JP2020052315A - 定着部材 - Google Patents

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竜介 山岡
Ryusuke Yamaoka
竜介 山岡
早崎 康行
Yasuyuki Hayazaki
康行 早崎
秀一 江川
Shuichi Egawa
秀一 江川
淳一郎 末永
Junichiro Suenaga
淳一郎 末永
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Abstract

【課題】高ニップ幅と高反発性を両立させた電子写真機器の定着部材を提供する。【解決手段】基材12と、基材12の外側に形成されたシリコーンゴム発泡層14と、を有し、シリコーンゴム発泡層14は、平均セル径が3.0〜20μmの範囲内であり、セルの連通度が80%以上であり、密度が0.50〜0.80g/cm3の範囲内であり、パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が0.60〜1.60の範囲内である定着部材10とする。【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真機器の定着工程において好適に用いられる電子写真機器の定着部材に関し、さらに詳しくは、弾性層としてシリコーンゴム発泡層を有する電子写真機器の定着部材に関するものである。
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器では、記録媒体(紙など)にトナー像を形成し、これを定着部材で加熱・加圧して定着させることにより画像を形成している。電子写真機器の定着部材は、定着ロールや定着ベルト、加圧ロールなどの回転体、加圧パッドのような押し当て体で構成されている。定着部材は、例えば芯金などの軸体の外周に弾性層を有する。
例えば特許文献1には、円筒状の基体の外周にシリコーンエラストマー製の多孔質体層を有する定着用回転体が記載されている。特許文献1では、多孔質体層のセルが特定条件を満足することが記載されている。また、特許文献2には、金属製芯金を被覆する発泡シリコーンゴム層を有する定着用のスポンジロールが記載されている。
特許第5190855号公報 特許第5080003号公報
定着部材には、記録媒体へのトナーの定着性を向上させるため、変形しやすさと反発性を両立することが求められる。例えば高速印刷を実現するためには、高速で記録媒体にトナーを定着させる必要があり、このためには、定着時のニップ幅を大きくすること(変形しやすいこと)、記録媒体に圧力をかけるための反発力を大きくすること(反発しやすいこと)が必要となる。一般に、ニップ幅を大きくするには、発泡化などによって定着部材を低硬度化する必要がある。一方で、定着部材の反発力を大きくするには、高硬度化する必要がある。このため、高ニップ幅と高反発性の両立は困難であった。
本発明が解決しようとする課題は、高ニップ幅と高反発性を両立させた電子写真機器の定着部材を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る電子写真機器の定着部材は、基材と、前記基材の外側に形成されたシリコーンゴム発泡層と、を有する電子写真機器の定着部材であって、前記シリコーンゴム発泡層は、平均セル径が3.0〜20μmの範囲内であり、セルの連通度が80%以上であり、密度が0.50〜0.80g/cmの範囲内であり、パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が0.60〜1.60の範囲内であることを要旨とするものである。
前記シリコーンゴム発泡層は、油中水型のシリコーンエマルション組成物から形成されたものであることが好ましい。また、前記シリコーンゴム発泡層は、有機増粘剤を含むことが好ましい。
本発明に係る電子写真機器の定着部材によれば、シリコーンゴム発泡層が、平均セル径が3.0〜20μmの範囲内であり、セルの連通度が80%以上であり、密度が0.50〜0.80g/cmの範囲内であり、パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が0.60〜1.60の範囲内であることから、高ニップ幅と高反発性を両立することができる。
そして、シリコーンゴム発泡層が有機増粘剤を含むと、成形型に増粘剤が堆積するのが抑えられ、定着部材の表面におけるセルが均一となりやすく、軸方向においてニップ幅が均一となりやすい。
本発明の一実施形態に係る定着部材の径方向断面図である。 定着工程を説明する模式断面図である。 シリコーンゴム発泡層の拡大断面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の構成について具体的に明らかにする。
図1には、本発明の一実施形態に係る電子写真機器の定着部材を示している。図2には、定着工程を説明する模式図を示している。図3には、シリコーンゴム発泡層の拡大断面図を示している。
図1に示すように、定着部材10は、基材12と、基材12の外側に形成されたシリコーンゴム発泡層14と、を有している。定着部材10は、複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器の定着工程において好適に用いられる電子写真機器の定着部材である。
図2に示すように、電子写真機器の定着工程では、加圧ロール1と定着ロール2が定着ベルト3を挟んで所定のニップ幅にて圧接した状態とされ、所定のニップ幅にて圧接しながら共回りする。例えば定着ベルト3が図示しない熱源によって加熱される。定着ロール2が押圧する定着ベルト3と加圧ロール1の間に、未定着状態のトナーを保持する記録媒体4を通過させ、記録媒体4を加熱・加圧することによって記録媒体4にトナーを定着し、画像を形成する。本発明に係る電子写真機器の定着部材は、このような定着ロール2や定着ベルト3、加圧ロール1などとして用いることができる。また、加圧パッドのような押し当て体として用いることができる。加圧パッドのような押し当て体は、例えば金属製基材の外側にシリコーンゴム発泡層を有する。
定着部材10において、基材12は、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などで構成される。図3に示すように、シリコーンゴム発泡層14は、架橋シリコーンゴムを含有するベース材料(固相)中に複数のセル(気泡)16を有するシリコーンゴム発泡体からなる。シリコーンゴム発泡層14は、ベース材料中に複数のセル16を有することにより、セル16を含んでいない充実弾性体層よりも柔軟性に優れ、低硬度なものとなっている。また、セル16の分だけ充実弾性体層よりも材料の使用量が低減するので、材料コストの低減にも貢献する。さらに、セル16を有することにより断熱性にも優れる。
シリコーンゴム発泡層14は、平均セル径が3.0〜20μmの範囲内である。シリコーンゴム発泡層14の平均セル径が小さくセル16が微細であるほど、高ニップ幅となり、また、ニップの均一性に有利である。その一方で、平均セル径が小さすぎると、厚み方向の圧縮変形に対する弾性回復が遅くなり、耐ヘタリ性が低下する。したがって、平均セル径は3.0μm以上20μm以下とする。そして、耐ヘタリ性の観点から、平均セル径は、より好ましくは5.0μm以上である。また、高ニップ幅の観点から、平均セル径は、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。セル16の直径は、レーザー顕微鏡を用いて撮影したシリコーンゴム発泡層14の断面写真から測定することができる。平均セル径は、任意の3箇所で撮影範囲200μm角に写るセル16の90%について直径を測定し、その平均を算出することにより求めることができる。
シリコーンゴム発泡層14は、セル16の少なくとも一部が繋がっている連泡である。連泡の割合が多くセル16の連通度が高いと、高ニップ幅となる。また、圧縮永久歪の値が低くなり、厚み方向の圧縮変形に対し耐ヘタリ性に優れる。したがって、セル16の連通度は80%以上とする。また、この観点から、より好ましくは86%以上、さらに好ましくは90%以上である。セル16の連通度は、液体の吸収量を基準に求めることができる。液体の吸収量が多いほど、セル16aが多く連通している。
シリコーンゴム発泡層14は、密度が0.50〜0.80g/cmの範囲内である。密度が低いことで、断熱性の向上、軽量化、低硬度などに利点がある。断熱性に優れる場合、定着工程における加熱部材に接する部材として好適に用いることができる。密度が0.80g/cm超であると、十分に低硬度にできず、高ニップ幅を満足できない。断熱性の向上、軽量化、低硬度などの観点から、密度はより好ましくは0.75g/cm以下、さらに好ましくは0.70g/cm以下である。また、密度が0.50g/cm未満であると、硬度が低すぎて、高反発性を満足しない。高反発性の観点から、密度はより好ましくは0.55g/cm以上、さらに好ましくは0.60g/cm以上である。密度は、シリコーンゴム発泡層14の質量および体積から算出することができる。また、ベース材料の比重と発泡倍率から算出することができる。
シリコーンゴム発泡層14は、パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が0.60〜1.60の範囲内である。パルスNMRの緩和時間(A)は、シリコーンゴムの架橋密度と相関する。パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)は、シリコーンゴムの架橋密度の指標として表されるものである。シリコーンゴムの架橋密度が低いとパルスNMRの緩和時間(A)は長くなり、シリコーンゴムの架橋密度が高いとパルスNMRの緩和時間(A)は短くなる。シリコーンゴムの架橋密度は、シリコーンゴム発泡層14のセル壁を構成しているシリコーンゴムの架橋密度である。シリコーンゴムの架橋密度が高いことで、シリコーンゴム発泡層14のセル壁が硬くなる。これにより、発泡化によってシリコーンゴム発泡層14を低硬度化した場合にも高反発性を確保することができ、高ニップ幅と高反発性を両立することができる。パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が0.60未満であると、高反発性を満足できない。パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が1.60超であると、高ニップ幅を満足できない。パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)は、シリコーンゴム発泡層14の高反発性の観点から0.70以上がより好ましい。さらに好ましくは0.80以上である。また、シリコーンゴム発泡層14の高ニップ幅の観点から1.50以下が好ましい。より好ましくは1.30以下、さらに好ましくは1.20以下である。
シリコーンゴム発泡層14の厚みは、特に限定されるものではないが、シリコーンゴム発泡層14の柔軟性、断熱性を確保するなどの観点から、2.0mm以上であることが好ましい。より好ましくは4.0mm以上である。また、耐久性、製品コストなどの観点から、10mm以下であることが好ましい。より好ましくは8.0mm以下である。
シリコーンゴム発泡層14は、反発性に優れるなどの観点から、アスカーC硬度が30以上であることが好ましい。より好ましくは36以上である。一方、高ニップ幅を確保しやすいなどの観点から、アスカーC硬度が50以下であることが好ましい。より好ましくは45以下である。
シリコーンゴム発泡層14は、耐ヘタリ性に優れるなどの観点から、圧縮永久歪は、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。シリコーンゴム発泡層14の圧縮永久歪は、JIS K6262に準拠して測定され、150℃×72時間試験で25%圧縮時の圧縮永久歪である。
シリコーンゴム発泡層14は、基材12の外周に発泡性のシリコーンゴム組成物を発泡架橋してロール状に成形することにより形成することができる。シリコーンゴム発泡層14は、単層で構成されていてもよいし、2層以上で構成されていてもよい。
発泡方法は、特に限定されるものではなく、エマルション発泡、バルーン発泡、機械発泡、化学発泡などが挙げられる。エマルション発泡は、未硬化材料に水を分散させておき、その分散状態で材料を硬化させ、硬化後に硬化物から水を除去する発泡方法である。バルーン発泡は、中空粒子を未硬化材料に分散させておき、その分散状態で材料を硬化させる発泡手法である。硬化後に硬化物中の中空粒子の殻(バルーン)を破壊、分解等により硬化物とセルの界面から殻を除去する発泡方法である。機械発泡は、外部から強制的に材料中へ炭酸ガスなどのガスを混入させ、機械的に攪拌・発泡させる方法である。化学発泡は、有機あるいは無機の化学発泡剤を用いて材料の硬化時(成形時)に発泡させる発泡方法である。これらの発泡方法のうちでは、硬化中に気泡を発生させる化学発泡よりも、硬化前(成形前)から材料中に泡を含む発泡方法であり泡を含む状態をそのまま硬化するものである機械発泡、エマルション発泡、バルーン発泡のほうが、セルの大きさを均一で小さくしやすい点で好ましい。
発泡性のシリコーンゴム組成物は、(a)オルガノポリシロキサン、(b)架橋剤、(c)発泡剤、(d)架橋触媒、を含有する。
(a)オルガノポリシロキサンは、(b)架橋剤により架橋される官能基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。官能基含有オルガノポリシロキサンとしては、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、水酸基含有オルガノポリシロキサン、(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサン、イソシアネート含有オルガノポリシロキサン、アミノ基含有オルガノポリシロキサン、エポキシ基含有オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。これらのうちでは、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンが好ましい。アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、例えば付加硬化型のシリコーンゴム組成物の主原料として用いられる。アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル架橋剤との付加反応で、ヒドロシリル架橋剤により架橋される。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、上記官能基に加えて、有機基を有する。有機基は、1価の置換または非置換の炭化水素基である。非置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基などのアラルキル基などが挙げられる。置換の炭化水素基としては、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などが挙げられる。オルガノポリシロキサンとしては、一般的には、有機基としてメチル基を有するものが、合成のしやすさ等から多用される。オルガノポリシロキサンは、直鎖状のものが好ましいが、分岐状もしくは環状のものであっても良い。
(b)架橋剤は、(a)オルガノポリシロキサンを架橋する架橋剤である。(b)架橋剤としては、ヒドロシリル架橋剤、過酸化物架橋剤などが挙げられる。これらのうちでは、ヒドロシリル架橋剤が好ましい。
ヒドロシリル架橋剤は、付加硬化型のシリコーンゴム組成物の架橋剤として用いられる。ヒドロシリル架橋剤は、その分子構造中にヒドロシリル基(SiH基)を有する。ヒドロシリル架橋剤は、ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)である。分子構造中におけるヒドロシリル基の数としては、特に限定されるものではないが、硬化速度に優れる、安定性に優れるなどの観点から、2〜50の範囲内であることが好ましい。分子構造中にヒドロシリル基を2以上有する場合には、ヒドロシリル基は異なるSiに存在することが好ましい。ポリシロキサンは、鎖状のものでも良いし、環状のものでも良い。ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有することが好ましい。ヒドロシリル架橋剤は、取り扱い性に優れるなどの観点から、数平均分子量200〜30000の範囲内であることが好ましい。
ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)は、具体的には、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体などが挙げられる。
ヒドロシリル架橋剤の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜40質量部の範囲とされる。
有機過酸化物としては、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルペルオキシド、クミル−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシドなどが挙げられる。これらのうちでは、特に低い圧縮永久歪を与えることから、ジクミルペルオキシド、クミル−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシドが好ましい。
有機過酸化物の添加量は、特に限定されるものではないが、通常、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲とされる。
(c)発泡剤は、発泡方法に応じて、所定の発泡剤が用いられる。発泡剤としては、エマルション発泡の水、バルーン発泡の中空粒子、機械発泡のガス、化学発泡の化学発泡剤が挙げられる。化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミドなどの有機発泡剤や重炭酸ナトリウムなどの無機発泡剤などが挙げられる。
(d)架橋触媒は、(b)架橋剤による(a)オルガノポリシロキサンの架橋反応を促進する触媒である。(d)架橋触媒としては、ヒドロシリル化触媒としての白金触媒、ルテニウム触媒、ロジウム触媒などが挙げられる。白金触媒としては、微粒子状白金、白金黒、白金担持活性炭、白金担持シリカ、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(d)架橋触媒は、樹脂を用いてマイクロカプセル化されてもよい。マイクロカプセル型触媒(マイクロカプセル化触媒)は、架橋触媒を内包する樹脂微粒子からなる。架橋触媒を内包する樹脂微粒子は、少なくとも室温において固体であり、平均粒子径が30μm以下である。平均粒子径は、レーザー顕微鏡により測定される。架橋触媒を内包する樹脂微粒子の平均粒子径は、架橋触媒の分散性を高めるなどの観点から、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以下である。また、作製時の微粒子回収率を高めるなどの観点から、0.1μm以上であることが好ましい。より好ましくは2μm以上である。
架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂は、特に限定されるものではないが、溶解度パラメータ(SP値)7.9以上であることが好ましい。組成物のベースポリマーであるオルガノポリシロキサン(シリコーンポリマー)の溶解度パラメータを大きく外れる溶解度パラメータとすることで、オルガノポリシロキサンとの相溶性を下げ、貯蔵中において樹脂微粒子の溶解あるいは膨潤を抑え、内包する架橋触媒の徐放性を抑制し、貯蔵安定性を向上することができる。溶解度パラメータ8.3以上とすることで、オルガノポリシロキサンとの相溶性をさらに下げ、貯蔵安定性を格段に向上することができる。また、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂は、溶解度パラメータ20以下であることが好ましい。より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。溶解度パラメータ20以下であると、水の溶解度パラメータ(23.4)から離れるので、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂と水の相溶化、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂と界面活性剤の親水部との相互作用などが抑えられ、後述するエマルションの形成を妨げにくく、発泡倍率の低下やセル(気泡)のバラツキを抑えやすい。溶解度パラメータは、Smallの計算法により分子構造から算出することができる。
架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂は、特に限定されるものではないが、ガラス転移温度(Tg)40〜145℃であることが好ましい。ガラス転移温度145℃以下とし、加熱温度と樹脂の溶融温度に差を設けることで、加熱時(反応時)における樹脂の溶融開始時間を早め、架橋触媒の拡散量増加による架橋反応性の向上を図ることができる。この場合、ガラス転移温度100℃以下、あるいは85℃以下とすると、例えば120℃や100℃の低温架橋反応においても樹脂の溶融開始時間を早くして架橋触媒の拡散量増加による架橋反応性の向上を図ることができるため、低温での架橋反応性にも優れる。ただし、樹脂が室温で軟化溶融し、貯蔵安定性を損なわないために、ガラス転移温度40℃以上とすることが好ましい。より好ましくはガラス転移温度45℃以上、あるいは50℃以上である。ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)により測定することができる。
架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂は、特に限定されるものではないが、熱伝導率0.16W/m・K以上とすることが好ましい。組成物のベースポリマーであるオルガノポリシロキサン(シリコーンポリマー)の熱伝導率よりも高くすることで、加熱時(反応時)における樹脂の溶融速度を速くして、架橋触媒の拡散性向上による架橋反応性の向上を図ることができる。熱伝導率0.17W/m・K以上、さらには0.20W/m・K以上とすることで、架橋反応性を格段に向上することができる。熱伝導率は、ASTM C177に準拠して測定することができる。
架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。樹脂微粒子の樹脂は、架橋されることにより圧縮永久歪の低下を抑えられるなどの観点から、熱硬化性樹脂がより好ましい。架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン系重合体、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、水添テルペン樹脂などが挙げられる。これらは、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂として1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。熱硬化性樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、レゾール樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂としては、架橋触媒の反応性を阻害しないなどの観点から、樹脂組成中にアミンやアミドなどの窒素化合物、リン、硫黄などの化合物を含まないことがより好ましい。各樹脂は、同種の材料内でそれぞれ溶解度パラメータやガラス転移温度の異なるものを含むことから、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂として各樹脂のいずれか1種を単独で用いる場合でも、物性値の異なる材料を組み合わせて所定の物性値に調整することができる。また、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂として上記樹脂のうちの2種以上を組み合わせて用いる場合でも、物性値の異なる材料を組み合わせて所定の物性値に調整することができる。
アクリル樹脂には、アクリレートをモノマーとして含むポリマーとメタクリレートをモノマーとして含むポリマーの両方が含まれる。また、アクリレートおよびメタクリレートをモノマーとして含むポリマーも含まれる。これらのうちでは、常温で固体状態を維持できるなどの観点から、アクリレートおよびメタクリレートをモノマーとして含むポリマー、メタクリレートのみをモノマーとして含むポリマーがより好ましい。アクリル樹脂は、単一のモノマーから合成される単重合体であってもよいし、2種以上のモノマーから合成される共重合体であってもよい。アクリル樹脂としては、ガラス転移温度を100℃以下あるいは85℃以下の低温に調整しやすいなどの観点から、共重合体であることが好ましい。アクリル樹脂のうちでは、ガラス転移温度を85℃以下の低温にすることができるなどの観点から、エチルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体が特に好ましい。
アクリルモノマー、メタクリルモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート・プロピル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート・イソアミル(メタ)アクリレート・2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート・ラウリル(メタ)アクリレート・ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート・クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート・3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート・エトキシエチル(メタ)アクリレート・ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート・ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート・メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート・メトキシジプロピレングレコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート・2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキルジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコール等のエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン等の多価ビニル化合物等を挙げることができる。
スチレン系重合体は、単一のモノマーから合成される単重合体であってもよいし、2種以上のモノマーから合成される共重合体であってもよい。スチレン系重合体としては、共重合体であることが好ましい。スチレン系重合体としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)、水添スチレン−ブタジエン共重合体(SEBS)、水添スチレン−イソプレン共重合体(SEPS)、スチレン−アクリロニトリル共重体(SAN)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重体(ABS)などが挙げられる。
マイクロカプセル型触媒は、従来公知の方法で製造することができる。生産性、球状度などの観点から、懸濁重合法、乳化重合法、スプレードライヤー法、液中乾燥法などが好ましい。
懸濁重合法や乳化重合法により製造する場合、架橋触媒を固体状の芯物質とし、これを溶解しない有機溶媒中に分散させ、この分散液中でモノマーを懸濁重合法や乳化重合法などの重合法により重合させることにより、芯物質の表面を重合体が被覆する。これにより、架橋触媒が樹脂微粒子に内包されてなるマイクロカプセル型触媒が得られる。
液中乾燥法により製造する場合、架橋触媒、カプセル化する樹脂を水に不溶の有機溶剤に溶解させ、この溶液を界面活性剤の水溶液へ滴下しエマルジョンを作製する。その後、減圧し有機溶剤を除去した後、ろ過によりカプセル化触媒を得る。
マイクロカプセル型触媒における架橋触媒の金属原子含有量は、十分に樹脂に覆われて優れた貯蔵安定性を確保できる観点から、5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは2質量%以下である。また、優れた触媒活性を確保する観点から、0.01質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.1質量%以上である。
組成物におけるマイクロカプセル型触媒の含有量は、マイクロカプセル型触媒における架橋触媒の含有量にもよるが、マイクロカプセル型触媒における架橋触媒の含有量が上記の所定範囲内である場合には、オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜5.0質量部の範囲内とすることができる。また、架橋触媒が金属触媒である場合には、金属量に換算して、通常、オルガノポリシロキサン100質量部に対して1ppm〜1.0質量部の範囲とされる。
発泡性のシリコーンゴム組成物は、必要に応じて、本発明を阻害しない範囲内で、シリコーンゴムに添加され得る添加剤を添加することができる。添加剤としては、補強材、導電剤、充填剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋助剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、防錆剤などが挙げられる。
補強材としては、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、溶融シリカ、カーボンブラック、石英粉末、シリコーン粒子、珪藻土、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸亜鉛などが挙げられる。
エマルション発泡の場合、上記の(a)〜(d)を含むエマルションコンパウンド(発泡性のシリコーンゴム組成物)を調製する。エマルションコンパウンドは、(c)発泡剤として水を含む。エマルションコンパウンドは、オルガノポリシロキサン中に水が分散したW/O型エマルション(油中水型のシリコーンエマルション組成物)が好ましい。エマルションコンパウンドは、界面活性剤や、増粘剤、水泡を安定させる安定剤、水の沸点を制御する(上昇あるいは下降させる)添加剤などを含んでいてもよい。沸点上昇剤としては、塩などが挙げられる。塩水を用いると、100℃以上の高温成形が可能となる。
エマルションコンパウンドにおいて、オルガノポリシロキサン中に水を微分散させることにより、硬化後には、架橋シリコーンゴムを含有するベース材料中に、微細でばらつきの小さいセルを有する発泡架橋体が得られる。オルガノポリシロキサン中に水を微分散させるには、エマルションコンパウンドの粘度が重要である。エマルションコンパウンドの粘度は、0.1〜2000Pa・sの範囲内であることが好ましい。その粘度が0.1Pa・s以上であると、オルガノポリシロキサンが水滴を保持しやすく、微細でばらつきの小さい水泡にしやすい。そうすると、微細でばらつきの小さいセルを有する発泡架橋体が得られやすい。また、その粘度が2000Pa・s以下であると、オルガノポリシロキサン分子間の相互作用力が抑えられ、連通度を高くしやすい。エマルションコンパウンドの粘度は、より好ましくは1〜1000Pa・sの範囲内、さらに好ましくは10〜500Pa・sの範囲内である。エマルションコンパウンドの粘度は、オルガノポリシロキサンの粘度、水の含有量、増粘剤の添加などで調整することができる。エマルションコンパウンドの粘度は、B形粘度計を用い、25℃の条件により測定する。
オルガノポリシロキサンの粘度は、0.1〜2000Pa・sの範囲内が好ましい。より好ましくは1〜1000Pa・sの範囲内、さらに好ましくは10〜500Pa・sの範囲内である。オルガノポリシロキサンの粘度は、B形粘度計を用い、25℃の条件により測定する。オルガノポリシロキサンが両末端ビニルポリジメチルシロキサンの場合、分子量が高い(=粘度が高い)ほど架橋点が少なく(低架橋密度)反発性は低い傾向となる。架橋密度は、オルガノポリシロキサンの官能基(ビニル)量で調整することができる。官能基(ビニル)量が多いほど、架橋点が多くなり、架橋密度が高くなる。
エマルションコンパウンドにおいて、水の含有量を調節することで、エマルションコンパウンドの粘度や発泡倍率を調整することができる。水の含有量が多いほうが、粘度は高くなる。また、発泡倍率は高くなる。水の含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、30〜120質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは40〜110質量部の範囲内である。
界面活性剤は、親水領域と疎水領域を併せ持つ化合物である。界面活性剤としては、オルガノポリシロキサン中に水を分散させるために、HLB値が低い界面活性剤を用いるとよい。HLB値は、水と油への親和性の程度を表す値である。HLB値は、0から20までの値をとり、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高い。HLB値が低い界面活性剤を用いることで、オルガノポリシロキサン中に水が分散したW/O型エマルション(油中水型のシリコーンエマルション組成物)が得られる。界面活性剤のHLB値は、0〜15の範囲内が好ましい。より好ましくは3〜7の範囲内である。
用いる界面活性剤として好適な、HLB値が低い界面活性剤としては、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル、部分鹸化されたポリビニルアルコール、アルキルスルフェート、ポリオキシエチレン−オレイルエーテル、ポリオキシエチレン−ラウリルエーテル、エーテル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、オルガノポリシロキサンとの相溶性などの観点から、エーテル変性シリコーンオイルが好ましい。また、エーテル変性シリコーンオイルなどのオルガノポリシロキサンとの相溶性に優れる界面活性剤は、セル16の分布を均一にしやすい。このとき、エーテル変性シリコーンオイルなどのオルガノポリシロキサンとの相溶性に優れる界面活性剤のHLB値が3〜7の範囲内であると、より一層、セル16の分布を均一にしやすい。
界面活性剤は、セル16の大きさを調節することもでき、それに伴い、セル16間を連通しやすくする。エマルションコンパウンドにおいて、界面活性剤の含有量が多いと、セル16が小さくなりやすい。また、界面活性剤の含有量が多いと、圧縮永久歪の値が大きくなりやすい。このような観点から、セル16の大きさやセル16の連通度を調整するとよい。
エマルションコンパウンドにおける界面活性剤の含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、0.1〜5.0質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは0.5〜3.0質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜2.0質量部の範囲内である。
増粘剤は、粘度調整やエマルションの貯蔵安定性、成形時のエマルション安定性に効果がある。増粘剤の含有量は、水100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.10質量部以上である。また、エマルション中の微分散化などの観点から、増粘剤の含有量は、水100質量部に対し、6.0質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5.0質量部以下、さらに好ましくは4.0質量部以下である。
増粘剤としては、有機増粘剤と無機増粘剤がある。増粘剤としては、有機増粘剤がより好ましい。無機増粘剤は水に溶解しないため、繰り返し成形により成形金型に堆積する。有機増粘剤は水に溶解するため、繰り返し成形でも成形金型に堆積しない。成形金型に増粘剤が堆積すると、成形金型の内面に接触するシリコーンゴムコンパウンドの表面において水の合一が生じ、破泡によるセル16の肥大化が起こる結果、ニップ幅の均一性が低下する。有機増粘剤は、ニップ幅の均一性の点でより好ましい。
有機増粘剤としては、ポリ(メタ)アクリレート及びその金属塩、アルギン酸エステル、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸系化合物、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性セルロース、セルロースナノファイバー、キサンタンガム、ダイユータンガム、グァーガム誘導体などの天然高分子多糖類などが挙げられる。無機増粘剤としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライトおよびノントロナイト等の粘土鉱物を主成分とするベントナイトなどの天然または合成のスメクタイトクレーなどが挙げられる。これらのうちでは、エマルションの貯蔵安定性、成形時のエマルション安定性などの観点から、アルギン酸系化合物がより好ましい。
エマルションコンパウンドの攪拌は、粘度に合わせて、羽根攪拌、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ロール練りなどで行うことができる。
エマルション発泡によるシリコーンゴム発泡層14の作製は、以下の通りである。
(1)まず、エマルションコンパウンドを調製する。
(2)次に、成形温度に温調した金型へ調製したエマルションコンパウンドを注型し、成形温度を保ったまま所定時間保持し、シリコーンゴムを成形(硬化)させる。
(3)次に、成形物(硬化物)を脱型し、所定温度で所定時間保持し、成形物(硬化物)中の水を揮発除去する。
(2)の成形工程では、水の沸点よりも低い温度でシリコーンゴムを成形(硬化)することが好ましい。水の沸点よりも高い温度で成形すると、気泡の肥大化や形崩れなどが生じやすい。水の沸点よりも低い温度は、常温常圧下では100℃よりも低い温度であるが、好ましくは沸点マイナス5℃以下、さらに好ましくは沸点マイナス10℃以下である。ただし、水に沸点上昇剤を混合している場合は、その沸点を基準とする。架橋触媒としてマイクロカプセル型触媒を用いると、成形温度の制約下でも硬化速度(架橋速度)の低下を抑えることができる。硬化速度が速いことで、シリコーンゴムの硬化前における水泡の合一化が抑えられ、セルが大きくなりにくい。
(3)の加熱は、シリコーンゴムの2次キュアを行う工程を利用することができる。また、別途の加熱処理により行ってもよい。加熱条件は、少なくとも100℃以上の温度であり、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。加熱時間は、少なくとも0.5時間以上、好ましくは1.0時間以上である。シリコーンゴムの2次キュアは、成形物の圧縮永久歪をより低くさせたり、シリコーンゴム中に残存する低分子量のシロキサン成分の量を低減させたり、有機過酸化物の分解物を除去させたりすることができる。2次キュアの条件としては、好ましくは200℃以上、より好ましくは200〜250℃である。また、好ましくは所定温度で1時間以上、より好ましくは1〜10時間である。
バルーン発泡の場合、上記の(a)〜(d)を含む発泡性のシリコーンゴム組成物を調製する。発泡性のシリコーンゴム組成物は、(c)発泡剤として中空バルーンを含む。
(c)発泡剤としての中空バルーンは、熱可塑性ポリマーからなる殻(シェル)内に低沸点炭化水素を内包した、未膨張型または既膨張型の、熱膨張性のマイクロカプセル(マイクロスフェア)で構成される。熱膨張性のマイクロカプセルは、加熱により内包された低沸点炭化水素が膨張し、同時に熱可塑性ポリマーからなる殻(シェル)が軟化することによって急激に膨張し、中空状のバルーンとなる。
中空バルーンの殻を形成する熱可塑性ポリマーとしては、軟化温度や強度などから、アクリロニトリル系コポリマーが好ましい。中空バルーンの殻を形成する熱可塑性ポリマーの軟化点は、シリコーンの高速硬化、注型時及び注型後のバルーン変形抑制、発泡体成形後のバルーンの破壊及び連通化などの観点から、60〜260℃が好ましい。より好ましくは70〜170℃である。中空バルーンの平均粒子径は、微細でばらつきの小さい気泡を形成して柔軟性を向上するなどの観点から、5〜200μmが好ましい。より好ましくは10〜100μmである。中空バルーンの平均粒子径は、レーザー顕微鏡により測定されるメジアン径である。
発泡性のシリコーンゴム組成物において、中空バルーンの含有量は、特に限定されるものではないが、微細でばらつきの小さいセルを形成しやすいなどの観点から、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、0.1〜50質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは0.5〜10質量部の範囲内である。
バルーン発泡の場合、独立気泡が形成される。シリコーンゴム発泡層14の連通度を高くするために、連通化剤を含むことが好ましい。連通化剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。これらのうちでは、連通化効果などの観点から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが特に好ましい。連通化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、連通度の確保による圧縮永久歪の良化の観点から、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。また、シリコーン中の不純物の抑制による圧縮永久歪の良化などの観点から、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましい。より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
バルーン発泡の発泡性のシリコーンゴム組成物の攪拌は、粘度に合わせて、羽根攪拌、プラネタリーミキサー、ニーダー、ロール練りなどで行うことができる。
バルーン発泡によるシリコーンゴム発泡層14の作製は、以下の通りである。
(1)まず、中空バルーンを含む発泡性のシリコーンゴム組成物を調製する。
(2)次に、成形温度に温調した金型へ調製した発泡性のシリコーンゴム組成物を注型し、成形温度を保ったまま所定時間保持し、シリコーンゴムを成形(硬化)させる。
(3)次に、成形物(硬化物)を脱型し、所定温度で所定時間保持し、成形物(硬化物)中の中空バルーンの殻を形成する熱可塑性ポリマーを軟化させ、中空バルーンの殻を破壊する。
(2)の成形工程では、中空バルーンの殻を形成する熱可塑性ポリマーの軟化温度よりも低い温度でシリコーンゴムを成形(硬化)する必要がある。その軟化温度よりも高い温度で成形すると、セルの変形や潰れによるセルの消失などが生じる。
以上の構成の定着部材10によれば、シリコーンゴム発泡層14の、平均セル径が5.0〜20μmの範囲内であり、セル16の連通度が80%以上であり、密度が0.5〜0.8g/cmの範囲内であり、パルスNMRの緩和時間が4〜8の範囲内であることから、高ニップ幅と高反発性を両立することができる。
そして、シリコーンゴム発泡層14が有機増粘剤を含むと、成形型に増粘剤が堆積するのが抑えられ、定着部材10の表面におけるセルが均一となりやすく、軸方向においてニップ幅が均一となりやすい。
本発明に係る定着部材は、図1に示すように、基材12と1層のシリコーンゴム発泡層14のみで構成されていてもよいし、1層のシリコーンゴム発泡層14以外の他の層をさらに有する構成であってもよい。他の層としては、表層や中間層などが挙げられる。表層は、定着部材の表面に現れる層であり、定着部材の表面保護、表面特性の付与などの目的で設けられる。中間層は、基材12と1層のシリコーンゴム発泡層14との間や1層のシリコーンゴム発泡層14と表層の間などに1層以上設けられる。中間層は、密着性の向上、成分の他への拡散防止などの目的で設けられる。他の層として表層を設けない場合には、シリコーンゴム発泡層14の表面を改質する表面改質処理を施すことにより、表層を設ける場合と同様の機能を付与してもよい。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
使用した材料は以下の通りである。
・オルガノポリシロキサン(シリコーンゴム)<1>:Gelest社製「DMS−V05」、粘度4〜8Pa・s、ビニル基濃度2.9mmol/g
・オルガノポリシロキサン(シリコーンゴム)<2>:Gelest社製「DMS−V21」、粘度100Pa・s、ビニル基濃度0.37mmol/g
・オルガノポリシロキサン(シリコーンゴム)<3>:Gelest社製「DMS−V25」、粘度500Pa・s、ビニル基濃度0.13mmol/g
・オルガノポリシロキサン(シリコーンゴム)<4>:Gelest社製「DMS−V31」、粘度1000Pa・s、ビニル基濃度0.10mmol/g
・オルガノポリシロキサン(シリコーンゴム)<5>:Gelest社製「DMS−V41」、粘度10000Pa・s、ビニル基濃度0.04mmol/g
・架橋剤:ヒドロシリル架橋剤、Gelest社製「HMS−301」
・遅延剤:3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(試薬)
・シリカ:日本アエロジル製「アエロジルRX200」
・界面活性剤:信越化学工業製「KF−6017」
・有機増粘剤:キミカ製「キミロイドHV」
・無機増粘剤:クニミネ工業製「スメクトンSA」
〔マイクロカプセル型触媒の作製〕
白金触媒のトルエン溶液(白金金属原子として3質量%含有)、微粒子化に用いる被覆樹脂(PVB)、トルエンを0.6:5:95の比率(質量比)で混合し、この溶液を界面活性剤の水溶液へ滴下し、エマルションを作製した。その後、トルエンを減圧留去し、ろ過することで、被覆樹脂および白金触媒を含有する微粒子を得た。
・白金触媒:塩化白金(IV)酸、株式会社フルヤ金属社製
・ポリビニルブチラール(PVB):クラレ製「Mowital B30HH」、SP値8.8、Tg=59℃
(実施例1〜8、比較例1〜5)
(エマルションコンパウンドの調製)
オルガノポリシロキサン、マイクロカプセル型触媒(MC型触媒)、架橋剤、遅延剤、シリカを混合・攪拌し、シリコーンゴムコンパウンドを得た。次いで、得られたシリコーンゴムコンパウンドに対し、界面活性剤を混合・分散させた後、さらに発泡剤として増粘剤を含む増粘水(水100:増粘剤0.50)を混合・攪拌することにより、エマルションコンパウンドを得た。配合組成(質量部)は表1、2の通りである。
(定着部材の作製)
成形金型を用い、エマルションコンパウンドを成形温度(90℃)に温調した成形金型へ注型し、成形温度を保ったまま45分間保持し、シリコーンゴムを硬化させた。その後、脱型し、200℃の恒温槽で2時間保持することで、シリコーンゴム硬化物中の水を揮発・除去することにより、シリコーンゴム発泡体からなるシリコーンゴム発泡層を形成した。以上により、定着部材(直径φ29mm×長さ12.5mm)を作製した。
得られた定着部材について、下記の各測定・評価を行った。その結果を表1,2に示す。また、実施例7,8については、1000回の繰り返し成形を行い、増粘剤の種類による評価への影響を調べた。
(平均セル径)
得られた定着部材(円柱片)の断面をレーザー顕微鏡で撮影し、任意の3箇所で撮影範囲200μm角に写るセルの90%について直径を測定し、その平均を算出することにより平均セル径を求めた。
(セル連通度)
得られた定着部材(円柱片)から10×10×3mmの試験片を切り出した。次いで、蒸留水100質量部に対しエーテル変性シリコーンオイル(信越化学工業社製「KF−618」)3質量部を加えた検液を調製した。次いで、別途作製した未発泡体の比重a、試験片の比重b、試験片の質量cをそれぞれ測定した。次いで、検液の入った容器中に試験片を沈め、浮かないように容器の底に試験片を固定した後、減圧下(70mmHg以下)で10分間放置し、試験片内への検液の浸透を促した。その後、常圧に戻し、検液から試験片を取り出し、付着している水をふき取った後、吸水している試験片の質量dを測定した。以下の式(1)から試験片の吸水率を求め、以下の式(2)から連通度を求めた。
(式1)
吸水率(%)={(吸水後の試験片の質量d−吸水前の試験片の質量c)/(吸水前の試験片の質量c)}×100 ・・・(1)
(式2)
連通度(%)=(試験片の比重b×吸水率/100)/{検液の比重−(試験片の比重b/未発泡体の比重a)}×100 ・・・(2)
(密度)
得られた定着部材(円柱片)から切り出した試験片(10×10×3mm)の比重bから密度を求めた。
(架橋密度)
パルスNMRにて定着部材(円柱片)から切り出した試験片の緩和時間(A)を測定した。緩和時間の逆数(1/A)を架橋密度の指標とした。パルスNMRの測定は、試験片の100〜200mgをNMR試験管・装置にセットし、測定温度150℃、Hahn−Echo法により実施した。
(ニップ幅)
定着部材(円柱片)の周面に40N荷重でスライドガラス(25mm×75mm×厚み1.2mm)を押し当て、その接触幅を計測し、ニップ幅とした。ニップ幅が20mm以上であった場合を特に高ニップ幅「◎」、ニップ幅が17mm以上20mm未満であった場合を高ニップ幅「○」、ニップ幅が17mm未満であった場合を低ニップ幅「×」とした。
(反発性)
定着部材(円柱片)の周面のアスカーC硬度を測定した。アスカーC硬度が36以上であった場合を特に高反発性「◎」、アスカーC硬度が30以上36未満であった場合を高反発性「○」、アスカーC硬度が30未満であった場合を低反発性「×」とした。
Figure 2020052315
Figure 2020052315
実施例および比較例によれば、シリコーンゴム発泡層の平均セル径が3.0〜20μmの範囲内であり、セルの連通度が80%以上であり、密度が0.50〜0.80g/cmの範囲内であり、パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が0.60〜1.60の範囲内であることで、高ニップ幅と高反発性を両立できることがわかる。比較例1は、パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が0.60未満であり、架橋密度が低すぎるので、反発性を満足しない。比較例5は、パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が1.60超であり、架橋密度が高すぎるので、ニップ幅を満足しない。比較例2は、平均セル径が20μm超であり、セル径が大きすぎるため、ニップ幅を満足しない。比較例3は、セル連通度が80%未満であり、ニップ幅を満足しない。比較例4は、シリコーンゴム発泡層の密度が0.80g/cm超であり、ニップ幅を満足しない。
実施例同士の比較では、実施例1〜3から、パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が0.70〜1.20の範囲内であることで、高ニップ幅と高反発性をより高度に両立できることがわかる。また、パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)の値が大きくなるとニップ幅が小さくなる傾向にあることがわかる。実施例1,4から、平均セル径が大きくなると、ニップ幅が小さくなる傾向にあることがわかる。実施例1,5,6から、セル連通度が小さくなると、ニップ幅が小さくなる傾向にあることがわかる。実施例7,8から、エマルションコンパウンドの増粘剤として有機増粘剤を用いると、繰り返し成形した場合にニップの悪化(ニップ幅が短くなる)が抑えられることがわかる。
以上、本発明の実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能なものである。
10 定着部材
12 基材
14 シリコーンゴム発泡層
16 セル

Claims (3)

  1. 基材と、前記基材の外側に形成されたシリコーンゴム発泡層と、を有する電子写真機器の定着部材であって、
    前記シリコーンゴム発泡層は、平均セル径が3.0〜20μmの範囲内であり、セルの連通度が80%以上であり、密度が0.50〜0.80g/cmの範囲内であり、パルスNMRの緩和時間の逆数(1/A)が0.60〜1.60の範囲内であることを特徴とする定着部材。
  2. 前記シリコーンゴム発泡層は、油中水型のシリコーンエマルション組成物から形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の定着部材。
  3. 前記シリコーンゴム発泡層は、有機増粘剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の定着部材。
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