JP2020075818A - フィルムロールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】蒸着工程でのフィルムロールの搬送中でのフィルム蛇行や蒸着時のシワ等のトラブルを防止することができ、さらに加工性に優れたポリプロピレンフィルムロールを提供することを可能とする。【解決手段】ポリプロピレン樹脂を主成分とするフィルムを、コアに巻回してなるフィルムロールの製造方法であって、前記フィルムを前記コアに巻き取る際に、除電器によりイオンを発生させ、前記イオンを前記フィルムの表面に吹き付ける工程を有し、前記フィルムロールの最表面からコアまでの距離に応じて、前記イオンによる除電能力を変化させることを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、フィルムコンデンサ用誘電体として用いた場合、蒸着工程やコンデンサ製造工程における加工性に優れるフィルムロールの製造方法に関する。
ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性などに優れるため、包装用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途などの様々な用途に用いられている。
中でもコンデンサ用途には、その優れた耐電圧特性、低損失特性から直流用途、交流用途に限らず高電圧コンデンサ用に特に好ましく用いられている。近年の各電気設備のインバーター化や自動車の電動化に伴ってコンデンサの小型化、大容量化の要求が高まっており、ポリプロピレンフィルムを薄膜化していくことが必須な状況となっている。さらに、コストダウンの観点からフィルムロールの大型化(フィルムロール幅の広幅化、フィルムロール巻長の長尺化)と加工速度の高速化が進んでおり、フィルムロールには高い加工性が求められている。
しかしながら、薄膜フィルムロールを加工する際には、特に真空蒸着工程において、フィルムロールを巻き出し時のバタつき、走行時のローラー間での蛇行、シワの発生、マージン精度不良等の問題が発生し、最終製品の歩留まりを悪化させているのが現状である。
以上のような真空蒸着工程の不具合は、蒸着前のフィルムロール製造工程と蒸着時の加工工程の環境変化に起因する。すなわち、フィルムロールは1気圧の大気圧下で製造されるため、フィルムロール内に1気圧の空気を巻き込んでおり、この空気が蒸着チャンバ内で減圧雰囲気に曝されることによって膨張してフィルムの層間隙を拡げ、フィルムの巻き張力とのバランスが不安定になった際に、フィルム搬送時に蛇行やシワが発生する。搬送時の蛇行やシワが発生すると、蒸着品の品位が低下し、後工程(蒸着品のマイクロスリット工程、コンデンサ素子作成工程)で歩留まりが悪化しやすい。
蒸着加工工程のフィルム搬送時の蛇行やシワの発生は、フィルムロールの表面電位の影響も大きいことが分かっている。表面電位が高いフィルムロールを蒸着加工すると、蒸着機内でフィルムロール巻き出し時に剥離放電が発生し、フィルムがバタつき、巻き取り張力とのバランスが不安定となった際に、フィルム搬送時の蛇行やシワが発生する。さらに、フィルムロールの幅方向に表面電位ムラが大きい場合、特に正と負の電位が交互に存在する帯状の帯電がある場合には、蒸着機内で巻き出されたフィルムが剥離放電を起こすことで表面電位が大きくなり、幅方向で強い正負電荷の引力によりフィルムが折れるようにくっついたまま搬送されシワとなる。
すなわち、薄膜フィルムの蒸着加工時の不具合を抑制するためには、フィルムロールの内層エア量とともに、フィルムの帯電状態を同時に制御することが必要である。
フィルムロールの加工性を向上させるため、フィルムロールの内層エア量や表面電位制御の観点から様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1では、剥離帯電が少なく、耐ブロッキング性が良好なフィルムロールを提供するため、フィルムの表面粗さとフィルムロールの巻き硬度を制御する検討がなされている。また、特許文献2では、蛇行、巻きズレ、シワ、ブロッキング、などが発生しにくく巻き取り加工適正に優れたフィルムロールを提供するため、フィルムの表面処理条件を最適化し、フィルム同士の摩擦係数と表面粗さを制御する検討がなされている。さらに、特許文献3では、蒸着ロールの巻きズレやシワ、搬送中の蛇行などのトラブルを防止し、加工性に優れたフィルムロールを提供するため、フィルムロールの内層硬度及びフィルム表面の突起高さを制御する検討がなされている。
さらに、フィルムロールの巻き取り工程での除電方法として様々な検討がなされている。例えば、特許文献4では、巻き始めから巻き終わりまで全長に渡って表面電位が小さいフィルムロールを提供するために、スリッター巻き取り部に巻き取られたフィルムの巻き取り径に対しての除電器の最適除電能力演算方法と除電能力を変化させる方法として印加電圧、イオン風の風量、フィルムロールと除電器の距離を制御する方法が提案されている。また、特許文献5では、フィルムロールと除電器との距離を一定に保つための複雑な設備改造を行わずに、安価な設備にてフィルムロール表面電位を抑えるために、スリッター巻き取り部の除電器とフィルムロールとの距離及び除電器から放出されるイオン風の風速、スリッター巻き取り部の湿度を制御する方法が提案されている。また、特許文献6では、除電器とフィルムロールが適切な距離にない場合に発生する除電不足や過除電を解消するため、スリットする際に巻き取り部の除電器とフィルムロールとの距離及びイオン発振周波数を制御する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法では、近年のフィルムの薄膜化や加工速度の高速化において、フィルムロールの内層エア量や表面電位の制御が不十分であり、シワの解消には至っていない。
さらに、特許文献4〜6に記載の方法では、フィルムロールの表面電位はスリット条件(張力や速度)毎のフィルムと搬送ロールとの摩擦帯電量によって変化するため、これらの除電方法では表面電位の制御が不十分であり、近年のフィルムの薄膜化や加工速度の高速化において、フィルムロールの内層エア量や表面電位の制御が不十分であり、シワの解消には至っていない。
そこで本発明は、蒸着コンデンサを作製する際に、蒸着工程でのフィルムロールの搬送中でのフィルム蛇行や蒸着時のシワ等のトラブルを防止することができ、さらに各コンデンサ製造において加工性に優れたポリプロピレンフィルムロールの製造方法を提供することにある。
上記した課題を解決するため、本発明のフィルムロールの製造方法は次の構成を有する。
(1) ポリプロピレン樹脂を主成分とするフィルムを、コアに巻回してなるフィルムロールの製造方法であって、
前記フィルムを前記コアに巻き取る際に、除電器によりイオンを発生させ、前記イオンを前記フィルムの表面に吹き付ける工程を有し、
前記フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、前記イオンによる除電能力を変化させることを特徴とする、フィルムロールの製造方法。
(2) 前記フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、前記フィルムをコアに巻き取る際の張力を変化させることを特徴とする、前記(1)に記載のフィルムロールの製造方法。
(3) 除電能力テーパ(巻き終わり時の除電能力/巻き始め時の除電能力×100)が60%以上100%未満であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載のフィルムロールの製造方法。
(4) 除電能力テーパ(巻き終わり時の除電能力/巻き始め時の除電能力×100)及び巻き始め時の除電能力から求めた除電能力を、巻き終わり時の除電能力とすると、
前記除電能力は、巻き始め時の除電能力から巻き終わり時の除電能力まで、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化することを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
(5) 張力テーパ(巻き終わり時の張力/巻き始め時の張力×100)が60%以上80%以下であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
(6) 張力テーパ(巻き終わり時の張力/巻き始め時の張力×100)及び巻き始め時の張力から求めた張力を、巻き終わり時の張力とすると、
前記張力は、巻き始め時の張力から巻き終わり時の張力まで、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化することを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
(1) ポリプロピレン樹脂を主成分とするフィルムを、コアに巻回してなるフィルムロールの製造方法であって、
前記フィルムを前記コアに巻き取る際に、除電器によりイオンを発生させ、前記イオンを前記フィルムの表面に吹き付ける工程を有し、
前記フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、前記イオンによる除電能力を変化させることを特徴とする、フィルムロールの製造方法。
(2) 前記フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、前記フィルムをコアに巻き取る際の張力を変化させることを特徴とする、前記(1)に記載のフィルムロールの製造方法。
(3) 除電能力テーパ(巻き終わり時の除電能力/巻き始め時の除電能力×100)が60%以上100%未満であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載のフィルムロールの製造方法。
(4) 除電能力テーパ(巻き終わり時の除電能力/巻き始め時の除電能力×100)及び巻き始め時の除電能力から求めた除電能力を、巻き終わり時の除電能力とすると、
前記除電能力は、巻き始め時の除電能力から巻き終わり時の除電能力まで、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化することを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
(5) 張力テーパ(巻き終わり時の張力/巻き始め時の張力×100)が60%以上80%以下であることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
(6) 張力テーパ(巻き終わり時の張力/巻き始め時の張力×100)及び巻き始め時の張力から求めた張力を、巻き終わり時の張力とすると、
前記張力は、巻き始め時の張力から巻き終わり時の張力まで、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化することを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
本発明の製造方法により得られたフィルムロールをコンデンサ用誘電体として用いた場合、蒸着加工工程やコンデンサ製造工程において、加工性に優れたコンデンサ用誘電体として好適に使用することができる。
以下、本発明の製造方法及び、それにより得られるフィルムロールについて説明する。
本発明のフィルムロールの製造方法は、後述するフィルムをコアに巻回してなるフィルムロールに関する。本発明のフィルムロールに用いるコアは、円筒状のコアである。そしてコアを構成する材料は、特に限定されず、例えば変形の少ないプラスチック製、繊維強化プラスチック製、金属製が好ましく、強度の観点から繊維強化プラスチックス製のコアを用いることがより好ましい。繊維強化プラスチックコアとしては、例えば炭素繊維あるいはガラス繊維を巻回して円筒形とし、これに不飽和ポリエステル樹脂のような熱硬化性樹脂を含浸せしめ、硬化させた樹脂含浸タイプのコアなどが挙げられる。
本発明の製造方法により得られるフィルムロールは、フィルムロールの最表面の表面電位が−0.50kV〜+0.50kVであることが好ましい。フィルムロールの最表面の表面電位は、好ましくは−0.40kV〜+0.40kVであり、さらに好ましくは−0.30kV〜+0.30kVである。フィルムロールの最表面の表面電位が−0.50kV未満であると、蒸着の際のフィルムロール巻き出し時に剥離帯電が大きくなり、フィルムのバタつき、搬送中の蛇行、蒸着部でのシワとなる。フィルムロールの最表面の表面電位が+0.50kVを超えると、蒸着の際のフィルムロール巻き出し時に剥離帯電が大きくなり、フィルムのバタつき、搬送中の蛇行、蒸着部でのシワとなる。フィルムロールの最表面の表面電位が、−0.50kV〜+0.50kVの場合、蒸着の際のフィルムロール巻き出し時に剥離帯電を低減することができ、フィルムのバタつき、搬送中の蛇行、蒸着部でのシワを抑制することが可能である。フィルムロールの最表面の表面電位を−0.50kV〜+0.50kVとするには、フィルムの主成分としてポリプロピレン樹脂を使用して、後述するスリット条件とスリット巻き取り時の除電条件とすることで達成できる。なお、フィルムロールの最表面の表面電位は、フィルムロールの最表面について、幅方向10点の表面電位の平均値を意味する。そのためフィルムロールの最表面の表面電位は、後述するフィルムロールの最表面からの距離0(mm)の位置における、幅方向10点の表面電位の平均値(C(0)(kV))と同じである。
本発明の製造方法により得られるフィルムロールは、フィルムロールの最表面から見たコアの直径方向における、フィルムロールの最表面からコアまでの距離をL(mm)、フィルムロールの最表面からの距離0(mm)、L/5(mm)、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)の位置における、幅方向10点の表面電位の平均値を、それぞれC(0)(kV)、 C(L/5)(kV)、C(2L/5)(kV)、C(3L/5)(kV)、C(4L/5)(kV)とし、各点間の表面電位の傾きK(kV/mm)を式1〜式4で表したとき、K×1000(V/mm)が式5〜8の全てを満たすフィルムロールであることが好ましい。
K1={C(L/5) − C(0)} /(L/5) ・・・式1
K2={C(2L/5)− C(L/5)} /(L/5) ・・・式2
K3={C(3L/5)− C(2L/5)}/(L/5) ・・・式3
K4={C(4L/5)− C(3L/5)}/(L/5) ・・・式4
−5.0≦ K1×1000 ≦5.0 ・・・式5
−5.0≦ K2×1000 ≦5.0 ・・・式6
−5.0≦ K3×1000 ≦5.0 ・・・式7
−5.0≦ K4×1000 ≦5.0 ・・・式8
各点間の表面電位の傾きKは、より好ましくは、下記式9〜12の全てを満たす場合である。
−4.0≦K1×1000≦4.0 ・・・式9
−4.0≦K2×1000≦4.0 ・・・式10
−4.0≦K3×1000≦4.0 ・・・式11
−4.0≦K4×1000≦4.0 ・・・式12
各点間の表面電位の傾きKは、さらに好ましくは、下記式13〜16の全てを満たす場合である。
−3.0≦K1×1000≦3.0 ・・・式13
−3.0≦K2×1000≦3.0 ・・・式14
−3.0≦K3×1000≦3.0 ・・・式15
−3.0≦K4×1000≦3.0 ・・・式16
ここで、フィルムロールの最表面から見たコアの直径方向における、フィルムロールの最表面からコアまでの距離L(mm)におけるフィルムロールの最表面とは、フィルムロールの外側(コアがない側)の最表面を意味し、そのためコアと接しているフィルム表面とは別のフィルム表面で形成されている。また、フィルムロールの最表面から見たコアの直径方向における、フィルムロールの最表面からコアまでの距離L(mm)におけるコアとは、コアの外側の最表面、つまり、フィルムと接する側のコアの表面を意味する。つまりフィルムロールの最表面から見たコアの直径方向における、フィルムロールの最表面からコアまでの距離L(mm)は、フィルムロールの外側(コアがない側)の最表面からコアの外側(フィルムと接する側)の最表面までの最短距離に相当する。
K1={C(L/5) − C(0)} /(L/5) ・・・式1
K2={C(2L/5)− C(L/5)} /(L/5) ・・・式2
K3={C(3L/5)− C(2L/5)}/(L/5) ・・・式3
K4={C(4L/5)− C(3L/5)}/(L/5) ・・・式4
−5.0≦ K1×1000 ≦5.0 ・・・式5
−5.0≦ K2×1000 ≦5.0 ・・・式6
−5.0≦ K3×1000 ≦5.0 ・・・式7
−5.0≦ K4×1000 ≦5.0 ・・・式8
各点間の表面電位の傾きKは、より好ましくは、下記式9〜12の全てを満たす場合である。
−4.0≦K1×1000≦4.0 ・・・式9
−4.0≦K2×1000≦4.0 ・・・式10
−4.0≦K3×1000≦4.0 ・・・式11
−4.0≦K4×1000≦4.0 ・・・式12
各点間の表面電位の傾きKは、さらに好ましくは、下記式13〜16の全てを満たす場合である。
−3.0≦K1×1000≦3.0 ・・・式13
−3.0≦K2×1000≦3.0 ・・・式14
−3.0≦K3×1000≦3.0 ・・・式15
−3.0≦K4×1000≦3.0 ・・・式16
ここで、フィルムロールの最表面から見たコアの直径方向における、フィルムロールの最表面からコアまでの距離L(mm)におけるフィルムロールの最表面とは、フィルムロールの外側(コアがない側)の最表面を意味し、そのためコアと接しているフィルム表面とは別のフィルム表面で形成されている。また、フィルムロールの最表面から見たコアの直径方向における、フィルムロールの最表面からコアまでの距離L(mm)におけるコアとは、コアの外側の最表面、つまり、フィルムと接する側のコアの表面を意味する。つまりフィルムロールの最表面から見たコアの直径方向における、フィルムロールの最表面からコアまでの距離L(mm)は、フィルムロールの外側(コアがない側)の最表面からコアの外側(フィルムと接する側)の最表面までの最短距離に相当する。
フィルムロールの最表面の表面電位が−0.50kV未満であると、蒸着の際のフィルムロール巻き出し時に剥離帯電が大きくなり、フィルムのバタつき、搬送中の蛇行、蒸着部でのシワとなることがある。フィルムロールの最表面の表面電位が+0.50kVを超えると、蒸着の際のフィルムロール巻き出し時に剥離帯電が大きくなり、フィルムのバタつき、搬送中の蛇行、蒸着部でのシワとなることがある。各点間の表面電位の傾きK1、K2、K3、K4が式5〜8の全てを満たす場合、フィルム長手方向の表面電位ムラが小さくなり、フィルムロールの最表面からコア付近にかけての表面電位の増加を抑制することが可能である。各点間の表面電位の傾きK1、K2、K3、K4が式5〜8を満たす範囲内とするためには、フィルムとして後述するポリプロピレン樹脂を主成分とするものとして、スリット条件と除電条件を特定の条件とすることで達成できる。
本発明の製造方法により得られるフィルムロールは、フィルムロールの幅方向10点の表面電位の最大値をCmax(kV)、最小値をCmin(kV)としたとき、フィルムロールの最表面からの距離0(mm)、L/5(mm)、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)のすべての位置において、下記式17を満たすことが好ましい。
0 < Cmax − Cmin ≦0.30・・・式17
より好ましくは、距離0(mm)、L/5(mm)、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)のすべての点において下記式18を満たす場合である。
0 < Cmax − Cmin ≦0.20・・・式18
さらに好ましくは、距離0(mm)、L/5(mm)、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)のすべての点において下記式19を満たす場合である。
0 < Cmax − Cmin ≦0.10・・・式19
距離0(mm)、L/5(mm)、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)のすべての位置において式17を満たすと、蒸着時に加工装置内でフィルムロール巻き出し時の剥離帯電の偏りがないため、フィルムの蛇行やバタつき、搬送中のシワが生じにくく不良率が増加することがない。距離0(mm)、L/5(mm)、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)のすべての点において式17を満たすためには、フィルムとして上述したポリプロピレン樹脂を主成分として使用して、後述する通り、スリット条件と除電条件を特定の条件とすることで達成できる。
0 < Cmax − Cmin ≦0.30・・・式17
より好ましくは、距離0(mm)、L/5(mm)、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)のすべての点において下記式18を満たす場合である。
0 < Cmax − Cmin ≦0.20・・・式18
さらに好ましくは、距離0(mm)、L/5(mm)、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)のすべての点において下記式19を満たす場合である。
0 < Cmax − Cmin ≦0.10・・・式19
距離0(mm)、L/5(mm)、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)のすべての位置において式17を満たすと、蒸着時に加工装置内でフィルムロール巻き出し時の剥離帯電の偏りがないため、フィルムの蛇行やバタつき、搬送中のシワが生じにくく不良率が増加することがない。距離0(mm)、L/5(mm)、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)のすべての点において式17を満たすためには、フィルムとして上述したポリプロピレン樹脂を主成分として使用して、後述する通り、スリット条件と除電条件を特定の条件とすることで達成できる。
本発明の製造方法により得られるフィルムロールは、各点間の表面電位の傾きK×1000(V/mm)が下記式20〜23の全てを満たすことが好ましい。
1.0≦ K1×1000 ≦5.0 ・・・式20
1.0≦ K2×1000 ≦5.0 ・・・式21
1.0≦ K3×1000 ≦5.0 ・・・式22
1.0≦ K4×1000 ≦5.0 ・・・式23
より好ましくは、各点間の表面電位の傾きK×1000(V/mm)が下記式24〜27の全てを満たす場合である。
1.0≦ K1×1000 ≦4.0 ・・・式24
1.0≦ K2×1000 ≦4.0 ・・・式25
1.0≦ K3×1000 ≦4.0 ・・・式26
1.0≦ K4×1000 ≦4.0 ・・・式27
さらに好ましくは、各点間の表面電位の傾きK×1000(V/mm)が下記式28〜31の全てを満たす場合である。
1.0≦ K1×1000 ≦3.0 ・・・式28
1.0≦ K2×1000 ≦3.0 ・・・式29
1.0≦ K3×1000 ≦3.0 ・・・式30
1.0≦ K4×1000 ≦3.0 ・・・式31
各点間の表面電位の傾きK1、K2、K3、K4が式20〜23を満たす場合、フィルム長手方向の表面電位ムラが小さくなり、フィルムロールの最表面からコア付近にかけての表面電位の増加を抑制することが可能である。さらに、フィルムロールの表面電位の傾きに”-“の符号がないため、蒸着の際のフィルム巻き出し時に異符号の電荷の引き合いによる異常なバタつきの発生が起こらず、蒸着中のシワ発生率を抑えることができる。各点間の表面電位の傾きK1、K2、K3、K4が式20〜23を満たすためには、上述したポリプロピレン樹脂を主成分としたフィルムを使用して、後述する通り、スリット条件と除電条件を特定の条件とすることで達成できる。
1.0≦ K1×1000 ≦5.0 ・・・式20
1.0≦ K2×1000 ≦5.0 ・・・式21
1.0≦ K3×1000 ≦5.0 ・・・式22
1.0≦ K4×1000 ≦5.0 ・・・式23
より好ましくは、各点間の表面電位の傾きK×1000(V/mm)が下記式24〜27の全てを満たす場合である。
1.0≦ K1×1000 ≦4.0 ・・・式24
1.0≦ K2×1000 ≦4.0 ・・・式25
1.0≦ K3×1000 ≦4.0 ・・・式26
1.0≦ K4×1000 ≦4.0 ・・・式27
さらに好ましくは、各点間の表面電位の傾きK×1000(V/mm)が下記式28〜31の全てを満たす場合である。
1.0≦ K1×1000 ≦3.0 ・・・式28
1.0≦ K2×1000 ≦3.0 ・・・式29
1.0≦ K3×1000 ≦3.0 ・・・式30
1.0≦ K4×1000 ≦3.0 ・・・式31
各点間の表面電位の傾きK1、K2、K3、K4が式20〜23を満たす場合、フィルム長手方向の表面電位ムラが小さくなり、フィルムロールの最表面からコア付近にかけての表面電位の増加を抑制することが可能である。さらに、フィルムロールの表面電位の傾きに”-“の符号がないため、蒸着の際のフィルム巻き出し時に異符号の電荷の引き合いによる異常なバタつきの発生が起こらず、蒸着中のシワ発生率を抑えることができる。各点間の表面電位の傾きK1、K2、K3、K4が式20〜23を満たすためには、上述したポリプロピレン樹脂を主成分としたフィルムを使用して、後述する通り、スリット条件と除電条件を特定の条件とすることで達成できる。
本発明の製造方法により得られるフィルムロールは、フィルムロールの最表面から見たコアの直行方向における、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lが20mm以上300mm以下であることが好ましく、より好ましくは50〜280mm、さらに好ましくは90〜240mmである。コアの直行方向におけるフィルムロールの最表面からコアまでの距離Lが20mm以上300mm以下の場合、除電不足や過除電による異常な表面電位の増加がないため、フィルム巻き出し時の剥離帯電によるバタつきが起こらず、蒸着中のシワ発生率を抑制できるために好ましい。
本発明の製造方法により得られるフィルムの少なくとも一方の表面の表面粗さ(算術平均高さ)Saは、0.01〜0.05μmであることが好ましく、より好ましくは、0.02〜0.04μmである。フィルムの表面粗さ(算術平均高さ)Saが0.01〜0.05μmの場合、フィルムと搬送ロールや接圧ロールとの摩擦帯電が小さくなることで、フィルムロールの最表面からコア付近にかけての表面電位が小さくなり蒸着加工性が向上するために好ましい。
本発明の製造方法により得られるフィルムロールは、フィルムの厚み(t)が0.5〜7.0μmであることが好ましい。フィルム厚みは0.8〜6.8μmであるとより好ましく、1.2〜6.5μmであるとさらに好ましい。フィルム厚みが0.5〜7.0μmの場合、機械強度や耐電圧特性に優れ、製膜および加工時にフィルム破断が生じにくい一方、コンデンサ用誘電体として用いた際に体積当たりの容量が小さくなりにくいために好ましい。フィルム厚みを0.5〜7.0μmの範囲内とするためには、シートを形成する際に樹脂の吐出量を調整したり、ドラフト比を調整したりすることで適宜設定することができるが、フィルム厚みが薄くなればなるほど製膜時のフィルム破断が生じやすくなるため、上述したポリプロピレン樹脂を使用して、後述する通りフィルム製膜時のキャスト工程、縦延伸工程、横延伸工程を特定の条件とすることで安定して製膜することが可能となる。
本発明の製造方法により得られるフィルムロールは、コンデンサの需要、生産性の観点から、フィルムロール幅が500mm以上1100mm以下であることが好ましい。より好ましくは、600mm以上950mm以下であり、更に好ましくは620mm以上820mm以下である。フィルムロール幅が500mm以上1100mm以下の場合、幅方向の表面電位や内層エア量のバラツキが小さく、蒸着工程での蛇行やシワ発生を抑制し、蒸着効率を向上させる事が可能である。ここでフィルムロール幅とは、フィルムロール中のコア部分の幅を意味するものではなく、フィルムロール中のフィルム部分の幅を意味する。
続いて本発明のフィルムロール中のフィルムについて説明する。
本発明の製造方法により得られるフィルムロールに用いられるフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主成分とする。ここで、ポリプロピレン樹脂としては、後述する共重合体や分岐鎖状ポリプロピレンも含まれてもよい。なお、本発明において「主成分」とは、特定の成分がフィルムの全成分100質量%中に占める割合が50質量%以上100質量%以下であることを意味し、より好ましくは80質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上100質量%以下、特に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。フィルム中のポリプロピレン樹脂以外の成分としては、後述する酸化防止剤や易滑剤といった添加剤が挙げられる。
かかるポリプロピレン樹脂としては、主としてプロピレンの単独重合体を用いても良いが、本発明の目的を損なわない範囲で他の不飽和炭化水素を共重合したポリプロピレン共重合体を用いてもよいし、プロピレンの単独重合体と他の重合体とのブレンド物を用いても良い。上記ポリプロピレン共重合体の共重合成分としては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。上記のブレンドすべき他の重合体としては、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単独重合体やプロピレンを含む不飽和炭化水素の共重合体を用いることができる。耐電圧特性、寸法安定性の観点から、共重合量は1mol%未満とするのが好ましい。ブレンド量は20質量%未満とするのが好ましい。
本発明の製造方法により得られるフィルムロール中のフィルムの主成分を構成するポリプロピレン樹脂としては、冷キシレン可溶部(以下、CXS)が5質量%以下であることが好ましい。ここでCXSとは、フィルムを135℃のキシレンで完全溶解せしめた後、20℃で析出させた時に、キシレン中に溶解しているポリプロピレン成分のことをいい、立体規則性が低い、分子量が低いなどの理由により結晶化し難い成分に該当していると考えられる。ポリプロピレン樹脂のCXSは5質量%以下であるとより好ましく、3質量%以下であるとさらに好ましく、1質量%以下であると特に好ましい。CXSが5質量%を超える場合、ポリプロピレンフィルムの耐電圧特性や寸法安定性が劣ることがある。ポリプロピレン樹脂のCXSを上記の範囲内とするには、樹脂を得る際の触媒活性を高める方法、得られた樹脂を溶媒あるいはプロピレンモノマー自身で洗浄する方法などがある。
本発明の製造方法により得られるフィルムロール中のフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率は、高温時の熱収縮特性の観点から95%以上であることが好ましく、更に好ましくは97%以上である。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレン樹脂の結晶相の立体規則性を示す指標であり、該数値が高いものほど結晶化度が高く、融点が高くなり、特に高温での蒸着加工性の観点から好ましい。このような立体規則性の高い樹脂を得るには、n−ヘプタン等の溶媒で得られた樹脂パウダーを洗浄する方法や、触媒および/または助触媒の選定、組成の選定を適宜行う方法等が好ましく採用される。メソペンタッド分率が上記好ましい範囲の場合は耐電圧特性や寸法安定性に優れる。
本発明の製造方法により得られるフィルムロール中のフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(以下、MFR)はJIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した場合において、1.0〜10g/10分であることが好ましく、1.5〜8g/10分であるとより好ましく、2.0〜5g/10分であるとさらに好ましい。ポリプロピレン樹脂のMFRが上記好ましい範囲の場合、製膜性に優れ安定してポリプロピレンフィルムが得られる一方、耐電圧特性にも優れる。ポリプロピレン樹脂のMFRを上記の範囲内とするためには、平均分子量や分子量分布を制御する方法などが好ましく採用される。
本発明の製造方法により得られるフィルムロール中のフィルムの主成分となるポリプロピレン樹脂としては、製膜性を向上させる目的で分岐鎖状ポリプロピレンを含有してもよい。この場合、分岐鎖状ポリプロピレンは、230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレート(MFR)が、log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74なる関係式を満たす分岐鎖状ポリプロピレンであることが好ましい。230℃で測定したときの溶融張力(MS)とメルトフローレート(MFR)が、log(MS)>−0.56log(MFR)+0.74なる関係式を満たす分岐鎖状ポリプロピレンを得るには、高分子量成分を多く含むポリプロピレンをブレンドする方法、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法、特開昭62−121704号公報に記載されているようにポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法、あるいは特許第2869606号公報に記載されているような方法等が好ましく用いられる。具体的には、LyondellBasell社製“PRO−FAX”(登録商標)PF−814、Borealis社製“Daploy”(商標)HMS−PP(WB130HMS、WB135HMSなど)が例示されるが、この中でも電子線架橋法により得られる樹脂が該樹脂中のゲル成分が少ないために好ましく用いられる。なお、ここでいう分岐鎖状ポリプロピレンとは、カーボン原子10,000個中に対し5箇所以下の内部3置換オレフィンを有するポリプロピレンであり、この内部3置換オレフィンの存在は、1H−NMRスペクトルのプロトン比により確認することができる。分岐鎖状ポリプロピレンは、α晶核剤としての作用を有しながら、一定範囲の添加量であれば結晶形態による粗面形成も可能となる。詳しくは、溶融押出した樹脂シートの冷却工程で生成するポリプロピレンの球晶サイズを小さく制御でき、延伸工程で生成する絶縁欠陥の発生を抑制し、耐電圧特性に優れたポリプロピレンフィルムを得ることができる。
本発明の製造方法により得られるフィルムロール中のフィルムに分岐鎖状ポリプロピレンを含有せしめる場合、含有量はフィルムの全成分100質量%中に0.05〜3.0質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であるとより好ましく、0.3〜1.5質量%であるとさらに好ましく、0.5〜1.0質量%であると特に好ましい。分岐鎖状ポリプロピレンの含有量が上記好ましい範囲の場合、製膜性の向上効果が得られる一方、ポリプロピレンフィルムとしての立体規則性が低下しないので、耐電圧特性に優れる。
本発明の製造方法により得られるフィルムロール中のフィルムを構成するポリプロピレン樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、熱安定剤、易滑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤などを含有せしめることも好ましい。
上記した添加剤の中で、酸化防止剤の種類、および添加量の選定は長期耐熱性の観点から重要である。すなわち、酸化防止剤としては、立体障害性を有するフェノール系のもので、そのうち少なくとも1種は分子量500以上の高分子量型のものが好ましい。具体的には、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT:分子量220.4)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(例えば、BASF社製“Irganox”(登録商標)1330:分子量775.2)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(例えば、BASF社製“Irganox”(登録商標)1010:分子量1177.7)などを単独使用、もしくは併用することが好ましい。これら酸化防止剤の総含有量はポリプロピレン樹脂全量に対して0.03〜1.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.9質量%であるとより好ましい。ポリプロピレン樹脂中の酸化防止剤含有量が優れる一方、高温での耐電圧特性に優れる。
本発明の製造方法により得られるフィルムロール中のフィルムは、少なくとも片面の表面ぬれ張力が37〜50mN/mであることが好ましく、38〜49mN/mであるとより好ましく、39〜48mN/mであるとさらに好ましく、40〜47mN/mであると特に好ましい。表面ぬれ張力が上記好ましい下限以上の場合、金属蒸着する際に金属との密着が十分となる。
次に本発明のフィルムロールの製造方法を以下に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
まず、上述した好ましいポリプロピレン樹脂を単軸の溶融押出機に供給し、230〜260℃の温度でスリット状口金から押出し、冷却ドラム上で固化させ未配向シートを得る。ここで、本発明のフィルムロールに適したフィルムを得るため、β晶を適正に生成せしめる目的で、冷却ドラムの温度制御を適切に行うことが好ましい。β晶を効率的に生成せしめるためには、β晶の生成効率が最大となる樹脂温度に所定時間維持することが好ましく、該温度は通常は115〜135℃である。また保持時間としては1.5秒以上保持することが好ましい。これらの条件を実現するためには樹脂温度や押出量、引き取り速度等に応じて適宜プロセスを決定することができるが、生産性の観点からは、冷却ドラムの径が保持時間に大きく影響するために、該ドラムの直径は少なくとも1m以上であることが好ましい。更に、選定すべき冷却ドラム温度としては上述のように他の要素が影響するためにある程度の任意性を含むものの、70〜130℃であることが好ましく、さらに好ましくは90〜110℃の範囲である。冷却ドラム温度が上記好ましい範囲であるとフィルムの結晶化が進行しすぎないので後の工程での配向が容易で、フィルム内にボイドができにくく耐絶縁破壊特性が低下することもない。冷却ドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、平面性が良好でかつ表裏の熱収縮特性や表面粗さの制御が可能なエアーナイフ法が好ましい。
次に、得られた未延伸シートを二軸延伸し、二軸配向せしめる。具体的な延伸条件としては、まず、未延伸シートを長手方向に延伸する温度を制御する。温度制御の方法は、温度制御された回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを使用する方法などがある。まず未配向フィルムを100〜150℃に保たれたロールに通して予熱し、引き続き該シートを110℃〜150℃の温度に保ち、この場合、長手方向の延伸倍率として3〜7倍配向した後、10〜40℃の冷却ロールに通して室温まで冷却する。
次に、テンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入する。好ましくは150〜170℃、より好ましくは153〜168℃、さらに好ましくは155〜165℃に加熱して幅方向に7〜14倍、より好ましくは9〜13倍、さらに好ましくは10〜13倍延伸を行う。次いで140〜160℃の温度で熱固定することが好ましい。温度は147〜160℃であることが好ましく、150〜160℃であるとより好ましい。さらに、熱処理時にはフィルムの長手方向および/もしくは幅方向に弛緩させながら行ってもよく、幅方向の弛緩率を10〜20%で弛緩することが好ましい。
次に冷却室にてフィルムを冷却する。幅手方向の厚みムラ、熱寸法安定性の観点から、冷却室を3室に隔て、冷却室3室をそれぞれ冷却室1、2、3としたとき、冷却室1の冷却室温度を110〜130℃で0.5秒以上、冷却室2の冷却室温度を80〜100℃で0.5秒以上、冷却室3の冷却室温度を50〜70℃で0.5秒以上保持することが好ましい。冷却室1、2、3の保持時間を1.0秒以上であることがより好ましい。保持時間が上記好ましい下限以上である場合、急激に冷却されにくいので幅手方向の厚みムラを抑制でき、熱寸法安定性が良好である。
次に、蒸着を施す面に蒸着金属の密着性を良くする観点で、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムに空気中、窒素中、炭酸ガス中、あるいはこれらの混合気体中で処理強度20〜30W・min/m2でコロナ放電処理を施し、蒸着金属の接着性を付与する。
次にスリット工程にてフィルムロールを所定の幅にしてコアに巻き取るが、このスリット条件及び後述するスリット巻き取り部に設置された除電器の条件は、本発明のフィルムロールの製造方法において特に重要であり、つまり本発明のフィルムロールの製造方法は、ポリプロピレン樹脂を主成分とするフィルムを、コアに巻回してなるフィルムロールの製造方法であって、フィルムをコアに巻き取る際に、除電器によりイオンを発生させ、イオンをフィルムの表面に吹き付ける工程を有し、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、イオンによる除電能力を変化させることを特徴とする製造方法である。以下にこの製造方法について説明する。
本発明のフィルムロールの製造方法においては、フィルムをコアに巻き取る際に、除電器によりイオンを発生させ、イオンをフィルムの表面に吹き付ける工程を有することが好ましい。フィルムをコアに巻き取る際に、イオンをフィルムの表面に吹き付ける工程を有することで、フィルムロールの表面電位を低減することが可能となる。イオンをフィルムの表面に吹き付ける工程において、イオンによってフィルムが受ける除電能力は特に限定されないが、1kV/s〜10kV/sであることが好ましく、3kV/s〜10kV/sがより好ましく、5kV/s〜10kV/sがさらに好ましい。イオンをフィルムの表面に吹き付ける工程において、イオンによってフィルムが受ける除電能力を1kV/s〜10kV/sの範囲とすることで、除電不足や過除電による異常な表面電位の増加がないため、フィルム巻き出し時の剥離帯電によるバタつきが起こらず、蒸着中のシワ発生率を抑制することが可能である。
さらに本発明のフィルムロールの製造方法においては、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、イオンをフィルムの表面に吹き付ける工程におけるイオンによる除電能力を変化させることが好ましい。フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、イオンによる除電能力を変化させることで、フィルムロール径の増加に伴う除電針の先端とフィルムとの距離の変化に対して適切な除電制御を行うことが可能となる。ここで除電能力を変化させるとは、除電気の出力電圧を変化させることで発生させるイオンの量を変化させることやイオン風速を変化させること及びイオンの発振周波数などを変化させることによって、イオンによる除電能力を変化させることを意味する。
さらに本発明のフィルムロールの製造方法においては、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、フィルムをコアに巻き取る際の張力を変化させることが好ましい。フィルムと搬送ロール、接圧ロールとの摩擦帯電は巻き取り張力とともに変化する傾向があるため、巻き取り張力テーパがかかっている際には、フィルムロール巻芯部とフィルムロールの最表層では摩擦帯電量が異なる。従って、長手方向に表面電位ムラを小さくするためには、フィルム巻き取り長さ及び摩擦帯電量に合わせて除電能力を変化させることが好ましい。フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、イオンによる除電能力を変化させることに加えて、さらにフィルムをコアに巻き取る際の張力も変化させることで、巻き取り張力の変化に伴うフィルムと搬送ロール、接圧ロールとの摩擦帯電量変化に対して、適切な除電能力制御を行いフィルムロールの表面電位を低減することが可能となる。
本発明のフィルムロールの製造方法においては、除電能力テーパ(巻き終わり時の除電能力/巻き始め時の除電能力×100)が60%以上100%未満であることが好ましい。すなわち、除電能力テーパは60%以上100%未満が好ましく、65%以上95%以下がより好ましい。除電能力テーパを60%以上100%未満の範囲とすることで、長手方向に表面電位ムラが小さく、フィルムロールの最表面からコア付近にかけての表面電位増加を抑制することが可能である。 本発明のフィルムロールの製造方法においては、除電能力テーパ(巻き終わり時の除電能力/巻き始め時の除電能力×100)及び巻き始め時の除電能力から求めた除電能力を、巻き終わり時の除電能力とすると、除電能力は、巻き始め時の除電能力から巻き終わり時の除電能力まで、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化することが好ましい。除電能力を、巻き始め時の除電能力から巻き終わり時の除電能力まで、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化させる事で、巻き取り張力変化及び摩擦帯電量変化に対して適切な除電が可能となる。
本発明のフィルムロールの製造方法においては、張力テーパ(巻き終わり時の張力/巻き始め時の張力×100)が60%以上80%以下であることが好ましい。張力テーパは、60%以上80%以下が好ましく、より好ましくは65%以上75%以下であり、巻き取り張力テーパが60%以上80%以下の範囲であることで、フィルムロールのスポーキングに加えて、蒸着加工時のブロッキングを抑制することが可能である。
本発明のフィルムロールの製造方法においては、張力テーパ(巻き終わり時の張力/巻き始め時の張力×100)及び巻き始め時の張力から求めた張力を、巻き終わり時の張力とすると、張力は、巻き始め時の張力から巻き終わり時の張力まで、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化することが好ましい。巻き取り張力をフィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化させる事で、フィルムロールの内層エア量の変化が小さく、スポーキングを抑制することが可能となる。なお張力について、巻き始め時の張力から巻き終わり時の張力まで、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化させるに際しては、巻き取り張力テーパを60%以上80%以下とすることに加えて、巻き取り時の面圧が5〜60kg/m、スリット速度が100〜500m/minとすることが好ましい。
さらにスリット工程にてフィルムロールを所定の幅にしてコアに巻き取る際のスリット条件は、巻き出しの張力が2.0〜8.0kg/mであることが好ましい。巻き取り張力は、1.0〜8.0kg/mが好ましく、2.0〜7.5kg/mがより好ましく、3.0〜7.0kg/mがさらに好ましい。巻き取り張力が上記好ましい範囲の場合、フィルムロールの巻きズレやスポーキング、タルミを抑制することが可能である。 スリット工程でフィルムが受ける除電能力は、スリット速度、除電器の出力電圧、除電器とフィルムロールの距離、除電器のイオン風速により変化するが、本願のスリット速度100〜500m/minにおいては、これらの条件を下記の通り調整することで制御することができる。すなわち、除電器の出力電圧は6〜10kVであることが好ましい。また、除電器の針先とフィルムの巻かれていないコアとの距離が200〜300mmが好ましい。また、除電器より発生させるイオン風の風速は5m/s〜30m/sが好ましい。
また、スリット巻き取り部の湿度は相対湿度40〜80%が好ましく、50〜70%がより好ましい。湿度が80%を超える場合、除電器にて発生するイオン電流が低下し、除電能力が低下する。40%未満の場合、フィルムや搬送ロール表面への水分の付着が少なくなることでフィルムと搬送ロール、接圧ロールとの接触面積増加に伴い摩擦帯電が増加することでフィルムロールの表面電位が大きくなる場合がある。
またイオンをフィルムの表面に吹き付ける工程において、イオンの発振周波数は10〜100Hzが好ましく、20〜100Hzがより好ましく、30〜100Hzがさらに好ましい。イオン発振周波数を上記好ましい範囲とすることで、フィルム長手方向に表面電位ムラを抑制することが可能である。
また、これらのスリット条件と除電条件を調整することにより、本発明のフィルムロールをコンデンサ用誘電体として用いた場合、コンデンサ製造工程や蒸着工程において、蒸着時、スリット時ともに優れた加工性を得ることができる。つまり本発明のフィルムロールは、コンデンサ用途に好適である。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)冷キシレン可溶部(CXS)
ポリプロピレン樹脂試料0.5gを135℃のキシレン100mLに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間再結晶させた後にろ過液に溶解しているポリプロピレン系成分を液体クロマトグラフ法にて定量するX(g)。試料0.5gの精量値X0(g)を用いて下記式から算出した。
ポリプロピレン樹脂試料0.5gを135℃のキシレン100mLに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間再結晶させた後にろ過液に溶解しているポリプロピレン系成分を液体クロマトグラフ法にて定量するX(g)。試料0.5gの精量値X0(g)を用いて下記式から算出した。
CXS(%)=(X/X0)×100
(2)メソペンタッド分率(mmmm)
ポリプロピレン樹脂、またはポリプロピレンフィルムを試料として溶媒に溶解し、13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(参考文献:新版 高分子分析ハンドブック 社団法人日本分析化学会・高分子分析研究懇談会 編 1995年 P609〜611)。
(2)メソペンタッド分率(mmmm)
ポリプロピレン樹脂、またはポリプロピレンフィルムを試料として溶媒に溶解し、13C−NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた(参考文献:新版 高分子分析ハンドブック 社団法人日本分析化学会・高分子分析研究懇談会 編 1995年 P609〜611)。
A.測定条件
装置:Bruker社製 DRX−500
測定核:13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
測定濃度:10wt%
溶媒:ベンゼン/重オルトジクロロベンゼン=質量比1:3混合溶液
測定温度:130℃
スピン回転数:12Hz
NMR試料管:5mm管
パルス幅:45°(4.5μs)
パルス繰り返し時間:10秒
データポイント:64K
換算回数:10,000回
測定モード:complete decoupling
B.解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1.0としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker社製)を用いて、ピーク分割を行った。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、さらに付属ソフトの自動フィッティングを行った。ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計を求めた。なお、上記測定を5回行い、その平均値を本試料のメソペンタッド分率(mmmm)とした。
装置:Bruker社製 DRX−500
測定核:13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
測定濃度:10wt%
溶媒:ベンゼン/重オルトジクロロベンゼン=質量比1:3混合溶液
測定温度:130℃
スピン回転数:12Hz
NMR試料管:5mm管
パルス幅:45°(4.5μs)
パルス繰り返し時間:10秒
データポイント:64K
換算回数:10,000回
測定モード:complete decoupling
B.解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1.0としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker社製)を用いて、ピーク分割を行った。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、さらに付属ソフトの自動フィッティングを行った。ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計を求めた。なお、上記測定を5回行い、その平均値を本試料のメソペンタッド分率(mmmm)とした。
ピーク
(a)mrrm
(b)(c)rrrm(2つのピークとして分割)
(d)rrrr
(e)mrmr
(f)mrmm+rmrr
(g)mmrr
(h)rmmr
(i)mmmr
(j)mmmm 。
(a)mrrm
(b)(c)rrrm(2つのピークとして分割)
(d)rrrr
(e)mrmr
(f)mrmm+rmrr
(g)mmrr
(h)rmmr
(i)mmmr
(j)mmmm 。
(3)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した。
JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kg)に準拠して測定した。
(4)溶融張力(MS)
JIS K 7210(1999)に示されるMFR測定用の装置に準じて測定した。株式会社東洋精機社製メルトテンションテスターを用いて、樹脂試料を230℃に加熱し、溶融ポリマーを押出速度15mm/分で吐出しストランドとした。このストランドを6.5m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、溶融張力を求めた。
JIS K 7210(1999)に示されるMFR測定用の装置に準じて測定した。株式会社東洋精機社製メルトテンションテスターを用いて、樹脂試料を230℃に加熱し、溶融ポリマーを押出速度15mm/分で吐出しストランドとした。このストランドを6.5m/分の速度で引き取る際の張力を測定し、溶融張力を求めた。
(5)フィルム厚み(t)
JIS C 2330(2001)の7.4.1.1に準じ、マイクロメーター法厚みを測定した。
JIS C 2330(2001)の7.4.1.1に準じ、マイクロメーター法厚みを測定した。
(6)表面ぬれ張力
ホルムアルデヒドとエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合液によるJIS K 6768(1999)に規定された測定方法に基づいて測定した。
ホルムアルデヒドとエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合液によるJIS K 6768(1999)に規定された測定方法に基づいて測定した。
(7)表面粗さ(算術平均高さ)Sa
株式会社菱化システム社製非接触表面・層断面形状測定システムVertScan2.0(型式:R3300GL−Lite−AC)を用いて測定した。スリット後のフィルムロールから採取したサンプルにおいて、フィルムの幅方向の中心位置で、長手方向に無作為に抽出した10箇所を測定箇所とし、その平均値をそのサンプルの表面粗さ(算術平均高さ)Saとした。1回の測定の詳細条件については下記の通りとした。なお、1回の測定に対して1視野(視野面積1、252μm×939μm=1、175、628μm2)の観察を行った。
株式会社菱化システム社製非接触表面・層断面形状測定システムVertScan2.0(型式:R3300GL−Lite−AC)を用いて測定した。スリット後のフィルムロールから採取したサンプルにおいて、フィルムの幅方向の中心位置で、長手方向に無作為に抽出した10箇所を測定箇所とし、その平均値をそのサンプルの表面粗さ(算術平均高さ)Saとした。1回の測定の詳細条件については下記の通りとした。なお、1回の測定に対して1視野(視野面積1、252μm×939μm=1、175、628μm2)の観察を行った。
A.測定条件
CCDカメラ:SONY HR−57 1/2“
対物レンズ:10X
鏡筒:0.5X BODY
波長フィルター:530 white
測定モード:Wave
視野サイズ:640×480
スキャンレンジ:(スタート)5μm、(ストップ)−5μm
B.測定方法
フィルム測定には専用のサンプルホルダーを使用する。サンプルホルダーは中心に円形の穴が空いた脱着可能な2枚の金属板であり、その間にシワがない状態でフィルムを挟み固定し、中央円形部のフィルムについて測定した。
CCDカメラ:SONY HR−57 1/2“
対物レンズ:10X
鏡筒:0.5X BODY
波長フィルター:530 white
測定モード:Wave
視野サイズ:640×480
スキャンレンジ:(スタート)5μm、(ストップ)−5μm
B.測定方法
フィルム測定には専用のサンプルホルダーを使用する。サンプルホルダーは中心に円形の穴が空いた脱着可能な2枚の金属板であり、その間にシワがない状態でフィルムを挟み固定し、中央円形部のフィルムについて測定した。
C.解析方法
上記測定により得られたデータをVertScan2.0の画像解析ソフトVS−Viewerで解析した。まず、メディアンフィルター(5×5)によりノイズを除去し、カットオフ値250μmのガウシアンフィルターによりうねり成分を除去した。次いで、「ISOPara」機能により、ISO25178で定義される表面粗さ(算術平均高さ)Saを算出した。
上記測定により得られたデータをVertScan2.0の画像解析ソフトVS−Viewerで解析した。まず、メディアンフィルター(5×5)によりノイズを除去し、カットオフ値250μmのガウシアンフィルターによりうねり成分を除去した。次いで、「ISOPara」機能により、ISO25178で定義される表面粗さ(算術平均高さ)Saを算出した。
(8)平均硬度、硬度バラツキ
JIS K 7312(1996)の規定による高分子計器株式会社製ゴム硬度計ASKER“TypeC”を用いてフィルムロールの最表面(最表層)を幅方向にフィルムロール両端10mmを除いて均等に7点測定し、その平均値を求めた。フィルムロールの内層については、フィルムロール最表面からコアまでの直径方向の距離Lとしたとき、所定の位置までフィルムロールを切開し、フィルムロール最表面と同じ方法で測定値を求めた。なお、硬度計の抑え圧を一定にするため、硬度計と合わせた重量が3.5kgになるように、荷重を硬度計に取り付けた。また、硬度計のフィルムロールと接触する加圧面は、加圧面の辺の長い方をフィルムロールの幅方向に平行となるよう測定した。
JIS K 7312(1996)の規定による高分子計器株式会社製ゴム硬度計ASKER“TypeC”を用いてフィルムロールの最表面(最表層)を幅方向にフィルムロール両端10mmを除いて均等に7点測定し、その平均値を求めた。フィルムロールの内層については、フィルムロール最表面からコアまでの直径方向の距離Lとしたとき、所定の位置までフィルムロールを切開し、フィルムロール最表面と同じ方法で測定値を求めた。なお、硬度計の抑え圧を一定にするため、硬度計と合わせた重量が3.5kgになるように、荷重を硬度計に取り付けた。また、硬度計のフィルムロールと接触する加圧面は、加圧面の辺の長い方をフィルムロールの幅方向に平行となるよう測定した。
(9)表面電位
フィルムロールの最表面から50mm離した位置に設置したスタチロンDz(シシド電気製)にて、そのフィルムロールの幅方向に均等割りした10点の表面電位を測定することにより、フィルムロールの最表面からの距離0(mm)の位置における表面電位の平均値、最大値、最小値を求めた。
フィルムロールの最表面から50mm離した位置に設置したスタチロンDz(シシド電気製)にて、そのフィルムロールの幅方向に均等割りした10点の表面電位を測定することにより、フィルムロールの最表面からの距離0(mm)の位置における表面電位の平均値、最大値、最小値を求めた。
続いて、フィルムロールの最表面からの距離L/5(mm)の位置が最表面になるまで、フィルムロールからフィルムを巻き出した。そしてフィルムロールの最表面からの距離0(mm)の位置におけるのと同様にして、フィルムロールの最表面からの距離L/5(mm)の位置における表面電位の平均値、最大値、最小値を求めた。
同様にして、2L/5(mm)、3L/5(mm)、及び4L/5(mm)の位置における表面電位の平均値、最大値、最小値を求めた。
(10)除電能力
除電器から放出されるイオンにより、1.0kVにチャージしたキーエンス株式会社製のイオンチャージプレート(SK−H050)を用いて0.1kVまで除電するのにかかる時間(除電完了時間)を計測し、下記式のように時間で割り返すことで除電能力を算出した。
除電器から放出されるイオンにより、1.0kVにチャージしたキーエンス株式会社製のイオンチャージプレート(SK−H050)を用いて0.1kVまで除電するのにかかる時間(除電完了時間)を計測し、下記式のように時間で割り返すことで除電能力を算出した。
除電能力=チャージ電圧(1.0kV)/除電完了時間(s)
除電完了時間は除電器と測定器との距離により変化するため、測定点をフィルムの巻かれていないコアの最表面で測定を行った値を除電完了時間とし、その時の除電完了時間の値を用いて除電能力を算出した。
除電完了時間は除電器と測定器との距離により変化するため、測定点をフィルムの巻かれていないコアの最表面で測定を行った値を除電完了時間とし、その時の除電完了時間の値を用いて除電能力を算出した。
(11)タルミ発生率
幅620mm、フィルムロール巻長60,000mにスリットし、巻き上げたフィルムロールをサンプルとし、スリットして巻き上げたフィルムロール本数総数に対するタルミ発生本数をタルミ発生率とした。
幅620mm、フィルムロール巻長60,000mにスリットし、巻き上げたフィルムロールをサンプルとし、スリットして巻き上げたフィルムロール本数総数に対するタルミ発生本数をタルミ発生率とした。
(12)ブロッキング発生率
幅620mm、フィルムロール巻長60,000mにスリットし、巻き上げたフィルムロールをサンプルとし、ブロッキング発生率を次式により求めた。
ブロッキング発生率=蒸着時にブロッキングしたロール本数/蒸着したロール総数×100
(13)蒸着加工率
幅620mm、フィルムロール巻長60,000mにスリット速度450m/minでスリットし、巻き上げたフィルムロールをサンプルとし、蒸着時の蒸着加工率を次式により求めた。
蒸着加工率(%)=シワ・ブロッキング発生リール本数/蒸着加工総数×100
下記の内容で評価を行い、優、良は問題なく使用できるが、可では条件次第で使用可能である。
幅620mm、フィルムロール巻長60,000mにスリットし、巻き上げたフィルムロールをサンプルとし、ブロッキング発生率を次式により求めた。
ブロッキング発生率=蒸着時にブロッキングしたロール本数/蒸着したロール総数×100
(13)蒸着加工率
幅620mm、フィルムロール巻長60,000mにスリット速度450m/minでスリットし、巻き上げたフィルムロールをサンプルとし、蒸着時の蒸着加工率を次式により求めた。
蒸着加工率(%)=シワ・ブロッキング発生リール本数/蒸着加工総数×100
下記の内容で評価を行い、優、良は問題なく使用できるが、可では条件次第で使用可能である。
<蒸着加工率>
100% 優
95%以上100%未満 良
85%以上95%未満 可
85%未満 不良
(14)距離L(mm)、フィルムロール幅(mm)
フィルムロールの最表面から見たコアの直径方向における、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lは、フィルムロールの外側(コアがない側)の最表面からコアの外側(フィルムと接する側)の最表面までの最短距離を、メジャーで測定した。一方でフィルムロール幅は、フィルムロールの状態でフィルム部分の幅をメジャーを用いて測定した。
100% 優
95%以上100%未満 良
85%以上95%未満 可
85%未満 不良
(14)距離L(mm)、フィルムロール幅(mm)
フィルムロールの最表面から見たコアの直径方向における、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lは、フィルムロールの外側(コアがない側)の最表面からコアの外側(フィルムと接する側)の最表面までの最短距離を、メジャーで測定した。一方でフィルムロール幅は、フィルムロールの状態でフィルム部分の幅をメジャーを用いて測定した。
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、融点:166℃、MFR:2.5g/10分、mmmm:0.991)100質量%を単軸の溶融押出機に供給し、250℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物除去を行った。Tダイから吐出された溶融シートを95℃に表面温度を制御した冷却ドラム上に密着させ、冷却ドラムに1.5秒間接させることで未延伸シートを得た。溶融シートを冷却ドラム上に密着させるためにエアーナイフを用いた。ついで、130℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。また、フィルムの延伸性を向上させる目的でフィルム延伸部の両側からラジエーションヒーターにより熱量を与えることで、縦延伸においてフィルム破れの発生はなく製膜性に優れていた。縦延伸後に30℃の冷却ロールに通して室温まで冷却した。
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、融点:166℃、MFR:2.5g/10分、mmmm:0.991)100質量%を単軸の溶融押出機に供給し、250℃で溶融押出を行い、25μmカットの焼結フィルターで異物除去を行った。Tダイから吐出された溶融シートを95℃に表面温度を制御した冷却ドラム上に密着させ、冷却ドラムに1.5秒間接させることで未延伸シートを得た。溶融シートを冷却ドラム上に密着させるためにエアーナイフを用いた。ついで、130℃に加熱したセラミックロールを用いて予熱を行いフィルムの長手方向に5.0倍延伸を行った。また、フィルムの延伸性を向上させる目的でフィルム延伸部の両側からラジエーションヒーターにより熱量を与えることで、縦延伸においてフィルム破れの発生はなく製膜性に優れていた。縦延伸後に30℃の冷却ロールに通して室温まで冷却した。
縦延伸冷却後、端部をクリップで把持して160℃で幅方向に12倍延伸した。さらに、160℃で熱処理を行い、幅方向に10%の弛緩を行った。
その後、冷却室にてフィルムの冷却を行った。冷却室を3室に隔て、冷却室1の冷却室温度を120℃で1.1秒以上、冷却室2の冷却室温度を90℃で1.1秒以上、冷却室3の冷却室温度を60℃で1.1秒以上保持した。
その後、室温まで除冷した後にフィルムの片面に25W・min/m2の処理強度でコロナ放電処理を施し、クリップで把持したフィルムの耳部をカットして除去した。なお、表面処理した面をA面、未処理面をB面と呼ぶこととした。端部を除去したフィルムを巻取機で巻き取り、厚み2.3μmの中間フィルムロールを得た。
この中間フィルムロールを、スリッターを用いて、スリット速度450m/min、巻出張力6.0kg/m、巻き取り条件として巻取張力4.0kg/m、張力テーパ75%、面圧45kg/m、除電能力8kV/s、除電能力テーパ75%、イオン風の風速15m/s、イオン発振周波数60Hz、除電器の針先とフィルムの巻かれていないコアまでの距離280mmで、フィルムロール幅620mm、フィルムロール巻長60,000mにスリットした。この時、フィルムの巻取張力は、フィルム巻き始め時の巻取張力から巻き終わり時の巻取張力までフィルムの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化させた。また、除電能力も同様に、フィルム巻き始め時の除電能力から巻き終わり時の除電能力までフィルムの最表面からコアまでの距離Lに応じて変化させた。得られたフィルムの物性を表に示す。
(実施例2)
スリッター巻き取り部の除電器から放出される張力テーパ60%とした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
スリッター巻き取り部の除電器から放出される張力テーパ60%とした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例3)
スリッター巻き取り部の除電器の除電能力を4kV/sとした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
スリッター巻き取り部の除電器の除電能力を4kV/sとした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例4)
スリッター巻き取り部の除電器の除電能力テーパを60%とした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
スリッター巻き取り部の除電器の除電能力テーパを60%とした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例5)
スリット条件の巻き取り張力を6.0kg/m、張力テーパを60%とした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
スリット条件の巻き取り張力を6.0kg/m、張力テーパを60%とした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(比較例1)
スリット条件の巻き取り張力を7.0kg/m、張力テーパを90%とした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
スリット条件の巻き取り張力を7.0kg/m、張力テーパを90%とした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(比較例2)
除電器の針先とフィルムの巻かれていないコアとの距離を180mm、除電能力を15kV/sとした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
除電器の針先とフィルムの巻かれていないコアとの距離を180mm、除電能力を15kV/sとした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(比較例3)
スリット条件の巻き取り張力を7.0kg/m、張力テーパを90%、除電器のイオン風の風速を35m/sとした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
スリット条件の巻き取り張力を7.0kg/m、張力テーパを90%、除電器のイオン風の風速を35m/sとした以外は実施例1と同様にしてフィルムロールを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。
Claims (6)
- ポリプロピレン樹脂を主成分とするフィルムを、コアに巻回してなるフィルムロールの製造方法であって、
前記フィルムを前記コアに巻き取る際に、除電器によりイオンを発生させ、前記イオンを前記フィルムの表面に吹き付ける工程を有し、
前記フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、前記イオンによる除電能力を変化させることを特徴とする、フィルムロールの製造方法。 - 前記フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて、前記フィルムをコアに巻き取る際の張力を変化させることを特徴とする、請求項1に記載のフィルムロールの製造方法。
- 除電能力テーパ(巻き終わり時の除電能力/巻き始め時の除電能力×100)が60%以上100%未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルムロールの製造方法。
- 除電能力テーパ(巻き終わり時の除電能力/巻き始め時の除電能力×100)及び巻き始め時の除電能力から求めた除電能力を、巻き終わり時の除電能力とすると、
前記除電能力は、巻き始め時の除電能力から巻き終わり時の除電能力まで、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。 - 張力テーパ(巻き終わり時の張力/巻き始め時の張力×100)が60%以上80%以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
- 張力テーパ(巻き終わり時の張力/巻き始め時の張力×100)及び巻き始め時の張力から求めた張力を、巻き終わり時の張力とすると、
前記張力は、巻き始め時の張力から巻き終わり時の張力まで、フィルムロールの最表面からコアまでの距離Lに応じて直線的に変化することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムロールの製造方法。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018211152 | 2018-11-09 | ||
JP2018211152 | 2018-11-09 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020075818A true JP2020075818A (ja) | 2020-05-21 |
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ID=70723438
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2019197079A Pending JP2020075818A (ja) | 2018-11-09 | 2019-10-30 | フィルムロールの製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2020075818A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022210688A1 (ja) * | 2021-03-31 | 2022-10-06 | 東レ株式会社 | ポリプロピレンフィルム |
WO2022210693A1 (ja) * | 2021-03-31 | 2022-10-06 | 東レ株式会社 | ポリプロピレンフィルム |
-
2019
- 2019-10-30 JP JP2019197079A patent/JP2020075818A/ja active Pending
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