以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る自転車用チャイルドシート(以下、単にチャイルドシート10という)が設けられた自転車100を示す。以下の説明では、自転車100の進行側を前側、後退側を後側という。また、後側から前側を見たときの左側を左側といい、右側を右側という。
本実施形態において、自転車100は電動アシスト自転車である。自転車100は、車体102と、前輪103と、後輪104と、駆動機構105と、電気コンポーネント106とを備える。車体102の前後方向中央からは上側に向かってシートチューブ121が延びている。シートチューブ121には、シートポスト122を介してサドル123が取り付けられている。電気コンポーネント106は、シートチューブ121の後側に取り付けられている。シートチューブ121の上側端部からは、シートステー124が後側に向かって下側に傾斜して延びている。シートステー124における後輪104よりも上側の部分には、荷台125が取り付けられている。車体102の前側端部には、ハンドルポスト126を介して、ハンドル107が設けられている。
ハンドル107は、ハンドルポスト126に取り付けられるハンドルステム171と、ハンドルステム171に支持されかつ水平方向に延びる水平部175と、水平部175の長手方向の両側端部からそれぞれ上側に向かって延びる左右一対の立設部172とを有する。各立設部172の上側端部には、後側に向かって湾曲する湾曲部173がそれぞれ形成され、各湾曲部173の後側端部に、自転車100の乗員が握るグリップ174がそれぞれ設けられている。尚、図1及び図2において、左側の立設部172及び湾曲部173は、チャイルドシート10と重なって見えていない。
図1及び図2に示すように、チャイルドシート10は、サドル123よりも前側において、ハンドルステム171の上側でかつ2つの立設部172の間の位置に配設されている。詳しくは後述するが、チャイルドシート10は、ハンドルステム171と左右の立壁部172とに取付固定されている。
図3及び図4は、チャイルドシート10の構成を示す。尚、図4では、図面の簡略化のため、図3等に示す後述の肩ベルトカバー80やチェストクリップ49等、一部の部材を省略して記載している。
図4に示すように、チャイルドシート10は、シート本体11を有する。シート本体11は、子供が座る座部20と、座部20の後側で立設され、座部20に座った子供の背中(本実施形態では、子供の頭部及び背中)を支持するバック部30と、座部20に座った子供の足を収容する足載せ部14と、左右方向の両側にそれぞれ設けられた側壁部15とを有する。以下の説明において、座部20、バック部30、足載せ部14、及び各側壁部15で囲まれた領域であって、子供が座る領域を着座側という。
座部20は、座板12と、座板12に着脱可能に取り付けられるシートクッション21とを有する。シートクッション部材21は、エチレンビニルアセテート(以下、省略してEVAという)からなるクッション部材である。図4に示すように、座板12は、前後方向の中央に、下側に凹んだ凹部22を有する。図示は省略するが、凹部22は、左右方向において、座板12の中央に位置する。凹部22の前側壁部22a及び後側壁部22bには、後述する調節ベルト43が通る貫通孔22c,22dがそれぞれ設けられている。凹部22の底部22eには、チャイルドシート10をハンドルステム171に取り付けるためのネジ90が通るネジ挿通孔22fが設けられている。底部22eにおけるネジ挿通孔22fの後側の部分には、上側に向かって突出するリブ23が設けられている。リブ23の上端は、ネジ90のネジ頭よりも上側に位置する。
座部20は、ネジ90を介してハンドルステム171に固定されている。図4に示すように、ハンドルステム171には、ネジ90が締結されるネジ孔91が設けられている。ネジ孔91と凹部22のネジ挿通孔22fは、上下に並ぶように配置されている。この状態で、ネジ挿通孔22fを介してネジ90がネジ孔91に締結されることで、座部20はハンドルステム171に対して固定される。
バック部30は、子供の背中を支持する背もたれ部31と、該背もたれ部31の上側に位置し、子供の頭部を支持するヘッドレスト32とを有する。背もたれ部31は、背板13と、背板13に着脱可能に取り付けられるに背クッション部材33とを有する。背板13は、座板12の後側端部から上側に向かって僅かに後側に傾斜して延びる下側傾斜部13aと、下側傾斜部13aよりも上側に位置しかつ上側に向かって僅かに後側に傾斜して延びる上側傾斜部13bと、下側傾斜部13aの上側端部と上側傾斜部13bの下側端部とを連結する連結部13cとを有する。背クッション部材33は、下側傾斜部13aの前記着座側の面に取り付けられている。背クッション部材33は、EVAからなるクッション部材である。
ヘッドレスト32は、ヘッドレスト本体34と、ヘッドレスト本体34から背板13に沿って下側に延びるヘッドレスト支持部35とを有する。ヘッドレスト本体34は、図3に示すように、前側に開放されたU字状をなしている。図6に示すように、ヘッドレスト本体34は、ヘッドレスト支持部35よりも左右方向に延びている。ヘッドレスト本体34の前記着座側の部分には、ヘッドクッション部材36が設けられている。ヘッドクッション部材36は、EVAからなるクッション部材である。ヘッドクッション36は、左右方向の中央よりも左側寄りの部分及び右側寄りの部分に、上側に向かって凹むように切り欠かれた切欠部36aをそれぞれ有する。ヘッドレスト本体34における各切欠部36aに対応する部分において、後述する左右の肩ベルト41及び左右の肩ベルト孔44がそれぞれ設けられている。ヘッドレスト支持部35は、図4に示すように、連結部13cを貫通して、背板13に沿って延びている。ヘッドレスト支持部35は、シート本体11に支持されている。つまり、ヘッドレスト本体34は、ヘッドレスト支持部35を介してシート本体11に支持されている。
図2及び図3に示すように、本実施形態では、ヘッドレスト本体34は、ヘッドレストカバー37により覆われている。具体的には、ヘッドレストカバー37は、図3に示すように、ヘッドレスト本体34における前側の部分の略全体を覆う一方、図2に示すように、ヘッドレスト本体34における後側の部分を部分的に覆っている。ヘッドレストカバー37は、ヘッドレスト本体34に対して着脱可能である。ヘッドレストカバー37は、ヘッドレスト本体34における前側の部分であって、左右方向の両側側部に対応する部分に衝撃吸収部37aをそれぞれ有する。各衝撃吸収部37aは、ウレタン等のEVAよりも柔らかい衝撃吸収材を内包している。2つの衝撃吸収部37aを連結する中間部37bは、前記衝撃吸収材が内包されておらず、布で構成されている。中間部37bには、通気性を確保するための複数の孔が設けられている。ヘッドレストカバー37の後側の縁部は、該縁部に沿って延びるゴムを内包している。
足載せ部14は、座板12の前側端部に連続して設けられている。具体的には、図4に示すように、足載せ部14は、座板12の前側端部から前側に向かって下側に傾斜して延びた後、前側に向かって上側に湾曲して延びている。
各側壁部15は、座板12、背板13、及び足載せ部14における左右方向の両端部からそれぞれ立設されている。各側壁部15は、前後方向に連続して設けられている。各側壁部15の前記着座側の面において、座部20の上側に位置する部分には、サイドクッション部材15aが着脱可能にそれぞれ取り付けられている。各サイドクッション部材15aは、EVAからなるクッションである。
図1及び図2に示すように、各側壁部15の前記着座側とは反対側の面部には、ハンドル107の各立設部172が通るガイド15bがそれぞれ設けられている。ガイド15bは、チャイルドシート10を自転車100に取り付けるときに、シート本体11を案内するガイド15bである。各側壁部15は、各ガイド15bに各立設部172が通った状態で、プレート92が各立設部172にそれぞれあてがわれた後、該プレート92ごとボルト93によりボルト止めされることで、各立設部172にそれぞれ固定される。
シート本体11には、座板12の一部及び背板13の一部を後側から覆う背カバー16が取り付けられている。詳しくは後述するが、背板13と背カバー16との間には、シートベルト装置40における肩ベルト41及び調節ベルト43の一部が収容されるベルト収容空間18が形成される。
図3に示すように、チャイルドシート10は、座部20に座った子供が握るグリップバー17が設けられている。グリップバー17は、左右方向に延びている。グリップバー17の左右方向の両端部は、側壁部15の上縁部にそれぞれ接続されている。
チャイルドシート10の前記着座側には、座部20に座った子供を拘束するためのシートベルト装置40が設けられている。本実施形態では、シートベルト装置40は、5点式のシートベルト装置である。シートベルト装置40は、前記子供の両肩をそれぞれ拘束する左右一対の肩ベルト41と、前記子供の腰部を拘束する左右一対の腰ベルト42と、前記子供の股間を通る股ベルト62とを有する。
股ベルト62は、座板12に固定された下端部からシートクッション部材21を貫通して上側に延びている。股ベルト62の上端部にはバックル60が取付固定されている。
図6に示すように、左右の肩ベルト41は、バック部30(具体的には、ヘッドレスト本体34)に設けられた一対の肩ベルト孔44から前記着座側にそれぞれ露出している。図3及び図6に示すように、左側の肩ベルト41は、左側の肩ベルト孔44から下側に延びて、第1タング65のベルト挿通孔を通っている。右側の肩ベルト41は、右側の肩ベルト孔44から下側に延びて、第2タング66のベルト挿通孔を通っている。図3及び図4に示すように、第1タング65及び第2タング66はバックル60に連結固定される。
左側の肩ベルト41、左側の腰ベルト42、右側の肩ベルト41、及び右側の腰ベルト42は、単一のベルト部材で構成されている。該ベルト部材の両端部は、第1及び第2タング65,66のベルト挿通孔を通った後、左右の腰ベルト孔45にそれぞれ入っている。前記ベルト部材のうち、第1タング65のベルト挿通孔と左側の腰ベルト孔45との間の部分が左側の腰ベルト42を構成する一方、第2タング66のベルト挿通孔と右側の腰ベルト孔45との間の部分が右側の腰ベルト42を構成する。前記ベルト部材の両端部は、左右の腰ベルト孔45をそれぞれ通った後は、止め具(図示省略)により座板12に対してそれぞれ固定されている。
図4に示すように、左右の肩ベルト41の一部は、左右の肩ベルト孔44を通って、シート本体11と背カバー16とで覆われたベルト収容空間18に延びている。図5に示すように、前記ベルト部材は、重複部Tが生じるように、ベルト収容空間18内でV字状に折り曲げられており、重複部Tが左右の肩ベルト41の一端部となっている。重複部Tには、左右の肩ベルト41の長さを調節するための調節ベルト43の一端部が縫い合わされている。尚、左右の肩ベルト41は、それぞれ別のベルト部材で構成されていてもよい。
図4に示すように、調節ベルト43は、ベルト収容空間18を下側及び前側に向かって延びている。調節ベルト43は、凹部22における後側壁部22bの貫通孔22dを通って凹部22内に進入する。凹部22内において、調節ベルト43は、リブ23の上端と接触する。これにより、調節ベルト43は、ネジ90のネジ頭と接触することなく、該ネジ頭の上側を通って前側に延びる。調節ベルト43は、前側壁部22aの貫通孔22cを通って、凹部22よりも前側に延びる。その後、調節ベルト43は、後述の調節装置50の移動許容/規制部材51を介して、前側に向かって延びる。調節ベルト43の他端部(重複部Tとは反対側の端部)は、シートクッション部材21の前側に露出している。
図7に示すように、調節ベルト43の他端部には、股ベルト62(本実施形態では、股ベルト62の周囲を覆う股ベルトカバー63)に着脱可能に取り付けるための取付部材46が設けられている。取付部材46は、クリップ部材47によって、調節ベルト43に取り付けられている。取付部材46は、第1の雌ホック48を有する。
股ベルトカバー63は、前側の部分に第1の雄ホック64を有する。取付部材46は、雄ホック64が取付部材46の第1の雌ホック48と係合することにより、股ベルトカバー63に取り付けられる。また、第1の雄ホック64と第1の雌ホック48との係合を解除することによって、取付部材46(調整ベルト43)が股ベルトカバー63から外れる。
図3に示すように、バックル60は、略円柱状をなしている。バックル60における周方向の左側の略半部には、第1タング65が連結固定される一方、バックル60における周方向の右側の略半部には、第2タング66が連結固定される。バックル60の前側の中央には、第1及び第2タング65,66との連結状態を解除する解除ボタン61が設けられている。
シートベルト装置40は、肩ベルト41の途中にチェストクリップ49を有する。チェストリップ49は雄雌構造であり、左側が雄部であり、右側が雌部である。チェストクリップ49は、座部20に座った子供の胸部を拘束する。
シートベルト装置40において、肩ベルト41の長さは、調節装置50を利用して調整することができる。図8に示すように、調節装置50は、調節ベルト43と、該調節ベルト43の移動を制限する移動許容/規制部材51とを有する。移動許容/規制部材51は、シート本体11(詳細には、座板12)に固定されたブラケット55に、支軸54を介して回動可能に支持されている。移動許容/規制部材51は、略円柱状の本体の周面上に設けられた爪部52と、該本体に一体形成されかつユーザ(主に自転車100の乗員)によって押される押圧部53とを有する。移動許容/規制部材51は、捻りコイルバネ(図示省略)によって、爪部52が後側に向かって回動するように付勢されている。爪部52は、複数の爪によって構成されている。複数の爪は、前側に位置する爪ほど支軸54から離れるように形成されている。
ユーザが調節ベルト43を前側に向かって引っ張ったときには、図8に仮想線で示すように、移動許容/規制部材51は、爪部52が前側に移動するように支軸54周りに回動する。これにより、爪部52が調節ベルト43に引っ掛からない状態となって、ユーザは調節ベルト43を前側に向かって引っ張ることができる。調節ベルト43が前側に引っ張られると、調節ベルト43と縫合された肩ベルト41がベルト収容空間18に向かって引っ張られる。これにより、肩ベルト41の長さを短くすることができる。
ユーザが押圧部53を後側に向かって押圧せずに、肩ベルト41を前記着座側に引っ張ったときには、爪部52が調節ベルト43食い込む。これにより、調節ベルト43は後側への移動が規制され、調節ベルト43と縫合された肩ベルト41は、ベルト収容空間18から引き出されない。一方で、ユーザが押圧部53を後側に向かって押圧したときには、調節装置50は、爪部52が前側に変位するように支軸54周りに回動する。これにより、調節ベルト43は後側に移動可能となる。したがって、ユーザが押圧部53を後側に向かって押圧した状態で、肩ベルト41を前記着座側に引っ張ったときには、肩ベルト41は、ベルト収容空間18から引き出される。
このように、移動許容/規制部材51は、調節ベルト43を前側に引っ張って、肩ベルト41を短くする動作については許容する一方で、肩ベルト41を介して調節ベルト43を後側に引っ張って、肩ベルト41を長くする動作については規制している。つまり、調節装置50は、座部20に子供を座らせた状態で、肩ベルト41を短くして、肩ベルト41を子供に密着させる動作については許容する一方、肩ベルト41が子供に密着した状態から、肩ベルト41が前記着座側に引き出される動作については規制するようにしている。したがって、調節装置50により、座部20に座った子供を適切に拘束することができる。
本実施形態では、図3に示すように、一対の肩ベルト41は肩ベルトカバー80によってそれぞれ覆われている。肩ベルトカバー80は、左右の肩ベルト41の近傍にそれぞれ設けられた左右一対の弾性部材70(図6参照)を、肩ベルト41と一緒にそれぞれ覆う。図6に示すように、弾性部材70は棒状をなしている。弾性部材70は、長手方向の一端部が肩ベルト孔45の近傍に設けられた孔部34aに挿入されて、該孔部34aに片持ち状態で支持されている。肩ベルトカバー80が、肩ベルト41と弾性部材70とを一緒に覆うことにより、肩ベルト41は、その中途部がバック部30から離れた状態となる。これにより、肩ベルト41とバック部30との間に隙間が形成されて、子供をチャイルドシート10に座らせる際に、子供の腕を肩ベルト41とバック部30との間に容易に通すことができるようになる。
肩ベルトカバー80は、綿などの吸湿性の高い部材を内包した縫製品である。図9に示すように、肩ベルトカバー80は略矩形状をなしている。肩ベルトカバー80において、肩ベルト41を覆ったときに、該肩ベルト41と接触する内側面80aには、バック部30に支持された支持部材70を収容する収容部81が設けられている。収容部81は、肩ベルトカバー80の対向する二辺間を一辺側から他辺側まで延びる細長い袋状をなしている。収容部81は、長手方向の一端が開口しかつ他端が閉じるように、肩ベルトカバー80の内側面80aに縫い付けられている。肩ベルトカバー80の4隅において、収容部81に近い側の2隅には、第2の雄ホック82がそれぞれ設けられている。第2の雄ホック82は、肩ベルトカバー80を厚み方向に貫通して、肩ベルトカバー80の内側面80aとは反対側の面から突出している。一方で、肩ベルトカバー80の4隅において、収容部81から遠い側の2隅には、第2の雄ホック82と係合する第2の雌ホック83がそれぞれ設けられている。尚、第2の雄ホック82の位置及び個数、並びに第2の雌ホック83の位置及び個数は、肩ベルトカバー80を肩ベルト41に巻き付けた状態で、第2の雄ホック82と第2の雌ホック83とが係合できるのであれば、特に限定されない。
図10に示すように、左右の肩ベルトカバー80は、帯状の連結バンド84(連結部材)を介して、シート本体11のバック部30にそれぞれ連結支持される。各連結バンド84の一端部は、バック部30に設けられた左右の支持孔38にそれぞれ挿入されている。つまり、各連結バンド84は、バック部30における各肩ベルト孔44の近傍部分においてシート本体11に取り付けられている。
各支持孔38は、各肩ベルト孔44の近傍、詳しくは、各肩ベルト孔44の下側にそれぞれ設けられている。支持孔38はT字状のスリット形状をなしている。詳しくは、各支持孔38は、肩ベルト孔44に沿って左右方向に延びる第1のスリット38aと、該第1のスリット38aの長手方向の途中から分岐して下側に延びる第2のスリット38bとを有する。第2のスリット38bの下側端部は、下側に向かって開放されている。各連結バンド84の一端部は、第1のスリット38aに挿通されている。第1のスリット38aの上下方向の幅は、連結バンド84の後述する折返部84aの厚みよりも小さく、連結バンド84における該折返部84a以外の部分(後述する第3の雌ホック85は除く)の厚みよりも大きい。第2のスリット38bの左右方向の幅は、第1のスリット38aの上下方向の幅と同じ寸法である。
図11に示すように、連結バンド84の一端部は、折り返されて縫合された折返部84aとなっている。折返部84aは、第1のスリット38aの後側に位置する。連結バンド84を前記着座側に引っ張ったときには、折返部84aが、支持孔38の縁部に対して係止する。つまり、折返部84aは、支持孔38の縁部に対して係止する係止部に相当する。折返部84aが、支持孔38の縁部に対して係止することにより、連結バンド84がシート本体11から外れることが抑制される。
図10及び図11に示すように、連結バンド84の他端部は、第1のスリット38aから前記着座側に露出している。つまり、連結バンド84は、前記着座側に少なくとも一部が露出するようにシート本体11に取り付けられている。より具体的には、連結バンド84は、片持ち状態でシート本体11に取り付けられている。連結バンド84の他端部には、第3の雌ホック85が設けられている。第3の雌ホック85は、肩ベルトカバー80に設けられた第3の雄ホック86と係合する。つまり、各肩ベルトカバー80は、ホックにより各連結バンド84に着脱可能に取り付けられている。
次に、図12A〜図12Cを参照しながら、連結バンド84の支持孔38への取付方法について説明する。図12A〜図12Cでは、連結バンド84は支持孔38に挿入される部分を断面で示している。連結バンド84の取付方法は、各連結バンド84で基本的に同じであるため、以下の説明では、左側の支持孔38に連結バンド84を取り付ける場合のみ説明する。
図12Aに示すように、連結バンド84は、幅方向が上下方向となる姿勢で第2のスリット38bから支持孔38に挿入される。このとき、連結バンド84における折返部84aよりも他端側の部分が第2のスリット38bに挿入される。これにより、連結バンド84の折返部84aは、第1のスリット38aの後側に位置する。次に、図12Bに示すように、連結バンド84の一部を第1のスリット38aの長手方向の一方側に進入させる。次いで、図12Cに示すように、連結バンド84の残部を第1のスリット38aに押し込める。第1のスリット38aの上下方向の幅は、連結バンド84における該折返部84a以外の部分の厚みよりも大きいため、連結バンド84の残部を第1のスリット38aに押し込めたときには、連結バンド84が撓む。これにより、連結バンド84の前記残部を第1のスリット38aに進入させることができる。この後、連結バンド84を第1のスリット38aの長手方向の他方側に向かって広げれば、連結バンド84が支持孔38に取り付けられる。
連結バンド84を支持孔38に取り付けた後は、図10に示すように、肩ベルトカバー80を、収容部81に支持部材70を収容させながら連結バンド84に近付ける。そして、連結バンド84の第3の雌ホック85と肩ベルトカバー80の第3の雄ホック86と係合させれば、肩ベルトカバー80がシート本体11に連結支持される。
ここで、自転車100は、自動車等と比較して、車体から子供に伝わる振動が大きいため、自転車用のチャイルドシート10に肩ベルトカバー80を設ける場合、前記振動によって肩ベルトカバー80がずれてしまうという問題がある。また、自転車用のチャイルドシート10では、子供が座る領域が外部に露出しているため、自転車用のチャイルドシート10における肩ベルトカバー80は、自動車用のチャイルドシートにおける肩ベルトカバーよりも汚れやすい。このため、自転車用のチャイルドシート10における肩ベルトカバー80は、頻繁に洗濯をする必要がある。したがって、自転車用のチャイルドシート10における肩ベルトカバー80には、チャイルドシート10から適宜取り外すことができるようにしたいという要求がある。
これに対して、本実施形態に係るチャイルドシート10は、子供が座る座部20及び該座部20に座った子供の背中を支持するバック部30を有するシート本体11と、バック部30における一対の肩ベルト孔44から子供が座る着座側に向かってそれぞれ露出し、座部20に座った子供の両肩をそれぞれ拘束する左右一対の肩ベルト41と、各肩ベルト41の少なくとも一部をそれぞれ覆う複数の肩ベルトカバー80と、各肩ベルトカバー80をシート本体11にそれぞれ連結支持させる複数の連結バンド84と備え、各連結バンド84は、前記着座側に少なくとも一部が露出するようにシート本体11に取り付けられており、各肩ベルトカバー80は、各連結バンド84に着脱可能に取り付けられている。この構成によると、肩ベルトカバー80は、連結バンド84によってシート本体11に連結されているため、シート本体11に対して拘束されている。これにより、自転車100の走行中おける肩ベルトカバー80のずれが抑制される。また、肩ベルトカバー80は、連結バンド84に着脱可能に取り付けられているため、肩ベルトカバー84を洗濯したいときには、肩ベルトカバー84をシート本体11から適宜取り外すことができる。したがって、肩ベルトカバー80をチャイルドシート10から適宜取り外すことができるようにするとともに、自転車100の走行中おける肩ベルトカバー80のずれを抑制することができる。
特に、本実施形態に係るチャイルドシート10において、各連結バンド84は、バック部30における各肩ベルト孔44の近傍部分においてシート本体11に取り付けられている。これにより、各連結バンド84の長さを短くすることができるため、自転車100の走行中おける肩ベルトカバー80のずれをより効果的に抑制することができる。
また、本実施形態に係るチャイルドシート10において、シート本体11は、バック部30における各肩ベルト孔44の近傍にそれぞれ設けられかつ各連結バンド84の一端部がそれぞれ挿通する複数の支持孔38を有し、各連結バンド84の一端部は、支持孔38の縁部に対して係止する折返部84aを有する。この構成によると、座部20に座った子供が動いて肩ベルトカバー80が前記着座側に引っ張られたとしても、連結バンド84がシート本体11から外れにくい。これにより、自転車100の走行中おける肩ベルトカバー80のずれを一層効果的に抑制することができる。
また、本実施形態に係るチャイルドシート10において、各連結バンド84は、帯状をなし、各支持孔38は、スリット状をなしている。このため、肩ベルトカバー80が前記着座側に引っ張られたときに、連結バンドの折返部84aと支持孔38の縁部との接触面積を出来る限り広くして、支持孔38の縁部にかかる力を分散させることができる。これにより、連結バンド84がシート本体11から外れにくくなる。この結果、自転車100の走行中おける肩ベルトカバー80のずれをより一層効果的に抑制することができる。
また、本実施形態に係るチャイルドシート10において、各支持孔38は、左右方向に延びる第1のスリット38aと、第1のスリット38aの長手方向の途中から分岐して下側に延びる第2のスリット38bとを有するT字状のスリットであり、第2のスリット38bの下側端部は、下側に向かって開放されており、各連結バンド84がシート本体11に支持された状態において、各連結バンド84の一端部は、第1のスリット38aに挿通されている。すなわち、連結バンド84は経年劣化するため、定期的に交換する必要がある。支持孔38が上記のようなスリット構造である場合には、連結バンド84を第2のスリット38bに通して、シート本体11から容易に取り外すことができる。また、新たな連結バンド84を取り付けるときにも、該連結バンド84を第2のスリット38bに通して、シート本体11に容易に取り付けることができる。さらに、第2のスリット38bは第1のスリット38aの長手方向の途中から分岐しているため、連結バンド84がシート本体11に支持された状態において、連結バンド84が第2のスリット38bを通ってシート本体11から外れることは抑制される。これらの結果、自転車100の走行中おける肩ベルトカバー80のずれを更に効果的に抑制することができる。
特に、本実施形態に係るチャイルドシート10において、第1のスリット38aの上下方向の幅は、連結バンド84の折返し部84aの厚みよりも小さく、連結バンド84における該折返部84a以外の部分(第3の雌ホック85は除く)の厚みよりも大きい。このため、連結バンド84を支持孔38に取り付けるときには、第2のスリット38bを介して、連結バンド84を撓ませながら第1のスリット38aに通すことができる。これにより、連結バンド84の交換がより容易になる。
また、本実施形態に係るチャイルドシート10において、各肩ベルトカバー80は、ホック85,86により連結バンド84に着脱可能に取り付けられている。このため、肩ベルトカバー80を連結バンド84から比較的容易に取り外すことができる。また、ホック85,86であれば、チャイルドシート10に座った子供の衣服と肩ベルトカバー80との間の摩擦により、肩ベルトカバー80が引っ張られる程度の力では外れにくい。これにより、自転車の走行中おける肩ベルトカバー80のずれを抑制しつつ、肩ベルトカバー80をチャイルドシート10から取り外す際の作業性が向上させることができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、前述の実施形態において、連結バンド84は、バック部30における各肩ベルト孔44の近傍部分においてシート本体11に取り付けられていた。これに限らず、連結バンド84が、側壁部15に取り付けられていてもよい。このとき、連結バンド84は、側壁部15における肩ベルト孔44に出来る限り近い位置に取り付けられることが好ましい。
また、前述の実施形態において、連結部材は、帯状の連結バンド84であった。これに限らず、連結部材は、紐状であってもよい。このとき、連結部材の形状に合わせて、支持孔38の形状を丸孔状にすることが好ましい。
また。前述の実施形態において、肩ベルト41の近傍には、肩ベルト41の中途部をバック部30から離れた状態で支持するための支持部材70が設けられていた。これに限らず、支持部材70は設けなくてもよい。この場合、肩ベルトカバー80に収容部81を設ける必要はない。
また、前述の実施形態において、連結バンド84の係止部は折返部84aであった。これに限らず、連結バンド84にクリップ部材などの別部材を取り付けて、該クリップ部材を係止部としてもよい。
また、前述の実施形態において、連結バンド84は、一端部が第1のスリット84aの後側に位置し、他端部が前記着座側に露出していた。これに限らず、連結バンドの一端部を第1のスリット38aを通した後、背当て部31とヘッドレスト本体34との間や肩ベルト孔44を通して前記着座側に露出させ、一端部と他端部とを互いにホックなどで結合させて、連結バンドを輪状にしてもよい。このとき、肩ベルトカバー80には、雄ホックの代わりに、連結バンドが通る孔を設ける等して、連結バンドを介してシート本体11に連結支持させることができる。尚、連結部材が紐状である場合にも、該連結部材を輪状にする構成にしてもよい。
また、前述の実施形態において、チャイルドシート10はハンドル107に取り付けられていた。これに限らず、例えば、荷台125に取り付けられていてもよい。
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。