JP2011229523A - 鼻腔又は咽喉からの粘液採取具 - Google Patents

鼻腔又は咽喉からの粘液採取具 Download PDF

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Abstract

【課題】 鼻腔や咽喉から、検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で安定して採取できる粘液採取具を提供する。
【解決手段】 上記課題は、軸の一端に筒状の布が取着されている鼻腔又は咽喉からの粘液採取具によって解決される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、インフルエンザウイルス等の感染を調べるために鼻腔又は咽喉から粘液を採取する器具に関するものである。
従来より、インフルエンザウイルスなどの感染を調べる際には、綿棒を用いて鼻腔や咽喉から粘液を検体として採取することが行われてきた(特許文献1)。
この綿棒は、例えば図6に示すように、軸9の一端に綿やレーヨン等の親水性短繊維の糸をかたく巻付けたもの10が使用されているが、これらは親水性故に吸水率が高く、回収した検体の放出量が少ないという問題がある。そこで、最近では、ポリエステルのような疎水性短繊維を用いたものも使用されるようになってきている。ところが、疎水性繊維は吸水率が低いため検体の採取量が小さい。これを改良する手段として油分の除去処理を行うことが知られている(特許文献2)。また、綿棒の製造においては、繊維を糸状にするスライバー加工やこの糸を軸に巻付ける捲着加工が行われるが、ポリエステルはこれらの加工性が悪く、その対策として、ポリエステルからなる綿状繊維を加熱処理して巻縮状態を固定させる方法も開発されている(特許文献3)。
また、検体の採取量を増加させるために、綿部をフロック化したものも知られている(特許文献4)。
特表2002−508193号公報 特許第3845037号公報 特開2008−275576号公報 特表2007−523663号公報
従来の粘液採取具は、いずれも検体の採取量が少ないあるいは不安定であるという問題がある。
すなわち、従来の綿やレーヨンの糸をかたく巻付けたものは元々採液量が少ない上、使用時の放出量も少なかった。綿やレーヨンに代えてポリエステルを用いたものも検体採液量が少なく、油分除去処理を行ってもそれを多少改善できるに過ぎなかった。フロック化したものは空隙を確保できるが採液時の押圧や周辺部位との接触で空隙が減少し、採液量が少なくなったりバラツキが大きいという問題があった。インフルエンザウイルスなどを検査する際、これをそのまま再分散液に入れてこれを分析することが一般に行われているので採液量が大きく変化すると、陰性陽性の判定に誤まりを生じることになる。
本発明の目的は、鼻腔や咽喉から、検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で安定して採取できる粘液採取具を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討の結果、粘液採取材として筒状の布を用いることによって、検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で安定して採取できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は軸の一端に筒状の布が取着されている鼻腔又は咽喉からの粘液採取具を提供するものである。
本発明の一態様においては、上記布が疎水性材料で形成されていることを特徴としている。
本発明の別の態様においては、上記布の取着部の空隙率が55%以上であることを特徴としている、本発明のさらに別の態様においては、筒状の布の内周面に布を軸に接着させる接着材が配置されておりその先端が軸の先端より2〜10mm突出していることを特徴としている。
本発明の粘液採取具は、繊維を立体的に構成し、フィラメント間の空隙と布の構造空隙を利用してそこに検体を取入れ、保持するようにしている。それによって検体の採取量を増やし、また、測定のための再分散時には高い再分散率を達成できることを見出した。
本発明においては、糸を構成するフィラメントの間隔で形成する空間と、糸を立体構造にすることによって形成する空間の、2種類の空間を利用しており、それによって検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で安定して採取できるようにしている。
本発明の粘液採取具の一例の平面図である。 その布取着部の拡大図である。 空隙率の計算方法の説明のための模式図である。 筒状の布の内周面に接着層を設けてその先端を軸の先端より突出させた例を示す布取着部の拡大図である。 空隙の調整例の説明図である。 従来の粘液採取具の一例の平面図である。
軸の一端に取着けられる布は、糸から形成されるものである。糸を形成する繊維は、親水性が大きいと採取した検体の放出量が減少し、一方、疎水性が大きいと検体の採取量が減るので、その中間のものが好ましい。好ましい材質の例としてはポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレン等があり、これらを単独あるいは混紡で使用することができる。フィラメントの太さは特に限定されないが、例えば0.05〜20μm程度でよい。フィラメント間の空隙を増やすためには、細いフィラメントの方が好ましい。フィラメントの形状は、一般に断面が円形であり、これを使用することができる。しかしながら、フィラメント間の空隙を増やす点では、菱形、5葉フィラメントのような異型フィラメントを用いたり、布にした後、熱や薬剤を用いてフィラメントの巻縮を行うことも有効である。前述のようにフィラメントは親水性と疎水性の中間のものが好ましく、ポリエステルは疎水性であるので、グロー放電処理のような物理的処理や、フィラメントの表面を界面活性剤や親水性樹脂で覆ったり、レーヨン等の親水性繊維と混紡するなどの処理を施こすことが好ましい。
布は、平織等の織物、ニット等の編物あるいは不織布のいずれであってもよい。布を筒状にする方法は、チューブ状に編むなど種々の方法が知られており、本発明ではそれらの方法で筒状にしたものを用いることができる。例えば、特開2000−304975号公報、特開2010−410号公報に開示されている袋状にしたものも用いうる。また、方形等の布を軸に巻き付けて筒状にしたものでも良い。
検体を繊維空隙に取り込み易くするために、油分は取り除いたほうが望ましい。例えば、繊維業界で一般に実施されている精練と同様の洗剤で洗浄後、更に純水等で洗浄してこの洗剤を除去する方法がある。検体によっては、付着するイオンを超純水で洗浄除去する手段もとりうる。
軸に取着された状態の布は、外径が0.5〜30mmΦ程度、通常1.0〜20mmΦ程度、長さが5〜50mm程度、通常10〜35mm程度、厚みが0.12〜8mm程度、通常0.15〜6mm程度が適当である。
布取着部の空隙率は、布取着部の軸の表面と布の外面との間の容積に含まれる空隙の割合である。図3に示すように、軸の直径をA、布部の外径をB、布部の長さをCとすると、[(B−A)×π/4]×Cが容積であり、そこに含まれる空隙の割合である。これは、例えば、
1)予め布チューブを20mmに切断
2)重量を測定
この重量値と比重から無空隙の体積を計算
3)軸 直径 Aから断面面積測定
4)布を挿入したときの直径を測定
B値、A値より布の断面積を計算
5)C値と布の断面積より体積(空隙+布)を計算
によって求めることができる。本発明では、この空隙率が45%以上、好ましくは50〜87%程度、特に55〜80%程度が適当である。この空隙は、布部の内径が軸の外径より大きい、すなわち布部と軸の間に遊びがあってもよい。
布を先端に取り着ける軸は、一般に綿棒等に使用されている紙、木、金属、プラスチック等を広く用いることができる。しかし、形成加工、滅菌、布の取着等の点でプラスチックが好ましい。具体例としては、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート等を挙げることができる。
軸の基端側には、持ちやすくするために柄を設けることもできる。柄の材質は軸と同様でよい。軸と柄は材質が異っていてもよいが製造上同一であることが好ましい。形状は、通常丸棒状であるが曲った形でもよい。
軸の直径は0.4〜4.0mm程度、通常0.7〜2.5mm程度、長さが5〜50mm程度でよい。柄の直径は1.5〜2.8mm程度、長さが30〜150mm程度でよい。柄を設ける場合、軸と柄を合わせた全長は50〜180mm程度が適当である。
布の軸への取着は、空隙を出来るだけ減らさないよう配慮する。具体的な方法としては、接着材を用いる方法、熱で溶着させる方法、紐等で縛る方法などをとりうる。
接着材は、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、シアノアクリレート系、ゴム系などいずれも使用することができ、形態も有機溶剤溶解品、水溶解品、エマルジョン、無溶剤品のいずれでもよい。使用時には、布の空隙を埋めない程度の量を使用し、粘度も空隙に侵入しにくい程度がよい。
溶着させる場合の加熱手段は、ヒーター、超音波、レーザーを利用できる。
熱収縮チューブを用いて締付け固定することもできる。
固着部位は、布の内面全面でもよいが、通常は一部でよく、その場合基端側を固着させることが好ましい。
接着材には熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂層は、アンカー作用により筒状の布を固着するものであり、融点が軸と筒状の布のいずれより低く、好ましくはいずれよりも20℃以上低いものであって検体およびその分析に実質的に影響を与えないものであればよい。熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂は、化学的に筒状の布に接着性を有しないものと有するものがあるがそのいずれでもよい。前者の例としてはポリエチレン、L−LDPE、エチレン−α−オレフィン共重合体等があり、後者の例としては接着性ポリオレフィン樹脂、低分子ポリエステル等がある。
熱可塑性樹脂は、筒状の布を固着できる範囲でなるべく薄いことが望ましく、厚みが0.05〜10mm程度、好ましくは0.1〜5mm程度がよい。この厚みは、熱可塑性樹脂の外側が筒状の布の内側に接触する厚みでも、離融していてもよいが、軸部を筒状の布に挿入する際にその力で筒状の布が変形して元に戻らないような厚みは検体採取量がばらつく原因となるので好ましくない。熱可塑性樹脂を設ける部位は筒状の布の全長であってもよいが固着しようとする部位のみであってもよい。
この熱可塑性樹脂層の形成にあたっては、軸との間に空隙を生じないようにし、具体的には、軸に熱可塑性樹脂を塗布する方法、熱可塑性樹脂のフィルムを巻き付ける方法、チューブ状にして軸を挿入する方法などをとりうる。チューブ状にした場合には、加熱溶融して軸に固着させるようにする。
筒状の布の軸への取り付けは、布を熱可塑性樹脂層が形成された軸に巻き付ける方法もあるが通常は、筒状、袋状(を含む)の布の軸孔に熱可塑性樹脂層が形成された軸を挿入する。そして、固着は、筒状の布上から圧着、加熱して熱可塑性樹脂層を溶融させ、筒状の布に可塑性樹脂をしみ込ませた後、冷却させることにより行う。
加熱手段は、ヒーター、超音波、レーザーを利用できる。
固着部位は、筒状の布の軸孔内面全面でもよいが、通常は一部でよく、その場合基端側を固着させることが好ましい。
ところで、筒状の布に袋を用い、その奥端まで軸を挿入したものを用いて市場調査を行ったところ、鼻腔に挿入した際に痛みがあることがわかった。その原因を調べたところ、先端が軸のため硬くなっているためであることがわかった。
そこで、本発明者はこの問題を解決するべく、さらに検討を進め、軸の先端を引き下げて粘液採取具の先端を筒状の布のみにしたところ、その部分が非常に弱い力で変形してしまうため検体採取に支障をきたすことがわかった。そこで本発明者はさらに検討を進め、この筒状の布のみにした部分にも布を軸に接着する接着材を配置すると筒状の布の形状を保持しながら被検者に痛みをほとんど与えないことを見出した。この接着材には熱可塑性樹脂のチューブを用いることが特に好ましい。この筒状の布の先端と軸の先端との距離(筒状の布の空洞部の長さ)は2〜10mm程度、好ましくは3〜6mm程度が通常である。接着材は筒状の布の先端までかそれよりやや手前、例えば1mm程度手前までとするのがよい。空洞部の接着材は布に接着していてもいなくてもよい。
本粘液採取具は、滅菌しておくことが好ましい。滅菌手段は、オートクレーブによる感熱滅菌、エチレンオキサイドガスによる化学滅菌、放射線による滅菌、電子線による滅菌等いずれも利用できる。
ポリエステルとナイロンからなる極細繊維の糸で組紐形状でチューブ状に編んだ材料(直径2.3mm 重量1.13g/m 長さ20mm)を用いて中心部に太さの異なるポリプロピレン軸を入れて、繊維構造を痛めない程度に広げて熱で両端を点接着し、空隙体積をコントロールした。このものを純水に5秒間漬し、吸水した水分量を重量で計測して、空隙率と吸水量の関係を求めた。結果を表1に示す。
表1のように空隙率を上げるに従って吸水量が増加することが分かる。この原理を図5に示す。
空隙率計算
C1 布+空隙の体積 直径から計算
C2 糸の体積 布の重さ×密度で計算
空隙率(%) = C1−C2/C1×100
Figure 2011229523
牛アルブミンと生理食塩水で10%溶液を作成し、軸径2.25mmを用いて試作した綿棒をこれに5秒間浸漬した。重量を測定後、試験管に生理食塩水2mlを入れてそこに2分間浸漬後、液中のアルブミン量を測定した。測定法はブロムクレゾールグリーン法で定量した。比較サンプルとして、スズラン株式会社 No100(比較A) 佐藤化成工業所 エススチック PX11503P(B)を同時に比較して性能を比較した。結果を表2に示す。
表2のようにスライバー加工に比べ、編構造の方が回収率が高い、レーヨンに比べ、本発明、比較例2が回収率が高い理由はレーヨンは水を吸収し、フィラメントが膨潤し、フィラメント間の空隙体積が減り、溶解液の浸透が阻害されるために回収率が悪くなったことが観察で分かった。
採取量アルブミン量(A) 採取量×0.1
回収量(B) 再溶解液濃度から計算
回収率= B/A×100
Figure 2011229523
軸に直径0.9mmのポリエチレン(融点125℃)を用い、筒状の布は、実施例1のチューブ状に編んだ後、先端を1mm熱溶着し、先端部を塞ぎ、先端から20mmで切断し、更に表裏を反対にして溶着部を内側にしたものを用いた。接着材としてチューブ(日本ポリエチレン KS240T 融点60℃ 内径1.2mm 外形1.6mm)を用いて行った場合の押し付け圧(B点の曲がるまでの力、又は軸が曲がるまでの力)は下表になった。
A点、B点の位置は図4に示してある。
Figure 2011229523
A=0で布のみで同じことを行った場合、非常に弱い力で曲がり、形状が変わり、検体採取に支障をきたすことが分かった。
本発明の粘液採取具は、鼻腔や咽喉から検査に充分な量の粘液をほぼ一定量で採液できるのでこれらの粘液採取具として広く利用できる。
1・・・布
2・・・軸
3・・・柄
9・・・軸
10・・綿部

Claims (5)

  1. 軸の一端に筒状の布が取着されている鼻腔又は咽喉からの粘液採取具
  2. 布が疎水性材料で形成されている請求項1記載の粘液採取具
  3. 布取着部の空隙率が48%以上である請求項1又は2記載の粘液採取具
  4. 筒状の布の内周面に布を軸に接着させる接着材が配置されておりその先端が軸の先端より2〜10mm突出している請求項1乃至3のいずれかに記載の粘液採取具
  5. 接着材が熱可塑性樹脂のチューブである請求項4記載の粘液採取具
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