JP2020060397A - 検体採取スワブ - Google Patents

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Abstract

【課題】被検者に痛みを与えずに、鼻腔や咽喉等から検査に充分な量の粘液等の生物学的検体を一定量で安定して採取でき、採取した検体の放出効率が高く、さらに脱落回避性の高い検体採取スワブを提供する。【解決手段】最先端部11、フランジ部14、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部12、を有する先端領域部を有するロッドと、ロッドの先端領域部に包着している袋状の繊維体15と、を備える検体採取スワブを提供する。また、ロッドと、ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体と、を備える検体採取スワブであって、袋状の繊維体が不織布により形成されており、不織布の目付が110〜130g/m2である検体採取スワブを提供する。【選択図】図2

Description

本発明は、検体採取スワブに関する。
臨床及び診断分析の分野においては、生物学的検体を採取するためにスワブが用いられている。この様なスワブは、ロッドの先端に天然繊維や合成繊維により形成された繊維体からなる検体採取部を有するものであり、綿棒等が例示される。
例えば、インフルエンザウイルスの感染検査は、綿棒を用いて鼻腔や咽喉から粘液を採取し、得られた粘液中のインフルエンザウイルスの有無を判定することにより行われている(特許文献1)。しかし、綿やレーヨン等は親水性であることから、回収した検体の放出量が少ないという問題があった。この様な問題を解決する手段として、綿球部に使用される繊維の油分除去を行う方法が知られている(特許文献2)。また、綿球部をフロック化する方法も知られている(特許文献3)。
さらに、検査に充分な検体量を採取することを目的として、検体採取部をループ状の繊維で構成された不織布で形成する技術も知られている(特許文献4)。
特表2002−508193号公報 特開2003−315218号公報 特表2007−523663号公報 特開2017−015610号公報
しかし、特許文献1〜3に記載されるスワブは検体の採取量が不安定であり、採取した検体の放出効率も低く、さらには検体採取部の材質や形状によって被検者に痛みや不快感を与えるといった問題があった。
また、特許文献4に記載されるスワブは、検体採取部が極めて高い空隙率を有する不織布によって形成されたものであるため、ロッドの伸び方向に不織布を引き抜こうとする力に弱く、ロッドから綿球部が脱落することがあった。鼻腔や咽喉から粘液を採取する際にロッドから綿球部が脱落することは、重大な医療事故を引き起こす可能性があることから、ロッドから検体採取部が脱落しない特性が求められる。以下、この様な特性を「脱落回避性」と称する。
検体採取スワブに脱落回避性を付与する方法としては、例えば、検体採取部としての繊維体をロッドに取り付ける際に、接着剤を用いる方法、熱で溶着する方法、紐等で縛る方法等が知られている。しかし、接着剤を用いる方法は、接着剤が繊維体に浸潤することによりその空隙率が低下し、必要とする検体量を採取することができないことがある。また、熱で溶着する方法も、その繊維体が溶着に用いられることから、綿球部の空隙率が低下する。さらに、紐等で縛る方法も、スワブに使用されるロッドの径が小さいことから繊維体を紐で縛ることは非常に難しく、満足のいく脱落回避性をスワブに付与することは困難であった。
そこで、本発明の目的は、被検者に痛みや不快感を与えずに、鼻腔や咽喉等から検査に充分な量の粘液等の生物学的検体を一定量で安定して採取でき、採取した検体の放出効率が高い検体採取スワブを提供すること、及び、高い脱落回避性を有する検体採取スワブを提供することにある。
本発明者は、ロッドと、前記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体と、を備える検体採取スワブを使用することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部、を有する先端領域部を有するロッドと、前記ロッドの前記先端領域部に包着している袋状の繊維体と、を備える検体採取スワブを提供する。
また、本発明では、ロッドと、前記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体と、を備える検体採取スワブであって、前記袋状の繊維体が不織布により形成されており、前記の不織布の目付が110〜130g/m2である検体採取スワブを提供する。
前記の検体採取スワブは、ロッドから抜け止め突端の距離が、ロッドからフランジ部の延出端の距離よりも長いことが好ましい。
前記の検体採取スワブは、繊維体が、接着剤により固定されることなくロッドに包着していることが好ましい。
前記の検体採取スワブは、繊維体がポリエチレンテレフタレートによって形成されていることが好ましい。
前記の検体採取スワブは、生物学検体採取用であることが好ましい。
本発明の検体採取スワブは、被検者に痛みや不快感を与えずに、鼻腔や咽喉等から検査に充分な量の粘液等の生物学的検体を一定量で安定して採取でき、採取した検体の放出効率が高く、高い脱落回避性を有するため、臨床や診断分析の分野において有用である。
ロッドと検体採取スワブの一例を示す。 ロッドの先端領域部と、先端領域部に包着している袋状の繊維体の一例を示す。 実施例の評価で使用した装置を示す。
<検体採取スワブ>
本発明における検体採取スワブは、ロッドと、前記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体と、を備えることを特徴とする。
本発明における検体採取スワブの第一の態様は、最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部、を有する先端領域部を有するロッドと、前記ロッドの前記先端領域部に包着している袋状の繊維体と、を備えることを特徴とする。本発明における検体採取スワブの第二の態様は、ロッドと、前記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体と、を備える検体採取スワブであって、前記袋状の繊維体が不織布により形成されており、前記不織布の目付が110〜130g/m2であることを特徴とする。本発明に係る検体採取スワブの第一の態様及び第二の態様を併せて、「本発明のスワブ」と称する場合がある。
図1及び2を用いて、本発明のスワブの一例について説明する。図1の(A)はロッド(繊維体を取り付ける前のロッド)を示しており、図1の(B)はロッドと、前記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体とを備えるスワブを示している。図1(A)及び(B)の1は柄部を、2はロッドを、3はロッドの最先端部を、4は検体採取部である繊維体を示している。
図2の(A)はロッドの先端領域部を示しており、図2の(B)はロッドの先端領域部に包着している袋状の繊維体を示している。図2の11は最先端部を、12は抜け止め突端を有する返し片部を、13は抜け止め突端を、14はフランジ部を、15はロッドの先端領域部に包着している繊維体を、16は繊維体の袋口部を示している。なお、12の抜け止め突端を有する返し片部は、図示される様に略三角形形状を示し、一方と他方が対となっている。
第一の態様のスワブは、特定の形状のロッドを備えることから、高い脱落回避性を示す。また、第二の態様のスワブは、特定の繊維体を検体採取部として備えることから、被検者に痛みや不快感を与えることなく、鼻腔や咽喉等から検査に充分な量の粘液等を一定量で安定して採取することができ、さらに採取した検体の放出効率が高い。
[ロッド]
ロッドの形状は特に限定されないが、繊維体の脱落回避性の観点からは、フランジ部及び抜け止め突端を有する返し片部の何れか1つを有する先端領域部を有する形状であることが好ましく、フランジ部及び抜け止め突端を有する返し片部の両方を有する先端領域部を有する形状であることがより好ましい。ロッドが、フランジ部及び抜け止め突端を有する返し片部の両方を有する先端領域部を有する場合、抜け止め突端を有する返し片部が、最先端部及びフランジ部の間に位置すること、すなわち、ロッドが、最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部、を有する先端領域部を有することが、高い脱落回避性が発揮される点で特に好ましい。
フランジ部は、繊維体の袋口部と接触することにより脱落回避性を発揮する。すなわち、ロッドの最先端部への伸び方向(以下、単に「ロッドの伸び方向」と称することがある)に繊維体を引き抜こうとする力が加わった場合、繊維体の袋口部がフランジ部に接触することで、引き抜こうとする力とは逆方向の応力が生じ、その結果、脱落回避性が発揮される。したがって、フランジ部は繊維体の袋口部と接触し得る幅(ロッドの中心軸を通る縦断面視での広さ)を有することが好ましい。また、フランジ部の形状は特に限定されないが、ロッドの中心軸を通る縦断面視で円弧状の輪郭を形成する曲面形状を有すること、すなわち円形又は略円形であることが、高い脱落回避性が発揮される点で好ましい。
抜け止め突端を有する返し片部は、繊維体の袋内部及び/又は袋口部と接触することにより脱落回避性を発揮する。すなわち、ロッドの伸び方向に繊維体を引き抜こうとする力が加わった場合、繊維体の袋内部及び/又は袋口部が抜け止め突端を有する返し片部に接触することで、引き抜こうとする力とは逆方向の応力が生じ、その結果、脱落回避性が発揮される。したがって、抜け止め突端を有する返し片部は繊維体の袋内部及び/又は袋口部と接触し、且つ前記応力を発揮し得る抜け止め突端を備えることを必要とする。また、抜け止め突端を有する返し片部の形状は特に限定されないが、例えば、略三角形形状であって、ロッドの伸び方向とは逆方向に抜け止め突端が配向する形状であることが、高い脱落回避性が発揮される点で好ましい。また、抜け止め突端を有する返し片部は、図2に示される様にロッド表面に2個存しており、且つ一方と他方が対となっていてもよいがこれに限定されず、例えば、ロッド表面に1〜6個存する態様であってもよい。
前述の通り、ロッドの先端領域部が、最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部を有する場合は、フランジ部及び抜け止め突端を有する返し片部の何れか1つのみを有する場合と比較すると、高い脱落回避性が発揮される傾向がある。これは、ロッドの伸び方向に繊維体を引き抜こうとする力が加わった場合、フランジ部が繊維体の袋口部と接触するとともに、抜け止め突端が繊維体の袋内部と接触することにより、引き抜こうとする力とは逆方向の応力が繊維体の袋口部と袋内部とに分散し、繊維体の袋口部と袋内部とがロッドとの接触により受ける損傷が低減する結果、繊維体の破壊が生じず、ロッドからの脱落が生じないことに起因すると考えられる。
このため、ロッドの先端領域部が、最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部を有し、さらに、ロッドから抜け止め突端の距離が、ロッドからフランジ部の延出端の距離よりも長い場合は、ロッドの伸び方向に繊維体を引き抜こうとする力が加わった際に、抜け止め突端と袋内部とが容易に接触し得ることとなり、極めて高い脱落回避性が発揮されることとなる。
また、脱落回避性の観点からは、最先端部と繊維体の袋底部とが接着していることが好ましい。
ロッドの最先端部の形状は特に限定されないが、例えば、略球状であることが好ましい。例えば、鼻腔や咽喉から粘液を採取する際にスワブの最先端部が鼻腔や咽喉に触れることがあるが、略球状とすることにより、被検者に痛みを与えることなく検体を採取可能となる。
ロッドの先端領域部は、繊維体に包着される部分を指し、例えば、最先端部、抜け止め突端を有する返し片部、及びフランジ部を有していてもよい。
ロッドは、持ちやすくするために柄部を設けてもよいし、設けなくてもよい。また、柄部はロッドと材質が異なっていてもよいが同一であることが好ましい。
ロッドの材質は、一般的にスワブに用いられる材質であれば特に限定されないが、例えば、紙、木、金属、プラスチックが挙げられる。この中でも、加工性の観点からはプラスチックが好ましく、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネートが挙げられる。
ロッドは、繊維体の取り付けの際や、スワブの滅菌操作の際に加熱することがあるため、その加熱温度によっては融解しないものを材質として用いることが好ましい。ロッドの融点は、例えば、60℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましく100℃以上である。
ロッドの断面形状は特に限定されず、例えば、円形、三角形、四角形、六角形、偏平形が挙げられる。また、ロッドに柄部を設ける場合も同様の形状であってもよいが、その断面が六角形断面であることが特に好ましい。
ロッドの長さは特に限定されないが、例えば60〜250mmであることが好ましく、より好ましくは80〜200mmである。
柄部の長さは特に限定されないが、例えば30〜150mmであることが好ましく、より好ましくは60〜120mmである。柄部の直径は特に限定されないが、例えば0.4〜10.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0mmである。ここで、柄部の直径とは柄部の断面図における最も長い径のことを指す。
ロッドの先端から抜け止め突端までの長さは特に限定されないが、例えば4〜30mmであり、より好ましくは6〜25mmであり、さらに好ましくは8〜20mmである。なお、「ロッドの先端」とは、「ロッドの最先端部の先端」と言い換えることができる。
ロッドの先端からフランジ部までの長さは特に限定されないが、例えば5〜30mmであり、より好ましくは8〜25mmであり、さらに好ましくは10〜20mmである。
抜け止め突端からフランジ部までの長さは特に限定されないが、例えば0.3〜10mmであり、より好ましくは0.5〜5mmであり、さらに好ましくは0.8〜3mmである。
フランジ部の厚みは特に限定されないが、例えば0.1〜3mmであり、より好ましくは0.2〜2mmであり、さらに好ましくは0.3〜1mmである。
ロッド(先端領域部のロッド)の直径は特に限定されないが、例えば、0.3〜2.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.4〜2.0mmである。ここで、ロッドの直径とはロッドの断面における最も長い径のことを指す。
ロッドの表面から抜け止め突端までの長さ(ロッドの表面を底辺とした場合の抜け止め突端の高さ)は特に限定されないが、例えば0.1〜5mmであり、より好ましくは0.2〜3mmであり、さらに好ましくは0.3〜1mmである。
フランジ部の直径は特に限定されないが、例えば0.3〜10mmであり、より好ましくは0.5〜5mmであり、さらに好ましくは0.8〜3mmである。
[繊維体]
繊維体は、袋状であってロッドの先端領域部に対して包着可能なものであれば特に限定されない。本発明のスワブにおいて、繊維体は検体採取部に相当する。
繊維体は、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、アクリル、レーヨン、炭素繊維、アルギネート、綿、絹等の繊維によって形成されていてもよいが、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルによって形成されることが好ましい。
繊維体は、例えば、織物、編み物(メリヤス生地)、レース、フェルト、不織布等の布を袋状にしたものが挙げられる。この中でも、検体の採取量及び放出効率の観点からは不織布を袋状としたものが好ましい。
不織布としては特に限定されないが、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等によりウェブ状とし、このウェブを浸漬法(ケミカルボンド法)、スプレー法(ケミカルボンド法)、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流交絡法)等の交絡手段によって繊維を交絡させたものが挙げられる。この中でも、スパンレース法により作製された不織布である場合に、スワブの検体採取量が向上するとともに、採取した検体の放出効率が高くなり、被検者に与える痛みも減少する傾向がある。
不織布の目付は特に限定されないが、40〜200g/m2であることが好ましく、より好ましくは80〜160g/m2、さらに好ましくは100〜140g/m2である。さらに、不織布の目付が110〜130g/m2である場合には、スワブの検体採取量が向上するとともに、採取した検体の放出効率が高くなる傾向がある。
繊維体を形成する繊維の平均径は特に限定されないが、例えば3.0〜70μm(0.1〜50dtex)であることが好ましく、より好ましくは5.0〜30μm、さらに好ましくは10〜20μmである。不織布を使用する場合、繊維の長さは特に制限されないが、例えば、平均繊維長で10〜100mmであることが好ましい。
繊維体をロッドに取り付ける方法は特に限定されないが、例えば、布を2つ折りにして一方の面と他方の面でロッドを挟み込み、その後に布を溶着・溶断して袋状の繊維体とすることが好ましい。前記方法により、折り目部分の溶着・溶断を行う必要が無くなることから、作業が簡便になる点で有効である。また、折り目部分が繊維体の先端部分となることで、先端部分が柔らかい形状となるため、被検者に痛みや不快感を与えない点で有効である。
繊維体は、その表面を起毛し、毛羽立たせたものであってもよい。布地を起毛する方法には、サンドペーパーによるエメリー起毛法と針布起毛法がある。なお、起毛時期は、不織布を予め起毛しておいてもよいし、布をロッドに取り付けた後に行ってもよい。
繊維体は、接着剤によりロッドに固定されてもよいし、接着剤により固定されることなくロッドに包着していてもよい。
接着剤を介してロッドに繊維体を取り付ける場合、接着剤の種類は特に限定されないが、エチレン酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、合成ゴム系、アクリル系、及び、ポリウレタン系のホットメルト接着剤を用いることができる。また、その形態は、有機溶剤溶解品、水溶解品、エマルジョン、無溶剤品等の何れであってもよい。接着剤を使用する場合、繊維体における空隙を埋めない程度の量を使用し、粘度もその空隙に侵入しにくい程度がよい。
繊維体を接着剤によりロッドに固定する場合、接着剤を加熱することで固定してもよい。加熱手段としては、ヒーター、超音波、レーザーを使用することができる。
繊維体の長さはロッドの先端領域部に対して包着可能な長さであれば特に限定されないが、例えば8〜40mmであり、より好ましくは10〜30mmであり、さらに好ましくは12〜20mmである。なお、繊維体の長さとは、ロッドに沿った長さであって、袋口部から袋底部までの長さと言い換えることができる。
繊維体の袋口部は、フランジ部と接触して脱落回避性を発揮させるために、その直径をフランジ部の直径よりも小さくすることが好ましい。
本発明のスワブは、滅菌しておくことが好ましい。滅菌手段は、エチレンオキサイドガスによる化学滅菌、放射線による滅菌、電子線による滅菌等の何れも利用できる。熱可塑性樹脂層に融点の低い樹脂を用いる場合はオートクレーブによる乾熱滅菌は好ましくない。
本発明のスワブは、被検者に痛みや不快感を与えずに、鼻腔や咽喉等から検査に充分な量の粘液等の生物学的検体を一定量で安定して採取でき、採取した検体の放出効率が高く、高い脱落回避性を有するため、生物学検体の採取用途(生物学検体採取用)として使用することができ、臨床や診断分析の分野において有用である。
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより限定されるものではない。
(製造例1:ロッドの作製)
住友重機械工業製の射出成型機を使用し、ポリプロピレンを180℃で溶融して型に流し込み、その後冷却することで、最先端部から順に、抜け止め突端を有する返し片部、フランジ部、柄部をこの順で有するロッドを得た。なお、ロッドの先端領域部の形状は図2の(A)で示された形状と同一であり、ロッドの先端から抜け止め突端までの長さは13mm、抜け止め突端からフランジ部の長さは1mm、フランジ部の厚みは0.5mm、最先端部の略球状体の直径は1.38mm、ロッド(先端領域部のロッド)の直径は0.90mm、ロッドの表面から抜け止め突端までの長さ(ロッドの表面を底辺とした場合の抜け止め突端の高さ)は0.4mm、ロッドの表面から抜け止め突端までの長さ(ロッドの表面を底辺とした場合の抜け止め突端の高さ)は0.4mm、抜け止め突端を有する返し片部のロッドに沿った長さ(三角形形状における、ロッドに沿った長さ)は2.0mm、フランジ部の直径は1.5mm、柄部の長さは86mm、ロッドの長さは152mmであった。
(製造例2:スワブ1の作製)
株式会社ユウホウ製の不織布(材質:ポリエチレンテレフタレート、製法:スパンレース法、目付:120g/m2)を流れ方向(縦方向)に沿って2つ折りにし、折り目にロッドの最先端部を当て、一方の面と他方の面でロッドを挟み込んだ後、超音波で溶着・溶断して綿球部を取り付けることにより、スワブ1を作製した。
(製造例3:スワブ2の作製)
不織布としてシンワ株式会社製の不織布(材質:ポリエチレンテレフタレート、製法:スパンレース法、目付:100g/m2)を使用したこと以外は製造例2と同様にして、スワブ2を作製した。
(評価1:引張強度の測定)
スワブ1及び2の綿球部に糸を通した後、インストロン5582(万能材料試験機)のつかみ具にスワブ1の綿球部に通した糸を固定し、スワブ1の柄部を固定して、引っ張り速度:100mm/minでスワブの伸び方向に綿球部を引っ張り、最大荷重を測定した。その結果、スワブ1の引張強度は17.3Nであり、スワブ2の引張強度は13.7Nであった。なお、試験雰囲気は温度が23±2℃、相対湿度が50±10%であった。
上記の通り、目付が120g/m2である不織布を使用したスワブ1と、目付が100g/m2である不織布を使用したスワブ2とは、何れも高い引張強度を有していることが理解できる。
(評価2:検体採取量)
ゼリーナ(商品名、ウェルハーモニー社製)を、濃度が0.5重量%となるように水に溶解し、0.5重量%ゼリーナ水溶液(ゲル状溶液)を調製した。また、ゼリーナを濃度が1.0重量%となるように水に溶解し、1.0重量%ゼリーナ水溶液を調製した。
スワブ1、コパン社製のフロックスワブ、及びニプロ社製のスポンジスワブを、蒸留水、0.5重量%ゼリーナ水溶液、及び1.0重量%ゼリーナ水溶液のそれぞれに10秒間浸した後に引き上げ、重量増加分(mg)を計測した。この結果を下記の表1に記載する。なお、蒸留水に対する重量増加分を「水採取量」、0.5重量%ゼリーナ水溶液に対する重量増加分を「0.5重量%ゼリーナ採取量」、1.0重量%ゼリーナ水溶液に対する重量増加分を「1.0重量%ゼリーナ採取量」と称する。
Figure 2020060397
スワブ2を、蒸留水に10秒間浸した後に引き上げ、重量増加分(mg)を計測した。この結果を表2に記載する。なお、蒸留水に対する重量増加分を「水採取量」と称する。また、対比としてスワブ1での結果を表2に併記する。
スワブ1及び2を、食用青を溶解させた水(食用青溶液)に10秒間浸した後に引き上げ、スワブ1の綿球部の吸光度を測定し、食用青溶液の吸光度によって除することによって放出率(%)を算出した。この結果を下記の表2に記載する。なお、放出率(%)以下の様に計算することで得られる。放出率(%)=[(スワブの綿球部の吸光度)/(食用緑溶液の吸光度)]×100
Figure 2020060397
上記の通り、スワブ1の水やゲル状溶液の採取量、水の放出率は何れも高い数値を示した。その一方で、コパン社製のフロックスワブや、ニプロ社製のスポンジスワブは、水やゲル状溶液の採取量において、低い値を示していた。さらに、スワブ2は放出率が大幅に低い値を指名していた。スワブ1とスワブ2との放出率の差が大きい理由は定かではないが、使用された不織布の製法や、目付の差に起因するものであると予想できる。すなわち、スワブ1は目付が120g/m2であって、且つスパンレース法により成形された不織布が用いられていることにより、水採取量や放出率(放出効率)が高い値を示すものと考えられる。
(評価3)
ゼリーナ(商品名、ウェルハーモニー社製)を、濃度が1.5重量%となるように水に溶解し、1.5重量%ゼリーナ水溶液(ゲル状溶液)を調製した。また、ゼリーナを濃度が3.0重量%となるように水に溶解し、3.0重量%ゼリーナ水溶液を調製した。
インストロン5582のロードセルに、スワブ固定用シリコンを使用してスワブ1を固定し、ビーカーに入れた1.5重量%ゼリーナ水溶液の表面にスワブの綿球部の先端が接触する位置を測定開始点とし、ロードセルを連続的に下降させた時の荷重及び変位を測定した。なお、ロードセル最高荷重は100N、クロスヘッド速度は500mm/minである。具体的な方法を、図3を用いて説明する。図3の21はロードセル、22はスワブを固定するためのシリコン(スワブ固定用シリコン)、23はスワブ1、24は繊維体、25は1.5重量%ゼリーナ水溶液が入ったビーカーである。
測定を開始したところ、ゼリーナ水溶液の表面にスワブの綿球部の先端が挿入されるまでは変位が上昇するに伴い、荷重も上昇した。そして、変位が一定以上となるとゼリーナ水溶液の表面にスワブの綿球部の先端が挿入され、急激に荷重の低下が見られた。この際の変位及び荷重を「スワブ挿入時の荷重(N)」及び「スワブ挿入時の変位(mm)」と称す。
また、1.5重量%ゼリーナ水溶液の代わりに3重量%ゼリーナ水溶液を用いた場合、さらに、スワブ1の代わりにコパン社製のフロックスワブ及びニプロ社製のスポンジスワブを使用した場合の荷重及び変位を測定した。以上の測定結果を表3に記載する。
Figure 2020060397
フロックスワブやスポンジスワブと比較すると、スワブ1は「スワブ挿入時の荷重(N)」が低く、「スワブ挿入時の変位(mm)」が小さいことが明らかとなった。ここから、本発明のスワブは、粘性の高い検体を容易に採取することが可能であることが理解できる。したがって、本発明のスワブを用いることにより、被検者に痛みを感じさせることなく鼻腔内や口腔内の検体を採取することが可能である。
1・・・・・柄部
2・・・・・ロッド
3・・・・・最先端部
4・・・・・検体採取部
11・・・・最先端部
12・・・・抜け止め突端を有する返し片部
13・・・・抜け止め突端
14・・・・フランジ部
15・・・・繊維体
16・・・・繊維体の袋口部
21・・・・ロードセル
22・・・・スワブを固定するためのシリコン(スワブ固定用シリコン)
23・・・・スワブ1
24・・・・繊維体
25・・・・1.5重量%ゼリーナ水溶液が入ったビーカー

Claims (6)

  1. 最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部、を有する先端領域部を有するロッドと、
    前記ロッドの前記先端領域部に包着している袋状の繊維体と、を備える検体採取スワブ。
  2. ロッドと、前記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体と、を備える検体採取スワブであって、
    前記袋状の繊維体が不織布により形成されており、
    不織布の目付が110〜130g/m2である検体採取スワブ。
  3. ロッドから抜け止め突端の距離が、ロッドからフランジ部の延出端の距離よりも長い請求項1に記載の検体採取スワブ。
  4. 繊維体が、接着剤により固定されることなくロッドに包着している請求項1〜3の何れか1項に記載の検体採取スワブ。
  5. 繊維体がポリエチレンテレフタレートで形成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の検体採取スワブ。
  6. 生物学検体採取用である請求項1〜5の何れか1項に記載の検体採取スワブ。
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