JP2020075276A - サブマージアーク溶接用溶融型フラックス - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接後熱処理における靱性低下の抑制と、優れた溶接施工性の確保とを両立することが可能なサブマージアーク溶接用溶融型フラックスの提供。【解決手段】質量%で、CaF2:5.0%〜60.0%、Al2O3:2.0%〜40.0%、SiO2:2.0%〜30.0%、CaO:5.0%〜25.0%、MgO:1.0%〜10.0%、REM酸化物の合計:1.0%〜10.0%、TiO2:0%〜25.0%、BaO:0%〜15.0%、MnO:0%〜10.0%、B2O3:0%〜1.0%を含有し、残部は不純物からなるサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。【選択図】なし

Description

本発明は、サブマージアーク溶接用溶融型フラックスに関する。
原油や天然ガスを長距離輸送するパイプラインには、UOE鋼管が用いられる場合が多い。パイプラインに接続されて使用される立ち上がり管に、ライザー管とよばれる溶接鋼管がある。このライザー管には、合金元素の多い鍛造品(例えばコネクタ)を現地溶接により接続される場合が多い。このとき、鍛造品の溶接により発生した残留応力の除去を目的として、しばしば応力除去焼鈍(SR;Stress Relief)のような溶接後熱処理(PWHT;Post Weld Heat Treatment)が、鍛造品が溶接されたライザー管における溶接継手の部分だけでなく、ライザー管の本体の溶接金属部(通称、シーム溶接金属)に対しても行われる。
サブマージアーク溶接は、高能率で安定した溶接施工性および溶接金属の機械的性能が得られることから、幅広い分野の溶接に適用されている。溶接鋼管のシーム溶接には、品質と生産性を考慮して、サブマージアーク溶接が用いられることが多い。サブマージアーク溶接は、フラックスと溶接ワイヤとを用いて、フラックス中でアークを発生させて溶接する方法である。
従来、溶接用フラックスは、種々検討されてきた(例えば、特許文献1〜4を参照)。
特開昭58−077790号公報 特開昭59−212190号公報 特開昭59−212190号公報 特開2015−166100号公報
溶接継手を溶接後熱処理(PWHT)することにより、ライザー管本体におけるシーム溶接金属の靱性が低下する場合がある。また、溶接鋼管のシーム溶接に適用されるサブマージアーク溶接には、フラックスとして溶融型フラックスが使用されている。サブマージアーク溶接用の溶融型フラックスは、シーム溶接金属に影響を及ぼす。このため、耐PWHT脆化特性に優れた溶接金属を形成できる溶融型フラックスが要求される。さらに、溶接鋼管の大量生産時の製造安定化には、シーム溶接時の溶接施工性の確保(スラグ巻込み・アンダーカット発生防止、スラグ剥離性向上、ビード形状の適正化)が求められる。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、溶接後熱処理による溶接金属の靱性低下の抑制と、優れた溶接施工性の確保とを両立することが可能な、サブマージアーク溶接用溶融型フラックスを提供するものである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1>質量%で、
CaF:5.0%〜60.0%、
Al:2.0%〜40.0%、
SiO:2.0%〜30.0%、
CaO:5.0%〜25.0%、
MgO:1.0%〜10.0%、
REM酸化物の合計:1.0%〜10.0%、
TiO:0%〜25.0%、
BaO:0%〜15.0%、
MnO:0%〜10.0%、
:0%〜1.0%、
を含有し、残部は不純物からなるサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
<2>
前記REM酸化物の合計は、La、CeO、及びNdの合計である、<1>に記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
<3>
各成分の含有量は、下記式(1)で求めるXの値が下記式(2)を満たす、<2>に記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
(ただし、式(1)中、[CaF]、[CaO]、[MgO]、[La]、[CeO]、[Nd]、[BaO]、[MnO]、[B]、[Al]、[SiO]、及び[TiO]は、溶融型フラックス中に含有されている各成分の質量%を表す。含有量が0質量%の成分がある場合には、式(1)中の該当する成分の含有量として0質量%を代入して計算する。)
<4>
質量%で、
粒径(直径)75μm〜500μmである粒子を70%以上含む、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
<5>
質量%で、
粒径(直径)75μm未満である粒子を20%以下含む、<4>に記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
本実施形態によれば、溶接後熱処理による溶接金属の靱性低下の抑制と、優れた溶接施工性の確保とを両立することが可能な、サブマージアーク溶接用溶融型フラックスが提供される。
溶接後熱処理における処理条件の関係を表す模式図である。
以下、本実施形態に係るサブマージアーク溶接用溶融型フラックスについて、好ましい実施形態の一例について説明する。
なお、本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、特に断りの無い限り、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書中において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されるのであれば、本用語に含まれる。
本実施形態に係るサブマージアーク溶接用溶融型フラックスは、CaF:5.0%〜60.0%、Al:2.0%〜40.0%、SiO:2.0%〜30.0%、CaO:5.0%〜25.0%、MgO:1.0%〜10.0%、REM酸化物の合計:1.0%〜10.0%、TiO:0%〜25.0%、BaO:0%〜15.0%、MnO:0%〜10.0%、及び、B:0%〜1.0%、を含有し、残部は不純物からなる。
従来から検討されてきた溶接用フラックスでは、溶接継手の溶接後熱処理における溶接金属の靱性低下抑制と、優れた溶接施工性の確保とを両立する溶融型フラックスは得られていないのが実情である。溶接後熱処理は、例えば、図1に示すように、溶接金属に対して、昇温速度Rで昇温した後、保持温度及び保持時間Hで加熱保持し、冷却速度Cで冷却する熱処理である。各条件としては、鋼材の種類、厚みなどによって異なるが、例えば、R:55℃/hr〜220℃/hr、H:595℃以上×1hr以上、C:55℃/hr〜280℃/hrが例示される。
特許文献1には、REM元素を特定量で含有する溶接用フラックスが開示されている。しかしながら、特許文献1に開示される溶接用フラックスには、溶接金属の再熱ミクロ割れを防止することを目的としており、溶接後熱処理による溶接金属の靱性低下抑制、及び優れた溶接施工性の確保を両立することは考慮されていない。また、REM金属をフラックス中に混合するのみでは、溶接後熱処理における靱性低下の抑制と、溶接施工性の確保とを両立する効果は得られない。特に、純金属のREMを含ませると、溶接時のアークの安定性が低下するため、溶接施工性が劣位となる。また、純金属のAlが含まれていることから、特許文献1に開示される溶接用フラックスは焼成型フラックスであり、溶融型フラックスとは異なる。
特許文献2には、REM酸化物を含む溶接用フラックスが開示されている。しかしながら、特許文献2に開示される溶接用フラックスには、水素に起因する溶接金属の剥離割れを防止することを目的としている。このため、溶接後熱処理による溶接金属の靱性低下抑制、及び優れた溶接施工性の確保を両立することは考慮されていない。また、サブマージアーク溶接用のフラックスとして、焼成型フラックスが用いられており、溶融型フラックスとは異なる。
特許文献3には、REM酸化物を含むフラックスが開示されている。しかしながら、特許文献3に開示される溶接用フラックスは、溶接部に亜鉛めっき層等が存在する鋼板をアーク溶接する場合におけるブローホール、ピットの発生等を防止することを目的としている。このため、溶接後熱処理による溶接金属の靱性低下抑制、及び優れた溶接施工性の確保を両立することは考慮されていない。また、めっき鋼板の溶接には、通常、サブマージアーク溶接は適用されない。このため、特許文献3に開示される溶接用フラックスは、サブマージアーク溶接用のフラックスとして適用されるものではない。
特許文献4には、サブマージアーク溶接用溶融型フラックスが開示されている。しかしながら、特許文献4に開示される溶接用フラックスは、溶接施工性については考慮されているものの、溶接後熱処理による溶接金属の靱性低下の抑制については考慮されていない。特許文献4に開示される溶接用フラックスは、REM酸化物の添加がないことから、溶接後熱処理における溶接金属の靱性低下を抑制することは難しい。
これに対し、本実施形態に係るサブマージアーク溶接用溶融型フラックスは、REM酸化物を特定量で含んでいることで、溶接後熱処理による溶接金属の靱性低下が抑制される(耐PWHT脆化特性)とともに、優れた溶接施工性が確保される。
溶接後熱処理した後の溶接金属の靱性低下の主要因は、溶接金属中のP(リン)の粒界偏析による粒界脆化である。REM(例えば、La、Ce、及びNd)は、Pをリン化物として粒内に固定し、Pの粒界偏析を抑制する効果がある。この効果を得るためには、溶接金属中に固溶REMを確保することが重要である。
溶接金属中に純金属のREMを添加できれば、固溶REMを確保しやすくなる。しかしながら、REMは、高温で溶接した際に、O(酸素)と優先して結合して酸化物を形成してしまう。このため、高温で溶接した後の溶接金属中に、固溶REMを安定して確保することは困難である。また、前述のように、REMはO(酸素)と優先して結合して酸化物を形成するため、溶接中のアークが不安定となり、溶接施工性の確保が難しくなる。
このため、サブマージアーク溶接用溶融型フラックスにREM酸化物を含有させる。REM酸化物は、溶接中のアークにより、REMとO(酸素)とに解離し、解離したREMが溶接金属へ固溶し、固溶REMが生成される。それによって、固溶REMとPとが反応し、Pをリン化物として粒内に留めることが可能になる。その結果、溶接後熱処理における溶接金属の靱性低下が抑制される。また、REM酸化物を用いているため、溶接中のアークを安定化させることが可能となる。さらに、本実施形態に係るサブマージアーク溶接用溶融型フラックスは、溶融スラグの粘性を高めるSiO、及びAlと、粘性を低下させるCaO、CaF、及びMgOとを組成バランスよく含んでいる。このため、溶接施工性も確保される。したがって、本実施形態に係るサブマージアーク溶接用溶融型フラックス(以下、「溶融型フラックス」とも称する)は、耐PWHT脆化特性及び溶接施工性のいずれの特性も優れる。
以下に、本実施形態に係る溶融型フラックスの成分組成の限定理由について説明する。なお、特段の断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
(CaF:5.0%〜60.0%)
CaFは、溶接金属の酸素量を低くして靭性改善に効果がある。CaFが少ないと、溶接金属の酸素量が増加して靭性改善の効果が得られない。一方、CaFは融点が低いため、過剰に含むとビードの平滑性が損なわれる。また、アークが不安定となりビード外観が不良となる。よって、CaFの含有量は、5.0%〜60.0%とする。好ましくは10.0%〜50.0%である。
(Al:2.0%〜40.0%)
Alは、スラグをガラス化させ、ビード外観およびスラグ剥離性を改善する。一方で、Alの過剰に含むと、フラックスの溶融点が高くなりスラグ巻込みが発生する。スラグ剥離性も低下する。よって、溶接施工性確保の観点から、Alの含有量を2.0%〜40.0%とする。Alの好ましい含有量は、20.0%〜35.0%である。
(SiO:2.0%〜30.0%)
SiOは、スラグを構成する重要な成分である。SiOはスラグをガラス化させ、ビード外観およびスラグ剥離性を改善する効果を有する。また、SiOの含有量が少ないと、アンダーカット、スラグ巻込み等の溶接欠陥を生じやすくなる。一方で、SiOはスラグの粘度を高くする成分である。そのため、SiOの含有量の増加は、スラグの粘度を増加させ、ビード形状不良が生じやすくなる。よって、溶接施工性確保の観点から、SiOの含有量を2.0%〜30.0%とする。SiOの好ましい含有量は、10.0〜20.0%である。
(CaO:5.0%〜25.0%)
CaOは、溶融スラグの流動性を向上させ、アンダーカットやスラグ巻込みを抑制する効果を有する。CaOの含有量が少ないと、ビード外観が不良となる。一方で、CaOを過剰に含有すると、スラグ流動性が不良となり、ビード高さが不均一でスラグ剥離性も不良になる。よって、溶接施工性確保の観点から、CaOの含有量を5.0%〜25.0%とする。CaOの好ましい含有量は10.0%〜20.0%である。
(MgO:1.0%〜10.0%)
MgOは、フラックス粒の表面性状に影響し、粒表面のくぼみ(細孔)の体積の総和(全細孔容積)を低減して、フラックスへの吸湿を抑制する効果を有する。この効果を得るために1.0%以上を添加する。一方で、MgOの含有量が過剰になると、フラックスの融点が上昇する。そのため、溶融スラグの流動性が低下して、溶接施工性を損なう。よって、MgOの含有量を10.0%以下とする。好ましい上限は7.0%以下である。
(REM酸化物の合計:1.0%〜10.0%)
「REM」とはSc、Y、及びランタノイドの合計17元素の総称である。REM酸化物は、これら17元素の酸化物を表す。REM酸化物の合計は、これら17元素の酸化物の合計含有量を指す。REM酸化物は、これら17元素の酸化物のうちの1種または2種以上を含んでいればよい。また、REM酸化物は、La、CeO、及びNdのうちの1種または2種以上であってもよい。REM酸化物が、La、CeO、及びNdのうちの1種または2種以上である場合、REM酸化物の合計は、La、CeO、及びNdの合計含有量である。
REM酸化物は、前述のように、溶接金属中で固溶REMとなって、リン化物となり、Pの粒界偏析を抑制する。この効果を得るために、REM酸化物の合計含有量を1.0%以上とする。一方で、REM酸化物の合計含有量が過剰になると、溶接金属中に過剰のREMが固溶するため、溶接金属が脆化する。よって、耐PWHT脆化特性の観点から、REM酸化物の合計含有量を10.0%以下とする。REM酸化物の好ましい合計含有量は、2.0%〜8.0%である。
また、本実施形態に係るフラックスは、上記の必須成分に加え、更に、必要に応じて、以下の成分を任意で含有することができる。
(TiO:0〜25.0%)
TiOは、アーク安定性及びビード表面の平滑性が得られる効果を有する。TiOが過剰になると、スラグ剥離性が劣位となる。よって、TiOの含有量の上限を25%以下とする。TiOは、任意の成分であるから、TiOの含有量は、0%であってもよい。TiOを含有する場合、0%超であってもよい。TiOを含有する効果を有効に得るには、TiOの含有量を0.2%以上とすることがよい。
(BaO:0〜15.0%)
BaOは、アーク安定性、及びフラックスの融点を調整する効果を有する。BaOの含有量が過剰になると、ビード形状を低下させる。よって、BaOの含有量を15.0%以下とする。好ましい上限は13.0%以下である。BaOの含有量は、任意の成分であるから、0%であってもよい。BaOを含有する場合、0%超であってもよい。BaOを含有する効果を有効に得るには、BaOの含有量を5.0%以上とすることがよい。
(MnO:0%〜10.0%)
MnOは、溶融スラグの流動性を向上させ、ビード外観を滑らかにする効果を有する。MnOの含有量が過剰になると、フラックスの溶融点が高くなりスラグ巻込みが発生する。更に、ビードの波目が粗く、スラグ剥離性及びビード外観が不良となる。よって、溶接施工性確保の観点から、MnOの含有量を10.0%以下とする。好ましい上限は6.0%以下である。MnOの含有量は任意の成分であるから、0%であってもよい。MnOを含有する場合、0%超であってもよい。MnOを含有する効果を有効に得るには、MnOの含有量を1.0%以上とすることがよい。
(B:0〜1.0%)
は、溶接金属の靱性を向上する効果を有する。Bの含有量が過剰になると、溶接金属が硬化し靱性を低下させる。よって、Bの含有量は、1.0%以下とする。好ましい上限は0.7%以下である。Bの含有量は、任意の成分であるから、0%であってもよい。Bを含有する場合、0%超であってもよい。Bを含有する効果を有効に得るには、Bの含有量を0.1%以上とすることがよい。
(残部)
残部は、不純物である。不純物は、溶融型フラックス製造時に、FeO等が混入する場合がある。不純物の混入については、FeOでは、2.0%以下であれば耐PWHT脆化特性及び溶接施工性に対する影響は極めて少ない。
(溶接時のアーク内の酸素量)
本実施形態に係る溶融型フラックスは、溶接時のアーク空間内の酸素量を適度な量にすることで、溶接後熱処理の溶接金属の靱性低下がより一層抑制される。例えば、溶接時のアーク空間内の酸素量が過剰になると、溶接金属に固溶したREMがアーク空間内のO(酸素)と再び結合しやすくなる傾向がある。この場合、溶接金属中でREM酸化物を形成し、固溶REMが減少する場合がある。
溶接時のアーク空間内の酸素量を適度な量にするためには、下記式(1)で求められたXの値が、下記式(2)に示す範囲を満足することが好ましい。下記式(1)では、各酸化物の酸化度合に応じて係数を定めているので、この式(1)で求められたXは、溶接時のアーク空間内の酸素雰囲気の度合いを表す指標となる。この指標が式(2)で示す範囲を満足することにより、アーク空間内の酸素量が適度な量であることを表す。そして、溶接後熱処理の溶接金属の靱性低下がより一層抑制される。式(2)で示すXの好ましい下限値は1.00以上であり、Xの好ましい上限値は4.20以下である。
(ただし、式(1)中、[CaF]、[CaO]、[MgO]、[La]、[CeO]、[Nd]、[BaO]、[MnO]、[B]、[Al]、[SiO]、及び[TiO]は、溶融型フラックス中に含有されている各成分の質量%を表す。含有量が0質量%の成分がある場合には、式(1)中の該当する成分の含有量として0質量%を代入して計算する。)
なお、各成分の酸化物やフッ化物の質量%の測定は、公知の成分分析法(例えばフッ素についてはイオン電極法、フッ素以外の元素については誘導結合プラズマ(ICP)分析法)を用いて求めてもよい。具体的には、各元素の測定結果を用いて、各成分の分子量を考慮して換算することで、酸化物の質量%を求めてもよい。フッ化物については、フッ素の全量がCaFとなっているとしてフッ化物の質量%を求め、フッ素と化合していない残部のCaは酸化物になっているとしてCaOの質量%を求めてもよい。
(溶融型フラックスの粒径(直径))
本実施形態に係る溶融型フラックスは、全体の粒径(直径)を適度な範囲とすることで、溶接後熱処理の溶接金属の靱性低下がより一層抑制される。REM酸化物は、高融点である。そのため、溶融型フラックス全体の粒径(直径)が大きすぎると、同じ溶接条件では、アークにより、REMとO(酸素)とが解離し難くなる傾向がある。それによって、溶接金属へのREM固溶量が減少する場合がある。
溶融型フラックス全体の粒径(直径)は、500μm以下である粒子を主体(例えば、70質量%以上)として含むことがよい。耐PWHT脆化特性及び溶接施工性の確保をより一層両立させる観点から、本実施形態に係る溶融型フラックスは、全体の粒径(直径)が、75μm〜500μmである粒子を70質量%以上含むことが好ましい。75μm〜500μmである粒子は、75質量%以上含むことがより好ましい。なお、75μm〜500μmである粒子の含有量の上限は特に定めない。より多いほど好ましい。また、全体の粒径(直径)が、75μm未満である粒子を20%以下含むことが好ましい。75μm未満である粒子は、15質量%以下含むことがより好ましい。なお、75μm未満である粒子の含有量の下限は特に定めない。より少ないほど好ましい。
溶融型フラックス全体の粒径(直径)の測定方法は以下のとおりでもよい。
具体的には、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に使用し、超音波バス内でフラックスを1分間分散させた後に、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(「LA−910」堀場製作所製)を用いて、フラックスの粒径(直径)毎の重量分布を測定してもよい。
本実施形態に係る溶融型フラックスの好ましい製造方法の一例としては、以下のような方法が挙げられる。
まず、目的とする組成になるように、REM酸化物を除いた、必須成分を構成する原料、及び必要に応じて任意成分を構成する原料を混合する(第1混合工程)。
次に、混合した原料を溶解炉(例えばアーク溶解炉)で、溶融して溶融スラグを得る(溶融工程)。
次に、溶融スラグの温度を1500℃〜1550℃とし、REM酸化物(例えば、La、CeO、及びNdのうちの少なくとも1種)を混合して、5分〜10分混合し、均一に近い状態の組成の溶融スラグとする(第2混合工程)。
次に、溶融スラグを冷却後(例えば、空冷)、粉砕して目的とする粒度(粒径)に調整する(粉砕工程)。
本実施形態に係る溶融型フラックスは、耐PWHT脆化特性及び溶接施工性の確保を両立する観点から、第2混合工程で、REM酸化物を混合することが好ましい。REM酸化物は、高温の溶融スラグ中で、REM金属と酸素とに分解され難い。このため、REM酸化物は、REM酸化物を混合した後の溶融スラグ中で、REM酸化物として存在する。このREM酸化物は、実際に溶接をする際の高温下では酸素が分解され、溶接金属中に、固溶REMを確保しやすくなる。
なお、第2混合工程でREM酸化物を混合しても、溶解時間が10分を超えると、REM酸化物がREM金属と酸素に分解されやすくなり、REM酸化物として存在できなくなる。一方、第2混合工程でREM酸化物を混合しても、溶解時間が5分未満であると、REM酸化物が均一に近い状態で溶けなくなる。このため、溶接後熱処理による溶接金属の靱性低下の抑制と、優れた溶接施工性の確保とを両立する効果が得られない。さらに、第2混合工程でREM酸化物を混合する際の溶融スラグの温度が、1500℃未満ではREM酸化物を溶融化できない。一方、溶融スラグの温度が、1550℃超では、製造時に多大なエネルギーを費やすだけでなく、溶融スラグの鍋を損傷させる。このように、REM酸化物を所定の範囲の溶融温度と混合時間で溶融させ、フラックスを製造することで、本実施形態のREM酸化物を含有した溶融フラックスを得ることができる。そして、この溶融フラックスを用いてサブマージアーク溶接をすれば、耐PWHT脆化特性及び溶接施工性が共に優れた溶接金属を形成することができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(溶接継手の作製)
表1に示す化学成分を有する母材(板厚=25mm)に、60°V型溝を、母材の表面から深さ6mmの位置まで、長さ1m以上にわたり加工を施した。そして、表2に示す2種類(A及びB)の化学成分を有する溶接ワイヤ(φ(直径)4mm)、及び表4に示す化学成分を有する溶融型フラックスを用いて、表3に示す溶接条件で、4電極サブマージアーク溶接(第1電極及び4電極に溶接ワイヤA、第2電極及び3電極に溶接ワイヤBを使用)を行った。溶接は、溶接長1mの1層溶接を行うことで溶接継手を作製した。より具体的には、第1電極から第4電極までを溶接方向に沿って、それぞれの間隔が20mmとなるように、次のように設置して溶接を行った。第1電極は母材の平面に垂直な方向から15°溶接方向に傾け、第2電極は母材の平面に垂直な方向とし、第3電極は母材の平面に垂直な方向から10°溶接方向とは逆側に傾け、第4電極は母材の平面に垂直な方向から15°溶接方向とは逆側に傾けた。また、溶接速度は、2500mm/分とした。そして、溶接継手を作製するときの溶接施工性を評価した。また、作製した溶接継手の溶接金属に対して、溶接後熱処理(PWHT)を施し、PWHT後における靱性の評価を行った。
表4に示す溶融型フラックスは、次の手順で作製した。
REM酸化物を除く種々の酸化物及びフッ化物の鉱石原料を配合してアーク溶解炉で溶融スラグ化した。次に、溶融スラグの温度を1550℃とした状態で、表4に示すREM酸化物(La、CeO、Nd)を投入し、更に10分間溶解した。次に、REM酸化物を含む溶融スラグ(配合された種々の鉱石原料の溶解されたもの)とした後、空冷凝固させた凝固物を得た。次に、得られた凝固物を粉砕して粉砕物とし、この粉砕物を300℃以上で乾燥した後、目的とする粒径に調整して各例で用いる溶融型フラックスを得た。なお、比較例として記載したREM金属が添加されたフラックスは、上述の方法でREM酸化物を投入せずに溶融スラグを作成し、空冷凝固し粉砕して得られた溶融型フラックスに、後からREM金属を添加したものである。このため、REM金属を添加したフラックスの成分測定では、REMは酸化物とならず金属であるとし、REM以外の成分は酸化物又はフッ化物になっているとして、既述の成分測定方法で測定した。
表5に示す溶融型フラックスの各粒径範囲毎の粒子の重量割合は、既述の方法で測定したフラックスの粒径(直径)毎の重量分布から、粒径が75μm〜500μmである粒子、及び、粒径が75μm未満である粒子を求めたものである。
<PWHT後の靱性評価>
溶接金属のPWHTを以下の条件で行った後、シャルピー衝撃試験を実施した。
−PWHT条件−
昇温速度R:158℃/hr
保持温度及び保持時間H:620℃×4hr、
冷却速度C:190℃/hr
−シャルピー衝撃試験−
得られた溶接金属の中央部からJIS4号Vノッチシャルピー試験片を採取した。具体的には、母材の表面から1mmまでの部分を削り、残部の表層から10mm角(厚さ方向に10mm×溶接方向に10mm)の試験片を得た。試験片の方向は、溶接方向に対して垂直な方向である。Vノッチは、溶接金属の中央部(前述の60°V型溝の中心部)の位置で、母材の板厚方向に沿って、Vノッチの先端の向きが溶接方向に向うように加工を施した。上述したVノッチシャルピー試験片について、JIS Z2242(2005年)に準拠してシャルピー衝撃試験を実施した。衝撃試験温度は−30℃とした。そして、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果を表5に示す。
・評価基準
A(○):シャルピー吸収エネルギーが80J以上
B(△):シャルピー吸収エネルギーが50J以上80J未満
C(×):シャルピー吸収エネルギーが50J未満
<溶接施工性の評価>
溶接施工性は、以下の項目を評価した。そして、各項目の評価結果に基づき、下記基準で総合評価を行った。評価結果を表5に示す。
A(○):全ての項目が「A(○)」である場合
B(△):アンダーカット(以後UCと称す)及びスラグ巻込み(以後SIと称す)の2つの評価が両方とも「A(○)」であり、スラグ剥離性、溶接ビード形状、及びスラグ巻込みの評価で少なくとも一つが「C(×)」である場合
C(×):UC及びSIのいずれか一方でも評価が「C(×)」である場合
溶接施工性の各評価項目及び評価基準は以下のとおりである。
(UC)
目視によりUC(アンダーカット)の有無について評価を行った。
A(○):深さ0.5mm以上のUCが無い
C(×):深さ0.5mm以上のUCが有る
(スラグ剥離性)
溶接継手の裏側をハンマーで数回叩いたときの溶接ビード表面端部を目視により観察し、溶接ビード表面に残るスラグ片の有無について、評価を行った。
A(○):スラグ片が溶接ビード表面に残らない
C(×):スラグ片が溶接ビード表面に残る
(溶接ビード形状)
目視により、溶接ビード形状の良否を確認して評価を行った。
A(○):鋼板表面からの溶接金属の余盛り高さが3mm未満
C(×):鋼板表面からの溶接金属の余盛り高さが3mm以上
(SI)
X線検査結果の写真を目視判定して溶接金属中に円相当直径1mm以上のSI(スラグ巻込み)の有無を評価した。
A(○):溶接金属中に円相当直径1mm以上のスラグの巻込みが無い
C(×):溶接金属中に円相当直径1mm以上のスラグの巻込みが有る
表4中、下線を付してある数値は、各規定の範囲外であることを表す。
フラックス記号C1〜C5及びC11〜C19の溶融型フラックスは、REM酸化物以外の組成が規定範囲から逸脱しているため、溶接施工性が不良となった。
C6の溶融型フラックスは、REM酸化物が規定範囲の下限値から逸脱しているため、Pの粒界偏析を抑制できず靱性不良となった。
C7の溶融型フラックスは、REM酸化物が規定範囲の上限値から逸脱しているため、溶接金属中に過剰のREMが混入して靱性不良となった。
C8〜10の溶融型フラックスは、REMの酸化物ではなく、純金属であるREM金属を含有させたため、アーク発生が不安定となり溶接施工不良となった。特に、C9の溶融型フラックスは、REM金属が少ないため、Pの粒界偏析を抑制できず靱性不良となった。C10の溶融型フラックスは、REM金属過剰で靱性不良となった。
一方、フラックス記号E1〜E10の溶融型フラックスは、各規定の範囲内を満足していることにより、耐PWHT脆化特性及び溶接施工性がともに優れていた。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    CaF:5.0%〜60.0%、
    Al:2.0%〜40.0%、
    SiO:2.0%〜30.0%、
    CaO:5.0%〜25.0%、
    MgO:1.0%〜10.0%、
    REM酸化物の合計:1.0%〜10.0%、
    TiO:0%〜25.0%、
    BaO:0%〜15.0%、
    MnO:0%〜10.0%、
    :0%〜1.0%、
    を含有し、残部は不純物からなるサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
  2. 前記REM酸化物の合計は、La、CeO、及びNdの合計である、請求項1に記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
  3. 各成分の含有量は、下記式(1)で求めるXの値が下記式(2)を満たす、請求項2に記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。

    (ただし、式(1)中、[CaF]、[CaO]、[MgO]、[La]、[CeO]、[Nd]、[BaO]、[MnO]、[B]、[Al]、[SiO]、及び[TiO]は、溶融型フラックス中に含有されている各成分の質量%を表す。含有量が0質量%の成分がある場合には、式(1)中の該当する成分の含有量として0質量%を代入して計算する。)
  4. 質量%で、
    粒径(直径)75μm〜500μmである粒子を70%以上含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
  5. 質量%で、
    粒径(直径)75μm未満である粒子を20%以下含む、請求項4に記載のサブマージアーク溶接用溶融型フラックス。
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