従来から、油圧ショベル等の建設機械に用いられる油圧シリンダ等のアクチュエータを駆動制御する油圧回路において、アクチュエータの動作停止時における衝撃の発生を防止するために、ショックレス弁を設けることが知られている。図8は、従来のショックレス弁を使用した油圧回路の一例を示したものである。
図8に示す油圧回路1は、アクチュエータ2と、アクチュエータ2への圧油の給排を制御するためのスプール弁3と、スプール弁3を介してアクチュエータ2に圧油を供給するメイン油圧源5と、を有する。また、油圧回路1は、スプール弁3の動作を制御するためのパイロットコントロール弁(以下、リモコン弁と呼ぶ)4と、パイロット油圧源6と、タンク7と、を有する。さらに、油圧回路1は、ショックレス弁20を有する。
図示の例では、アクチュエータ2は、ピストンロッド2rを有する油圧シリンダであり、ヘッド側油室2aとロッド側油室2bとを有する。ヘッド側油室2aおよびロッド側油室2bには、それぞれヘッド側ポートおよびロッド側ポートが設けられている。
スプール弁3は、弁本体ブロック(図示せず)と、一方向(図8の左右方向)に延びるスプール31と、を有している。スプール31は、弁本体ブロックに形成されたスプール穴に収容されている。スプール弁3は、メイン油圧源5と連通した給油ポートと、タンク7と連通した排油ポートと、を有している。スプール弁3は、スプール31の位置に応じて、スプール弁3の給油ポートおよび排油ポートと、アクチュエータ2のヘッド側ポートおよびロッド側ポートと、の接続状態を変更する。
スプール弁3は、前記一方向の一側端部および他側端部にパイロット圧作用部32a,32bを含んでいる。パイロット圧作用部32a,32bは、スプール31の駆動を目的として、スプール31の端部にパイロット圧を負荷するための手段である。スプール31の前記一方向の一側端部にパイロット圧を負荷することにより、スプール31を、図8に示す中立位置から、前記一方向の他側(図8の左方向)に移動した第1作動位置へ、移動させることができる。また、スプール31の前記一方向の他側端部にパイロット圧を負荷することにより、スプール31を、図8に示す中立位置から、前記一方向の一側(図8の右方向)に移動した第2作動位置へ、移動させることができる。
スプール弁3は、また、スプール31に前記一方向に弾発力を加えるバネ13を有する。バネ13により、パイロット圧作用部32a,32bのいずれにもパイロット圧が生じていない場合、スプール31は、図8に示す中立位置に保持される。
なお、スプール31が中立位置にある場合、スプール弁3の給油ポートおよび排油ポートは、アクチュエータ2のいずれのポートにも接続されておらず(図8参照)、アクチュエータ2への圧油の給排はなされない。一方、スプール31が第1作動位置にある場合、スプール弁3の給油ポートおよび排油ポートは、それぞれ、アクチュエータ2のヘッド側ポートおよびロッド側ポートに接続される。この結果、スプール弁3を介して、メイン油圧源5とヘッド側油室2aとが連通し、また、ロッド側油室2bとタンク7とが連通して、ピストンロッド2rが延び出すように圧油の給排がなされる。また、スプール31が第2作動位置にある場合、スプール弁3の給油ポートおよび排油ポートは、それぞれ、アクチュエータ2のロッド側ポートおよびヘッド側ポートに接続される。この結果、スプール弁3を介して、メイン油圧源5とロッド側油室2bとが連通し、また、ヘッド側油室2aとタンク7とが連通して、ピストンロッド2rが引っ込むように圧油の給排がなされる。このように、スプール弁3の給油ポートおよび排油ポートと、アクチュエータ2のポートと、の接続状態を変更することにより、アクチュエータ2を所望のように駆動することができる。
リモコン弁4は、上述のパイロット圧を制御するための弁である。ここで、スプール弁3のパイロット圧作用部32a,32bの各々には、パイロットライン11,12が接続されている。リモコン弁4は、その操作レバー4aの操作方向に対応する側のパイロットライン11,12とパイロット油圧源6とを連通させて、当該パイロットライン11,12に圧油を供給する。この結果、当該パイロットライン11,12に接続したパイロット圧作用部32a,32bにパイロット圧が生じる。なお、リモコン弁4は、一方のパイロットライン11,12とパイロット油圧源6とを連通させるとき、他方のパイロットライン12,11とタンク7とを連通させる。また、操作レバー4aが操作されていない場合、リモコン弁4は、両方のパイロットライン11,12を、タンク7に連通させる。
ショックレス弁20は、リモコン弁4と一方のパイロット圧作用部32aとの間のパイロットライン11上となる位置に、スプール弁3及びリモコン弁4とは別途の弁として、設けられている。ショックレス弁20は、パイロットライン11上に配置された絞り21と、両端部が絞り21の両側でパイロットライン11に接続された迂回路22と、を有している。迂回路22には、チェック弁23が設けられている。チェック弁23は、リモコン弁4の側からスプール弁3のパイロット圧作用部32aの側への圧油の流入を許容する一方で、パイロット圧作用部32aの側からリモコン弁4の側への圧油の流入を防止するように構成されている。このようなショックレス弁20は、リモコン弁4からパイロット圧作用部32aに向かう圧油の単位時間当たりの流量は制限しないが、パイロット圧作用部32aからリモコン弁4に向かう圧油の単位時間当たりの流量を制限する。
次に、図8に示す油圧回路1の作用について説明する。
まず、リモコン弁4の操作レバー4aが操作されていない場合、パイロットライン11,12は、いずれもタンク7と連通している。このため、パイロット圧作用部32a,32bのいずれにもパイロット圧は生じず、スプール31は、バネ13の弾発力により、図8に示す中立位置に保持される。
中立位置にあるスプール31を第1作動位置に移動させるため、リモコン弁4の操作レバー4aを操作して、パイロットライン11とパイロット油圧源6とを連通させる。これにより、パイロット油圧源6からパイロットライン11に、圧油が供給される。パイロットライン11に供給された圧油は、ショックレス弁20を通って、パイロット圧作用部32aに流入する。ショックレス弁20は、パイロット圧作用部32aに流入する圧油の単位時間当たりの流量を制限しない。したがって、パイロット圧作用部32aには操作レバー4aの操作量に応じたパイロット圧が即座に生じ、スプール31は操作レバー4aの操作量に応じた速度で、中立位置から第1作動位置へ即座に移動する。したがって、アクチュエータ2は、操作レバー4aの操作に対し、応答遅れを起こすことなく動作する。
次に、第1作動位置にあるスプール31を中立位置に移動させるため、リモコン弁4の操作レバー4aを操作して、パイロットライン11をタンク7に接続する。これにより、パイロットライン11内のパイロット圧が消失する。そして、パイロット圧作用部32aの圧油がリモコン弁4に向かう方向に流れ、これにともなって、スプール31は、中立位置への移動を開始する。ここで、ショックレス弁20は、パイロット圧作用部32aからリモコン弁4に向かう方向に流れる圧油の単位時間当たりの流量を制限する。このため、スプール31は、第1作動位置から中立位置へ、ゆっくりと移動する。これにより、スプール31の急激な動作にともなうアクチュエータ2の急激な動作停止が防止される。この結果、アクチュエータ2の急激な動作停止にともなう衝撃や振動の発生が防止される。
以上のように、ショックレス弁20は、スプール31が中立位置から第1作動位置へ移動する際のアクチュエータ2の応答遅れを防止することができ、且つ、スプール31が第1作動位置から中立位置へ移動する際のアクチュエータ2による衝撃や振動の発生を防止することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面は簡略化されており、例えば各要素の寸法、各要素間の寸法比及び各要素の具体的な形状が、実物のそれらから異なっている部分が図面に含まれうる。ただし、当業者であれば、そのような簡略化された図面から、以下に説明する実施の形態及び本発明のその他の実施の形態を十分に理解することが可能である。また、図1乃至図7に示す本実施の形態において、図8に示す従来例と同様の部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図1に、本発明の一実施の形態によるスプール弁を用いた油圧回路の一例を示す。スプール弁30は、アクチュエータへの圧油の給排を制御するための方向切換弁として機能する。スプール弁30には、スプール31が中立位置から一方の側(図1の左側。また、図示の例では後述する軸線方向Dxの他側)および他方の側(図1の右側。また、図示の例では軸線方向Dxの一側)に移動する際のアクチュエータ2の応答遅れを防止する機能(応答遅れ防止機能)と、スプール31が前記一方の側(図1の左側)から中立位置に戻る際のアクチュエータ2による衝撃および振動の発生を防止する機能(ショックレス機能)と、が付与されている。図2は、図1に示すスプール弁30の一側(図1の右側)端部(軸線方向Dxの一側の端部)の断面を模式的に示す部分断面図である。
図1および図2に示すように、本実施の形態のスプール弁30は、主たる構成要素として、弁本体ブロック33と、弁本体ブロック33のスプール穴33aに収容されたスプール31と、を有している。スプール穴33aは、後述するスプール室40の少なくとも一部を画成する。スプール31は、棒状の部材であって、長手方向を有している。スプール31は、その中心軸線Axと平行な方向(以下において、単に「軸線方向」とも呼ぶ)Dxに移動可能となるよう、弁本体ブロック33に支持されている。
スプール弁30は、軸線方向Dxの一側に位置するパイロット圧作用部50と、軸線方向Dxの他側に位置するパイロット圧作用部32bと、を含んでいる。パイロット圧作用部50,32bは、スプール31の駆動を目的として、スプール31の端部にパイロット圧を付加するための手段である。スプール31は、スプール室40の両端部におけるパイロット圧の作用によって、中立位置の軸線方向Dxの一側及び他側に移動することができる。
図1および図2に示すスプール弁30は、メイン油圧源5と接続する給油ポートと、タンク7と接続する排油ポートとを有している。スプール弁30は、給油ポートおよび排油ポートとアクチュエータ2が有する2つのポートとの接続状態を、スプール31の位置に応じて変更する。具体的には、スプール31の位置を、図1に示す中立位置と、中立位置から軸線方向Dxの他側(図1の左側)に移動した第1作動位置と、中立位置から軸線方向Dxの一側(図1の右側)に移動した第2作動位置と、の間で変更することにより、スプール弁30の給油ポートおよび排油ポートと、アクチュエータ2の2つのポートと、の接続状態を変更する。
なお、スプール31が図1に示す中立位置にある場合、スプール弁30の給油ポートおよび排油ポートは、アクチュエータ2のポートに接続されていない。したがって、アクチュエータ2への圧油の給排はなされない。なお、図示の例では、アクチュエータ2は、ピストンロッド2rを有する油圧シリンダであり、ヘッド側油室2aに設けられたヘッド側ポートと、ロッド側油室2bとに設けられたロッド側ポートと、を有する。スプール弁30の給油ポートおよび排油ポートがヘッド側ポートおよびロッド側ポートのいずれにも接続されないので、ヘッド側油室2aおよびロッド側油室2bへの圧油の給排はなされず、油圧シリンダ2のピストンロッド2rは動作しない。
一方、スプール31が第1作動位置にある場合、スプール弁3の給油ポートおよび排油ポートは、それぞれ、アクチュエータ2の一方のポートおよび他方のポートに接続される。図示の例では、スプール31が第1作動位置にある場合、給油ポートはヘッド側ポートに接続され、排油ポートはロッド側ポートに接続される。これにより、スプール弁30を介して、メイン油圧源5とヘッド側油室2aとが連通し、また、ロッド側油室2bとタンク7とが連通する。この結果、ヘッド側油室2aに圧油が供給されると同時に、ロッド側油室2bから圧油が排出されて、油圧シリンダ2のピストンロッド2rが延び出す。
また、スプール31が第2作動位置にある場合、スプール弁3の給油ポートおよび排油ポートは、それぞれ、アクチュエータ2の他方のポートおよび一方のポートに接続される。図示の例では、スプール31が第2作動位置にある場合、給油ポートはロッド側ポートに接続され、排油ポートはヘッド側ポートに接続される。これにより、スプール弁30を介して、メイン油圧源5とロッド側油室2bとが連通し、また、ヘッド側油室2aとタンク7とが連通する。この結果、ロッド側油室2bに圧油が供給されると同時に、ヘッド側油室2aから圧油が排出されて、油圧シリンダ2のピストンロッド2rが引っ込む。
図1および図2に示すスプール弁30には、スプール31を中立位置から第1作動位置へ移動させてアクチュエータ2を動作させる際の応答遅れを防止する機能(第1応答遅れ防止機能)と、スプール31を第1作動位置から中立位置へ移動させてアクチュエータ2の動作を停止させる際の衝撃や振動の発生を防止する機能(ショックレス機能)とが付与されている。さらに、スプール弁30には、スプール31を中立位置から第2作動位置へ移動させてアクチュエータ2を動作させる際の応答遅れを防止する機能(第2応答遅れ防止機能)が付与されている。以下、図2を参照して、本実施の形態のスプール弁30の構成について詳述する。
図2に示すように、スプール弁30は、弁本体ブロック33の軸線方向Dxにおける一側端部に取り付けられたバルブカバー51と、バルブカバー51内に収容されたポペット61と、を有している。図示された例において、パイロット圧作用部50は、バルブカバー51及びポペット61によって構成されている。
バルブカバー51は、その軸線方向Dxの一端が閉鎖された、筒状の部材である。バルブカバー51の内部には、バルブカバー51の内周壁からスプール31の中心軸線Axに向かって延び出す環状の周状突出部53が設けられている。周状突出部53によって、周状突出部53の一側の空間と他側の空間とを連通する開口53aが画成されている。
バルブカバー51の内部空間のうち、軸線方向Dxにおける周状突出部53の他側の空間は、スプール31を収容するスプール穴33aの内部空間と連通して、スプール31の軸線方向Dxの一側端部を収容している。したがって、バルブカバー51の周状突出部53の他側には、スプール穴51aが形成されているとみなすこともできる。スプール穴51aは、スプール穴33aと共に、スプール31を収容するスプール室40を形成する。スプール室40は、スプール31の中心軸線Axに沿って延びている。スプール室40の軸線方向Dxの一側端部は、周状突出部53によって画成されている。スプール室40には、スプール31が軸線方向Dxに移動可能に収容されて、且つ、後述のように、スプール31を軸線方向Dxに動作させるための圧油が供給される。
すなわち、バルブカバー51及び弁本体ブロック33は、スプール31を移動可能に収容する弁本体35を構成している。ただし、この例に限られず、バルブカバー51及び弁本体ブロック33が一体的に形成されていてもよい。また、スプール室40が、弁本体ブロック33のスプール穴33aのみによって形成されていてもよい。
バルブカバー51の内部空間のうち、軸線方向Dxにおける周状突出部53の一側の空間は、パイロットライン11と連通する作動油路52をなしている。作動油路52は、軸線方向Dxに対して非平行な方向、とりわけ垂直な方向に延び出す部分52aを有しており、当該部分52aにおいてパイロットライン11と連通している。リモコン弁4によってパイロット油圧源6とパイロットライン11とが連通してパイロットライン11に圧油が供給されると、当該圧油が作動油路52に圧油が供給され、作動油路52にパイロット圧が生じる。
弁本体35には、ポペット61が移動可能に収容されている。図示された例では、上述したように、バルブカバー51内に、ポペット61が配置されている。ポペット61は、スプール室40の一側端部を閉鎖する位置と、スプール室40の一側端部を開放して作動油路52に連通させる位置と、の間を、軸線方向Dxに移動可能に配置されている。ポペット61は、周状突出部53に着座してスプール室40の一側端部を閉鎖するポペット弁60を構成している。ポペット61を用いることにより、簡易な構成で、上述の第1応答遅れ防止機能およびショックレス機能を有するスプール弁30を実現可能である。また、ポペット61をバルブカバー51内に配置することにより、上述の第1応答遅れ防止機能およびショックレス機能を有するスプール弁30を、簡単に組立可能である。
なお、ポペット61を軸線方向Dxに移動可能とするため、バルブカバー51内には、ポペット61の一側に背圧室66が形成されている。背圧室66は、ポペット61をスプール室40に向けて押す圧油を収容している。より具体的には、バルブカバー51内には、作動流路52の一側に軸線方向Dxに延びる凹部67が形成されている。凹部67は、作動油路52に開口し、ポペット61の軸線方向Dxの一側端部を収容している。そして、背圧室66は、凹部67とポペット61によって画成される。凹部67の形状及び寸法は、ポペット61の一側端部の形状及び寸法に対応しており、背圧室66内の圧油がポペット61と凹部67の内周面との間を通って作動流路52に流出することのないようになっている。また、図示の例では、背圧室66には、ポペット61をスプール室40に向けて付勢するバネ68が収容されている。
ポペット61は、周状突出部53の一側(すなわち作動油路52の側)に配置された本体部62を有している。軸線方向Dxにおける本体部62の一側端部は、凹部67に収容されている。本体部62の他側端部は、作動油路52内に位置し、周状突出部53が画成する開口53aと対向している。
本体部62の他側端部(すなわち周状突出部53に対向する側の端部)には、肩部64が形成されている。この肩部64は、ポペット61が周状突出部53に着座したとき、周状突出部53に周状に接触する。本明細書では、このように肩部64が周状突出部53に周状に接触した状態を、スプール室40の一側端部が閉鎖された状態と呼ぶ。また、肩部64が周状突出部53から離間して、スプール室40の一側端部と作動油路52とが、ポペット61と開口53aの内周面との間の隙間を通じて連通している状態を、スプール室40の一側端部が開放された状態と呼ぶ。肩部64は、一方向に対して傾斜した傾斜面65を有する。図示の例では、傾斜面65は、軸線方向Dxに沿ったスプール31の側へ向けて先細りする円錐の側面又は円錐台の側面の形状を有する。
また、図示の例では、ポペット61は、さらに、本体部62の他側端部から軸線方向Dxの他側に延出する延出部63を有している。延出部63は、開口53aを通ってスプール室40の一側端部内に延びている。延出部63の他側の端部は、スプール31の一側端部に対向している。
なお、本体部62の背圧室66に対向する面62aは、背圧室66の圧油の圧力及びバネ68の弾発力が作用する第1作用面をなす。また、延出部63のスプール31側の面63aは、スプール室40の一側端部内の圧油の圧力またはスプール31による押圧力が作用する第2作用面をなす。さらに、肩部64にも、作動油路52内の圧油による圧力が作用する。
ポペット61は、スプール31が図1に示す中立位置にある場合、その延出部63の先端(第2作用面63aの側の端部)がスプール31の一側端部に当接するようになっている。さらに、図示の例では、ポペット61は、スプール31が図1に示す中立位置にある場合、本体部62が周状突出部53から離間して、スプール室40の一側端部が開放されて作動油路52と連通するようになっている。具体的には、バネ68の弾発力やバネ13の弾発力を調節しておくことで、このような設計を可能にすることができる。
また、ポペット61には、背圧室66とスプール室40の一側端部とを連通させる第1内部通路71が設けられている。第1内部通路71を通じて、スプール室40の一側端部と背圧室66とは、同圧に維持される。ただし、ポペット61は、本体部62の背圧室66側の第1作用面62aの面積が、延出部63のスプール室40側の第2作用面63aの面積よりも大きいので、肩部64への圧油の作用が無い場合には、ポペット61は、スプール31側へ押される。また、ポペット61には、作動油路52とスプール室40の一側端部とを連通させる第2内部通路72が設けられている。第2内部通路72には絞り73が形成されている。この絞り73によって、第2内部通路72を流れることができる圧油の単位時間当たりの流量は、第1内部通路71と比較して十分に低く抑えられている。
次に、図1〜7を参照して、スプール弁の動作について説明する。
まず、リモコン弁4の操作レバー4aが操作されていない場合、パイロットライン11,12は、いずれもタンク7に連通している。このため、パイロット油圧源6からパイロットライン11,12への圧油の供給がなされず、パイロット圧作用部50,32bのいずれにも、パイロット圧は生じない。このため、スプール31にはパイロット圧が作用せず、スプール31は、バネ13の弾発力により、図1および図2に示す中立位置に保持される。なお、スプール31が中立位置にある場合、図2に示すように、スプール31の一側端部とポペット61の他側端部とが接触しており、スプール室40の一側端部は開放されて作動油路52と連通している。
次に、図3を参照して、スプール31を中立位置から第1作動位置へ移動させる際の、スプール弁30の動作について説明する。スプール31を中立位置から第1作動位置に移動させる場合、リモコン弁4の操作レバー4aを操作して、パイロット油圧源6とパイロットライン11とを連通させ、パイロット油圧源6からパイロットライン11に圧油を供給する。パイロットライン11に供給された圧油は、作動油路52に流入する。これにより、作動油路52に、操作レバー4aの操作量に応じたパイロット圧が生じる。図3に示すように、作動油路52にパイロット圧が生じる前からスプール室40の一側端部は開放されて作動油路52と連通しているので、作動油路52の圧力が高まると、作動油路52内の圧油がスプール室40の一側端部に即座に流入する。これにより、作動油路52のパイロット圧がスプール31の一側端部に即座に作用し、スプール31は、操作レバー4aの操作量に応じた速度で、ポペット61から離間する向きS1(すなわち軸線方向Dxの他側)へ即座に移動する。この結果、アクチュエータ2が、応答遅れを起こすことなく、操作レバー4aの操作に応じて即座に動作する。このため、操作レバー4aの操作者は、所望の動作をアクチュエータ2に実行させることができ、また、アクチュエータ2を違和感なく操作することができる。
ここで、ポペット61は、肩部64に作用するパイロット圧が背圧室66から第1作用面62aに加えられる背圧に抗し、スプール31から離間する向きP2(すなわち軸線方向Dxの一側)に移動する。したがって、作動油路52とスプール室40の一側端部とは、連通された状態に維持される。これにより、作動油路52にパイロット圧が発生している間、当該パイロット圧がスプール31の一側端部に作用し続ける。この結果、スプール31の第1作動位置への迅速な移動が達成される。
なお、作動油路52にパイロット圧が生じる前にスプール室40の一側端部がポペット61によって閉鎖されている場合であっても、スプール31の第1作動位置への移動時におけるアクチュエータ2の応答遅れを防止することができる。なぜなら、ポペット61が周状突出部53に着座してスプール室40の一側端部が閉鎖されていても、作動油路52に発生したパイロット圧がポペット61の肩部64に作用することで、ポペット61を、その肩部64が周状突出部53から離間する向きP2(すなわち軸線方向Dxの一側)に直ちに移動させて、スプール室40の一側端部を開放することができるからである。
次に、図4および図5を参照して、スプール31を第1作動位置から中立位置に移動させる際のスプール弁30の動作について説明する。スプール31を第1作動位置から中立位置に移動させる場合、リモコン弁4の操作レバー4aを操作して、パイロットライン11をタンク7に連通させる。これにより、作動油路52のパイロット圧が消失すると、その直後に、ポペット61は、背圧室66内のバネ68の弾発力によって、その肩部64が周状突出部53に向かう向きP1(すなわち軸線方向Dxの他側)に移動する(図4参照)。そして、ポペット61が周状突出部53に着座して、スプール室40の一側端部を閉鎖する。このとき、作動油路52の圧力はスプール室40の一側端部の圧力よりも低い。このため、スプール室40の一側端部の圧油は第2内部流路72を介して作動油路52に流れるが、絞り73によってその単位時間当たりの流量は制限される。したがって、スプール31の一側端部に加わる圧油の圧力は、操作レバー4aの操作後、即座に低下しない。
スプール室40の一側端部の圧油が第2内部流路72を介して作動油路52に流入することにより、スプール室40の一側端部の圧力が徐々に低下して、スプール31は、ポペット61に向かう向きS2に、ゆっくりと移動する。そして、図5に示すように、スプール31がポペット61に当接すると、スプール31はポペット61を、その肩部64が周状突出部53から離れる向きP2(すなわち軸線方向Dxの一側)に押す。これにより、スプール室40の一側端部が開放されて作動油路52と連通し、スプール室40の一側端部の圧油が作動油路52に即座に流入する。この結果、スプール室40の一側端部の圧力が迅速に低下する。そして、スプール室40の一側端部が開放された後、スプール31は、迅速に中間位置まで移動する。
このように、作動油路52内にパイロット圧が生じている状態においてスプール室40の一側端部を開放する位置にあるポペット61が、作動油路52内のパイロット圧が消失した直後に、軸線方向Dxの他側に押されてスプール室40の一側端部を閉鎖し、スプール室40の一側端部から作動油路52への圧油の単位時間当たりの流量を制限する。これにより、スプール31を中立位置から第1作動位置へ移動させてアクチュエータ2を動作させる際の応答遅れを防止しながら、スプール31を第1作動位置から中立位置へ移動させてアクチュエータ2の動作を停止させる際の衝撃や振動の発生を防止することができる。
とりわけ図示の例では、ポペット61にスプール室40の一側端部と背圧室66とを連通させる第1内部通路71が設けられていることで、背圧室66内の圧力をスプール室40の一側端部内の圧力と等しくすることができる。これにより、背圧室66内の圧力が過剰に高くなったり低くなったりして、ポペット61の移動が妨げられることがない。
また、ポペット61に絞り73付きの第2内部通路72を設けることで、スプール室40の一側端部から作動油路52へ流れる圧油の単位時間当たりの流量を、安定して制限することができる。これにより、スプール31の第1作動位置から中立位置へ向かう動作を安定して遅くすることができる。この結果、スプール31が中立位置へ向けて高速動作してアクチュエータ2が急停止することによる衝撃や振動の発生を、安定して防止することができる。
その一方で、スプール31は、中立位置に到達する前にポペット61に接触する。そして、スプール31は、ポペット61を押しながらポペット61と共に移動して、スプール室40の一側端部を開放し、作動油路52と連通させる。これにより、作動油路52のパイロット圧が消失した後、しばらくの間だけスプール31の動作を遅くし、その後、スプール31を迅速に移動させることができる。この結果、ショックレス機能の発揮にともなってアクチュエータ2の動作に必要以上の応答遅れが生じることを、効果的に防止することができる。
次に、図6を参照して、スプール31を中立位置から第2作動位置に移動させる際のスプール弁30の動作について説明する。スプール31を中立位置から第2作動位置に移動させる場合、リモコン弁4の操作レバー4aを操作して、パイロットライン12をパイロット油圧源6に連通させる。これにより、パイロット油圧源6からパイロット圧作用部32bに圧油が供給される。この結果、パイロット圧作用部32bに、操作レバー4aの操作量に応じたパイロット圧が生じ、スプール31の他側端部にパイロット圧が作用する。そして、スプール31は第2作動位置に向かう向きS2(すなわち軸線方向Dxの一側)に移動を開始する。このとき、スプール31の一側端部とポペット61の他側端部とが接触しているので、スプール31はポペット61を押して、ポペット61を、その肩部64が周状突出部53からさらに離間する向きP2(すなわち軸線方向Dxの一側)に移動させる。このため、スプール室40の一側端部は開放された状態に維持される。したがって、スプール31が中立位置から第2作動位置する際、スプール室40の一側端部から作動油路52へ流れる圧油の単位時間当たりの流量が制限されてスプール31の移動が妨げられる、ということがない。
このように、スプール室40の一側端部が開放された状態に維持されることにより、パイロット圧作用部32bにパイロット圧が生じると、スプール31は、軸線方向Dxの一側に、即座に移動することができる。これにより、アクチュエータ2は、応答遅れを起こすことなく、操作レバー4aの操作に応じて即座に動作する。したがって、操作レバー4aの操作者は、所望の動作をアクチュエータ2に実行させることができ、アクチュエータ2を違和感なく操作することができる。
次に、図7を参照して、スプール31を第2作動位置から中立位置に移動させる際のスプール弁30の動作について説明する。スプール31を第2作動位置から中立位置に移動させる場合、リモコン弁4の操作レバー4aを操作して、パイロットライン12をタンク7に連通させる。これによりパイロット圧作用部32bのパイロット圧が消失すると、バネ13の弾発力により、スプール31は中立位置に向かう向きS1に移動を開始する。このとき、図7に示すように、ポペット61は、第1作用面62aが受けるバネ68の弾発力によってスプール31に追随する向きP2(すなわち軸線方向Dxの他側)に移動し、図2に示す位置に戻る。
以上、スプール31の一側に位置するパイロット圧作用部50が、バルブカバー51およびポペット61によって構成されている場合について説明してきたが、これに限られない。例えば、スプール弁30の他側に位置するパイロット圧作用部32bが、パイロット圧作用部50と同様のバルブカバーおよびポペットによって構成されていてもよい。この場合、当該バルブカバーは、スプール31の軸方向Dxの他側端部を収容し、当該バルブカバー内に設けられる作動油路は、パイロットライン12と連絡する。このように構成されたスプール弁30には、スプール31を中立位置から第2作動位置および第1作動位置へ移動させてアクチュエータを動作させる際のアクチュエータ2の応答遅れを防止する機能(応答遅れ防止機能)と、スプール31を第2作動位置から中立位置へ移動させてアクチュエータ2の動作を停止させる際の衝撃や振動の発生を防止する機能(ショックレス機能)とが付与されている。
また、スプール31の一側に位置するパイロット圧作用部50が、バルブカバー51およびポペット61によって構成され、さらに、スプール31の軸線方向Dxの他側に位置するパイロット圧作用部32bが、パイロット圧作用部50と同様のバルブカバーおよびポペットによって構成されていてもよい。すなわち、スプール31の両側にパイロット圧作用部50あるいはパイロット圧作用部50と同様に構成されたパイロット圧作用部が設けられていてもよい。
なお、スプール31の両側にパイロット圧作用部50あるいはパイロット圧作用部50と同様に構成されたパイロット圧作用部が設けられた場合、スプール弁は、以下のように作用する。すなわち、スプール31が中立位置から第1作動位置へ移動する際には、スプール31はパイロット圧作用部32bのポペットを押してスプール室40の他側端部(パイロット圧作用部32b側の端部)を開放する。このため、スプール室40の他側端部の圧油がパイロット圧作用部32bの作動油路に即座に流入し、スプール31の他側端部に加わる圧油の圧力が即座に低下する。この結果、スプール31は第1作動位置へ即座に移動する。また、スプール31が中立位置から第2作動位置へ移動する際には、上述のように、スプール31はパイロット圧作用部50のポペット61を押してスプール室40の一側端部(パイロット圧作用部50側の端部)を開放する。このため、スプール室40の一側端部の圧油が作動油路52に即座に流入し、スプール31の一側端部に加わる圧油の圧力が即座に低下する。この結果、スプール31は第2作動位置へ即座に移動する。以上により、スプール31を中立位置から第1作動位置へ移動させる際、および、中立位置から第2作動位置へ移動させる際の両方において、アクチュエータ2の応答遅れを防止することができる。その一方で、スプール31が第1作動位置から中立位置へ移動する際には、上述のように、スプール室40の一側端部(パイロット圧作用部50側の端部)が閉鎖される。このため、スプール室40の一側端部から作動油路52に流れる圧油の単位時間当たりの流量が制限される。この結果、スプール31の一側端部に加わる圧油の圧力は即座に低下せず、スプール31は第1作動位置から中立位置へゆっくりと移動する。また、スプール31が第2作動位置から中立位置へ移動する際には、スプール室40の他側端部(パイロット圧作用部32b側の端部)が閉鎖される。このため、スプール室40の他側端部からパイロット圧作用部32bの作動油路に流れる圧油の単位時間当たりの流量が制限される。この結果、スプール31の他側端部に加わる圧油の圧力は即座に低下せず、スプール31は第2作動位置から中立位置へゆっくりと移動する。以上により、スプール31を第1作動位置から中立位置へ移動させる際、および、第2作動位置から中立位置へ移動させる際の両方において、アクチュエータ2の動作を停止させる際の衝撃や振動の発生を防止することができる。
さらに、背圧室66とスプール室40の一側端部とを連通させる第1内部通路71、並びに、作動油路52とスプール室40の一側端部とを連通させる第2内部通路72は、ポペット61の内部に設けられていなくてもよい。例えば、内部通路71,72は、バルブカバー51に形成されていてもよい。例えば、作動油路52とスプール室40の一側端部とを連通させる第2内部通路72は、周状突出部53に形成されていてもよい。あるいは、第2内部通路72は、ポペット61の側面に溝として形成されてもよい。
以上に説明した本実施の形態によるスプール弁30は、スプール室40内に配置され、スプール室40の一側端部及び他側端部にパイロット圧が作用することにより移動可能なスプール31と、スプール室40の一側端部を閉鎖または開放するように移動可能なポペット61と、を備えている。そして、ポペット61は、スプール31に接触可能である。より具体的には、スプール室40の一側端部および他側端部のパイロット圧が消失しており、且つ、スプール31が停止している場合、すなわちスプール31が中立位置にある場合、ポペット61は、スプール31に接触している。
このようなスプール弁30によれば、リモコン弁4が操作されて作動油路52内にパイロット圧が生じた際、ポペット61をスプール室40の一側端部を開放する位置に配置して、作動油路52からスプール室40の一側端部に流入する圧油の単位時間当たりの流量が制限されないようにすることで、スプール31を中立位置から中立位置の他側へ(第1作動位置へ)即座に移動させることができる。これにより、スプール弁30は、スプール31の中立位置から前記他側への(第1作動位置への)移動時におけるアクチュエータ2の応答遅れを防止する機能(第1応答遅れ防止機能)を発揮することができる。
また、リモコン弁4が操作されて作動油路52内のパイロット圧が消失した際、ポペット61をスプール室40の一側端部を閉鎖する位置に配置して、スプール室40の一側端部から作動油路52へ流入する圧油の単位時間当たりの流量を制限することで、スプール31を前記他側から(第1作動位置から)中立位置へゆっくりと移動させることができる。これにより、スプール弁30は、スプール31の前記他側から(第1作動位置から)中立位置への移動時におけるアクチュエータ2による衝撃および振動の発生を防止する機能(ショックレス機能)を発揮することができる。
さらに、他側のパイロット圧作用部32bにパイロット圧が生じた場合には、スプール31は、中立位置から中立位置の一側へ向けて(第2作動位置へ向けて)押されるが、このとき、中立位置においてスプール31がポペット61に接触していることにより、スプール31は、ポペット61を押してポペット61と共に移動することとなる。このため、スプール31が中立位置から前記一側へ(第2作動位置へ)移動を開始する際、スプール室40の一側端部がポペット61によって閉鎖されていたとしても、スプール室40の一側端部を即座に開放して作動油路52と連通させることができる。このため、スプール室40の一側端部から作動油路52へ流入する圧油の単位時間当たりの流量は制限されず、スプール31は前記一側へ向けた(第2作動位置へ向けた)移動を即座に開始することができる。また、スプール31が前記一側への(第2作動位置への)移動を終了するまで、ポペット61はスプール31によって押され続け、スプール室40の一側端部と作動油路52とは連通した状態に維持される。このため、スプール31が前記一側への(第2作動位置への)移動を終了するまで、スプール室40の一側端部から作動油路52へ流入する圧油の単位時間当たりの流量は制限されない。この結果、スプール31は前記一側に(第2作動位置に)即座に移動することができる。このように、スプール弁30は、スプール31の中立位置から前記一側への(第2作動位置への)移動時におけるアクチュエータ2の応答遅れを防止する機能(第2応答遅れ防止機能)を発揮することができる。
すなわち、上述した一実施の形態のスプール弁30によれば、スプール弁30の一側端部に内蔵されたポペット61により、スプール31の中立位置から前記他側へ向けた(第1作動位置へ向けた)移動だけでなく前記一側へ向けた(第2作動位置へ向けた)移動も迅速に行うことができ、且つ、スプール31の前記他側から(第1作動位置から)中立位置への移動を遅らせることができる。これにより、スプール弁30は、スプール31が中立位置から前記他側および前記一側へ移動する際の、アクチュエータ2の動作開始時における応答遅れを防止することができ、且つ、スプール31が前記他側から中立位置へ移動する際の、アクチュエータ2の動作停止時における衝撃の発生を防止することができる。
また、ポペット61がスプール弁30内に配置されていることから、スプール弁30自体に優れた応答遅れ防止機能およびショックレス機能が付与される。したがって、別途のショックレス弁等を油圧回路10に設置する必要がなく、油圧回路10の大型複雑化を効果的に回避することができる。
また、本実施の形態において、スプール室40の一側端部および他側端部のパイロット圧が消失しており、且つ、スプール31が停止している場合、すなわちスプール31が中立位置にある場合、スプール室40の一側端部は開放されている。したがって、この場合、スプール室40の一側端部は作動油路52と連通している。これにより、作動油路52内にパイロット圧が生じた際、作動油路52内の圧油のスプール室40の一側端部内への流入を、効果的に迅速にすることができる。そして、スプール31の中立位置から前記他側への移動を、効果的に迅速にすることができる。
また、このように構成した場合、作動油路52内のパイロット圧が消失してスプール31が前記他側から中立位置に戻る際、スプール31は、中立位置に到達する前に、スプール室40の一側端部を閉鎖するポペット61にぶつかることになる。そして、スプール31は、ポペット61を押してスプール室40の一側端部を開放しながら、中立位置へ移動することになる。したがって、作動油路52のパイロット圧の消失後、中立位置へ向けてゆっくりと移動していたスプール31は、スプール室40の一側端部が開放された後は、スプール室40の一側端部内の圧油が作動油路52内へ迅速に流入することにより、中立位置へ迅速に移動することとなる。すなわち、上述のように構成することにより、作動油路52のパイロット圧が消失した後、しばらくの間だけスプール31の動作を遅くし、その後、スプール31を迅速に移動させることができる。これにより、スプール31が前記他側から中立位置へ移動する際のショックレス機能の発揮にともなって、スプールが前記他側から中立位置に戻る際のアクチュエータ2の動作が必要以上に遅れる、ということを効果的に防止することができる。
また、ポペット61は、ポペット61をスプール室40に向けて押す圧油を収容する背圧室66とスプール室40の一側端部とを連通させる第1内部通路71と、スプール室40外(具体的には作動油路52)とスプール室40の一側端部とを連通させ且つ絞り73が形成された第2内部通路72と、を有している。ポペット61にスプール室40の一側端部と背圧室66とを連通させる第1内部通路71が設けられていることで、背圧室66内の圧力をスプール室40の一側端部内の圧力と等しくすることができる。これにより、背圧室66内の圧力が過剰に高くなったり低くなったりして、ポペット61の移動が妨げられることがない。また、ポペット61に絞り73付きの第2内部通路72を設けることで、スプール室40の一側端部から作動油路52へ流れる圧油の単位時間当たりの流量を、安定して制限することができる。これにより、スプール31の前記他側から(第1作動位置から)中立位置への動作を安定して遅くすることができる。この結果、スプール弁30は、スプール31が中立位置へ高速動作してアクチュエータ2が急停止することによる衝撃や振動の発生を防止する機能(ショックレス機能)を、安定して発揮することができる。
具体的には、スプール室40の一側端部の(したがって作動油路52内の)パイロット圧が消失してスプール31がスプール室40の一側端部へ向けて移動を開始する際、ポペット61がスプール室40の一側端部を閉鎖し、スプール室40の一側端部内の圧油が、第2内部通路72を介してスプール室40外(具体的には作動油路52内)に流れる。これにより、作動油路52内のパイロット圧が消失した後、スプール室40の一側端部内の圧油による圧力を安定して徐々に低下させることができ、スプール31を、前記他側から(第1作動位置から)中立位置へ向けて、安定してゆっくりと移動させることができる。この結果、この際のアクチュエータ2の動作も、安定させることができる。
とりわけ、本実施の形態においては、スプール室40の一側端部の(作動油路52内の)パイロット圧が消失してスプール31がスプール室40の一側端部へ向けて移動を開始する際、まず、ポペット61がスプール室40の一側端部を閉鎖し、スプール室40の一側端部内の圧油が、第2内部通路72を介してスプール室40外(具体的には作動油路52内)に流れ、次に、スプール31がポペット61とともに移動して、スプール室40の一側端部が開放され、これにより作動油路52と連通する。上述のように、この場合、パイロット圧が消失した後、しばらくの間だけスプール31の前記他側から中立位置へ向けた移動を遅くし、その後、スプール31を迅速に中立位置へ移動させることができる。これにより、スプール31の前記他側から中立位置への移動時におけるショックレス機能の発揮にともなって、スプール31の前記他側から中立位置への移動が必要以上に遅くなることを効果的に防止することができる。
また、本実施の形態において、スプール室40の一側端部に(具体的には作動油路52内に)パイロット圧が生じている状態において、ポペット61は、スプール室40の一側端部を開放し、これにより作動油路52に連通させる。そして、スプール室40の一側端部の(具体的には作動油路52内の)パイロット圧が消失した直後に、ポペット61は、スプール室40に接近するように移動してスプール室40の一側端部を閉鎖する。これにより、スプール弁30は、上述のように、スプール31の中立位置から前記他側への移動時における応答遅れ防止機能(第1応答遅れ防止機能)を発揮し、且つ、スプール31の前記他側から中立位置への移動時におけるショックレス機能を発揮することができる。
また、本実施の形態において、スプール31を収容するスプール穴51aを形成された弁本体ブロック33と、弁本体ブロック33の一側端部に取り付けられたバルブカバー51と、を備え、ポペット61は、バルブカバー51内に収容されている。この場合、スプール弁30は、簡単に組立可能な簡易な構成により、上述のスプール31の中立位置から前記他側への移動時および中立位置から前記一側への移動時における応答遅れ防止機能を発揮し、且つ、スプール31の前記他側から中立位置への移動時におけるショックレス機能を発揮する。
本発明は、上述の実施形態には限定されない。例えば、上述の実施形態の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また、上述の構成要素及び/又は方法以外の構成要素及び/又は方法を含む形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、上述の構成要素及び/又は方法のうちの一部の要素が含まれない形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果も発揮されうる。