以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1〜図6は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。図1〜図5では、流量制御弁20が油圧回路10内におけるいわゆるショックレス弁として用いられる例について説明するが、流量制御弁20の用途はこれに限られず、種々の流体回路内における流体の流量が制御されるべき箇所に配置されて用いられ得る。図1は、流量制御弁20が組み込まれた作業機械の油圧回路10の一例を示す油圧回路図である。
図1に示された油圧回路10は、油圧ポンプ11から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量を制御するスプール弁13と、パイロットポンプ16で生成されたパイロット圧油の流路を選択するリモコン弁17と、スプール弁13とリモコン弁17との間を通流するパイロット圧油の流量を制御する流量制御弁(ショックレス弁)20と、を備えている。
スプール弁13は、スプール14を有している。スプール14は、パイロットポンプ16で生成されたパイロット圧油の圧力であるパイロット圧の作用により、その軸方向(長手方向、図1では左右方向)に沿った位置が変更され、これにより油圧ポンプ11から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量が連続的に変化する。パイロットポンプ16は、常に一定のパイロット圧を有するパイロット圧油を吐出する油圧ポンプであり、一例としてギアポンプが用いられる。図示された例では、スプール14は、その軸方向に沿った一端(図1では右端)及び他端(図1では左端)のいずれにもパイロット圧が作用しない場合、ばね15の押付力を受けて最も一端側に位置している。パイロット圧が流路101を介してスプール14の一端に作用し、ばね15による押付力に抗してスプール14が他端側へ向けて移動すると、油圧ポンプ11から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量は増加する。また、パイロット圧が流路102を介してスプール14の他端に作用し、スプール14が一端側へ向けて移動すると、作動油の流量は減少する。
リモコン弁17は、オペレータにより操作される操作レバー18を有しており、操作レバー18の操作に応じて、パイロットポンプ16で生成されたパイロット圧油の流路を、流路101、流路102又はタンク19から選択して接続する。操作レバー18が中立位置にある場合、リモコン弁17は、パイロットポンプ16とタンク19とを通じさせる。操作レバー18が第1操作位置へ向けて操作されると、リモコン弁17は、パイロットポンプ16と流路101とを連通させ、流路102とタンク19とを通じさせる。操作レバー18が第1操作位置とは異なる第2操作位置へ向けて操作されると、リモコン弁17は、パイロットポンプ16と流路102とを連通させ、流路101とタンク19とを通じさせる。
図示された油圧回路10では、オペレータが操作レバー18を操作していない場合には、リモコン弁17の操作レバー18は中立位置にあり、パイロットポンプ16で生成されたパイロット圧油は、リモコン弁17を介してタンク19へ排出される。したがって、スプール14の一端及び他端のいずれにもパイロット圧は作用しない。
オペレータにより操作レバー18が第1操作位置へ向けて操作されると、パイロットポンプ16で生成されたパイロット圧油は、リモコン弁17及び流路101を介してスプール弁13へ向かうとともに、スプール弁13から流路102を介してリモコン弁17へ向かう圧油は、タンク19へ排出される。これによりスプール14の一端にパイロット圧が作用し、ばね15による押付力に抗してスプール14が他端側へ向けて移動する。したがって、油圧ポンプ11から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量が増加し、油圧アクチュエータ12が一方向に駆動される。例えば、油圧ショベルのブームを駆動するための油圧シリンダが伸長し、ブームが上昇する。
オペレータにより操作レバー18が第2操作位置へ向けて操作されると、パイロットポンプ16で生成されたパイロット圧油は、リモコン弁17及び流路102を介してスプール弁13へ向かうとともに、スプール弁13から流路101を介してリモコン弁17へ向かう圧油は、タンク19へ排出される。これによりスプール14の他端にパイロット圧が作用し、スプール14が一端側へ向けて移動する。したがって、油圧ポンプ11から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量が減少し、油圧アクチュエータ12が他方向に駆動される。例えば、油圧ショベルのブームを駆動するための油圧シリンダが収縮し、ブームが下降する。
このような油圧回路10においては、スプール14の軸方向に沿った一方向への移動は速やかに行われる一方、他方向への移動は緩やかに行われることが要求される場合がある。例えば、油圧ショベル等の作業機械に取り付けられ、油圧回路を用いて駆動されるフロントリンケージ(ブーム、アーム及びバケット)は、比較的大きな重量を有している。この場合、フロントリンケージが油圧により作動された後、急停止されると、フロントリンケージの大きな慣性力に起因する衝撃が生じ、これにより作業機械全体が大きく揺動し得る。この揺動が収まるまではオペレータは次の動作ができないため、当該作業機械を用いた作業の効率が低下する。このため、図1に示された油圧回路10においては、リモコン弁17とスプール弁13とを通じさせる流路101の途中に流量制御弁(ショックレス弁)20が設けられている。
図2は、流量制御弁20の一例について説明するための油圧回路図である。図示された例では、流量制御弁20は、第1流体圧要素E1と第2流体圧要素E2との間に配置され、第1流体圧要素E1から第2流体圧要素E2へ向かう流体は速やかに通流させ、第2流体圧要素E2から第1流体圧要素E1へ向かう流体は緩やかに通流させる。流量制御弁20が、図1に示した油圧回路10に組み込まれる場合、例えば第1流体圧要素E1がリモコン弁17であり、第2流体圧要素E2がスプール弁13である。しかしこれに限られず、流量制御弁20に接続される第1流体圧要素E1及び第2流体圧要素E2は、他の油圧要素、空圧要素等の流体圧要素であってもよい。
図2に示された流量制御弁20は、絞り部22と、制御弁24と、チェック弁28とを備えている。なお、図2では、絞り部22、制御弁24、チェック弁28及び流路103,104を、いずれもその機能により概念的に示している。
絞り部22は、第1流体圧要素E1と第2流体圧要素E2とを通じさせる流路103の途中に設けられており、流路103を通流する圧油(流体)の単位時間当たりの流量を制限する。
制御弁24は、流路103を通流する圧油の単位時間当たりの流量を制御する。制御弁24は、流路103における、絞り部22の第1流体圧要素E1側の位置P1での圧油の圧力と、絞り部22の第2流体圧要素E2側の位置P2での圧油の圧力との差に応じて、流路103の通流断面積を変化させることにより、流路103を通流する圧油の単位時間当たりの流量を変化させる。図示された例では、位置P1での圧油の圧力と位置P2での圧油の圧力とが等しいときには、制御弁24における流路103の通流断面積が最大になっている。位置P2での圧油の圧力が位置P1での圧油の圧力よりも大きくなると、制御弁24は、流路103の通流断面積を減少させることにより、流路103を通流する圧油の単位時間当たりの流量を減少させる。また、位置P1での圧油の圧力と位置P2での圧油の圧力とが等しくなると、又は、位置P1での圧油の圧力が位置P2での圧油の圧力よりも大きくなると、制御弁24は、流路103の通流断面積を増加させることにより、流路103を通流する圧油の単位時間当たりの流量を増大させる。したがって、制御弁24は、流路103を通流する圧油の単位時間当たりの流量を制限する追加の絞り部として機能する。とりわけ制御弁24は、流路103の通流断面積を連続的に変化させることが可能な可変絞り弁として機能する。
流路103における絞り部22の第1流体圧要素E1側の位置P3から分岐して、絞り部22を迂回し、第2流体圧要素E2側の位置P4で流路103に合流する流路104の途中に、チェック弁28が設けられている。すなわち、チェック弁28は、絞り部22と並列に設けられている。位置P3は、位置P1に対して、第2流体圧要素E2側(絞り部22側)に位置してもよいし、第1流体圧要素E1側に位置してもよいし、位置P1と同一であってもよい。また、位置P4は、位置P2に対して、第1流体圧要素E1側(絞り部22側)に位置してもよいし、第2流体圧要素E2側に位置してもよいし、位置P2と同一であってもよい。流路104を通って位置P3からチェック弁28へ流入した圧油は、チェック弁28を通って位置P4へ向かう。その一方、流路104を通って位置P4からチェック弁28へ流入した圧油は、チェック弁28でその通流が妨げられ、位置P3へ向かうことはできない。
図2に示された流量制御弁20では、第1流体圧要素E1から第2流体圧要素E2へ向かう圧油は、流路103に沿って制御弁24を通過し、位置P3へ向かう。チェック弁28は、流路104を通って位置P3から位置P4へ向かう圧油の通流を許容する。絞り部22も、流路103を通って位置P3から位置P4へ向かう圧油の通流を許容するが、その単位時間当たりの流量を制限する。したがって、位置P3から位置P4へ向かう圧油は、主に流路104を通って、すなわちチェック弁28を通過して通流する。その後、圧油は、位置P4から流路103に沿って第2流体圧要素E2へ向かう。
第2流体圧要素E2から第1流体圧要素E1へ向かう圧油は、流路103に沿って位置P4へ向かう。ここで、チェック弁28は、流路104を通って位置P4から位置P3へ向かう圧油の通流を許容しない。この場合、位置P4から位置P3へ向かう圧油は、絞り部22を通流する。ここで、絞り部22を通流する圧油の単位時間当たりの流量は制限される。これにより、絞り部22の第2流体圧要素E2側の位置P2,P4における圧油の圧力と、絞り部22の第1流体圧要素E1側(制御弁24側)の位置P1,P3における圧油の圧力との間に差が生じる。具体的には、位置P2,P4における圧油の圧力が、位置P1,P3における圧油の圧力よりも大きくなる。位置P2,P4における圧油の圧力は、制御弁24に導入される。これにより、制御弁24は、流路103の通流断面積を減少させて、流路103を通流する圧油の単位時間当たりの流量を減少させる。このとき、制御弁24は、追加の絞り部として機能し、制御弁24を通流する圧油の単位時間当たりの流量を制限する。すなわち、絞り部22で単位時間当たりの通流流量が制限された圧油は、制御弁24においてさらにその単位時間当たりの通流流量が制限される。
圧油が第1流体圧要素E1から第2流体圧要素E2へ向かう際には、チェック弁28が圧油の通流を許容するので、圧油は流量制御弁20を速やかに通過する。第1流体圧要素E1がリモコン弁17であり、第2流体圧要素E2がスプール弁13である場合、リモコン弁17からスプール弁13へ向かうパイロット圧油は、流量制御弁20を通過して、スプール弁13を速やかに動作させる。したがって、油圧ポンプ11から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量は、速やかに増加する。
圧油が第2流体圧要素E2から第1流体圧要素E1へ向かう際には、チェック弁28が圧油の通流を許容しない。したがって、圧油は、絞り部22で単位時間当たりの通流流量が制限されるとともに、制御弁24においても単位時間当たりの通流流量がさらに制限される。第1流体圧要素E1がリモコン弁17であり、第2流体圧要素E2がスプール弁13である場合、スプール弁13からリモコン弁17へ向かう圧油は、流量制御弁20で単位時間当たりの通流流量が大きく制限される。これにより、スプール弁13は、緩やかな速度で動作する。したがって、油圧ポンプ11から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量は、緩やかな速度で減少する。
図1及び図2に示された例では、油圧アクチュエータ12への作動油の送出が開始される際には、油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量を速やかに増大させることができる。これにより、油圧アクチュエータ12の駆動開始時に、油圧アクチュエータ12に動作遅れが生じることを抑制することができる。したがって、油圧アクチュエータ12の駆動開始時に、操作レバー18を操作するオペレータが違和感を覚えたり、油圧アクチュエータ12を更に動作させようとしてさらに操作レバー18の不要な操作を行ってしまうことを防止することができる。
その一方、油圧アクチュエータ12への作動油の送出が停止される際には、油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量を緩やかな速度で減少させることができる。これにより、油圧アクチュエータ12が急停止して作業機械にフロントリンケージの大きな慣性力に起因する衝撃が生じることを、効果的に抑制することができる。したがって、作業機械全体が大きく揺動することを防止し、オペレータが迅速に次の動作を行うことができるようになる。すなわち、作業機械を用いた作業効率を効果的に向上させることが可能になる。
次に、図3〜図5を参照して、本実施の形態の流量制御弁20の具体的構造の一例について詳述する。図3は、流量制御弁20の一例を示す縦断面図であり、図4及び図5は、図3に対応する図であって、流量制御弁20の動作について説明するための図である。
図3に示された例では、流量制御弁20は、弁保持穴38を含む内部空間Sを画定するケーシング30と、弁保持穴38に移動可能に保持された弁体60と、を備えている。とりわけ図示された例では、流量制御弁20は、弁体60をその軸方向に沿って押す第1押付部材81及び第2押付部材82をさらに有している。以下、流量制御弁20の各構成要素について説明する。図3〜図5では、流量制御弁20の中心軸線Aに沿った方向を軸線方向daとし、軸線方向daに沿って流量制御弁20に対して外部部材90側(図3〜図5では下側)を「一側」、当該「一側」と反対側(図3〜図5では上側)を「他側」と呼ぶ。図3〜図5に示された例では、流量制御弁20は、その一側部分で第1流体圧要素E1と連通し、他側部分で第2流体圧要素E2と連通している。
ケーシング30は、内部空間Sを画定するケースとして機能する。図示された例では、ケーシング30は、第1ケーシング31と、第1ケーシング31に連結された第2ケーシング32と、を有しており、内部空間Sは、第1ケーシング31及び第2ケーシング32により画定される。ケーシング30を、第1ケーシング31と第2ケーシング32とに分割して形成することにより、ケーシング30の製造を容易にすることができる。ケーシング30には、第1ねじ部51が形成されており、この第1ねじ部51が外部部材90の凹部92に形成された外部ねじ部94に螺合することにより、流量制御弁20(ケーシング30)が外部部材90に取り付けられる。ケーシング30は、全体として概ね円柱状(円筒状)の形状を有しており、軸線方向daに沿って見たときに略円形形状を有している。外部部材90は、任意の油圧装置の一部である。図示された例では、外部部材90は、第1流体圧要素E1(リモコン弁17)に通じる部材である。
第1ケーシング31は、小径部31aと、小径部31aに対して他側に位置する大径部31bと、小径部31aの一側に突出して設けられた凸部34と、を有する。小径部31aは、大径部31bに対して相対的に小さい直径を有している。小径部31aの外周における一側には、第1ねじ部51が形成されている。第1ねじ部51は、雄ねじで構成されている。大径部31bは、小径部31aに対して相対的に大きな直径を有している。小径部31a及び大径部31bは、それぞれ概ね円筒状の形状を有している。凸部34は、その一側が閉塞された概ね円筒状の形状を有している。凸部34における軸線方向daに沿って延びる側面には、貫通孔として形成された複数の通路35が設けられている。通路35は、後述の弁保持穴38に開口する開口部36を有している。また、図示された例では、通路35は、外部部材90の凹部92及び流路96を介して、第1流体圧要素E1と連通している。
第1ケーシング31の内部には、大径部31b、小径部31a及び凸部34にわたって、他側に向けて開口する第1凹部37が形成されている。図示された例では、第1凹部37は、一側から他側へ向かうにつれて段階的に大きくなるように互いに異なる直径を有する3つの穴(37a〜37c)の組み合わせで構成されている。このうち最も一側に位置し且つ最も小さい直径を有する穴を小径穴37a、最も他側に位置し且つ最も大きい直径を有する穴を大径穴37c、軸線方向daに沿って小径穴37aと大径穴37cとの間に位置し且つ小径穴37aの直径と大径穴37cの直径との間の直径を有する穴を中径穴37bとする。図示された例では、小径穴が弁保持穴38を形成する。弁保持穴38は、中心軸線Aに沿って、小径部31a及び凸部34にわたって延びている。弁保持穴38は、中心軸線Aに直交する断面において、軸線方向daに沿って同一の断面形状を有している。とりわけ弁保持穴38は、中心軸線Aに直交する断面において円形形状を有している。小径穴37aと中径穴37bとを接続する段部には、後述の第1押付部材81を受ける第1ケーシング座面39が形成されている。第1ケーシング座面39は中心軸線Aと直交する面で構成されている。第1凹部37の内周面には、第2ねじ部52が形成されている。とりわけ、第2ねじ部52は、大径穴37cの内周面に形成されている。第2ねじ部52は、雌ねじで構成されている。
第2ケーシング32は、全体として略円筒状に形成されており、その一側部分において第1ケーシング31に取り付けられている。第2ケーシング32の一側部分には、第3ねじ部53が形成され、第2ケーシング32の他側部分には、第4ねじ部54が形成されている。第3ねじ部53及び第4ねじ部54は、いずれも雄ねじで構成されている。図示された例では、第2ケーシング32の一側端部は第1ケーシング31の第1凹部37内に位置しており、第2ケーシング32の第3ねじ部53が、第1ケーシング31の第2ねじ部52と螺合することにより、第2ケーシング32が第1ケーシング31に対して取り付けられている。
第2ケーシング32は、一側に向けて開口する第2凹部41が形成されている。第2凹部41の他側には、軸線方向daに沿って延び第2凹部41に通じる貫通孔43が形成されている。図示された例では、第2凹部41は、貫通孔43を介して第2流体圧要素E2と連通している。第2凹部41は、互いに異なる直径を有する2つの穴(41a,41b)の組み合わせで構成されている。このうち他側に位置し且つ相対的に小さい直径を有する穴を小径穴41a、小径穴41aの一側に位置し且つ相対的に大きい直径を有する穴を大径穴41bとする。小径穴41aの最も他側には、後述の第2押付部材82を受ける第2ケーシング座面42が形成されている。第2ケーシング座面42は、一側を向き中心軸線Aと直交する面で構成されている。
第2凹部41の小径穴41aと大径穴41bとを接続する段部には、溝部44が形成されている。溝部44は、弁体60が通路35の開口部36から離れる向きに移動して、すなわち他側に移動して、第2ケーシング32に接した際(図4参照)に、第2ケーシング32と弁体60との間に隙間を形成する。図3〜図5に示された例では、溝部44は、軸線方向daに沿って見たときに中心軸線Aを中心として放射状に延びる複数の溝で構成されている。溝部44を構成する溝は、小径穴41aと大径穴41bとを接続する段部に他側に向かって凹んだ窪みとして形成されている。弁体60が第2ケーシング32に接した際に第2ケーシング32と弁体60との間に形成される隙間の断面積は、圧油の単位時間当たりの流量を実質的に制限しない程度の面積を有していることが好ましい。例えば、当該隙間の断面積は、弁体60の後述の絞り部63の断面積よりも十分に大きな面積を有していることが好ましい。
図3〜図5に示された例では、第1ケーシング31の第1凹部37と第2ケーシング32の第2凹部41とにより、内部空間Sが画定される。さらに詳細には、第1凹部37の小径穴37a、中径穴37b及び大径穴37cと、第2凹部41の小径穴41a及び大径穴41bとにより、内部空間Sが画定される。この内部空間Sの内側には、弁体60及び押付部材81,82が配置される。
図示された例では、第1ケーシング31の第1ねじ部51のねじ形状と、第2ケーシング32の第3ねじ部53のねじ形状とは互いに同一であってもよい。ここで、ねじ形状が互いに同一であるとは、2つのねじ部のねじ形状が互いに同じ規格に属することを意味する。同じ規格に属する2つのねじ部においては、例えば、ねじの雌雄、ねじ外径(呼び寸法)、ねじ谷径、ねじピッチ及びねじ山角度が、実質的に同一である。このように、第1ケーシング31の第1ねじ部51のねじ形状と、第2ケーシング32の第3ねじ部53のねじ形状とが互いに同一であると、外部部材90の外部ねじ部94に対して、第1ねじ部51及び第3ねじ部53のいずれも螺合させることが可能になる。したがって、流量制御弁20が必要ない場合には、第3ねじ部53を外部ねじ部94に螺合させることにより、第1ケーシング31を介することなく第2ケーシング32を外部部材90に取り付けることができる。これにより、流量制御弁20を省略する場合のための追加の部材を用いる必要がなくなり、製造コストの削減を図ることができる。
第1ケーシング31と第2ケーシング32との間には、密封部材83が配置されている。また、ケーシング30と外部部材90との間、とりわけ第1ケーシング31と外部部材90との間、には密封部材84が配置されている。密封部材83,84は、例えばOリングで構成され、第1ケーシング31と第2ケーシング32との間又はケーシング30と外部部材90との間から圧油が漏出することを防止する。
弁体60は、筒状部61と、筒状部61の他側に位置するつば部71と、つば部71から他側に突出して形成された凸部77と、を有する。筒状部61は、全体として略円筒状に形成されており、軸線方向daに沿って延びている。図示された例では、筒状部61の長手方向に延びる中心軸は、中心軸線Aと一致している。すなわち、中心軸線Aは、筒状部61の中心軸線であるともいえる。筒状部61の内部には、中空部67が形成されている。中空部67は、一側で開口し他側で閉塞された穴として形成されている。中空部67は、中心軸線Aを含んで軸線方向daに沿って延びている。中空部67における中心軸線Aと直交する断面は、円形形状を有しており、軸線方向daに沿った各位置において互いに同一の寸法を有している。弁体60は、弁保持穴38に移動可能に保持されている。とりわけ弁体60の一側の端部(筒状部61の先端部)69は、弁保持穴38内に保持されている。換言すると、筒状部61の一側の端部69を含む一部が、弁保持穴38内に挿入されている。これにより、弁体60は、軸線方向daに沿って、ケーシング30の通路35の開口部36へ向かう向き(一側へ向かう向き)と、開口部36から離れる向き(他側へ向かう向き)とに移動可能とされている。そして、弁体60の移動にともなって端部69で開口部36が部分的に閉塞される。また、開口部36が部分的に閉塞されることにより、開口部36の開口面積が変化する。
弁体60の筒状部61には、中空部67に通じる絞り部63が形成されている。絞り部63は、弁体60が最も一側に位置するときに弁保持穴38から露出する位置に形成されている。すなわち、絞り部63は、弁体60がその移動範囲内のいずれの位置にある場合でも、常に弁保持穴38から露出する。図示された例では、絞り部63は、中心軸線Aと直交する方向に沿って延びている。絞り部63の延びる方向に直交する、絞り部63の断面は、円形形状を有しており、絞り部63の延びる方向に沿った各位置において互いに同一の寸法を有している。なお、これに限られず、絞り部63は、中心軸線Aの延びる方向(軸線方向da)及び中心軸線Aと直交する方向の両方に対して傾斜した方向に延びてもよい。また、絞り部63の断面は、絞り部63の延びる方向に沿った各位置において互いに異なる寸法を有していてもよい。例えば、絞り部63の断面は、絞り部63の延びる方向に沿った一部の範囲において、他の範囲における断面の寸法よりも小さな寸法を有していてもよい。絞り部63の最小断面積は、絞り部63を通流する圧油の単位時間当たりの流量を制限することができる程度に設定される。
ケーシング30の内部空間Sは、弁体60により、中空部67を含む第1圧力室C1と、絞り部63を介して中空部67と通じる第2圧力室C2と、に区画される。図示された例では、第1圧力室C1は、中空部67及び弁保持穴38内の空間であり、第2圧力室C2は、内部空間Sのうち弁体60の外側の空間である。上述のように、通路35の開口部36は、弁保持穴38に開口している。したがって、開口部36は、第1圧力室C1に開口しているともいえる。図示された例では、第1圧力室C1は、開口部36を介して、外部部材90の凹部92及び流路96に通じている。
つば部71は、軸線方向daに沿って見たときに、筒状部61の外寸法及び弁保持穴38(小径穴37a)の内寸法よりも大きな外寸法を有している。したがって、つば部71は、弁保持穴38内には進入できない。また、つば部71は、軸線方向daに沿って見たときに、第1凹部37の中径穴37bの内寸法よりも小さな外寸法を有している。したがって、つば部71は、中径穴37b内には進入できる。さらに、つば部71は、軸線方向daに沿って見たときに、第2凹部41の小径穴41aの内寸法よりも大きく、大径穴41bの内寸法よりも小さな外寸法を有している。したがって、つば部71は、大径穴41b内には進入できるが、小径穴41a内には進入できない。すなわち、弁体60が他側に向かって移動したときには、つば部71が小径穴41aと大径穴41bとを接続する段部に接し、弁体60はそれ以上他側には移動できない。
つば部71の一側を向く面は、第1押付部材81による押付力を受ける第1弁体座面73を含んでいる。図示された例では、第1押付部材81はコイルばねであり、第1弁体座面73と第1ケーシング座面39との間に圧縮された状態で介挿されている。したがって、第1押付部材81は、その弾性力によって当該第1押付部材81が伸長する向きに押付力を生じる。第1押付部材81をなすコイルばねは、筒状部61の周囲を取り巻くように配置されている。
つば部71の他側を向く面は、第2押付部材82による押付力を受ける第2弁体座面75を含んでいる。図示された例では、第2押付部材82はコイルばねであり、第2弁体座面75と第2ケーシング座面42との間に圧縮された状態で介挿されている。したがって、第2押付部材82は、その弾性力によって当該第2押付部材82が伸長する向きに押付力を生じる。第2押付部材82をなすコイルばねは、つば部71から他側に突出して形成された凸部77の周囲を取り巻くように配置されている。この凸部77により、コイルばねの位置が中心軸線Aと直交する径方向にずれることが防止される。
第1押付部材81及び第2押付部材82としては、コイルばねに限られず、押付力を生じ得る種々の部材が使用可能である。なお、本明細書では、第1圧力室C1内の圧油の圧力と第2圧力室C2内の圧油の圧力とが等しく、第1押付部材81による押付力と第2押付部材82による押付力とが釣り合うときの弁体60の位置を中立位置と呼ぶ。
弁体60の筒状部61には、弁体60が中立位置に対して他側に移動したときに、第1圧力室C1と第2圧力室C2とを通じさせる孔65をさらに有している。弁体60が中立位置にあるときには、孔65の全体が弁保持穴38内に位置する。すなわち、孔65の全体が弁保持穴38で閉塞され、圧油は孔65を通過できない。その一方、弁体60が中立位置に対して他側に移動したときには、孔65は、弁保持穴38から露出し第1圧力室C1と第2圧力室C2とを通じさせる。このとき、孔65は、圧油の通流を許容する。図示された例では、孔65は、中心軸線Aと直交する方向に沿って延びている。孔65の延びる方向に直交する、孔65の断面は、円形形状を有しており、孔65の延びる方向に沿った各位置において互いに同一の寸法を有している。なお、これに限られず、孔65は、中心軸線Aの延びる方向(軸線方向da)及び中心軸線Aと直交する方向の両方に対して傾斜した方向に延びてもよい。また、孔65の断面は、孔65の延びる方向に沿った各位置において互いに異なる寸法を有していてもよい。孔65は、複数設けられていてもよい。各孔65の最小断面積の合計は、孔65を通流する圧油の単位時間当たりの流量を実質的に制限しない程度の面積を有していることが好ましい。
次に、図3〜図5を参照して、流量制御弁20の動作について説明する。
リモコン弁17が操作されておらず、パイロットポンプ16からのパイロット圧が流量制御弁20に作用していない場合、第1圧力室C1内の圧油の圧力と第2圧力室C2内の圧油の圧力とが等しくなり、図3に示されているように、弁体60は中立位置に位置する。図示された例では、このとき通路35の開口部36は、弁体60の端部69で閉塞されておらず、開口部36は、当該開口部36を通流する圧油の単位時間当たりの流量を実質的に制限しない程度の開口面積を有している。孔65は、その全体が弁保持穴38で閉塞されており、圧油は孔65を通過することができない。絞り部63は、弁保持穴38から露出している。
オペレータによりリモコン弁17の操作レバー18が操作され、パイロットポンプ16からのパイロット圧が第1流体圧要素E1(リモコン弁17)を通って流量制御弁20に作用した場合、パイロット圧は、流路96、凹部92及び通路35を介して第1圧力室C1内に導入される。孔65は弁保持穴38で閉塞されているので、第1圧力室C1と第2圧力室C2とは、絞り部63でのみ互いに連通している。絞り部63は、当該絞り部63を通流する圧油の単位時間当たりの流量を制限する。これにより、第1圧力室C1内の圧油の圧力が、第2圧力室C2内の圧油の圧力よりも大きくなる。詳細には、絞り部63の流量制限効果により、第1圧力室C1内の圧油の圧力の上昇速度に対して、第2圧力室C2内の圧油の圧力の上昇速度が遅くなり、第1圧力室C1内の圧油の圧力と第2圧力室C2内の圧油の圧力との間に差(差圧)が生じる。
この差圧により、弁体60は、中立位置から、第2押付部材82による押付力に抗して、軸線方向daに沿って、開口部36から離れる向き(他側へ向かう向き)に移動する。弁体60の移動にともなって、孔65が弁保持穴38から露出すると、孔65を介して第1圧力室C1と第2圧力室C2とが連通される。これにより、図4に示されているように、第1圧力室C1内の圧油は、孔65を通って第2圧力室C2へ流入する。第2圧力室C2へ流入した圧油は、貫通孔43を通って第2流体圧要素E2(スプール弁13)へ向かう。これにより、第2流体圧要素E2が動作する。
弁体60のつば部71は、軸線方向daに沿って見たときに、第2凹部41の小径穴41aの内寸法よりも大きく、大径穴41bの内寸法よりも小さな外寸法を有している。したがって、つば部71は、大径穴41b内には進入できるが、小径穴41a内には進入できない。すなわち、弁体60が他側に向かって移動したときには、つば部71が小径穴41aと大径穴41bとを接続する段部に接し、弁体60はそれ以上他側には移動できない。図4には、弁体60が他側へ移動して、つば部71が第2ケーシング32の小径穴41aと大径穴41bとを接続する段部に接した状態において、流量制御弁20が示されている。小径穴41aと大径穴41bとを接続する段部には、溝部44が形成されており、これによりつば部71が当該段部に接した際に、当該段部とつば部71との間に隙間が形成される。図示された例では、弁体60が当該段部に接した際に当該段部と弁体60との間に形成される隙間の断面積は、圧油の単位時間当たりの流量を実質的に制限しない程度の面積を有している。したがって、つば部71が当該段部に接した状態においても、孔65を通って第2圧力室C2へ流入した圧油は、溝部44を通って貫通孔43へ向かうことができる。
各孔65の最小断面積の合計が、孔65を通流する圧油の単位時間当たりの流量を実質的に制限しない程度の面積を有している場合、孔65の全体が弁保持穴38から露出すると、孔65を介して第1圧力室C1から第2圧力室C2へ速やかに圧油が流入し、第1圧力室C1内の圧油の圧力と第2圧力室C2内の圧油の圧力との差(差圧)が小さくなる。この差圧が小さくなることにより、弁体60を他側へ向けて押す力が小さくなり、弁体60は、第2押付部材82の押付力により一側へ向けて押し戻される。このとき、孔65が部分的に弁保持穴38で閉塞されることにより、第1圧力室C1と第2圧力室C2との間に新たに差圧が生じ、これにより弁体60は、第2押付部材82による押付力に抗して、他側へ向けて押される。したがって、弁体60は、第2押付部材82による弁体60を一側へ押す押付力と、第1圧力室C1と第2圧力室C2との間に生じる差圧及び第1押付部材81の押付力の和による弁体60を他側へ押す押付力と、が釣り合う位置にて停止する。それゆえ、弁体60が他側に移動しても、つば部71が第2ケーシング32の小径穴41aと大径穴41bとを接続する段部に接しないこともある。なお、第1圧力室C1と第2圧力室C2との間に生じる差圧の微小な変動により、弁体60は完全には停止せず、その位置がわずかに変動することもある。
オペレータによりリモコン弁17の操作レバー18が操作され、第1圧力室C1が通路35、凹部92、流路96及び第1流体圧要素E1(リモコン弁17)を介してタンク19と連通されると、第1圧力室C1内の圧油の圧力は急激に低下する。すなわち、弁体60を他側へ向けて押す押付力が急激に低下する。これにより、弁体60が、中立位置に対して他側に位置している場合、第2押付部材82の押付力により、弁体60が一側に移動し、孔65が弁保持穴38により閉塞される。したがって、第1圧力室C1と第2圧力室C2とは、絞り部63でのみ互いに通じる。これにより、第2圧力室C2内の圧油の圧力が、第1圧力室C1内の圧油の圧力よりも大きくなる。詳細には、絞り部63の流量制限効果により、第1圧力室C1内の圧油の圧力の下降速度に対して、第2圧力室C2内の圧油の圧力の下降速度が遅くなり、第1圧力室C1内の圧油の圧力と第2圧力室C2内の圧油の圧力との間に差(差圧)が生じる。この差圧による押付力及び第2押付部材82の押付力により、図5に示されているように、弁体60は、第1押付部材81の押付力に抗して、さらに一側へ移動する。
弁体60の移動にともなって、通路35の開口部36は、弁体60の端部69で部分的に閉塞される。このとき、第1圧力室C1と第2圧力室C2との間の差圧が大きくなるにつれて、この差圧による押付力及び第2押付部材82の押付力の合計の押付力と、第1押付部材81の押付力と、の差が大きくなり、弁体60が一側へ移動して端部69が開口部36を大きく閉塞し、開口部36の開口面積は小さくなる。開口部36の開口面積が小さくなると、当該開口部36を通流する圧油の単位時間当たりの流量が制限される。したがって、弁体60の端部69により部分的に閉塞された開口部36は、絞り部63に対する追加の絞り部として機能する。
開口部36の開口面積が、絞り部63の断面積(最小断面積)よりも小さくなると、開口部36により当該開口部36を通流する圧油の単位時間当たりの流量が大きく制限される一方、絞り部63を介して、第2圧力室C2から第1圧力室C1内に圧油が流入する。これにより、第1圧力室C1内の圧油の圧力が上昇し、第1圧力室C1と第2圧力室C2との間の差圧が小さくなる。そうすると、この差圧による押付力及び第2押付部材82の押付力の合計の押付力と、第1押付部材81の押付力と、の差が小さくなり、弁体60が他側へ移動して弁体60の端部69による開口部36の閉塞領域が小さくなり、開口部36の開口面積は大きくなる。したがって、弁体60は、通路35の開口部36が端部69で部分的に閉塞され、これにより第1圧力室C1と第2圧力室C2との間に生じる差圧及び第2押付部材82による弁体60を一側へ押す押付力の和による弁体60を他側へ押す押付力と、第1押付部材81の押付力と、が釣り合う位置にて停止する。なお、第1圧力室C1と第2圧力室C2との間に生じる差圧の微小な変動により、弁体60は完全には停止せず、その位置がわずかに変動することもある。また、弁体60は、その移動の途中において、その端部69が一時的に開口部36を完全に閉塞することもある。したがって、本明細書において、「開口部36が部分的に閉塞される」とは、一時的に開口部36が完全に閉塞される場合をも含む。
図3〜図5を参照して説明した例では、絞り部63が、図2を参照して説明した例における絞り部22の機能を発揮する。また、開口部36及び弁体60の端部69が、図2を参照して説明した例における制御弁24の機能を発揮する。さらに、孔65及び第2押付部材82が、図2を参照して説明した例におけるチェック弁28の機能を発揮する。
本発明の流量制御弁20は、弁保持穴38と、流体圧要素E1に通じる開口部36と、を有するケーシング30と、弁保持穴38に移動可能に保持された弁体60と、を備え、弁体60の移動にともなって、弁体60の弁保持穴38内に位置する端部69で開口部36が部分的に閉塞される。
本発明の作業機械は、上述の流量制御弁20を備える。
このような流量制御弁20及び作業機械によれば、弁体60の端部69により部分的に閉塞される開口部36を絞り部として機能させることができる。したがって、流体回路中を通流する流体の単位時間当たりの流量を大きく制限することが要求される場合に、極めて小さな断面寸法を有する絞り部を設ける必要がない。これにより、高い流量制御機能を発揮する流量制御弁20を、容易に製造することが可能になる。なお、通路35の開口部36は、弁体60の端部69により部分的に閉塞されることにより開口面積が変更可能な絞り部として機能するので、通路35を極めて小さな断面寸法を有する孔として形成する必要はない。
流体回路が油圧回路である場合、絞り部を通流する油の単位時間当たりの流量は、当該油の温度の影響を大きく受ける。高温では油の粘度は小さいが、低温では油の粘度は大きくなる。一般に油の粘度は大きな温度依存性を有しているため、極めて小さな断面寸法を有する絞り部を用いた場合、高温においては絞り部を通流する油の単位時間当たりの流量が多くなり流量制限効果が小さくなる一方、低温においては絞り部を通流する油の単位時間当たりの流量が極端に少なくなり、精度の高い流量制御が困難になる。これに対して、本発明の流量制御弁20によれば、比較的大きな断面寸法を有する孔を絞り部63として用いることができるので、流量制御弁20を通流する油の単位時間当たりの流量が、当該油の温度の影響を受けることを抑制し、精度の高い流量制御が可能になる。
本発明の流量制御弁20は、弁体60を、開口部36から離れる向きに押す第1押付部材81をさらに有する。
また、本発明の流量制御弁20は、弁体60を、開口部36へ向かう向きに押す第2押付部材82をさらに有する。
このような流量制御弁20によれば、第1圧力室C1と第2圧力室C2との間に生じる差圧による押付力に加えて、各押付部材81,82による押付力を弁体60に作用させることができるので、弁体60を迅速に動作させることができる。また、各押付部材81,82の長さや押付力を適宜調整することで、弁体60の中立位置、一側へ向かう押付力及び他側へ向かう押付力等を、容易に調整することができる。
本発明の流量制御弁20では、弁体60は、中空部67と、中空部67に通じる絞り部63と、を有し、ケーシング30の内部空間Sは、中空部67を含む第1圧力室C1と、絞り部63を介して中空部67と通じる第2圧力室C2と、に区画され、弁体60は、弁体60が中立位置に対して開口部36から離れる向きに移動したときに、第1圧力室C1と第2圧力室C2とを通じさせる孔65をさらに有する。
このような流量制御弁20によれば、弁体60が中立位置に対して開口部36から離れる向きに移動した際に、すなわち図3〜図5を参照して説明した例では第1流体圧要素E1から第2流体圧要素E2へ向けて流体が流れる際に、孔65を介して流体を迅速に通流させることができる。この場合、例えば図1に示した油圧回路10において、リモコン弁17からスプール弁13へ向かうパイロット圧油は、流量制御弁20を通過して、スプール弁13を速やかに動作させる。したがって、油圧ポンプ11から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量は、速やかに増加する。これにより、油圧アクチュエータ12への作動油の送出が開始される際に、油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量を速やかに増大させることができ、油圧アクチュエータ12の駆動開始時に、油圧アクチュエータ12に動作遅れが生じることを抑制することができる。
本発明の流量制御弁20では、弁体60は、第1押付部材81による押付力を受ける第1弁体座面73を含み、第1押付部材81は、第1弁体座面73とケーシング30との間に介挿される。
また、本発明の流量制御弁20では、弁体60は、第1押付部材81による押付力を受ける第1弁体座面73を含み、第1押付部材81は、第1弁体座面73とケーシング30との間に介挿され、弁体60は、第2押付部材82による押付力を受ける第2弁体座面75を含み、第2押付部材82は、第2弁体座面75とケーシング30との間に介挿される。
このような流量制御弁20によれば、第1押付部材81又は第2押付部材82を所定の位置に配置するための追加の部材(リテーナ)の付加を省略することができる。したがって、部品点数を削減し、流量制御弁20の軽量化を図ることができる。
本発明の流量制御弁20では、ケーシング30は、弁体60が開口部36から離れる向きに移動してケーシング30に接した際にケーシング30と弁体60との間に隙間を形成する溝部44を有する。
このような流量制御弁20によれば、弁体60が中立位置に対して開口部36から離れる向きに移動してケーシング30(第2ケーシング32)に接した際(図4参照)に、弁体60とケーシング30との間に流体の通流路を確保することができる。したがって、第1流体圧要素E1から第2流体圧要素E2へ向かう流体の流れが阻害されることを効果的に抑制することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
図6は、流量制御弁20の他の適用例を示す油圧回路図である。油圧回路110は、可変容量型油圧ポンプ(油圧ポンプ)111から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量を制御するスプール弁113と、パイロットポンプ16で生成されたパイロット圧油の流路を選択するリモコン弁17と、を備えている。
油圧回路110は、油圧アクチュエータ12における作動油の消費量が少ない場合に、油圧ポンプ111からの作動油の吐出量を減少させるためのネガティブ流量制御(ネガティブコントロール)機構をさらに有している。スプール弁113は、油圧ポンプ111から吐出され当該スプール弁113内に導入された作動油を排出する2つの排出ポートを有している。一方の排出ポートは油圧アクチュエータ12に連通し、他方の排出ポートは流路(センターバイパスライン)107を介して、タンク19に連通している。流路107における、スプール弁113とタンク19との間には絞り部122が設けられている。また、流路107のスプール弁113と絞り部122との間の箇所から分岐して、流路108が設けられている。流路108は、流路107と接続される端部と反対側の端部において、油圧ポンプ111に接続されている。
スプール弁113は、スプール114を有している。スプール114は、パイロットポンプ16で生成されたパイロット圧の作用により、その軸方向(長手方向、図6では左右方向)に沿った位置が変更され、これにより油圧ポンプ111から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量が連続的に変化する。図示された例では、スプール114は、その軸方向に沿った一端(図6では右端)及び他端(図6では左端)のいずれにもパイロット圧が作用しない場合、ばね115の押付力を受けて最も一端側に位置している。このとき、油圧ポンプ111から吐出された全ての作動油が、タンク19へ向かう。パイロット圧が流路101を介してスプール114の一端に作用し、ばね115による押付力に抗してスプール114が他端側へ向けて移動すると、油圧ポンプ111から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量は増加し、タンク19へ向かう作動油の流量は減少する。また、パイロット圧が流路102を介してスプール114の他端に作用し、スプール114が一端側へ向けて移動すると、油圧ポンプ111から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量は減少し、タンク19へ向かう作動油の流量は増加する。
図示された例では、絞り部122を通過するパイロット圧油の漏れ流量が絞り部122の背圧として検出され、検出された背圧が流路108を介して油圧ポンプ111にネガティブ流量制御信号圧としてフィードバックされる。詳細には、以下のようにネガティブ流量制御が行われる。絞り部122において、当該絞り部122を通流するパイロット圧油の単位時間当たりの流量が制限される。したがって、スプール弁113から流路107を介してタンク19へ向かう作動油の流量が増加すると、流路107の絞り部122とスプール弁113との間におけるパイロット圧油の圧力(背圧)が増加する。この圧力が流路108を介してネガティブ流量制御信号圧として油圧ポンプ111に導入される。油圧ポンプ111は、大きな信号圧が導入されると作動油の吐出量が減少し、小さな信号圧が導入されると作動油の吐出量が増大するように制御される。
オペレータが操作レバー18を操作することにより、パイロットポンプ16からリモコン弁17及び流路101を介してスプール14の一端側に作用するパイロット圧が減少すると、スプール14はその軸方向に沿って一端側に移動する。これにより、油圧ポンプ111から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量は減少し、スプール弁13から流路107を介してタンク19へ向かう作動油の流量は増加する。したがって、絞り部122の背圧が増大し、油圧ポンプ111に大きな信号圧が導入されることにより、油圧ポンプ111から吐出される作動油の流量が減少する。このようなネガティブ流量制御により、油圧アクチュエータ12における作動油の消費量が少ない場合に、油圧ポンプ111からの作動油の吐出量を減少させて、油圧アクチュエータ12を駆動することなくタンク19に排出される作動油を減少させることが可能になる。したがって、油圧回路110における消費エネルギーの削減を図ることができる。
ネガティブ流量制御機構では、油圧ポンプ111からの作動油の吐出量が増加すると絞り部122の背圧(ネガティブ流量制御信号圧)が上昇して油圧ポンプ111からの作動油の吐出量が減少し、油圧ポンプ111からの作動油の吐出量が減少すると絞り部122の背圧が下降して油圧ポンプ111からの作動油の吐出量が増加する。これにより、絞り部122の背圧が周期的に変動し、油圧ポンプ111が発振して作動油の吐出量が安定しないことがある。
この油圧ポンプ111の発振を抑制するためには、流路108の途中に絞り部を設けて、ネガティブ流量制御信号圧に応答遅れを生じさせることが考えられる。しかし、制御対象となる油圧ポンプ111が小型の油圧ポンプである場合、絞り部として極めて小さな断面寸法を有する孔を用いる必要がある。しかし、絞り部を構成する部品にそのような極めて小さな断面寸法を有する孔を穿つ加工を行うことは、技術的な困難を伴う。
本変形例に係る油圧回路110では、流路108の途中に、図3〜図5を参照して説明した流量制御弁20が設けられている。ここで、第1流体圧要素E1は油圧ポンプ111であり、第2流体圧要素E2はスプール弁113である。
油圧ポンプ111から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量が多く、タンク19へ向かう作動油の流量が少ない場合、第1圧力室C1内の圧油の圧力と第2圧力室C2内の圧油の圧力との差が小さく、弁体60は中立位置に位置する(図3参照)。このとき、第1圧力室C1と第2圧力室C2とは、絞り部63でのみ互いに連通している。
油圧ポンプ111から吐出され油圧アクチュエータ12へ向かう作動油の流量が減少し、タンク19へ向かう作動油の流量が増加すると、第2圧力室C2に絞り部122の背圧が作用し、第2圧力室C2内の圧油の圧力が上昇する。これにより、第2圧力室C2内の圧油の圧力が、第1圧力室C1内の圧油の圧力よりも大きくなる。この圧力差(差圧)による押付力及び第2押付部材82の押付力により、弁体60は、第1押付部材81の押付力に抗して一側へ移動する(図5参照)。これにより、弁体60の端部69が開口部36を大きく閉塞し、開口部36の開口面積は小さくなる。すなわち、弁体60の端部69により部分的に閉塞された開口部36は、絞り部63に対する追加の絞り部として機能する。
本変形例によっても、上述の実施の形態と同様の効果を発揮することができる。とりわけ本変形例によれば、高い流量制御機能を発揮しつつも容易に製造することが可能な流量制御弁20を、流路108内に配置する絞り部として利用することができる。すなわち、流路108内に、製造が困難な極めて小さな断面寸法を有する絞り部を設ける必要がない。
なお、本変形例のように、第1流体圧要素E1(油圧ポンプ111)から第2流体圧要素E2(スプール弁113)へ向けて、流体(作動油)を迅速に通流させる必要がない場合には、弁体60の孔65を省略してもよい。また、第2ケーシング32の溝部44を省略してもよい。さらに、第2押付部材82を省略することも可能である。第2押付部材82を省略した場合には、第1押付部材81の押付力により、中立位置において、第2凹部41の小径穴41aと大径穴41bとを接続する段部に弁体60のつば部71が接していてもよい。