JP2020040906A - シワ用外用剤 - Google Patents

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【課題】シワや小ジワの低減に有効なシワ用皮膚外用剤を提供する。【解決手段】線維芽細胞のコラーゲン産生能を高めるPro-HypのN−アシル誘導体またはその塩を皮膚に塗布し、イオン導入機器を併用することで皮膚への浸透性を高め、シワ改善効果に優れたシワ用皮膚外用剤に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、線維芽細胞のコラーゲン産生能を高める下記( 化1)で示されるPro-HypのN−アシル誘導体またはその塩を皮膚に塗布し、イオン導入機器を併用することで皮膚への浸透性を高め、シワや小ジワ改善効果に優れたシワ改善用皮膚外用剤に関する。
Figure 2020040906
近年、高齢化社会が進行するにつれて、美しく年を重ねるために、化粧品に求められる役割が大きくなってきている。ところが、肌は、加齢などの内的因子や紫外線、活性酸素などの外的因子によって、皮膚が本来維持している収縮性、柔軟性、保湿性等の機能が衰え、様々なトラブルを発生する。
これらのトラブルの一つであるシワは、真皮の細胞外マトリックスを産生する細胞数の減少、細胞分裂速度の衰えなどの細胞機能の老化や、コラーゲン線維の減少及び変性、皮下脂肪組織の減少等により、弾力性の損失が起こることが原因となって発生する。
従来、皮膚老化への対処法としては、老化によって失われるコラーゲン、ヒアルロン酸などの物質を直接皮膚に塗布し補う組成物や、紫外線や活性酸素から皮膚を守るための防御物質を配合した間接的な老化防止剤が主流であった。
また、生成したシワを根本的に改善しようとする試みとしては、レチノイン酸やグリコール酸に代表されるαーヒドロキシ酸等がある。しかし、αーヒドロキシ酸においては、高い配合量が必要となり、レチノイン酸においては、腫れを伴う炎症を起こす等安全性に問題があり、長期使用に耐え得るものではなかった。尚、レチノイン酸の使用例としては下記の文献が見られる。
特開2016-169199
フレグランスジャーナル, 1999, 1月号, p.32-43 J. Agric. Food Chem., 2009, 57 (2), p.444-449 Functional Food, 2010, 4(1), p.67-72
この点を考慮し、形成外科でシワの治療においてボツリヌス毒素が従来より利用されている。痙攣の低減に使用されていたボツリヌス毒素は、筋痙攣状態、及び眉の間のシワであるみけんのシワに作用可能であることが示されている。さらにこのボツリヌス毒素は、シワの治療における形成外科においても従来から使用されている。従って、シワの神経筋成分に薬理学的に作用することが可能であるが、作用が強力であり、注射による痛みを伴うという欠点がある。また、ボツリヌス毒素は、分子量が大きく、皮膚からの吸収は見込めず皮膚外用剤への利用は困難である。従って、シワを改善し、しかも痛みを伴わず、皮膚に弊害がなく、安全に使用でき、更に変質の少ない老化防止に有効な皮膚外用剤の開発が望まれている。
近年、コラーゲンを摂取することで消化吸収され、分解されたペプチドの一つであるPro-Hypに線維芽細胞の遊走作用などが確認されている(非特許文献2,3)。
Gly-Pro、Pro-Gly、Pro-Hyp、Hyp-Gly、Gly-Hypのいずれかの配列を有するジペプチドを有効成分とするコラーゲン産生促進剤、コラーゲン分解酵素活性抑制剤及びコラーゲンゲル収縮剤(特許文献1)。皮膚への適用を考えるとPro-Hypは分子量は小さいものの極性が高く、角質のバリアーを通過することが困難である。
そこで本発明者は、かかる実情に鑑み鋭意検討した結果、皮膚への浸透性能を高めるPro-HypのN−アシル誘導体またはその塩を皮膚に塗布することにより、シワ改善効果に優れたシワ改善作用を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生能を増進させるPro-HypのN−アシル誘導体またはその塩を配合してなることを特徴とするシワ用皮膚外用剤のことである。
シワ改善において、目元のシワは、笑うときの表情によって、同じ場所が繰り返し伸縮することでその部分に折り目の溝が形成されるため、伸縮を緩和することによってその形成を防ぎ、それと共に、真皮成分であるコラーゲンの産生能を向上させることは、真皮に張りを与え、皮膚の表面を伸ばすことによって更にシワの改善を早めることが期待できる。
以下、本発明の構成について詳述する。本発明に用いられる皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生能を増進させるPro-HypのN−アシル誘導体またはその塩が利用される。
皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生能を増進させるPro-HypのN−アシル誘導体は、公知の方法により調製することができる。例えば、Pro-HypのN−アシル誘導体は、直鎖または分岐状の炭素数1〜24の飽和または不飽和の脂肪酸を塩化チオニル、ホスゲン等のハロゲン化剤を用いてクロライド、ブロマイド等のハロゲン化物に変換した後、前述のPro-Hypと縮合させるか、または脂肪酸を酸無水物に変換した後、Pro-Hypと反応させることにより得られる。
脂肪酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸等の脂肪酸を単独もしくは組合したものがあげられる。
酸無水物を経由するPro-HypのN−アシル誘導体の調整方法を、以下に例示する。
Pro-Hypを溶媒に溶解または分散させ、得られた溶液を0〜10℃ に保ちながら、酸無水物に対してPro-Hypを0.3〜1.0 倍当量加え、アシル化反応を行うことによりPro-HypのN−アシル誘導体を得ることができる。アシル化反応に用いられる溶媒としては、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸等があげられ、これらは単独あるいは混合して用いてもよい。
アシル化反応に用いられる酸無水物としては、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水プロパン酸、無水プロピオン酸等があげられる。Pro-HypのN−アシル誘導体の塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアミンの付加塩およびアルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸の付加塩などがあげられる。Pro-HypのN−アシル誘導体の塩を得たいとき、Pro-HypのN−アシル誘導体が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、遊離の形で得られる場合には、適当な溶媒に溶解または懸濁し、塩基を加えて塩を形成させればよい。
精製は、例えば再結晶、クロマトグラフィー等の簡便でかつ実用的な方法が用いられるが、特に限定するものではない。
本発明において、Pro-HypのN−アシル誘導体のシワ用皮膚外用剤への配合量は、皮膚外用剤全体に対して0.0001〜5.0重量%が好ましく、0.001〜1.0重%がより好ましい。0.0001重量%未満では本発明の効果が十分ではなく、10.0重量%を超えると効果の増大を期待できず、製剤の使用感を悪くするなどの不都合を生じる場合がある。
例えば、この発明にかかる有効成分を各種化粧料基剤などに配合して、クリーム、乳液、化粧水、パック剤、洗顔料などの各種基礎化粧料、ファンデーション、口紅、ほほ紅、白粉などの各種メーキャップ料、洗髪料、養毛剤、シャンプー、リンスなどの各種頭髪用化粧料、石鹸、美爪料、オーデコロンなどその他化粧料に対して広範囲に適用できる。また、前記各種化粧料の実施態様は、溶液、エマルジョン、軟膏、ゾル、ゲル、パウダー、スプレーなどの各種態様で適用できる。
以上説明したように、本発明によれば、優れたシワや小ジワ改善効果を有する皮膚外用剤を提供することが可能となる。
次に試験例および実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。また、配合量は特に断わらない限り、皮膚外用剤全体に対する重量%である。まず、本発明のシワ用皮膚外用剤の評価をするために用いた試験法・基準を記載する。
Pro-HypのN−アシル誘導体の調製方法を、以下に例示する。
〔製造例1〕
アセチルPro-Hypの作成
Pro-Hyp(マルニ製油製)2.28 gを氷冷した無水酢酸(ナカライテスク製)3.06gに少量ずつ添加し、添加終了後、1時間撹拌した。反応物の溶媒を減圧下、留去し、冷却することにより、固化させた残留物を少量の酢酸エチルで洗った。静置後、酢酸エチルを除いたあと、イソプロパノールより再結晶行い、目的物を得た。(1.57g)
構造解析
1 HNMR:δ1.94(s,3H alkyl,H)、1.97(m,alkyl H)、2.11(q,2H、alkyl H)、2.36(t、3H (t,2H alkyl H 、3.52(t,H CHGOOH)、3.64(t,2H CHCON)、3.66(t,2H)、3.81(m,H CHOH)、3.83(d,2H CH2N)
IR(KBr): 1085、1200、1610、1745cm-1
〔製造例2〕
サクシニルPro-Hypの作成
Pro-Hyp(マルニ製油製)4.7gと無水コハク酸(ナカライテスク製、4.0g)を40mLの酢酸(ナカライテスク製)に溶解した。溶液を50〜60℃に熱し、溶媒を揮発させて結晶化した。次に、結晶化した白い沈殿を集めて、酢酸エチル20mLとメタノール20mLの混合液にて再結晶化した。沈殿を乳鉢で破砕し、乾燥させ、N−サクシニルPro-Hypの粉末を得た。
構造解析
1 HNMR :δ 1.79-2.32 (9H, 1.88 (m, J = 14.1, 8.1, 7.0, 4.3, 1.9 Hz), 1.96 (m, J = 13.1, 9.3, 7.5, 7.0 Hz), 2.13 (m, J = 13.8, 7.1, 5.6 Hz), 2.14 (s), 2.24 (m, J = 13.8, 9.2, 7.4 Hz), 2.08 (m, J = 13.1, 7.1, 5.4, 1.9 Hz), 2.10 (m, J = 14.1, 8.1, 7.5, 7.1, 4.0 Hz)), 2.77-2.87 (3H, 2.83 (t, J = 7.5 Hz), 2.82 (t, J = 7.5 Hz), 2.83 (t, J = 7.5 Hz)), 2.82 (1H, t, J = 7.5 Hz), 3.09-3.27 (2H, 3.16 (m, J = 12.1, 8.1, 4.0 Hz), 3.20 (m, J = 12.1, 8.1, 4.3 Hz)), 3.55 (1H, dd, J = 14.9, 5.4 Hz), 3.85 (1H, dd, J = 14.9, 9.3 Hz), 4.02 (1H, dd, J = 7.4, 7.1 Hz), 4.17-4.40 (2H, 4.36 (dd, J = 9.3, 5.4 Hz), 4.25 (m, J = 9.3, 9.2, 5.6, 5.4 Hz)).
〔試験例1〕 Pro-HypのN−アシル誘導体の相溶性
試料0.1gをとり、10mLの溶媒に対する溶解性の確認を行った。
Figure 2020040906
表1に示したようにPro-Hypと比べ、Pro-HypのN−アシル誘導体であるアセチルPro-Hyp及びサクシニルPro-Hypの方が相溶性は顕著に高いことを見出した。
〔試験例2〕 Pro-HypのN−アシル誘導体に対する経皮吸収率の測定
1%水溶液に調整した試料について、マイクロブタ皮膚を利用して経皮吸収率に関する試験を行なった。結果は次の通りである。 ユカタンマイクロブタの皮膚(Yucatan Micropig Skin Set :Charles River社) 一定部位を切り取り、フランツタイプのグラス拡散器具の中間に角質層部分を仰向けにして皮膚試験片を設置した後、底部分の空間には80 体積%のエタノール−水混合溶液を入れて拡散器具の温度を37 ℃に保持した。レセプター溶液は一定の速度(600rpm)で攪拌した。 この皮膚標本上に、被験試料30μLを直径2.4cmの円内に塗布した。 イオン導入装置を用いて、200μAの電流を流した。
一定時間経過後、レセプター部分の溶液を採取し、採取した量だけの緩衝液を加えた。採取した試料については、定量は、液体クロマトグラフィーにより定量を行った。定量から計算された各有効成分の経皮吸収率は表3に示す通りである。カラムはダイソー製ODSのカラムのDAISOPAK SP120-5-ODSを用いた。溶媒はpH2.6に調整した10mMリン酸バッファーに30%量のアセトニトリルを混合したものを用いた。
検出は210nmで、流量は1mL/minに設定した。
Figure 2020040906
表2に示したようにマイクロブタ皮膚を利用しての経皮吸収率の測定ではPro-Hypと比べ、Pro-HypのN−アシル誘導体であるアセチルPro-Hypの経皮吸収率が顕著に高いことを見出した。
〔試験例3〕 ヒトに対するシワ改善使用試験
シワが気になる男女30名(1群10名)に対して、洗顔料を用いて顔面をよく洗浄した後、半顔に各々表3に示した皮膚外用剤を1日に1回塗布し、イオン導入を5分間、行った。4週間後に写真撮影を行いシワの目視評価を行った。
改善度使用前に比較して使用薬剤により、症状が改善されたことを示す、不変または悪化したと大きく2段階に分け有用性の評価を行った。
有用性の評価
◎ : 改善度で10名中、症状の改善が7名以上。
○ : 改善度で10名中、症状の改善が5〜7名。
△ : 改善度で10名中、症状の改善が2〜5名。
× : 改善度で10名中、症状の改善が2名以下。
実施例1〜4、比較例1、表3に示した処方のローションタイプの皮膚外用剤を調製して、上記の手法によりその有用性を評価した。その結果を併せて表3に示した。
Figure 2020040906
表3に示すように、皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生能を増進させるPro-HypのN−アシル誘導体であるアセチルPro-Hyp及びサクシニルPro-Hypを用いた本発明の皮膚外用剤は、各比較例の化粧水に比べ、シワ改善効果に優れていた。
以下に種々の剤型の本発明によるシワ改善用皮膚外用剤の実施例を示すが、各実施例の皮膚外用剤は、その具体的な剤型に応じて常法により製造した。また、各実施例で得られた外用剤に上記の試験・評価を施したところ、全て上記の有用性評価は「◎」であった。
次に本発明にかかるPro-HypのN−アシル誘導体であるアセチルPro-Hyp及びサクシニルPro-Hypを用いた具体的な皮膚外用剤について説明する。
以下に本発明の処方例を挙げる。
<処方例1> 化粧水(重量%)
アセチルPro-Hyp・・・0.001
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート( 20E.0 )・・・1.5
エタノール・・・10.0
防腐剤・酸化防止剤・・・適量
香料・・・適量
精製水・・・残部
<処方例2> 化粧用クリーム(重量%)
アセチルPro-Hyp・・・5.0
ミツロウ・・・2.0
ステアリルアルコール・・・5.0
ステアリン酸・・・8.0
スクワラン・・・10.0
自己乳化型グリセリルモノステアレート・・・3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E 0 .) ・・・1.0
プロピレングリコール・・・5.0
水酸化カリウム・・・0.3
香料・・・適量
防腐剤・酸化防止剤・・・適量
精製水・・・残部
<処方例3> 乳液(重量%)
サクシニルPro-Hyp・・・1.0
スクワラン・・・8.0
ワセリン・・・2.0
ミツロウ・・・0.5
ソルビタンセスキオレエート・・・0.8
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.0) ・・・1.2
カルボキシビニルポリマー・・・0.2
プロピレングリコール・・・0.5
水酸化カリウム・・・0.1
エタノール・・・7.0
香料・・・適量
防腐剤・酸化防止剤・・・適量
精製水・・・残部
<処方例4> パック剤(重量%)
アセチルPro-Hyp・・・0.01
酢酸ビニル樹脂エマルジョン・・・15.0
ポリビニルアルコール・・・10.0
ホホバ油・・・3.0
グリセリン・・・5.0
酸化チタン・・・8.0
カオリン・・・7.0
エタノール・・・5.0
香料・・・適量
防腐剤・酸化防止剤・・・適量
精製水・・・残部
<処方例5> 軟膏(重量%)
アセチルPro-Hyp・・・0.0001
パラジメチルアミノ安息香酸オクチル・・・4.0
ブチルメトキシベンゾイルメタン・・・4.0
ステアリルアルコール・・・18.0
モクロウ・・・20.0
グリセリンモノステアリン酸エステル・・・0.3
ワセリン・・・33.0
香料・・・適量
防腐剤・酸化防止剤・・・適量
精製水・・・残部
本発明によれば、線維芽細胞のコラーゲン産生能を高めるPro-HypのN−アシル誘導体またはその塩を皮膚に塗布し、イオン導入機器を併用することで皮膚への浸透性を高め、シワ改善効果に優れたシワ用皮膚外用剤を提供することができる。

Claims (6)

  1. Pro-HypのN−アシル誘導体またはその塩を配合したことを特徴とする外用剤。
  2. Pro-HypのN−アシル誘導体またはその塩が、下記構造式で示されることを特徴とする請求項1記載の外用剤。
    Figure 2020040906
  3. Pro-HypのN−アシル誘導体またはその塩を配合し、イオン導入機器と併用することを特徴とする外用剤。
  4. Pro-HypのN−アシル誘導体を全重量に対し0.0001〜5.0重量%含有することを特徴とする請求項1乃至3記載の外用剤。
  5. Pro-HypのN−アシル誘導体が、N−アセチル誘導体またはN−サクシニル誘導体であることを特徴とする請求項1乃至3記載の外用剤。
  6. 請求項1乃至5記載の外用剤であって、皮膚に対して用いることを特徴とする皮膚用外用剤。
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