JP6035050B2 - 超電導コイル装置及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば基板上に希土類系酸化物超電導体による超電導層を有するテープ状の超電導線材を巻回して形成され、冷却時における熱応力や使用時における電磁応力による超電導線材の損傷を抑えて、超電導特性を良好に維持することができる超電導コイル装置及びその製造方法に関する。
希土類系酸化物超電導体を用いたテープ状の超電導線材を巻回してなる超電導コイル装置は、高磁場マグネット等として好適に利用される。この超電導コイル装置を液体窒素等で冷却したときには、超電導線材と樹脂との熱膨張率の差異に基づいて超電導線材の各層間を剥離する応力が作用する。また、高磁場マグネットにおいては、発生した高磁場に基づいて超電導コイルに周方向や径方向に電磁応力が作用する。このため、多層構造を有する超電導線材の各層間には剥離が生じ、超電導特性が低下する。従って、超電導コイル装置には、超電導線材の層間剥離を抑え、超電導特性を維持できることが求められる。
この種の超電導コイル装置が特許文献1に開示されている。すなわち、この超電導コイル装置はテープ状の超電導線材と、絶縁材とを巻回して形成され、前記絶縁材表面にパラフィン等による離形処理が、絶縁材の幅方向両端部を除く少なくとも一部に施されている。さらに、超電導線材の幅方向の両端部が樹脂によって固定されている。そして、超電導線材に働く剥離力を低減させるとともに、超電導線材の径方向に対する伝熱性能を向上させるように構成されている。
特開2010−267822号公報
しかしながら、前述した特許文献1に記載されている従来構成の超電導コイル装置においては、例えば超電導コイルを冷却したとき、樹脂と超電導線材との熱膨張率の相違に基づいて、超電導線材の幅方向の両端部において樹脂と超電導線材との間で剥離が生じ、そこを起点として超電導線材の層間に剥離が進行する。この場合、超電導線材と絶縁材との間は離型材により離間するが、超電導線材の幅方向両端部における樹脂と超電導線材との剥離によって超電導線材の層間剥離が起き、超電導層が剥離するに到る。従って、超電導コイル装置の超電導特性が低下するおそれがあるという問題があった。
そこで、本発明の目的とするところは、コイルの全体的な変形を抑えるとともに、超電導線材の幅方向の端部における応力集中を抑制して層間剥離を回避し、超電導特性を維持することができる超電導コイル装置及びその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の超電導コイル装置は、基板上に中間層を介して希土類系酸化物超電導体の超電導層が形成され、その超電導層上に安定化層が形成されるとともに、それらの外周部に絶縁被覆層が形成されたテープ状の超電導線材を巻回して超電導コイルを形成し、該超電導コイルの外周を保護被覆層で被覆した超電導コイル装置であって、前記保護被覆層を、内側の低強度保護被覆層と外側の高強度保護被覆層とを積層して構成するとともに、前記低強度保護被覆層を炭素数が20〜35の固形パラフィンにより構成したことを特徴とする。
請求項2に記載の発明の超電導コイル装置は、請求項1に係る発明において、前記保護被覆層は、超電導コイルの両端面と内外周面とに連続して形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明の超電導コイル装置は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記低強度保護被覆層は前記固形パラフィンにより形成されているとともに、高強度保護被覆層はエポキシ樹脂又はポリアミド樹脂により形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明の超電導コイル装置は、請求項1から請求項3のいずれか一項に係る発明において、前記低強度保護被覆層の厚さは10〜150μmであるとともに、高強度保護被覆層の厚さは50〜300μmであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明の超電導コイル装置の製造方法は、請求項3又は請求項4に記載の超電導線材の超電導コイルの製造方法であって、前記基板上に中間層を介して希土類系酸化物超電導体の超電導層を形成し、その超電導層上に安定化層を形成するとともに、それらの外周部に絶縁被覆層を形成したテープ状の超電導線材を巻回して超電導コイルを形成し、該超電導コイルの外周を保護被覆層で被覆し、前記低強度保護被覆層は超電導線材を前記固形パラフィン中に浸漬して引き上げ、固化することにより形成されるとともに、高強度保護被覆層は低強度保護被覆層が形成された超電導線材をエポキシ樹脂液又はポリアミド樹脂液中に浸漬して引き上げ、硬化することにより形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明の超電導コイル装置では、外周部に絶縁被覆層が形成されたテープ状の超電導線材を巻回して超電導コイルが形成され、該超電導コイルの外周が保護被覆層で被覆されている。この保護被覆層は、内側の低強度保護被覆層と外側の高強度保護被覆層とが積層して構成されている。前記低強度保護被覆層は、炭素数が20〜35の固形パラフィンにより構成されている。
このため、超電導コイル装置が応力を受けたとき、その応力は外側の例えばエポキシ樹脂で形成された高強度保護被覆層で受け止められ、超電導コイル装置の全体的な変形が抑えられる。その上、内側の前記固形パラフィンで形成された低強度保護被覆層に作用する応力によりその低強度保護被覆層が変形し、超電導線材の幅方向端部における応力集中の発生を抑制することができる。従って、超電導線材の各層間の剥離が抑えられ、超電導線材は良好な状態が維持される。
よって、本発明の超電導コイル装置によれば、コイルの全体的な変形を抑えるとともに、超電導線材の幅方向の端部における応力集中を抑制して層間剥離を回避し、超電導特性を維持することができるという効果を奏する。
本発明の実施形態における超電導コイル装置の一部を破断して示す縦断面図。 テープ状の超電導線材を示す断面図。 (a)はシングルパンケーキコイルを示す平面図、(b)はそのシングルパンケーキコイルを示す概略縦断面図。 ダブルパンケーキコイルを示す概略縦断面図。 本発明の実施例の超電導コイル装置に関する通電特性を示し、電流と電圧との関係を示すグラフ。 比較例の超電導コイル装置に関する通電特性を示し、電流と電圧との関係を示すグラフ。 他の比較例の超電導コイル装置に関する通電特性を示し、電流と電圧との関係を示すグラフ。
以下、本発明の超電導コイル装置をシングルパンケーキコイル又はダブルパンケーキコイルで形成した実施形態に関し、図1〜図7に基づいて詳細に説明する。
図3(a)、(b)に示すように、超電導コイルとしてのシングルパンケーキコイル11は、テープ状の超電導線材12が平面渦巻き状に巻回されて構成されている。この超電導線材12の始端と終端には図示しない電極が取付けられている。なお、シングルパンケーキコイル11の中心位置に図示しない円筒状の内周枠を配置することにより、その内周枠の周囲に超電導線材12を巻回することができ、シングルパンケーキコイル11を容易に形成することができる。また、シングルパンケーキコイル11の外周に繊維強化樹脂(FRP)等により形成された図示しない円筒状の外周枠を配置することにより、シングルパンケーキコイル11が電磁応力を受けたときに、そのシングルパンケーキコイル11の拡径を抑えることができる。
図2に示すように、前記テープ状の超電導線材12は、基板13上に中間層14を介して超電導層15が形成され、その超電導層15上に安定化層16が形成され、それらの各層を包むように絶縁被覆層17が形成されて構成されている。前記基板13は、ニッケル合金(ハステロイ)、銀、銀合金等の金属により、例えば厚さ100μm、幅10mmに形成されている。なお、ハステロイ(登録商標)は、ニッケルを主成分とし、クロム、モリブデン等を含む合金で、耐熱性、機械的強度等が良好である。中間層14は、ガドリニウム・ジルコニウム酸化物(Gd・Zr酸化物)、酸化マグネシウム(MgO)、イットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)、バリウム・ジルコニウム酸化物(Ba・Zr酸化物)、酸化セリウム(CeO)等の化合物により、例えば厚さ500nm、幅10mmに形成されている。
超電導層15は、希土類系酸化物超電導体のCVD法(化学蒸着法)により、例えば厚さ約1μm、幅10mmに形成されている。希土類元素としては、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)等が挙げられる。希土類系酸化物としては、RE・Ba・Cu・O等が挙げられる。但し、REは希土類元素を表す。この超電導層15として具体的には、イットリウム・バリウム・銅酸化物(Y・Ba・Cu酸化物)、ランタン・バリウム・銅酸化物(La・Ba・Cu酸化物)等が挙げられる。
安定化層16は、銀等の金属のスパッタリング等により、例えば厚さ約15μm、幅10mmに形成されている。なお、その安定化層16上に図示しない第2安定化層を積層してもよい。そのような第2安定化層は、例えば銅等の金属のメッキ等により、厚さ約50μmに形成される。
前記絶縁被覆層17は、柔軟性及び電気絶縁性を有する合成樹脂により前記各層の外周部を覆うように塗布法又は電着法により形成されている。絶縁被覆層17を形成する合成樹脂としては、ポリイミド樹脂を主成分とする合成樹脂が好ましく、ポリイミド樹脂単独、ポリイミド樹脂を主成分とし、エポキシ樹脂を含む合成樹脂等を用いることができる。このような柔軟性及び電気絶縁性を有する合成樹脂を用いることにより、超電導線材12の幅方向端部で受ける応力を受け止め、形状を保持できるとともに、電界の集中を緩和することができ、かつ伝導冷却を行うことができる。
図1に示すように、超電導線材12が巻回されて形成されたシングルパンケーキコイル11の外周には、内側の低強度保護被覆層18と外側の高強度保護被覆層19とよりなる保護被覆層20が被覆形成され、超電導コイル装置10が構成される。この保護被覆層20は、シングルパンケーキコイル11の両端面と内外周面とに連続して形成されている。
前記低強度保護被覆層18は、超電導コイル装置10が応力を受けたとき、その応力で自身が変形、或いは壊れて超電導線材12に応力を及ぼさず、保護するようになっている。この低強度保護被覆層18を形成する材料としては、パラフィンが用いられる。パラフィンとしては、炭素数が20〜35の固形パラフィン(パラフィンワックス、融点56〜58℃)が挙げられる。
低強度保護被覆層18の厚さは、10〜150μmであることが好ましい。この低強度保護被覆層18の厚さが10μmより薄い場合には、超電導コイル装置10が受けた応力を十分に吸収できず、超電導線材12に応力が作用するおそれがあって好ましくない。その一方、150μmより厚い場合には、そのような厚い低強度保護被覆層18の形成が困難になったり、超電導コイル装置10全体の形状を維持することが難しくなったりして好ましくない。
一方、高強度保護被覆層19は、シングルパンケーキコイル11に応力が作用したとき、その応力を受け止めてシングルパンケーキコイル11全体の変形を抑制し、超電導線材12を保護するようになっている。この高強度保護被覆層19を形成する材料としては、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が好適に用いられる。これらの樹脂は、超電導コイル装置10を液体ヘリウム、液体窒素等で冷却したときに耐え得る耐低温特性を有している。エポキシ樹脂としては、主剤としてビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等が用いられ、その硬化剤としてはジシアンジアミド、その誘導体等が用いられる。ポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)としては、ナイロン6、ナイロン11等が用いられる。ナイロン6は、ε−カプロラクタムを加熱して開環重合させることにより得られる。
高強度保護被覆層19の厚さは、50〜300μmであることが好ましい。高強度保護被覆層19の厚さが50μmより薄い場合には、超電導コイル装置10が応力を受けたとき、その応力を十分に受け止めることが難しくなり、シングルパンケーキコイル11全体が変形するおそれがある。一方、300μmより厚い場合には、そのような厚い高強度保護被覆層19を形成することが困難になって好ましくない。
図4に示すように、超電導コイルとしてのダブルパンケーキコイル11Aは、超電導線材12が巻回されて形成されたコイルが中間規制枠21を介して上下2段に積層されて構成されている。この超電導線材12の始端と終端には図示しない電極が取付けられている。
次に、前記超電導コイル装置10の製造方法について説明する。
図3(a)、(b)及び図4に示すように、まずテープ状の超電導線材12をその一端から所定の巻数で巻回してシングルパンケーキコイル11又はダブルパンケーキコイル11Aを形成する。続いて、これらのパンケーキコイル11,11Aを例えば固形パラフィンの融解液中に浸漬した後、冷却して固化し、パンケーキコイル11,11Aの周囲に低強度保護被覆層18を形成する。次いで、低強度保護被覆層18が形成されたパンケーキコイル11,11Aを、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル(硬化剤はジシアンジアミド)よりなるエポキシ樹脂液中に浸漬し、加熱、硬化させて、低強度保護被覆層18の周囲に高強度保護被覆層19を形成する。このようにして、図1に示すように、パンケーキコイル11,11Aの外周に、低強度保護被覆層18と高強度保護被覆層19とが順に積層された超電導コイル装置10が製造される。
次に、上記のように構成された超電導コイル装置10について作用を説明する。
さて、この実施形態の超電導コイル装置10を液体ヘリウム、液体窒素等で冷却したときには、超電導線材12の各層の熱膨張率の相違に基づく応力によってパンケーキコイル11,11Aが変形しようとする。このとき、超電導コイル装置10の最外周にはエポキシ樹脂により形成された剛性の高い高強度保護被覆層19が設けられていることから、パンケーキコイル11,11Aの動きが抑えられ、その変形を抑制することができる。
加えて、高強度保護被覆層19の内側には固体パラフィンにより形成された低強度保護被覆層18が設けられていることから、特に超電導線材12の幅方向端部に作用した応力によって固体パラフィンが変形する。このため、超電導線材12への応力の伝播が回避され、超電導線材12の層間剥離が抑えられる。
また、超電導コイル装置10を高磁場マグネット等として使用する場合、該超電導コイル装置10に通電して発生した高磁場に基づいて応力が作用したときにも、高強度保護被覆層19及び低強度保護被覆層18が上記と同様に機能して超電導線材12を保護することができる。
従って、本実施形態の超電導コイル装置10においては、そのコイル装置に作用する応力を高強度保護被覆層19で受け止めてコイル全体の変形を抑制できるとともに、パンケーキコイル11,11Aの周囲に形成されている低強度保護被覆層18が応力により変形して超電導線材12の局所的な損傷を抑えて保護することができる。
以上詳述した実施形態によって得られる効果を以下にまとめて記載する。
(1)この実施形態の超電導コイル装置10においては、絶縁被覆層17が被覆されたテープ状の超電導線材12を巻回してパンケーキコイル11,11Aが形成され、該パンケーキコイル11,11Aの外周が保護被覆層20で被覆されている。この保護被覆層20は、内側の低強度保護被覆層18と外側の高強度保護被覆層19とが積層して形成されている。
このため、超電導コイル装置10が応力を受けたとき、その応力は外側の高強度保護被覆層19により超電導コイル装置10の全体的な変形が抑えられる。その上、内側の低強度保護被覆層18に作用した応力によりその低強度保護被覆層18が変形し、超電導線材12の幅方向端部における応力集中の発生を抑制することができる。従って、超電導線材12の各層間が剥離することなく、良好な状態が維持される。
よって、本実施形態の超電導コイル装置10によれば、コイルの全体的な変形を抑えるとともに、超電導線材12の幅方向の端部における応力集中を抑制して層間剥離を回避し、超電導特性を維持することができるという優れた効果を奏する。
(2)前記保護被覆層20は、パンケーキコイル11,11Aの両端面と内外周面とに連続して形成されている。このため、高強度保護被覆層19と低強度保護被覆層18よりなる保護被覆層20の機能をパンケーキコイル11,11Aの周囲全体で有効に発現させることができる。
(3)前記低強度保護被覆層18は固形パラフィンにより形成されているとともに、高強度保護被覆層19はエポキシ樹脂又はポリアミド樹脂により形成されている。従って、固形パラフィンが応力に応じ変形してその応力を吸収し、エポキシ樹脂又はポリアミド樹脂が応力を受け止めて超電導線材12の変形を抑制することができる。
(4)前記低強度保護被覆層18の厚さは10〜150μmであるとともに、高強度保護被覆層19の厚さは50〜300μmである。そのため、低強度保護被覆層18は応力による変形が容易であり、高強度保護被覆層19は応力に対する抵抗性が高く、コイル全体の形状を保持することができる。
(5)前記低強度保護被覆層18は超電導線材12を固形パラフィン中に浸漬して引き上げ、固化することにより形成されるとともに、高強度保護被覆層19は低強度保護被覆層18が形成された超電導線材12をエポキシ樹脂液又はポリアミド樹脂液中に浸漬して引き上げ、硬化することにより形成されている。このため、低強度保護被覆層18及び高強度保護被覆層19を浸漬法によって容易に形成することができる。
ここで、前述のダブルパンケーキコイル11Aを用いた超電導コイル装置10に関し、冷却サイクル実施前後における通電特性の試験を行った結果について説明する。
超電導線材12の長さを50m、ダブルパンケーキコイル11Aの内径を200mm、コイルのターン数(巻数)を34とした。このダブルパンケーキコイル11Aを固形パラフィンの融解液に浸漬した後引き上げて冷却、固化し、ダブルパンケーキコイル11Aの周囲に低強度保護被覆層18を形成した。その後、エポキシ樹脂液(ビスフェノールAジグリシジルエーテルとジシアンジアミドの混合液)に浸漬して引き上げ、加熱、硬化して高強度保護被覆層19を形成した。
得られた超電導コイル装置10について、常温と20Kとの間で冷却サイクルを10回繰り返した後、液体窒素(77K)中で通電試験(電流−電圧曲線)を行い、その結果を図5(□印)に示した。そして、臨界電流とn値を評価した。なお、n値は電流−電圧曲線の臨界電流近傍での指数関数の指数を示し、超電導線材12としての良否を判断する数値である。
また、ダブルパンケーキコイル11Aに保護被覆層20が形成されていないもの(図5の△印)、ダブルパンケーキコイル11Aに保護被覆層20が形成されているが、冷却サイクルを行っていないもの(図5の○印)、及び超電導コイル装置10を20Kまで冷却したもの(図5の◇印)についても通電試験を行った。
図5に示した結果より、超電導コイル装置10について冷却サイクルを実施した後においても、超電導特性は良好であり、臨界電流は95A程度、n値は18〜19を示した。なお、冷却サイクルを実施しなかったもの、20Kまで冷却したもの、さらには保護被覆層20が形成されていないものについても、上記と同様の超電導特性が得られた。保護被覆層20が形成されていないものは、超電導線材12の外周が絶縁被覆層17により被覆され、超電導線材12間が拘束されていない(相対移動可能)ため、超電導特性が得られたものと考えられる。
さらに、比較のために、シングルパンケーキコイル11の外周をエポキシ樹脂のみで被覆した超電導コイル装置10について通電試験を行った。すなわち、長さ75mの超電導線材12を4本使用し、内径500mmのシングルパンケーキコイル11を製造した。このシングルパンケーキコイル11について通電試験を行い、その結果を図6に示した。図6において、◇印は最も内側のコイルの結果を示し、□印は内側から2番目のコイルの結果を示し、△印は内側から3番目のコイルの結果を示し、×印は最も外側のコイルの結果を示す。
図6に示した結果より、最も内側のコイルでは臨界電流が60A程度で、このシングルパンケーキコイル11の想定臨界電流200Aに対して半分以下の値を示した。内側から2番目のコイル及び最も外側のコイルでは、電流電圧曲線が歪んだ形状をなし、臨界電流も80A程度で、想定臨界電流の半分以下であった。さらに、内側から3番目のコイルでは、超電導特性を示さなかった。
次に、比較のために、超電導線材12間をポリイミド樹脂で接着したシングルパンケーキコイル11について通電試験を行った。すなわち、長さ10mの超電導線材12を用い、内径100mm、ターン数21のシングルパンケーキコイル11を製造し、通電特性を測定した。その結果を図7(×印)に示した。なお、超電導線材12をポリイミド樹脂で被覆して形成したシングルパンケーキコイル11(図7の△印)及びそのシングルパンケーキコイル11に常温と77Kとの間で冷却サイクルを10回繰り返したもの(図7の○印)についても、同様に通電特性を測定した。
その結果、超電導線材12をポリイミド樹脂で被覆した場合又はそれに冷却サイクルを施した場合、臨界電流は120A、n値は21であって、良好な超電導特性を示した。それに対し、超電導線材12間をポリイミド樹脂で接着したシングルパンケーキコイル11では、臨界電流が60〜80Aに低下し、n値も8〜11に低下して、超電導特性は悪化した。
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記高強度保護被覆層19を、ポリイミド樹脂又はポリイミド樹脂とポリアミド樹脂との混合物で形成してもよい。
・ 前記低強度保護被覆層18を粘性の高いパラフィン(炭素数の大きいもの)で構成し、低強度保護被覆層18の厚さをできるだけ均一に形成してもよい。
・ 前記低強度保護被覆層18及び高強度保護被覆層19を、パンケーキコイル11,11Aの両端面側で厚く形成し、内外周側で薄くなるように構成してもよい。
・ 前記低強度保護被覆層18及び高強度保護被覆層19をそれぞれ複数層で形成し、内周側ほど低強度で、外周側ほど高強度になるように構成してもよい。
10…超電導コイル装置、11…超電導コイルとしてのシングルパンケーキコイル、11A…超電導コイルとしてのダブルパンケーキコイル、12…超電導線材、13…基板、14…中間層、15…超電導層、16…安定化層、17…絶縁被覆層、18…低強度保護被覆層、19…高強度保護被覆層、20…保護被覆層。

Claims (5)

  1. 基板上に中間層を介して希土類系酸化物超電導体の超電導層が形成され、その超電導層上に安定化層が形成されるとともに、それらの外周部に絶縁被覆層が形成されたテープ状の超電導線材を巻回して超電導コイルを形成し、該超電導コイルの外周を保護被覆層で被覆した超電導コイル装置であって、
    前記保護被覆層を、内側の低強度保護被覆層と外側の高強度保護被覆層とを積層して構成するとともに、前記低強度保護被覆層を炭素数が20〜35の固形パラフィンにより構成したことを特徴とする超電導コイル装置。
  2. 前記保護被覆層は、超電導コイルの両端面と内外周面とに連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の超電導コイル装置。
  3. 前記低強度保護被覆層は前記固形パラフィンにより形成されているとともに、高強度保護被覆層はエポキシ樹脂又はポリアミド樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超電導線材の超電導コイル装置。
  4. 前記低強度保護被覆層の厚さは10〜150μmであるとともに、高強度保護被覆層の厚さは50〜300μmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超電導線材の超電導コイル装置。
  5. 請求項3又は請求項4に記載の超電導線材の超電導コイルの製造方法であって、
    前記基板上に中間層を介して希土類系酸化物超電導体の超電導層を形成し、その超電導層上に安定化層を形成するとともに、それらの外周部に絶縁被覆層を形成したテープ状の超電導線材を巻回して超電導コイルを形成し、該超電導コイルの外周を保護被覆層で被覆し、前記低強度保護被覆層は超電導線材を前記固形パラフィン中に浸漬して引き上げ、固化することにより形成されるとともに、高強度保護被覆層は低強度保護被覆層が形成された超電導線材をエポキシ樹脂液又はポリアミド樹脂液中に浸漬して引き上げ、硬化することにより形成されていることを特徴とする超電導線材の超電導コイル装置の製造方法
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