以下の記載及び図面において、対応する部分は同じ参照番号で示される。図面で示される要素の大きさは、必ずしも正確な縮尺では表されていない。
図1は、照明システム100のブロック図である。照明システム100は、照明制御システム110、LAN(local area network)−DMX変換器120、及び照明器具130を備える。照明システム100は、例えばスタジオの副調整室及びスタジオに設けられる。
照明制御システム110は、プロセッサ112、メモリ114、及びインタフェース116を備える。照明制御システム110は、例えば、調光卓、パーソナルコンピュータ、又はタブレットコンピュータ等である。照明制御システム110のさまざまな機能は、複数の要素に分散されて実現されてもよい。例えば、照明制御システム110の一部の機能が調光卓によって実現され、他の機能が照明制御システム110に結合されたパーソナルコンピュータ又はタブレットコンピュータ等によって実現されてもよい。
プロセッサ112は、例えば調光卓やパーソナルコンピュータの中にあるマイクロプロセッサである。プロセッサ112は、メモリ114に格納されたプログラムを実行することによって照明制御システム110のさまざまな機能を実現する。メモリ114は、後述する仕込み図情報及びネットワーク図情報を格納する。
インタフェース116は、プロセッサ112が出力した調光制御の信号を例えばLANを実現するイーサネット(登録商標)プロトコルに従う信号に変換し、LAN−DMX変換器120に出力する。インタフェース116は、ディスプレイ118にも接続される。ディスプレイ118は、プロセッサ112が実行するアプリケーションソフトウェアのGUI(グラフィカルユーザインタフェース)を実現する。
LAN−DMX変換器120は、イーサネットプロトコルの信号をDMX(Digital Multiplex)信号に変換し、照明器具130に出力する。照明器具130は、LAN−DMX変換器120からの信号に応答して、その明るさ、色などを変化させ照明演出を行う。図1は、最小構成の一例として、LAN−DMX変換器120を1台だけ用いるが、これには限定されず、LAN−DMX変換器120は複数台であってもよい。図1では、LAN−DMX変換器120に接続される照明器具130は、4系統で1台ずつ接続されているが、これには限定されず、例えば、系統数がより多くてもより少なくてもよい。また1つの系統に接続される照明器具130の個数は任意であって、照明器具130は、数珠繋ぎで多数接続されてもよい。
一般的にはスタジオに設置されたバトンには、それぞれDMXポートが設置されている。照明制御システム110は、調光信号を用いて照明器具130を制御する。一般的には全てのDMX番号について制御を行うが、照明制御システム110においては、特定のDMX番号の場合は制御しない。照明制御システム110は、RDM(Remote Device Management)プロトコルを用いて照明器具130を検索することができる。プロセッサ112が実行するアプリケーションソフトウェアは、スタジオでの収録に必要な照明器具130が配置された仕込み図をユーザの操作を介して作成する。仕込み図は、吊り込み図、吊り図等とも呼ばれる。
図2は、照明制御システム110が実行するアルゴリズム200を示すフロー図である。
アルゴリズム200は、210において開始され、290において終了する。
220において、照明制御システム110は、仕込み図に照明器具を配置する。照明制御システム110は、例えば、パーソナルコンピュータ上で実行されるアプリケーションソフトウェアを用いる。ユーザは、ディスプレイに表示されたスタジオ図面において、番組収録に必要な照明器具を配置する。
図3は、220の仕込み図300を示す図である。仕込み図300において、ユーザは、例えば照明器具の種類を選択して、任意のバトン上に任意の方向で配置する。このときプロセッサ112は、ユーザが特定した照明器具130の仕込み図を表す仕込み図情報をメモリ114に格納する。
230において、照明制御システム110は、バトン上に配置された器具の品番を、各バトンに対応するDMXポートに割り当てる。
図4は、230の仕込み図400、及び器具品番情報の割り当て410を示す図である。仕込み図400において、バトンと照明器具とが関連付けられる。割り当て410は、バトン名称と、DMXポート、及び器具品番を関連付ける。割り当て410は、典型的にはメモリ114に格納される。
240において、照明制御システム110は、仕込み図400上で配置された照明器具にDMX番号を割り当てる。
図5は、240の仕込み図500、及びDMX番号の設定510を示す図である。それぞれの照明器具に設定されるDMX番号は、任意であり、ユーザが設定してもよい。DMX番号は典型的には1〜512を取り得るが、後述するようにここでは1〜511の範囲で設定できる。DMX番号に重複した番号を設定すれば、複数の照明器具に同じ制御をさせることができる。なお本開示の記載及び図5等においては、便宜上、DMX番号は、A001, A002, A003, …のように表記されているが、先頭のAはDMX信号である512番号を複数扱うためのラベルであり、A1〜A512の次はB1〜B512、C1〜C512のように割り当てることが可能である。
250において、照明制御システム110は、RDMプロトコルを用いて、実際に吊り込まれた照明器具を検索し、実機の状態を表すネットワーク図を作成する。
図6は、仕込み図610、及び実際の配置を表すネットワーク図620を示す。ネットワーク図620における「?」は、実際に接続されている照明器具を検索中であり、まだ特定されていないことを表す。
一般に仕込み図は、目標となるシステムの構成を示す。これに対してネットワーク図は現状のシステムの構成を示す。ネットワーク図が仕込み図と一致すれば、ユーザの意図の通りであり理想的である。しかし、ユーザの必要とする照明器具が実際には配置されていなかったり、逆にユーザの必要としない照明器具が配置されていたりすることが起こり得る。アルゴリズム200は、このような現状が目標と異なる場合に、ユーザの照明器具の吊り込み作業をより効率的にする。
260において、照明制御システム110は、ユーザが作成した仕込み図と、実際の配置を表すネットワーク図とを比較し、その差分をユーザに表示する。具体的には照明制御システム110は、同一DMXポートに接続されている器具の品番を比較する。すなわちプロセッサ112は、仕込み図情報に存在しないのに、ネットワーク図情報には存在する未使用器具を特定し、少なくとも未使用器具を視覚的にユーザに示す。これによりユーザは、未使用器具を効率的に認識できる。
上記に加えて、プロセッサ112は、仕込み図情報に存在するのに、ネットワーク図情報には存在しない未検出器具を特定し、未検出器具を視覚的にユーザに示してもよい。これによりユーザは、未検出器具を効率的に認識できる。
図7は、260で得られる仕込み図710、及び実際の配置を表すネットワーク図720を示す。仕込み図710には、260の比較の結果に基づいて、ネットワーク図720との差分が表示される。
照明制御システム110は、仕込み図710と同じ照明器具がネットワーク図720に存在する場合は、仕込み図710で割り当てたDMX番号をRDMプロトコルで照明器具に設定する。例えば、ネットワーク図720のバトンR001には仕込み図710と同じ照明器具が存在するので、仕込み図710で割り当てたDMX番号A001をバトンR001に設置されている照明器具に設定する。設定されたDMX番号A001は、仕込み図710のバトンR001の下に表示される。
照明制御システム110は、仕込み図710と同じ照明器具がネットワーク図720に存在しない場合は、未検出器具というラベルを仕込み図710に表示する。例えば、仕込み図710において、バトンR005にはDMX番号A005が表示されているが、ネットワーク図720には対応する照明器具が存在しないので、仕込み図710のバトンR005に未検出器具というラベルを表示する。
照明制御システム110は、仕込み図710に存在しない照明器具がネットワーク図720に存在する場合は、未使用器具として仕込み図710に表示する。例えば、仕込み図710に存在しない照明器具がバトンR007に発見されたなら、仕込み図710においてバトンR007に未使用器具というラベルを表示する。より一般的には、プロセッサ112は、未使用器具に対して制御に使用しないことを表すラベルを付与する。このラベルに基づいてプロセッサ112は、例えば、未使用器具に対するユーザからの命令を無視することができる。
具体的にはこのラベルは、DMX−512Aプロトコル又はRDMプロトコルの特定チャンネルであり得る。さらに具体的にはこのラベルは、DMX−512Aプロトコル又はRDMプロトコルの第512チャンネルであり得る。これにより照明システム100は、未使用器具を効率的に認識し、その制御を実行できる。すなわち未使用器具を第512チャンネルに割り当て、調光卓ではこの第512チャンネルを制御しないようにする。
代替として、このラベルに基づいてプロセッサ112は、例えば、未使用器具であることをディスプレイ118上でユーザに視覚的に表示することができる。これによりユーザは、未使用器具を認識しやすくなる。
図8は、260での比較の後に更新された仕込み図810、及び実際の配置を表すネットワーク図820を示す。照明制御システム110は、260での比較の結果をユーザに表示してから、必要に応じてユーザが未配置の照明器具を吊った後に仕込み図及びネットワーク図を更新してもよい。例えば、ユーザがバトンR005及びR006に所望の照明器具を吊った後に、照明制御システム110は、再度、250による照明器具の検索を行い、差分を表示する。ネットワーク図820では、バトンR005及びR006に所望の照明器具が存在するので、仕込み図810のバトンR005及びR006に表示されていた未検出器具というラベルを表示しないようにする。
図9は、260での比較の後に更新された仕込み図910、及び実際の配置を表すネットワーク図920を示す。仕込み図910及びネットワーク図920は、仕込み図810及びネットワーク図820の後に、照明制御システム110が追加で行う処理を示す。260において、バトンR007及びR008に設置された照明器具は、未使用器具とされていた。これは仕込み図610に示されるように、ユーザは、バトンR007及びR008に照明器具を設置するつもりはなかったからである。これら未使用器具をユーザが使うなら、適当なDMX番号を割り当てることによって、照明制御システム110が未使用器具を制御できるようにしてもよい。例えば、ユーザは、ディスプレイ118上で、仕込み図910のバトンR007及びR008の照明器具にDMX番号A007及びA008を設定できる。照明制御システム110は、RDMプロトコルでバトンR007及びR008の照明器具にDMX番号A007及びA008を設定する。設定された結果、仕込み図910に示されるように、DMX番号A007及びA008の照明器具は、未使用器具というラベルを表示しないようにする。DMX番号A007及びA008の照明器具は、実際にDMX番号も設定されているのでユーザが制御することも可能である。
図10は、260での比較の後に更新された仕込み図1010、及び実際の配置を表すネットワーク図1020を示す。仕込み図1010及びネットワーク図1020は、仕込み図810及びネットワーク図820の後に、照明制御システム110が追加で行う処理を示す。図10の処理は、図9の処理とは逆である。すなわちユーザは、バトンR007及びR008に設置されている未使用器具を使うつもりがないことを照明制御システム110に入力する。照明制御システム110は、プロセッサ112が実行する例えばアプリケーションソフトウェア上で、ユーザから未使用器具の無効化の指示を受け取る。この場合、照明制御システム110は、バトンR007及びR008に設置されている照明器具に対して特定のDMX番号を割り当てることによって、ユーザが制御できないようにするとともに、仕込み図1010からもアイコンを消去する。具体的には、照明制御システム110は、バトンR007及びR008に設置されている照明器具に例えばA512を割り当てる。これにより、照明器具をバトンから取り外す作業を行うことなく、調光卓からの制御を無効化できる。加えて照明制御システム110は、ディスプレイ118において、仕込み図1010に示されるように、未使用器具の表示(例えばアイコン)を消してもよい。これによってユーザは、使うつもりのない未使用器具をディスプレイ118上から消すことができ、仕込み図の視認性が向上する。
図11は、260での比較の後に更新された仕込み図1110、及び実際の配置を表すネットワーク図1120を示す。仕込み図1110及びネットワーク図1120は、仕込み図810及びネットワーク図820の後に、照明制御システム110が追加で行う処理を示す。図11において、仕込み図1110と同じ器具がネットワーク図1120に存在する場合は、照明制御システム110は、仕込み図1110で割り当てたDMX番号(例えばA001及びA002)をRDMプロトコルで照明器具に割り当てる。仕込み図1110と同じ器具がネットワーク図1120に存在しない場合は、照明制御システム110は、未検出器具というラベルを仕込み図1110に表示する。
仕込み図1110に存在しない器具(すなわち未使用器具)がネットワーク図1120に存在する場合は、照明制御システム110は、この未使用器具に対して制御に使用することを表すラベル、例えばDMX番号(ここではA005及びA006)を自動的に付与する。このラベルは、仕込み図1110及びネットワーク図1120の両方に存在する照明器具で使用されているDMX−512Aプロトコル又はRDMプロトコルのチャンネル(ここではA001〜A004)を除いて、最も小さい番号(ここではA005及びA006)のチャンネルである。
図11に示す処理によれば、仕込み図1110から少し異なる状態が必要な状況や仕込み図1110が準備されていない状況においても、照明制御システム110の自動的なラベル付与によって、効率的な収録準備が可能であるという効果を奏する。この自動的なラベル付与は、仕込み図1110の修正や手動での照明器具のアドレス設定を行わなくてもよいという利点もある。
本開示におけるさまざまな機能のそれぞれは、単一の要素で実現されてもよく、複数の要素で実現されてもよい。逆に複数の機能が単一の要素で実現されてもよい。それぞれの機能は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実現され得る。本開示におけるフロー図は、複数のブロックを含む。これらブロックの処理は、シリアルになされてもよく、パラレルになされてもよい。また一部ブロックの順序が入れ替わってもよい。
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、又はLSI(large scale integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。ここでは、ICやLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、若しくはULSI(ultra large scale integration) と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、又はLSI内部の接合関係の再構成又はLSI内部の回路区画のセットアップができる再構成可能な論理デバイスも同じ目的で使うことができる。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
上に説明されてきたものには、本発明のさまざまな例が含まれる。本発明を記載する目的では、要素や手順の考えられるあらゆる組み合わせを記載することは当然のことながら不可能であるが、当業者なら本発明の多くのさらなる組み合わせおよび順列が可能であることがわかるだろう。したがって本発明は、特許請求の範囲の精神および範囲に入るそのような改変、変更および変形例を全て含むよう意図される。