JP2020059390A - インホイールモータ駆動装置用サスペンション構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】インホイールモータ車両において旋回駆動時の操縦安定性を向上させる。【解決手段】インホイールモータ駆動装置用サスペンション構造は、車幅方向外側端48pがインホイールモータ駆動装置10に連結され、車幅方向内側端48q,48rがサブフレーム30に連結されるサスペンションアーム48を備える。車幅方向内側端48q,48rは、車両前後方向に間隔を空けて配置される前側弾性ブッシュ51および後側弾性ブッシュ52を介してサブフレーム30に連結され、ロードホイールWの転舵角が0°のときのロードホイールWの車軸を基準線O´とすると、上下方向にみて、基準線O´から前側弾性ブッシュ51までの距離が、基準線O´から後側弾性ブッシュ52までの距離よりも大きい。【選択図】図1
Description
本発明は、インホイールモータ駆動装置を車体側メンバに連結するサスペンションアームに関し、特にサスペンションアームと車体側メンバの連結構造に関する。
車両のフロントサスペンション構造に関する防振技術として従来、例えば特開2006−199141号公報(特許文献1)に記載される構造が知られている。特許文献1記載の構造は、ドライブシャフトに連結・駆動される車輪において、車輪からロアアームを介して車体に伝達される振動を減衰、吸収するために、車体本体とロアアームの間に介在する弾性部材にスグリ孔を形成し、スグリ孔の形状を調整することにより、弾性部材の弾性係数を変化させるというものである。
特許文献1のロアアームは、車幅方向外側端で車輪側部材に連結され、車幅方向内側端で車体に連結される。車幅方向内側端と車体の連結箇所は、車両前側および車両後側の2箇所である。車幅方向外側端と、車幅方向内側端の車両前側は、車輪の軸線近傍に配置される。これに対し車幅方向内側端の車両後側は、車輪の軸線から車両後方に離隔して配置される。
車体にエンジンを搭載し、エンジンの出力をドライブシャフト経由で車輪に伝達するエンジン車両に代えて、車輪内部にインホイールモータを配置し、このインホイールモータで車輪を駆動する電動車両が注目されている。インホイールモータを内蔵する車輪は、ドライブシャフトで駆動される特許文献1の車輪よりもばね下重量が大きい。旋回外輪のインホイールモータが駆動して電動車両が旋回走行する場合、以下に説明する虞があることを本発明者は見出した。図10は、対比例になる車輪と、インホイールモータと、サスペンションアームと、サブフレームを示す模式的な平面図である。車輪Rは電動車両の左前輪である。
図10に示すように、車輪Rの内空領域にはインホイールモータIWMが配置される。車輪RはインホイールモータIWMの回転輪に同軸に取付固定される。インホイールモータIWMは電動モータを内蔵し、回転輪へ回転を出力して車輪Rを駆動する。サスペンションアームSは、車幅方向内側で二股に分岐し、1個の車幅方向外側端Spと、2個の車幅方向内側端Sq,Srを有する。
車幅方向外側端SpはインホイールモータIWMに連結され、車幅方向内側端Sq,Srは車体のサブフレームUに連結される。車両前方の車幅方向内側端SqとサブフレームUの間には弾性ブッシュAが介在する。車両後方の車幅方向内側端SrとサブフレームUの間には弾性ブッシュBが介在する。なお以下の説明では、車両前方および車両後方を単に、前方および後方と呼ぶ場合がある。
図10に示すように上下方向にみて、車幅方向外側端Sp、車両前方の車幅方向内側端Sq、および弾性ブッシュAは、車輪Rの基準線O´近傍に配置される。これに対し車両後方の車幅方向内側端Srおよび弾性ブッシュBは、基準線O´から離隔して配置される。
インホイールモータIWMが車輪Rを駆動することにより、車輪Rの接地点には、前向きの駆動力Fdが作用する。駆動力Fdは、車幅方向内向き(インボード方向)の駆動反力FeとしてブッシュAに作用するとともに、車幅方向外向き(アウトボード方向)の駆動反力FeとしてブッシュBに作用する。
また電動車両が右旋回走行して、右前輪が旋回外輪となることにより、車輪Rの接地点には、車幅方向内側向きの旋回外力Ftが作用する。旋回外力Ftは、車幅方向内向き(インボード方向)にブッシュAに作用する。
そうするとブッシュAには、車幅方向内側向きの駆動反力Fe+旋回外力Ftが作用してしまう。このような過大な車幅方向力によってブッシュAは弾性変形し、車軸Rのトー角の増大によるオーバーステア傾向等、サスペンション装置のアライメント変化が大きくなり、操縦安定性が低下する。左右輪にそれぞれ設けられるインホイールモータは左右独立に駆動力制御されることから、操縦安定性の低下が懸念される。
ブッシュAを硬質のゴムで構成することにより、弾性係数を大きくしてサスペンション装置のアライメント変化を小さくすることも考えられるが、そうすると別な問題が新たに生じる。つまりインホイールモータは、電動モータのうなり、および歯車同士の歯当たりを原因とする振動源となる。かかる振動は、インホイールモータが大きな駆動力を発揮するほど大きくなる。
このためブッシュAを硬くすると、旋回外輪に設けられたインホイールモータIWMの振動がサスペンションアームSを経由してサブフレームUに伝達してしまい、乗り心地が悪化する。
本発明は、上述の実情に鑑み、インホイールモータで車輪を駆動する電動車両において、旋回駆動時の操縦安定性を向上させることを目的とする。
この目的のため本発明によるインホイールモータ駆動装置用サスペンション構造は、車幅方向外側端が車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置に連結され、車幅方向内側端が車体側メンバに連結されるサスペンションアームを備え、サスペンションアームの車幅方向内側端は、車両前後方向に間隔を空けて配置される前側弾性ブッシュおよび後側弾性ブッシュを介して前記車体側メンバに連結され、直進方向の車輪の車軸を基準線とし、上下方向にみて、基準線から前側弾性ブッシュまでの距離が、基準線から後側弾性ブッシュまでの距離よりも大きい。
かかる本発明によれば、車幅方向内向きの旋回外力を、車幅方向外向きの駆動反力で相殺することができる。したがってブッシュに過大な車幅方向力が作用せず、サスペンション装置のアライメント変化を軽減することができる。基準線から前側あるいは後側弾性ブッシュまでの距離とは、基準線と直交する直線の長さをいい、上下方向にみて弾性ブッシュが基準線から離隔する場合、弾性ブッシュのうち最も基準線に近い部位と基準線との間隔をいう。なお上下方向にみて基準線が弾性ブッシュと重なる場合、基準線から弾性ブッシュまでの距離は0である。前側弾性ブッシュは基準線よりも前方に配置される。上下方向にみて、後側弾性ブッシュは基準線よりも後方に配置されてもよいし、あるいは基準線と重なっていてもよい。
本発明の一局面として、前側弾性ブッシュおよび後側弾性ブッシュの少なくとも一方は、円筒形状の弾性部を含み、弾性部の車幅方向一方部分および他方部分にスグリ孔がそれぞれ形成される。かかる局面によれば、車幅方向力の小さな領域で、前側および後側弾性ブッシュを柔らかくして、サスペンションアームから前側および後側弾性ブッシュに伝達するインホイールモータ駆動装置の振動を減衰させることができる。他の局面として、弾性ブッシュはスグリ孔を有さない円筒形状のブッシュであってもよいし、あるいはスグリ孔に代えて弾性ブッシュに切欠きを設けてもよい。円筒形状の前側および後側弾性ブッシュは、例えば上下方向に延びる。あるいは前側弾性ブッシュおよび/または後側弾性ブッシュは車両前後方向に延びていてもよい。
本発明の好ましい局面として、弾性部の車幅方向一方部分に形成されるスグリ孔と、弾性部の車幅方向他方部分に形成されるスグリ孔は、互いに異なる大きさである。かかる局面によれば、異なる車幅方向力を受ける前側および後側弾性ブッシュに対し、適切な弾性係数をそれぞれ設定することができる。他の局面として、前側および後側弾性ブッシュのスグリ孔は同じ大きさであってもよい。
本発明のさらに好ましい局面として車体側メンバは、電動車両の左右両側でメインフレームに連結されるサブフレームであり、サブフレームは、車幅方向左側に設けられて車両前後方向に間隔を空けて配置される左前連結点および左後連結点と、車幅方向右側に設けられて車両前後方向に間隔を空けて配置される右前連結点および右後連結点で、弾性部材を介して前記メインフレームに連結され、上下方向にみて、左前連結点および右後連結点を通る直線と、左後連結点および右前連結点を通る直線の交点が、基準線よりも車両前方に配置される。かかる局面によれば、サブフレームの回動を抑制することが可能になり、サスペンション装置のアライメント変化が軽減される。
このように本発明によれば、インホイールモータ駆動装置用サスペンション装置においてアライメント変化を軽減することができる。したがって電動車両の操縦安定性が確保される。また弾性ブッシュを柔らかくして、インホイールモータ駆動装置の振動がブッシュを経由して車体に伝達することを軽減できる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態になるサスペンション構造を示す平面図である。図2は、同実施形態を示す側面図であり、車幅方向外側(アウトボート゛側)からみた状態を表す。図1に示すように本実施形態のサスペンション構造は、ロードホイールW、タイヤT、インホイールモータ駆動装置10、サブフレーム30、およびサスペンション装置40を備える。
ロードホイールWはリム部およびスポーク部を備える公知のものであり、リム部の外周にタイヤTが装着される。タイヤTおよびロードホイールWは電動車両の車輪を構成する。リム部は、スポーク部の外周縁から車幅方向内側に立ち上がる、ロードホイールWは内空領域を区画する。
インホイールモータ駆動装置10は、ロードホイールWの内空領域に配置され、車輪ハブ軸受部11とモータ部12と減速部13を有する。車輪ハブ軸受部11は回転輪14を回転自在に支持する転がり軸受であり、車重等、タイヤTが負担する荷重を受け止める。回転輪14は車輪ハブ軸受部11から車幅方向外側(アウトボード側)へ突出し、ロードホイールWのスポーク部が取付固定される。車輪の転舵角が0°である直進時、回転輪14の車軸は、基準線O´に一致する。つまり基準線O´は、車幅方向と平行に延びる。ロードホイールWおよびインホイールモータ駆動装置10が転舵する際、車軸は車幅方向に延びているが、転舵角を伴って傾斜する。
モータ部12は電動モータであり、回転輪14を駆動する。減速部13はモータ部12の出力回転を減速して回転輪14に伝達する。
車幅方向位置に関し、車輪ハブ軸受部11はインホイールモータ駆動装置10の車幅方向外側(アウトボード側)に配置され、モータ部12は車幅方向内側(インボード側)に配置され、減速部13は車幅方向中央部に配置される。図1に破線で示すように、車輪ハブ軸受部11、モータ部12の車幅方向外側部分、および減速部13はロードホイールWの内空領域に収容される。これに対し図1に実線で示すように、モータ部12の車幅方向内側部分はロードホイールWの内空領域からはみ出す。
車両前後方向位置に関し、モータ部12は車軸(図1に示す基準線O´)よりも前方に配置される。モータ部は車軸からオフセットして配置される。減速部13は平行軸歯車減速機である。
サスペンション装置40は、ストラット式サスペンション装置であり、ストラット41およびサスペンションアーム48を有する。ストラット41は上下方向に延び、ストラット下端42がインホイールモータ駆動装置10と結合し、ストラット上端43が車体(図略)に取り付けられる。なお車体はストラット41からみて車体側メンバである。車体側メンバとは説明する部材からみて車体側に連結される部材をいう。
ストラット41は上下方向に伸縮するショックアブソーバであり、入れ子式のダンパ44と、ダンパ44の上端領域(ダンパ内筒)を包囲するコイルスプリング45を有する。コイルスプリング45の図示しない上端は、ストラット上端43(ダンパ内筒上端)に設けられる図示しないアッパコイルスプリングシートを支持する。コイルスプリング45の下端はロアコイルスプリングシート46に支持される。ロアコイルスプリングシート46は、ストラット41の下端領域を占めるダンパ外筒44sに固定される。ダンパ外筒44sの下端はストラット下端42に相当する。ストラット下端42とロアコイルスプリングシート46の間にはアーム部44aが設けられる。アーム部44aは図示しないステアリング操舵装置のタイロッドと連結する。
ストラット41は、インホイールモータ駆動装置10およびロードホイールWよりも車幅方向内側に配置される。ロアコイルスプリングシート46と、コイルスプリング45と、ダンパ44の上端領域は、タイヤTよりも上方に配置される。
サスペンションアーム48は、車幅方向外側端48pでボールジョイント49を介してインホイールモータ駆動装置10に連結される。インホイールモータ駆動装置10は、ストラット上端43とボールジョイント49を通る直線である転舵軸線Kを中心として、転舵可能である。図2に示すように、車幅方向外側端48pは基準線O´からみて前方に偏って配置される。図1に示すように上下方向にみて、車幅方向外側端48pは基準線O´と重なるが、図示しない変形例として車幅方向外側端48pは基準線O´から離隔して配置されてもよい。ボールジョイント49の配置についても、車幅方向外側端48pと同様である。
サスペンションアーム48は、2個の車幅方向内側端48q,48rを有する。車幅方向内側端48q,48rは車両前後方向に離隔し、弾性ブッシュ51,52がそれぞれ設けられる。車幅方向内側端48qおよび弾性ブッシュ51は、基準線O´から前方へ離隔して配置される。車幅方向内側端48rおよび弾性ブッシュ52は、基準線O´近傍、厳密にいうと基準線O´よりも僅かに後方、に離隔配置される。図1に示すように上下方向にみて、基準線O´から前側の弾性ブッシュ51までの距離が、基準線O´から後側の弾性ブッシュ52までの距離よりも大きい。なお図示しない変形例として、上下方向にみて基準線O´が後側の車幅方向内側端48rおよび/または弾性ブッシュ52と重なってもよい。
サスペンションアーム48は、ストラット41よりも下方に配置されることから、ロアアームともいう。サスペンションアーム48は、弾性ブッシュ51,52を介してサブフレーム30に回動可能に連結する。サスペンションアーム48は、車幅方向内側端48q,48rを基端とし、車幅方向外側端48pを遊端として、上下方向に揺動可能である。
サブフレーム30はサスペンションアーム48からみて車体側メンバである。図1および図2は、電動車両の左前輪に関する構造を表すが、図示しない右前輪も、左前輪と左右対称に構成される。
サブフレーム30は、左前連結点31と、左後連結点32と、図示しない右前連結点と、右後連結点で、車体に連結される。これらの連結点は、サブフレーム30の車幅方向外側縁に設けられ、ゴム製等の弾性部材を含む。左前連結点31は、弾性ブッシュ51よりも前方に配置される。左後連結点32は、弾性ブッシュ52よりも後方に配置される。左前連結点31は基準線O´から相対的に遠く、左後連結点32は基準線O´に相対的に近い。電動車両の車幅方向中心線を基準として、右前連結点および右後連結点は、左前連結点31および左後連結点32と左右対称に配置される。左前連結点31および右後連結点を通る直線と、左後連結点32および右前連結点を通る直線の交点を、サブフレーム30の回動中心点Xgとする。回動中心点Xgは基準線O´よりも前方に位置する。
図3および図4は同実施形態の弾性ブッシュを示す横断面図である。弾性ブッシュ51,52は、金属製の内筒53および外筒54と、円筒形状のゴム等の弾性部55を有し、上下方向に延びる。外筒54は、弾性部55の外周に接着され、車幅方向内側端48q,48rにそれぞれ嵌合する。内筒53は、弾性部55の内周に接着され、サブフレーム30(図1)に取付固定される。かくして弾性ブッシュ51,52は、サスペンションアーム48とサブフレーム30の間に介在する。インホイールモータ駆動装置10からサスペンションアーム48に伝達する振動は、弾性ブッシュ51,52の弾性部55で減衰し、サブフレーム30に伝達し難くされる。
弾性部55には、周方向0°および180°の位置に、スグリ孔56,57が形成される。断面形状に関しスグリ孔56,57は、周方向寸法が径方向寸法よりも長い長穴である。スグリ孔56の径方向寸法はスグリ孔57のそれよりも大きい。つまりスグリ孔56の断面積はスグリ孔57のそれよりも大きい。スグリ孔56,57は、弾性部55の一端面から他端面まで延びる貫通孔である。
図3に示すように前側の弾性ブッシュ51には、車幅方向外側に大きなスグリ孔56が設けられ、車幅方向内側に小さなスグリ孔57が設けられる。図4に示すように後側の弾性ブッシュ52には、車幅方向外側に小さなスグリ孔57が設けられ、車幅方向内側に大きなスグリ孔56が設けられる。スグリ孔56,57が車幅方向に離隔するよう配置されることから、弾性ブッシュ51,52は車幅方向に弾性変形し易く(柔らかく)される。
次に、本実施形態の作用を説明する。
図5は、電動車両のインホイールモータ駆動装置が旋回外輪を駆動して旋回走行する際、旋回外輪のサスペンション装置に入力される駆動力および旋回外力を示す平面図である。タイヤTの接地点には、前向きの駆動力Fdと車幅方向内向きの旋回外力Ftが入力される。駆動力Fdは、サスペンションアーム48を経由して、車幅方向内向きの駆動反力Fgが弾性ブッシュ51に作用し、車幅方向外向きの駆動反力Fgが弾性ブッシュ52に作用する。
車幅方向内向きの旋回外力Ftは弾性ブッシュ52に略同じ力で作用するが、車幅方向外向きの駆動反力Fgによって弱められる。したがって実際には、旋回外力Ftと駆動反力Fgの差分の車幅方向力Fh(Fh=Ft−Fg)が弾性ブッシュ52に作用する。車幅方向力Fhは弱いため、サスペンション装置40のアライメント変化が軽減される。
本実施形態によれば、弾性ブッシュ51,52を硬くしなくても、サスペンション装置40の過大なアライメント変化を防止することができる。また弾性ブッシュ51,52を柔らかくすることにより、インホイールモータ駆動装置10の振動がサスペンションアーム48に経由して弾性ブッシュ51,52に伝達しても、弾性ブッシュ51,52で振動を減衰させることができる。
図6は、弾性ブッシュ52における荷重と弾性変形量の関係を示すグラフである。荷重領域Iで弾性ブッシュ52は柔らかく、弾性変形量は増大し易い。つまり荷重領域Iで振動の減衰効果が大きい。荷重領域IIで弾性ブッシュ52は硬く、弾性変形量は増大し難い。つまり荷重領域IIで振動の減衰効果が小さい。なお理解を容易にするため、図6中、スグリ孔を有さない弾性ブッシュの特性を破線で示す。破線の特性では、弾性ブッシュ52は全ての荷重範囲で硬く、弾性変形量は増大し難い。つまり全ての荷重範囲で振動の減衰効果が小さい。
図7および図8は、弾性ブッシュ52が車幅方向に弾性変形する様子を示す横断面図である。外筒54が車幅方向内向きの力Ftを受けて車幅方向内向きに移動すると、弾性部55の車幅方向外側部分が圧縮力を受け、最初の荷重領域Iで小さなスグリ孔57が径方向に薄くなる。図7に示すようにスグリ孔56が残っているとき弾性部55は柔らかく、弾性係数(ばね定数)は小さい。
車幅方向内向きの力が増大してスグリ孔57が径方向に塞がると、図8に示すように次の荷重領域IIに移行する。このとき弾性部55は固く、弾性係数(ばね定数)は大きい。図7に示す状態としては、例えばインホイールモータ駆動装置10が駆動力Fdを発揮せず(Fd=0)、駆動反力Fg=0の場合が考えられる。
本実施形態の弾性ブッシュ52は、内筒53と外筒54の環状空間を満たす弾性部55において、車幅方向力を受けて圧縮される車幅方向外側部分に小さなスグリ孔57を設けられ、車幅方向力を受けて引っ張られる車幅方向内側部分に大きなスグリ孔56を設けられる。これにより、旋回外輪を駆動して旋回走行する際、旋回外輪のサスペンションアーム48を経由して弾性ブッシュ52に伝達するインホイールモータ駆動装置10の振動を、弾性ブッシュ52で減衰させることができる。
図9は、サブフレーム30に作用するモーメントを示す平面図である。回動中心点Xgに関し、駆動力Fdは、サブフレーム30に時計回りの回転モーメントMdを付与する。また旋回外力Ftは、サブフレーム30に反時計回りの回転モーメントMtを付与する。回転モーメントMdと回転モーメントMtは相殺するので、サブフレーム30に作用する実際の回転モーメントは小さくなる。本実施形態によれば、サブフレーム30に作用する回転モーメントが小さくなることから、サスペンション装置40のアライメント変化が抑制され、操縦安定性が損なわれない。
理解を容易にするため、対比例についても説明する。図11は対比例のサブフレームUに作用するモーメントを示す平面図であり、図10に対応する。対比例では図11に示すようにサブフレームUが、左前連結点U1と、左後連結点U2と、図示しない右前連結点と、右後連結点の合計4箇所の連結点でサブフレームUに取り付けられる。左前連結点U1および右後連結点を通る直線(一点鎖線)と、左後連結点U2および右前連結点を通る直線(一点鎖線)の交点は、サブフレームUの回動中心点Ugを構成する。回動中心点Ugは、基準線O´よりも後方に位置する。
図11に示すように回動中心点Ugに関し、駆動力Fdは、サブフレーム30に反時計回りの回転モーメントMdを付与する。また旋回外力Ftも、サブフレーム30に反時計回りの回転モーメントMtを付与する。回転モーメントMdと回転モーメントMtは同じ向きであるため、サブフレームUに作用する実際の回転モーメントは大きくなる。対比例によれば、サブフレームUに作用する回転モーメントが大きくなることから、サスペンション装置のアライメント変化が大きく、操縦安定性が損なわれる。
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。
本発明は、電気自動車およびハイブリッド車両において有利に利用される。
10 インホイールモータ駆動装置、 11 車輪ハブ軸受部、
12 モータ部、 13 減速部、 14 回転輪、
30 サブフレーム、 31 左前連結点、 32 左後連結点、
40 サスペンション装置、 41 ストラット、
42 ストラット下端、 43 ストラット上端、 44 ダンパ、
44a アーム部、 44s ダンパ外筒、 45 コイルスプリング、
46 ロアコイルスプリングシート、 48 サスペンションアーム、
48p 車幅方向外側端、 48q,48r 車幅方向内側端、
49 ボールジョイント、 51,52 弾性ブッシュ、 53 内筒、
54 外筒、 55 弾性部、 56,57 スグリ孔、
K 転舵軸線、 O´ 基準線(直進時の車軸)、 T タイヤ、
Ug 回動中心点、 W ロードホイール。
12 モータ部、 13 減速部、 14 回転輪、
30 サブフレーム、 31 左前連結点、 32 左後連結点、
40 サスペンション装置、 41 ストラット、
42 ストラット下端、 43 ストラット上端、 44 ダンパ、
44a アーム部、 44s ダンパ外筒、 45 コイルスプリング、
46 ロアコイルスプリングシート、 48 サスペンションアーム、
48p 車幅方向外側端、 48q,48r 車幅方向内側端、
49 ボールジョイント、 51,52 弾性ブッシュ、 53 内筒、
54 外筒、 55 弾性部、 56,57 スグリ孔、
K 転舵軸線、 O´ 基準線(直進時の車軸)、 T タイヤ、
Ug 回動中心点、 W ロードホイール。
Claims (4)
- 車幅方向外側端が車輪を駆動するインホイールモータ駆動装置に連結され、車幅方向内側端が車体側メンバに連結されるサスペンションアームを備え、
前記車幅方向内側端は、車両前後方向に間隔を空けて配置される前側弾性ブッシュおよび後側弾性ブッシュを介して前記車体側メンバに連結され、
直進方向の前記車輪の車軸を基準線とし、上下方向にみて、前記基準線から前記前側弾性ブッシュまでの距離が、前記基準線から前記後側弾性ブッシュまでの距離よりも大きい、インホイールモータ駆動装置用サスペンション構造。 - 前記前側弾性ブッシュおよび前記後側弾性ブッシュの少なくとも一方は、円筒形状の弾性部を含み、前記弾性部の車幅方向一方部分および他方部分にスグリ孔がそれぞれ形成される、請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置用サスペンション構造。
- 前記弾性部の前記車幅方向一方部分に形成されるスグリ孔と、前記車幅方向他方部分に形成されるスグリ孔は、互いに異なる大きさである、請求項2に記載のインホイールモータ駆動装置用サスペンション構造。
- 前記車体側メンバは、電動車両の左右両側でメインフレームに連結されるサブフレームであり、
前記サブフレームは、車幅方向左側に設けられて車両前後方向に間隔を空けて配置される左前連結点および左後連結点と、車幅方向右側に設けられて車両前後方向に間隔を空けて配置される右前連結点および右後連結点で、弾性部材を介して前記メインフレームに連結され、
上下方向にみて、前記左前連結点および前記右後連結点を通る直線と、前記左後連結点および前記右前連結点を通る直線の交点が、前記基準線よりも車両前方に配置される、請求項1〜3のいずれかに記載のインホイールモータ駆動装置用サスペンション構造。
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