JP2020035870A - 研磨用組成物 - Google Patents
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(特性)
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒と、塩基性化合物と、水酸基を有する繰返し単位を含む水溶性高分子(以下、便宜上「水酸基含有ポリマー」という。)と、水とを含有する。そして、かかる研磨用組成物は、重量基準で、塩基性化合物の含有量Bに対する砥粒の含有量Aの比(A/B)が1≦(A/B)≦3.5であり、かつ、砥粒の含有量Aに対する水酸基含有ポリマーの含有量Pの比(P/A)が0.0001≦(P/A)≦0.003であり、塩基性化合物の含有量Bが0.2重量%以上であることによって特徴づけられる。上記特性を満たす研磨用組成物は、シリコン基板の予備研磨工程において優れた隆起解消性を発揮することが後述する試験例により確認されている。その理由としては、特に限定して解釈されるものではないが、上記比(A/B)と塩基性化合物の含有量Bの範囲を満たすことにより、HLM周縁の隆起に対して機械的な研磨と化学的な研磨とが好適なバランスで行われるためと考えられる。さらに、上記比(P/A)の範囲を満たすことにより、シリコン基板表面に水酸基含有ポリマーが好適に作用し、シリコン基板およびHLM周縁の隆起が好適に研磨されるようになるためと考えられる。
砥粒は、研磨対象物を機械的に研磨する働きをする。砥粒の材質や性状は特に制限されず、使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子等のシリコン化合物粒子や、ダイヤモンド粒子等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。なかでも無機粒子が好ましい。
本発明に係る研磨用組成物は、塩基性化合物を含む。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物は、研磨対象物を化学的に研磨する働きをする。
ここに開示される研磨用組成物は、水酸基を有する繰返し単位を含む水溶性高分子を含有する。上記したように、本明細書においては、便宜上、水酸基を有する繰返し単位を含む水溶性高分子を「水酸基含有ポリマー」と称する。この水酸基含有ポリマーを研磨組成物に含有させることにより、隆起解消性が向上することが後述する試験例により確認されている。ここで、「水酸基を有する繰返し単位」とは、水酸基含有ポリマーを構成している繰返し単位であって水酸基を有するものをいう。換言すれば、水酸基含有ポリマー中において水酸基を有している繰返し単位をいう。以下、このような繰返し単位を「繰返し単位h」ということがある。繰返し単位hの有する水酸基は、水酸基を有する単量体に由来するものであってもよく、ポリマーを変性することにより導入された水酸基であってもよい。ポリマーを変性することにより水酸基を導入する方法としては、例えば、エステル結合を有するペンダント基を加水分解する方法が挙げられる。
繰返し単位hの具体例としては、α−グルコース単位、β−グルコース単位、ビニルアルコール単位(−CH2−CH(OH)−)等が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物は、水を含む。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、研磨用組成物に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、研磨用組成物に含まれる溶媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物には、任意成分として、キレート剤を含有させることができる。キレート剤は、研磨用組成物中に含まれ得る金属不純物と錯イオンを形成してこれを捕捉することにより、金属不純物による研磨対象物の汚染を抑制する働きをする。キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましい。なかでも好ましいものとして、EDTPO、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミン五酢酸が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、EDTPOおよびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。キレート剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、界面活性剤、酸、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコン基板のポリシング工程に用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液(ワーキングスラリー)の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、希釈(典型的には、水により希釈)して研磨液として使用されるものであってもよく、そのまま研磨液として使用されるものであってもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられるワーキングスラリーと、かかるワーキングスラリーの濃縮液(原液)との双方が包含される。上記濃縮液の濃縮倍率は、例えば、体積基準で2倍〜100倍程度であってよく、通常は5倍〜50倍程度が適当である。
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物の研磨に使用することができる。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含むワーキングスラリーを用意する。次いで、その研磨用組成物を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて該研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨用組成物を供給する。典型的には、上記研磨用組成物を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
ここに開示される研磨用組成物は、優れた隆起解消性を発揮することができる。かかる特徴を活かして、上記研磨用組成物は、HLMの付された表面を含む研磨対象面の研磨に好ましく適用することができる。例えば、HLMの付されたシリコン基板の予備研磨工程において用いられる研磨用組成物として好適である。HLM周縁の隆起は、ポリシング工程の初期に解消しておくことが望ましい。このため、ここに開示される研磨用組成物は、HLM付与後の最初のポリシング工程(1次研磨工程)において特に好ましく使用され得る。
上記シリコン基板は、典型的には、シリコンからなる表面を有する。このようなシリコン基板は、典型的には、シリコン単結晶ウェーハであり、例えば、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られたシリコン単結晶ウェーハである。ここに開示される研磨用組成物は、HLMが付されたシリコン単結晶ウェーハを研磨する用途に好適である。
また、ここに開示される研磨用組成物は、HLMを有しない研磨対象物の研磨にも好適に使用することができ、該研磨対象物表面の表面粗さを効率よく低減し得る。
砥粒としてのコロイダルシリカ(平均一次粒子径55nm)と、表1に示す水溶性高分子と、塩基性化合物としてTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)およびK2CO3と、EDTPO(エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸))と、イオン交換水とを混合することにより、実施例1、2および比較例1〜5に係る研磨用組成物をそれぞれ調製した。そして、各例に係る研磨用組成物をイオン交換水で10倍に希釈して研磨液(pH=10.7)を得た。各例に係る研磨液の成分は表1に示すとおりである。なお、表1中のHECのMwは約25万であり、PVAのMwは約1万であり、EO−PO誘導体(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン誘導体)のMwは約9000である。
各例に係る研磨液をそのままワーキングスラリーとして使用して、HLMが付与されたシリコン基板の表面を下記の条件で研磨した。シリコン基板としては、直径4インチのシリコン基板(伝導型:P型、結晶方位:<100>、抵抗率:0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満)を使用した。また、研磨は、研磨取り代が4μmになるまで行った。
研磨装置:日本エンギス株式会社製の片面研磨装置、型式「EJ−380IN」
研磨パッド:ニッタハース社製、商品名「SUBA800」
研磨圧力:12kPa
研磨液供給レート:100mL/分(かけ流し使用)
定盤回転数:50rpm
ヘッド回転数:40rpm
研磨環境の保持温度:25℃
研磨後のシリコン基板について、触針式表面粗さ形状測定機(SURFCOM 1500DX、株式会社東京精密製)を使用し、HLM周縁部の表面形状を測定した。具体的には、上記測定機の針を基板の表面に接触させ、HLM周縁部を走行させることにより、隆起が生じていない部分(基準面)と隆起の高さを測定した。そして、基準面から隆起の最高点までの高さ(μm)を「HLM平坦度」とした。このHLM平坦度が小さいほど、使用した研磨用組成物の隆起解消性が優れていると評価される。得られた結果を表2の「HLM平坦度」の欄に示す。
Claims (8)
- シリコン基板の予備研磨工程のための研磨用組成物であって、
砥粒と、塩基性化合物と、水酸基を有する繰返し単位を含む水溶性高分子と、水とを含有し、
重量基準で、前記塩基性化合物の含有量Bに対する前記砥粒の含有量Aの比(A/B)が1≦(A/B)≦3.5であり、かつ、前記砥粒の含有量Aに対する前記水酸基を有する繰返し単位を含む水溶性高分子の含有量Pの比(P/A)が0.0001≦(P/A)≦0.003であり、
前記塩基性化合物の含有量Bが0.2重量%以上である、研磨用組成物。 - 前記水酸基を有する繰返し単位を含む水溶性高分子は、セルロース誘導体およびビニルアルコール系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
- 前記砥粒の含有量Aは0.1重量%以上5重量%以下である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
- 前記塩基性化合物の含有量Bは1重量%以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
- 前記水酸基を有する繰返し単位を含む水溶性高分子の含有量Pは0.0001重量%以上0.01重量%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
- 前記塩基性化合物は、第四級アンモニウム化合物と弱酸塩とを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
- 前記砥粒はシリカ粒子である、請求項1から6のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
- さらにキレート剤を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
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