以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面は簡略化されており、例えば各要素の寸法、各要素間の寸法比及び各要素の具体的な形状が、実物のそれらから異なっている部分が図面に含まれうる。ただし、当業者であれば、そのような簡略化された図面から、以下に説明する実施の形態及び本発明のその他の実施の形態を十分に理解することが可能である。
図1に、本発明の一実施の形態による方向切換弁を用いた作動流体回路の一例を示す。
図1に示す作動流体回路1は、アクチュエータ2と、アクチュエータ2への作動流体(図示の例では圧油)の給排を制御するための方向切換弁3と、方向切換弁3を介してアクチュエータ2に作動流体を供給するメインポンプ5と、を有する。また、作動流体回路1は、方向切換弁3の動作を制御するためのパイロットコントロール弁(以下、リモコン弁と呼ぶ)4と、パイロットポンプ6と、タンク7と、を有する。
図示の例では、アクチュエータ2は、ピストンロッド2rを有する油圧シリンダであり、ヘッド側流体室2aとロッド側流体室2bとを有する。
方向切換弁3は、メインポンプ5およびタンク7に接続されている。方向切換弁3は、スプール30を有しており、スプール30を第1方向(図1の左右方向)D1に移動させることにより、メインポンプ5およびタンク7と、アクチュエータ2のヘッド側流体室2aおよびロッド側流体室2bと、の接続状態を変更することができるようになっている。
図1に示すように、方向切換弁3は、第1方向D1の両端にパイロット圧作用部51,52を含んでいる。パイロット圧作用部51,52は、スプール30の駆動を目的として、スプール30の端部にパイロット圧を負荷するための手段である。第1方向D1の他側(図1の左側)に位置するパイロット圧作用部51にパイロット圧を負荷することにより、スプール30を、図1に示す中立位置から、第1方向D1の一側(図1の右方向)に移動した第1作動位置へ、移動させることができる。また、第1方向D1の一側(図1の右側)に位置するパイロット圧作用部52にパイロット圧を負荷することにより、スプール30を、図1に示す中立位置から、第1方向D1の他側(図1の左方向)に移動した第2作動位置へ、移動させることができる。
方向切換弁3は、また、スプール30に第1方向D1に弾発力を加える弾性部材61,62を有する。弾性部材61,62により、パイロット圧作用部51,52のいずれにもパイロット圧が生じていない場合、スプール30は、図1に示す中立位置に保持される。
なお、スプール30が中立位置にある場合、メインポンプ5およびタンク7は、アクチュエータ2のヘッド側流体室2aおよびロッド側流体室2bのいずれにも接続されておらず(図1参照)、アクチュエータ2への作動流体の給排はなされない。一方、スプール30が第1作動位置にある場合、メインポンプ5およびタンク7は、それぞれ、アクチュエータ2のロッド側流体室2bおよびヘッド側流体室2aに接続される。この結果、ロッド側流体室2bに作動流体が供給され、同時にヘッド側流体室2aから作動流体が排出されて、ピストンロッド2rが引く方向に移動する。また、スプール30が第2作動位置にある場合、メインポンプ5およびタンク7は、それぞれ、アクチュエータ2のヘッド側流体室2aおよびロッド側流体室2bに接続される。この結果、ヘッド側流体室2aに作動流体が供給され、同時にロッド側流体室2bから作動流体が排出されて、ピストンロッド2rが出る方向に移動する。このように、方向切換弁3のスプール30を移動させて、メインポンプ5およびタンク7と、アクチュエータ2のヘッド側流体室2aおよびロッド側流体室2bと、の接続状態を変更することにより、アクチュエータ2を所望のように動作させることができる。
リモコン弁4は、上述のパイロット圧を制御するための弁である。ここで、方向切換弁3のパイロット圧作用部51,52の各々には、パイロットライン11,12が接続されている。リモコン弁4は、その操作レバー4aの操作方向に対応する側のパイロットライン11,12とパイロットポンプ6とを連通させて、当該パイロットライン11,12に作動流体を供給する。この結果、当該パイロットライン11,12に接続したパイロット圧作用部51,52にパイロット圧が生じる。なお、リモコン弁4は、一方のパイロットライン11,12とパイロットポンプ6とを連通させるとき、他方のパイロットライン12,11とタンク7とを連通させる。また、操作レバー4aが操作されていない場合、リモコン弁4は、両方のパイロットライン11,12を、タンク7に連通させる。
次に、図2および図3を参照して、方向切換弁3について、さらに詳述する。図2は、図1に示す方向切換弁3のスプール30の長手方向に沿った断面を示している。図3は、図2に示すスプール30に形成された内部通路70とセレクタ80とを模式的に示す、部分断面図である。
図2に示す方向切換弁3は、主たる構成要素として、第1方向D1に沿って延びる細長状のスプール30と、スプール30を収容するスプール孔41が設けられた弁本体40と、弁本体40の両側に取り付けられたバルブカバー53,54と、を有する。
バルブカバー53,54は、その第1方向D1の一端がパイロットライン11,12と接続する接続部を備えた筒状の部材である。バルブカバー53,54は、それぞれ、スプール30の他側端部および一側端部を収容する。バルブカバー53,54の内部は、それぞれ、パイロットライン11,12に接続され、パイロットライン11,12に作動流体が供給されると、バルブカバー53,54の内部にパイロット圧が生じ、パイロット圧がスプール30の他側端面31および一側端面32に作用するようになっている。すなわち、バルブカバー53,54の内部は、上述したパイロット圧作用部51,52をなしている。また、スプール30の他側端面31および一側端面32は、バルブカバー53,54の内部に生じたパイロット圧が作用する受圧面をなしている。
バルブカバー53,54の内部には、それぞれ、スプール30に第1方向D1の一側および他側に向けて弾発力を加える弾性部材61,62が配置されている。図示された例では、弾性部材61,62は、ばねである。
弁本体40には、第1方向D1に延びるスプール孔41が形成されている。スプール孔41内には、スプール30が移動可能に配置される。また、弁本体40には、供給通路44、アクチュエータ通路45およびタンク通路46を含む各種通路が形成されている。また、図示しないが、弁本体40には、メインポンプ5に接続される供給ポート、アクチュエータ2のヘッド側流体室2aに接続されるヘッド側アクチュエータポート、アクチュエータ2のロッド側流体室2bに接続されるロッド側アクチュエータポート、およびタンク7に接続されるタンクポートが形成されている。
供給通路44は、供給ポートに通じている。図2に示された例では、供給通路44は、途中で分岐して、一方が第1供給通路44aをなし、他方が第2供給通路44bをなす。第1~第2供給通路44a,44bは、スプール孔41に開口している。
アクチュエータ通路45は、第1アクチュエータ通路45a及び第2アクチュエータ通路45bを有する。第1~第2アクチュエータ通路45a,45bは、それぞれ、ヘッド側アクチュエータポートおよびロッド側アクチュエータポートに通じている。したがって、第1アクチュエータ通路45aは、ヘッド側アクチュエータポートを介して、アクチュエータ2のヘッド側流体室2aに接続される。また、第2アクチュエータ通路45bは、ロッド側アクチュエータポートを介して、アクチュエータ2のロッド側流体室2bに接続される。第1~第2アクチュエータ通路45a,45bは、また、スプール孔41に開口している。
タンク通路46は、タンクポートに通じている。図2に示された例では、タンク通路46は、途中で分岐して、一方が第1タンク通路46aをなし、他方が第2タンク通路46bをなす。第1~第2タンク通路46a,46bは、それぞれ、スプール孔41に開口している。
スプール孔41の内壁41aには、バルブカバー54の側から順に、第1タンク通路46aの開口部、第1アクチュエータ通路45aの開口部、第1供給通路44aの開口部、第2供給通路44bの開口部、第2アクチュエータ通路45bの開口部、および、第2タンク通路46bの開口部が形成されている。スプール孔41の内壁41aの各開口部の間の領域は、環状ランド部RLをなしている。
なお、以下では、第1タンク通路46aの開口部と第1アクチュエータ通路45aの開口部との間の環状ランド部RLを、「第1タンク通路側環状ランド部RL1」と呼ぶ。また、第1アクチュエータ通路45aの開口部と第1供給通路44aの開口部との間の環状ランド部RLを、「第1供給通路側環状ランド部RL2」と呼ぶ。また、第2供給通路44bの開口部と第2アクチュエータ通路45bの開口部との間の環状ランド部RLを、「第2供給通路側環状ランド部RL3」と呼ぶ。また、第2アクチュエータ通路45bの開口部と第2タンク通路46bの開口部との間の環状ランド部RLを、「第2タンク通路側環状ランド部RL4」と呼ぶ。
スプール30は、全体として円柱状の部材であり、第1方向D1に相互に離間して配置される複数のランド部Lと、ランド部L間に設けられる複数の切欠部Mとを有する。各ランド部Lの外径はスプール孔41の環状ランド部RLの内径とほぼ一致する。各切欠部Mの外径は環状ランド部RLの内径よりも小さい。
各ランド部Lが対応する環状ランド部RLに嵌合された場合、当該環状ランド部RLの内部空間が閉鎖される。これにより、当該ランド部Lの両側で開口する二つの通路に接続する二つのポート間の流路が遮断される。一方、ランド部Lが対応する環状ランド部RLから離脱して切欠部Mが当該環状ランド部RLの内部空間に配置された場合、当該環状ランド部RLの両側で開口する二つの通路間の作動流体の流れが許容される。すなわち、上記二つの通路に接続する二つのポート間の流路が開放される。スプール30は、このように切欠部Mで二つのポートを接続したり、ランド部Lで二つのポートを遮断したりして、作動流体の流動方向を変えることができる。
なお、以下では、第1タンク通路側環状ランド部RL1に対応するランド部Lを、「第1タンク通路側ランド部L1」と呼ぶ。また、第1供給通路側環状ランド部RL2に対応するランド部Lを、「第1供給通路側ランド部L2」と呼ぶ。また、第2供給通路側環状ランド部RL3に対応するランド部Lを、「第2供給通路側ランド部L3」と呼ぶ。また、第2タンク通路側環状ランド部RL4に対応するランド部Lを、「第2タンク通路側ランド部L4」と呼ぶ。そして、第1タンク通路側ランド部L1と第1供給通路側ランド部L2との間の切欠部Mを、「第1切欠部M1」と呼ぶ。また、第2供給通路側ランド部L3と第2タンク通路側ランド部L4との間の切欠部Mを、「第2切欠部M2」と呼ぶ。
具体的には、スプール30が図2に示す中立位置に配置されている場合、第1タンク通路側ランド部L1が第1タンク通路側環状ランド部RL1に嵌合して、第1アクチュエータ通路45aと第1タンク通路46aとの間を遮断する。これにより、ヘッド側アクチュエータポートとタンクポートとを接続する流路が閉鎖される。また、第1供給通路側ランド部L2が第1供給通路側環状ランド部RL2に嵌合して、第1アクチュエータ通路45aと第1供給通路44aとの間を遮断する。これにより、ヘッド側アクチュエータポートと供給ポートとを接続する流路が閉鎖される。また、第2タンク通路側ランド部L4が第2タンク通路側環状ランド部RL4に嵌合して、第2アクチュエータ通路45bと第2タンク通路46bとの間を遮断する。これにより、ロッド側アクチュエータポートとタンクポートとを接続する流路が閉鎖される。また、第2供給通路側ランド部L3が第2供給通路側環状ランド部RL3に嵌合して、第2アクチュエータ通路45bと第2供給通路44bとの間を遮断する。これにより、ロッド側アクチュエータポートと供給ポートとを接続する流路が閉鎖される。以上により、供給ポートに接続されたメインポンプ5からの作動流体は、アクチュエータ2のいずれの流体室2a,2bにも供給されない。また、アクチュエータ2のいずれの流体室2a、2bの作動流体も、タンクポートに接続されたタンク7に排出されない。このため、アクチュエータ2は動作せず、その姿勢は維持される。
スプール30がスプール孔41において図2に示す中立位置から第1方向の一側(図2では右側)へ第1作動位置に移動された場合、第1タンク通路側ランド部L1は第1タンク通路側環状ランド部RL1から離脱し、第1タンク通路側環状ランド部RL1の内部空間には、第1切欠部M1が配置される。これにより、第1アクチュエータ通路45aと第1タンク通路46aとが、第1切欠部M1と第1タンク通路側環状ランド部RL1との間の空間を通じて連通する。したがって、ヘッド側アクチュエータポートとタンクポートとを接続する流路が開放される。なお、このとき、第1供給通路側ランド部L2は、第1供給通路側環状ランド部RL2に嵌合したままであり、第1供給通路44aと第1アクチュエータ通路45aとの間は遮断されたままである。したがって、ヘッド側アクチュエータポートと供給ポートとを接続する流路は、閉鎖されたままである。また、第2供給通路側ランド部L3が第2供給通路側環状ランド部RL3から離脱し、第2供給通路側環状ランド部RL3の内部空間には、第2切欠部M2が配置される。これにより、第2アクチュエータ通路45bと第2供給通路44bとが、第2切欠部M2と第2供給通路側環状ランド部RL3との間の空間を通じて連通する。したがって、ロッド側アクチュエータポートと供給ポートとを接続する流路が開放される。なお、このとき、第2タンク通路側ランド部L4は第2タンク通路側環状ランド部RL4に嵌合したままであり、第2アクチュエータ通路45bと第2タンク通路46bとの間は遮断されたままである。したがって、ロッド側アクチュエータポートとタンクポートとを接続する流路は、閉鎖されたままである。以上により、供給ポートに接続されたメインポンプ5からの作動流体は、第2供給通路44b、第2供給通路側環状ランド部RL3の内部空間および第2アクチュエータ通路45bを通じて、ロッド側流体室2bに流入する。また、ヘッド側流体室2a内の作動流体が、第1アクチュエータ通路45a、第1タンク通路側環状ランド部RL1の内部空間および第1タンク通路46aを通じて、タンク7に流入する。この結果、アクチュエータ2のピストンロッド2rが引く方向に移動する。
スプール30がスプール孔41において図2に示す中立位置から第1方向D1の他側(図2では左側)へ第2作動位置に移動された場合、第1供給通路側ランド部L2が第1供給通路側環状ランド部RL2から離脱し、第1供給通路側環状ランド部RL2の内部空間には、第1切欠部M1が配置される。これにより、第1アクチュエータ通路45aと第1供給通路44aとが、第1切欠部M1と第1供給通路側環状ランド部RL2との間の空間を通じて連通する。したがって、ヘッド側アクチュエータポートと供給ポートとを接続する流路が開放される。なお、このとき、第1タンク通路側ランド部L1は第1タンク通路側環状ランド部RL1に嵌合したままであり、第1アクチュエータ通路45aと第1タンク通路46aとの間は遮断されたままである。したがって、ヘッド側アクチュエータポートとタンクポートとを接続する流路は閉鎖されたままである。また、第2タンク通路側ランド部L4が第2タンク通路側環状ランド部RL4から離脱し、第2タンク通路側環状ランド部RL4の内部空間には、第2切欠部M2が配置される。これにより、第2アクチュエータ通路45bと第2タンク通路46bとが、第2切欠部M2と第2タンク通路側環状ランド部RL4との間の空間を通じて連通する。したがって、ロッド側アクチュエータポートとタンクポートとを接続する流路が開放される。なお、このとき、第2供給通路側ランド部L3は第2供給通路側環状ランド部RL3に嵌合したままであり、第2アクチュエータ通路45bと第2供給通路44bとの間は遮断されたままである。したがって、ロッド側アクチュエータポートと供給ポートとを接続する流路は閉鎖されたままである。以上により、供給ポートに接続されたメインポンプ5からの作動流体は、第1供給通路44a、第1供給通路側環状ランド部RL2の内部空間および第1アクチュエータ通路45aを介して、ヘッド側流体室2aに流入する。また、ロッド側流体室2bの作動流体が、第2アクチュエータ通路45b、第2タンク通路側環状ランド部RL4の内部空間および第2タンク通路46bを介して、タンク7に流入する。この結果、アクチュエータ2のピストンロッド2rが出る方向に移動する。
このような方向切換弁において、例えば、ロッド2rを引っ込めるべくアクチュエータ2のヘッド側流体室2aから作動流体を排出する際、第1タンク通路側環状ランド部RL1から第1タンク通路側ランド部L1が離脱して初めてヘッド側アクチュエータポートとタンクポートとを接続する流路が開放されるものとすると、アクチュエータ2が急激に動作して、衝撃および振動を発生させてしまう虞がある。このような事態を防止するため、ランド部の外周面にスプールの移動方向に延びるノッチを設けることが知られている。すなわち、スプールを移動させる際、ランド部が環状ランド部から離脱する前に、当該環状ランド部の両側に開口する通路を、ノッチを通じて連通させて、一方の通路から他方の通路へ、いわゆる作動流体の前流れを生じさせる。これにより、アクチュエータは、ランド部が環状ランド部から離脱する前に動作を開始することができ、アクチュエータが急激に動作することによる振動および衝撃の発生を防止することができる。
図2および図3に示す例では、第1タンク通路側ランド部L1の外周面に、ノッチNが設けられている。図3によく示されているように、ノッチNは、スプール30の移動方向D1に細長く、第1タンク通路側ランド部L1の第1アクチュエータ通路45a側の端部から第1タンク通路46aの側に延びている。第1タンク通路側ランド部L1の外周面にノッチNが設けられていることにより、スプール30が第1方向D1の一側(図2では右側)に移動して第1タンク通路側ランド部L1が第1タンク通路側環状ランド部RL1から離脱する前に、第1アクチュエータ通路45aと第1タンク通路46aとをノッチNを通じて連通させて、第1アクチュエータ通路45aから第1タンク通路46aへ、ノッチNを通じた作動流体の前流れを生じさせることができる。すなわち、第1アクチュエータ通路45aから第1タンク通路46aへ、ノッチNを通じて、作動流体を少量ずつ排出することができる。なお、以下では、第1タンク通路側ランド部L1のうち、ノッチNよりも、第1タンク通路側環状ランド部RL1の内部空間を閉鎖する位置から開放する位置への第1タンク通路側ランド部L1の(スプール30の)移動方向(図2では右方向)における前方側(図2では右側)となる部分を、ノッチ非形成部L1aと呼ぶ。
ここで、図3に示すように、スプール30が中立位置にある場合、第1タンク通路側環状ランド部RL1の内部空間は、第1タンク通路側ランド部L1のノッチ非形成部L1aによって閉鎖されている。したがって、スプール30が中立位置にある場合は、ノッチNを通じた作動流体の前流れは生じない。ノッチNを通じた作動流体の前流れは、スプール30が第1方向D1の一側(図3では右側)に移動して、ノッチNの一側端部が第1タンク通路46aと対面すると、始まる。これにより、アクチュエータ2が動作を開始する。なお、ノッチNを通じた作動流体の前流れは、第1タンク通路側ランド部L1が第1タンク通路側環状ランド部RL1から離脱するまで続く。
ところで、一般に、このようなノッチは、ランド部が環状ランド部から離脱する前後でアクチュエータの動作速度が急激に変化することのないよう、十分な長さを有している。つまり、ノッチが十分な長さを有していることにより、スプールの移動にともなって、環状ランド部の両側で開口する通路を接続する流路の開口面積を徐々に増大させることができ、アクチュエータの流体室からの作動流体の排出量が徐々に増大して、アクチュエータの動作速度を徐々に速くすることができる。一方で、ノッチが十分な長さを有していることにより、次のような問題が生じていた。まず、ノッチNの長さが長いほど、スプール30が中立位置にある場合の、ランド部L1のノッチ非形成部L1aと環状ランド部RL1とが重なり合う領域L1bの、スプール30の移動方向D1に沿った長さ(以下、「オーバーラップ量」と呼ぶ)Wが、短くなる。オーバーラップ量Wが短いと、スプール30を中立位置に配置してアクチュエータ2の姿勢を維持しようとしても、環状ランド部RL1の一方の側(通路45aの側)から他方の側(通路46aの側)に作動流体が漏れ出てしまって、アクチュエータ2の姿勢を維持することができない。
このような点を考慮して、図示の例では、ノッチNの長さを従来よりも短くして、スプール30が中立位置にある場合のオーバーラップ量Wを従来よりも大きく設定している。
ところで、一般に、オーバーラップ量やノッチの長さを変更すると、アクチュエータの制御性も変更されてしまう。例えば、従来と同様にリモコン弁の操作レバーを操作しても、操作レバーの操作を開始してから作動流体の前流れが始まるまでの時間長が従来とは異なる時間長になるため、操作レバーの操作を開始してからアクチュエータが動作を開始するまでの時間長も、従来とは異なる時間長になる。また、ノッチの長さを短くした場合、作動流体の前流れが持続する時間長が従来よりも短くなるため、ランド部が環状ランド部から離脱する前にアクチュエータを十分に動作させることができない。さらに、この場合、ノッチが接続する通路のノッチによる最大開口面積が従来よりも小さくなるため、ランド部が環状ランド部から離脱する前にアクチュエータの動作速度を十分に速くすることができない。このことは、操作レバーの操作者に違和感を生じさせる。
このような事情を考慮して、本実施の形態の方向切換弁3は、中立位置における第1タンク通路側ランド部L1と第1タンク通路側環状ランド部RL1とのオーバーラップ量Wを十分に大きく設定しつつ、アクチュエータ2の制御性を維持するための工夫がなされている。
具体的には、方向切換弁3は、ヘッド側アクチュエータ通路45aおよび第1タンク通路46aを介してヘッド側アクチュエータポートおよびタンクポートに通じる内部通路70を有している。内部通路70は、スプール30が中立位置にある時は閉鎖されているが、スプール30が中立位置から第1作動位置に移動する際、開放される。このような内部通路70を通じて作動流体の前流れを生じさせることにより、上記オーバーラップ量Wを十分に大きく設定しつつ、アクチュエータ2の制御性を維持することができる。
以下、内部通路70およびその開閉機構について、図2乃至図5を参照して詳述する。図4は、スプール30の第1切欠部M1近傍の外周面を示す部分正面図であり、図5は、図4のI-I線に沿った断面図である。図4および図5において、後述するセレクタ80や弾性部材85の図示は省略されている。
図2乃至図5に示すように、スプール30には、セレクタ80を収容するセレクタ孔71が形成されている。図3に示すように、セレクタ孔71は、第1タンク通路側ランド部L1から第1供給通路側ランド部L2に亘って第1方向D1に延びている。セレクタ孔71の一側端部は栓体75によって閉鎖されている。また、スプール30には、第1タンク通路側ランド部L1上に開口する第1孔72と、第1切欠部M1上に開口する第2孔73と、が形成されている。図3および図5に示すように、第1孔72および第2孔73は、それぞれ、スプール30の径方向D2に延びて、セレクタ孔71の内周面上に開口している。なお、以下では、第1タンク通路側ランド部L1の外周面上に設けられた第1孔72の開口部を、「第1孔72の外側開口部72a」と呼び、セレクタ孔71の内周面上に設けられた第1孔72の開口部を、「第1孔72の内側開口部72b」と呼ぶ。同様に、第1切欠部M1の外周面上に設けられた第2孔73の開口部を、「第2孔73の外側開口部73a」と呼び、セレクタ孔71の内周面上に設けられた第2孔73の開口部を、「第2孔73の内側開口部73b」と呼ぶ。
第1孔72と第2孔73とは、セレクタ孔71によって連通している。第1孔72および第2孔73は、セレクタ孔71と共に、上記内部通路70を構成する。第1孔72および第2孔73は、それぞれ、内部通路70の一端および他端をなす。このような内部通路70は、その一端(第1孔72)が、スプール30が中立位置から第1作動位置に移動する際、第1タンク通路側ランド部L1が第1タンク通路側環状ランド部RL1から離脱して当該環状ランド部RL1の内部空間が開放される前に、第1タンク通路46aに対面する。
図3に示すように、第1孔72の外側開口部72aは、スプール30が中立位置にある場合に第1タンク通路側環状ランド部RL1に対面するようになる位置に設けられている。したがって、スプール30が中立位置にある場合、内部通路70は、第1タンク通路側環状ランド部RL1によって閉鎖されている。
スプール30には、さらに、セレクタ孔71の第1方向D1の他側に、第1方向D1に延びる作動流体孔74が形成されている。作動流体孔74は、スプール30のパイロット圧作用部51側の受圧面31に開口し、また、セレクタ孔71に通じている。これにより、パイロット圧作用部51に供給された作動流体が、作動流体孔74を通じてセレクタ孔71に流入することができる。
また、セレクタ孔71の第1方向D1の一側端部を閉鎖する栓体75には、栓体75を第1方向D1に貫通する副作動流体孔76が形成されている。副作動流体孔76は、スプール30のパイロット圧作用部52側の受圧面32に開口し、また、セレクタ孔71に通じている。これにより、セレクタ孔71内の作動流体を、副作動流体孔76を通じてパイロット圧作用部52に排出することができる。
上述した内部通路70は、セレクタ孔71に収容されるセレクタ80によっても開閉される。以下、セレクタ80について詳述する。
セレクタ80は、スプール30に対して移動することで、スプール30に形成された内部通路70を開閉する。より具体的には、内部通路70のうち第1孔72と第2孔73の間を開閉する。
図示された例では、セレクタ80は、全体として円柱状の部材であり、第1方向D1に延びている。セレクタ80は、栓体75に対面する第1大径部81と、作動流体孔74に対面する第2大径部82と、第1大径部81と第2大径部82とを接続する小径部83と、を有する。第1~第2大径部81,82の外径は、セレクタ孔71の内径に一致している。小径部83の外径は、セレクタ孔71の内径よりも小さい。作動流体孔74に対面するセレクタ80の他側端面84は受圧面をなす。受圧面84は、パイロット圧作用部51から作動流体孔74を通じてセレクタ孔71に流入する作動流体の圧力を受ける。
セレクタ80と栓体75との間には、セレクタ80を第1方向D1の他側に向けて押し付ける弾性部材85が収容されている。図示された例では、弾性部材85は、ばねである。これにより、セレクタ80は、その受圧面84に圧力が負荷されていない場合、図3に示すように、栓体75から最も離間した位置に(したがって、作動流体孔74に最も接近した位置に)保持される。そして、受圧面84に圧力が負荷されると、セレクタ孔71内を第1方向D1の一側に向けて、スプール30に対して移動する。すなわち、パイロット圧作用部51に作動流体が供給されると、セレクタ80は、弾性部材85の押付力に抗して、栓体75に向けて移動する。
なお、セレクタ80の受圧面84に負荷されてセレクタ80を移動させる圧力は、スプール30を移動させるためにパイロット圧作用部51に供給される作動流体による圧力である。すなわち、セレクタ80は、スプール30を移動させる作動流体からの作用により移動する。
ここで、パイロット圧作用部51に作動流体が供給されず、スプール30が中立位置にある場合、セレクタ80は、弾性部材85の押付力によって栓体75から最も離間した位置に保持される。このとき、図3に示すように、セレクタ80の第1大径部81は、セレクタ孔71の内周面の、第1方向D1において第1~第2孔72,73の内側開口部72b,73bの間となる部分(以下、「セレクタ孔環状ランド部SRL」と呼ぶ。)に嵌合し、第1孔72と第2孔73との間を閉鎖する。すなわち、セレクタ80は、内部通路70を閉鎖する。
また、パイロット圧作用部51に作動流体が供給されると、パイロット圧作用部51の作動流体が作動流体孔74に流入し、セレクタ80の受圧面84に作動流体の圧力が負荷される。受圧面84に作動流体が作用することにより、セレクタ80は栓体75に近づくように、スプール30に対して移動する。これにより、図6に示すように、セレクタ80の第1大径部81がセレクタ孔環状ランド部SRLから離脱して、セレクタ孔環状ランド部SRLの内部空間に、小径部83が配置される。このようにして、セレクタ孔環状ランド部SRLの内部空間が(したがって、第1孔72と第2孔73との間が)開放される。すなわち、セレクタ80は、内部通路70を開放する。
このように、セレクタ80は、弾性部材85の押付力および作動流体孔74に流入した作動流体の作用を受けて、内部通路70を開閉する。なお、パイロット圧作用部51に作動流体が流入してセレクタ80が移動するとき、スプール30のパイロット圧作用部51側の受圧面31にはパイロット圧が負荷されている。このため、スプール30は、第1方向D1の一側に向けて弁本体40に対して移動する。すなわち、セレクタ80は、スプール30が第1方向D1の一側に向けて移動するときに(言い換えると、スプール30の移動にともなって)、スプール30に対して移動し、内部通路70を開放する。このように、内部通路70が、スプール30が中立位置にある時は閉鎖され、中立位置から移動する時に開放されることで、スプール30が中立位置にある際に作動流体が内部通路70の一方の側(通路45aの側)から他方の側(通路46aの側)へ、内部通路70を通じて漏れ出ることが低減される一方、スプール30が中立位置から移動する際は、内部通路70を通じた作動流体の前流れを生じさせることができる。
さらに、図示された例では、上述したように、スプール30が中立位置にある場合、内部通路70は、ランド部L1が嵌合する環状ランド部RL1によっても開閉される。より具体的には、第1孔72の外側開口部72aが、環状ランド部RL1によって閉鎖される。この外側開口部72aは、スプール30が中立位置から第1方向D1の一側に向けて移動するときに(言い換えると、スプール30の移動にともなって)、開放される。すなわち、ランド部L1は、スプール30の移動にともなって、内部通路70を開放する。これにより、スプール30が中立位置にある際に作動流体が内部通路70の一方の側(通路45aの側)から他方の側(通路46aの側)へ、内部通路70を通じて漏れ出ることが一層効果的に低減される一方、スプール30が中立位置から移動する際は、内部通路70を通じた作動流体の前流れを生じさせることができる。
さらに、図示された例では、弾性部材85の押付力は、スプール30の内部通路70が第1タンク側ランド部L1が第1タンク側環状ランド部RL1から離脱する前に開放されるように(言い換えると、ヘッド側アクチュエータポートとタンクポートとを接続する弁本体40内の流路45a,41,46aよりも先に開放されるように)、調整されている。これにより、内部通路70を通じた作動流体の前流れを生じさせることができる。この場合、スプール30が第1方向D1の一側に移動する際、通路45a,46aが、まず内部通路70によって接続され、その後さらに第1タンク通路側環状ランド部RL1の内部空間によって接続されるようになる。したがって、上記通路45a,46aに通じる二つのポート間を接続する流路の開口面積を徐々に増大させることができる。上記二つのポート間を接続する流路の開口面積を徐々に増大させることで、アクチュエータ2の流体室2aから流出する作動流体の単位時間当たりの流量を徐々に増大させてアクチュエータ2の動作速度を徐々に速くすることができる。これにより、アクチュエータ2が急激に動作して振動および衝撃が発生することを防止することができる。
また、図示された例では、弾性部材85の押付力は、スプール30の移動開始前にセレクタ80がセレクタ孔71内を移動して内部通路70を開放するように、調整されている。これにより、内部通路70を通じた作動流体の前流れを、より確実に生じさせることができる。したがって、上記通路45a,46aに通じる二つのポート間を接続する流路の開口面積を徐々に増大させる、ということを、より確実にすることができる。
なお、上述のように、第1タンク側ランド部L1にはノッチNが設けられている。上述のように、ノッチNの第1方向D1における長さは、従来よりも短い。このため、操作レバー4aを操作してからノッチNを通じた作動流体の前流れが始まるまでの時間長が、従来よりも長くなっている。したがって、図3および図4に示す例では、ノッチNを通じた作動流体の前流れが始まる前に内部通路70を通じた作動流体の前流れが始まるよう、内部通路70の第1孔72は、以下のような位置に設けられている。すなわち、第1孔72は、ノッチNよりも、第1タンク通路側環状ランド部RL1の内部空間を閉鎖する位置から開放する位置への第1タンク通路側ランド部L1の(スプール30の)移動方向(図2および図3では右方向)における前方側(図2および図3では右側)となる位置で、第1タンク通路側ランド部L1上に開口している。これにより、スプール30が中立位置から第1作動位置に移動する際、内部通路70の一端(第1孔72)が、ノッチNの一側端部よりも先に第1タンク通路46aに対面する。したがって、内部通路70を通じた作動流体の前流れがノッチNを通じた作動流体の前流れよりも先に生じる。このため、ノッチNの長さが従来よりも短くなっても、操作レバー4aを操作してから従来と同様の時間長で、第1アクチュエータ通路45a側から第1タンク通路46a側へ作動流体の前流れを開始させて、アクチュエータ2の動作を開始させることができる。さらに、通路45a,46aのノッチNおよび内部通路70による最大開口面積を、従来の長いノッチによる最大開口面積と同様にすることができる。すなわち、ランド部が環状ランド部から離脱する前に、アクチュエータ2の動作速度を従来と同程度にまで速くすることができる。このようにして、方向切換弁3を通じたアクチュエータ2の操作性が、従来と同様に維持される。
さらに、内部通路70の一端よりも上記スプール30の移動方向における後方側(図2および図3では左側)となる位置にノッチNが設けられていることにより、上記二つのポート間を接続する流路の開口面積を、より滑らかに増大させることができる。すなわち、上記二つのポート間を接続する流路の開口面積を、流路45a,70,46aの開口面積から、流路45a,70,46aの開口面積と流路45a,N,46aの開口面積との和に、そして流路45a,70,46aの開口面積と流路45a,N,46aの開口面積と流路45a,41,46aの開口面積との和に、増大させることができる。この結果、方向切換弁3を介して制御されるアクチュエータ2の動作速度を、より滑らかに速くすることができる。したがって、優れたアクチュエータ2の操作性を提供することができる。
また、図3および図4に示す例では、第1孔72は、スプール30の移動方向D1(図3および図4では左右方向)においてノッチNと部分的に重なる位置に開口している。これにより、スプール30が中立位置から第1作動位置に移動する際、内部通路70の一端(第1孔72)とノッチNの一側端部とは、連続的に第1タンク通路46aに対面するようになる。この場合、スプール30が第1方向D1の一側に移動する際、通路45a,46aが、まず内部通路70によって接続され、連続してノッチNによって接続され、さらに連続して第1タンク通路側環状ランド部RL1の内部空間によって接続されるようになる。したがって、上記通路45a,46aに通じる二つのポート間を接続する流路の開口面積を、連続的に増大させることができる。上記二つのポート間を接続する流路の開口面積を連続的に増大させることで、アクチュエータ2の流体室2aから流出する作動流体の単位時間当たりの流量を連続的に増大させることができる。したがって、さらに優れたアクチュエータ2の操作性を提供することができる。なお、この場合、第1孔72を、図5に示すように、その外側開口部72aがスプール30の移動方向D1を中心とした周方向D3においてノッチNからずれた位置に開口するように、設ければよい。
次に、図1乃至図3、並びに、図6乃至図9を参照して、方向切換弁3の動作について説明する。以下では、スプールを図2および図3に示す中立位置から第1作動位置へ移動させる場合の、方向切換弁3の動作について説明する。
まず、リモコン弁4の操作レバー4aが操作されていない場合、パイロットライン11,12は、いずれもタンク7に連通している。このため、パイロットポンプ6からパイロットライン11,12への作動流体の供給がなされず、パイロット圧作用部51,52のいずれにも、パイロット圧は生じない。このため、スプール30にはパイロット圧が作用せず、スプール30は、弾性部材61,62の弾発力により、図1および図2に示す中立位置に保持される。このとき、図3によく示されているように、第1タンク通路側ランド部L1は第1タンク通路側環状ランド部RL1に嵌合している。
なお、第1タンク通路側ランド部L1と第1タンク通路側環状ランド部RL1とのオーバーラップ量Wが十分に大きく設定されていることより、第1アクチュエータ通路45a側からノッチN内に流入した作動流体が、第1タンク通路46a側へ漏れ出ることが低減されている。
また、スプール30には内部通路70が設けられているが、セレクタ孔環状ランド部SRLの内部空間にセレクタ80の第1大径部81が嵌合していることにより、内部通路70は閉鎖されている。したがって、第1アクチュエータ通路45a側から内部通路70の他端(第2孔73)に流入した作動流体が、第1タンク通路46a側へ漏れ出ることが低減されている。さらに、内部通路70の一端(より具体的には、第1孔72の外側開口部72a)は、第1タンク通路側環状ランド部RL1によって閉鎖されている。これにより、第1アクチュエータ通路45a側から内部通路70の他端(第2孔73)に流入した作動流体が第1タンク通路46a側へ漏れ出ることが、一層効果的に低減されている。
以上により、スプール30が図2および図3に示す中立位置にある場合、アクチュエータ2のヘッド側流体室2aから作動流体が流出することが低減され、アクチュエータ2の姿勢が維持される。
次に、スプール30を中立位置から第1作動位置へ移動させる場合、リモコン弁4の操作レバー4aを操作して、パイロットポンプ6とパイロットライン11とを連通させ、パイロットポンプ6からパイロットライン11に作動流体を供給する。パイロットライン11に供給された作動流体は、バルブカバー53内に流入する。これにより、バルブカバー53内に、操作レバー4aの操作量に応じたパイロット圧が生じる。
バルブカバー53内に流入した作動流体は、スプール31の受圧面31に開口した作動流体孔74内に流入し、セレクタ80の受圧面84に作用する。これにより、図6に示すように、セレクタ80は、弾性部材85の弾発力に抗して、スプール30に対して第1方向D1の一側(図2の右側)に、栓体75に向けて移動する。そして、セレクタ80の小径部83が、セレクタ孔環状ランド部SRLの内部空間に配置される。これにより、内部通路70の一端(第1孔72)と他端(第2孔73)とが連通する。なお、セレクタ80が栓体75に向けて移動する際、セレクタ孔71内のセレクタ80と栓体75との間の空間内に収容されていた作動流体は、栓体75を貫通する副作動流体孔76を通じて、パイロット圧作用部52に排出される。
セレクタ80が栓体75に向けて移動して内部通路70の一端(第1孔72)と他端(第2孔73)とが連通した後、スプール30は、図7に示すように、バルブカバー53内のパイロット圧の作用によって、第1方向D1の一側(図3の右側)に向けて、弾性部材62の弾発力に抗して移動する。これにより、内部通路70の第1孔72の外側開口部72aが第1タンク通路46aに対面し、第1アクチュエータ通路45aと第1タンク通路46aとが内部通路70によって連通する。これにより、第1アクチュエータ通路45aから第1タンク通路46aへ、内部通路70を通じた作動流体の前流れが生じる。この結果、アクチュエータ2のヘッド側流体室2a内の作動流体が流出し、アクチュエータ2は動作を開始する。具体的には、ロッド2rが引っ込むように移動し始める。
続いて、図8に示すように、バルブカバー53内のパイロット圧の作用によって、スプール30が第1方向D1の一側(図3の右側)に向けてさらに移動すると、ノッチNの一側端部が第1タンク通路46aに対面する。これにより、第1アクチュエータ通路45aと第1タンク通路46aとが、内部通路70だけでなく、ノッチNによっても連通する。この結果、第1アクチュエータ通路45aから第1タンク通路46aへ、ノッチNを通じた作動流体の前流れが生じる。第1アクチュエータ通路45aと第1タンク通路46aとがノッチNによっても連通することにより、通路45a,46aを接続する流路の開口面積が増大する。この結果、アクチュエータ2のヘッド側流体室2aから流出する作動流体の単位時間当たりの流量が増大し、アクチュエータ2は動作速度を速める。具体的には、ロッド2rの引っ込む速度がさらに速くなる。なお、通路45a,46aを接続する流路の開口面積は、スプールの第1方向D1の一側(図3の右側)への移動にともなってノッチNの第1タンク通路46aに対面する部分が増大するにつれて増大する。この結果、ヘッド側流体室2aから流出する作動流体の単位時間当たりの流量も増大する。
そして、図9に示すように、スプール30が第1方向D1の一側(図3の右側)に向けてさらに移動して、第1タンク通路側ランド部L1が第1タンク通路側環状ランド部RL1から離脱すると、第1アクチュエータ通路45aと第1タンク通路46aとが、第1タンク通路側環状ランド部RL1の内部空間を通じて連通する。第1アクチュエータ通路45aと第1タンク通路46aとが環状ランド部RL1の内部空間によっても連通することにより、通路45a,46aを接続する流路の開口面積がさらに増大する。これにより、アクチュエータ2のヘッド側流体室2aから流出する作動流体の単位時間当たりの流量がさらに増大し、アクチュエータ2の動作速度がさらに速くなる。具体的には、ロッド2rの引っ込む速度が、さらに速くなる。
上述のようにして、ヘッド側流体室2aからの作動流体の単位時間当たりの流出量を徐々に増大させることで、アクチュエータ2の動作速度を徐々に速くすることができる。これにより、アクチュエータ2が急激に動作して振動や衝撃を発生させる、ということを防止することができる。
なお、以上に説明してきた本実施の形態では、スプール30にノッチNと内部通路70の両方が設けられる場合について説明してきた。しかしながら、これに限られず、スプール30にはノッチNが設けられていなくてもよい。この場合も、内部通路70を通じて作動流体の前流れが生じるため、アクチュエータ2が急激に動作することによる衝撃や振動の発生を防止することができる。
以上に説明した本実施の形態による方向切換弁3は、二つのポートを設けられた弁本体40と、弁本体40に対して移動することで弁本体40内に設けられて上記二つのポートを接続する流路45,41,46を開閉するスプール30であって、弁本体40に対する移動にともなって開閉され且つ上記二つのポートに通じるようになる内部通路70を有したスプール30と、を備える。
このような方向切換弁3によれば、内部通路70を通じて、作動流体の前流れを生じさせることができる。このため、方向切換弁3を通じて制御されるアクチュエータ2が急激に動作して衝撃および振動を発生させる、ということを防止することができる。その一方で、内部通路70はスプール30の移動にともなって開閉されるため、スプール30が所定位置にある場合は、内部通路70は閉鎖されて、方向切換弁3の内部で内部通路70を通じた作動流体の漏れが発生することを低減させることができる。
さらに、このような方向切換弁3によれば、従来の方向切換弁のスプールを上述したスプール30に交換するだけで、すなわち弁本体には何らの変更も加えることなく、簡便かつ安価に本実施の形態の方向切換弁3を実現することができる。また、方向切換弁3が大型化することもない。
より具体的には、スプール30の内部通路70は、セレクタ80の移動にともなって開閉する。
また、本実施の形態においては、セレクタ80は、スプール30の弁本体40に対する移動にともなって移動する。この場合、内部通路70をスプール30の弁本体40に対する移動にともなって開閉することが容易である。
また、本実施の形態においては、スプール30の内部通路70は、弁本体40内の上記流路45a,41,46aよりも先に開放される。この場合、上記二つのポート間を接続する流路の開口面積を徐々に増大させて(すなわち、流路45a,70,46aの開口面積から、流路45a,70,46aの開口面積と流路45a,41,46aの開口面積との和に増大させて)、方向切換弁3を介して制御されるアクチュエータ2の動作速度を徐々に速くすることができる。したがって、アクチュエータ2が急激に動作して衝撃および振動を発生させる、ということを防止することができる。
また、本実施の形態においては、スプール30の内部通路70は、スプール30を移動させる作動流体からの作用により開放される。この場合、簡易な構成により、スプール30の移動にともなって内部通路70を開閉することができる。
より具体的には、セレクタ80は、スプール30を移動させる作動流体からの作用により移動する。これにより、複雑な機構を伴うことなくセレクタ80を移動させて内部通路70を開閉することができる。また、セレクタ80をスプール30の弁本体40に対する移動にともなって移動させることが、容易である。
また、本実施の形態においては、スプール30の内部通路70は、スプール30の移動開始前に開放される。この場合、上記二つのポート間を接続する流路の開口面積を徐々に増大させる、ということを確実にすることができる。
また、本実施の形態においては、スプール30は、上記二つのポートを接続する切欠部M1と、二つのポートを遮断するランド部L1と、を有し、ランド部L1には、スプール30の移動方向D1に細長いノッチNが設けられ、内部通路70の一端は、ノッチNよりも、弁本体40内の流路45a,41,46aを閉鎖する位置から開放する位置へのスプール30の移動時における前方側となる位置で、ランド部L1上に開口している。
この場合、方向切換弁3の内部においてノッチNを通じた作動流体の漏れを低減させるために、ノッチNの長さを従来よりも短くして、当該ランド部L1と当該ランド部L1が嵌合する環状ランド部RL1とのオーバーラップ量Wを大きく設定しても、アクチュエータ2の制御性を従来と同様に維持することができる。具体的には、この場合、スプール30が上記前方側に移動する際、内部通路70の一端はノッチNよりも先に通路46aに対面する。したがって、ノッチNを通じた作動流体の前流れが生じる前に、内部通路70を通じた作動流体の前流れを生じさせることができる。このため、ノッチNの長さが従来よりも短くても、操作レバー4aを操作してから従来と同様の時間長で、作動流体の前流れを開始させることができ、アクチュエータ2の動作を開始させることができる。また、ノッチNの長さが従来よりも短くても、二つのポートを接続する流路のノッチNおよび内部通路70による最大開口面積を(すなわち、流路45a,N,46aの最大開口面積と流路45a,70,46aの最大開口面積との和を)、従来の長いノッチによる最大開口面積と同様にすることができる。すなわち、ランド部L1が環状ランド部RL1から離脱する前に、アクチュエータ2の動作速度を従来と同程度にまで速くすることができる。このようにして、方向切換弁3を通じたアクチュエータ2の操作性を、従来と同様に維持することができる。
さらに、内部通路70の一端よりも上記スプール30の移動時における後方側となる位置にノッチNが設けられていることにより、上記二つのポート間を接続する流路の開口面積を、より滑らかに増大させることができる。すなわち、流路45a,70,46aの開口面積から、流路45a,70,46aの開口面積と流路45a,N,46aの開口面積との和に、そして流路45a,70,46aの開口面積と流路45a,N,46aの開口面積と流路45a,41,46aの開口面積との和に、増大させることができる。この結果、方向切換弁3を介して制御されるアクチュエータ2の動作速度を、より滑らかに速くすることができる。したがって、優れたアクチュエータの操作性を提供することができる。
また、本実施の形態においては、内部通路70の一端は、スプール30の移動方向D1において、ノッチNと部分的に重なる位置に開口している。この場合、二つのポート間を接続する流路の開口面積を連続的に増大させることができ、アクチュエータ2の動作速度を連続的に速くすることができる。すなわち、より優れたアクチュエータの操作性を提供することができる。
また、本実施の形態においては、内部通路70の一端は、スプール30の移動方向D1を中心とした周方向D3において、ノッチNからずれた位置に開口している。この場合、簡易な構成にて、ノッチNと内部通路70の開口位置とをスプール30の軸方向に重ねることができる。
本発明は、上述の実施形態には限定されない。例えば、上述の実施形態の各要素に各種の変形が加えられてもよい。また、上述の構成要素及び/又は方法以外の構成要素及び/又は方法を含む形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、上述の構成要素及び/又は方法のうちの一部の要素が含まれない形態も、本発明の実施形態に含まれる。また、本発明によって奏される効果も上述の効果に限定されず、各実施形態の具体的な構成に応じた特有の効果も発揮されうる。