JP7063678B2 - 定着部材 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真機器の定着工程において好適に用いられる電子写真機器の定着部材に関し、さらに詳しくは、弾性層としてシリコーンゴム発泡層を有する電子写真機器の定着部材に関するものである。
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器では、記録媒体(紙など)にトナー像を形成し、これを定着部材で加熱・加圧して定着させることにより画像を形成している。電子写真機器の定着部材は、定着ロールや定着ベルト、加圧ロールなどの回転体で構成されている。定着部材は、芯金などの軸体の外周に弾性層を有する。
例えば特許文献1には、円筒状の基体の外周にシリコーンエラストマー製の多孔質体層を有する定着用回転体が記載されている。特許文献1では、多孔質体層のセルが特定条件を満足することが記載されている。また、特許文献2には、金属製芯金を被覆する発泡シリコーンゴム層を有する定着用のスポンジロールが記載されている。特許文献2では、発泡シリコーンゴム層の平均セル径が、外側領域よりも芯金側領域のほうが小さいことが記載されている。
特許第5190855号公報 特許第5080003号公報
定着工程において、定着部材の弾性層には、厚み方向の圧縮力と周方向のせん断力がかかる。このため、定着部材の弾性層には、適度な弾性とともに、圧縮荷重に対する回復性(耐ヘタリ性)と破壊しない強さ(耐久性)が求められる。弾性層としてシリコーンゴム発泡層を有する定着部材では、耐ヘタリ性と耐久性に課題があった。
本発明が解決しようとする課題は、耐ヘタリ性と耐久性に優れる電子写真機器の定着部材を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る電子写真機器の定着部材は、軸体と、前記軸体の外周に形成されたシリコーンゴム発泡層と、を有する電子写真機器の定着部材であって、前記シリコーンゴム発泡層は、厚み方向において、相対的にセルが小さい内側部と相対的にセルが大きい外側部の2つの領域を有し、前記内側部の厚みは、前記シリコーンゴム発泡層の厚みの40%以下であり、前記内側部において、全セルの75%以上の割合のセルの長径が25μm以下であり、セルの長径に対する短径の比(短径/長径)が0.8以上1.0以下であり、前記外側部において、セルの長径に対する短径の比(短径/長径)が0.5以上1.0以下であり、セルの連通度が60%以上であり、前記内側部のセルの平均長径が、前記外側部のセルの平均長径よりも小さいことを要旨とするものである。
前記内側部の厚みは、前記シリコーンゴム発泡層の厚み方向の内側5%以内の領域にあるセルの平均長径の150倍以下であることが好ましい。前記内側部におけるセル間距離の標準偏差は、前記内側部のセルの平均長径と前記内側部の発泡倍率の比(平均長径/発泡倍率)の3.0倍以下であることが好ましい。前記内側部の発泡倍率は、1.1倍以上2.5倍以下であることが好ましい。前記外側部の発泡倍率は、1.5倍以上3.0倍以下であることが好ましい。前記シリコーンゴム発泡層は、油中水型のシリコーンエマルション組成物から形成されたものであることが好ましい。
本発明に係る電子写真機器の定着部材によれば、シリコーンゴム発泡層が上記構成であることから、周方向のせん断力がかかりやすい軸体近傍の内側部の強度に優れ、周方向のせん断力による破壊が抑えられ、耐久性に優れるとともに、厚み方向の圧縮変形量が大きい表面側の外側部の圧縮永久歪の値が低くなり、厚み方向の圧縮変形に対し耐ヘタリ性に優れる。
そして、内側部の厚みがシリコーンゴム発泡層の厚み方向の内側5%以内の領域にあるセルの平均長径の150倍以下であると、内側部の厚みの影響が小さいため、耐ヘタリ性に対する内側部の影響が小さくなり、耐ヘタリ性が向上する。そして、内側部におけるセル間距離の標準偏差が上記範囲であり、セルの分布が比較的均一であると、内側部の強度が向上し、周方向のせん断力により対抗できるため、耐久性により優れる。そして、内側部の発泡倍率が上記範囲であり、比較的低い倍率であると、内側部の強度が向上し、耐久性により優れる。また、外側部の発泡倍率が上記範囲であり、比較的高い倍率であると、硬度を低減できるため、内側部へかかる圧縮応力を低減でき、耐久性により優れる。また、断熱性にも優れ、材料コストの低減も図れる。
本発明の一実施形態に係る定着部材の径方向断面図である。 定着工程を説明する模式断面図である。 シリコーンゴム発泡層の内側部の拡大断面図(a)と外側部の拡大断面図(b)である。 セル間距離の標準偏差の算出方法を説明する模式図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の構成について具体的に明らかにする。
図1には、本発明の一実施形態に係る電子写真機器の定着部材を示している。図2には、定着工程を説明する模式図を示している。図3(a)には、シリコーンゴム発泡層の内側部の拡大断面図を示している。図3(b)には、シリコーンゴム発泡層の外側部の拡大断面図を示している。図4には、セル間距離の標準偏差の算出方法を説明する模式図を示している。
図1に示すように、定着部材10は、軸体12と、軸体12の外周に形成されたシリコーンゴム発泡層14と、を有している。定着部材10は、複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器の定着工程において好適に用いられる電子写真機器の定着部材である。
図2に示すように、電子写真機器の定着工程では、加圧ロール1と定着ロール2が定着ベルト3を挟んで所定のニップ幅にて圧接した状態とされ、所定のニップ幅にて圧接しながら共回りする。例えば定着ベルト3が図示しない熱源によって加熱される。定着ロール2が押圧する定着ベルト3と加圧ロール1の間に、未定着状態のトナーを保持する記録媒体3を通過させ、記録媒体3を加熱・加圧することによって記録媒体3にトナーを定着し、画像を形成する。定着部材10は、このような定着ロール2や定着ベルト3、加圧ロール1などとして用いることができる。
定着部材10において、軸体12は、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などで構成される。シリコーンゴム発泡層14は、架橋シリコーンゴムを含有するベース材料(固相)中に複数のセル(気泡)16を有するシリコーンゴム発泡体からなる。シリコーンゴム発泡層14は、ベース材料中に複数のセル16を有することにより、セル16を含んでいない充実弾性体層よりも柔軟性に優れ、低硬度なものとなっている。また、セル16の分だけ充実弾性体層よりも材料の使用量が低減するので、材料コストの低減にも貢献する。さらに、セル16を有することにより断熱性にも優れる。
シリコーンゴム発泡層14は、厚み方向において、相対的にセルが小さい内側部14aと相対的にセルが大きい外側部14bの2つの領域を有する。内側部14aと外側部14bの間には、明確な境界が存在していてもよいし、存在していなくてもよい。また、例えば厚み方向の内側から外側にかけてセル16の大きさがだんだんと大きくなるような構成であってもよい。内側部14aと外側部14bは、セル16の大きさに差がある。すなわち、内側部14aのセル16aの平均長径が、外側部14bのセル16bの平均長径よりも小さくなっている。
内側部14aのセル16aは、比較的小さいセルからなる。具体的には、全セルの75%以上の割合のセル16aの長径が25μm以下となっている。また、内側部14aのセル16aは、球形に近い、真円度の高いセルからなる。具体的には、セル16aの長径に対する短径の比(短径/長径)が0.8以上1.0以下となっている。内側部14aは、セル16aの径が小さくセル16aが球形に近いことで、強度が高くなる。シリコーンゴム発泡層14のうち、軸体近傍の内側部14aには、定着工程において周方向のせん断力がかかりやすい。内側部14aの強度を高くすることで、周方向のせん断力による破壊が抑えられ、耐久性に優れる。
セル16aの長径は、セル16a内の最も長い部分の長さであり、セル16aの短径は、セル16a内の最も短い部分の長さである。セル16aの長径および短径は、レーザー顕微鏡を用いて撮影した内側部14aの断面写真から測定することができる。セル16aの長径および短径は、任意の3箇所で撮影範囲200μm角に写るセル16aの90%について長径および短径を測定し、その平均を算出することにより求めることができる。
内側部14aにおいて、セル16aの長径が25μm以下のセルの割合は、より好ましくは全セルの80%以上、さらに好ましくは全セルの85%以上である。その割合が多いほど、内側部14aの強度が向上し、周方向のせん断力による破壊が抑えられやすい。
内側部14aのセル16aの平均長径は、全セルの75%以上の割合のセルの長径が25μm以下となっていれば特に限定されるものではないが、耐久性の向上効果により優れるなどの観点から、25μm以下、15μm以下、10μm以下が好ましい。また、耐ヘタリ性の向上効果により優れるなどの観点から、5.0μm以上、7.0μm以上が好ましい。
内側部14aにおいて、セル16aは比較的均一に分布していることが好ましい。セル16aの分布が均一であるほど、強度のより低い部分が形成されにくくなり、さらに圧縮時の応力集中を抑制できるため、圧縮応力と周方向のせん断力による破壊が発生しにくくなる。これにより、耐久性が向上する。セル16aの分布の均一性は、セル間距離の標準偏差から評価することができる。セル間距離の標準偏差が小さいほど、セル間距離のばらつきが小さいため、セル16aの分布がより均一であるといえる。内側部14aにおいて、セル間距離の標準偏差は、内側部14aのセル16aの平均長径と内側部14aの発泡倍率の比(平均長径/発泡倍率)の3.0倍以下であることが好ましい。より好ましくは2.5倍以下、さらに好ましくは2.0倍以下である。
セル間距離の標準偏差は、次のようにして算出することができる。図4に示すように、一のセル161と隣接するセル162の中心を結んだ線l1を直径とする仮想円c1を引き、仮想円c1の内側に他のセルの中心が存在している場合(この場合、セル163の中心が仮想円c1の内側に存在している)には、線l1を削除する。一のセル161と隣接するセル164の中心を結んだ線l2を直径とする仮想円c2を引き、仮想円c2の内側に他のセルの中心が存在していないセル164を、一のセル161に対する隣接セルとして抽出する。一のセル161に対し、このようにして抽出された各隣接セル163,164,165,166,167と一のセル161との中心間を結ぶ線分の長さをセル間距離とし、一のセル161の中心から引かれる複数の線分l2,l3,l4,l5,l6の長さを求める。同じようにして、内側部14aの所定の領域内にあるセルの90%のセルについてセル間距離を求める。求めた複数のセル間距離の標準偏差から、セル間距離の標準偏差を算出することができる。セルの中心は、セルの長径と短径の交点である。
内側部14aの発泡倍率は、比較的低いことが好ましい。内側部14aの発泡倍率が低いと、セル16aとセル16aの間を仕切っているセル壁の割合が多くなるため、内側部14aの強度が向上し、周方向のせん断力による破壊が抑えられやすい。内側部14aの発泡倍率は、2.5倍以下であることが好ましい。より好ましくは2.0倍以下である。一方、断熱性、材料コスト低減などの観点から、内側部14aの発泡倍率は、1.1倍以上であることが好ましい。より好ましくは1.3倍以上である。発泡倍率は、ベース材料の組成から算出することができる。また、ベース材料の比重と内側部14aの質量および体積から算出することができる。また、レーザ顕微鏡を用いて撮影した内側部14aの断面写真から算出することができる。
内側部14aのセル16aは、一部または全部が、セル16aとセル16aが繋がっていない単泡であってもよいし、セル16aとセル16aが繋がっている連泡であってもよい。耐久性の観点から、内側部14aのセル16aは、単泡の割合が多いほうが好ましい。この観点から、内側部14aのセル16aの連通度は、40%以下であることが好ましい。より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。内側部14aのセル16aの連通度は、外側部14bと分離した内側部14aのみについて、液体の吸収量を基準に求めることができる。液体の吸収量が多いほど、セル16aが多く連通している。
内側部14aの厚みは、セル16aの平均長径の150倍以下であることが好ましい。より好ましくは120倍以下である。また、内側部14aの厚みは、セル16aの平均長径の5倍以上であることが好ましい。より好ましくは10倍以上である。内側部14aの厚みが薄いほど耐ヘタリ性への影響が小さくなり、内側部14aの厚みが厚いほど耐久性への影響が大きくなる。
外側部14bのセル16bは、比較的大きいセルからなる。すなわち、外側部14bのセル16bの平均長径は、内側部14aのセル16aの平均長径よりも大きくなっている。外側部14bのセル16bが比較的大きいことで、外側部14bの圧縮永久歪の値が低くなり、外側部14bが厚み方向の圧縮変形に対し耐ヘタリ性に優れる。外側部14bのセル16bの平均長径は、内側部14aのセル16aの平均長径よりも大きくなっていれば特に限定されるものではないが、好ましくは8~100μmの範囲内、より好ましくは8~50μmの範囲内、さらに好ましくは12~50μmの範囲内である。また、外側部14bのセル16bの平均長径と内側部14aのセル16aの平均長径の比(外側部14b/内側部14a)は、1.4倍以上5.0倍以下であることが好ましい。
外側部14bのセル16bは、球形に近い、真円度の高いセルからなる。具体的には、セル16bの長径に対する短径の比(短径/長径)が0.5以上1.0以下となっている。また、外側部14bのセル16bは、セル16bとセル16bが繋がっている連泡の割合が多く、連通度が高く設定されている。具体的には、外側部14bのセル16bの連通度は、60%以上となっている。外側部14bは、厚み方向の圧縮変形量が大きい表面側に位置しており、セル16bの真円度が高くセル16bの連通度が高いことで、圧縮永久歪の値が低くなり、厚み方向の圧縮変形に対し耐ヘタリ性に優れる。外側部14bのセル16bの連通度は、内側部14aと分離した外側部14bのみについて、液体の吸収量を基準に求めることができる。液体の吸収量が多いほど、セル16bが多く連通している。外側部14bにおいて、セル16bの連通度は、耐ヘタリ性の向上効果により優れるなどの観点から、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上である。
外側部14bの発泡倍率は、比較的高いことが好ましい。外側部14bの発泡倍率が高いと、厚み方向の圧縮変形量が大きい表面側の外側部14bの圧縮永久歪の値が低くなり、厚み方向の圧縮変形に対し耐ヘタリ性に優れる。また、シリコーンゴム発泡層14全体の発泡倍率が高くなるため、断熱性の向上、軽量化、低硬度などに利点がある。断熱性に優れる場合、定着工程における加熱部材に接する部材として好適に用いることができる。外側部14bの発泡倍率は、1.5倍以上であることが好ましい。より好ましくは1.7倍以上である。一方、紙にトナーを定着させる際の応力の保持、耐久性、耐ヘタリ性などの観点から、外側部14bの発泡倍率は、3.0倍以下であることが好ましい。より好ましくは2.5倍以下である。発泡倍率は、ベース材料の組成から算出することができる。また、ベース材料の比重と外側部14bの質量および体積から算出することができる。また、レーザ顕微鏡を用いて撮影した外側部14bの断面写真から算出することができる。
外側部14bの厚みは、特に限定されるものではないが、シリコーンゴム発泡層14の柔軟性、断熱性を確保するなどの観点から、2.0mm以上であることが好ましい。より好ましくは4.0mm以上である。また、耐久性、製品コストなどの観点から、10mm以下であることが好ましい。より好ましくは8.0mm以下である。
シリコーンゴム発泡層14は、軸体12の外周に発泡性のシリコーンゴム組成物を発泡架橋してロール状に成形することにより形成することができる。シリコーンゴム発泡層14は、内側部14aと外側部14bの2層で構成されているが、例えば、軸体12の外周に内側部14aを形成した後、内側部14aの外周に外側部14bを形成することにより、内側部14aと外側部14bの2層で構成されるシリコーンゴム発泡層14を形成することができる。
発泡方法は、特に限定されるものではなく、エマルション発泡、バルーン発泡、機械発泡、化学発泡などが挙げられる。エマルション発泡は、未硬化材料に水を分散させておき、その分散状態で材料を硬化させ、硬化後に硬化物から水を除去する発泡方法である。バルーン発泡は、中空粒子を未硬化材料に分散させておき、その分散状態で材料を硬化させる発泡手法である。硬化後に硬化物中の中空粒子の殻(バルーン)を破壊、分解等により硬化物とセルの界面から殻を除去する発泡方法である。機械発泡は、外部から強制的に材料中へ炭酸ガスなどのガスを混入させ、機械的に攪拌・発泡させる方法である。化学発泡は、有機あるいは無機の化学発泡剤を用いて材料の硬化時(成形時)に発泡させる発泡方法である。これらの発泡方法のうちでは、硬化中に気泡を発生させる化学発泡よりも、硬化前(成形前)から材料中に泡を含む発泡方法であり泡を含む状態をそのまま硬化するものである機械発泡、エマルション発泡、バルーン発泡のほうが、セルの大きさを均一で小さくしやすい点で好ましい。
発泡性のシリコーンゴム組成物は、(a)オルガノポリシロキサン、(b)架橋剤、(c)発泡剤、(d)架橋触媒、を含有する。
(a)オルガノポリシロキサンは、(b)架橋剤により架橋される官能基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。官能基含有オルガノポリシロキサンとしては、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、水酸基含有オルガノポリシロキサン、(メタ)アクリル基含有オルガノポリシロキサン、イソシアネート含有オルガノポリシロキサン、アミノ基含有オルガノポリシロキサン、エポキシ基含有オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。これらのうちでは、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンが好ましい。アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、例えば付加硬化型のシリコーンゴム組成物の主原料として用いられる。アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル架橋剤との付加反応で、ヒドロシリル架橋剤により架橋される。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、上記官能基に加えて、有機基を有する。有機基は、1価の置換または非置換の炭化水素基である。非置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、β-フェニルエチル基、β-フェニルプロピル基などのアラルキル基などが挙げられる。置換の炭化水素基としては、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などが挙げられる。オルガノポリシロキサンとしては、一般的には、有機基としてメチル基を有するものが、合成のしやすさ等から多用される。オルガノポリシロキサンは、直鎖状のものが好ましいが、分岐状もしくは環状のものであっても良い。
(b)架橋剤は、(a)オルガノポリシロキサンを架橋する架橋剤である。(b)架橋剤としては、ヒドロシリル架橋剤、過酸化物架橋剤などが挙げられる。これらのうちでは、ヒドロシリル架橋剤が好ましい。
ヒドロシリル架橋剤は、付加硬化型のシリコーンゴム組成物の架橋剤として用いられる。ヒドロシリル架橋剤は、その分子構造中にヒドロシリル基(SiH基)を有する。ヒドロシリル架橋剤は、ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)である。分子構造中におけるヒドロシリル基の数としては、特に限定されるものではないが、硬化速度に優れる、安定性に優れるなどの観点から、2~50の範囲内であることが好ましい。分子構造中にヒドロシリル基を2以上有する場合には、ヒドロシリル基は異なるSiに存在することが好ましい。ポリシロキサンは、鎖状のものでも良いし、環状のものでも良い。ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有することが好ましい。ヒドロシリル架橋剤は、取り扱い性に優れるなどの観点から、数平均分子量200~30000の範囲内であることが好ましい。
ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)は、具体的には、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体などが挙げられる。
ヒドロシリル架橋剤の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~40質量部の範囲とされる。
有機過酸化物としては、ベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルペルオキシド、クミル-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、ジ-t-ブチルペルオキシドなどが挙げられる。これらのうちでは、特に低い圧縮永久歪を与えることから、ジクミルペルオキシド、クミル-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、ジ-t-ブチルペルオキシドが好ましい。
有機過酸化物の添加量は、特に限定されるものではないが、通常、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~10質量部の範囲とされる。
(c)発泡剤は、発泡方法に応じて、所定の発泡剤が用いられる。発泡剤としては、エマルション発泡の水、バルーン発泡の中空粒子、機械発泡のガス、化学発泡の化学発泡剤が挙げられる。化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミドなどの有機発泡剤や重炭酸ナトリウムなどの無機発泡剤などが挙げられる。
(d)架橋触媒は、(b)架橋剤による(a)オルガノポリシロキサンの架橋反応を促進する触媒である。(d)架橋触媒としては、ヒドロシリル化触媒としての白金触媒、ルテニウム触媒、ロジウム触媒などが挙げられる。白金触媒としては、微粒子状白金、白金黒、白金担持活性炭、白金担持シリカ、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(d)架橋触媒は、樹脂を用いてマイクロカプセル化されてもよい。マイクロカプセル型触媒(マイクロカプセル化触媒)は、架橋触媒を内包する樹脂微粒子からなる。架橋触媒を内包する樹脂微粒子は、少なくとも室温において固体であり、平均粒子径が30μm以下である。平均粒子径は、レーザー顕微鏡により測定される。架橋触媒を内包する樹脂微粒子の平均粒子径は、架橋触媒の分散性を高めるなどの観点から、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以下である。また、作製時の微粒子回収率を高めるなどの観点から、0.1μm以上であることが好ましい。より好ましくは2μm以上である。
架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂は、特に限定されるものではないが、溶解度パラメータ(SP値)7.9以上であることが好ましい。組成物のベースポリマーであるオルガノポリシロキサン(シリコーンポリマー)の溶解度パラメータを大きく外れる溶解度パラメータとすることで、オルガノポリシロキサンとの相溶性を下げ、貯蔵中において樹脂微粒子の溶解あるいは膨潤を抑え、内包する架橋触媒の徐放性を抑制し、貯蔵安定性を向上することができる。溶解度パラメータ8.3以上とすることで、オルガノポリシロキサンとの相溶性をさらに下げ、貯蔵安定性を格段に向上することができる。また、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂は、溶解度パラメータ20以下であることが好ましい。より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。溶解度パラメータ20以下であると、水の溶解度パラメータ(23.4)から離れるので、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂と水の相溶化、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂と界面活性剤の親水部との相互作用などが抑えられ、後述するエマルションの形成を妨げにくく、発泡倍率の低下やセル(気泡)のバラツキを抑えやすい。溶解度パラメータは、Smallの計算法により分子構造から算出することができる。
架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂は、特に限定されるものではないが、ガラス転移温度(Tg)40~145℃であることが好ましい。ガラス転移温度145℃以下とし、加熱温度と樹脂の溶融温度に差を設けることで、加熱時(反応時)における樹脂の溶融開始時間を早め、架橋触媒の拡散量増加による架橋反応性の向上を図ることができる。この場合、ガラス転移温度100℃以下、あるいは85℃以下とすると、例えば120℃や100℃の低温架橋反応においても樹脂の溶融開始時間を早くして架橋触媒の拡散量増加による架橋反応性の向上を図ることができるため、低温での架橋反応性にも優れる。ただし、樹脂が室温で軟化溶融し、貯蔵安定性を損なわないために、ガラス転移温度40℃以上とすることが好ましい。より好ましくはガラス転移温度45℃以上、あるいは50℃以上である。ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)により測定することができる。
架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂は、特に限定されるものではないが、熱伝導率0.16W/m・K以上とすることが好ましい。組成物のベースポリマーであるオルガノポリシロキサン(シリコーンポリマー)の熱伝導率よりも高くすることで、加熱時(反応時)における樹脂の溶融速度を速くして、架橋触媒の拡散性向上による架橋反応性の向上を図ることができる。熱伝導率0.17W/m・K以上、さらには0.20W/m・K以上とすることで、架橋反応性を格段に向上することができる。熱伝導率は、ASTM C177に準拠して測定することができる。
架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。樹脂微粒子の樹脂は、架橋されることにより圧縮永久歪の低下を抑えられるなどの観点から、熱硬化性樹脂がより好ましい。架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン系重合体、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、水添テルペン樹脂などが挙げられる。これらは、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂として1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。熱硬化性樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、レゾール樹脂、アルキド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられる。架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂としては、架橋触媒の反応性を阻害しないなどの観点から、樹脂組成中にアミンやアミドなどの窒素化合物、リン、硫黄などの化合物を含まないことがより好ましい。各樹脂は、同種の材料内でそれぞれ溶解度パラメータやガラス転移温度の異なるものを含むことから、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂として各樹脂のいずれか1種を単独で用いる場合でも、物性値の異なる材料を組み合わせて所定の物性値に調整することができる。また、架橋触媒を内包する樹脂微粒子の樹脂として上記樹脂のうちの2種以上を組み合わせて用いる場合でも、物性値の異なる材料を組み合わせて所定の物性値に調整することができる。
アクリル樹脂には、アクリレートをモノマーとして含むポリマーとメタクリレートをモノマーとして含むポリマーの両方が含まれる。また、アクリレートおよびメタクリレートをモノマーとして含むポリマーも含まれる。これらのうちでは、常温で固体状態を維持できるなどの観点から、アクリレートおよびメタクリレートをモノマーとして含むポリマー、メタクリレートのみをモノマーとして含むポリマーがより好ましい。アクリル樹脂は、単一のモノマーから合成される単重合体であってもよいし、2種以上のモノマーから合成される共重合体であってもよい。アクリル樹脂としては、ガラス転移温度を100℃以下あるいは85℃以下の低温に調整しやすいなどの観点から、共重合体であることが好ましい。アクリル樹脂のうちでは、ガラス転移温度を85℃以下の低温にすることができるなどの観点から、エチルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体が特に好ましい。
アクリルモノマー、メタクリルモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート・プロピル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート・イソアミル(メタ)アクリレート・2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート・ラウリル(メタ)アクリレート・ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート・クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート・3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・β-ヒドロキシ-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート・エトキシエチル(メタ)アクリレート・ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート・ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート・メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート・メトキシジプロピレングレコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート・2,2-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート・2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキルジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコール等のエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン等の多価ビニル化合物等を挙げることができる。
スチレン系重合体は、単一のモノマーから合成される単重合体であってもよいし、2種以上のモノマーから合成される共重合体であってもよい。スチレン系重合体としては、共重合体であることが好ましい。スチレン系重合体としては、スチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA)、スチレン-ブタジエン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン共重合体(SIS)、水添スチレン-ブタジエン共重合体(SEBS)、水添スチレン-イソプレン共重合体(SEPS)、スチレン-アクリロニトリル共重体(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重体(ABS)などが挙げられる。
マイクロカプセル型触媒は、従来公知の方法で製造することができる。生産性、球状度などの観点から、懸濁重合法、乳化重合法、スプレードライヤー法、液中乾燥法などが好ましい。
懸濁重合法や乳化重合法により製造する場合、架橋触媒を固体状の芯物質とし、これを溶解しない有機溶媒中に分散させ、この分散液中でモノマーを懸濁重合法や乳化重合法などの重合法により重合させることにより、芯物質の表面を重合体が被覆する。これにより、架橋触媒が樹脂微粒子に内包されてなるマイクロカプセル型触媒が得られる。
液中乾燥法により製造する場合、架橋触媒、カプセル化する樹脂を水に不溶の有機溶剤に溶解させ、この溶液を界面活性剤の水溶液へ滴下しエマルジョンを作製する。その後、減圧し有機溶剤を除去した後、ろ過によりカプセル化触媒を得る。
マイクロカプセル型触媒における架橋触媒の金属原子含有量は、十分に樹脂に覆われて優れた貯蔵安定性を確保できる観点から、5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは2質量%以下である。また、優れた触媒活性を確保する観点から、0.01質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.1質量%以上である。
組成物におけるマイクロカプセル型触媒の含有量は、マイクロカプセル型触媒における架橋触媒の含有量にもよるが、マイクロカプセル型触媒における架橋触媒の含有量が上記の所定範囲内である場合には、オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01~5.0質量部の範囲内とすることができる。また、架橋触媒が金属触媒である場合には、金属量に換算して、通常、オルガノポリシロキサン100質量部に対して1ppm~1.0質量部の範囲とされる。
発泡性のシリコーンゴム組成物は、必要に応じて、本発明を阻害しない範囲内で、シリコーンゴムに添加され得る添加剤を添加することができる。添加剤としては、補強材、導電剤、充填剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋助剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、防錆剤などが挙げられる。
補強材としては、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、溶融シリカ、カーボンブラック、石英粉末、シリコーン粒子、珪藻土、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸亜鉛などが挙げられる。
エマルション発泡の場合、上記の(a)~(d)を含むエマルションコンパウンド(発泡性のシリコーンゴム組成物)を調製する。エマルションコンパウンドは、(c)発泡剤として水を含む。エマルションコンパウンドは、オルガノポリシロキサン中に水が分散したW/O型エマルション(油中水型のシリコーンエマルション組成物)が好ましい。エマルションコンパウンドは、界面活性剤や、増粘剤、水泡を安定させる安定剤、水の沸点を制御する(上昇あるいは下降させる)添加剤などを含んでいてもよい。沸点上昇剤としては、塩などが挙げられる。塩水を用いると、100℃以上の高温成形が可能となる。
エマルションコンパウンドにおいて、オルガノポリシロキサン中に水を微分散させることにより、硬化後には、架橋シリコーンゴムを含有するベース材料中に、微細でばらつきの小さいセルを有する発泡架橋体が得られる。オルガノポリシロキサン中に水を微分散させるには、エマルションコンパウンドの粘度が重要である。エマルションコンパウンドの粘度は、0.1~2000Pa・sの範囲内であることが好ましい。その粘度が0.1Pa・s以上であると、オルガノポリシロキサンが水滴を保持しやすく、微細でばらつきの小さい水泡にしやすい。そうすると、微細でばらつきの小さいセルを有する発泡架橋体が得られやすい。また、その粘度が2000Pa・s以下であると、オルガノポリシロキサン分子間の相互作用力が抑えられ、連通度を高くしやすい。エマルションコンパウンドの粘度は、より好ましくは1~1000Pa・sの範囲内、さらに好ましくは10~500Pa・sの範囲内である。エマルションコンパウンドの粘度は、オルガノポリシロキサンの粘度、水の含有量、増粘剤の添加などで調整することができる。エマルションコンパウンドの粘度は、B形粘度計を用い、25℃の条件により測定する。
エマルションコンパウンドにおいて、水の含有量を調節することで、エマルションコンパウンドの粘度や発泡倍率を調整することができる。水の含有量が多いほうが、粘度は高くなる。また、発泡倍率は高くなる。内側部14a形成用のエマルションコンパウンドは、耐久性の観点から発泡倍率を比較的低くすることが好ましく、この観点から、水の含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、10~120質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは30~120質量部の範囲内である。外側部14b形成用のエマルションコンパウンドは、内側部14aへの圧縮応力の低減、断熱性などの観点から発泡倍率を比較的高くすることが好ましく、この観点から、水の含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、80~200質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは100~200質量部の範囲内である。
界面活性剤は、親水領域と疎水領域を併せ持つ化合物である。界面活性剤としては、オルガノポリシロキサン中に水を分散させるために、HLB値が低い界面活性剤を用いるとよい。HLB値は、水と油への親和性の程度を表す値である。HLB値は、0から20までの値をとり、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高い。HLB値が低い界面活性剤を用いることで、オルガノポリシロキサン中に水が分散したW/O型エマルション(油中水型のシリコーンエマルション組成物)が得られる。界面活性剤のHLB値は、0~15の範囲内が好ましい。より好ましくは3~7の範囲内である。
用いる界面活性剤として好適な、HLB値が低い界面活性剤としては、脂肪族アルコールポリグリコールエーテル、部分鹸化されたポリビニルアルコール、アルキルスルフェート、ポリオキシエチレン-オレイルエーテル、ポリオキシエチレン-ラウリルエーテル、エーテル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、オルガノポリシロキサンとの相溶性などの観点から、エーテル変性シリコーンオイルが好ましい。また、エーテル変性シリコーンオイルなどのオルガノポリシロキサンとの相溶性に優れる界面活性剤は、内側部14aのセル16aの分布や外側部14bのセル16bの分布を均一にしやすい。このとき、エーテル変性シリコーンオイルなどのオルガノポリシロキサンとの相溶性に優れる界面活性剤のHLB値が3~7の範囲内であると、より一層、内側部14aのセル16aの分布や外側部14bのセル16bの分布を均一にしやすい。
界面活性剤は、内側部14aのセル16aの大きさや外側部14bのセル16bの大きさを調節することもでき、それに伴い、内側部14aのセル16a間や外側部14bのセル16b間を連通しやすくする。エマルションコンパウンドにおいて、界面活性剤の含有量が多いと、セル16a,16bが小さくなりやすい。また、界面活性剤の含有量が多いと、内側部14aや外側部14bの圧縮永久歪の値が大きくなりやすい。このような観点から、内側部14a形成用のエマルションコンパウンドは、界面活性剤の含有量が比較的多いほうが好ましい。具体的には、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、1.0~5.0質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは1.0~3.0質量部の範囲内である。また、外側部14b形成用のエマルションコンパウンドは、界面活性剤の含有量が比較的少ないほうが好ましい。具体的には、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、0.1~2.0質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは0.1~1.5質量部の範囲内である。
増粘剤は、粘度調整やエマルションの貯蔵安定性、外部負荷に対する安定性の他、内側部14aや外側部14bにおけるセル16a,16bの真円度を調節することもできる。粘度調整やエマルションの貯蔵安定性、外部負荷に対する安定性などの観点から、増粘剤の含有量は、水100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.05質量部以上である。また、内側部14a形成用のエマルションコンパウンドは、セル16aの真円度を高くするなどの観点から、増粘剤の含有量は、水100質量部に対し、6.0質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5.0質量部以下、さらに好ましくは4.0質量部以下である。また、外側部14b形成用のエマルションコンパウンドは、セル16bの真円度を高くするなどの観点から、増粘剤の含有量は、水100質量部に対し、8.0質量部以下であることが好ましい。より好ましくは7.0質量部以下、さらに好ましくは6.0質量部以下である。
増粘剤としては、ポリ(メタ)アクリレート及びその金属塩、アルギン酸エステル、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸系化合物、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性セルロース、セルロースナノファイバー、キサンタンガム、ダイユータンガム、グァーガム誘導体などの天然高分子多糖類、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バイデライトおよびノントロナイト等の粘土鉱物を主成分とするベントナイトなどの天然または合成のスメクタイトクレーなどが挙げられる。これらのうちでは、エマルションの貯蔵安定性、外部負荷に対する安定性などの観点から、アルギン酸系化合物が好ましい。
エマルションコンパウンドの攪拌は、粘度に合わせて、羽根攪拌、プラネタリーミキサー、ニーダー、ロール練りなどで行うことができる。
エマルション発泡による内側部14aや外側部14bの作製は、以下の通りである。
(1)まず、エマルションコンパウンドを調製する。
(2)次に、成形温度に温調した金型へ調製したエマルションコンパウンドを注型し、成形温度を保ったまま所定時間保持し、シリコーンゴムを成形(硬化)させる。
(3)次に、成形物(硬化物)を脱型し、所定温度で所定時間保持し、成形物(硬化物)中の水を揮発除去する。
(2)の成形工程では、水の沸点よりも低い温度でシリコーンゴムを成形(硬化)することが好ましい。水の沸点よりも高い温度で成形すると、気泡の肥大化や形崩れなどが生じやすい。水の沸点よりも低い温度は、常温常圧下では100℃よりも低い温度であるが、好ましくは沸点マイナス5℃以下、さらに好ましくは沸点マイナス10℃以下である。ただし、水に沸点上昇剤を混合している場合は、その沸点を基準とする。架橋触媒としてマイクロカプセル型触媒を用いると、成形温度の制約下でも硬化速度(架橋速度)の低下を抑えることができる。硬化速度が速いことで、シリコーンゴムの硬化前における水泡の合一化が抑えられ、セルが大きくなりにくい。
(3)の加熱は、シリコーンゴムの2次キュアを行う工程を利用することができる。また、別途の加熱処理により行ってもよい。加熱条件は、少なくとも100℃以上の温度であり、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。加熱時間は、少なくとも0.5時間以上、好ましくは1.0時間以上である。シリコーンゴムの2次キュアは、成形物の圧縮永久歪をより低くさせたり、シリコーンゴム中に残存する低分子量のシロキサン成分の量を低減させたり、有機過酸化物の分解物を除去させたりすることができる。2次キュアの条件としては、好ましくは200℃以上、より好ましくは200~250℃である。また、好ましくは所定温度で1時間以上、より好ましくは1~10時間である。
バルーン発泡の場合、上記の(a)~(d)を含む発泡性のシリコーンゴム組成物を調製する。発泡性のシリコーンゴム組成物は、(c)発泡剤として中空バルーンを含む。
(c)発泡剤としての中空バルーンは、熱可塑性ポリマーからなる殻(シェル)内に低沸点炭化水素を内包した、未膨張型または既膨張型の、熱膨張性のマイクロカプセル(マイクロスフェア)で構成される。熱膨張性のマイクロカプセルは、加熱により内包された低沸点炭化水素が膨張し、同時に熱可塑性ポリマーからなる殻(シェル)が軟化することによって急激に膨張し、中空状のバルーンとなる。
中空バルーンの殻を形成する熱可塑性ポリマーとしては、軟化温度や強度などから、アクリロニトリル系コポリマーが好ましい。中空バルーンの殻を形成する熱可塑性ポリマーの軟化点は、シリコーンの高速硬化、注型時及び注型後のバルーン変形抑制、発泡体成形後のバルーンの破壊及び連通化などの観点から、60~260℃が好ましい。より好ましくは70~170℃である。中空バルーンの平均粒子径は、微細でばらつきの小さい気泡を形成して柔軟性を向上するなどの観点から、5~200μmが好ましい。より好ましくは10~100μmである。中空バルーンの平均粒子径は、レーザー顕微鏡により測定されるメジアン径である。
発泡性のシリコーンゴム組成物において、中空バルーンの含有量は、特に限定されるものではないが、微細でばらつきの小さいセルを形成しやすいなどの観点から、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、0.1~50質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは0.5~10質量部の範囲内である。
バルーン発泡の場合、独立気泡が形成される。連通度の高い外側部14bの形成用組成物は、連通度を高くするために、連通化剤を含むことが好ましい。一方、連通度の低い内側部14aを形成する場合、内側部14a形成用組成物は、連通化剤を含まないか、その量を少なくすることが好ましい。連通化剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。これらのうちでは、連通化効果などの観点から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが特に好ましい。連通化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、連通度の確保による圧縮永久歪の良化の観点から、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上である。また、シリコーン中の不純物の抑制による圧縮永久歪の良化などの観点から、オルガノポリシロキサン100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましい。より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
バルーン発泡の発泡性のシリコーンゴム組成物の攪拌は、粘度に合わせて、羽根攪拌、プラネタリーミキサー、ニーダー、ロール練りなどで行うことができる。
バルーン発泡による内側部14aや外側部14bの作製は、以下の通りである。
(1)まず、中空バルーンを含む発泡性のシリコーンゴム組成物を調製する。
(2)次に、成形温度に温調した金型へ調製した発泡性のシリコーンゴム組成物を注型し、成形温度を保ったまま所定時間保持し、シリコーンゴムを成形(硬化)させる。
(3)次に、成形物(硬化物)を脱型し、所定温度で所定時間保持し、成形物(硬化物)中の中空バルーンの殻を形成する熱可塑性ポリマーを軟化させ、中空バルーンの殻を破壊する。
(2)の成形工程では、中空バルーンの殻を形成する熱可塑性ポリマーの軟化温度よりも低い温度でシリコーンゴムを成形(硬化)する必要がある。その軟化温度よりも高い温度で成形すると、セルの変形や潰れによるセルの消失などが生じる。
シリコーンゴム発泡層14の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~10mm、より好ましくは1~5mmの範囲内である。耐ヘタリ性に優れるなどの観点から、外側部14bの圧縮永久歪は、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。低硬度であるなどの観点から、外側部14bのアスカーC硬度は、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下である。外側部14bの圧縮永久歪は、JIS K6262に準拠して測定され、150℃×72時間試験で25%圧縮時の圧縮永久歪である。
以上の構成の定着部材10によれば、シリコーンゴム発泡層14が上記構成であることから、周方向のせん断力がかかりやすい軸体近傍の内側部14aの強度に優れ、周方向のせん断力による破壊が抑えられ、耐久性に優れるとともに、厚み方向の圧縮変形量が大きい表面側の外側部14bの圧縮永久歪の値が低くなり、厚み方向の圧縮変形に対し耐ヘタリ性に優れる。
本発明に係る定着部材は、図1に示すように、軸体12と1層のシリコーンゴム発泡層14のみで構成されていてもよいし、1層のシリコーンゴム発泡層14以外の他の層をさらに有する構成であってもよい。他の層としては、表層や中間層などが挙げられる。表層は、定着部材の表面に現れる層であり、定着部材の表面保護、表面特性の付与などの目的で設けられる。中間層は、軸体12と1層のシリコーンゴム発泡層14との間や1層のシリコーンゴム発泡層14と表層の間などに1層以上設けられる。中間層は、密着性の向上、成分の他への拡散防止などの目的で設けられる。他の層として表層を設けない場合には、シリコーンゴム発泡層14の表面を改質する表面改質処理を施すことにより、表層を設ける場合と同様の機能を付与してもよい。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
使用した材料は以下の通りである。
・オルガノポリシロキサン(シリコーンゴム):Gelest社製「DMS-V31」
・架橋剤:ヒドロシリル架橋剤(Gelest社製「HMS-501」)
・界面活性剤<1>:モメンティブ製「TSF4446」
・界面活性剤<2>:ソルビタン脂肪酸エステル(花王製「レオドールSP-010V」、HLB=4.3)
・界面活性剤<3>:ソルビタン脂肪酸エステル(花王製「レオドールSP-030V」、HLB=1.8)
・増粘剤:クニミネ工業製「スメクトンST」
・中空バルーン:松本油脂製「MLF-030CA」
〔マイクロカプセル型触媒の作製〕
白金触媒のトルエン溶液(白金金属原子として3質量%含有)、微粒子化に用いる被覆樹脂(PVB)、トルエンを0.6:5:95の比率(質量比)で混合し、この溶液を界面活性剤の水溶液へ滴下し、エマルションを作製した。その後、トルエンを減圧留去し、ろ過することで、被覆樹脂および白金触媒を含有する微粒子を得た。
・白金触媒:塩化白金(IV)酸、株式会社フルヤ金属社製
・ポリビニルブチラール(PVB):クラレ製「Mowital B30HH」、SP値8.8、Tg=59℃
(実施例1~3、5~9、比較例1~4、6)
(エマルションコンパウンドの調製)
オルガノポリシロキサン100質量部に対し、架橋剤3質量部、マイクロカプセル型触媒(MC型触媒)0.2質量部を混合・攪拌し、シリコーンゴムコンパウンドを得た。得られたシリコーンゴムコンパウンド100質量部に対し、表1に記載の配合組成(質量部)で、界面活性剤を混合・分散させた後、さらに発泡剤として増粘剤を所定量含む蒸留水を混合・攪拌することにより、内側部形成用または外側部形成用のエマルションコンパウンドを得た。配合組成は表1の通りである。
(定着部材の作製)
表2に記載の内側部の厚みとなるサイズの成形金型を用い、円筒状の芯金(φ20mm、長さ400mm)を成形金型の中心部にセットし、内側部形成用のエマルションコンパウンドを成形温度(90℃)に温調した成形金型へ注型し、成形温度を保ったまま45分間保持し、シリコーンゴムを硬化させた。その後、脱型し、200℃の恒温槽で2時間保持することで、シリコーンゴム硬化物中の水を揮発・除去することにより、シリコーンゴム発泡体からなる内側部を形成した。次いで、表2に記載の外側部の厚みとなるサイズの成形金型を用い、芯金の外周に内側部を有するロール体を成形金型の中心部にセットし、外側部形成用のエマルションコンパウンドを成形温度(90℃)に温調した成形金型へ注型し、成形温度を保ったまま45分間保持し、シリコーンゴムを硬化させた。その後、脱型し、200℃の恒温槽で2時間保持することで、シリコーンゴム硬化物中の水を揮発・除去することにより、シリコーンゴム発泡体からなる外側部を形成した。以上により、定着部材を作製した。
(実施例4、10)
内側部形成用のエマルションコンパウンドの調製において、界面活性剤<1>に代えて表1に記載するように界面活性剤<2><3>の組み合わせとした以外は実施例1と同様にして、エマルションコンパウンドの調製および定着部材の作製を行った。
(比較例5)
外側部形成用のエマルションコンパウンドにおける増粘剤を所定量含む蒸留水に代えて、発泡剤として中空バルーンを、連通化剤としてトリエチレングリコールを用いた以外は実施例1と同様にして、シリコーンゴムコンパウンドの調製および定着部材の作製を行った。
Figure 0007063678000001
得られた定着部材の内側部および外側部について、下記の各測定を行った。また、得られた定着部材について、耐久性および耐ヘタリ性を評価した。その結果を表2に示す。
(セルの各種測定)
内側部または外側部の断面をレーザー顕微鏡で撮影し、任意の3箇所で撮影範囲200μm角に写るセルの90%について短径および長径を測定し、その平均を算出することにより平均短径および平均長径を求めた。また、内側部断面の任意の3箇所で撮影範囲200μm角に写るセルの長径を測定し、長径が25μm以下のセルの割合を算出した。
(セル連通度)
内側部または外側部から10×10×3mmの試験片を切り出した。次いで、蒸留水100質量部に対しエーテル変性シリコーンオイル(信越化学工業社製「KF-618」)3質量部を加えた検液を調製した。次いで、別途作製した未発泡体の比重a、試験片の比重b、試験片の質量cをそれぞれ測定した。次いで、検液の入った容器中に試験片を沈め、浮かないように容器の底に試験片を固定した後、減圧下(70mmHg以下)で10分間放置し、試験片内への検液の浸透を促した。その後、常圧に戻し、検液から試験片を取り出し、付着している水をふき取った後、吸水している試験片の質量dを測定した。以下の式(1)から試験片の吸水率を求め、以下の式(2)から連通度を求めた。
(式1)
吸水率(%)={(吸水後の試験片の質量d-吸水前の試験片の質量c)/(吸水前の試験片の質量c)}×100 ・・・(1)
(式2)
連通度(%)=(試験片の比重b×吸水率/100)/{検液の比重-(試験片の比重b/未発泡体の比重a)}×100 ・・・(2)
(セル間距離の標準偏差)
内側部または外側部の断面をレーザー顕微鏡で撮影し、任意の3箇所で撮影範囲200μm角に写る各箇所の90%のセルについて、図4に示すように、隣接するセルの中心を結んだ線を直径とする仮想円を引き、仮想円の内側に他のセルの中心が存在していないセルを、そのセルに対する隣接セルとして抽出し、そのセルと隣接セルの中心間を結ぶ線分の長さをセル間距離とし、そのセルの中心から引かれる複数の線分の長さの標準偏差を算出することにより、セル間距離の標準偏差を求めた。
(耐久性)
対向ロールとして一般鋼製の円柱状ロール(φ50mm)を用い、対向ロールを150℃に温調し、作製した定着ロールのシリコーンゴム発泡層(内側部と外側部の合計)の厚みが50%圧縮されるまで定着ロールを対向ロールに押し込み、その状態で定着ロールを200rpmの速度で規定時間回転させた。シリコーンゴム発泡層の破壊が観測されなかった回転時間が10時間以上であった場合を特に良好「◎」、その回転時間が5時間以上であった場合を良好「○」、その回転時間が3時間以上であった場合を可「△」、その回転時間が3時間未満でシリコーンゴム発泡層の破壊が観測された場合を不良「×」とした。
(耐ヘタリ性)
上記耐久性の評価において、定着ロールの回転時間が1時間の時点で回転を止め、定着ロールの圧縮を解放した後、30分経過の後に、定着ロールの外径を測定し、厚み基準でシリコーンゴム発泡層の収縮率を算出した。収縮率が5%未満の場合を特に良好「◎」、収縮率が10%未満の場合を良好「○」、収縮率が10%以上の場合を不良「×」とした。
Figure 0007063678000002
比較例1は、内側部において長径が25μm以下のセルの割合が30%と低い。このため、耐久性に劣っている。比較例2は、外側部のセルの平均長径が内側部のセルの平均長径よりも小さい。このため、耐ヘタリ性に劣っている。比較例3は、内側部の短径/長径の値が小さく、内側部のセルの真円度が低い。このため、耐久性に劣っている。比較例4は、外側部の短径/長径の値が小さく、外側部のセルの真円度が低い。このため、耐ヘタリ性に劣っている。比較例5は、外側部のセルの連通度が低い。このため、耐ヘタリ性に劣っている。比較例6は、内側部の厚みがシリコーンゴム発泡層の厚みの40%超で厚い。このため、比較的硬い内側部の影響が大きくなって、耐ヘタリ性に劣っている。
比較例に対し実施例は、本願発明の特定要件を満足するものであり、耐久性と耐ヘタリ性をともに満足するものであった。そして、実施例同士の比較では、セル間距離の標準偏差が大きく、セルの分布の均一性の点で劣る実施例4、10に対し、セルの分布の均一性の点で優れる実施例は耐久性により優れることがわかる。また、内側部の発泡倍率が比較的高い実施例5に対し、内側部の発泡倍率が比較的低い実施例は耐久性により優れることがわかる。また、外側部の短径/長径の値が小さく、外側部のセルの真円度が比較的低い実施例6に対し、外側部のセルの真円度が比較的高い実施例は耐ヘタリ性により優れることがわかる。また、内側部において長径が25μm以下のセルの割合が比較的低い実施例7に対し、その割合が比較的高い実施例は耐久性により優れることがわかる。また、内側部の厚みが比較的厚い実施例9に対し、内側部の厚みが比較的薄い実施例は耐ヘタリ性により優れることがわかる。
以上、本発明の実施形態、実施例について説明したが、本発明は上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能なものである。
10 定着部材
12 軸体
14 シリコーンゴム発泡層
14a 内側部
14b 外側部
16 セル
16a 内側部のセル
16b 外側部のセル

Claims (6)

  1. 軸体と、前記軸体の外周に形成されたシリコーンゴム発泡層と、を有する電子写真機器の定着部材であって、
    前記シリコーンゴム発泡層は、厚み方向において、相対的にセルが小さい内側部と相対的にセルが大きい外側部の2つの領域よりなり、
    前記内側部の厚みは、前記シリコーンゴム発泡層の厚みの40%以下であり、
    前記内側部において、全セルの75%以上の割合のセルの長径が25μm以下であり、セルの長径に対する短径の比(短径/長径)が0.8以上1.0以下であり、
    前記外側部において、セルの長径に対する短径の比(短径/長径)が0.5以上1.0以下であり、セルの連通度が60%以上であり、
    前記内側部のセルの平均長径が、前記外側部のセルの平均長径よりも小さく、
    前記内側部と前記外側部の間に境界が存在することを特徴とする定着部材。
  2. 前記内側部の厚みは、前記シリコーンゴム発泡層の厚み方向の内側5%以内の領域にあるセルの平均長径の150倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の定着部材。
  3. 前記内側部におけるセル間距離の標準偏差が、前記内側部のセルの平均長径と前記内側部の発泡倍率の比(平均長径/発泡倍率)の3.0倍以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の定着部材。
  4. 前記内側部の発泡倍率が、1.1倍以上2.5倍以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の定着部材。
  5. 前記外側部の発泡倍率が、1.5倍以上3.0倍以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の定着部材。
  6. 前記シリコーンゴム発泡層は、油中水型のシリコーンエマルション組成物から形成されたものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の定着部材。
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