以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明の第1実施形態における橋脚の正面図及び右側面図である。尚、本実施形態では、本発明の「鉄筋コンクリート構造物」の一例として橋脚を挙げて以下説明するが、本発明の「鉄筋コンクリート構造物」は橋脚に限らない。また、説明の便宜上、図1及び図2に示すように上下・前後・左右を規定して、以下説明する。
本発明の「鉄筋コンクリート構造物」の一例である橋脚1は、鉄筋コンクリート製の柱状構造物である。橋脚1は例えば道路の橋脚である。橋脚1は、地盤G上に形成された基礎部2と、基礎部2上に立設された本体部3とを含んで構成される。本体部3は、上方に向かうほど幅広になるように(換言すれば、上方に向かうほど左右方向の長さが長くなるように)、左右両側面3a,3bが鉛直方向に対して傾斜している。図1に示すように、橋脚1の本体部3の左側面3a及び右側面3bの各々と鉛直方向とがなす角度(傾斜角度)θ1,θ2はそれぞれ鋭角である。ここで、本実施形態では橋脚1は略左右対称であるので、角度θ1は角度θ2と略同一である。
橋脚1の本体部3は、左側傾斜柱部4a及び右側傾斜柱部4bと、中央部4cとからなる。中央部4cは、左側傾斜柱部4aと右側傾斜柱部4bとの間に位置している。左側傾斜柱部4aは前述の左側面3aを有する。右側傾斜柱部4bは前述の右側面3bを有する。
左側傾斜柱部4aは、鉛直方向に対して傾斜して延在する複数の主鉄筋5aと、複数の鉄筋ユニット6aとを含む(後述する図15〜図19参照)。ここで、主鉄筋5aと鉛直方向とがなす角度(傾斜角度)θ3は鋭角である(図15参照)。この角度θ3は、前述の角度θ1と略同一である。複数の主鉄筋5aは、左側傾斜柱部4aの外縁近傍部に沿うように互いに所定の間隔を空けて設けられる。
右側傾斜柱部4bは、鉛直方向に対して傾斜して延在する複数の主鉄筋5bと、複数の鉄筋ユニット6bとを含む(後述する図15〜図19参照)。ここで、主鉄筋5bと鉛直方向とがなす角度(傾斜角度)θ4は鋭角である(図15参照)。この角度θ4は、前述の角度θ2と略同一である。複数の主鉄筋5bは、右側傾斜柱部4bの外縁近傍部に沿うように互いに所定の間隔を空けて設けられる。
中央部4cは、鉛直方向に延在する複数の主鉄筋5cと、複数の鉄筋ユニット6cとを含む(後述する図15〜図19参照)。複数の主鉄筋5cは、中央部4cの外縁近傍部に沿うように互いに所定の間隔を空けて設けられる。
図3は、鉄筋ユニット6aと鉄筋支持装置10,20の配置とを示す平面図である。図4は、鉄筋ユニット6aと鉄筋支持装置20の配置とを示す正面図である。尚、図3は、鉄筋ユニット6aを構成する複数段の鉄筋群9のうちの1段分のみを図示している。また、図3及び図4では、鉄筋ユニット6a及び鉄筋支持装置10,20の一部の図示を簡略化又は省略している。
鉄筋ユニット6aは、前後方向に延在する複数の鉄筋7と、左右方向に延在する複数の鉄筋8とを交差させて格子状に組み合わせて形成される平面状の鉄筋群9を鉛直方向に複数段(本実施形態では6段)設けてなる。すなわち、鉄筋ユニット6aは、平面視でマトリクス状に複数の鉄筋7,8を配置してなる鉄筋群9を鉛直方向に複数段(本実施形態では6段)設けてなる。尚、鉄筋ユニット6aを構成する鉄筋群9の段数は6段に限らず任意である。また、鉄筋群9を構成する複数の鉄筋7,8同士は、番線結束、あるいは固定金具によって接続され得る。ここで、本実施形態では、各段の平面状の鉄筋群9において鉄筋8の下側に鉄筋7が位置しているが、これとは逆に、鉄筋8の上側に鉄筋7が位置していてもよい。すなわち、各段の平面状の鉄筋群9において、鉄筋7,8の相対的な位置関係は図示のものに限らない。
鉄筋7の一例では、鉄筋7は、その前後両端部にそれぞれフック(定着フック)7aを有する。本実施形態ではフック7aは半円形フックであるが、フック7aは半円形フックに限らず、例えば鋭角フックであってもよい。フック7aは、本発明の「引っ掛け部」に対応するものであり、主鉄筋5aを引っ掛け可能なように構成されている。
鉄筋8の一例では、鉄筋8は、その左側端部にフック(定着フック)8aを有し、右側端部に継手8bを有する。本実施形態ではフック8aは半円形フックであるが、フック8aは半円形フックに限らず、例えば鋭角フックであってもよい。フック8aは、本発明の「引っ掛け部」に対応するものであり、主鉄筋5aを引っ掛け可能なように構成されている。継手8bは、鉄筋ユニット6cを構成する鉄筋に接続するためのものである。
各段の平面状の鉄筋群9は、左右方向に延在する前後一対の鉄筋8pを更に含む。鉄筋8pは、その左右両端部にそれぞれ、平面視でコ字状に屈曲形成されたコ字状部8qを有する。ここで、本実施形態では、各段の平面状の鉄筋群9において鉄筋8の下側かつ鉄筋7の下側に鉄筋8pが位置しているが、鉄筋8pと鉄筋7,8との相対的な位置関係はこれに限らない。鉄筋群9を構成する複数の鉄筋7,8と前後一対の鉄筋8pとは、番線結束、あるいは固定金具によって接続され得る。
図4に示すように、鉄筋ユニット6aの左側の輪郭線(すなわち左側面)6sは、鉛直方向に対して傾斜している。ここで、鉄筋ユニット6aの左側の輪郭線(すなわち左側面)6sと鉛直方向とがなす角度(傾斜角度)θ5は鋭角である。この角度θ5は、前述の角度θ1,θ3と略同一である。ここで、図4に示すように、鉄筋ユニット6aでは複数のフック7aが鉄筋ユニット6aの左側の輪郭線6sと略平行に並んでいる。また、図4に示すように、鉄筋ユニット6aでは複数のフック8aが鉄筋ユニット6aの左側の輪郭線6sと略平行に並んでいる。
鉄筋ユニット6aの形成時には複数の鉄筋支持装置10,20(後述する図5〜図8参照)が用いられる。本実施形態では、図3に一点鎖線で示す位置P1に鉄筋支持装置10が配置され、図3に破線で示す位置P2に鉄筋支持装置20が配置される。ここにおいて、地面GS上には、これら位置P1,P2を通過するように枠体30(図4参照)が載置されている。枠体30は例えば木製である。複数の鉄筋支持装置10及び鉄筋支持装置20については、この枠体30における位置P1,P2に載置されて枠体30に固定されることで、相互間の位置関係が保持され得る。尚、枠体30と鉄筋支持装置10,20との間には、鉄筋支持装置10,20の設置高さを調整するための高さ調整部材31(図4参照)が介装されてもよい。
ここで、鉄筋支持装置10について、図5〜図7を用いて説明する。
図5は鉄筋支持装置10の概略構成を示す図であり、詳しくは、図5(A)は鉄筋支持装置10の正面図であり、図5(B)は図5(A)のA−A断面図である。図6は鉄筋支持装置10が鉄筋ユニット6a(鉄筋7)を支持している状態を示す図である。図7は、鉄筋支持装置10のアーム部材13a〜13fの各々が最大仰角である状態を示す図である。
鉄筋支持装置10は、鉄筋ユニット6aの各段の鉄筋群9の鉄筋7を支持するものである。鉄筋支持装置10は、矩形板状のベース部材11と、ベース部材11上に立設された柱部材12と、複数(本実施形態では6つ)のアーム部材13a〜13fとを含んで構成される。尚、本実施形態では、鉄筋支持装置10を構成するアーム部材の個数が6つであるが、鉄筋支持装置10を構成するアーム部材の個数は6つに限らず任意である。鉄筋支持装置10は例えば金属製である。
ベース部材11は枠体30上に載置される。ベース部材11の四隅には、ベース部材11を釘などで枠体30に固定するための貫通孔11aが形成されている。
柱部材12は、平面視でT字状の断面を有して、鉛直方向に延在している。柱部材12の下部には、柱部材12とベース部材11との相互間の固定を補強するための補強部材14,15が設けられている。補強部材14,15は各々が平面視でL字状の断面を有して、鉛直方向に延在している。
アーム部材13a〜13fは、上から下に向かって順に、互いに所定の間隔を空けて並んでいる。好ましくは、アーム部材13a〜13fは、鉛直方向に等間隔に配置される。アーム部材13a〜13fは、各々が板状部材により形成されている。アーム部材13a〜13fは、各々の基端部13pが柱部材12に取り付けられて、各々が柱部材12から側方に張り出している。ここにおいて、アーム部材13a〜13fの各々の基端部13pは、柱部材12に面接触している。
アーム部材13a〜13fの各々の先端部13qは、鉄筋7を受け入れ可能な凹部13rを有する。凹部13rは鉄筋7を載せかけ可能である。アーム部材13a〜13fについては、各々の延在方向(基端部13pから先端部13qに向かう方向)の長さが互いに異なっている。本実施形態では、アーム部材13a〜13fのうち下方に位置するものほど、その延在方向の長さが長い。
本実施形態では、アーム部材13a〜13fの各々の基端部13pが柱部材12に枢支されており、アーム部材13a〜13fは、各々の基端部13pの枢支軸13tを中心として揺動可能である。換言すれば、アーム部材13a〜13fは、図5及び図6に示す倒伏状態から、図7に示す起立状態に切り替えられるように、また、その逆に、図7に示す起立状態から、図5及び図6に示す倒伏状態に切り替えられるように、各々の基端部13pの枢支軸13tを中心として起伏可能である。尚、柱部材12には、アーム部材13a〜13fの各々の倒伏状態(図5及び図6参照)を保持するためにアーム部材13a〜13fの各々を下方から支持するためのストッパー部材16が複数(本実施形態では6つ)設けられている。尚、ストッパー部材16の個数は、鉄筋支持装置10を構成するアーム部材の個数と同じである限りにおいて、任意である。
本実施形態では、図5及び図7に示すように、アーム部材13a〜13fのうち、延在方向の長さが比較的短いアーム部材13a〜13cにおいて、各々の仰角が0°以上かつ90°以下である範囲内であり得る。ここにおいて、アーム部材13a〜13cの仰角が0°である場合には、アーム部材13a〜13cが倒伏状態(図5及び図6参照)となる。また、アーム部材13a〜13cの仰角が90°である場合には、アーム部材13a〜13cが起立状態(図7参照)となる。
一方、アーム部材13a〜13fのうち、延在方向の長さが比較的長く、起立状態のときに先端部13qがストッパー部材16に当接しかねないアーム部材13d〜13fについては、起立状態時の仰角が90°よりも若干小さくなる。このように起立状態時の仰角が90°よりも若干小さくても、後述する鉄筋ユニット6aの吊り上げ上昇時に鉄筋ユニット6aの当該上昇をアーム部材13d〜13fが妨げないので問題はない。
図6に示すように、倒伏状態のアーム部材13a〜13fの各々の先端部13qの凹部13rに鉄筋7を受け入れた状態で、鉄筋7の中心同士を結んだ仮想線L1は、鉛直方向に対して傾斜している。ここで、当該仮想線L1と鉛直方向とがなす角度(傾斜角度)θ6は鋭角である。この角度θ6は、前述の角度θ1,θ3,θ5と略同一である。
尚、本実施形態では、鉄筋支持装置10は、鉄筋ユニット6aの各段の鉄筋群9の鉄筋8pのコ字状部8qの支持にも用いられている(図3参照)。
図8は鉄筋支持装置20の正面図である。鉄筋支持装置20は、前述の鉄筋支持装置10において、5つのアーム部材13b〜13fを5つのアーム部材13aに置き換えたものである。また、鉄筋支持装置20は、鉄筋ユニット6aの各段の鉄筋群9の鉄筋8を支持するものである。鉄筋支持装置20では、倒伏状態の6つのアーム部材13aの各々の先端部13qの凹部13rに鉄筋8を受け入れた状態で、鉄筋8の中心同士を結んだ仮想線が鉛直方向に沿って延びる。尚、本実施形態では、鉄筋支持装置20は、鉄筋ユニット6aの各段の鉄筋群9の鉄筋8pの支持にも用いられている(図3参照)。
ここで、図4に図示されている4つの鉄筋支持装置20のうち最も右側に配置されている鉄筋支持装置20が上下6つの鉄筋8を支持しており、残りの3つの鉄筋支持装置20の各々が上下6つの鉄筋8pを支持している。
次に、鉄筋ユニット6aの形成方法について説明する。
まず、例えば橋脚1の施工場所の近傍にて、地面GS上に枠体30を載置する。
次に、枠体30における複数の位置P1,P2に鉄筋支持装置10,20を載置して鉄筋支持装置10,20を枠体30に固定する。
次に、複数の鉄筋7,8,8pを組み立てて、最下段の鉄筋群9を形成する。この後、これと同様に、残りの5段分の鉄筋群9を、下から順に形成する。
このようにして、上下6段の平面状の鉄筋群9からなる鉄筋ユニット6aが形成される。形成された鉄筋ユニット6aは、複数の位置P1,P2に配置された鉄筋支持装置10,20によって支持される。
本実施形態では、鉄筋支持装置10,20によって支持された鉄筋ユニット6aを補強手段40で補強する。この補強手段40について、図9及び図10を用いて説明する。
図9及び図10は補強手段40の平面図及び正面図である。ここで、図9は、前述の図3に対応するものである。図10は、図9のB−B矢視拡大図である。
補強手段40は、鉛直方向に対して傾斜して延在する複数の傾斜柱部材41と、各傾斜柱部材41に鉄筋群9の段数分(本実施形態では6段分)設けられた棒状部材42と、傾斜柱部材41同士の前後方向での間隔を保持するための複数のつなぎ材43と、傾斜柱部材41同士の左右方向での間隔を保持するための複数のつなぎ材44とを含んで構成される。尚、補強手段40を構成する傾斜柱部材41、棒状部材42、及びつなぎ材43,44の各々の個数については、図9及び図10に示したものに限らない。
傾斜柱部材41は例えば山形鋼によって形成されている。ここで、傾斜柱部材41の延在方向と鉛直方向とがなす角度(傾斜角度)θ7は鋭角である。この角度θ7は、前述の角度θ1,θ3,θ5,θ6と略同一である。傾斜柱部材41は、鉄筋ユニット6aの各段の鉄筋群9において鉄筋7,8同士が交差する箇所に隣接して設けられている。
傾斜柱部材41の上端部は、鉄筋ユニット6aの上面よりも上方に突出している。傾斜柱部材41の下端部は、鉄筋ユニット6aの下面よりも下方に突出している。傾斜柱部材41の上端部には平面視で矩形状の板状部材41aが設けられている。
本実施形態では、12個の傾斜柱部材41が、平面視で鉄筋ユニット6a内にてマトリクス状(前後方向に4つ×左右方向に3つ)に互いに略平行に配置されている。尚、鉄筋ユニット6a内に配置される傾斜柱部材41の個数はこれに限らない。
つなぎ材43,44は例えば山形鋼によって形成されている。つなぎ材43は前後方向に延在している。つなぎ材43は、前後方向に間隔を空けて並ぶ複数の傾斜柱部材41同士をつなぐように各傾斜柱部材41に固定されている。つなぎ材44は左右方向に延在している。つなぎ材44は、左右方向に間隔を空けて並ぶ複数の傾斜柱部材41同士をつなぐように各傾斜柱部材41に固定されている。ここで、傾斜柱部材41とつなぎ材43,44とは、溶接、あるいは固定金具によって固定され得る。
棒状部材42は例えば丸鋼によって形成されている。棒状部材42は左右方向に延在し、その左側端部が傾斜柱部材41に固定されている。ここで、傾斜柱部材41と棒状部材42とは、溶接、あるいは固定金具によって固定され得る。
棒状部材42には鉄筋7が載置され得る。1つの傾斜柱部材41に取り付けられた複数(本実施形態では6つ)の棒状部材42については、当該傾斜柱部材41の傾斜方向に互いに所定の間隔を空けて並んでいる。好ましくは、これら棒状部材42は、傾斜柱部材41の傾斜方向に等間隔に配置される。
傾斜柱部材41に取り付けられた棒状部材42と、この棒状部材42に隣接する鉄筋7,8とは、番線結束、あるいは固定金具によって接続され得る。
ここで、傾斜柱部材41、棒状部材42、及びつなぎ材43,44が、本発明の「鉄筋群位置保持手段」に対応して、鉄筋ユニット6aにおける鉄筋群9同士の相対位置(相対的な位置関係)を保持する機能を実現し得る。
また、前述の鉄筋ユニット6aの形成方法により鉄筋ユニット6aを形成する工程が、本発明の「第1の工程」に対応する。この工程は、図9及び図10に示したように、鉄筋ユニット6aを補強手段40で補強することを含んでいる。
尚、鉄筋ユニット6bについては、前述の鉄筋ユニット6aの構成及び形成方法の説明において左右を入れ替えたものと同様であるので、その説明を省略する。鉄筋ユニット6bでは、鉄筋7,8のフック7a,8aが、主鉄筋5bを引っ掛け可能なように構成されている。鉄筋ユニット6cについては、鉄筋ユニット6a,6bと継手8bを介して接続され得るように、複数の鉄筋を組み合わせて形成される。鉄筋ユニット6cの形成方法でも、鉄筋ユニット6a,6bの形成方法と同様に、鉄筋支持装置10,20の少なくとも一方を用いてよい。鉄筋ユニット6cでは、それを構成する鉄筋の端部のフックが、主鉄筋5cを引っ掛け可能なように構成されている。
次に、移載治具体50について、図11〜図14を用いて説明する。図11は、移載治具体50の正面図である。図12は、図11のC−C断面図である。図13及び図14は、移載治具体50の支持受け金具52の倒伏状態及び起立状態を示す図である。ここで、図12では、図示簡略化のため、揺動止めピン62の図示を省略している。
移載治具体50は、鉛直方向に延在する本体部51と、複数(本実施形態では6つ)の支持受け金具52と、複数(本実施形態では6つ)の保持押さえ金具53とにより構成される。ここで、移載治具体50を構成する支持受け金具52の個数及び保持押さえ金具53の個数は、鉄筋ユニット6aにおける鉄筋群9の段数に一致している限りにおいて、任意である。
本体部51は、その上端部に設けられた吊り部51aと、一対の板状部材54と、複数の棒状部材55とにより構成される。板状部材54は、鉛直方向に延在し、平面視でコ字状の断面を有する。本体部51では、一対の板状部材54の背面同士が間隙56を隔てて相対している。この間隙56を保持するために、板状部材54同士の間に複数の棒状部材55が介装されている。
間隙56内には、複数(本実施形態では6つ)の支持受け金具52が鉛直方向に互いに間隔を空けて並んでいる。支持受け金具52は、その基端部にストッパー板57を有し、先端部に、鉄筋7,8,8pの少なくとも1つ(本実施形態では鉄筋8)を受け入れ可能な凹部58を有している。支持受け金具52におけるストッパー板57と凹部58との間の中間部は本体部51に枢支されており、支持受け金具52は、その中間部の枢支軸59を中心として揺動可能である。ここで、ストッパー板57は、支持受け金具52のバランスウェイトとしての機能と、支持受け金具52の揺動を所定の範囲内に制限する機能とを実現する。
ここにおいて、支持受け金具52は、図13に示す倒伏状態から、図14に示す起立状態に切り替えられるように、また、その逆に、図14に示す起立状態から、図13に示す倒伏状態に切り替えられるように、支持受け金具52の中間部の枢支軸59を中心として起伏可能である。
尚、図13に示すように、支持受け金具52が倒伏状態である場合には、支持受け金具52の先端部の凹部58が本体部51外に露出し得る。一方、図14に示すように、支持受け金具52が起立状態である場合には、支持受け金具52の先端部(凹部58を含む)が本体部51内(間隙56内)に収容され得る。
保持押さえ金具53は、基端部が支持受け金具52の中間部に枢支されており、保持押さえ金具53は、その基端部の枢支軸60を中心として揺動可能である。保持押さえ金具53の先端部は下方に湾曲しており、この湾曲部61内に、鉄筋7,8,8pの少なくとも1つ(本実施形態では鉄筋8)を受け入れ可能である。この湾曲部61は、支持受け金具52の凹部58に相対し得る。
図13(A)に示すように、鉄筋7,8,8pの少なくとも1つ(本実施形態では鉄筋8)は、支持受け金具52の凹部58と保持押さえ金具53の湾曲部61とによって挟持され得る。この挟持状態を保持するために、移載治具体50は、複数(本実施形態では6つ)の揺動止めピン62を有している。尚、本体部51(板状部材54)には、揺動止めピン62を挿入するための貫通孔(図示せず)が形成されている。
次に、橋脚1を構築する方法について、前述の図1〜図14に加えて、図15〜図19を用いて説明する。図15〜図19は橋脚1の構築方法を示す図である。
橋脚1の構築施工では、基礎部2を構築した後に、本体部3が構築される。本体部3の構築施工では、構築予定の本体部3を鉛直方向に複数のロットに分けて、下から上に向かってロットを順次構築することで、本体部3の構築が行われる。各ロットの構築施工は、所定の建て込み位置に建て込まれた鉄筋ユニット6a,6b,6cを主鉄筋5a,5b,5cに結合すること、及び、コンクリートを打設することを含み得る。
図15〜図19は、基礎部2上に構築されるロットα1の構築施工を示している。ここで、本体部3を構成する左側傾斜柱部4a、右側傾斜柱部4b、及び中央部4cのうち、ロットα1に対応する部分を、それぞれ、左側傾斜柱領域α1L、右側傾斜柱領域α1R、及び中央領域α1Cとする。
ロットα1の構築施工に先立って、基礎部2の構築時には、ロットα1の構築予定領域を貫通するように、主鉄筋5a,5b,5cが設けられる。これら主鉄筋5a,5b,5cの下端部は基礎部2に固定されている。主鉄筋5a,5b,5cは、それぞれ、ロットα1における鉄筋ユニット6a,6b,6cの建て込み位置を含むように設けられる。
ロットα1の構築施工では、まず、地上(例えば橋脚1の施工場所の近傍)にて、前述のように鉄筋ユニット6a,6bを次々に形成する。この鉄筋ユニット6a,6bの形成作業と並行して、既に形成された鉄筋ユニット6a,6bを、ロットα1における各々の建て込み位置に移動させる作業が行われる。この移動作業には、前述の移載治具体50が用いられる。尚、図15は、既に形成された鉄筋ユニット6aを、その建て込み位置Q1に移動させる様子を示している。また、図15は、主鉄筋5aが建て込み位置Q1を含むように設けられていることを図示している。
ここで、鉄筋支持装置10,20によって支持されている鉄筋ユニット6aを鉄筋支持装置10,20から移載治具体50に載せ換え移載する方法について説明する。
まず、鉄筋支持装置10,20によって支持されている鉄筋ユニット6aの複数の鉄筋7,8,8pの少なくとも1つ(本実施形態では複数の鉄筋8)に、複数の移載治具体50を装着する(図11、図12、及び図13(A)参照)。各移載治具体50は、その上端部の吊り部51a、ワイヤー71、吊り枠体72、及びワイヤー73などを介して、地上のクレーン75によって吊支されている(図15参照)。
次に、移載治具体50が装着された鉄筋ユニット6aをクレーン75によって吊り上げ上昇させると、鉄筋支持装置10のアーム部材13a〜13e、及び、鉄筋支持装置20のアーム部材13aが、上昇する鉄筋ユニット6aの鉄筋7,8,8pによって押し上げられて揺動するので、これらアーム部材13a〜13eが鉄筋ユニット6aの当該上昇を妨げることはない。
このようにして、鉄筋ユニット6aを鉄筋支持装置10,20から移載治具体50に載せ換え移載することができる。尚、鉄筋ユニット6bを鉄筋支持装置10,20から移載治具体50に載せ換え移載する方法もこれと同様であることは言うまでもない。
複数の移載治具体50に載せ換え移載された鉄筋ユニット6aは、図15に示すようにクレーン75によって吊支された状態から吊り下げ下降されて、建て込み位置Q1まで移動させられる。この吊り下げ下降時には、鉄筋ユニット6aの鉄筋7,8のフック7a,8aに主鉄筋5aを引っ掛けた状態で、鉄筋ユニット6aを主鉄筋5aに沿って建て込み位置Q1まで斜め下方に移動させる。ここで、この鉄筋ユニット6aを建て込み位置Q1まで移動させる工程が、本発明の「第2の工程」に対応する。この工程は、鉄筋ユニット6aの鉄筋7,8のフック7a,8a(引っ掛け部)に主鉄筋5aを引っ掛けた状態で、鉄筋ユニット6aを主鉄筋5aに沿って建て込み位置Q1まで斜め下方に移動させることを含む。
次に、建て込み位置Q1まで移動された鉄筋ユニット6aを主鉄筋5aに結合する。ここで、鉄筋ユニット6aと主鉄筋5aとは、番線結束、あるいは固定金具によって結合され得る。尚、このように鉄筋ユニット6aを主鉄筋5aに結合する工程が、本発明の「第3の工程」に対応する。
鉄筋ユニット6aと主鉄筋5aとの結合が完了した後に、各移載治具体50の揺動止めピン62を取り外して、保持押さえ金具53と支持受け金具52とによる鉄筋8の挟持状態を解除する。この挟持状態の解除では、例えば図13(B)に示すように、各移載治具体50の揺動止めピン62を取り外した状態で、各移載治具体50を吊り下げ下降させることにより、各移載治具体50の保持押さえ金具53を鉄筋ユニット6aの鉄筋8で押すことで、保持押さえ金具53を倒伏状態の支持受け金具52に対して起立するように揺動させる。この保持押さえ金具53の揺動については、作業員が保持押さえ金具53を直接つまんで行ってもよいことは言うまでもない。
次に、図14に示すように、作業員がストッパー板57を直接つまんで支持受け金具52を起立状態として、支持受け金具52の先端部(凹部58を含む)を本体部51内(間隙56内)に収容した状態で、各移載治具体50を吊り上げ上昇させる。この後、各移載治具体50には、地上にて新たな鉄筋ユニット6aが鉄筋支持装置10,20から載せ換え移載される。
このようにして、クレーン75によって吊支され得る複数の移載治具体50を用いて鉄筋ユニット6aを建て込み位置まで移動すること、及び、鉄筋ユニット6aを主鉄筋5aと結合することを繰り返して、左側傾斜柱領域α1Lにおける複数の鉄筋ユニット6aと主鉄筋5aとの結合を完了した後、ロットα1の次に構築されるロットα2用の1つの鉄筋ユニット6aをその建て込み位置Q2まで移動させて主鉄筋5aに結合する(図16参照)。これと同様の作業が右側傾斜柱領域α1Rについても行われる(図16参照)。
尚、左側傾斜柱領域α1Lにて上下で隣り合う鉄筋ユニット6a同士については、下側の鉄筋ユニット6aの傾斜柱部材41の板状部材41a上に、上側の鉄筋ユニット6aの傾斜柱部材41を載置し、好ましくはこれらを溶接することで、相互間の相対的な位置決め(位置合わせ)を行うことができる。この点は、右側傾斜柱領域α1Rにて上下で隣り合う鉄筋ユニット6b同士についても同様である。
次に、地上(例えば橋脚1の施工場所の近傍)にて鉄筋ユニット6cを次々に形成する。この鉄筋ユニット6cの形成作業と並行して、既に形成された鉄筋ユニット6cを、ロットα1における建て込み位置に移動させる作業が行われる(図17参照)。この移動作業においても、前述の移載治具体50が用いられる。
複数の移載治具体50が装着された鉄筋ユニット6cは、図17に示すようにクレーン75によって吊り枠体72及びワイヤー71,73などを介して吊支された状態から吊り下げ下降されて、建て込み位置まで移動させられる。この吊り下げ下降時には、鉄筋ユニット6cの鉄筋のフックに主鉄筋5cを引っ掛けた状態で、鉄筋ユニット6cを主鉄筋5cに沿って建て込み位置まで鉛直方向に沿って移動させる。
このようにして、鉄筋ユニット6cの建て込み位置への移動と主鉄筋5cとの結合とを繰り返して、中央領域α1Cにおける複数の鉄筋ユニット6cと主鉄筋5cとの結合を行う(図18参照)。また、鉄筋ユニット6cの鉄筋については、前述の継手8bを介して、鉄筋ユニット6a,6bの鉄筋8と接続される。
次に、図19に示すように、主鉄筋5a,5b,5c及び鉄筋ユニット6a,6b,6cに対して所定のかぶり厚を確保するようにコンクリートCを打設して、ロットα1の構築を完了する。
この後、主鉄筋5a,5b,5cを適宜継ぎ足しつつ、ロットα1と同様に、ロットα2以降も順次構築することにより、本体部3が構築され得る。このようにして、橋脚1が構築され得る。
本実施形態によれば、鉛直方向に対して傾斜して延在する複数の主鉄筋5aを含む橋脚1(鉄筋コンクリート構造物)の構築方法は、複数の鉄筋7,8を組み合わせてなる鉄筋ユニット6aを地上で形成する第1の工程(図3〜図10参照)と、鉄筋ユニット6aを建て込み位置Q1まで移動させる第2の工程(図15参照)と、建て込み位置Q1を含むように設けられた主鉄筋5aに鉄筋ユニット6aを結合する第3の工程(図15及び図16参照)とを含む。鉄筋ユニット6aは、主鉄筋5aを引っ掛け可能な引っ掛け部(鉄筋7,8のフック7a,8a)を複数有する。前記第2の工程は、鉄筋ユニット6aの引っ掛け部(鉄筋7,8のフック7a,8a)に主鉄筋5aを引っ掛けた状態で、鉄筋ユニット6aを主鉄筋5aに沿って建て込み位置Q1まで斜め下方に移動させることを含む。これにより、主鉄筋5aが、鉄筋ユニット6aの移動を案内するガイド部材として機能し得るので、鉄筋ユニット6aをスムーズに建て込み位置Q1まで移動させることができ、ひいては、橋脚1(鉄筋コンクリート構造物)を効率良く構築することができる。
また本実施形態によれば、前記第1の工程は、鉄筋ユニット6aを補強手段40で補強することを含む。これにより、鉄筋ユニット6aをクレーン75などで吊支移送する際に鉄筋ユニット6aが変形することを防止することができる。
また本実施形態によれば、鉄筋ユニット6aは、平面視でマトリクス状に複数の鉄筋7,8を配置してなる鉄筋群9を鉛直方向に複数段設けてなる。補強手段40は、鉄筋群9同士の相対位置を保持する鉄筋群位置保持手段(傾斜柱部材41、棒状部材42、及びつなぎ材43,44)を含む。これにより、鉄筋ユニット6aの形成時に、鉄筋群9同士の相対的な位置決めを行うことができるので、鉄筋ユニット6aをその建て込み位置で主鉄筋5aに結合する際に、鉄筋群9同士の相対的な位置調整を行わなくてよい。ゆえに、作業員による高所作業を減らすことができる。
また本実施形態によれば、鉄筋ユニット6aの少なくとも1つの側面(例えば側面6s)は鉛直方向に対して傾斜している。鉄筋ユニット6aの側面6sの鉛直方向に対する傾斜角度θ5(図4参照)は、主鉄筋5aの鉛直方向に対する傾斜角度θ3(図15参照)と略同一である。ゆえに、主鉄筋5a及び鉄筋ユニット6aに対して所定のかぶり厚を確保するようにコンクリートを打設することで、橋脚1の本体部3の左側面3aを、前述の傾斜角度θ3,θ5と略同一の傾斜角度θ1とすることができる。
また本実施形態によれば、鉄筋支持装置10は、複数の鉄筋7を支持する装置である。鉄筋支持装置10は、鉛直方向に延びる柱部材12と、鉛直方向に互いに間隔を空けて並び、各々の基端部13pが柱部材12に取り付けられて、各々が柱部材12から側方に張り出す複数のアーム部材13a〜13fとを備える。アーム部材13a〜13fの各々の先端部13qは、鉄筋7を受け入れ可能な凹部13rを有する。アーム部材13a〜13fの各々の延在方向の長さが互いに異なる(図5〜図7参照)。ゆえに、断面の形状及び面積が鉛直方向に変化する橋脚1を構築する際に、鉄筋支持装置10を用いて、当該断面変化に応じた鉄筋ユニット6aを作成することができるので、鉄筋ユニット6aを用いて橋脚1を効率良く構築することができる。
また本実施形態によれば、アーム部材13a〜13fのうち下方に位置するものほど延在方向の長さが長い(図5〜図7参照)。ゆえに、鉄筋支持装置10によって支持されていた鉄筋ユニット6aを上昇させる際に鉄筋ユニット6aがアーム部材13a〜13eに接触する度合いを軽減することができる。
また本実施形態によれば、アーム部材13a〜13fの各々の基端部13pが柱部材12に枢支されており、アーム部材13a〜13fの各々が、基端部13pの枢支軸13tを中心として揺動可能である。特に本実施形態では、アーム部材13a〜13fの各々の仰角が0°以上かつ90°以下である範囲内で、アーム部材13a〜13fが、各々の基端部13pの枢支軸13tを中心として揺動可能である。ゆえに、鉄筋支持装置10によって支持されていた鉄筋ユニット6aを上昇させる際に鉄筋ユニット6aがアーム部材13a〜13eに接触しても、アーム部材13a〜13eが揺動することでアーム部材13a〜13eが、上昇する鉄筋ユニット6aをかわすことができる。
また本実施形態によれば、鉄筋支持装置10は、アーム部材13a〜13fの各々が倒伏状態であるときに複数の鉄筋7を支持し得る。鉄筋支持装置10は、アーム部材13a〜13fの各々の倒伏状態を保持するためのストッパー部材16を複数有する。これにより、アーム部材13a〜13fの各々の倒伏状態を良好に保持することができる。
図20は、本発明の第2実施形態における橋脚1の構築方法を示す図である。図21は、本実施形態における主鉄筋位置保持フレーム82Lの平面図である。図22は、図21の部分Dの拡大正面図である。尚、図20では、前述の主鉄筋5cの図示を省略しているが、実際には主鉄筋5cが存在する。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
本実施形態では、前述の図19に示したコンクリートCの打設に先立って主鉄筋位置保持手段80を設けて、この主鉄筋位置保持手段80により、複数の主鉄筋5a,5bの位置を保持する。この工程が本発明の「第4の工程」に対応する。
主鉄筋位置保持手段80は、4つ(前後2つ×左右2つ)の支柱81と、複数の主鉄筋5aの位置を保持するための主鉄筋位置保持フレーム82Lと、複数の主鉄筋5bの位置を保持するための主鉄筋位置保持フレーム82Rと、4つ(前後2つ×左右2つ)の牽引手段(例えばレバーブロック(登録商標))83とを含んで構成される。ここで、支柱81の個数と牽引手段83の個数とは、それぞれ4つに限らず、任意である。
支柱81は、その下端部が基礎部2に固定されている。支柱81は鉛直方向に延在する。支柱81は例えばH形鋼によって形成される。支柱81同士は互いに間隔を空けて配置されている。支柱81は、ロットα1の中央領域α1Cの構築予定領域を貫通するように配置されている。尚、支柱81同士の間の間隔を保持するために、梁部材81aが適宜設けられている。
主鉄筋位置保持フレーム82Lは、平面視で略矩形状の本体部85を備える。本体部85は、前後方向に延在する複数のビーム部材86と、左右方向に延在する複数のビーム部材87とを組み合わせてなる。本体部85の上面には、各主鉄筋5aの左側面が当接可能な棒状部材88と、棒状部材88の左側面が右側面に当接した山形鋼89とが設けられている。棒状部材88と山形鋼89とは、それぞれ、前後方向に延在し、ビーム部材87から水平に張り出している。平面視における棒状部材88同士の設置ピッチ(設置間隔)及び山形鋼89同士の設置ピッチ(設置間隔)は、それぞれ、設計された主鉄筋5a同士の設置ピッチ(設置間隔)と略同一である。本体部85の右側端部には、牽引手段83を取り付け可能な取付部90が前後に2つ設けられている。
尚、主鉄筋位置保持フレーム82Rについては、前述の主鉄筋位置保持フレーム82Lの構成の説明において左右を入れ替えたものと同様であるので、その説明を省略する。
牽引手段83は、支柱81に設けられたブラケット81bと、主鉄筋位置保持フレーム82L,82Rの取付部90との間に設けられて、これらを連結するものである。牽引手段83によって主鉄筋位置保持フレーム82L,82Rを支柱81側に水平に引っ張るか、又はそれと反対の方向に押すことで、複数の主鉄筋5a,5bの各々を設計通りの位置に配置するように調整することができる。尚、主鉄筋位置保持フレーム82L,82Rについては、その高さ位置を保持するための手段(例えば単管パイプなど)が、周囲の足場(図示せず)に設けられているので、当該手段に主鉄筋位置保持フレーム82L,82Rを預けることで、主鉄筋位置保持フレーム82L,82Rの高さ位置を計画通りにすることができる。
本実施形態では、主鉄筋位置保持手段80により、複数の主鉄筋5a,5bの位置を保持しつつ、図19に示したように、コンクリートCの打設を行う。
本実施形態では、ロットの構築が下から上に進行するに従い、支柱81が上方へ次々と継ぎ足されると共に、主鉄筋位置保持フレーム82L,82R及び牽引手段83が上方に段階的に移設される。
特に本実施形態によれば、鉛直方向に対して傾斜して延在する複数の主鉄筋5aを含む橋脚1(鉄筋コンクリート構造物)の構築方法は、主鉄筋位置保持手段80により主鉄筋5aの位置を保持する第4の工程を更に含む。これにより、主鉄筋5aを精度良く配置して、橋脚1の構築施工を進めることができる。
図23は、本発明の第3実施形態における鉄筋支持装置10’の正面図である。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
前述の第1実施形態では、鉄筋支持装置10を構成するアーム部材13a〜13fが、上から下に向かって順に、互いに所定の間隔を空けて並んでいた。これに対し、本実施形態では、鉄筋支持装置10’を構成するアーム部材13a〜13fが、下から上に向かって順に、互いに所定の間隔を空けて並んでいる。本実施形態では、アーム部材13a〜13fのうち上方に位置するものほど、その延在方向の長さが長い。
本実施形態では、図23に示すように、倒伏状態のアーム部材13a〜13fの各々の先端部13qの凹部13rに鉄筋7を受け入れた状態で、鉄筋7の中心同士を結んだ仮想線L2は、鉛直方向に対して傾斜している。ここで、当該仮想線L2と鉛直方向とがなす角度(傾斜角度)θ8は鋭角である。この角度θ8は、図6に示した角度θ6と略同一である。
図24は、本発明の第4実施形態における鉄筋支持装置10”の正面図である。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
本実施形態では、前述の鉄筋支持装置10において5つのアーム部材13b〜13fを5つのアーム部材13aに置き換えた上で、柱部材12のうち6つのアーム部材13aが取り付けられる板状部分を図24に示すように直角台形状としたものである。この直角台形状における斜辺に沿うように、6つのアーム部材13aの基端部13pの枢支軸13tが並んでいる。
本実施形態では、図24に示すように、倒伏状態の6つのアーム部材13aの各々の先端部13qの凹部13rに鉄筋7を受け入れた状態で、鉄筋7の中心同士を結んだ仮想線L3は、鉛直方向に対して傾斜している。ここで、当該仮想線L3と鉛直方向とがなす角度(傾斜角度)θ9は鋭角である。この角度θ9は、図6に示した角度θ6と略同一である。
尚、前述の第1〜第4実施形態では、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物及び鉄筋支持装置を、上方に向かうほど幅広になるコンクリート構造物の構築施工に適用した例を説明したが、この他、上方に向かうほど幅狭になるコンクリート構造物の構築施工にも適用可能であることは言うまでもない。すなわち、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物及び鉄筋支持装置は、断面の形状及び/又は面積が鉛直方向に変化するあらゆる鉄筋コンクリート構造物の構築施工に適用可能である。
前述の第1〜第4実施形態では、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物及び鉄筋支持装置を、略左右対称であるコンクリート構造物の構築施工に適用した例を説明したが、この他、左右非対称であるコンクリート構造物の構築施工にも適用可能であることは言うまでもない。すなわち、鉄筋コンクリート構造物の意匠によって断面変化が非対称となり、前述の角度θ1と角度θ2とが同一とならない場合であっても、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物及び鉄筋支持装置を適用可能であることは明らかである。
前述の鉄筋支持装置10,10’のアーム部材13a〜13fの延在方向の長さを様々に変更することで、鉄筋支持装置10,10’における角度θ6,θ8を任意に変更することができる。すなわち、鉄筋支持装置10,10’のアーム部材13a〜13fの長さを様々に変更することで、前述の角度θ1〜θ5があらゆる角度であっても適切に対応することができる。
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。