JP2020073658A - 柔軟で接着力に優れたポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】柔軟で、耐加水分解性と異樹脂との接着性、低温衝撃性をバランス良く兼ね備え、自動車外装部用成型品として好適なポリエステル樹脂組成物を提供する【解決手段】ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)40〜65質量部、結晶性ポリエステルエラストマー(B)15〜50質量部、及び変性オレフィン系樹脂(C)5〜20質量部からなる樹脂組成物100質量部に対してカルボジイミド化合物(D)を0.1〜5質量部配合したポリエステル樹脂組成物であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度が0.65dl/g以上0.80dl/g以下であるポリエステル樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂の優れた物性、耐熱性、耐薬品性を損なうことなく、柔軟でかつ成形性、接着性に優れたポリエステル樹脂組成物に関し、特にエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)との熱溶着性に優れ、溶着後の塗装性や衝撃特性に優れ、自動車部品として極めて有用であるポリエステル樹脂組成物に関する。
PBTは広く自動車用途に使用されているが、その非強化成型品は耐衝撃性が不足している。また、PBT骨格を持つ共重合エラストマーは結晶性エラストマー故に耐薬品性は高いが、価格が高いだけでなく、熱溶着などの接着性が悪い欠点もある。さらに、PBT系の共重合エラストマーは低温環境で衝撃値が低く、特に−30℃における衝撃値が自動車部品として大きく不足している。
特許文献1では、ポリエステルブロック共重合体とPBTと相溶化剤の組み合わせで薄肉成型用のポリエステル共重合体樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、低温環境で衝撃耐性が高く、成型性に優れるが、ブロック共重合体の比率が高いため材料コストは高く、融点も低いため耐熱性に劣る。また、異樹脂との接着性は考慮されていないため接着を必要とする部品には不適である。
特許文献2では、PBTまたはPBT共重合体とポリエステルエラストマーに安定剤と一定量のコアシェル型エラストマーを添加したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、柔軟で加水分解性が改良されているが、架橋タイプのコアシェルゴムを使用しているため異樹脂との接着性が悪い欠点がある。
特許文献3では、PBTに変性したエラストマーとカルボジイミド化合物を配合して、レーザー溶着性に優れた樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、レーザーによって高い接着性を得ることができるが、PBT比率が多く、接着のためにはPBTが溶融する熱量が必要となり、PBTの溶融温度以下の熱処理や接着工法では十分な接着強度を得ることができない。
特許文献4では、PBTにポリエステルエラストマーと3つ以上の官能基を有する多官能性化合物を配合した流動性、強靭性に優れた樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、エラストマー成分の添加量が不十分なため、耐衝撃性はある程度付与されるが大きな変形に耐える程の柔軟性を確保できていない。
特開2012−126832号公報 特開2009−263648号公報 WO2010/122915号公報 特開2009−173899号公報
本発明は、上述の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に結晶性ポリエステルエラストマーと変性オレフィン系樹脂を一定割合で配合することによって、PBT樹脂の優れた物性、耐熱性、耐薬品性を損なうことなく、柔軟でかつ成形性、接着性に優れた柔軟なポリエステル樹脂組成物を提供することにある。特に本発明は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)との熱溶着性にすぐれ、さらには塗装性や衝撃特性も良好な、自動車部品として極めて有用であるポリエステル樹脂組成物を提供する。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、PBT樹脂に結晶性ポリエステルエラストマーを添加することによって耐薬品性を落とさずに弾性率を下げ、さらに変性オレフィン系樹脂を併用することによってさらに弾性率を下げると同時に−30℃の衝撃特性と酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)との熱接着性を向上させることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)の構成を有するものである。
(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)40〜65質量部、結晶性ポリエステルエラストマー(B)15〜50質量部、及び変性オレフィン系樹脂(C)5〜20質量部からなる樹脂組成物100質量部に対してカルボジイミド化合物(D)を0.1〜5質量部配合したポリエステル樹脂組成物であって、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度が0.65dl/g以上0.80dl/g以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
(2)曲げ弾性率が1.5GPa以下であることを特徴とする(1)に記載のポリエステル樹脂組成物。
(3)前記変性オレフィン系樹脂(C)が、無水マレイン酸またはメタクリル酸グリシジル0.01〜15質量%を共重合したエチレン共重合体から選択される一種以上のエチレン系樹脂であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリエステル樹脂組成物。
(4)結晶性ポリエステルエラストマー(B)が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成される結晶性ポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のソフトセグメントとを含有し、前記ソフトセグメント成分の含有量が10〜85質量%であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(5)前記ポリエステル樹脂組成物と酢酸ビニル共重合体をそれぞれ射出成型して得た試験片を熱溶着させた後の接着強度が4MPa以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とする自動車外装用成型品。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、柔軟で低温での耐衝撃性に優れ、かつ酢酸ビニル共重合体との良好な接着特性を併せ持つ。また、耐加水分解性も良好で異樹脂との接着性、低温衝撃性をバランス良く兼ね備えていることから、自動車外装部材や外装鋼板や外装樹脂成型品の穴をふさぐプラスチック成型品として好適に使用することができる。
図1は、本発明のポリエステル樹脂組成物と酢酸ビニル共重合との接着性評価方法の模式図である。
以下、本発明のポリエステル樹脂組成物について詳述する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、結晶性ポリエステルエラストマー(B)、変性オレフィン樹脂(C)、及びカルボジイミド化合物(D)が特定の質量割合で配合されたものであることを特徴とする。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができ、バッチ重合および連続重合のいずれでもよい。エステル交換反応や直接重合も適用できる。カルボキシル末端基量を少なくでき、流動性を制御できる観点から連続重合が好ましく、コスト面からは直接重合が好ましい。成分と構成に関しては、少なくともテレフタル酸またはそのエステル形成誘導体である低級アルコールエステルなどを含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成誘導体を含むグリコール成分とを重縮合して得られることが好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、ホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を80モル%以上含有する共重合体であってもよい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、通常は、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1/1(質量比)の混合溶媒を用いて、温度30℃で測定した固有粘度(IV)は、上限が0.8dl/g、下限が0.65dl/gであることが好ましい。固有粘度の上限はより好ましくは0.75dl/g、さらに好ましくは0.73dl/g、下限はより好ましくは0.66dl/g、さらに好ましくは0.67dl/gである。前記範囲未満のものを用いると樹脂組成物の機械的強度が低下し、逆に固有粘度が前記範囲より大きいものを用いると樹脂組成物の成形性が低下するおそれがある。また、ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)は、固有粘度を異にする2種類以上のものを併用して、上述の固有粘度となるように調整してもよい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)は、流動性、耐加水分解性の観点からカルボキシル末端基量が30meq/kg以下であることが好ましい。カルボキシル末端基量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を粉砕し、ベンジルアルコール中で200℃で溶解後、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液の滴定で求められる。
結晶性ポリエステルエラストマー(B)は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成される結晶性ポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のソフトセグメントとを主たる(70質量%以上)構成成分とすることが好ましく、前記ソフトセグメント成分の含有量が10〜85質量%であることが好ましい。
結晶性ポリエステルエラストマー(B)において、ハードセグメントのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸は通常の芳香族ジカルボン酸が広く用いられ、特に限定されないが、主たる芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸又はナフタレンジカルボン酸であることが望ましい。その他の酸成分としては、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらは樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その量は全酸成分の30モル%未満、好ましくは20モル%未満である。
また、結晶性ポリエステルエラストマー(B)において、ハードセグメントのポリエステルを構成する脂肪族又は脂環族ジオールは一般の脂肪族又は脂環族ジオールが広く用いられ、特に限定されないが、主として炭素数2〜8のアルキレングリコール類であることが望ましい。具体的にはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールが最も好ましい。
上記のハードセグメントのポリエステルを構成する成分としては、ブチレンテレフタレート単位あるいはブチレンナフタレート単位よりなるものが物性、成形性、コストパフォーマンスの点で好ましい。
また、結晶性ポリエステルエラストマー(B)において、ハードセグメントを構成するポリエステルとして好適な芳香族ポリエステルは、通常のポリエステルの製造法に従って容易に得ることができる。また、かかるポリエステルは、数平均分子量10000〜40000を有するものが好ましい。
結晶性ポリエステルエラストマー(B)において、ソフトセグメント成分である脂肪族ポリエーテルは、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などのポリ(アルキレンオキシド)グリコールなどが挙げられる。
上記脂肪族ポリエーテルの中でも、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールが好ましく、より好ましくは、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物である。また、これらのソフトセグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。
結晶性ポリエステルエラストマー(B)のソフトセグメントの共重合量は10〜85質量%が好ましく、より好ましくは20〜85質量%である。
結晶性ポリエステルエラストマー(B)は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、およびソフトセグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、ジカルボン酸と過剰量のグリコールおよびソフトセグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法を採用することができる。(B)成分の使用量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)40〜65質量部に対して15〜50質量部である。
変性オレフィン系樹脂(C)は、無水マレイン酸またはメタクリル酸グリシジル0.01〜15質量%を共重合したエチレン共重合体から選択される一種以上のエチレン系樹脂であることが好ましい。さらにはエチレン(共)重合体に無水マレイン酸またはメタクリル酸グリシジル0.01〜15質量%、好ましくは0.01〜10質量%を共重合した変性エチレン共重合体であることが好ましい。これらは従来公知の方法で製造することが可能であり、通常の共重合により製造する方法でも、グラフト共重合により製造する方法でもよい。
また、変性オレフィン系樹脂(C)は、未変性のエチレン共重合体と変性エチレン共重合体からそれぞれ選択されるものの混合物で使用されてもよい。使用される少なくとも一種のガラス転移温度が−30℃以下であることが低温での耐衝撃性の向上に好ましい。(B)成分の使用量は、少なすぎると得られる組成物の衝撃強度の低下を招き、多すぎると得られる組成物の優れた成形性が損なわれるため、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)40〜65質量部及び結晶性ポリエステルエラストマー(B)15〜50質量部に対して変性オレフィン系樹脂(C)5〜20質量部が好ましい。これら樹脂の配合割合は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)45〜65質量部及び結晶性ポリエステルエラストマー(B)25〜45質量部に対して変性オレフィン系樹脂(C)5〜15質量部がより好ましい。
カルボジイミド化合物(D)とは、1分子内に−N=C=N−の構造を2つ以上有するカルボジイミドであり、脂肪族系カルボジイミド、脂環族系カルボジイミド、芳香族系カルボジイミドやこれらの構造の共重合体などが挙げられる。
カルボジイミド化合物(D)は、例えば、ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素反応により作製されるが、ジイソシアネートは、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−ジイソシアネートなどを単独又は二種以上を共重合させて使用することができる。また、分岐構造を導入したり、カルボジイミド基やイソシアネート基以外の官能基を共重合により導入したりしても良い。さらに、末端のイソシアネートの一部もしくは全部を封鎖させることにより、重合度の制御および末端イソシアネートの封鎖を行なうことができる。末端封鎖剤としては、フェニルイソシアネート、トリスイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物、−OH基、−COOH基、−SH基、−NH−R(Rは水素原子またはアルキル基)などを有する化合物を用いることができる。
カルボジイミド化合物(D)のカルボジイミド基数は安定性と取り扱い性の点で2〜50が好ましく、より好ましくは5〜30である。カルボジイミド化合物(D)は、室温付近で固形であると、粉末化されて熱可塑性ポリエステルエラストマーとの混合時の作業性や相溶性に優れ、均一反応性、耐ブリードアウト性の点でも好ましい。
カルボジイミド化合物(D)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、結晶性ポリエステルエラストマー(B)、および変性オレフィン系樹脂(C)の合計量を100質量部とすると0.1〜5質量部配合することが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜4質量部である。配合量が上記範囲を超えると、柔軟性や、機械的特性、耐熱性、溶融粘度が低下するため好ましくない。また、上記範囲未満であると、組成物中の−N=C=N−量が少なくなり、耐加水分解性向上効果に劣るため好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂組成物には安定剤を添加することが好ましく、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。具体的には、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−トルエン、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6’−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシーベンジルーモノエチル−フォスフェート)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンテリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス〔3,3−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)酪酸〕グリコールエステル、トリフェノール、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン、2,2’−オキサミドビス〔エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,1,3−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミックアヒドトリエステルウイズ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)などを挙げることができる。これらの中でも特に、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンのような分子量が500以上のものを使用することができる。
また、硫黄系酸化防止剤も安定剤として好ましい。具体的には、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジウロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジラウリルチオジプロピオネート、ジオクタデシルサルファイド、ペンタエリストリール−テトラ(β−ラウリル−チオプロピオネート)エステルなどを挙げることができる。これらの中でも特に、チオジプロピオンエステル系化合物が好ましい。
本発明に使用することができる安定剤は前述のものに限定されないし、他の複数の安定剤を同時に併用することも問題ない。安定剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、結晶性ポリエステルエラストマー(B)、および変性オレフィン樹脂(C)の合計量を100質量部とすると、0.01〜5質量部配合することが好ましく、より好ましくは0.05〜3質量部、さらに好ましくは0.1〜1.5質量部である。配合量が上記範囲未満では耐熱性改良効果が低く、上記範囲を超えるとブリードアウトし外観が悪くなる可能性がある。
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物には、上記の安定剤以外に、本発明の効果を阻害させない範囲において、目的に応じて種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、公知のヒンダードアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系等の光安定剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、過酸化物等の分子調整剤、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機及び無機系の顔料などを添加することができる。これらの添加剤は合計で、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、結晶性ポリエステルエラストマー(B)、および変性オレフィン樹脂(C)の合計量を100質量部とすると、40質量部以下の範囲で配合することが可能である。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法としては、本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、結晶性ポリエステルエラストマー(B)、変性オレフィン系樹脂(C)、カルボジイミド化合物(D)などの各成分を所定の配合割合で混合した後に、溶融混錬すればよい。混合は、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダーなどが使用でき、溶融混錬は、バンバリーミキサー、ニーダー式加熱機、単軸もしくは二軸の溶融混錬押出機などを使用することができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物のMFR(g/10分)は、実施例の[MFR]に記載の方法により測定され、その範囲は5以上20未満である。MFRが5未満の場合、成形性が悪くなり好ましくない。MFRを5以上の範囲にするためには、ポリエステル樹脂組成物を上記の配合とし、特にポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度(IV)が0.8dl/g以下であることが重要である。MFRの上限は、物性保持の観点から20未満である。MFRをこの範囲にすることにより、成形性と物性の両立が期待できる。MFRを5以上20未満の範囲にするためには、ポリエステル樹脂組成物を上記の配合とし、特にポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度(IV)が0.65〜0.8dl/gであることが重要である。MFRは7以上17以下であることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物の曲げ弾性率は、ISO178に準じて測定される。本発明のポリエステル樹脂組成物の曲げ弾性率は、1.5GPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率をこの範囲にすることにより、製品の柔軟性を得ることが期待できる。曲げ弾性率をこの範囲にするためには、ポリエステル樹脂組成物を上記の配合とすることが重要である。曲げ弾性率は、1.0GPa以下であることがより好ましく、0.9GPa以下であることがさらに好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物の、酢酸ビニル共重合体と熱溶着させた後の接着強度は、実施例の「EVA接着性」に記載の方法で測定される。本発明のポリエステル樹脂組成物の、酢酸ビニル共重合体と熱溶着させた後の接着強度は、4MPa以上が好ましい。接着強度をこの範囲にするためには、ポリエステル樹脂組成物を上記の配合とすることが重要である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、射出成型によって成型されることが好ましい。射出成型は溶融による熱可塑化、成型、冷却の効率に優れており、短時間で大量の成型品を生産することが可能である。形状デザインの自由度にも優れており、本発明のポリエステル樹脂の特性を最大限に引き出す形状設計をすることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述のように作製されているので、その成型品は曲げ弾性率が低く柔軟で低温での衝撃性に優れ、耐加水分解性も良好でEVAのような異樹脂との良好な接着性を持つ。従って、自動車外装部材や外装鋼板や外装樹脂成型品の穴をふさぐプラスチック成型品として好適に使用することができる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合しうる範囲で変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において各測定は、以下の方法に従った。
〔結晶性ポリエステルエラストマーの組成分析〕
熱可塑性ポリエステルエラストマーの組成は、重クロロホルム溶媒中でヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ−200を用いて、H−NMR分析を行なってその積分比より決定した。
〔結晶性ポリエステルエラストマーの還元粘度〕
樹脂0.05gを25mLの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40)に溶かし、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
〔結晶性ポリエステルエラストマーの融点(Tm)〕
50℃で15時間減圧乾燥した樹脂を示差走査熱量計DSC−50(島津製作所製)を用いて室温から20℃/分の昇温速度で測定し、融解による吸熱のピーク温度を融点とした。なお、測定試料は、アルミニウム製パン(TA Instruments社製、品番900793.901)に10mg計量し、アルミニウム製蓋(TA Instruments社製、品番900794.901)で密封状態にして、アルゴン雰囲気で測定した。
〔曲げ弾性率〕
ISO178に準じて測定した。
〔MFR〕
ISO1133に準じてA法で測定した。温度、荷重条件は260℃×2160gで測定した。
〔シャルピー衝撃値〕
ISO179に準じて測定した。
〔耐加水分解性:高温高湿処理試験〕
ISO527に準拠した引張試験を、80℃×95%×1000時間処理後に実施し、長尺伸び200%以上の伸度となった場合に耐加水分解性良好(○)と判定し、伸び200%未満となった場合に耐加水分解性悪い(×)と判定した。
〔EVA接着性〕
この評価で用いられるポリエステル樹脂組成物および酢酸ビニル共重合体(EVA)の成型品は、それぞれの融点+(10〜50)℃のシリンダー温度設定で射出成型された幅100mm×長さ100mm×厚み2mm、および幅100mm×長さ100mm×厚み1mmの平板から必要な試験片形状を切り出したものを使用した。
図1のようにポリエステル樹脂組成物の幅10mm×長さ100mm×厚み2mmの成型品に酢酸ビニル共重合体(EVA)幅10mm×長さ10mm×厚み1mmの成型品をはさみ、120℃×20分間熱溶着させた後、500mm/分の引張速度で引張試験を実施し、最大荷重をEVAの接着面積で割り返した値を接着強度とした。接着強度が4Mpa以上でEVAが破断した場合に接着性良好(○)と判定し、接着強度が4Mpa未満もしくは破壊がEVAと成型品の接着界面剥離のみ起こりEVAの破断を伴わない場合に接着性悪い(×)と判定した。前述の接着試験はエチレン酢酸ビニル共重合体として日本ポリエチレン株式会社製、ノバテックEVA LV342を使用した。
〔耐塩化カルシウム性〕
(i)80℃×95%×4時間処理、(ii)23℃飽和塩化カルシウム水溶液を塗布し30分放置、(iii)100℃×2時間処理、(iv)23℃室温×18時間静置。前述の(i)〜(iv)を1サイクルとして10サイクル処理を実施したあとに曲げ強度とクラック観察を実施した。曲げ強度の保持率が80%以上でかつクラックない場合に耐塩化カルシウム性良好(○)と判定し、曲げ強度保持率が80%未満もしくは表面にクラックが発生した場合に耐塩化カルシウム性悪い(×)と判定した。
〔総合評価〕
シャルピー衝撃値が10kJ/m以上、MFRが5(g/10分)以上、曲げ弾性率が1.5GPa以下、耐加水分解性良好(○)、EVA接着性良好(○)、耐塩化カルシウム性良好(○)の条件のすべてを満たす場合に総合評価(○)とし、いずれかの条件を満たさない場合に総合評価(×)とした。
〔ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)(A)〕
A−1:1200−211E 固有粘度=0.68dl/g、カルボキシル末端=21meq/kg(CHANG CHUN PLASTICS CO.,LTD.)
A−2:1200−211D 固有粘度=0.74dl/g、カルボキシル末端=14meq/kg(CHANG CHUN PLASTICS CO.,LTD.)
A−3:1200−211M 固有粘度=0.84dl/g、カルボキシル末端=12meq/kg(CHANG CHUN PLASTICS CO.,LTD.)
〔ポリアミド(PA6)〕
PA6:Akulon K122 相対溶液粘度(ギ酸)=2.25、K122 (DSM社、オランダ)
〔結晶性ポリエステルエラストマー(B)〕
ジメチルテレフタレート、1,4−ブタンジオール、及び数平均分子量が1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、表1に示す組成の結晶性ポリエステルエラストマー(B−1)、(B−2)を合成した。得られたポリエステルエラストマーの組成と各種物性を表1に示す。
〔変性オレフィン系樹脂(C)〕
C−1:ボンドファースト7M(住友化学工業社製 エチレン/アクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート共重合体、ガラス転移温度―33℃ GMA含有量6%)
C−2:ボンドファースト7L(住友化学工業社製 エチレン/アクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート共重合体、ガラス転移温度約―33℃ GMA含有量3%)
C−3:タフマーMH5020(三井化学株式会社製 エチレン/ブテン−1/無水マレイン酸共重合体 ガラス転移温度約−60℃)
〔カルボジイミド化合物(D−1)〕
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下HMDIとも記載する)262gに、カルボジイミド化触媒として3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド(以下、カルボジイミド化触媒と略す)1.5gを加え、窒素をバブリングしながら、185℃で28時間縮合反応させることにより、HMDI由来のポリカルボジイミド(D−1)(重合度=20、イソシアネート基含有率1.8%)を得た。
〔カルボジイミド化合物(D−2)〕
市販のポリカルボジイミド(日清紡ケミカル(株)製「HMV−15CA」)を使用した。
〔酸化防止剤〕
実施例、比較例の作製においてコンパウンド時にヒンダードフェノール系安定剤イルガノックス1010(BASF社製)と硫黄系安定剤シーノックス412S(シプロ化成社製)をそれぞれ0.2質量部添加した。
〔離型剤、顔料〕
実施例、比較例の作成においてコンパウンド時に以下の離型剤を0.6質量部、黒顔料マスター1.0質量部(カーボンブラックとして)を添加した。
離型剤:WE40(クラリアント社製モンタン酸エステルワックス)
黒顔料:ABF−T−9801(レジノカラー社製 カーボンブラックマスターバッチ)
〔実施例1〜6、比較例1〜5〕
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)、結晶性ポリエステルエラストマー(B)、変性ポリオレフィン系樹脂(C)、カルボジイミド化合物(D)、酸化防止剤、離型剤、黒顔料の各成分を表2に記載の配合比でドライブレンドし、35mmφ二軸押出機(東芝機械社製)を用いて、240〜260℃の温度設定で溶融混練してストランド状に押出し、水冷してペレタイザーでペレット化した。得られたペレットを100℃にて5時間減圧乾燥しポリエステル樹脂組成物を得た。評価結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、実施例1〜6のポリエステル樹脂組成物は、柔軟で成形性が高く、−30℃におけるシャルピー衝撃値が高いだけでなく、耐加水分解性やEVAとの接着性に優れる。比較例5の樹脂組成物は、このような優れた特性を持つ柔軟なナイロンを配合しているが、耐塩化カルシウム性において実施例より顕著に劣る結果を示す。比較例1〜4は、PBTをベースとしているがPBTの固有粘度や配合する成分の種類と量が適切でないため、いずれかの特性において実施例より劣る結果となっている。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、柔軟で、耐加水分解性、異樹脂との接着性、低温衝撃性をバランス良く兼ね備えていることから、自動車外装部材や外装鋼板や外装樹脂成型品の穴をふさぐプラスチック成型品として好適に使用することができる。

Claims (6)

  1. ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)40〜65質量部、結晶性ポリエステルエラストマー(B)15〜50質量部、及び変性オレフィン系樹脂(C)5〜20質量部からなる樹脂組成物100質量部に対してカルボジイミド化合物(D)を0.1〜5質量部配合したポリエステル樹脂組成物であって、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度が0.65dl/g以上0.80dl/g以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
  2. 曲げ弾性率が1.5GPa以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. 前記変性オレフィン系樹脂(C)が、無水マレイン酸またはメタクリル酸グリシジル0.01〜15質量%を共重合したエチレン共重合体から選択される一種以上のエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. 結晶性ポリエステルエラストマー(B)が、芳香族ジカルボン酸と脂肪族又は脂環族ジオールとから構成される結晶性ポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のソフトセグメントとを含有し、前記ソフトセグメント成分の含有量が10〜85質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  5. 前記ポリエステル樹脂組成物と酢酸ビニル共重合体をそれぞれ射出成型して得た試験片を熱溶着させた後の接着強度が4MPa以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とする自動車外装用成型品。
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