JP2020055975A - セルロースナノファイバーの製造方法及びセルロースナノファイバーの製造装置 - Google Patents

セルロースナノファイバーの製造方法及びセルロースナノファイバーの製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】物理・機械的粉砕による解繊とも、化学修飾による解繊とも異なる新たな解繊方法を提供すること、CNF自身を化学修飾することなく、しかも短時間での処理で、目的とする微細なCNFを得ることが可能な解繊方法の提供。【解決手段】原料セルロースから、化学的な解繊をすることなく、且つ、後処理で物理・機械的な解繊を行わずにセルロースナノファイバーを連続的に得る方法であって、温度が180℃以上370℃未満で、且つ、圧力が5MPa〜35MPaである、高温・高圧の状態の亜臨界水と、前記原料セルロースとを混合することで前記原料セルロースを解繊し、水に分散したセルロースナノファイバーを得ることを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、セルロースナノファイバーの製造方法、セルロースナノファイバー及びセルロースナノファイバーの製造装置に関する。さらに詳しくは、水の沸点以上、水の臨界点未満の本発明で規定する高温・高圧の状態の亜臨界水を利用することで、化学修飾せずに、物理・機械的な後処理をすることなく、原料セルロースを解繊して細い繊維径のセルロースナノファイバーを連続的に得る新規な解繊方法及び該方法を実施するための製造装置を提供し、繊維径が細い、しかも、天然由来のセルロースのままの状態である従来にない優れたセルロースナノファイバーを提供する技術に関する。本明細書でいう「天然由来のセルロースのままの状態」とは、セルロースナノファイバーに化学修飾がされておらず、セルロース本来の、耐水性や耐油性を失っていない状態のことを意味している。
セルロースは、木、草、花等を構成する主要素で、植物が作り出した天然高分子であり、セルロース分子が繊維状に集合した構造を有するものはセルロースファイバーと呼ばれており、その中で、繊維幅が100nm以下でアスペクト比が100以上のセルロースは、一般的にセルロースナノファイバーと呼ばれている。以下、セルロースナノファイバーを「CNF」と略記する場合がある。CNFは、軽量、高強度、低熱膨張率等の優れた性質を有し、植物が原料でありながら、鉄鋼に比べて5分の1の軽さで、5倍以上の強度を有すると言われている。そのため、建材、家電、自動車、化粧品等の用途展開が考えられており、経済産業省の見通しでは、2030年には、CNF関連材料として1兆円規模の市場創出が期待されている材料である。近年、CNFの付加価値の高さが認められて、CNFを効率的に作製する手法が種々検討されている。
CNFの殆どは、CNF間の水素結合に代表される相互作用によって強固に集合したマイクロサイズの繊維幅を有した状態でパルプに存在し、そのマイクロサイズの繊維幅を有した繊維も、さらに高次の集合体として存在することが知られている。このため、CNFを得るためには、強固に集合した繊維状の形態を有する単繊維の集合体の解繊を進める必要がある。CNFの製造方法は、酸加水分解法や、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(TEMPO)触媒酸化法といった化学的な方法と、グラインダー法や、高圧ホモジナイザー法、水中対向衝突法といった物理・機械的な方法、の2種類に大別され、これらの方法を利用した種々の手法が提案されている。化学的な方法で製造した場合、得られるCNFは、物理・機械的な方法で得たものよりも繊維径の細いものになるものの、化学修飾された状態になり、植物が作り出した天然由来のセルロースのままの状態のCNFとすることはできない、という課題がある。
また、CNFの製造において、化学的な方法でセルロースを解繊後に、機械的な解繊を行う、化学的な方法と、機械的な方法を併用することも提案されている。例えば、先のTEMPO等を用いて酸化して得られたセルロース原料を、機械的に粉砕してセルロースを解繊するCNFの製造方法がある。特許文献1では、上記のように構成した場合に生じるセルロース原料の増粘の問題を解決し、流動性と透明性に優れる高濃度のCNF分散液を得る方法が提案されている。また、特許文献2では、CNFの製造方法で一般的に行われている、原料セルロースを機械的に処理した場合に、機械的な処理の回数を重ねるごとに粘性が高くなり、これにより生じる配管の詰まり及び汚染の問題を抑制し、CNFを効率よく製造することを可能にしたCNFの製造装置を提案している。
また、特許文献3では、CNFを含有する炎症性腸疾患治療剤に用いる天然由来のCNF成分の製造方法として、セルロース含有材料を水熱処理し、解繊処置することが記載されている。そして、水熱処理については、一般的には、120〜180℃、30〜120分の水熱処理を行うとしている。特許文献3では、水熱処理後に、さらに、湿式微粒化装置や石臼式磨砕機を用いて機械的な解繊を行ってセルロースを解繊して、炎症性腸疾患治療剤の構成成分とすることが可能なCNFを得ている。すなわち、特許文献3に記載されているCNFの製造方法は、水熱処理によるセルロースの解繊と、機械的なセルロースの解繊とを組み合わせたものである。
特開2010−235679号公報 特開2018−95987号公報 特開2014−177437号公報
しかしながら、下記に述べるように、上記した従来のCNFの製造方法には、いずれも課題がある。まず、機械的な粉砕によってセルロースを解繊してCNFを得る方法は、植物が作り出した天然由来のセルロースのままの状態のCNFを得ることができるという利点がある。しかし、物理・機械的な粉砕によってセルロースを解繊する方法では、セルロースに大きなせん断力を与える必要があるため、高圧のホモジナイザーや石臼等の粉砕機器が必要となり、特に、より繊維径の細いCNFとするためには繰り返しの粉砕処理が必要であり、大きなエネルギーと、より多くの処理時間を要するという問題がある。また、この場合は、前記した特許文献2に記載されているように、装置に生じる配管詰まりや汚染等の製造上の問題もある。
また、本発明者らの検討によれば、機械的な処理の回数を増やしたとしても、物理・機械的な粉砕だけではセルロースの解繊は難しく、例えば、繊維径(繊維幅)が20nm未満の、径が細いCNFを得ることはできない。また、CNFの用途や、用いるセルロース原料などによっては、セルロース繊維に付着したリグニン等の付着物を除くための後処理が必要になる場合もある。さらに、CNFの用途などによっては、セルロース繊維に付着したリグニン等の付着物の割合を、所望する範囲に維持することが求められることも考えられる。その場合には、製造したCNFへのリグニン等の付着物の量を適度に簡便にコントロールできる技術が要求される。しかし、物理・機械的な粉砕による技術に限らず、現状の技術では、セルロースの良好な解繊と同時に、CNFへのリグニン等の付着物の量が所望する範囲に適度にコントロールされた製品を簡便に調製できる技術は実現されていない。
一方、化学修飾変性によってセルロースの解繊を行ってCNFを得る製造方法の場合では、機械的な解繊による方法で必要になる、大きなエネルギーと時間を要せずにセルロースを解繊することが可能であり、機械的な解繊処理では達成できない繊維径が細いCNFを得ることも可能になる。しかし、化学的な解繊は、セルロースを変性するものであり、セルロースの親水性化や疎水性化等が行われるため、得られるCNFは、植物が作り出した天然由来のセルロースのままの状態のものではなくなる。このため、得られるCNFが、セルロースが本来もつ特性である耐水性や耐油性が損なわれたものになる、といった課題や、用途によっては、化学修飾されたCNFは使用できないといった場合がある。
先に示した特許文献1に記載の技術のように、上記した化学的なセルロースの解繊と、機械的な粉砕によってセルロースを解繊する方法とを組み合わせたCNFの製造方法は有効であるものの、化学的なセルロースの解繊を利用する以上、得られるCNFは、植物が作り出した天然由来のセルロースのままの状態のとはならないため、上記したと同様の課題がある。
これに対し、特許文献3に記載されているCNFの製造方法では、医療用の薬剤用であることから、化学的なセルロースの解繊を利用することに替えて、水熱処理を利用することで、天然由来のセルロースのままの状態のCNFを得る構成としている。しかし、その水熱処理の方法は、一般的な処理条件を120〜180℃、30〜120分で、オートクレーブ装置や高圧調理器でバッチ処理し、さらに、上記のようにして行った水熱処理後の材料を、石臼式磨砕器や高圧ホモジナイザー等で機械的な解繊処理をするとしたものであり、煩雑で、安定して同様の特性を有するCNFを得ることは難しいという課題がある。また、先に説明した従来の方法と同様に、連続して同様の品質のCNFを製造できるものでなく、工業上、利用する方法としては課題があった。
したがって、本発明の目的は、機械的粉砕による解繊とも、化学修飾による解繊とも異なる新たな解繊方法を提供することで、得られるCNFが、化学修飾されたものでなく、植物が作り出した天然由来のセルロースのままの状態のCNFであり、しかも、目的とする所望の細い繊維径を有するCNFを、短時間で連続的にセルロース原料の解繊処理を可能にしたCNFの製造方法及びセルロースナノファイバーの製造装置を提供することである。また、本発明の目的は、上記したセルロースの良好な解繊に加えて、得られたCNFへのリグニン等の付着物の量を、所望する範囲に適度にコントロールすることも可能なCNFの製造方法を提供することにある。本発明の最終的な目的は、原料セルロースから、従来の技術では得ることができなかった、植物が作り出した天然由来のセルロースのままの状態であり、且つ、繊維径が細いCNFを簡便に提供できる技術を実現することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、下記のCNFの製造方法を提供する。
[1]原料セルロースから、化学的な解繊をすることなく、且つ、後処理で物理・機械的な解繊を行わずにセルロースナノファイバーを連続的に得る方法であって、温度が180℃以上370℃未満で、且つ、圧力が5MPa〜35MPaである、高温・高圧の状態の亜臨界水と、前記原料セルロースとを混合することで前記原料セルロースを解繊し、水に分散したセルロースナノファイバーを得ることを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
上記した[1]CNFの製造方法の好ましい形態としては、下記のことが挙げられる。
[2]前記混合を、前記亜臨界水の流れの中に前記原料セルロースを連続して供給し、前記原料セルロースを前記亜臨界水中に20秒以内の短時間存在させることで行って、連続的にセルロースナノファイバーを得る[1]記載のCNFの製造方法。
[3]平均繊維径が20nm未満であるセルロースナノファイバーを得るための[1]又は[2]に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
[4]前記高温・高圧の状態が、温度が200℃以上350℃未満で、且つ、圧力が10MPa〜35MPaである[1]〜[3]のいずれかに記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
[5]前記高温・高圧の状態が、温度が250℃以上350℃未満で、且つ、圧力が20MPa〜35MPaである[1]〜[3]のいずれかに記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
[6]さらに、前記混合後に急冷する工程を設ける[1]〜[5]のいずれかに記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
また、本発明は別の実施形態として、下記のCNFを提供する。
[7]前記[1]〜[6]に記載の製造方法により製造されたことを特徴とするセルロースナノファイバー。
[8]化学修飾されておらず、且つ、平均繊維径が20nm未満であることを特徴とするセルロースナノファイバー。
[9]前記平均繊維径が、2〜10nmである[8]に記載のセルロースナノファイバー。
また、本発明は別の実施形態として、[10]温度が180℃以上370℃未満で、且つ、圧力が5MPa〜35MPaである、高温・高圧の状態の亜臨界水の流れと、原料セルロースの分散液の流れを合流させる合流部と、該合流部に隣接して配置された、合流した前記亜臨界水と前記分散液とを順次撹拌混合させるスタティックミキサー構造を有する亜臨界解繊部とを有することを特徴とするセルロースナノファイバーの製造装置を提供する。
本発明によれば、従来技術で行われている、機械的粉砕によるセルロースの解繊とも、化学修飾によるセルロースの解繊とも異なる、新たなセルロースの解繊方法及び該解繊方法を実現できる新たな製造装置が提供される。そして、この新たな解繊技術で得られるCNFは、化学修飾されたものでなく、植物が作り出した天然由来のセルロースのままの状態のものであり、しかも、従来技術では得ることができなかった繊維径が細いCNFや、用途に応じて所望される適宜な繊維径のものとできるので、その広範な利用が期待できる。本発明によれば、短時間で連続的に、上記した優れた特性のCNFを安定製造できる、CNFの製造方法及びCNFの製造装置が提供される。また、本発明によって提供されるCNFは、原料セルロースを構成しているセルロース繊維と他の成分との分離が良好に行われた、繊維表面への付着物の少ないものになる。さらに、本発明によって提供されるCNFの製造方法及びCNFの製造装置によれば、得られるCNFへのリグニン等の付着物の量を適度に簡便にコントロールすることができるので、具体的な用途や目的に合致した、より最適な特性のCNFの提供が可能になる。
本発明の製造方法におけるセルロースの解繊の概要を説明するための、模式図である。 本発明の製造方法におけるセルロースの解繊を実施することができるCNFの製造装置の一例を示す模式図である。 実施例1で得たCNFのSEM写真の図である。 実施例1で得たCNFの倍率の異なるSEM写真の図である。 実施例2で得たCNFのSEM写真の図である。 比較例1で得たCNFのSEM写真の図である。 比較例1で得たCNFの倍率の異なるSEM写真の図である。
(高温・高圧の状態の水)
次に、発明を実施するための好ましい形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明のCNFの製造方法は、原料セルロースから、化学的な解繊をすることなく、且つ、後処理で機械的な解繊を行わずにCNFを連続的に得る方法である。すなわち、温度が180℃以上370℃未満で、且つ、圧力が5MPa〜35MPaである、高温・高圧の状態の亜臨界水と、前記原料セルロースとを混合することで前記原料セルロースを解繊し、水に分散したCNFを連続的に得ることを特徴とする。より具体的には、本発明は、亜臨界水と、原料セルロースとの混合を、亜臨界水の流れの中に原料セルロースを供給して、原料セルロースを数十秒〜数秒単位の短時間、より具体的には20秒以内の短時間、亜臨界水中に存在させる構成としたことで、連続的に、所望の繊維径のCNFを得ることを可能にした新規な技術に関する。
本発明で利用する「温度が180℃以上370℃未満で、且つ、圧力が5MPa〜35MPaの、高温・高圧の状態の亜臨界水」(以下、亜臨界水と呼ぶ)について説明する。水の臨界温度は374℃、臨界圧力は22.1MPaである。超臨界水とは、水の臨界温度以上、臨界圧力以上の、高温高圧の液体と気体の境界線を越えた状態である。本発明で利用する亜臨界水は、水の臨界温度以下の370℃未満で、5MPa〜35MPaの高温高圧の液体水である。通常の水と超臨界水との違い、超臨界水と亜臨界水との違いを述べれば、下記のことが挙げられる。超臨界水は、液体と気体の両方の性質を併せ持っており、例えば、密度は室温の液体水(1g/cm)の0.03〜0.4倍程度であり、100℃、0.1MPaの水蒸気に比べて数十〜数百倍大きい。一方、その粘性率は気体並みに低く、自己拡散係数は、液体と気体の中間程度である。つまり超臨界水は、気体分子と同程度の大きな運動エネルギーを持ち、液体の1/10程度の密度を持つ非常にアクティブな流体といえる。一方、本発明で利用する亜臨界水は、超臨界水までのアクティブさはないものの、大きな加水分解力を持つ高温高圧の液体水である。また、亜臨界水や超臨界水は、温度、圧力を制御することにより、密度や溶解度等のマクロな物性から、流体分子の溶媒和構造等のミクロな物性・構造まで、連続、且つ、大幅に制御することが可能である。
亜臨界水や超臨界水は、誘電率やイオン積というパラメータを容易に制御できる。誘電率は、溶媒の極性の尺度であり、溶媒は、誘電率の近い値の物質をよく溶解する。例えば、通常の室温、大気圧下の水の誘電率は約80であり、この条件の水には、誘電率の低い炭化水素(例えば、ベンゼンの誘電率は2.3)は溶解できない。しかし、超臨界水では誘電率が1〜10程度と、無極性〜弱極性の有機溶媒並みの値となるため、誘電率の低い多くの有機物が溶解可能となる。一方、亜臨界水では、誘電率は15〜45と、弱〜中極性の溶媒並になるので、多くの有機物を溶解できる。また、水のイオン積は、室温、大気圧下では10−14mol/kgであるが、超臨界水では、10−15〜10−29mol/kg程度まで低下する。一方、亜臨界水では、10−12〜10−11mol/kgと、室温、大気圧下でのイオン積の100〜1000倍になる。このように、亜臨界・超臨界水は、温度や圧力を変えることにより、単一溶媒でありながら、水溶性から非水溶性の特性を示し、同様に誘電率の低い有機物を溶解できるようになることが知られている。
しかし、超臨界水は、非常に大きな分解力を持っているので、どのような有機物でも短時間に完全分解できるが、その一方で、処理条件が過酷で、エネルギー多量消費、耐熱・耐圧反応器が高価になる等の理由のために、その利用があまり進んでいないのが現状である。本発明者は、CNFの製造方法についての検討過程で、原料セルロースの解繊に超臨界水を利用することについての検討を行った。その結果、超臨界水は、温度が高すぎてセルロース繊維が溶けてしまい、CNFの分散液を入手することができず、CNFの製造には不向きで、利用できないことがわかった。
そこで、本発明者は、原料セルロースの解繊に、処理条件が超臨界水を用いた場合ほどには過酷にならない、温度が比較的低い領域にある熱水の利用について鋭意検討を行った。その結果、本発明で規定する亜臨界水を利用することで、原料セルロースから、従来の方法では得ることができなかった、植物が作り出した天然由来のセルロースのままの状態の、繊維径が細く、且つ、所望する繊維径のCNFが簡便に得られることを見出して本発明に至った。本発明で規定する亜臨界水は、超臨界水と同様に、無極性の有機化合物を、溶解或いは加水分解するなど、普通の水にはない特性をもっている。本発明では、この無害で大きな分解力を持つ亜臨界水の特性を巧みに利用することで、上記した優れたCNFの水分散液を連続して得ることを実現した。
本発明者は、原料セルロースの解繊に亜臨界水を用いることについて検討を行う過程で、原料セルロースを含む成分を、亜臨界水を用いてバッチ方式で混合すると、短い時間でもセルロースの解繊が進み過ぎてしまい、超臨界水の場合と同様にCNFの水分散体を得ることができないことを見出した。また、検討過程で、セルロース繊維にリグニン等が付着したセルロース原料では、原料セルロースを亜臨界水中に入れた場合、セルロース繊維よりも先に繊維に付着しているリグニン等が解けて分離し、また、その後に液を冷却すると、例えば、リグニンが析出するものの、析出したリグニンがセルロース繊維に再び付着することはなく、繊維表面への付着物が少ないCNFが得られることがわかった。これに対し、原料セルロースを機械的に解繊した場合は、天然由来のセルロースのままの状態のCNFを得ることができるものの、リグニン等の分離が十分にできず、繊維表面への付着物が多い状態のものになる。このため、原料として用いるセルロース原料を限定する必要があったり、セルロースの解繊処理後に、別途、リグニン等の付着物を分離除去する必要が生じることがあった。この点に対し、本発明者らは、原料セルロースを亜臨界水に混合させた際における、セルロース繊維よりも先にリグニン等の付着物が解けて容易に分離することを巧みに利用することで、付着物の殆どを分離させた状態で、或いは、所望する程度に分離させた状態でセルロース繊維を解繊でき、所望の繊維径になる状態までセルロース解繊してなるCNFを安定して得られる方法について鋭意検討を行った。
その結果、本発明者らは、まず、本発明で規定する範囲内の高温高圧の熱水である亜臨界水を用いることが有効であることを見出した。本発明で規定する亜臨界水は、超臨界水ほどには処理条件が過酷でなく、上記した本発明の目的を達成するための条件調整も容易であり、また、亜臨界水を用いての処理時間は秒単位であり、極めて短くてすむため、エネルギーの多量消費の問題も低減でき、その実用性は高い。
本発明で利用する亜臨界水は、温度が180℃以上370℃未満で、且つ、圧力が5MPa〜35MPaの熱水である。より好ましくは、温度が200℃以上350℃未満で、且つ、圧力が10MPa〜35MPaである熱水、さらには、温度が250℃以上350℃未満で、且つ、圧力が20MPa〜35MPaである熱水を用いることが好ましい。亜臨界水の温度・圧力は、上記した範囲で適宜に調整したものを利用することで、いずれの場合も本発明が目的とするCNFを得ることができる。本発明者らの検討によれば、より高温・高圧の亜臨界水を利用した方が、より短時間で原料セルロースの解繊をすることが可能になる。したがって、本発明で利用する亜臨界水の温度・圧力の具体的な条件は、所望するCNFの繊維径や、CNFへの付着物の量を所望する範囲にコントロールする必要性等との兼ね合いで、適宜に決定すればよい。
本発明者らは、上記した本発明で規定した亜臨界水と、原料セルロースとを混合させることで、リグニン等の付着物をセルロース繊維から分離し、付着物を殆どなくし、且つ、セルロースを解繊して、平均繊維径が20nm未満の所望するCNFとできる要件について鋭意検討を行った。その結果、亜臨界水と、原料セルロースとの混合を極めて短時間で、具体的には、数十秒以内、例えば、20秒以内、より具体的には、1〜5秒間、亜臨界水と原料セルロースとが混合された状態になれば、本発明で所望する性状のCNFが水に分散した分散液が得られることを見出した。
また、さらなる検討の結果、亜臨界水と原料セルロースとの混合状態を、上記したような極めて短時間、安定して行う方法として、亜臨界水の流れの中に、原料セルロースを連続して供給して撹拌混合することが有効であることを見出した。このように構成すれば、原料セルロースを、安定して亜臨界水中に数十秒以内の短時間、より具体的には、20秒以内で存在させることができ、例えば、付着物の少ない所望の平均繊維径を有するCNFの水分散液を連続して製造することが可能になる。また、その際に、本発明で規定する高温・高圧の範囲内で亜臨界水の温度と圧力を調整することで、或いは、本発明で規定する亜臨界水に、原料セルロースが混合される時間を適宜に調整することで、容易に所望する平均繊維径のCNFの水分散液を、安定して連続して得ることが可能になる。
上記のようにして得られるCNFは、セルロースが化学的修飾されたものでないことは勿論、従来、一般的に行われている、植物が作り出した天然由来のセルロースのままの状態のCNFが得られる、物理・機械的手段でセルロースを解繊した場合には得ることのできなかった、平均繊維径が、例えば、20nm未満と細いものになる。また、セルロース繊維表面への付着物が殆どないCNFを得ることも、適宜な範囲で付着物が付着した状態のCNFを得ることもできる。また、先に述べたように、本発明の製造方法によれば、CNFの平均繊維径は、原料セルロースを亜臨界水中に存在させる時間を調整することでも容易に所望の繊維径とできるので、例えば、亜臨界水の流れる速度を調整するといった簡便な方法で、上記した所望の特性のCNFを得ることもできる。
上記したように、本発明の製造方法によれば、簡便な装置で、短時間にセルロースを容易に解繊でき、所望の平均繊維径の所望の状態のCNFの水分散液を連続して得ることが実現できる。加えて、得られるCNFは、化学修飾されておらず、天然由来のセルロースのままの状態であるにもかかわらず、例えば、平均繊維径が20nm未満で、且つ、繊維径の揃ったものになる。また、セルロース繊維表面への付着物の量が適宜にコントロールされたCNFを得ることもできる。このため、本発明の製造方法で得られるCNFを利用することで、各種の製品に、従来の製造方法で得たCNFでは十分に付与することができなかった物性を付与することも期待できる。
上記したように、本発明の製造方法は、温度・圧力を本発明で規定する特定の範囲内で適宜に調整した亜臨界水を用いることで、亜臨界水のもつ特性を生かしつつ、亜臨界水に、原料セルロースが供給されて混合される時間を調整するなどの簡便な方法で、繊維径が細い所望のCNFにセルロースを解繊することを可能にしている。すなわち、本発明の製造方法は、セルロース原料を化学的に分解してセルロースを解繊するものでも、繊維径の細いCNFを得ることができない、物理・機械的にセルロースを解繊するのでもなく、地球上に広く存在し、安価で無害で環境への負荷がない水の特性を巧みに利用した従来にないセルロースの解繊技術である。このため、本発明の製造方法では、従来の機械的な解繊に必要な、多くの処理工程や処理時間等や、或いは、化学修飾によるセルロースの解繊等に必要な、特殊な薬剤等を使用することがなく、また、得られるCNFは、化学修飾がされていない、付着物の少ない、繊維径を所望の細い状態にした天然由来のセルロースのままの、従来の製造方法では実現できなかった形態のものになる。
図1は、セルロースの解繊を新規な手法で簡便に行うことができる、本発明のCNFの製造方法で行う「亜臨界水によるセルロースの解繊」の概要を説明するための模式図である。本発明の製造方法で行う「亜臨界水によるセルロースの解繊」は、亜臨界水と原料セルロースとを混合し、原料セルロースを亜臨界水中に短時間存在させることができる構成とすれば実現できる。図1に示したように、このように構成すれば、亜臨界水中に存在している間に、原料セルロースは、亜臨界水によって、付着物とセルロースが順次解けて、原料セルロースの解繊が行われる。
図2は、本発明を特徴づける、セルロースの亜臨界水解繊を簡便に実施することができる構成を有する、本発明のCNFの製造装置の一例の模式的な概略図である。図2に示した通り、この装置は、亜臨界水の流れと、原料セルロースの分散液の流れを合流させる合流部を有し、さらに合流した液を導入することで、合流した前記亜臨界水と前記分散液とを順次撹拌混合させるスタティックミキサー構造を有する亜臨界解繊部を有することを特徴とする。すなわち、図2に示した装置は、亜臨界解繊部が、駆動部のない静止型混合器であるスタティックミキサー構造を有し、後述する通り、スタティックミキサーを構成する特有の形状の複数個のエレメントによって、流体を構成している亜臨界水と原料セルロースの分散液とが順次撹拌混合されるものである。このため、図2に示した装置を用いることで、亜臨界水の流れと、原料セルロースの分散液の流れを合流させ、この合流した流体を単に亜臨界解繊部に供給して通過させる、という極めて簡便な操作が実施され、その結果、亜臨界水と原料セルロースとが順次撹拌混合されて、その間にセルロースが速やかに解繊して順次CNFの分散液となり、安定した品質のCNFの連続製造が可能になる。
以下、本発明のCNFの製造装置を構成する、スタティックミキサー構造を有する亜臨界解繊部について詳述する。この亜臨界解繊部を構成するスタティックミキサー部分を通過する毎に、合流した状態の、亜臨界水と原料セルロースの分散液とからなる流体が、2分割される。そして、エレメント内のねじれ面に沿って菅中央部から壁部へ、菅壁部から中央部へと流体が並べ替えられ転換する。さらに、流体に対して、上記した作用を加えるエレメントが複数設けられていることから、一つのエレメント毎に回転方向が変わり、急激な慣性力の反転を受けて乱流撹拌される。その結果、スタティックミキサーは、駆動部がないにもかかわらず、亜臨界水と原料セルロースとを順次撹拌混合できる。
本発明のCNFの製造方法は、上記した図2に示したような、極めて簡便な構成の本発明のCNFの製造装置によって実施できる。この装置の亜臨界解繊部に使用されるスタティックミキサーは、駆動部のない静止型混合器であり、前記したように、流体の分割、流体の並べ替え、反転が順次行われて、亜臨界水と原料セルロースとを順次撹拌混合することができる。また、スタティックミキサーは、流体の熱交換効率に優れているため、亜臨界水と原料セルロースを瞬時に均一な温度とすることができる。これにより、短時間で、原料セルロースの解繊が可能となり、解繊をより進行させ、より細かなNCFを製造することができる。なお、図2に示した装置には、必要に応じて亜臨界解繊部から出た液を冷却するための冷却部(不図示)を設けてもよい。上記した図2に示したような装置を用いることで、本発明の製造方法を構成する原料セルロースの解繊は、速やかに簡便に連続してすることができ、従来技術のように、さらに後処理を行って物理・機械的な解繊をしなくても、繊維径が細いCNFを得ることができる。
上記に例示したような装置を用いることで、簡便に、亜臨界水と、原料セルロースとを混合状態にすることができ、その結果、原料中のセルロースは亜臨界水によって速やかに解繊して、平均繊維径が細い、天然由来のセルロースのままの状態のCNFが水に分散してなる分散液が、短時間に効率よく形成される。また、例示した装置にあるように、セルロースの解繊操作は連続的に行われ、本発明の製造方法によれば、目的とする形態のCNFが水に分散した状態の分散液を連続して得ることができる。本発明を特徴づける亜臨界水による原料セルロースの解繊では、先に述べたように、リグニン等の付着物とセルロース繊維が、亜臨界水で解ける速さの違いを巧みに利用して解繊しているため、得られるCNFは、植物が作り出した天然由来のセルロースのままの状態のものでありながら、付着物が少ないものや、用途に応じて付着物の量がコントロールされたものになる。なお、亜臨界水によってセルロース表面から速やかに分離される付着物は、冷却によって析出するものもあるが、再度、得られたCNF表面に付着することはない。
図2に例示した装置で使用する、水を亜臨界水の状態にする亜臨界水の形成部(不図示)は、水を、高温・高圧の極限環境においた場合に現れる超臨界状態にすることもできるものであり、温度と圧力を調整することで、本発明で利用する亜臨界水を容易に得ることができる。本発明の製造方法では、このような装置で簡便に得られる、超臨界よりもマイルドな、本発明で規定する高温・高圧の亜臨界水を利用することで、本発明が目的とする、平均繊維径が細い、天然由来のセルロースのままの状態のCNFを容易に得たものである。本発明では、亜臨界水〜超臨界水処理装置を使用して種々の実験を行い、鋭意検討した結果、本発明のCNFの製造方法に至ったものである。この点については後述する。
表1に、セルロースの、機械的な解繊と、化学修飾解繊と、本発明の亜臨界水で行う亜臨界水解繊によって得られたCNFの性能の比較を示した。
表1に示したように、本発明の製造方法で行う原料セルロースの亜臨界水解繊では、亜臨界水のもつ特性を生かし、本発明で規定する亜臨界水における、温度・圧力条件を調整する、或いは、原料セルロースが亜臨界水中に混合した状態にある時間を適宜に調整するだけで、化学的な解繊を利用することなく、平均繊維径が細い、天然由来のセルロースのままの本来の状態の水に分散したCNFが容易に得られる。
本発明の製造方法で用いる原料セルロースは、特に限定されるものではなく、下記に挙げるようなものが使用できる。例えば、各種木材由来のクラフトパルプや、サルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末セルロース、或いは、それらを酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末等を使用することができる。また、ケナフ、麻、イネ、バカス、竹等の植物を使用することもできる。これらの中でも、クラフトパルプ、サルファイトパルプ、粉末セルロース、或いは、微結晶セルロース粉末を用いることが、量産化やコストの観点から好ましい。特に、粉末セルロース及び微結晶セルロース粉末を用いると、高濃度であってもより低い粘度を有するCNF分散液を製造することができる。本発明の製造方法で用いる原料セルロースとしては、用途や目的を問わず、セルロースにリグニン等の付着物があるものも使用できるので、原料として多種多様なセルロースが使用できるという利点も期待できる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
(使用した装置)
検討試験には、亜臨界水〜超臨界水の供給が可能で、条件設定によって、水を、本発明で規定する高温高圧の亜臨界水にできる亜臨界水の形成部(不図示)を有する、前記した図2に示した構成の処理装置を使用した。詳しくは、この装置は、亜臨界水と、セルロース原料が水で分散されている分散液を流入させるための2つの流入路と、流入した亜臨界水と、原料セルロースの分散液を合流させる合流部と、合流後の流体が供給されて、流体を構成する亜臨界水と原料セルロースとが順次撹拌混合される機能を有するスタティックミキサー構造を有する亜臨界解繊部とを有してなる。この装置は、図2に示したように、亜臨界解繊部で、所定条件の亜臨界水によって原料セルロースを短時間処理することで、CNFの水分散液を連続して得る連続フロー方式のものである。検討試験では、図2の装置を用いて、解繊条件を、水温が臨界温度374℃の手前の180℃〜370℃の熱水になる高温・高圧の亜臨界水を用いて、種々の検討を行った。
具体的には、亜臨界解繊部における解繊条件を、下記の温度及び圧力とした。すなわち、圧力が25MPaで、温度がそれぞれ、200℃、230℃の亜臨界水を用いた。比較のために、温度が25℃(常温)で、圧力が0.1MPa(常圧)の水を用いた。また、原料セルロースが水に分散されている分散液のセルロースの濃度を0.6%とした。使用した原料セルロースには、クラフトパルプを用いた。水はいずれもイオン交換水を用いた。試験では、亜臨界水又は常温の水と、原料セルロースの分散液を、いずれも5mL/minで流して合流部で合流させた。
<実施例1:CNFの調製>
本実施例では、圧力が25MPa、温度が200℃の亜臨界水と、原料セルロースとして、上記した濃度0.6%のセルロース分散液を用いた。そして、図2に示した装置を用い、それぞれを5mL/minの速度で流し、合流部で合流させて、合流したセルロース分散液と亜臨界水の2つの液からなる流体を亜臨界解繊部に供給して、0.3%濃度のCNF分散液を得た。上記流体が亜臨界解繊部を流れた時間は、5秒であった。
図3A及び図3Bに、上記で得た0.3%濃度のCNF分散液のSEM写真の図を示した。図3Aと図3Bは、倍率が異なる。これらの図3に示されているように、本実施例で得られたCNFは、セルロース繊維への付着物が殆ど認められなかった。また、平均繊維径が約15nmであり、繊維径が細い、径が揃った状態のものとなることが確認された。
<実施例2:CNFの調製>
圧力が25MPa、温度が230℃の亜臨界水を用いた以外は、実施例1と同様にして、0.3%濃度のCNF分散液を得た。図4に、本実施例で得た0.3%濃度のCNF分散液のSEM写真の図を示した。図4に示されているように、得られたCNFは、セルロース繊維への付着物は殆ど認められなかった。また、平均繊維径が約10nmであり、繊維径が細い揃った状態のものとなることが確認された。さらに、図3と図4との比較から、温度をより高温にしたことで、より繊維径の細いCNFが得られることが確認された。
<比較例>
圧力が0.1MPa、温度が25℃の常温常圧の水を用いた以外は、実施例1と同様にして、0.3%濃度のCNF分散液を得た。図5A及び図5Bに、本比較例で得た0.3%濃度のCNF分散液のSEM写真の図を示した。図5Aと図5Bは、倍率が異なる。これらの図5に示されているように、得られたCNFは、セルロース繊維へ付着物が多く付着しており、また、実施例1及び実施例2と異なり、繊維径が100nm以上のものが目立ち、細い揃った状態のものにはならないことが確認された。

Claims (10)

  1. 原料セルロースから、化学的な解繊をすることなく、且つ、後処理で物理・機械的な解繊を行わずにセルロースナノファイバーを連続的に得る方法であって、
    温度が180℃以上370℃未満で、且つ、圧力が5MPa〜35MPaである、高温・高圧の状態の亜臨界水と、前記原料セルロースとを混合することで前記原料セルロースを解繊し、水に分散したセルロースナノファイバーを得ることを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
  2. 前記混合を、前記亜臨界水の流れの中に前記原料セルロースを連続して供給し、前記原料セルロースを前記亜臨界水中に20秒以内の短時間存在させることで行って、連続的にセルロースナノファイバーを得る請求項1に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
  3. 平均繊維径が20nm未満であるセルロースナノファイバーを得るための請求項1又は2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
  4. 前記高温・高圧の状態が、温度が200℃以上350℃未満で、且つ、圧力が10MPa〜35MPaである請求項1〜3のいずれか1項にセルロースナノファイバーの製造方法。
  5. 前記高温・高圧の状態が、温度が250℃以上350℃未満で、且つ、圧力が20MPa〜35MPaである請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
  6. さらに、前記混合後に急冷する工程を設ける請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたことを特徴とするセルロースナノファイバー。
  8. 化学修飾されておらず、且つ、平均繊維径が20nm未満であることを特徴とするセルロースナノファイバー。
  9. 前記平均繊維径が、2〜10nmである請求項8に記載のセルロースナノファイバー。
  10. 温度が180℃以上370℃未満で、且つ、圧力が5MPa〜35MPaである、高温・高圧の状態の亜臨界水の流れと、原料セルロースの分散液の流れを合流させる合流部と、該合流部に隣接して配置された、合流した前記亜臨界水と前記分散液とを順次撹拌混合させるスタティックミキサー構造を有する亜臨界解繊部とを有することを特徴とするセルロースナノファイバーの製造装置。
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