記定着部材の表面速度及び前記加圧部材の表面速度は、例えば、前記定着部材及び加圧部材がローラーである場合、外周の任意の場所に印をつけ、当該ローラーを所定の回転数で回転した時の印を付けた箇所の移動距離(周長)を、動画撮影装置等を用いて、測定解析することで求めることができる。表面速度の単位は(mm/sec)を用いる。
また、回転駆動する前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との関係は以下の式1によって求めることができる。
式1 加圧部材の表面速度に対する定着部材の表面速度の比率(%)={(定着部材の表面速度(mm/sec)−加圧部材の表面速度(mm/sec))÷加圧部材の表面速度(mm/sec)}×100
〔2.1〕定着部材
定着部材としては、定着ローラーや定着ベルトを用いる方式が知られているが、特に制限はなくどちらも好ましく用いることができる。
定着ローラーは、画像形成装置において、トナー粒子を転写材に定着させるゴムローラーであることが好ましく、芯材の外層に、例えば、シリコーンゴム組成物を用いて成形されたゴム部材を被覆してなるものである。同様に、定着ベルトは、トナー粒子を転写材に定着させる樹脂ベルトであることが好ましく、一般にポリアミド等の樹脂ベルトの外層として、例えば、下記シリコーンゴム組成物を用いて成形されたゴム部材を被覆してなるものである。
定着ローラーは、芯金と、芯金の外周面を覆うように設けられたソリッドゴム層と、ソリッドゴム層の外周面を覆うように設けられたスポンジゴム層との3層構造を有しているものであってもよいが、これらに限定されない。ここで、ソリッドゴム層及びスポンジゴム層は、それぞれシリコーンゴムから構成されていることが好ましい。
定着ローラーにおいて、芯金はアルミニウム、鉄、及びSUSなどの金属材料から構成されていることが好ましい。
芯金2の厚さは、0.1〜5mm程度であるが、軽量化及びウォームアップ時間を考慮すると、0.1〜1.5mm程度であることがより好ましい。芯金2の直径は、10〜50mm程度であることが好ましい。
シリコーンゴムは、上記定着温度に対する耐熱性と、転写材が圧接される領域の寸法(ニップ部の長さ)を確保するための弾性とを有していることが好ましい。
ソリッドゴム層は固体状の硬質な層である。ソリッドゴム層の厚さは5〜10mmの範囲内であることが好ましく、7〜8mmの範囲内であることがより好ましい。
他方、スポンジゴム層は無数のマイクロバルーンを含むスポンジ状の軟質な層である。スポンジゴム層4の厚さは、5〜100μmの範囲内であることが好ましく、80〜90μmの範囲内であることがより好ましい。
図2は、本発明に用いられる定着装置の一例を示す模式図である。
例えば、定着装置は図2で示されるような二軸ベルト方式の定着装置であってもよいし、後述する図3の加熱ローラー132及び加圧ローラー131で示される一軸ベルト方式であってもよい。
図2で示される二軸ベルト方式の定着装置では、定着装置10は、各々が紙面垂直方向に回転軸を有する加熱ローラー12と加圧部材である加圧ローラー13及び加圧ローラー13に圧接された定着部材である定着ローラー14とが配置されておりこの間に転写材Pが搬送される。加熱ローラー12は、少なくとも一部が中空になっており、その中空部分のヒーターなどの熱源(図示しない)が配置される。この内部の発熱によって、定着ベルト11が加熱される。
また、前記定着部材である定着ローラー14を回転駆動する定着駆動部(不図示)と、前記加圧部材である加圧ローラー13を回転駆動する加圧駆動部(不図示)と、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する駆動制御部(後述する制御部200)とを有している。当該駆動制御部によって、前記定着ローラーと前記加圧ローラーの表面速度を制御する。
以上の構成において、不図示の駆動手段によって加圧ローラー14が反時計方向に回転すると、定着ベルト11、加熱ローラー12、定着ローラー14が時計方向に回動・回転する。定着ベルト11は当接する加熱ローラー12により加熱され、定着ローラー14も加熱される。そして、トナー像が形成された転写材は、ニップ部を通ることにより、加熱・加圧され、転写材上に転写されたトナー像が溶融定着する。
ここで転写材Pとしては、特に限定されず、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙又はコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができる。
定着部材の製造方法は、シリコーンゴム原料に、重量平均分子量が900〜1700の範囲内である高分子ケイ素化合物を添加してシリコーン混合物を調製する工程と、当該シリコーン混合物からなるシリコーンゴムの前駆体を加熱する工程とを有することが好ましい。このように、高分子ケイ素化合物をシリコーンゴム原料に添加してシリコーン混合物を調製する工程により、高分子量成分を多く含有し優れた耐久性を有するシリコーンゴム組成物を得ることができ、さらに当該シリコーン混合物からなるシリコーンゴムの前駆体を加熱する工程により、耐久性が優れ、かつ低分子量成分が少ないシリコーンゴム組成物を得ることができる。
(シリコーン混合物を調製する工程)
シリコーン混合物を調製する工程は、シリコーンゴム原料に、重量平均分子量が900〜1700の範囲内である高分子ケイ素化合物を添加してシリコーン混合物を調製する工程である。以下に、定着部材の一例である図2で示した加熱ローラーについて、定着部材のゴム部材となるシリコーンゴムの前駆体の形成方法について、具体的な例を説明する。
まず、低分子量の単量体などで成形されるシリコーンゴム原料に、例えば、重量平均分子量が900〜1700の範囲内である高分子ケイ素化合物及び硬化剤(例えば、CAT−1602,信越化学工業社製)を加え、撹拌機で十分に混合し、シリコーン混合物を得る。必要に応じ熱膨張性マイクロカプセルや他の添加剤を加えても良い。例えば、このシリコーン混合物に、膨脹済みの熱膨張性マイクロカプセル(例えば、アクゾノーベル社製のマイクロバルーンであるエクスパンセル461)を加え、撹拌機で混合し、熱膨張性マイクロカプセルを含有するシリコーン混合物を得ることができる。
例えば、アルミニウム製の芯金と、当該芯金よりも太い紙管を芯金が中心となるようにして被せ、この紙管と芯金との間に、熱膨張性マイクロカプセルを含まないシリコーン混合物を注ぎ込み、加熱させて硬化を完了させた後、紙管を外し、ソリッドゴム層を形成する。
その後、このソリッドゴム層に、熱膨張性マイクロカプセルを含むシリコーン混合物を塗布し、シリコーンゴムの前駆体とする。
次に、このシリコーンゴムの前駆体は、加熱する工程を経て、定着部材のゴム部材を構成するシリコーンゴムとすることができる。
なお、シリコーンゴムの前駆体の形成方法は上記に限定されず、例えば、芯金上に直接ゴム原料を含有するシリコーン混合物を塗布し、シリコーンゴムの前駆体としてもよい。
前駆体を加熱する工程は、前述した、シリコーン混合物からなるシリコーン前駆体を加熱する工程である。加熱は、定着部材を構成するゴム部材の成型又は加硫する際の加熱時に行ってもよいし、成型又は加硫後において別途加熱する工程を有することとしてその加熱時に行ってもよい。加熱する工程における温度は、160〜280℃の範囲内であることが好ましい。また、加熱時間としては、30〜300分の範囲内が好ましく、35〜60分の範囲内がより好ましい。このように、高分子ケイ素化合物をシリコーンゴム原料に添加することにより、高分子量成分が多く存在し、優れた耐久性を有するシリコーンゴム組成物を得ることができ、さらに、これをシリコーンゴムの前駆体として、上記の温度範囲内で加熱処理することにより、耐久性が優れ低分子量成分が少ない定着部材を得ることができる。
加熱の方法は、特に限定されず、公知の方法が適用できる。一般的には、チャンバーを外部から加熱することで、チャンバーの内部に格納されたシリコーンゴムの前駆体を加熱する。加熱の方法は、バッチ式であっても、連続式であってもよい。例えば、バッチ式であれば、チャンバー内で、シリコーンゴムの前駆体は静置されていて、所定の時間加熱したら取り出す方法としてもよい。また、連続式であれば、筒状の加熱チャンバーを使用し、当該加熱チャンバーの内部を、シリコーンゴムの前駆体を移動させながら、所定時間の加熱が行われる方法としてもよい。
〔2.2〕画像形成装置
本発明に係る定着部材及び加圧部材を備えたカラータンデム方式の画像形成装置100の概略構成の一例を、図3を用いて説明する。この画像形成装置は、スキャナー、コピー、プリンターなどの機能を備えた複合機であって、MFP(Multi Function Peripheral又はMulti Function Printer)と呼ばれるものである。
図3に示すとおり、画像形成装置100は、本体ケーシング101内のほぼ中央に、2個のローラー102、106に巻回された周方向に移動する環状の中間転写ベルト108を備えている。
2個のローラー102、106のうち、一方のローラー102は図において左側に配置され、他方のローラー106は図において右側に配置されている。中間転写ベルト108は、これらのローラー102、106によって支持されて矢印X方向に回転駆動される。
中間転写ベルト108の下方には、図において左側から順に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナーに対応する画像形成セグメント110Y、110M、110C、110Kが並べて配置されている。
各画像形成セグメント110Y、110M、110C、110Kは、それらが取り扱うトナー色の違いを除いて互いに同様に構成されている。
例えば、イエローの画像形成セグメント110Yは、感光体ドラム190と、帯電装置191と、露光装置192と、トナーを用いて現像を行う現像装置193と、クリーナー装置195とを一体にして構成されている。
中間転写ベルト108を挟んで感光体ドラム190と対向する位置に、一次転写ローラー194が設けられている。
画像形成時には、まず帯電装置191によって感光体ドラム190の表面が一様に帯電され、続いて、露光装置192によって感光体ドラム190の表面が露光されて、そこに潜像が形成される。次に、現像装置193によって、感光体ドラム190の表面上の潜像が現像されてトナー画像となる。このトナー画像は、感光体ドラム190と一次転写ローラー194との間の電圧印加によって、中間転写ベルト108に転写される。感光体ドラム190の表面上の転写残トナーは、クリーナー装置195によってクリーニングされる。
中間転写ベルト108が矢印X方向に移動するに伴って、各画像形成セグメント110Y、110M、110C、110Kによって中間転写ベルト108上に出力画像として4色のトナー画像が重ねて形成される。
108の左側には、中間転写ベルト108の表面から残留トナーを取り除くクリーニング装置125と、クリーニング装置125によって取り除かれたトナーを回収するトナー回収ボックス126とが設けられている。
中間転写ベルト108の右側には、転写材のための搬送路124を挟んで二次転写ローラー112が設けられている。搬送路124のうち二次転写ローラー112の上流側に相当する位置に、搬送ローラー120が設けられている。中間転写ベルト108上のトナーパターンを検出するための光学式濃度センサー115が設けられている。
本体ケーシング101内の右上部には、トナーを転写材に定着させる定着装置130が設けられている。
本発明では、定着装置130が、定着部材と、前記定着部材を回転駆動する定着駆動部と、加圧部材と、前記加圧部材を回転駆動する加圧駆動部と、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する駆動制御部とを有し、前記駆動制御部は、前記定着部材と前記加圧部材で転写材を挟持しトナー画像を定着する際の、前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との差を変更することが特徴である。
定着装置130は、図3において紙面に対して垂直に延在する一対の、本発明に係る定着部材である定着ローラー及び加圧部材である加圧ローラーを備えている。図3では、定着ローラーとして加熱ローラー132があり、他方は加圧ローラー131である。
加熱ローラー132と加圧ローラー131は、それぞれ駆動部(不図示)及び駆動制御部(図3では制御部200)を有し、回転駆動する加熱ローラー132と加圧ローラー131の表面速度を制御する。
加熱ローラー132は、ヒーター133によって所定の目標温度(例えば180〜200℃の範囲内の定着温度)に加熱される。加圧ローラー131は、図示しない、ばねによって加熱ローラー132へ向かって付勢されている。これにより、加圧ローラー131と加熱ローラー132とは定着のためのニップ部を形成している。
トナー像が転写された転写材90がこのニップ部を通ることにより、その転写材90にトナー画像が定着される。加圧ローラー131と加熱ローラー132の温度は、それぞれ温度センサー135、136によって検出される。
本体ケーシング101の下部には、転写材90を収容するための給紙カセット116A、116Bが2段に設けられている。図3では、給紙カセット116Aにのみ転写材90が収容された状態を示している。
給紙カセット116A、116Bにはそれぞれ、転写材を送り出すための給紙ローラー118と、送り出された転写材を検出する給紙センサー117とが設けられている。
本体ケーシング101内には、この画像形成装置全体の動作を制御するCPU(中央演算処理装置)からなる制御部200が設けられている。制御部200は、前記定着駆動部又は前記加圧駆動部の回転駆動を制御する機能も有し、前記定着部材と前記加圧部材で挟持しトナー画像を定着する際の、前記定着部材の表面速度と前記加圧部材の表面速度との差を、あらかじめ条件を入力することで変更する。
画像形成時には、制御部200による制御によって、転写材90は給紙ローラー118によって給紙カセット116Aから搬送路124へ1枚ずつ送り出される。搬送路124に送り出された転写材90は、レジストセンサー114によってタイミングをとって、搬送ローラー120によって中間転写ベルト108と二次転写ローラー112との間のトナー転写位置へ送り込まれる。
一方、上記のように、各画像形成セグメント110Y、110M、110C、110Kによって中間転写ベルト108上に4色のトナー画像が重ねて形成されており、トナー転写位置に送り込まれた転写材90に、中間転写ベルト108上の4色のトナー画像が二次転写ローラー112によって転写される。
トナー像が転写された転写材90は、定着装置130の加圧ローラー131と加熱ローラー132とが作るニップ部を通して搬送され加熱及び加圧を受ける。これにより、その転写材90にトナー画像が定着される。
最終的に、トナー画像が定着された転写材90は、排紙ローラー121によって排紙路127を通して本体ケーシング101の上面に設けられた排紙トレイ部122へ排出される。
なお、画像形成装置100では、両面印刷の場合に転写材90を再びトナー転写位置へ送り込むためのスイッチバック搬送路128が設けられている。
上記のとおり、加圧ローラー131は定着ローラーの一方を構成しており、ここではシリコーンゴム製ローラーが用いられる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
また、上述の説明では、定着部材として加熱ローラー、加圧部材として加圧ローラーの場合を例にして説明したが、図2の定着ベルト方式も同様に製造し、使用することができる。また、本明細書でいう定着ベルトは、画像形成装置において、トナーを転写材に定着させる際に用いられるシリコーンゴムで形成された定着ベルトである。具体的には、例えば、特開2017−194550号公報、特開2017−173445号公報、特開2017−97187号公報等に記載された、定着装置内で用いられる公知の定着ベルトを指す。
以下に、本発明の画像形成装置を用いた、画像形成における各工程を説明する。
前記画像形成における工程は、帯電する工程、静電潜像を形成する工程、現像する工程、定着工程、クリーニングする工程など、一般的な電子写真画像形成方法で使用される工程で行うことが好ましい。
(帯電する工程)
本工程では、電子写真感光体を帯電させる。帯電させる方法は、特に限定されず、例えば、帯電ローラーによって電子写真感光体の帯電が行われる帯電ローラー方式など、公知の方法でよい。
(静電潜像を形成する工程)
本工程では、電子写真感光体(静電潜像担持体)上に静電潜像を形成する。
電子写真感光体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリシラン又はフタロポリメチンなどの有機感光体よりなるドラム状のものが挙げられる。
静電潜像の形成は、例えば、電子写真感光体の表面を帯電手段により一様に帯電させ、露光手段により電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行われる。なお、静電潜像とは、このような帯電手段によって電子写真感光体の表面に形成される像である。
帯電手段及び露光手段としては、特に限定されず、電子写真方式において一般的に使用されているものを用いることができる。
(現像する工程)
現像する工程は、静電潜像を、トナー(一般的には、トナーを含む乾式現像剤)により現像してトナー像を形成する工程である。
トナー像の形成は、例えば、トナーを含む乾式現像剤を用いて、トナーを摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、回転可能なマグネットローラーとからなる現像手段を用いて行われる。
具体的には、現像手段においては、例えば、トナーとキャリアとが混合撹拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラーの表面に保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラーは、電子写真感光体近傍に配置されているため、マグネットローラーの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって電子写真感光体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて電子写真感光体の表面にトナー像が形成される。
(転写する工程)
本工程では、転写材へのトナー像の転写をする。
トナー像の転写材への転写は、トナー像を転写材に剥離帯電することにより行われる。
転写手段としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラーなどを用いることができる。
また、転写する工程は、例えば、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、このトナー像を転写材上に二次転写する態様の他、電子写真感光体上に形成されたトナー像を直接転写材に転写する態様などによって行うこともできる。
転写材としては、特に制限されず、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙又はコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙等の紙類;ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の樹脂製フィルム;布などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(定着する工程)
本発明に係る定着工程では、トナーを用いて形成された未定着画像(トナー像)が転写された転写材を、加熱された定着ベルト又は定着ローラーと、加圧部材である加圧ローラーとの間を通過させることにより、当該未定着トナー画像を当該転写材に定着させる工程を有する。
定着工程の方式としては、前述のとおり、定着回転体としての定着ベルト又は定着ローラーと、当該定着ベルト又は定着ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧部材としての加圧ローラーとにより構成されてなるベルト定着方式又はローラー定着方式のものが挙げられる。
(クリーニングする工程)
本工程では、感光体、中間転写体などの現像剤担持体上には、画像形成に使用されなかった又は転写されずに残った現像剤を現像剤担持体上から除去する。
クリーニングの方法は、特に限定されないが、先端が感光体等のクリーニング対象に当接して設けられた、感光体表面を擦過するブレードが用いられる方法であることが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
《結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の調製》
〈結晶性ポリエステル樹脂の合成〉
(1)結晶性ポリエステル樹脂(c1)の合成
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー及び精留塔を備えた反応容器に、ドデカン二酸200質量部、1,6−ヘキサンジオール102質量部を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒としてTi(OBu)4を0.3質量部投入し、更に、生成される水を留去しながら反応系の温度を150℃から6時間かけて240℃に上昇させ、更に、240℃に維持した状態で6時間脱水縮合反応を継続して重合反応を行うことにより、結晶性ポリエステル樹脂(c1)を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂(c1)は、重量平均分子量(Mw)が14500、融点(Tmc)が70℃であった。
(2)結晶性ポリエステル樹脂(c2)の合成
結晶性ポリエステル樹脂(c1)の製造方法において、1,6−ヘキサンジオールの代わりに1,10−デカンジオールを用いた以外には同様にして、結晶性ポリエステル樹脂(c2)を作製した。
〈結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液の調製〉
(1)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C1)の調製
上記で得られた結晶性ポリエステル樹脂(c1)72質量部をメチルエチルケトン72質量部に、70℃で30分撹拌し溶解させた。次に、この溶液を撹拌しながら、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.5質量部を添加した。次いで、イオン交換水250質量部にポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを濃度が1質量%になるよう溶解させた水溶液を70分にわたり滴下した。
次いで、この乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)の減圧下で3時間撹拌することで、メチルエチルケトンを蒸留除去し、結晶性ポリエステル樹脂(c1)による微粒子が分散された結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C1)を調製した。
結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C1)に含まれる粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定器「LA−750(HORIBA製)」にて測定した結果、132nmであった。
(2)結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C2)の調製
結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C1)の調製において、結晶性ポリエステル樹脂(c1)の代わりに結晶性ポリエステル樹脂(c2)用いた以外には同様にして、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(C2)を作製した。
《非晶性樹脂微粒子の分散液の調製》
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A1)の調製〉
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム5質量部と、イオン交換水3000質量部とを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を75℃に昇温させた。
昇温後、過硫酸カリウム(KPS)3質量部をイオン交換水100質量部に溶解させたものを添加し、液温を75℃とした後、スチレン(St)568質量部、n−ブチルアクリレート(BA)164質量部及びメタクリル酸(MAA)68質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、75℃において3時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)を行い、樹脂微粒子(a1)の分散液を調製した。
(2)第2段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、70℃に加熱後、樹脂微粒子(a1)の分散液を固形分換算で72質量部と、スチレン(St)201質量部、n−ブチルアクリレート(BA)93質量部、メタクリル酸(MAA)20質量部及びn−オクチルメルカプタン4.2質量部からなる混合液に離型剤としてベヘン酸ベヘニル170質量部を70℃において溶解させた単量体混合液とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、1時間混合、分散させて、乳化粒子(油滴)を含有する分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム(KPS)5質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を75℃において1時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第2段重合)を行い、これにより樹脂微粒子(a1′)の分散液を調製した。
(3)第3段重合
樹脂微粒子(a1′)の分散液に過硫酸カリウム(KPS)5質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下において、スチレン(St)354質量部、n−ブチルアクリレート(BA)126質量部、メタクリル酸(MAA)33質量部及びn−オクチルメルカプタン8.4質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合(第3段重合)を行い、その後、28℃まで冷却することにより、体積基準のメジアン径(d50)が168nmである、水系媒体中に離型剤を含有した非晶性樹脂(スチレン・アクリル樹脂)の微粒子が分散された非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A1)を調製した。得られた非晶性ビニル樹脂微粒子a1′′の重量平均分子量は77000であった。
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A2)の調製〉
非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A1)の調製において、第1段重合における過硫酸カリウム(KPS)の量を10質量部に変更して樹脂微粒子(a2)を調整し、第2段重合における樹脂微粒子(a2)の量を45質量部に変更し、またベヘン酸ベヘニルの量を165質量部に変更したこと以外は同様にして、非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A2)を調製した。得られた非晶性ビニル樹脂微粒子a2′′の重量平均分子量は46000であった。
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A3)の調製〉
非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A1)の調製において、第2段重合における樹脂微粒子(a1)の量を108質量部に変更し、n−オクチルメルカプタンの量を2.5質量部に変更し、ベヘン酸ベヘニルの量を175質量部に変更し、また第3段重合におけるn−オクチルメルカプタンの量を7.8質量部に変更したこと以外は同様にして、非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A3)を調製した。得られた非晶性ビニル樹脂微粒子a3′′の重量平均分子量は106000であった。
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A4)の調製〉
非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A1)の調製において、第2段重合におけるベヘン酸ベヘニルの量を153質量部に変更したこと以外は同様にして、非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A4)を調製した。得られた非晶性ビニル樹脂微粒子a4′′の重量平均分子量は77500であった。
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A5)の調製〉
非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A1)の調製において、第2段重合におけるベヘン酸ベヘニルの量を185質量部に変更したこと以外は同様にして、非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A5)を調製した。得られた非晶性ビニル樹脂微粒子a5′′の重量平均分子量は76000であった。
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A6)の調製〉
非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A1)の調製において、第2段重合におけるベヘン酸ベヘニルの量を195質量部に変更したこと以外は同様にして、非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A6)を調製した。得られた非晶性ビニル樹脂微粒子a6′′の重量平均分子量は76200であった。
〈非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A7)の調製〉
非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A2)の調製において、第2段重合におけるベヘン酸ベヘニルの量を148質量部に変更したこと以外は同様にして、非晶性ビニル樹脂微粒子の分散液(A7)を調製した。得られた非晶性ビニル樹脂微粒子a7′′の重量平均分子量は46700であった。
〈非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(X1)の調製〉
(1)非晶性ポリエステル樹脂(x1)の作製
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(BPA−EO)50質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(BPA−PO)249質量部、テレフタル酸(TPA)81質量部、フマル酸(FA)36質量部及びエステル化触媒(オクチル酸スズ)2質量部を入れ、230℃で8時間縮重合反応させた後、160℃まで冷却した。その後、無水トリメリット酸30質量部を添加したのち、230℃で3時間重縮合反応をさせた後、更に、8kPaで1時間反応させ、非晶性ポリエステル樹脂(x1)を得た。非晶性ポリエステル樹脂(x1)の重量平均分子量は68000であった。
(2)非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(X1)の調製
非晶性樹脂(x1)100質量部を「ランデルミル形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所社製)を用いて、V−LEVEL、300μAで60分間超音波分散することにより、体積基準のメジアン径(d50)が160nmである非晶性ポリエステル樹脂の微粒子が分散された非晶性ポリエステル樹脂微粒子の分散液(X1)を調製した。
《着色剤粒子の水系分散液の調製》
〈着色剤粒子の水系分散液(Bk)の調製〉
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック(リーガル330R:キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子の水系分散液(Bk)を調製した。
得られた水系分散液(Bk)について、着色剤微粒子の平均粒径(体積基準のメジアン径(d50))は110nmであった。
《トナーの作製》
〈トナー1の作製〉
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液(A1)210質量部(固形分換算)、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(X1)184質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(C1)44質量部(固形分換算)、イオン交換水2000質量部を投入した後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH(25℃換算)を10に調整した。 その後、着色剤粒子の水系分散液(Bk)43質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて90℃まで昇温し、90℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準のメジアン径(d50)が6.1μmになった時点で、塩化ナトリウム100質量部をイオン交換水450質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナー粒子の平均円形度が0.965になった時点で2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。トナー粒子の平均円形度は、測定装置「FPIA−3000」(Sysmex社製)を用いて、HPF検出数を4000個として測定した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)1.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)0.6質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/secで20分間混合し、体積平均粒径が6.1μmであるトナー1を得た。
〈トナー2の作製〉
トナー1の作製において、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液をA2に変更した以外は同様にして、トナー2を作製した。
〈トナー3の作製〉
トナー1の作製において、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液をA3に変更した以外は同様にして、トナー3を作製した。
〈トナー4の作製〉
トナー1の作製において、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液をA4に変更し、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液の量を229質量部に、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(X1)の量を165質量部にそれぞれ変更した以外は同様にして、トナー4を作製した。
〈トナー5の作製〉
トナー1の作製において、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液をA5に変更し、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液の量を194質量部に、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(X1)の量を200質量部にそれぞれ変更した以外は同様にして、トナー5を作製した。
〈トナー8の作製〉
トナー1の作製において、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液をA6に変更し、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液の量を185.5質量部に、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(C1)の量を57.5質量部に、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(X1)の量を195質量部にそれぞれ変更した以外は同様にして、トナー8を作製した。
〈トナー9の作製〉
トナー1の作製において、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液をA7に変更し、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液の量を230質量部に、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(C1)の量を24質量部にそれぞれ変更した以外は同様にして、トナー9を作製した。
〈トナー10の作製〉
トナー1の作製において結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液をC2に変変更した以外は同様にして、トナー10を作製した。
〈トナー11の作製〉
トナー1の作製において、非晶性ビニル樹脂微粒子の水系分散液をA2に変更し、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(C1)の量を64質量部に、非晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液(X1)の量を164質量部にそれぞれ変更した以外は同様にして、トナー11を作製した。
〔トナー6、7、12及び13の作製方法〕
<(コア用)非晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液〔A1〕の調製>
≪非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕の合成≫
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した反応容器に、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物500質量部、テレフタル酸117質量部、フマル酸82質量部、エステル化触媒(オクチル酸スズ)2質量部を入れ、230℃で5時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した後、アクリル酸10質量部、スチレン162質量部、n−ブチルアクリレート(BA)42質量部、重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド)10質量部の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、アクリル酸、スチレンおよびブチルアクリレートを除去することにより、スチレン・アクリル重合セグメントと非晶性ポリエステル重合セグメントとが結合してなる非晶性ポリエステル樹脂(スチレン−アクリル変性ポリエステル樹脂)〔a1〕を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕のガラス転移温度(Tg)は50℃、重量平均分子量(Mw)は21000であった。
<(コア用)非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕の水系分散液〔A1〕の調製>
上記合成例で得られた、非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕72質量部をメチルエチルケトン72質量部に、30℃で30分撹拌し、溶解させた。次に、この溶解液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.5質量部を添加した。この溶解液を、撹拌器を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、30℃の水252質量部を70分間にわたって滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態を得た。
次いで、この乳化液を70℃で加温し、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することでメチルエチルケトンを蒸留除去し、非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕の水系分散液〔A1〕を調製した。レーザー回折式粒度分布測定器「LA−750(株式会社堀場製作所製)」にて測定した結果、上記水系分散液〔A1〕に含まれる粒子の体積平均粒子径は162nmであった。
<(シェル用)非晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液〔A2〕の調製>
上記<(コア用)非晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液〔A1〕の製造>において、非晶性ポリエステル樹脂〔a1〕の縮重合反応の条件を変更し、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させたこと以外は同様にして、(シェル用)非晶性ポリエステル樹脂〔a2〕を得て、(シェル用)非晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液〔A2〕を製造した。
なお、得られた(シェル用)非晶性ポリエステル樹脂〔a2〕のガラス転移温度(Tg)は58℃、重量平均分子量(Mw)は28000であった。また、レーザー回折式粒度分布測定器「LA−750(株式会社堀場製作所製)」にて測定した結果、上記水系分散液〔A2〕に含まれる粒子の体積平均粒子径は178nmであった。
<離型剤粒子の水系分散液〔W1〕の調製>
離型剤(ベヘン酸ベヘニル)72質量部をメチルエチルケトン72質量部に、78℃で30分撹拌し、溶解させた。次に、この溶解液を、撹拌器を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、78℃に温めた水252質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散することにより、乳化液を得た。
次いで、この乳化液を70℃で加温し、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することでメチルエチルケトンを蒸留除去し、離型剤(ベヘン酸ベヘニル)が分散された水系分散液〔W1〕を調製した。レーザー回折式粒度分布測定器「LA−750(株式会社堀場製作所製)」にて測定した結果、上記分散液〔W1〕に含まれる粒子の体積平均粒子径は170nmであった。
<結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液〔D1〕の調製>
≪結晶性ポリエステル樹脂〔d1〕の合成≫
両反応性モノマーを含む、下記に示す付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂:StAc)セグメントの原料モノマーおよびラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
・スチレン 34質量部
・n−ブチルアクリレート 12質量部
・アクリル酸 2質量部
・重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)セグメントの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
・セバシン酸 281質量部
・1,12−ドデカンジオール 283質量部
次いで、撹拌下で、滴下ロートに入れた付加重合系樹脂(スチレン・アクリル樹脂:StAc)セグメントの原料モノマーおよびラジカル重合開始剤を90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー比に対してごく微量であった。
その後、エステル化触媒としてオルトチタン酸テトラブチル(Ti(O−n−Bu)4)を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、更に減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に、200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性樹脂である結晶性ポリエステル樹脂〔d1〕を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂〔d1〕の数平均分子量(Mn)は9000、融点(Tc)は76℃であった。
≪結晶性ポリエステル樹脂〔d1〕の水系分散液〔D1〕の調製≫
上記合成例で得られた、結晶性ポリエステル樹脂〔d1〕72質量部をメチルエチルケトン72質量部に、70℃で30分撹拌し、溶解させた。次に、この溶解液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.5質量部を添加した。この溶解液を、撹拌器を有する反応容器に入れ、撹拌しながら、70℃に温めた水252質量部を70分間にわたって滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に均一に乳化状の状態を得た。
次いで、この乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することでメチルエチルケトンを蒸留除去し、結晶性ポリエステル樹脂〔d1〕の水系分散液〔D1〕を調製した。レーザー回折式粒度分布測定器「LA−750(株式会社堀場製作所製)」にて測定した結果、上記水系分散液〔D1〕に含まれる粒子の体積平均粒子径は125nmであった。
<着色剤微粒子の水系分散液〔Y〕の調製>
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、着色剤として「C.I.ピグメントイエロー74」420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、イエロー着色剤の微粒子が分散されてなる着色剤微粒子の水系分散液〔Y〕を調製した。この分散液における着色剤微粒子の粒子径を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)を用いて測定したところ、182nmであった。
〈トナー6の作製〉
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、(コア用)非晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液〔A1〕231質量部(固形分換算)、離型剤粒子の水系分散液〔W1〕23質量部(固形分換算)、イオン交換水2000質量部を投入後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、溶液のpHを25℃において、10に調整した。その後、イエロー着色剤粒子の水系分散液〔Y〕23質量部(固形分換算)を投入した
次いで、硫酸アルミニウム水溶液(固形分濃度0.3質量%)8質量部(固形分換算)を10分間で滴下し、凝集を開始させた。
その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて75℃まで昇温し、結晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液〔D1〕30質量部(固形分換算)を10分間かけて添加し、75℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒子径を測定し、体積基準におけるメジアン径が6.0μmになった時点で、(シェル用)非晶性ポリエステル樹脂粒子の水系分散液〔A2〕60質量部(固形分換算)を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム80質量部をイオン交換水320質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。
さらに、80℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度が0.945になった時点で2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させ、トナー1の作製と同様に外添剤を加えて、トナー6を得た。また、上記において得られたトナー6の粒子径を測定したところ、体積基準のメジアン径が6.1μmであった。
〈トナー7の作製〉
トナー6の作製において、硫酸アルミニウム水溶液の量を12質量部に変更したこと以外は同様にして、トナー7を得た。
〈トナー12の作製〉
トナー6の作製において、硫酸アルミニウム水溶液の量を18質量部に変更したこと以外は同様にして、トナー12を得た。
〈トナー13の作製〉
トナー6の作製において、硫酸アルミニウム水溶液の量を4質量部に変更したこと以外は同様にして、トナー13を得た。
《現像剤の作製》
トナー(1)〜(13)に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを、トナー粒子濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤(1)〜(13)をそれぞれ作製した。
≪評価方法≫
作製したトナー(1)〜(13)に対して以下の評価を実施した。
(1)貯蔵弾性率G´(90)及びG´(150)の測定
本発明では、温度90℃のときの貯蔵弾性率をG´(90)とし、温度150℃のときの貯蔵弾性率をG´(150)と表記する。
各トナー0.2gを計量し、圧縮成形機で25MPaの圧力を印加して加圧成型を行い、直径10mmの円柱状ペレットを作製した。レオメーター「ARES G2」(TA instrument製)を使用し、直径8mmのパラレルプレートを上下セットで用いて、周波数1Hzの条件で測定を行った。サンプルセットを100℃にて行い、上記プレート間の隙間を一度1.6mmにセットした後にプレート間からはみ出したサンプルを掻き取り、1.4mmに上記隙間をセットし、上記ペレットに軸力をかけつつ25℃まで冷却し、10分間静置した。その後、当該軸力を止め25℃から200℃まで貯蔵弾性率(G´)の昇温測定を行った。昇温速度は3℃/分で測定を行い、温度分散のカーブを得た。当該温度分散のカーブに基づいて、測定温度が90℃及び150℃のときの貯蔵弾性率G´(90)とG´(150)とを測定した。貯蔵弾性率の単位は(Pa)である。
以下に詳細な測定条件を示す。
周波数(Frequency):1Hz
昇温速度(Ramp rate):3℃/分
軸力(Axicial force):0g
感度(sensitivity):10g
初期ひずみ(Initial strain):0.01%
ひずみ調整(Strain adjust):30.0%
最小ひずみ(Minimum strain):0.01%
最大ひずみ(Maximum strain):10.0%
最小トルク(Minimum torque):1g・cm
最大トルク(Maximum torque):80g・cm
測定間隔(Sampling interval):1.0℃/pt
(2)アルミニウム含有量の測定
トナー6、7、12、及び13中に存在するアルミニウム含有量を、以下の方法にて測定した。
各トナーのトナー母体粒子中に存在するアルミニウム含有量を、(酸分解:高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)により測定した。
<前処理>
得られたトナー3質量部をポリオキシエチルフェニルエーテルの0.2質量%水溶液35質量部に添加して分散させた後、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製、US−1200T)により25℃で5分間処理を行い、外添剤をトナー表面から取り除き、金属元素量測定用のトナー母体粒子を得た。
上記トナー母体粒子100mgを密閉式マイクロ波分解装置「マイルストーンゼネラル社製、ETHOS1」にて硫酸、硝酸による分解を行った。このとき、未分解物がある場合は塩酸、フッ化水素酸、過酸化水素などを用いて目的成分を溶出させた。分解液は超純水を用いて適宜希釈した。上記において、試薬は関東化学社製の超高純度試薬を用いた。
<測定>
高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−OES、エスアイアイナノテクノロジー社製、SPS3520UV)を用いた。このとき、アルミニウムの検出波長は以下の通りとした;
Al:167.079nm
(3)光沢度、及び光沢制御性(同一の定着温度で上下の光沢度の制御幅)
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ社製)を改造し、転写材「PODグロスコート紙128g/m2」(王子製紙製)上に、トナー付着量8g/m2のベタ画像パッチ(2.5cm×4cm)を紙の長手方向に3か所、短手方向の中央に形成し、未定着画像パッチとした。
単体駆動機として、定着駆動部を上側の定着ローラーとし、加圧側を下側の加圧ローラーとし、駆動制御部を兼ね添えた試作機を作成した。速度差なしとは、加圧側の表面速度を315mm/sにし圧着した場合に上側の定着ローラーが従動する状態をいう。一方、表面速度差−5%とは、圧着した場合に上側の定着上ローラーが299.3mm/s(315mm/sに対して5%速度遅い)となるように駆動制御部を調節した状態をいう。速度を適宜調節し、前述の未定着画像パッチを定着させた。
得られた画像を光沢計(75°ガードナー社製)で測定し、3か所の平均値を求めた。また、速度差なしと速度差ありの平均値の差分を求め、下記の判定で△以上を合格とした。
◎:速度差あり/なしの平均値差分が13〜18
○:速度差あり/なしの平均値差分が7〜12
△:速度差あり/なしの平均値差分が3〜6
×:速度差あり/なしの平均値差分が2以下
なお、実施例10は、実施例1の光沢度試験において、前記加圧ローラーのアスカーC硬度と前記定着ローラーのアスカーC硬度の差が、40°で当該加圧ローラーが硬いローラーを使用した。
(4)低温定着性
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ社製)を、定着駆動部を上側の定着ローラーとし、加圧側を下側の加圧ローラーとし、駆動制御部を兼ね添え、かつ上側の定着ローラー及び下側の加圧ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用いた。
記録材「NPi上質紙128g/m2」(日本製紙製)上に、トナー付着量11.3g/m2のベタトナー画像を、定着温度200℃にて、加圧側の定着速度を315mm/secとし、かつ上側の定着上ローラーが283.5mm/s(315mm/sに対して10%速度遅い)として表面速度差を−10%になるように駆動制御部を調整した状態で出力する試験を、定着温度を5℃刻みで減少させるよう変更しながら、コールドオフセットが発生するまで繰り返し行い、コールドオフセットが発生しなかった最低の定着上ベルトの表面温度を調査し、これを定着下限温度として低温定着性を評価した。
各試験において、定着温度とは定着上加圧ベルトの表面温度をいい、定着加圧部材の表面温度は、常に定着上加圧ベルトより20℃低い温度に設定した。定着下限温度が低いほど低温定着性に優れることを示す。本評価においては、125℃以下である場合を合格とした。
◎:最低定着温度が105℃以下
○:最低定着温度が105℃を超え115℃以下
△:最低定着温度が115℃を超え125℃以下
×:最低定着温度が125℃を超える
(5)定着分離性
≪薄紙分離性(分離可能な先端余白量)≫
画像形成装置として、市販のフルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタ社製)を、定着駆動部を上側の定着ローラーとし、加圧側を下側の加圧ローラーとし、駆動制御部を兼ね添え、かつ上側の定着ローラー及び下側の加圧ローラーの表面温度を変更可能に改造したものを用い、上記各色の二成分現像剤を順次装填した。 上記装置について、定着温度、トナー付着量を自由に設定できるように改造した。評価紙としてOKトップコート+85g/m2(王子製紙株式会社製)を用いた。
加圧側の定着速度を315mm/secとし、かつ上側の定着上ローラーが283.5mm/s(315mm/sに対して10%速度遅い)として表面速度差を−10%になるように駆動制御部を調整した状態で、アンダーオフセットが発生しない温度(U.O.回避温度)を基準として25℃上昇させた温度(U.O.回避温度+25℃)を定着上加圧ベルト(定着部材に相当)の温度とし、また、定着加圧部材を90℃に設定した。
それぞれの全ベタ画像(付着量8.0g/m2)について先端余白量を変化させて画出し、紙詰まり(ジャム)が発生した直前の先端余白量を薄紙分離性能の尺度とした。分離可能な先端余白量の値が小さい方が、分離性能が良い。なお、評価は、常温常湿環境(NN環境:25℃、50%RH)で実施した。また、分離可能な先端余白は、小さければ小さいほど、薄紙分離性に優れることを意味しており、当該先端余白が10mm未満であるとき、合格と判定する。
(評価基準)
◎:分離可能な先端余白が2mm未満
〇:分離可能な先端余白が2mm以上、5mm未満
△:分離可能な先端余白が5mm以上、10mm未満
×:分離可能な先端余白が10mm以上
表Iの結果から、本発明で規定する貯蔵弾性率の範囲を満たすトナーを用い、上下の定着ローラー及び加圧ローラーに速度差を設けることにより、光沢度を所望の値に制御でき、定着性及び定着分離性に優れた画像形成方法及び画像形成装置が得られることが分かった。