JPH09155588A - 溶接金属の靱性に優れる厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法 - Google Patents

溶接金属の靱性に優れる厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法

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JPH09155588A
JPH09155588A JP31641295A JP31641295A JPH09155588A JP H09155588 A JPH09155588 A JP H09155588A JP 31641295 A JP31641295 A JP 31641295A JP 31641295 A JP31641295 A JP 31641295A JP H09155588 A JPH09155588 A JP H09155588A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 極厚鋼板を大入熱潜弧溶接するに際して、溶
接金属の切欠靱性を改善する。 【解決手段】 溶接用フラックスとしてSiO2、MgO 、Ca
CO3 、CaF2、Al2O3 、TiO2及びB2O3を所定量で含み、か
つ金属成分として鉄粉、Ti粉、Mn粉、Mo粉を含有するボ
ンドフラックスを用いる。溶接用ワイヤとしてC、Si、
Ti、Mn、Moを含有する鋼ワイヤを用いる。ワイヤ中のMn
含有量a、フラックス中のMn含有量b、ワイヤ中のMo含
有量c、フラックス中のMo含有量d、ワイヤ中のTi含有
量e及びフラックス中のTi含有量fについて、1.0 ≦a
+0.33b≦4.0 (wt%)、0.15≦c+0.33d≦1.00
(wt%)、0.01≦e+0.20f≦0.40 (wt%)の関係を
満足させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、鉄骨ボックスの
角継手溶接のような厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法に関
し、特に溶接金属について良好な靱性を得ることのでき
る方法を提案しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】近年、高層ビルに代表される構造物の大
型化に伴い、板厚40mmを超える如き極厚の鋼板よりなる
溶接構造部材が用いられるようになっている。かような
極厚鋼板の溶接をする際には、溶着速度の大きい2電
極、あるいは3電極の潜弧溶接方法が、溶接施工の高能
率化が可能であることを理由として多用されている。
【0003】このような極厚鋼板の大入熱潜弧溶接法に
関しては、これまでにも種々に提案されていて、例えば
特開平2−41795号公報では極厚鋼板の大入熱多層
盛溶接において優れたスラグ剥離性を得るため、所定組
成に調製した潜弧溶接用ボンドフラックスが提案され、
また、発明者らも先に特開平2−258191号公報に
て1層溶接施工の板厚限界を有効に向上させ、多層の大
入熱潜弧溶接の場合のスラグ剥離性を改善し、併せて耐
凝固割れ性も改善するために、フラックスの組成及び粒
度分布並びに溶接電流条件を規定した高能率の溶接施工
法を提案している。さらに、特開平4−167999号
公報には溶接入熱が800kJ/cm程度といった大入熱溶接の
場合において良好な耐水素割れ性、耐繰り返し使用性能
及び優れたスラグ剥離性を有するフラックスが提案され
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、極厚鋼板に
施す大入熱潜弧溶接方法にあっては、溶接時の熱サイク
ルにおいて溶接金属部の冷却速度が非常に小さいことか
らこの溶接金属部のデンドライトは大きく成長し、粗大
な初析フェライトが析出するため、溶接金属部の切欠靱
性が劣化する問題がある。
【0005】この点について、前述した特開平2−41
795号公報、特開平2−258191号公報及び特開
平4−167999号公報の提案は、いずれもスラグ剥
離性を第1の目的とし、さらに耐水素割れ性、耐繰り返
し使用性能、耐凝固割れ性等の改善を目指したものであ
り、溶接金属の靱性改善に主点をおいてはなかった。し
たがって、板厚60mm〜80mmの極厚鋼板に3電極潜弧溶接
を施す場合のように、溶接後の冷却過程における溶接金
属の冷却速度が非常に遅い超大入熱溶接においては、溶
接金属の靱性を確保するのが困難であった。
【0006】この発明は、上記の問題を有利に解決する
もので、溶接金属の切欠靱性を改善することのできる極
厚鋼板の大入熱潜弧方法を提案することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者らは、大入熱潜弧
溶接をした場合の溶接金属の靱性の向上を目指して鋭意
研究を重ねた結果、以下のような新規知見を得るに到っ
た。まず、従来の大入熱潜弧溶接法において、溶接金属
の切欠靱性は、溶接後の冷却過程における溶接金属の80
0 〜600 ℃間の冷却時間によって支配されていることが
明らかとなった。とりわけ800 〜600 ℃間の冷却時間
が、一般の大入熱溶接に比較してもはるかに長時間の、
200 秒を超える超大入熱溶接の場合には、冷却速度が非
常に遅くなるため、切欠靱性が顕著に劣化することが判
明した。この劣化の原因は、800 〜600 ℃間の冷却時間
が長いと、この溶接金属部のデンドライトが大きく成長
し、粗大な初析フェライトが析出するためと考えられ
る。
【0008】かかる知見からさらに、溶接金属部の靱性
を改善するためには、焼入れ性を向上させれば良いこと
を究明した。すなわち、大入熱溶接で800 〜600 ℃間の
冷却時間が200 秒を超える場合であっても良好な溶接金
属靱性を得るには、従来の大入熱潜弧溶接法で得られて
いた程度の溶接金属の焼入れ性では不十分で、特に高い
焼入れ性を確保することが必要不可欠となることを見い
出したのである。この溶接金属の焼入れ性は、溶接金属
中における焼入れ性向上成分(Mn、Mo等)の含有量を増
加させること、及び溶接金属中の酸素量を低下させるこ
とにより高められる。
【0009】次に、上述のごとく冷却速度が非常に遅い
場合には、溶接金属中に含まれる微量のSiについても溶
接金属の靱性に大きく影響を及ぼすことを新たに見い出
した。すなわち、溶接金属が十分な焼入れ性を有してい
たとしても、溶接金属中のSi量が多量になると靱性は劣
化するのである。
【0010】これらの知見に基づき、極厚鋼板に3電極
1層潜弧溶接を施す場合のように、溶接後の溶接金属の
冷却過程において800 〜600 ℃間の冷却時間が200 秒を
超えるような溶接金属の冷却速度が非常に遅い超大入熱
溶接であっても溶接金属の靱性を確保することを第1の
目的とし、その他溶接作業性、耐割れ性及びビード外観
をも考慮して、溶接金属中のMn、Mo、Si及び酸素量を適
正範囲内にするように溶接用フラックスや鋼ワイヤに工
夫を加えたところがこの発明の骨子である。
【0011】すなわちこの方法は、厚鋼板に大入熱潜弧
溶接を施すに際し、溶接用フラックス及び溶接用ワイヤ
としてそれぞれtotal SiO2:5 〜25wt%、MgO :15〜35
wt%、CaCO3 :7 〜14wt%、CaF2:2 〜10wt%、Al2O
3 :4 〜20wt%、TiO2:3 〜10wt%及びB2O3:0.7 〜2
wt%を含み、かつ金属成分として鉄粉:15〜35wt%及び
Ti粉、Mn粉、Mo粉を含有するボンドフラックス、C:0.
08wt%以下及びSi:0.40wt以下%に加えてTi、Mn、Moを
含有する鋼ワイヤであって、これらワイヤ中のMn含有量
a(wt%)及びフラックス中のMn含有量b(wt%)が、
次式 1.0 ≦a+0.33b≦4.0 (wt%) の関係を満足し、さらにワイヤ中のMo含有量c(wt%)
及びフラックス中のMo含有量d(wt%)が、次式 0.15≦c+0.33d≦1.00 (wt%) の関係を満足し、かつワイヤ中のTi含有量e(wt%)及
びフラックス中のTi含有量f(wt%)が、次式 0.01≦e+0.20f≦0.40 (wt%) の関係を満足するものを用いることを特徴とする溶接金
属の靱性に優れる厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法である。
【0012】この発明の大入熱潜弧溶接方法は、溶接し
ようとする厚鋼板の板厚が60mm以上であり、大入熱潜弧
溶接が少なくとも一の電極の溶接電流を2500A以上とす
る3電極以上の多電極1層溶接である場合に特に有利に
適合する。
【0013】
【発明の実施の形態】この発明におけるボンドフラック
ス及び鋼ワイヤの成分組成範囲の限定理由について以下
説明する。 (ボンドフラックスについて) total SiO2:5〜25% SiO2は造さい材として重要な成分であり、スラグの粘性
を調整するのに必須の成分である。その一方でSiO2は溶
接中、還元反応によって溶接金属中にSiを添加する作用
を有する。このため、溶接金属の800 〜600 ℃の冷却時
間が200 秒を超えるような大入熱溶接において、SiO2
Siが過剰にフラックス中に含まれると、溶接金属中のSi
量が増加して溶接金属の切欠靱性が劣化する問題があ
る。フラックス中にSiO2は、けい砂等のSiO2を含有する
鉱石又は合成物として添加するが、フラックスにFe−Si
等の合金を添加する場合もある。このような合金添加の
場合にはSiをSiO2に換算し、SiO2の総量として規定する
ものとした。このtotal SiO2が5%に満たないと十分な
スラグの粘性を確保できず、良好なビード外観が得られ
ない。しかしながら25%を超えて含ませると溶接金属中
のSiが増加して靱性が劣化するばかりでなく、融点が低
下し、粘性が過剰となりビード外観が乱れるなどの不都
合がある。
【0014】MgO :15〜35% MgO は融点が高いためにフラックスに耐火性を与え、大
入熱溶接においてビード形状を安定化する効果があるだ
けでなく、スラグの塩基度を上げて溶接金属中の酸素量
を低減し、靱性を確保する上で有用な成分である。しか
し15%未満では十分な効果が期待できず、一方35%を超
えて含有させると融点が上昇しすぎてビード外観が劣化
する。
【0015】CaCO3 :7〜14% CaCO3 は溶接中にCaO とCO2 とに分解し、このCO2 ガス
によって溶接部を外気からシールドするとともに溶接雰
囲気中の水素ガスの分圧を低下させるため、溶接金属中
への水素侵入を低減するのに有効である。またCaO は塩
基性成分であり、スラグの融点を上昇させ、靱性を向上
させる効果を持つ。しかしCaCO3 量が7%未満ではCO2
によるシールド効果が少なく、耐水素割れ性が低下す
る。一方14%を超えるCaCO3 量ではCO2 の発生量が過剰
になり。ガスの吹き上げが激しくなり、溶接作業性が劣
化するとともに、ビード外観も劣化する。またスラグの
剥離性も害する。
【0016】CaF2:2〜10% CaF2は融点を上昇させずに塩基度を上げ得るので、溶接
金属の酸素量の調整に有効であるが、2%未満ではその
添加効果に乏しく、10%を超えて多量に添加するとスラ
グの粘性が低下し過ぎてビード外観が悪化する。
【0017】Al2O3:4〜20% Al2O3は、粘性を低下させずに融点を上昇させ得るの
で、融点の調整に有効に寄与するが、4%未満では粘性
の調整効果に乏しく、20%を超えるとスラグの融点が高
くなり過ぎて、ビード幅の不均一やビード外観の劣化を
招く。
【0018】TiO2:3〜10% TiO2はスラグに流動性を与え、スラグの剥離性を改善す
るとともに、アーク空洞内で還元されて部分的にTiとし
て溶接金属中に移行し、溶接金属の靱性を改善するのに
有効である。しかし3%未満ではその効果が乏しく、10
%を超えて添加してもこのような効果は増進せず、むし
ろビード外観を害する。さらにスラグ剥離性を害する。
【0019】B2O3:0.7 〜2% B2O3はアーク空洞内に還元されて部分的にBとして溶接
金属中に移行し、オーステナイト粒界に偏析し、粗大な
粒界フェライトの生成を抑制するため、安価に溶接金属
の靱性を改善するのに有効である。しかし0.7 %未満で
はその効果に乏しく、2%を超える量ではむしろ溶接金
属の靱性は劣化する。
【0020】鉄粉:15〜35% 鉄粉は、溶接入熱あたりの溶着量を増加させ、溶接能率
を向上させるために添加する。しかし15%未満ではその
効果に乏しく、35%を超える添加量ではビード外観が損
なわれる。
【0021】この他、Mn粉、Mo粉及びTi粉を、後述する
ように鋼ワイヤ中のMn量、Mo量及びTi量との関係で所定
の範囲内で含有させるものとする。さらに、通常フラッ
クスに用いられるものは、添加しても差し支えない。か
ような成分とてはBaO,アルカリ金属酸化物(K2O ,Na2O
など)があり、BaO は5%以下の範囲で、アルカリ酸化
物は合計5%以下の範囲でそれぞれ含有させることがで
きる。
【0022】(ワイヤ成分限定理由について) C:0.08%以下 極厚鋼板の大入熱溶接においては、その溶接金属には凝
固過程において大きな収縮力がかかるため割れ感受性が
高くなる。そこで溶接金属の高温割れを防止するために
溶接金属中のC量を低くする必要がある。また大入熱溶
接では、溶接金属の冷却時間が長いために溶接金属中の
C量が高い場合にはCのオーステナイト相への分配が進
み、溶接金属中にマルテンサント−オーステナイト相が
生成する。これがぜい性破壊の発生起点となり靱性が劣
化する。この発明の溶接法を適用しようとする鋼板は、
主としてJIS G 3106に規定されるような鋼板であり、そ
のC量は0.10〜0.18%が実勢である。ここに、この発明
の溶接方法では鋼板の希釈率4割、ワイヤのそれは4割
であるので、溶接金属中のC量を0.12%以下の範囲で生
成するために、ワイヤのC量を0.08%以下と規定するも
のである。
【0023】Si:0.40%以下Siは強力な脱酸剤である
が、溶接金属の800 〜600 ℃の冷却時間が200 秒を超え
る大入熱溶接では、溶接金属中のSiは靱性を著しく劣化
させる。ワイヤのSi量が0.40%を超えると溶接金属の靱
性が劣化するためワイヤのSi量を0.40%以下に規定する
ものである。
【0024】(フラックス中及びワイヤ中のMn量、Mo量
及びTi量の限定理由について)溶接金属の800 〜600 ℃
の冷却時間が200 秒を超える場合、溶接金属の焼入れ性
を非常に高めなければ、溶接金属中に粗大な初析フェラ
イトが大きく発達し、靱性が劣化する。溶接金属の靱性
向上には初析フェライトの生成を抑制する必要があり、
溶接金属の焼入れ性を十分に確保する必要がある。ここ
に、Mnを、靱性及び引張強度確保のため、焼入れ性向上
成分として添加する。すなわち、Mnは溶接金属の焼入れ
性を安価に向上せさ、溶接金属の靱性を向上させるのに
有効である。一方低温割れ防止の観点から溶接金属の強
度が高くなり過ぎないような適正な範囲にMn量を調整す
ることも必要である。かような観点からMn量の範囲を規
定するにあたり、このMnは、フラックス及びワイヤの双
方から添加することができるので、鋼板のMn量との兼ね
合いから溶接金属中に含まれるMn量が1.0 〜2.0 %とな
るようにフラックス及びワイヤ中のMn量を調整する必要
がある。具体的には、前述したJIS G 3106に記載された
鋼板のMn量は、1.0 〜1.5 %が実勢であるため、ワイヤ
中のMn量をa(%)、フラックス中のMn量をb(%)と
したとき、次式 1.0 ≦a+0.33b≦4.0 (%) を満足するようにフラックスとワイヤ中のMn量を調整す
る必要がある。上式におけるa+0.33bの値が1.0 %よ
り少なければ焼入れ性が不足して、溶接金属の靱性を損
ない、一方4.0 %より高くなると、強度が高くなり過ぎ
て、耐低温割れ性が低下する。より好適な範囲は、a+
0.33bの値が 1.5〜3.5 %の範囲である。
【0025】また、溶接金属の焼入れ性をMn同様に向上
させる元素としては、Moがある。Moは、Mnに比べて高価
であるが、少量の添加で溶接金属の靱性を格段に向上さ
せることができる。かようなMoは、スラックス及びワイ
ヤの一方又は双方からも添加できるので、鋼板のMo量と
の兼ね合いから溶接金属中に含まれるMo量が0.06〜0.40
%となるようにフラックス及びワイヤ中のMo量を調整す
る必要がある。具体的には、ワイヤ中のMo量をc
(%)、フラックス中のMo量をd(%)としたとき、次
式 0.15≦c+0.33d≦1.00 (%) を満足するようにフラックスとワイヤ中のMo量を調整す
る必要がある。上式におけるc+0.33dの値が0.15%よ
り少なければ焼入れ性が不足して、溶接金属の靱性を損
ない、一方1.00%より高くなると、強度が高くなり過ぎ
て、耐低温割れ性が低下する。より好適な範囲は、c+
0.33dの値が 0.4〜0.7 %の範囲である。
【0026】次にTi量の限定理由であるが、既に述べた
ように、溶接金属中の酸素量を低減することによって、
溶接金属の焼入れ性が向上するために靱性を向上させる
ことができる。溶接金属中の酸素量を低減するためには
一般に、脱酸剤としてSiが用いられることもあるが、溶
接金属の800 〜600 ℃の冷却時間が200 秒を越えるよう
な大入熱溶接においてSiは、切欠靱性をむしろ劣化させ
るために積極的な添加はできない。そのため、溶接金属
の靱性向上のために強力な脱酸剤である金属Tiを添加す
る。またTiは、脱酸後もTiO2となって溶接金属中に分散
し、溶接金属の組織を微細化し、靱性向上に有効であ
る。このような作用を有するTiは、フラックス及びワイ
ヤの一方または双方からも添加できるので、溶接金属中
に含まれるO量が0.013 〜0.033 wt%となるように、フ
ラックス及びワイヤ中のTi含有量を調整する必要があ
る。具体的には、ワイヤ中のTi量をe(%)、フラック
ス中のTi量をf(%)としたとき、次式 0.01≦e+0.20f≦0.40 (%) を満足するようにフラックスとワイヤ中のTi量を調整す
る必要がある。上式におけるe+0.20fの値が0.01%よ
り少なければ十分な脱酸が行われず、靱性向上の効果が
得られない。一方0.40%より高くなると、溶接金属中の
酸素量が低下し過ぎてむしろ靱性を損なう。より好適な
範囲は、e+0.20fの値が0.02〜0.20%の範囲である。
【0027】この他、Ni及びCuなど、通常ワイヤに含ま
れるものは、添加しても差し支えない。
【0028】ここで、ワイヤの各成分量は、用いる各ワ
イヤの平均値であり、各電極の溶着量が電流に比例する
ものとして、次の式に従って算出するとよい。例えば、
3電極溶接において平均のC量すなわちC(AV)は、
【数1】C(AV) (wt%) = 1電極目の電流×1電極目
のワイヤのC量/電流の総和+2電極目の電流×2電極
目のワイヤのC量/電流の総和+3電極目の電流×3電
極目のワイヤのC量/電流の総和 とする。
【0029】このような組成になる溶接用フラックス及
び鋼ワイヤを用いた大入熱潜弧溶接法が有利に適用する
のは、溶接金属の800 〜600 ℃の冷却時間が200 秒を超
えるような大入熱の場合であり、すなわち溶接しようと
する厚鋼板(JIS G 3106に規定されるような溶接構造用
鋼)の板厚が60mm以上であり、大入熱潜弧溶接が少なく
とも一の電極の溶接電流を2300A以上とする3電極以上
の多電極1層溶接である場合である。ここに、少なくと
も一の電極の溶接電流が2300Aに満たないと、溶け込み
不足、溶着量不足という不利が生ずるので溶接電流は23
00A以上が好ましい。
【0030】
【実施例】溶接母材としてJIS G3106 に規定されたSM49
0B相当であって表1に示す板厚及び組成になる鋼板を用
いた。かかる溶接母材の開先形状はY型で、各々の板厚
において板厚60mmでは開先角度40°でルートフェース10
mmとし、板厚70mmでは開先角度40°でルートフェース12
mmとし、板厚80mmでは開先角度40°でルートフェース13
mmとした。
【0031】
【表1】
【0032】次に、溶接用ワイヤとしては、表2に示す
組成で線径6.4 mmのものを用いた。
【表2】
【0033】さらに、溶接用フラックスとしては、表3
に示すものを用いた。表3において、No. 1〜4はこの
発明の要件を満たすフラックスであり、No. 5〜11は要
件を満たさないものである。
【0034】
【表3】
【0035】これらの溶接母材、溶接用ワイヤ及び溶接
用フラックスを用いた溶接の際しては、表4に示す条件
にて、3電極1層サブマージドアーク溶接を行った。な
お、3電極のうち先行電極をDC電源、追行する残りの
2本の電極をAC電源とした。このAC電源の位相差は
120 °とした。なお、この条件で溶接した際の溶接金属
の800 〜600 ℃における冷却時間を測定し、その結果を
表4に併記した。
【0036】
【表4】
【0037】このような溶接の後、溶接性を評価した。
その結果を表5に示す。この評価項目中、溶接作業性
(スラグの剥離性、ガスの吹き上げ)及びビード外観を
観察し、目視によって判断して良否を○×で示し、ま
た、耐割れ性について溶接部の割れの有無を超音波探傷
によって判断して良否を○×で示した。さらに、溶接金
属部から10mm,10mm,55mmのVノッチ付試験片を切り出
し、0℃における衝撃吸収エネルギーを測定した。これ
らの評価に基づき、全般に優れる場合を総合評価で○と
し、劣る場合を×とした。
【0038】
【表5】
【0039】試料No. 1〜6はこの発明に従う適合例で
あり、良好な靱性の溶接金属及び良好な形状のビードを
欠陥なくかつ作業性を損なうことなく得ることができ
た。これに対して、試料No. 7はワイヤ中のSi量及びフ
ラックス中のtotal SiO2が過大であり、溶接金属の靱性
が劣り、ビード外観も不良であった。試料No. 8はフラ
ックス中のtotal SiO2が少ないため、ビード外観が不良
であり、また、溶接金属中のMn量が高すぎるために、割
れが発生した。試料No. 9はフラックス中のCaF2が過大
であり、ビードの幅が不均一となり、また、Tiの添加量
が少ないため、溶接金属中の酸素量が高くなり、溶接部
の靱性が劣っていた。試料No. 10はフラックス中のAl2O
3 が高いため、ビードが細く、不均一であり、また溶接
金属のMn量が少なく、靱性が劣っていた。試料No. 11は
フラックス中のCaCO3 が過剰であり、溶接中のガス吹き
上げが激しく、作業性が劣っており、また、溶接金属中
のMo量が少なく、溶接金属の靱性が劣る。試料No. 12は
フラックス中のCaCO3 が少ないため、溶接金属中の拡散
性水素量が多くなって割れが発生し、また、溶接金属に
添加される金属Ti量が多いため、溶接金属中の酸素量が
減少し、溶接金属の靱性が劣化した。試料No. 13はフラ
ックス中のMgO 量が高く、ビード外観が不良であった。
試料No. 14はフラックス中のtotal SiO2量が高いため、
ビード外観及び靱性が劣る。
【0040】
【発明の効果】以上述べたようにこの発明の溶接方法に
よれば、極厚鋼板の大入熱3電極1層サブマージドアー
ク溶接のように溶接金属の800 〜600 ℃の冷却時間が20
0 秒を超える場合であっても良好な溶接金属の切欠靱性
を得ることができるばかりでなく、良好な溶接作業性と
ビード外観、及び溶接金属の良好な耐水素割れ性を得る
ことができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 厚鋼板に大入熱潜弧溶接を施すに際し、
    溶接用フラックス及び溶接用ワイヤとしてそれぞれ total SiO2:5 〜25wt%、 MgO :15〜35wt%、 CaCO3 :7 〜14wt%、 CaF2:2 〜10wt%、 Al2O3 :4 〜20wt%、 TiO2:3 〜10wt%及び B2O3:0.7 〜2 wt% を含み、かつ金属成分として 鉄粉:15〜35wt%及び Ti粉、Mn粉、Mo粉を含有するボンドフラックス、 C:0.08wt%以下及び Si:0.40wt以下%に加えて Ti、Mn、Moを含有する鋼ワイヤであって、 これらワイヤ中のMn含有量a(wt%)及びフラックス中
    のMn含有量b(wt%)が、次式 1.0 ≦a+0.33b≦4.0 (wt%) の関係を満足し、さらにワイヤ中のMo含有量c(wt%)
    及びフラックス中のMo含有量d(wt%)が、次式 0.15≦c+0.33d≦1.00 (wt%) の関係を満足し、かつワイヤ中のTi含有量e(wt%)及
    びフラックス中のTi含有量f(wt%)が、次式 0.01≦e+0.20f≦0.40 (wt%) の関係を満足するものを用いることを特徴とする溶接金
    属の靱性に優れる厚鋼板の大入熱潜弧溶接方法。
  2. 【請求項2】 溶接しようとする厚鋼板の板厚が60mm以
    上であり、大入熱潜弧溶接が少なくとも一の電極の溶接
    電流を2300A以上とする3電極以上の多電極1層溶接で
    ある請求項1記載の方法。
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