JP2015155523A - 研磨用組成物製造用キットおよびその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】砥粒としてのシリカ粒子と強塩基と弱酸塩とを含む研磨用組成物を製造するための研磨用組成物製造用キットが提供される。その研磨用組成物製造用キットは、互いに分けて保管される複数の剤を備え、上記複数の剤を一つに合わせて混合液を調製した場合における該混合液の初期pHが8.0以上11.8以下である。
【選択図】なし
Description
0.25≦(WbA/WsA)≦1.00 (A)
上記式(A)を満たすA剤によると、pH維持性および研磨速度の一方または両方がより改善された研磨用組成物を与える研磨用組成物製造用キットが実現され得る。
0<(MbB/MaB)≦1.00 (B)
上記式(B)を満たすB剤によると、pH維持性および研磨速度の一方または両方がより改善された研磨用組成物を与える研磨用組成物製造用キットが実現され得る。
ここに開示される技術は、砥粒としてシリカ粒子を用いる研磨用組成物および該組成物を製造するためのキットに好ましく適用され得る。シリコンウエハの研磨に用いられる研磨用組成物では、砥粒としてシリカ粒子を用いることが特に有意義である。その理由は、研磨対象物(シリコンウエハ)と同じ元素と酸素原子とからなるシリカ粒子を砥粒として使用すれば研磨後にシリコンとは異なる金属または半金属の残留物が発生せず、シリコンウエハ表面の汚染や研磨対象物内部にシリコンとは異なる金属または半金属が拡散することによるシリコンウエハとしての電気特性の劣化などの虞がなくなるからである。かかる観点から好ましいキットの一形態として、砥粒としてシリカ粒子のみを含有するキットが例示される。また、シリカは高純度のものが得られやすいという性質を有する。このことも砥粒としてシリカ粒子が好ましい理由として挙げられる。シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。研磨対象物表面にスクラッチが生じにくいという観点から、好ましいシリカ粒子としてコロイダルシリカおよびフュームドシリカが挙げられる。なかでもコロイダルシリカが好ましい。例えば、シリコンウエハの予備ポリシングまたはファイナルポリシングに用いられる研磨用組成物を製造するためのキットの砥粒として、コロイダルシリカを好ましく採用し得る。
後述するように、そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(典型的にはスラリー状の研磨液であり、ワーキングスラリーまたは研磨スラリーと称されることもある。)の場合、砥粒の含有量は、典型的には0.05重量%以上であり、0.1重量%以上であることが好ましく、0.2重量%以上であることがより好ましい。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。砥粒の含有量は、0.3重量%以上であってもよく、さらに0.5重量%以上であってもよい。また、分散安定性等の観点から、上記含有量は、通常は10重量%以下が適当であり、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、例えば1重量%以下である。
また、希釈して研磨に用いられる研磨用組成物(すなわち濃縮液)の場合、砥粒の含有量は、例えば50重量%以下とすることができる。分散安定性や濾過性等の観点から、通常、砥粒の含有量は、45重量%以下が好ましく、より好ましくは40重量%以下である。好ましい一態様において、砥粒の含有量を30重量%以下としてもよく、20重量%以下(例えば15重量%以下)としてもよい。また、濃縮液とすることの利点を活かす観点から、砥粒の含有量は、例えば0.5重量%以上とすることができ、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上(例えば5重量%以上)である。
強塩基としては、シリカ粒子を用いる研磨において使用し得ることが知られている各種の塩基から、弱酸塩との組合せで所望の緩衝作用を発揮し得るものを適宜選択することができる。強塩基は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好適例として、アルカリ金属水酸化物、水酸化第四級アンモニウム、水酸化第四級ホスホニウム、アミン(好ましくは水溶性アミン)およびアンモニアが挙げられる。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。水酸化第四級アンモニウムの具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。水酸化第四級ホスホニウムの具体例としては、水酸化テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラエチルホスホニウム等が挙げられる。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類等が挙げられる。
例えば、そのまま研磨液として用いられる研磨用組成物の場合、該研磨用組成物1リットル(L)あたりに含まれる強塩基のモル量は、通常、0.0001モル以上とすることが適当であり、研磨速度の観点から、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.005モル以上である。一時的なpH上昇等によるシリカ粒子の溶解を防ぐ観点から、研磨用組成物に含まれる強塩基のモル量は、通常、1モル/L以下とすることが適当であり、0.5モル/L以下とすることが好ましい。
また、希釈して研磨液として用いられる研磨用組成物(すなわち濃縮液)の場合、強塩基のモル量は、例えば0.001〜10モル/Lとすることができ、0.01〜5モル/Lとすることが好ましい。
なお、本明細書中における強塩基としては、水溶液または研磨液中において実質的に完全に解離可能な化合物を好ましく採用し得る。強塩基の種類や使用量は、典型的には、水溶液または研磨液中において該強塩基が実質的に完全に解離し得るように選択される。
ここに開示される技術における弱酸塩としては、シリカ粒子を用いる研磨に使用可能であって、強塩基との組合せで所望の緩衝作用を発揮し得るものを適宜選択することができる。弱酸塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、弱酸塩を構成するアニオン成分として、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ホウ酸イオン、リン酸イオン、珪酸イオン、フェノールイオン、モノカルボン酸イオン(例えば酢酸イオン)、ジカルボン酸イオン(例えばシュウ酸イオン、マレイン酸イオン)およびトリカルボン酸イオン(例えばクエン酸イオン)等が挙げられる。また、塩を構成するカチオン成分の例としては、カリウムイオン、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;マンガンイオン、コバルトイオン、亜鉛イオン等の遷移金属イオン;テトラアルキルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオン;テトラアルキルホスホニウムイオン等のホスホニウムイオン;等が挙げられる。弱酸塩の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、オルト珪酸ナトリウム、オルト珪酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト等が挙げられる。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には水を含む。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、研磨用組成物に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。
ここに開示される研磨用組成物は、必要に応じて、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)をさらに含有してもよい。通常は、研磨用組成物に含まれる溶媒の90体積%以上が水であることが好ましく、95体積%以上(典型的には99〜100体積%)が水であることがより好ましい。
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、水溶性高分子、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(典型的には、シリコンウエハのポリシング工程に用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。ここに開示される技術はまた、研磨用組成物が水溶性高分子やキレート剤を実質的に含まない態様で実施されてもよい。
なお、本明細書中において共重合体とは、特記しない場合、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等の各種の共重合体を包括的に指す意味である。
セルロース誘導体の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なかでもHECが好ましい。
デンプン誘導体の具体例としては、プルラン、アルファ化デンプン、シクロデキストリンなどが挙げられる。なかでもプルランが好ましい。
主鎖に窒素原子を含有するポリマーの例としては、N−アセチルエチレンイミンやN−プロピオニルエチレンイミン等のN−アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。
N−ビニル型のモノマー単位を含むポリマーの好適例として、ビニルピロリドン系ポリマーが挙げられる。ここでビニルピロリドン系ポリマーとは、VPの単独重合体およびVPの共重合体(例えば、VPの共重合割合が50重量%を超える共重合体)をいう。ビニルピロリドン系ポリマーにおいて、全繰返し単位のモル数に占めるVP単位のモル数の割合は、通常は50%以上であり、80%以上(例えば90%以上、典型的には95%以上)であることが適当である。水溶性高分子の全繰返し単位が実質的にVP単位から構成されていてもよい。ここで「実質的に」とは、典型的には、全繰返し単位の98%以上がVP単位であることをいう。
水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との関係は特に制限されない。凝集物の発生防止等の観点から、分子量分布(Mw/Mn)が10.0以下であるものが好ましく、5.0以下であるものがより好ましく、3.0以下であるものがさらに好ましい。
なお、水溶性高分子のMwおよびMnとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく値(水系、ポリエチレンオキサイド換算)を採用することができる。
ここに開示される研磨用組成物は、種々の材質および形状を有する研磨対象物の研磨に適用され得る。研磨対象物の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼等の金属もしくは半金属、またはこれらの合金;石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス状カーボン等のガラス状物質;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料;ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。これらのうち複数の材質により構成された研磨対象物であってもよい。なかでも、シリコンからなる表面を備えた研磨対象物の研磨に好適である。例えば、シリコンウエハのラッピング工程、予備ポリシング工程、ファイナルポリシング工程等に適用することができる。
研磨対象物の形状は特に制限されない。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、板状や多面体状等の、平面を有する研磨対象物の研磨に好ましく適用され得る。
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。ここに開示される研磨用組成物は、例えば、希釈(典型的には、水により希釈)して研磨液として使用されるものであってもよく、そのまま研磨液として使用されるものであってもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨に用いられる濃縮液(ワーキングスラリーの原液)との双方が包含される。上記濃縮液の濃縮倍率は、例えば、体積基準で2倍〜100倍程度とすることができ、通常は5倍〜50倍程度が適当である。
なお、研磨用組成物のpHは、pHメーター(例えば、堀場製作所製のガラス電極式水素イオン濃度指示計(型番F−23))を使用し、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液 pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液 pH:6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液 pH:10.01(25℃))を用いて3点校正した後で、ガラス電極を研磨液用組成物に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定することにより把握することができる。研磨用組成物製造用キットを構成する各剤のpHや、上述した混合液の初期pH等についても同様である。
ここに開示される研磨用組成物製造用キットは、上述のような研磨用組成物の構成成分を2以上の複数の剤に分けて含む。これら複数の剤は、上記キットにおいて互いに別々に保管されている。製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、上記キットは、これら複数の剤および希釈溶媒(好ましくは水)を混合することによって研磨用組成物を製造し得るように構成されていることが好ましい。特に限定するものではないが、このとき使用する希釈溶媒の量は、体積基準で、上記キットに含まれる複数の剤の合計体積の1倍以上とすることができる。すなわち、上記キットは、上記研磨用組成物に対する濃縮倍率が2倍以上であり得る。この濃縮倍率は、例えば2〜100倍程度とすることができ、通常は5倍〜60倍程度が適当である。好ましい一態様に係るキットでは、上記濃縮倍率が10倍〜50倍であり、例えば15倍〜40倍である。
水溶性高分子を含む研磨用組成物を製造するための研磨用組成物製造用キットを上記のような2剤型または3剤型以上のキットとして構成する場合、上記水溶性高分子は、A剤に含まれてもよく、B剤に含まれてもよく、A剤およびB剤の両方に含まれていてもよく、A剤およびB剤以外の剤に含まれていてもよい。
A剤は、少なくとも砥粒(ここではシリカ粒子)を含み、さらに強塩基を含むことが好ましい。A剤に含まれるシリカ粒子は、研磨用組成物に含まれるシリカ粒子の全量であってもよく、一部の量であってもよい。例えば、シリカ粒子の全量がA剤に含まれている態様が好ましい。
B剤は、少なくとも弱酸塩(好適にはアルカリ金属炭酸塩)を含む。B剤に含まれる弱酸塩は、研磨用組成物に含まれる弱酸塩の全量であってもよく、一部の量であってもよい。例えば、弱酸塩の全量がB剤に含まれている態様が好ましい。
ここに開示される研磨用組成物製造用キットは、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物の研磨に使用することができる。
すなわち、ここに開示されるいずれかのキットを用いて製造された研磨用組成物(ワーキングスラリー)を用意する。次いで、その研磨用組成物を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて該研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨用組成物を供給する。典型的には、上記研磨用組成物を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。
<研磨用組成物製造用キットの作製>
(実施例1)
コロイダルシリカ、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)およびイオン交換水を、室温25℃程度で約30分間攪拌混合することにより、コロイダルシリカの含有量(WsA)が8.8重量%、TMAHの含有量(WbA)が3.092重量%(濃度0.357モル/Lに相当する。)のA剤を調製した。コロイダルシリカとしては、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径66nmのものを使用した。
TMAH、炭酸カリウム(K2CO3)およびイオン交換水を、室温25℃程度で約30分間攪拌混合することにより、TMAH濃度(MbB)0.123モル/L、炭酸カリウム濃度(MaB)0.217モル/LのB剤を調製した。
上記A剤と上記B剤とを別々の容器内に同じ体積ずつ用意した。このようにして、上記A剤および上記B剤からなる2剤型の研磨用組成物製造用キットを得た。
実施例1において、B剤の炭酸カリウム濃度(MaB)を表1に示すように変更した。その他の点は実施例1と同様にして、2剤型の研磨用組成物製造用キットを得た。
実施例1において、B剤の炭酸カリウム濃度(MaB)を表1に示すように変更した。その他の点は実施例1と同様にして、2剤型の研磨用組成物製造用キットを得た。
本例では、A剤の調製にあたり、平均一次粒子径52nm、平均二次粒子径96nmのコロイダルシリカを使用した。また、A剤のTMAH濃度(WbA)を表1に示すように変更した。その他の点は実施例3と同様にして、2剤型の研磨用組成物製造用キットを得た。
実施例1において、A剤のコロイダルシリカ含有量(WsA)およびTMAH含有量(WbA)をそれぞれ表1に示すように変更した。また、B剤のTMAH濃度(MbB)を表1に示すように変更した。その他の点は実施例1と同様にして、2剤型の研磨用組成物製造用キットを得た。
実施例2において、A剤のTMAH含有量(WbA)およびB剤のTMAH濃度(MbB)をそれぞれ表1に示すように変更した。その他の点は実施例2と同様にして、2剤型の研磨用組成物製造用キットを得た。
実施例3において、A剤のTMAH含有量(WbA)およびB剤のTMAH濃度(MbB)をそれぞれ表1に示すように変更した。その他の点は実施例3と同様にして、2剤型の研磨用組成物製造用キットを得た。
(比較例2)
コロイダルシリカ、TMAH、炭酸カリウムおよびイオン交換水を、室温25℃程度で約30分間攪拌混合することにより、コロイダルシリカ含有量8.8重量%、TMAH含有量4.163重量%(濃度0.480モル/Lに相当する。)、炭酸カリウム濃度0.217モル/Lの組成を有する1剤型の濃縮液を調製した。コロイダルシリカとしては、実施例1と同じものを使用した。
比較例2において、TMAH含有量および炭酸カリウム濃度をそれぞれ表1に示すように変更した。その他の点は比較例2と同様にして、1剤型の濃縮液を得た。
(実施例1〜6および比較例1)
各例に係る研磨用組成物製造用キットのB剤をイオン交換水で29倍(体積基準)に希釈した。このB剤希釈液にA剤を一度に加え(A剤:B剤希釈液の体積比は1:29)、攪拌混合して研磨用組成物を作製した。
各例に係る濃縮液をイオン交換水で30倍(体積基準)に希釈することにより、研磨用組成物を作製した。
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、研磨対象物(試験片)の表面を下記の条件(研磨条件1)で研磨した。試験片としては、直径300mmのシリコンウエハ(伝導型:P型、結晶方位:<100>、抵抗率:0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満)を両面研磨装置により表面粗さ0.5nm〜1.5nmに調整し、これを洗浄して乾燥させた後、1辺が60mmの正方形状にカットしたものを使用した。
研磨装置:ENGIS社製の片面研磨装置、型式「EJ−380IN」
研磨圧力:51.6kPa
定盤回転数:50回転/分
キャリア回転数:50回転/分
研磨パッド:ニッタハース社製、商品名「MH S−15A」
研磨液の供給レート:50mL/分・試験片(500mLの研磨液を循環使用)
研磨環境の温度:25℃
上記の研磨条件1で研磨液を循環使用しながら、1回当たり15分間の研磨を連続で6回実施し、1回目〜6回目の各々について1分間当たりの研磨量[μm/分]を算出した。それら6つの研磨量[μm/分]の値の算術平均値を平均研磨能率[μm/分]とした。
また、1回目の研磨開始当初における研磨液のpH(初期pH)と、6回目の研磨を終了した直後における研磨液のpH(終了後pH)とをそれぞれ測定し、それらのpHの差分を算出した。その差分の値が小さいほどpH維持性が良いと評価した。
なお、各例に係る研磨用組成物を用いたシリコンウエハの研磨は、該研磨用組成物の製造後3時間以内に開始した。したがって、実施例1〜6および比較例1において、上記研磨液の初期pHは、各例に係る研磨用組成物製造用キットのA剤とB剤とを一つに合わせて調製した混合液の初期pHに該当する。
実施例1〜6および比較例1の各例に係る研磨用組成物製造用キットのA剤と、比較例2,3に係る濃縮液とをサンプルとして、以下の保存安定性試験により、安定して品質を維持できる期間(安定性保持期間)を評価した。
すなわち、各サンプル300mLをポリプロピレン製の容器に入れ、43℃の雰囲気で管理されたエアバスにて保管した。それらのサンプルを定期的にエアバスから取り出して目視で観察し、サンプル中のシリカ凝集の有無を確認した。試験期間は最長1年間とした。試験開始から1年後にもシリカ凝集が確認されなかったサンプルについては、保存安定性(安定性保持期間)を「1年間以上」と評価した。試験開始から1年以内にシリカ凝集が確認されたサンプルについては、シリカ凝集が確認されなかった最後の観察時点までの期間を安定性保持期間とした。
なお、各キットのB剤はシリカ粒子を含まないので、保存中におけるシリカ凝集の問題が生じることはない。したがって、A剤の安定性保持期間をキットの安定性保持期間とみなすことができる。
また、実施例1〜4と実施例5,6および比較例1との対比から、全TMAH量に対するA剤中のTMAH量の割合を30%以上、さらには50%以上(特に60%以上)とすることがpH維持性の向上に有効であることがわかる。
<研磨用組成物製造用キットの作製>
(実施例7)
コロイダルシリカ、TMAH、ポリビニルピロリドン(PVP)およびイオン交換水を、室温25℃程度で約30分間攪拌混合することにより、コロイダルシリカの含有量(WsA)が8.8重量%、TMAHの含有量(WbA)が3.092重量%(濃度0.357モル/Lに相当する。)、PVPの含有量が0.05重量%のA剤を調製した。コロイダルシリカとしては、実施例1と同じものを使用した。PVPとしては、Mwが約45000のものを使用した。
B剤は、実施例2におけるB剤の作製方法と同様にして調製した。
上記A剤と上記B剤とを別々の容器内に同じ体積ずつ用意した。このようにして、上記A剤および上記B剤からなる2剤型の研磨用組成物製造用キットを得た。
実施例7において、B剤の炭酸カリウム濃度(MaB)を表3に示すように変更した。その他の点は実施例7と同様にして、2剤型の研磨用組成物製造用キットを得た。
TMAH、炭酸カリウム(K2CO3)、PVPおよびイオン交換水を、室温25℃程度で約30分間攪拌混合することにより、TMAH濃度(MbB)0.123モル/L、炭酸カリウム濃度(MaB)0.326モル/L、PVP含有量が0.05重量%のB剤を調製した。PVPとしては、実施例7と同じものを使用した。
その他の点は実施例3と同様にして、2剤型の研磨用組成物製造用キットを得た。
各例に係る研磨用組成物製造用キットのB剤をイオン交換水で29倍(体積基準)に希釈した。このB剤希釈液にA剤を一度に加え(A剤:B剤希釈液の体積比は1:29)、攪拌混合して研磨用組成物を作製した。
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、研磨対象物(試験片)の表面を下記の条件(研磨条件2)で研磨した。試験片としては、直径300mmのシリコンウエハ(伝導型:P型、結晶方位:<100>、抵抗率:0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満)を両面研磨装置により表面粗さ0.5nm〜1.5nmに調整し、これを洗浄して乾燥させたものを使用した。
研磨装置:スピードファム社製の両面研磨装置、型式「DSM20B−5P−4D」
研磨圧力:15.0kPa
上定盤回転数:−13回転/分
下定盤回転数:35回転/分(上定盤とは逆の回転方向)
インターナルギア回転数:7回転/分
サンギア回転数:25回転/分
研磨パッド:ニッタハース社製、商品名「MH S−15A」
研磨液:総量100Lの研磨液を4.5L/分の速度で循環使用
研磨環境の温度:20℃
研磨時間:60分
研磨後のシリコンウエハの外周部平坦度を評価するため、その指標となるロールオフ量(ROA;Roll−off Amount)を測定した。以下、本件に係るシリコンウエハのROAの測定方法について具体的に説明する。まず、上記の研磨条件2で研磨したシリコンウエハを平坦度検査装置(黒田精工株式会社製「ナノメトロ300TTM」)にセットした。このとき、シリコンウエハのノッチ部を0°としたとき、時計回りに45°の方向を示す直線上が上記平坦度測定の測定領域となるようにした。図1に平坦度測定により得られるグラフの一例を示す。図1中の横軸は、シリコンウエハの外周端からの距離を示し、縦軸はシリコンウエハ表面の形状の変位量を示す。図1に示されるように、シリコンウエハ外周端から3mm〜6mmの位置は比較的平坦な領域である。この領域(3mm〜6mm位置)を基準領域とし、該領域における形状変位量に対して近似する直線(基準直線)を最小二乗法を用いて引く。次に、外周端から1mm位置における上記基準直線上の点を基準点とし、該1mm位置におけるシリコンウエハ形状変位量と上記基準点との差を測定し、これをシリコンウエハのロールオフ量(ROA)とした。
Claims (9)
- 砥粒としてのシリカ粒子と強塩基と弱酸塩とを含む研磨用組成物を製造するための研磨用組成物製造用キットであって、
互いに分けて保管される複数の剤を備え、
前記複数の剤を一つに合わせて混合液を調製した場合における該混合液の初期pHが8.0以上11.8以下である、研磨用組成物製造用キット。 - 前記複数の剤として:
前記シリカ粒子と前記強塩基とを含むA剤;および
前記強塩基と前記弱酸塩とを含むB剤;
を含み、
前記A剤は、前記強塩基の含有量WbA[重量%]と前記シリカ粒子の含有量WsA[重量%]との関係が以下の式(A):
0.25≦(WbA/WsA)≦1.00 (A);
を満たし、
前記B剤は、前記強塩基の濃度MbB[モル/L]と前記弱酸塩の濃度MaB[モル/L]との関係が以下の式(B):
0<(MbB/MaB)≦1.00 (B);
を満たす、請求項1に記載の研磨用組成物製造用キット。 - 前記A剤に含まれる前記強塩基のモル量は、前記研磨用組成物製造用キットに含まれる全強塩基のモル量の30%以上95%以下である、請求項2に記載の研磨用組成物製造用キット。
- 前記弱酸塩として、酸解離定数(pKa)値の少なくとも一つが8.0〜11.8の範囲にある弱酸塩を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の研磨用組成物製造用キット。
- 前記弱酸塩として、炭酸塩、炭酸水素塩、ホウ酸塩、リン酸塩およびフェノール塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の研磨用組成物製造用キット。
- 前記強塩基として、アルカリ金属水酸化物、水酸化第四級アンモニウム、アルキルアミン、水酸化第四級ホスホニウムおよびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の研磨用組成物製造用キット。
- 請求項2から6のいずれか一項に記載の研磨用組成物製造用キットを使用することを特徴とする、研磨用組成物製造方法。
- 前記B剤を水で希釈して第2組成物を調製すること;および
前記A剤を含む第1組成物を前記第2組成物に添加すること;
を含む、請求項7に記載の製造方法。 - 請求項7または8に記載の方法により製造された、研磨用組成物。
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