JP2020047740A - 超電導コイル、及び、超電導機器 - Google Patents

超電導コイル、及び、超電導機器 Download PDF

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Abstract

【課題】熱暴走の発生が抑制された超電導コイルを提供する。【解決手段】超電導コイルの巻線部は、巻枠と、巻枠に巻き回され、コイル径方向に積層され、第1の領域と、第1の領域に対向する第2の領域を有し、第1の領域がコイル径方向に平行な側面を有する超電導線材と、第1の領域と第2の領域との間及び第1の領域側面の側の少なくともいずれか一方に位置し、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2/cm3・K以上の比熱を有する第1の粒子31と、第1の粒子31を囲む第1の高分子材料36と、を有する第1の層と、を備える。【選択図】図5

Description

本発明の実施形態は、超電導コイル、及び、超電導機器に関する。
例えば、核磁気共鳴装置(NMR)や磁気共鳴画像診断装置(MRI)では、強い磁場を発生させるために超電導コイルが用いられる。超電導コイルは、巻枠に超電導線材を巻き回すことにより形成されている。
超電導線材の一部の超電導状態が消失し常電導状態に転移するクエンチが生じると、クエンチが生じた部分でジュール熱が発生する。発生したジュール熱により、瞬時に多量の発熱が生じる熱暴走に至るおそれがある。熱暴走に至ると、超電導コイルが焼損するおそれがある。
特開平5−334919号公報
本発明が解決しようとする課題は、熱暴走の発生が抑制された超電導コイルを提供することにある。
実施形態の超電導コイルは、巻枠と、前記巻枠に巻き回され、コイル径方向に積層され、第1の領域と、前記第1の領域に対向する第2の領域を有し、前記第1の領域は前記コイル径方向に平行な側面を有する超電導線材と、前記第1の領域と前記第2の領域との間、及び、前記第1の領域の前記側面の側の少なくともいずれか一方に位置し、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する第1の粒子と、前記第1の粒子を囲む第1の高分子材料と、を有する第1の層と、を備える。
第1の実施形態の超電導コイルの模式斜視図。 第1の実施形態の超電導コイルの模式断面図。 第1の実施形態の超電導線材の模式斜視図。 第1の実施形態の超電導コイルの巻線部の一部の拡大模式断面図。 第1の実施形態の超電導コイルの線材保護層の拡大模式断面図。 第2の実施形態の超電導コイルの線材保護層の拡大模式断面図。 第3の実施形態の超電導コイルの巻線部の一部の拡大模式断面図。 第4の実施形態の超電導コイルの線材保護層の拡大模式断面図。 第5の実施形態の超電導コイルの線材保護層の拡大模式断面図。 第6の実施形態の超電導コイルの巻線部の一部の拡大模式断面図。 第7の実施形態の超電導コイルの巻線部の一部の拡大模式断面図。 第8の実施形態の超電導機器のブロック図。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の超電導コイルは、巻枠と、巻枠に巻き回され、コイル径方向に積層され、第1の領域と、第1の領域に対向する第2の領域を有し、第1の領域はコイル径方向に平行な側面を有する超電導線材と、第1の領域と第2の領域との間、及び、第1の領域の側面の側の少なくともいずれか一方に位置し、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する第1の粒子と、第1の粒子を囲む第1の高分子材料と、を有する第1の層と、を備える。
図1は、第1の実施形態の超電導コイルの模式斜視図である。図2は、第1の実施形態の超電導コイルの模式断面図である。図3は、第1の実施形態の超電導線材の模式斜視図である。
第1の実施形態の超電導コイル100は、例えば、核磁気共鳴装置(NMR)、磁気共鳴画像診断装置(MRI)、重粒子線治療器、又は、超電導磁気浮上式鉄道車両などの超電導機器の磁場発生用のコイルとして用いられる。
超電導コイル100のコイル径方向を第1の方向、コイル周方向を第2の方向、コイル径方向及びコイル周方向に垂直な方向を第3の方向と定義する。
超電導コイル100は、巻枠10、第1の絶縁板11a、第2の絶縁板11b、及び、巻線部12を備える。巻線部12は、超電導線材20と、線材保護層30(第1の層)を有する。線材保護層30は、第1の層の一例である。
図1は、第1の絶縁板11a、及び、第2の絶縁板11bを除いた状態を示す。
巻枠10は、例えば、繊維強化プラスチックで形成される。超電導線材20は、例えば、テープ形状である。超電導線材20は、図1に示すように、巻回中心Cを中心に、同心円状のいわゆるパンケーキ形状に巻枠10に巻き回される。
線材保護層30は、超電導線材20を固定する機能を有する。線材保護層30は、超電導線材20が、超電導機器の使用中の振動や、互いの摩擦により破壊されることを抑制する機能を有する。
線材保護層30は、例えば、超電導線材20を巻枠10に巻き回す際に、線材保護層30を構成する材料を超電導線材20の間に塗布することで形成することが可能である。また、線材保護層30は、例えば、超電導線材20を巻枠10に巻き回した後に、線材保護層30を構成する材料を含浸させることにより形成することが可能である。
第1の絶縁板11a、及び、第2の絶縁板11bは、例えば、繊維強化プラスチックで形成される。第1の絶縁板11a、及び、第2の絶縁板11bは、巻線部12を外部に対して絶縁する機能を有する。巻線部12は、第1の絶縁板11aと第2の絶縁板11bとの間に位置する。
超電導線材20は、図3に示すように、第1の安定化層21、基板23、中間層24、超電導層25、保護層26、第2の安定化層27を有する。超電導線材20は、多層構造である。
第1の安定化層21は、金属である。第1の安定化層21は、例えば、銅又はアルミニウムである。第1の安定化層21は、クエンチが生じた場合の電流迂回路となり、熱暴走を抑制する機能を有する。
基板23は、第1の安定化層21の上に設けられる。基板23は、金属である。基板23は、例えば、ニッケル基合金、ステンレス、又は、銅などの高強度の金属である。
中間層24は、基板23上に設けられる。中間層24は、複数の酸化物の積層構造を有する。中間層24は、超電導層25の結晶を配向させる機能を有する。
超電導層25は、中間層24上に設けられる。超電導層25は、例えば、希土類元素を含む酸化物である。超電導層25は、例えば、希土類元素、バリウム、及び、銅を含む酸化物超電導体である。
保護層26は、超電導層25上に設けられる。保護層26は、金属である。保護層26は、超電導層25に接して設けられる。保護層26は、例えば、銀、金、又は、白金である。保護層26は、超電導層25から酸素が拡散することを抑制する機能を有する。
第2の安定化層27は、保護層26上に設けられる。第2の安定化層27は、金属である。第2の安定化層27は、例えば、銅又はアルミニウムである。第2の安定化層27は、クエンチが生じた場合の電流迂回路となり、熱暴走を抑制する機能を有する。
図4は、第1の実施形態の超電導コイルの巻線部の一部の拡大模式断面図である。
図4は、超電導線材20の一部である第1の領域20a及び第2の領域20bを示す。第2の領域20bは、第1の領域20aに対向する。第1の領域20aは、第2の領域20bに対向する対向面P1aを有する。また、第1の領域20aは、コイル周方向及びコイル径方向がなす面に平行な側面P2aを有する。第2の領域20bは、第1の領域20aに対向する対向面P1bを有する。また、第2の領域20bは、コイル周方向及びコイル径方向に平行な側面P2bを有する。
第1の領域20aと第2の領域20bとの間、すなわち、対向面P1aと対向面P1bとの間に線材保護層30が存在する。また、第1の領域20aの側面P2aの側、及び、第2の領域20bの側面P2bの側に、線材保護層30が存在する。
図5は、第1の実施形態の超電導コイルの線材保護層の拡大模式断面図である。
線材保護層30は、第1の粒子31、被覆層33、及び、第1の高分子材料36を含む。
第1の粒子31は、いわゆる、フィラ―である。第1の粒子31は、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する。第1の粒子31は、例えば、4K以上40K以下の温度範囲で2.0J/cm・K以下の比熱を有する。第1の粒子31は、極低温で高い比熱を有する材料を含む。
第1の粒子31は、例えば、金属酸化物を含む。第1の粒子31に含まれる金属酸化物は、例えば、酸化銀、又は、酸化銅である。第1の粒子31は、例えば、AgO、又は、CuOを含む。AgO、及び、CuOは、非磁性である。AgO、及び、CuOは、20K以上40K以下の広い温度範囲で高い比熱を有する。
第1の粒子31は、例えば、希土類化合物を含む。第1の粒子31に含まれる希土類化合物は、例えば、HoCu、ErNi、PrCu、DyCu、GdCuである。HoCu、ErNi、PrCu、DyCu、GdCuは、磁性体である。
HoCu、ErNi、PrCu、DyCu、GdCuは、4K以上40K以下の温度範囲で、反強磁性転移に伴うアスペクト比が高い大きい比熱のピークを有する。特に、HoCu、ErNi、PrCuは、4K以上20K未満の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する。HoCu、ErNi、PrCuは、4K以上20K未満の少なくとも一部の温度範囲で比熱のピークを有する。
第1の粒子31は、例えば、ガドリニウム及びイオウを含む酸化物を含む。第1の粒子31は、例えば、例えば、GdSを含む。
第1の粒子31は、例えば、金属を含む。第1の粒子31に含まれる金属は、例えば、ビスマス(Bi)、又は、鉛(Pb)である。ビスマス(Bi)、及び、鉛(Pb)は、20K以上40K以下の広い温度範囲で高い比熱を有する。
第1の粒子31の形状は、例えば、球状、俵状、回転楕円体状、円柱状、繊維状、不定形状であり、特に、限定されるものではない。図5は、第1の粒子31の形状が球状の場合を例示している。
第1の粒子31の粒径は、例えば、1.5μm以上200μm以下である。
被覆層33は、第1の粒子31を被覆する。被覆層33は、導電性及び熱伝導率の高い金属である。被覆層33は、例えば、銀、金、ニッケル、又は、銅である。被覆層33は、例えば、第1の粒子31の表面にめっき法により形成された膜である。
第1の高分子材料36は、第1の粒子31を囲む。第1の高分子材料36は、いわゆる、バインダである。第1の高分子材料36は、第1の粒子31及び被覆層33を相互に接着する。
第1の高分子材料36は、例えば、樹脂を主成分として含む。第1の高分子材料36は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂である。
線材保護層30の中の第1の粒子31の占有率は、例えば、20%以上80%以下である。
第1の粒子31及び被覆層33に含まれる材料の判定は、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により化学組成を分析することで可能となる。
第1の高分子材料36に含まれる材料の判定は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により行うことが可能である。
線材保護層30の中の第1の粒子31の占有率は、例えば、光学顕微鏡画像又はSEM画像で観察される第1の粒子31の占める面積割合で代表させる。第1の粒子31の占有率は、例えば、光学顕微鏡画像又はSEM画像の画像解析により求めることが可能である。
第1の実施形態の超電導コイル100は、巻枠10に超電導線材20を同心円状に巻き回して製造する。線材保護層30は、例えば、超電導線材20を巻き回す際に、線材保護層30を構成する材料を超電導線材20の間に塗りこんで含浸させる方法で形成する。また、線材保護層30は、例えば、超電導線材20を巻き回して固定させた状態で、真空中で線材保護層30を構成する材料を流しいれて含浸させる方法で形成しても良い。
以下、第1の実施形態の超電導コイル100の作用及び効果について説明する。
超電導コイルを有する超電導機器の使用中に、超電導コイルの超電導線材の一部の超電導状態が消失し常電導状態に転移するクエンチが生じる場合がある。クエンチが生じると、クエンチが生じた部分でジュール熱が発生する。発生したジュール熱により、瞬時に多量の発熱が生じる熱暴走に至るおそれがある。熱暴走に至ると、超電導コイルが焼損するおそれがある。
特に、第1の実施形態の超電導コイル100のように、超電導線材20の超電導層25が、希土類元素を含む酸化物である場合、常電導状態に転移した箇所の伝搬が遅いため、クエンチが生じた部分での発熱が大きくなり、熱暴走に至りやすい。さらに、テープ状のRE系線材はテープ長手方向への引張強度は高いものの、層間方向の強度が弱い。このため、冷却時の熱応力や通電時の電磁応力により層間方向に応力がかかると剥離が起こり、クエンチするおそれがある。
第1の実施形態の超電導コイル100は、線材保護層30の中に、極低温で高い比熱を有する第1の粒子31をフィラ―として有する。また、第1の粒子31を被覆する、導電性及び熱伝導率の高い金属の被覆層33を有する。
仮に、クエンチが発生した場合でも、被覆層33を通って電流が迂回することで、局所的な発熱が抑制される。したがって、超電導コイルが熱暴走に至ることを抑制できる。さらに、極低温で高い比熱を有する第1の粒子31が発生した熱を吸収する。したがって、クエンチが発生した箇所の温度上昇を緩和する。したがって、超電導コイル100が熱暴走に至ることを抑制できる。
第1の粒子31は、20K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有することが好ましい。クエンチが生じた後、20K程度までは、温度の上昇が早いと考えられる。上記構成とすることで、温度が20Kに達した後の、発熱の吸収が効果的に行われ、クエンチが発生した箇所の温度上昇を緩和することができる。
第1の粒子31は、20Kで0.2J/cm・K以上の比熱を有することが好ましい。超電導線材20の第1の安定化層21や第2の安定化層27には、例えば、銅が適用される。銅の比熱は、20Kで0.2J/cm・K未満である。上記構成とすることで、温度が20K近傍の発熱の吸収が効果的に行われ、クエンチが発生した箇所の温度上昇を緩和することができる。
第1の粒子31は、4K以上40K以下の温度範囲で、銅以上の比熱を有することが好ましい。上述のように、超電導線材20の第1の安定化層21や第2の安定化層27には、例えば、銅が適用される。上記構成とすることで、4K以上40K以下の温度範囲での発熱の吸収が効果的に行われ、クエンチが発生した箇所の温度上昇を緩和することができる。
第1の粒子31の比熱は、4K以上40K以下の温度範囲で、2.0J/cm・K以下であることが好ましい。比熱が上記範囲にあることで、超電導コイルの冷却が容易となる。
以上、第1の実施形態によれば、クエンチが発生した箇所の温度上昇が抑制され、超電導コイルが熱暴走に至ることを抑制できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態の超電導コイルは、第1の層が第1の粒子を被覆する被覆層を有しない点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
図6は、第2の実施形態の超電導コイルの線材保護層の拡大模式断面図である。
線材保護層30は、第1の粒子31、及び、第1の高分子材料36を含む。
第2の実施形態の超電導コイルでは、極低温で高い比熱を有する第1の粒子31が発生した熱を吸収する。したがって、クエンチが発生した箇所の温度上昇を緩和する。したがって、超電導コイルが熱暴走に至ることを抑制できる。
以上、第2の実施形態によれば、クエンチが発生した箇所の温度上昇が抑制され、超電導コイルが熱暴走に至ることを抑制できる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態の超電導コイルは、第1の領域の側面の側のみに、第1の層を有する点で、第1の実施形態と異なっている。
図7は、第3の実施形態の超電導コイルの巻線部の一部の拡大模式断面図である。
図7は、超電導線材20の一部である第1の領域20a及び第2の領域20bを示す。第1の領域20aは、第2の領域20bに対向する対向面P1aと、コイル径方向に直交する方向、すなわち第3の方向に位置する側面P2aを有する。第2の領域20bは、第1の領域20aに対向する対向面P1bと、コイル径方向に直交する方向に位置する側面P2bを有する。
第1の領域20aの側面P2aの側、及び、第2の領域20bの側面P2bの側に、線材保護層30が存在する。第1の領域20aと第2の領域20bとの間、すなわち、対向面P1aと対向面P1bとの間には、線間保護層60が存在する。
線材保護層30は、第1の粒子31、被覆層33、第1の高分子材料36を含む。一方、線間保護層60には、第1の粒子31、及び、被覆層33は含まれない。
線間保護層60は、第1の高分子材料36と同一、又は、異なる高分子材料が含まれる。線間保護層60には、第1の粒子31と異なる粒子がフィラ―として含まれても構わない。
第3の実施形態の超電導コイルは、第1の実施形態と同様、巻枠10に超電導線材20を同心円状に巻き回して製造する。線間保護層60は、例えば、超電導線材20を巻き回す際に、線間保護層60を構成する材料を超電導線材20の間に塗りこんで含浸させる方法で形成する。また、線間保護層60は、例えば、超電導線材20を巻き回して固定させた状態で、真空中で線間保護層60を構成する材料を流しいれて含浸させる方法で形成しても良い。線間保護層60を、超電導線材20の間に形成した後、超電導線材20の側面の側に線材保護層30を形成する。線材保護層30は、例えば、超電導線材20の側面に、超電導線材20を構成する材料を塗布することにより形成する。
第1の実施形態の超電導コイルと比較して、第3の実施形態の超電導コイルでは、高い比熱を有する材料の体積が減少する。したがって、超電導コイルの冷却を短時間で行うことが可能である。よって、超電導コイルの利便性が向上する。
以上、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、クエンチが発生した箇所の温度上昇が抑制され、超電導コイルが熱暴走に至ることを抑制できる。更に、超電導コイルの利便性が向上する。
(第4の実施形態)
第4の実施形態の超電導コイルは、第1の層は、第1の粒子と形状又はサイズが異なり、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する第2の粒子を、有する点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
図8は、第4の実施形態の超電導コイルの線材保護層の拡大模式断面図である。
線材保護層30は、第1の粒子31、第2の粒子32、被覆層33、及び、第1の高分子材料36を含む。
第1の粒子31は、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する。
第2の粒子32は、第1の粒子31と形状又はサイズが異なる。第2の粒子32は、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する。
第1の粒子31は、例えば、球状である。第2の粒子32は、例えば、円筒状である。
被覆層33は、第1の粒子31及び第2の粒子32を被覆する。被覆層33は、導電性及び熱伝導率の高い金属である。
第4の実施形態の超電導コイルでは、形状又はサイズが異なる2種の粒子を有する。このため、線材保護層30の中の粒子の占有率を高くすることが可能となる。したがって、クエンチが発生した場合に、被覆層33を通って大きな電流を迂回させることが可能となる。したがって、局所的な発熱が更に抑制される。よって、超電導コイルが熱暴走に至ること更に抑制できる。
また、粒子の占有率が高くなることで、発生した熱を多く吸収することができる。したがって、クエンチが発生した箇所の温度上昇を更に緩和することができる。したがって、超電導コイルが熱暴走に至ることを更に抑制できる。
なお、第2の粒子32は、第1の粒子31とサイズのみ異なる粒子とすることも可能である。例えば、第1の粒子31及び第2の粒子32の両方が球状又は円筒形状であっても構わない。
以上、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と比較して、クエンチが発生した箇所の温度上昇が更に抑制され、超電導コイルが熱暴走に至ることを更に抑制できる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態の超電導コイルは、第1の層は、第1の粒子と化学組成が異なり、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する第2の粒子を、有する点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
図9は、第5の実施形態の超電導コイルの線材保護層の拡大模式断面図である。
線材保護層30は、第1の粒子31、第2の粒子32、被覆層33、及び、第1の高分子材料36を含む。
第1の粒子31は、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する。
第2の粒子32は、第1の粒子31と化学組成が異なる。第2の粒子32は、第1の粒子31と異なる比熱を有する。第2の粒子32は、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する。
第1の粒子31は、例えば、球状である。第2の粒子32は、例えば、球状である。
被覆層33は、第1の粒子31及び第2の粒子32を被覆する。被覆層33は、導電性及び熱伝導率の高い金属である。
第5の実施形態の超電導コイルでは、比熱が異なる2種の粒子を有する。このため、例えば、広い温度範囲で熱の吸収を行うことが可能となる。したがって、クエンチが発生した箇所の温度上昇を大きく緩和することができる。よって、例えば、第1の実施形態と比較して、超電導コイルが熱暴走に至ることを更に抑制できる。
第1の粒子31は20K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有し、第2の粒子32は4K以上20K未満の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有することが好ましい。
具体的には、例えば、第1の粒子31が、AgO、又は、CuOであり、第2の粒子32が、HoCu、ErNi、又は、PrCuである。
4K以上40K以下の広い温度範囲で、発熱の吸収が可能となり、超電導コイルが熱暴走に至ることを更に抑制できる。
以上、第5の実施形態によれば、第1の実施形態と比較して、クエンチが発生した箇所の温度上昇が更に抑制され、超電導コイルが熱暴走に至ることを更に抑制できる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態の超電導コイルは、第1の領域と第1の層との間に位置し、第1の高分子材料と異なる第2の高分子材料を含む第2の層を、更に備える点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
図10は、第6の実施形態の超電導コイルの巻線部の一部の拡大模式断面図である。
図10は、超電導線材20の一部である第1の領域20a及び第2の領域20bを示す。第1の領域20aと第2の領域20bとの間に、線材保護層30が存在する。更に、第1の領域20aと線材保護層30との間にバッファ層40(第2の層)を有する。
バッファ層40は、第1の高分子材料36と異なる第2の高分子材料を含む。バッファ層40は第2の層の一例である。
第2の高分子材料は、例えば、第1の高分子材料36よりも引張応力に対する耐性が低い材料である。また、第2の高分子材料は、例えば、第1の高分子材料36よりも塑性変形の大きな材料である。
第2の高分子材料は、例えば、ポリイミド樹脂、パラフィン、ワックス、又は、グリスである。
線材保護層が超電導線材の間に設けられる超電導コイルにおいて、クエンチが生じる原因の一つは、応力による超電導線材の破壊と考えられている。超電導線材と線材保護層とは熱膨張係数が異なる。一般に、金属や酸化物の超電導線材と比較して、高分子材料の線材保護層の熱膨張係数は大きい。
このため、超電導コイルが使用温度まで冷却される際、線材保護層の熱収縮の方が、超電導線材の熱収縮よりも大きくなる。したがって、冷却により超電導線材に引張応力が印加される。引張応力により、超電導線材が破壊され、破壊箇所でクエンチが生ずると考えられる。
特に超電導線材20の超電導層25が、希土類元素を含む酸化物である場合、超電導線材20は、図3に示すように、超電導層25が金属層である保護層26と接する多層構造を有する。超電導層25と保護層26との間の密着性は、比較的低い。このため、超電導線材20に引張応力が印加されると、超電導層25と保護層26との間が剥離して、超電導線材20の破壊が生じやすい。
第6の実施形態の超電導コイルでは、超電導コイルが使用温度まで冷却される際、超電導線材20に先立ち、バッファ層40が引張応力により破壊される。或いは、バッファ層40が塑性変形することにより、超電導線材20に印加される引張応力が緩和される。したがって、超電導線材20の破壊が抑制される。よって、クエンチの発生が抑制される。
なお、バッファ層40は、第2の領域20bと線材保護層30との間に設けられても構わない。また、バッファ層40は、第1の領域20aと線材保護層30との間、及び、第2の領域20bと線材保護層30との間に設けられても構わない。
以上、第6の実施形態によれば、第1の実施形態同様、クエンチが発生した箇所の温度上昇が抑制され、超電導コイルが熱暴走に至ることを抑制できる。更に、クエンチの発生が抑制される。
(第7の実施形態)
第7の実施形態の超電導コイルは、第1の領域と第2の領域との間に、絶縁テープを、更に備える点で、第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
図11は、第7の実施形態の超電導コイルの巻線部の一部の拡大模式断面図である。
図11は、超電導線材20の一部である第1の領域20a及び第2の領域20bを示す。第1の領域20aと第2の領域20bとの間に、線材保護層30が存在する。更に、第1の領域20aと第2の領域20bとの間に絶縁テープ45を有する。
絶縁テープ45は、例えば、フッ素コートされたポリイミドテープである。
第1の領域20aと第2の領域20bとの間に、絶縁テープ45を設けることにより、第1の領域20aと第2の領域20bの間の絶縁性を高め、第1の領域20aと第2の領域20bとの間での短絡を防止する。これにより、クエンチの発生が抑制され、超電導コイルが発生させる磁場を安定化できる。
また、絶縁テープ45がフッ素コートされていることにより、線材保護層30と超電導線材20の間の密着性が低下する。したがって、冷却時に超電導線材20加わる熱応力が緩和される。したがって、超電導線材20の破壊が抑制される。よって、クエンチの発生が抑制される。
以上、第7の実施形態によれば、第1の実施形態同様、冷却時の熱応力を緩和しクエンチを抑制しつつ、クエンチが発生した箇所の温度上昇が抑制され、超電導コイルが熱暴走に至ることを抑制できる。
(第8の実施形態)
第8の実施形態の超電導機器は、第1ないし第7の実施形態の超電導コイルを備えた超電導機器である。以下、第1ないし第7の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
図12は、第8の実施形態の超電導機器のブロック図である。第8の実施形態の超電導機器は、重粒子線治療器200である。重粒子線治療器200は、超電導機器の一例である。
重粒子線治療器200は、入射系50、シンクロトロン加速器52、ビーム輸送系54、照射系56、制御系58を備える。
入射系50は、例えば、治療に用いる炭素イオンを生成し、シンクロトロン加速器52に入射するための予備加速を行う機能を有する。入射系50は、例えば、イオン発生源と線形加速器を有する。
シンクロトロン加速器52は、入射系50から入射された炭素イオンビームを治療に適合したエネルギーまで加速する機能を有する。シンクロトロン加速器52に、第1ないし第7の実施形態の超電導コイルが用いられる。
ビーム輸送系54は、シンクロトロン加速器52から入射された炭素イオンビームを照射系56まで輸送する機能を有する。ビーム輸送系54は、例えば、偏向電磁石を有する。
照射系56は、ビーム輸送系54から入射された炭素イオンビームを照射対象である患者に照射する機能を備える。照射系56は、例えば、炭素イオンビームを任意の方向から照射可能にする回転ガントリーを有する。回転ガントリーに、第1ないし第7の実施形態の超電導コイルが用いられる。
制御系58は、入射系50、シンクロトロン加速器52、ビーム輸送系54、及び、照射系56の制御を行う。制御系58は、例えば、コンピュータである。
第8の実施形態の重粒子線治療器200は、シンクロトロン加速器52及び回転ガントリーに、第1ないし第7の実施形態の超電導コイルが用いられる。したがって、クエンチの発生が抑制され高い信頼性が実現される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10 巻枠
11a 第1の絶縁板
11b 第2の絶縁板
12 巻線部
20 超電導線材
20a 第1の領域
20b 第2の領域
21 第1の安定化層
23 基板
24 中間層
25 超電導層
26 保護層
27 第2の安定化層
30 線材保護層
31 第1の粒子
32 第2の粒子
33 被覆層
36 第1の高分子材料
40 バッファ層
60 線間保護層
100 超電導コイル
200 重粒子線治療器
P1a 対向面
P1b 対向面
P2a 側面
P2b 側面

Claims (14)

  1. 巻枠と、
    前記巻枠に巻き回され、コイル径方向に積層され、第1の領域と、前記第1の領域に対向する第2の領域を有し、前記第1の領域は前記コイル径方向に平行な側面を有する超電導線材と、
    前記第1の領域と前記第2の領域との間、及び、前記第1の領域の前記側面の側の少なくともいずれか一方に位置し、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する第1の粒子と、前記第1の粒子を囲む第1の高分子材料と、を有する第1の層と、
    を備える超電導コイル。
  2. 前記第1の粒子は、20K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する請求項1記載の超電導コイル。
  3. 前記第1の層が、前記第1の粒子を被覆する金属の被覆層を有する請求項1又は請求項2記載の超電導コイル。
  4. 前記第1の層は、前記第1の粒子と形状又はサイズが異なり、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する第2の粒子を、有する請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の超電導コイル。
  5. 前記第1の層は、前記第1の粒子と化学組成が異なり、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する第2の粒子を、有する請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の超電導コイル。
  6. 前記第1の粒子は20K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有し、前記第2の粒子は4K以上20K未満の少なくとも一部の温度範囲で0.2J/cm・K以上の比熱を有する請求項5記載の超電導コイル。
  7. 前記第1の領域と前記第1の層との間に位置し、前記第1の高分子材料と異なる第2の高分子材料を含む第2の層を、更に備える請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の超電導コイル。
  8. 前記第1の粒子は、4K以上40K以下の少なくとも一部の温度範囲で比熱のピークを有する請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の超電導コイル。
  9. 前記第1の粒子は、20Kで0.2J/cm・K以上の比熱を有する請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の超電導コイル。
  10. 前記第1の粒子は、酸化銀、又は、酸化銅を含む請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の超電導コイル。
  11. 前記第1の粒子は、希土類化合物、又は、ガドリニウム及びイオウを含む酸化物、を含む請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の超電導コイル。
  12. 前記第1の高分子材料はエポキシ樹脂である請求項1ないし請求項11いずれか一項記載の超電導コイル。
  13. 前記超電導線材は、希土類元素を含む酸化物の超電導層を含む請求項1ないし請求項12いずれか一項記載の超電導コイル。
  14. 請求項1ないし請求項13いずれか一項記載の超電導コイルを備える超電導機器。


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