JP2020035732A - レドックスフロー電池用電極 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1には、電極を構成する繊維が隔膜に刺さり、これによって生じた孔や亀裂を介して正極、負極の電解液が混合、短絡することで、レドックスフロー電池の性能低下や寿命を短くする可能性があることが開示されている。また、特許文献1には、課題の解決方法として、電極と隔膜の間にたとえばポリテトラフルオロエチレンのような、電極より柔らかい素材の多孔質シート材を挟み、電極と隔膜の接触を防止する方法が開示されている。しかし、この方法では、活物質の反応場が隔膜から離れてしまうため、セル抵抗が増大する課題が残されている。
特許文献2には、エレクトロスピニングで作製した不織布を炭素化し、電極として用いることが開示されている。しかし、レドックスフロー電池の電極に用いるには、電解液との親和性が不足しており、セル抵抗に課題が残されている。
特許文献3には、多孔質電極の上に、炭素化されていない不織布を積層することが開示されている。
[1]
少なくとも一方の表面が繊維構造を有する炭素構造体からなり、前記繊維構造の平均繊維径が0.05〜6.0μmであることを特徴とする、レドックスフロー電池用電極。
[2]
少なくとも一方の表面が繊維構造を有する炭素構造体からなり、前記繊維構造の平均繊維径が0.1〜6.0μmであることを特徴とする、レドックスフロー電池用電極。
[3]
蛍光X線分析による表面分析で測定される前記炭素構造体の酸素原子割合が、0.03〜10質量%である、[1]又は[2]に記載のレドックスフロー電池用電極。
[4]
前記炭素構造体が、炭素不織布、炭素紙、及び炭素フォームからなる群から選ばれる構造体である、[1]〜[3]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[5]
前記炭素構造体が炭素不織布である、[1]〜[4]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[6]
X線光電子分光法による表面分析によって測定される、前記炭素構造体の全炭素原子数に対する黒鉛を構成する炭素原子数が占める割合が、70at%以上80at%以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[7]
X線光電子分光法による表面分析によって測定される、前記炭素構造体の全炭素原子数に対するC−OHを構成する炭素原子数が占める割合が5at%以上15at%以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[8]
X線光電子分光法による表面分析によって測定される、前記炭素構造体の全炭素原子数に対するC=Oを構成する炭素原子数が占める割合が10at%以上15at%以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[9]
X線光電子分光法による表面分析によって測定される、前記炭素構造体の全炭素原子数に対するCOOHを構成する炭素原子数が占める割合が0.1at%以上5.0at%以下である、[1]〜[8]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[10]
前記電極の空隙率が80%〜99%である、[1]〜[9]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[11]
前記炭素構造体の炭素含有率が51質量%以上である、[1]〜[10]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[12]
前記電極の1m2当たりの重量が40g以上である、[1]〜[11]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[13]
前記炭素構造体に多孔質炭素基材が積層された、[1]〜[12]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[14]
前記多孔質炭素基材が、炭素ペーパー、炭素フェルト、及び炭素フォームからなる群から選ばれる少なくとも1種類の多孔質炭素基材である、[13]に記載のレドックスフロー電池用電極。
[15]
厚みが150μm以上である、[1]〜[14]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極。
[16]
[1]〜[15]のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極の一方の表面が双極板と接していることを特徴とする、レドックスフロー電池用セル。
[17]
前記双極板の少なくとも一部に流路を有する、[16]に記載のレドックスフロー電池用セル。
[18]
[16]又は[17]に記載のレドックスフロー電池用セルを含むことを特徴とする、レドックスフロー電池システム。
に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々
変形して実施できる。
本実施形態のレドックスフロー電池用電極(本明細書において、単に「電極」と称する場合がある)は、少なくとも一方の表面が繊維構造を有する炭素構造体からなり、上記繊維構造の平均繊維径が0.05〜6.0μmである。
上記電極は、炭素構造体の単層体であってもよいし、炭素構造体の積層であってもよいし、少なくとも1つの炭素構造体と少なくとも1つの他の構造体との積層体であってもよい。上記電極に炭素構造体が複数含まれる場合、各炭素構造体は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、平均繊維径が0.05〜6.0μm(好ましくは0.1〜6.0μm)である繊維構造を有する炭素構造体が少なくとも一方の表面にあれば、他の炭素構造体は特に限定されない。上記電極は、両表面が、繊維構造を有する炭素構造体からなり、上記繊維構造の平均繊維径が0.05〜6.0μm(好ましくは0.1〜6.0μm)であることが好ましい。
本実施形態の電極は、例えば、他の構造体(例えば、炭素繊維紙等の多孔質基材等)と上記炭素構造体との積層体である場合、上記炭素構造体を薄くしてコストを低減できる、他の構造体を含むことで電極の強度が増す、従来の他の構造体を用いることでコストを低減できる、従来の他の構造体を用いた場合の他の部材(隔膜など)への突き刺さりを容易に防止できる等の観点から、炭素構造体/他の構造体、炭素構造体/他の構造体/炭素構造体の構成であってもよい。特に、炭素構造体として炭素フォームを用いる場合、上記の効果が一層得られやすい観点から、多孔質基材(特に炭素紙又は炭素不織布)/炭素フォーム、炭素フォーム/多孔質基材(特に炭素紙又は炭素不織布)/炭素フォームの構成が好ましい。
例えば、上記炭素構造体が不織布である場合、上記電極は、不織布単独であっても良いし、異なる不織布を2層以上積層して用いてもよいし、異なる多孔質基材に少なくとも1層の上記不織布を積層して用いても良い。
上記炭素構造体は、繊維構造を有する。
ここで上記繊維構造としては、炭素構造体が繊維からなる場合(不織布、炭素ペーパー(炭素紙)等)は、炭素構造体を構成する繊維の構造として良く、炭素構造体が炭化処理した樹脂フォームである場合(炭素フォーム等)は、線状部(繊維構造)と該線状部を結合する結合部の線状部構造としてよい。
上記繊維構造を有する炭素構造体としては、例えば、不織布、紙、樹脂フォーム等が挙げられ、炭素繊維からなる不織布、炭化処理した不織布等の炭素不織布;炭素繊維からなる紙、炭化処理した紙等の炭素紙;樹脂フォームを炭化処理した炭素フォーム;が好ましく、炭素不織布又は炭素フォームがより好ましく、炭素フォームがさらに好ましい。
なお、本明細書において、炭素不織布と炭素紙とをまとめて「炭素繊維体」と称する場合がある。
上記平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)で得た像を画像解析することによって求めることができる。具体的には、走査型電子顕微鏡を用いて10,000倍の倍率で繊維形状を観察し、得られた観察像から、炭素繊維の太さを無作為に20か所測定し、この平均太さを算出することができる。
なお、上記炭素構造体が炭素フォームである場合、繊維径は、結合部を繋ぐ線状部の太さのことを指し、上記と同様にして得られた走査型電子顕微鏡の画像から線状部(炭素繊維)の太さを無作為に20か所測定し、断面形状が円形であると仮定して、この平均太さ求めることで測定することができる。
上記炭素不織布の原料となる不織布は、公知の方法で製造することができ、例えば紡糸した繊維を化学的に結合させるケミカルボンド法、熱的に繊維を結合させるサーマルボンド法、高圧水流等で繊維を交絡させるスパンレース法、物理的に繊維を絡合させるニードルパンチ法、繊維を点着させるスパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法などが挙げられ、単独、または二つ以上の方法を組み合わせて製造することができる。これらのなかでも、適した繊維径の不織布を製造でき、炭化した際に0.05〜6.0μm(好ましくは0.1〜6.0μm)の導電性繊維を製造できる観点、及び繊維の飛び出しが一層少なくなる観点から、メルトブロー法、エレクトロスピニング法が好ましく、エレクトロスピニングがより好ましい。
なお、炭素含有率は、炭素不織布等の炭素構造体を構成する材料の全原子の質量に対する炭素原子の質量割合であり、蛍光X線測定から求めることができる。
上記炭素構造体(例えば、上記炭素不織布)の酸素原子の割合が上記範囲であることにより、鉄−クロム系、クロム−臭素系、亜鉛−臭素系、チタン−マンガン系、バナジウム系等の電解液への親和性が向上する。
上記酸素原子の割合(酸素含有率)は、不織布等の炭素構造体を構成する全原子の質量に対する酸素原子の質量割合であり、蛍光X線測定から求めることができる。また、酸素原子の割合は、炭化後に行う酸化工程の温度を高くすること等により、高くすることができる。
なお、上記炭素構造体において、炭素原子と酸素原子との合計質量は、60質量%以上であってよく、99.9質量%以下であってよい。
結合エネルギー287.0eVのピークから算出されるC=O濃度は、レドックスフロー電池電極に用いた際の電解液の濡れ性が良く、セル抵抗が低減される観点から、上記炭素構造体(例えば、炭素不織布)の全炭素原子数に対するC=Oに含まれる炭素原子の数の割合は、9.0at%以上が好ましく、10.0at%以上がより好ましく、10.5at%以上がさらに好ましく、11.0at以上が特に好ましい。また、レドックスフロー電池電極に用いた際の長期安定性の観点から、15at%以下が好ましく、14at%以下がより好ましく、13at%以下がさらに好ましい。
結合エネルギー288.6eVのピークから算出されるCOOHの濃度は、レドックスフロー電池電極に用いた際の電解液の濡れ性が良く、セル抵抗が低減される観点から、上記炭素構造体(例えば、炭素不織布)の全炭素原子数に対するCOOHに含まれる炭素原子の数の割合が、0.1at%以上が好ましく、0.5at%以上がより好ましく、1.0at以上がさらに好ましい。また、レドックスフロー電池電極に用いた際の長期安定性の観点から、5at%以下が好ましく、4at%以下がより好ましく、3at%以下がさらに好ましい。
上記表面官能基濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、本明細書において、空隙率は、かさ密度及び真密度から求めた値である。かさ密度は、炭素不織布等の炭素構造体に含まれる空隙も含めた体積に基づいた密度である。これに対して、真密度は、炭素不織布等の炭素構造体の材料が占める体積に基づいた密度である。
−かさ密度の測定−
まず、ノギス等を用いて炭素不織布等の炭素構造体の寸法を測定し、得られた寸法から、炭素不織布等の炭素構造体のかさ体積Vbulkを求める。次に、精密天秤を用いて、炭素不織布等の炭素構造体の質量Mを測定する。得られた質量M及びかさ体積Vbulkから、下記の式(1)を用いて炭素不織布等の炭素構造体のかさ密度ρbulkを求めることができる。
ρbulk=M/Vbulk ・・・(1)
上記炭素構造体のかさ密度は、電極として用いた際の抵抗を下げる観点から3.0kgm-3以上であることが好ましく、より好ましくは3.5kgm-3以上であり、さらに好ましくは4.0kgm-3以上である。また、炭素不織布等の炭素構造体の柔軟性の観点から400kgm-3以下であることが好ましく、より好ましくは300kgm-3以下であり、さらに好ましくは200kgm-3以下である。
−真密度の測定−
炭素不織布等の炭素構造体の真密度ρrealは、n−ヘプタン、四塩化炭素及び二臭化エチレンからなる混合液を用いて浮沈法によって求めることができる。具体的には、まず、共栓試験管に適当なサイズの炭素構造体を入れる。次に、3種の溶媒を適宜混合して試験管に加え、30℃の恒温槽に漬ける。試料片が浮く場合は、低密度であるn−ヘプタンを加える。一方、試験片が沈む場合は、高密度である二臭化エチレンを加える。この操作を繰り返して、試験片が液中に漂うようにする。最後に、液の密度をゲーリュサック比重瓶を用いて測定する。
−空隙率の算出−
上述のように求めたかさ密度ρbulk及び真密度ρrealから、下記の式(2)を用いて空
隙率Vf,poreを求めることができる。
Vf,pore=((1/ρbulk)−(1/ρreal))/(1/ρbulk)×100 (%) ・
・・(2)
上記炭素紙(炭素繊維紙)の原料となる紙は、公知の方法で製造することができ、例えば紡糸した繊維を化学的に結合させるケミカルボンド法、熱的に繊維を結合させるサーマルボンド法、高圧水流等で繊維を交絡させるスパンレース法、物理的に繊維を絡合させるニードルパンチ法、繊維を点着させるスパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法などが挙げられ、単独、または二つ以上の方法を組み合わせて製造することができる。これらのなかでも、適した繊維径の紙を製造でき、炭化した際に0.05〜6.0μmの導電性繊維を製造できる観点、及び繊維の飛び出しが一層少なくなる観点から、メルトブロー法、エレクトロスピニング法が好ましく、エレクトロスピニングがより好ましい。
なお、本明細書において炭素紙とは、炭素繊維、炭素繊維同士を結着させるマトリックス炭素等からなる多孔性の炭素複合材料であり、テーバ曲げ剛さがが15gf・cm以上のものをいう。また、炭素不織布とは、炭素繊維を少なくとも部分的に絡ませた多孔性の炭素複合材料であり、テーバ曲げ剛さがが15gf・cm未満のものをいう。ここで、テーバ曲げ剛さはJIS P8125に準拠して測定される値をいう。具体的には、寸法70mm×38.1mmに切り出した試験片を、熊谷理機工業製テーバースティフネステスターに、荷重長が50mmとなるように固定し、試験片を左右にそれぞれ15°曲げたときの曲げモーメントを測定し、それらの平均値をテーバ曲げ剛さ(gf・cm)とする。
上記紙は、さらに不活性ガス中、または減圧下で、800℃〜3000℃で加熱すること等で炭素化することができる。炭素化の温度は、導電性の観点から、800℃以上が好ましく、より好ましくは1100℃以上であり、1400℃以上がさらに好ましい。また、柔軟性の観点から、3000℃以下が好ましく、より好ましくは2500℃以下であり、さらに好ましくは2200℃以下である。
上記炭素フォームは、線状部と該線状部を結合する結合部とを有する炭素フォームが好ましい。上記炭素フォームは、シート状であることが好ましい。上記炭素フォームは、1層の炭素フォームからなる単層炭素フォームであってもよいし、2層以上の単層炭素フォームからなる積層炭素フォームであってもよい。また、表層や各層間には、他の層が設けられていてもよい。
上記炭素フォームにおいて、結合部の数Nnに対する線状部の数Nlの割合Rは、1.2以上1.7以下であることが好ましい。割合R(Nl/Nn)は、換言すれば、結合部にて分岐する枝分かれの平均数である。線状部が結合部で結合した三次元網目状構造を有さず、不織布のように結合していない線状部が接触している構造の場合は、このRが小さい値となる。また、線状部が帯状の様になった、例えば蜂の巣の様な壁面で覆われた多孔性構造の場合はこのRが大きい値となる。割合Rは、より好ましくは1.4以上1.65以下、さらに好ましくは1.4以上1.6以下、さらに好ましくは1.42以上1.60以下、さらに好ましくは1.44以上1.58以下、特に好ましくは1.45以上1.55以下である。
上記炭素フォームは、熱処理炉において、例えばメラミン樹脂フォームを熱処理して炭素化すると、炭素フォームの骨格を構成する炭素繊維が全ての方向に均等に広がった等方的な構造を有するものとしてもよい。このような炭素フォームの場合、300μm×300μm×300μmの領域内に含まれる線状部のx方向に対する配向角度の平均値をθave x、y方向に対する配向角度の平均値をθave y、z方向に対する配向角度の平均値をθave z、と定義したときに、θave x、θave y、θave zの中の最大値と最小値との差θcは通常は1°以下となることが多い。
なお、上記三方向は、炭素フォームの厚み方向をx方向、前記x方向に垂直な方向をy方向、前記x方向及び前記y方向に垂直な方向をz方向とする。
上記炭素フォームにおいて、線状部の互いに直交する三方向の各々に対する配向角度の平均値について、一方向に対する配向角度の平均値と、他の方向に対する配向角度の平均値の少なくとも一方との差θが3°以上である(異方性がある)ことが好ましい。これにより、炭素フォームに圧縮荷重が印加された際にも、炭素繊維(線状部)の破断を抑制して粉落ちを低減することができる。上記差θは、好ましくは5°以上であり、より好ましくは8°以上であり、特に好ましくは10°以上である。また、上記差θは炭素フォームの柔軟性の観点から、好ましくは35°以下であり、より好ましくは25°以下であり、さらに好ましくは20°以下である。逆に、上記差θが3°を下回ると、等方的な配向性が高まり、圧縮荷重が印加された際に炭素繊維が破断して落下する、いわゆる粉落ちが相当量発生する。
また、θave x、θave y、θave zの中の最大値と残りの2つの差が、共に3°以上となることが好ましく、より好ましくは5°以上であり、更に好ましくは8°以上であり、特に好ましくは10°以上である。θave x、θave y、θave zの中の最大値と残りの2つの差の上限に特に限定は無いが、炭素フォームの柔軟性の観点から、好ましくは35°以下であり、より好ましくは25°以下であり、さらに好ましくは20°以下である。
炭素フォーム中に上記θave x、θave y、θave zを満たす縦300μm×横300μm×高さ300μmの領域が含まれていればよい。
上記炭素フォームの結合部の密度は、圧縮荷重を印加された際の復元性の観点から、15,000個/mm3以上であることが好ましく、より好ましくは20,000個/mm3以上であり、さらに好ましくは30,000個/mm3以上である。また、炭素フォームの柔軟性の観点から、5,000,000個/mm3以下であることが好ましく、より好ましくは3,000,000個/mm3以下であり、さらに好ましくは2,000,000個/mm3以下である。
炭素フォーム中の少なくとも一部に上記結合部の密度を満たす箇所があれば好ましく、50体積%で上記密度範囲を満たしていればより好ましく、75体積%で上記密度範囲を満たしていればさらに好ましく、炭素フォームの任意の箇所で上記密度範囲を満たしていることが特に好ましい。
上記炭素フォームは、材料である樹脂フォームに対して圧縮荷重を印加しつつ、窒素等の不活性気流中や真空等の不活性雰囲気下で熱処理して炭素化することにより得ることができる。その際、熱処理温度は、樹脂フォームの軟化点以上の温度とすることが肝要である。これにより、炭素フォームを構成する炭素繊維を圧縮荷重の印加方向に対して垂直な方向に配向させて、炭素繊維の配向に異方性を持たせることができる。
本実施形態のレドックスフロー電池用電極は、上記炭素構造体に他の構造体が積層されていることが好ましい。
上記他の構造体としては、例えば、多孔質基材等が挙げられ、上記多孔質基材は、公知のものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、炭素不織布、炭素フェルト、炭素ペーパー、連続空隙を有する炭素フォーム等の多孔質炭素基材;不織布、繊維ペーパー、連続空隙を有する樹脂フォーム等の多孔質樹脂基材;等が挙げられる。中でも、低抵抗の電極が得られる観点から、多孔質炭素基材が好ましく、炭素ペーパー、炭素フェルト及び炭素フォームからなる群から選ばれる少なくとも一種がより好ましい。また、上記他の構造体は、繊維構造の平均繊維径が6.0μm超の多孔質基材(例えば、繊維構造の平均繊維径が6.0μm超の炭素ペーパー、炭素不織布又は炭素フォーム)としてもよい。
上記他の構造体は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
上記単位面積当たりの抵抗は、30mm×33mmに切り出した電極を、厚さが50%になるように2枚の黒鉛板を用いて挟み、黒鉛板間に高周波の振幅5mAの交流電流を印加して、厚さ方向の抵抗を測定することができる。
上記空隙率は、電極を試料に用いて、上述の炭素不織布の空隙率と同様の方法により測定することができる。
以下、炭素構造体として炭素不織布を用いる場合を例として、本実施形態のレドックスフロー電池用電極の製造方法を記載する。以下の方法は炭素不織布に限定されるものではなく、炭素紙、炭素フォームに置き換えて適用することができる。
本実施形態のレドックスフロー電池用電極として、異なる炭素不織布を2層以上積層して用いる場合は、上述の原料となる不織布の製造方法を用いて、紡糸の段階で積層させた後炭素化する方法、それぞれの原料となる不織布を積層させて炭素化する方法、原料となる不織布を炭素化した後積層する方法等が挙げられる。
また、炭素化した後の不織布の平坦性の観点から、用いる不織布の炭素収率は、1〜80%であることが好ましく、より好ましくは2〜50%である。なお、炭素不織布を、多孔質樹脂基材又は多孔質炭素基材積層と積層する場合は、炭素収率の影響を受けない。
また、2種以上の不織布を用いる場合、炭素収率が近い不織布を用いることが好ましく、より好ましくは炭素収率が最大の不織布と炭素収率が最少の不織布との炭素収率の差が40%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
なお、上記炭素収率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のレドックスフロー電池用セルは、上記レドックスフロー電池用電極の一方の表面が双極板と接していることが好ましい。
上記レドックスフロー電池用セルは、レドックスフロー電池用電極の表面の少なくとも一部に流路を有することが好ましい。
レドックスフロー電池セル中の電解液の流路は、例えば、多孔質電極の端から端に電解液を供給し、電解液が多孔質内を貫通するフロースルー構造(図1(a))、多孔質電極に沿うように電解液を供給するフローバイ構造(図1(b))、双極板の少なくとも一部に流路を有する(好ましくは、双極板の少なくとも一部に流路を有し、かつ多孔質電極に沿うように電解液を供給する)ゼロギャップ−フローバイ構造(図1(c))などが挙げられる。上記レドックスフロー電池用電極はいずれの流路構造にも好適に用いることができるが、セル抵抗を低減させる観点から、フロースルー構造又はゼロギャップ−フローバイ構造が好ましく、ゼロギャップ−フローバイ構造に特に好ましく用いることができる。
本実施形態のレドックスフロー電池システムは、上記レドックスフロー電池用セルを含むことが好ましい。
実施例、比較例で得られた電極の特性等を、表1にまとめる。
炭素不織布の炭素収率は、10cm×10cmに切り抜いた不織布の炭化前後重量変化を精密電子天秤で測定することで求めた。なお、炭化条件は、実施例、比較例に記載の条件とし、炭化処理後酸化処理前のサンプルを、炭化後のサンプルとした。
炭素不織布、炭素紙、炭素フォームの炭素含有率は、蛍光X線測定から求めた。蛍光X線測定は、株式会社リガク製の蛍光X線分析装置ZSX−100E(波長分散型、Rh管球)を用いた。サンプルは20mmφ以上のサイズを用いた。
炭素不織布、炭素紙、炭素フォームの酸素含有率は、蛍光X線測定から求めた。蛍光X線測定は、株式会社リガク製の蛍光X線分析装置ZSX−100E(波長分散型、Rh管球)を用いた。サンプルは20mmφ以上のサイズを用いた。
なお、実施例、比較例に記載の、炭素化処理した後の、酸化処理の前後の試料を用いて、酸化処理前の酸素原子の割合、及び酸化処理後の酸素原子の割合を測定した。
まず、ノギス等を用いて炭素不織布等の電極(単層又は積層の電極)の寸法を測定し、得られた寸法からかさ体積Vbulkを求めた。次に、精密天秤を用いて、炭素不織布等の電極の質量Mを測定した。得られた質量Mおよびかさ体積Vbulkから、下記の式(1)を用いてかさ密度ρbulkを求めた。
ρbulk=M/Vbulk・・・(1)
炭素不織布等の電極の真密度ρrealは、n−ヘプタン、四塩化炭素および二臭化エチレンからなる混合液を用いて浮沈法によって求めた。具体的には、まず、共栓試験管に適当なサイズの炭素不織布等の電極を入れ、次に、3種の溶媒を適宜混合して試験管に加え、30℃の恒温槽に漬けた。試料片が浮く場合は、低密度であるn−ヘプタンを加えた。一方、試験片が沈む場合は、高密度である二臭化エチレンを加えた。この操作を繰り返して、試験片が液中に漂うようにした。最後に、液の密度をゲーリュサック比重瓶を用いて測定した。
上述のように求めたかさ密度ρbulkおよび真密度ρrealから、下記の式(2)を用いて
空隙率Vf,poreを求めた。
Vf,pore=((1/ρbulk)−(1/ρreal))/(1/ρbulk)×100(%)
・・・(2)
SEMを用いて、10000倍に拡大して炭素不織布、炭素紙、炭素フォームを観察した。任意の20か所で炭素繊維の直径を測定し、その平均値を平均繊維径とした。
炭素不織布等の電極1m2当たりの重さは、炭素不織布等の電極を5cm×5cmに切り抜き、精密電子天秤で重量を測定することで求めた。
30mm×33mmに切り出した電極を、厚さが50%になるように2枚の黒鉛板を用いて挟み、黒鉛板間に高周波の振幅5mAの交流電流を印加して、厚さ方向の抵抗を測定した。
炭素不織布、炭素紙、炭素フォームの濡れ性は、不織布等側の表面に滴下した蒸留水の接触角の大きさによって評価した。接触角は協和界面化学株式会社製接触角計DMs−401を用いて、θ/2法によって求め、以下の観点で評価した。
◎(優れる):不織布炭素表面に滴下した蒸留水が、滴下して10秒以内に多孔質内部に浸透
○(良好):θが90度未満
×(不良):θが90度以上
レドックスフロー電池評価には、バイトンゴム製ガスケット、テフロン(登録商標)製流路枠、黒鉛製セパレータ、ステンレス製エンドプレートから構成されるセルを用いた。電解質膜にはAldrichから購入したNafion211を用いた。ガスケットは電極の圧縮率が52%になるように膜厚を調節した。50×80mmに切り出した膜、33×30mmに切り出した2枚の炭素不織布等の電極、並びにセル構成部材を所定の順番に従って組み合わせ、ステンレス製ボルトを用いて所定のトルクにて締結した。組み立てたセルを、電解液タンクと送液ポンプから構成される電解液循装置に接続した。電解液タンクにバナジウムイオン濃度1.5M、バナジウムイオン価数3.5価、硫酸イオン濃度4.5Mのバナジウム硫酸溶液を30ml加え、流速100ml/minにて循環した。充放電試験はBioLogic社製ポテンショスタットVSPを用いて、定電流法にて行った。電圧範囲は1.00−1.55V、電流密度は80mA/cm2とした。充電および放電時における平均電圧VcおよびVdから、次式によってセル抵抗を求めた。
セル抵抗(Ωcm2)=(Vc−Vd)/(2×0.08)
さらに、充電時間と放電時間から、電流効率を求めた。
前述のレドックスフロー電池評価に記載の方法に従って組み立てたセルについて、電解液を流通させない状態における抵抗をから、電極による膜の突刺しによる短絡の発生の有無を判断した。セルの締結トルクを1Nmから1Nmごとに増大させ、抵抗が1000Ωを下回ったときのトルクの大小によって短絡抑制効果を評価した。
◎(優れる):4Nm以上
○(良好):3Nm以上
△(普通):2Nm以上
×(不良):2Nm未満
炭素不織布表面の含酸素官能基濃度はX線光電子分光計(パーキンエルマー、ESCA−5500MT)を用いて測定した。C1sピークを、結合エネルギー284.4(黒鉛)、285.6(C−OH)、287.0(C=O)および288.6eV(COOH)をピークとする4つのガウス分布によってフィッティングした。4つのピークの合計面積に対する各ピークの面積の割合を、全炭素原子数に対する各官能基に含まれる炭素原子数の割合に相当することとし、この値を表面官能基濃度として示した。
実施例20〜26及び比較例3による炭素フォームに対して、X線CTによる構造解析を行った。具体的には、X線画像を撮像しやすくするため、実施例及び比較例の各々に無電解銅めっきを行った後、試験片を採取し、高分解能3DX線顕微鏡nano3DX(株式会社リガク製)を用いて、採取した試験片に対して構造解析を行った。
具体的な無電解めっき条件、X線CT解析条件は以下のとおりである。
[無電解めっき条件]
サンプルをOPCコンディクリーンMA(奥野製薬工業社製、100mL/Lに蒸留水で希釈)に70℃で5分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPCプリディップ49L(奥野製薬工業社製、10mL/Lに蒸留水で希釈、98%硫酸を1.5mL/L添加)に70℃で2分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPCインデューサー50AM(奥野製薬工業社製、100mL/Lに蒸留水で希釈)及び、OPCインデューサー50CM(奥野製薬工業社製、100mL/Lに蒸留水で希釈)を1:1で混合した溶液中に45℃で5分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPC−150クリスタMU(奥野製薬工業社製、150mL/Lに蒸留水で希釈)に室温で5分間浸漬した後、蒸留水で1分間洗浄した。続いてOPC−BSM(奥野製薬工業社製、125mL/Lに蒸留水で希釈)に室温で5分間浸漬した。続いて化学銅500A(奥野製薬工業社製、250mL/Lに蒸留水で希釈)及び、化学銅500B(奥野製薬工業社製、250mL/Lに蒸留水で希釈)を1:1で混合した溶液中に室温で10分間浸漬した後、蒸留水で5分間洗浄した。その後90℃で12時間真空乾燥を行い、水分を乾燥させた。
[X線条件]
X線ターゲット:Cu
X線管電圧:40kV
X線管電流:30mA
[撮影条件]
投影数:1500枚
回転角度:180°
露光時間:20秒/枚
空間解像度:0.54μm/ピクセル
[X線CT解析条件]
得られた3次元画像を、Median filterで隣接する1pixelにて処理し、大津のアルゴリズムを用いて二値化した。
続いて、JSOL社製のソフトウェアsimplewareのCenterline editor(Ver.7)をデフォルトの設定値で使用して、2.16μm以下の線をノイズとして除去した後、測定視野300μm×300μm×300μm内の結合部の数Nn、線状部の数Nlを検出した。
上記構造解析により、試験片に含まれる結合部の数Nn、線状部の数Nl、結合部の密度、互いに直交する3方向(x、y、z)に対する配向角度の平均値を求めた。得られた結果を表3に示す。なお、表3における配向角度は、圧縮荷重の印加方向をx方向とし、圧縮荷重の印加方向に垂直な方向にy方向及びz方向を設定して求めた値である。また、表3におけるθdの最小値は、θave x、θave y、θave zの中の最大値と2番目に大きな値との差に関するものである。
ポリイミドの合成
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコをセットし、容器内を窒素ガスで置換した。N−メチルピロリドン(以下、「NMP」という。)114g、5−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール(東京化成工業社製。以下、「ABI」という。)7.69g(34.30mmol)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(東京化成工業社製。以下、「33DAS」という。)8.52g(34.30mmol)、4、4’−オキシジフタル酸無水物(東京化成工業社製。以下、「ODPA」という。)21.71g(70.00mmol)、トルエン42gを加え、反応容器に窒素ガスを導入しながら撹拌した。続いて、ディーン・スターク管をトルエンで満たしたのち、オイルバスで内温160℃まで昇温し、160℃で2時間加熱還流を行い、イミド化を行った。ディーン・スターク管に回収された水の重量から、イミド化が90%以上進んだことを確認した。続いて、ディーン・スターク管からトルエンを抜き出し、180℃まで昇温してさらに反応を4時間続けることで、Mw6.7万のポリイミド溶液を調製した。
得られたポリイミド溶液を、NMPで希釈した後、ソルミックスAP−1(日本アルコール社製)に滴下した。得られたポリイミドの沈殿物を濾過し、イオン交換水で洗浄させた後、減圧下100℃で5時間乾燥させた。乾燥したポリイミドを固形分濃度9wt%になるようにγ−ブチロラクトンに溶解させ、ポリイミド溶液を調製した。
ポリビニルアルコール(PVA)ナノファイバー不織布は、株式会社メック製ナノファイバー電解紡糸装置NANON−03を用いて作製した。原料であるPVAには株式会社クラレ製ポバール(重合度1700、完全ケン化)を使用した。濃度10wt%のPVA水溶液を入れたシリンジと、150mmの間隔を隔てて設置した接地電極との間に、23kVの電圧を印加して電解紡糸を行った。シリンジに取り付けたニードルの直径は21G、PVA水溶液の吐出速度は0.5ml/hrとした。合計50hr紡糸することによって厚さ350μmのPVAナノファイバー不織布を得た。
PVAナノファイバー不織布の炭素化は、特許3723844に記述された方法にしたがって、炭素ナノファイバー不織布に転換した。具体的には、100℃のヨウ素蒸気雰囲気中において48hr熱処理をおこなって不融化したPVAナノファイバー不織布を、窒素気流下1500℃にて熱処理して炭素化した。
得られたPVA系炭素ナノファイバー不織布を空気気流下400℃にて1hr熱処理することによって、炭素表面を酸化させ、電極を得た。
ポリイミド(PI)ナノファイバー不織布は、実施例1と同様、電解紡糸法によって作製した。原料であるPIには、参考例に記載したポリイミド溶液を用いた。PI濃度9wt%のγ−ブチロラクトン溶液を入れたシリンジと、150mmの間隔を隔てて設置した接地電極との間に、20kVの電圧を印加して電解紡糸を行った。シリンジに取り付けたニードルの直径は27G、PI液の吐出速度は1ml/hrとした。合計20hr紡糸することによって厚さ350μmのPIナノファイバー不織布を得た。
得られたPIナノファイバー不織布を、窒素気流下1500℃にて熱処理して炭素化した。
得られたPI系炭素ナノファイバー不織布を、空気気流下400℃にて1hr熱処理することによって、炭素表面を酸化させ、電極を得た。
実施例2にしたがって作製したPIナノファイバー不織布を、窒素気流下1800℃にて熱処理して炭素化した。
得られたPI系炭素ナノファイバー不織布を、空気気流下500℃にて1hr熱処理することによって、炭素表面を酸化させ、電極を得た。
実施例2にしたがって、合計35hr紡糸することによって作製したPIナノファイバー不織布を、窒素気流下1800℃にて熱処理して炭素化した。
得られたPI系炭素ナノファイバー不織布を、空気気流下500℃にて1hr熱処理することによって、炭素表面を酸化させ、電極を得た。
実施例2にしたがって作製したPIナノファイバー不織布を、窒素気流下2000℃にて熱処理して炭素化した。
得られたPI系炭素ナノファイバー不織布を、空気気流下550℃にて1hr熱処理することによって、炭素表面を酸化させ、電極を得た。
ポリアクリロニトリル(PAN)ナノファイバー不織布は、実施例1と同様、電解紡糸法によって作製した。原料であるPANには、アルドリッチ製PAN(181315、数平均分子量150,000)を用いた。紡糸する溶液を、PAN濃度9wt%のN,N’−ジメチルホルムアミド溶液としたこと以外は、実施例2と同様の方法によって、PANナノファイバー不織布を得た。
PANナノファイバー不織布を240℃の空気中において6hr熱処理をおこなって不融化した後、窒素気流下1500℃にて熱処理して炭素化した。
得られたPAN系炭素ナノファイバー不織布を空気気流下400℃にて1hr熱処理することによって、炭素表面を酸化させ、電極を得た。
ピッチナノファイバー不織布は、非特許文献CARBON、41(2003)、2655−2657に記述された方法にしたがって、電解紡糸法にて作製した。原料であるピッチには、エチレン分解ボトム油(軟化点292℃、ヘキサン不溶分96.5wt%、トルエン可溶分65.7wt%、トルエン不溶―ピリジン可溶分34.3wt%、ピリジン不溶分0wt%、数平均分子量2400)を用いた。原料ピッチからN,N’−ジメチルホルムアミド不溶分を分別し、30wt%のテトラヒドロフラン溶液を調製した。このピッチ溶液を実施例2と同様に電解紡糸することによって、ピッチナノファイバー不織布を得た。ピッチナノファイバー不織布を240℃の空気中において6hr熱処理をおこなって不融化した後、窒素気流下1500℃にて熱処理して炭素化した。
得られたPAN系炭素ナノファイバー不織布を空気気流下400℃にて1hr熱処理することによって、炭素表面を酸化させ、電極を得た。
セルロースナノファイバー不織布は、実施例1と同様、電解紡糸法によって作製した。原料であるセルロースには、アルドリッチ製セルロース粉末(S3504)を用いた。このセルロース粉末を、N−メチルモルホリン N−オキシドと蒸留水からなる混合溶媒に溶解させ、濃度9wt%の溶液を調製した。このセルロース溶液を、実施例1と同様に電解紡糸することによって、セルロースナノファイバー不織布を得た。
セルロースナノファイバー不織布を、窒素気流下1500℃にて熱処理して炭素化した。
得られたセルロース系炭素ナノファイバー不織布を空気気流下400℃にて1hr熱処理することによって、炭素表面を酸化させ、電極を得た。
非特許文献CARBON、50(2012)、1432−1434を参考に、ピッチ系炭素ナノファイバー不織布を複合紡糸法によって作製した。原料であるピッチには、三菱ケミカル株式会社製ARレジンを、マトリックスとなる樹脂には、三井化学株式会社製、ポリ−4−メチル−1−ペンテン(PMP)をそれぞれ用いた。溶融混錬したこれら2つの樹脂から、メルトブロー法によって、複合繊維の不織布を作製した。
複合繊維不織布を270℃の空気中において3hr熱処理して、複合繊維内部のピッチナノファイバーを不融化した。複合繊維不織布を窒素気流下1500℃にて熱処理することによって、ピッチナノファイバーを炭素化するとともに、マトリックスであるPMPを熱分解によって除去した。
得られたピッチ系炭素ナノファイバー不織布を、空気気流下400℃にて1hr熱処理することによって、炭素表面を酸化させ、電極を得た。
ピッチナノファイバー不織布を電解紡糸する際に、接地電極上に炭素繊維ペーパー(SGL CARBON製、SIGRACET GDL39AA)を設けたこと、合計の紡糸時間を10hrとしたこと以外は、実施例7と同様にして、炭素繊維ペーパー上に積層されたピッチ系炭素ナノファイバー不織布(電極)を作製した。
ピッチナノファイバー不織布を電解紡糸する際に、接地電極上にメラミン樹脂フォームを1500℃にて炭素化して得られる炭素フォームを設けたこと、合計の紡糸時間を10hrとしたこと以外は、実施例7と同様にして、炭素フォーム上に積層されたピッチ系炭素ナノファイバー不織布(電極)を作製した。
セルロースファイバー不織布を電解紡糸する際に、接地電極上にメラミン樹脂フォームを設けたこと、合計の紡糸時間を30hrとしたこと以外は、実施例8と同様にして、炭素フォーム上に積層されたピッチ系炭素ナノファイバー不織布(電極)を作製した。
実施例1にしたがって作製したPVA系炭素ナノファイバー不織布を、実施例10において用いた炭素繊維ペーパーに重ねることによって、炭素繊維ペーパー上に積層されたセPVA系炭素ナノファイバー不織布(電極)を作製した。
炭素繊維ペーパー(SGL CARBON製、SIGRACET GDL39AA、平均繊維径約10μm)を用いた。
ポリビニルアルコール(PVA)ナノファイバーは、株式会社メック製ナノファイバー電解紡糸装置NANON−03を用いて作製した。原料であるPVAには株式会社クラレ製ポバール(重合度1700、完全ケン化)を使用した。濃度10wt%のPVA水溶液を入れたシリンジと、150mmの間隔を隔てて設置した直径100mmの回転ドラム式接地電極との間に、23kVの電圧を印加して電解紡糸を行った。シリンジに取り付けたニードルの直径は21G、PVA水溶液の吐出速度は0.5ml/hr、接地電極の回転速度は100rpmとした。接地電極に巻き取ったPVAナノファイバーを切断して、長さ約300mmのバンドルを得た。
PVAナノファイバーバンドルは、特許3723844に記述された方法にしたがって、炭素ナノファイバーバンドルに転換した。具体的には、100℃のヨウ素蒸気雰囲気中において48hr熱処理をおこなって不融化したPVAナノファイバーバンドルを、窒素気流下1800℃にて熱処理して炭素化した。
得られたPVA系炭素ナノファイバーバンドルを細断機を用いて長さ約3mmに細断した。
細断されたPVA系炭素ナノファイバーを1wt%カルボキシメチルセルロース水溶液に分散させ、この分散液をろ紙を用いて吸引ろ過した。得られた厚さ約350μmのPVA系炭素ナノファイバーペーパをろ紙から剥がし、空気気流下500℃にて1hr熱処理することによって、炭素表面を酸化させた。
炭素化温度を1800℃から2000℃へ、酸化温度を500℃から550℃へ変更した以外は、実施例14と同じ条件で実施した。
炭素化温度を1800℃から2000℃へ、酸化温度を500℃から600℃へ変更した以外は、実施例14と同じ条件で実施した。
PVA水溶液の吐出速度を0.5ml/hrから1.0ml/hrへ、炭素化温度を1800℃から2000℃へ、酸化温度を500℃から600℃へ変更した以外は、実施例14と同じ条件で実施した。
ポリイミド系ナノファイバーはポリアミック酸(PAA)溶液を電解紡糸して作製した。PAAは以下の手順に従って調製した。まず、窒素雰囲気の三口フラスコに、脱水したN,N‘−ジメチルホルムアミド(DMF)25mlを入れ、p−フェニレンジアミン1.08gを加え溶解させた。次に、ピロメリット酸無水物2.18gを加え、室温にて4hr攪拌した。得られたPAA溶液を、多量のメタノールに投入して再沈させた後、濾別、メタノール洗浄した後、減圧乾燥した。得られたポリマーのDMF溶液の固有粘度は1.85dlg-1であった。
PAAのDMF溶液から、実施例14に従って、PAAナノファイバーバンドルを作製した。ただし、PAA溶液の濃度は15wt%、吐出速度は1.0ml/hrとした.PAAナノファイバーバンドルを、窒素気流下300℃にて1hr熱処理してポリイミド(PI)に転換した後、2000℃にて熱処理して炭素化した。
PI系炭素ナノファイバーバンドルから、実施例14に従って、酸化したPI系炭素ナノファイバーペーパを作製した。ただし、空気酸化温度は600℃とした。
炭素紙の厚さを150μmに調節し、炭素化温度を1800℃から2000℃へ、酸化温度を500℃から600℃へ変更した以外は、実施例14と同じ条件で炭素紙を作製した。得られた炭素紙を炭素繊維紙(SGL CARBON製、SIGRACET GDL39AA)に積層して用いた。
なお、レドックスフロー電池評価でセルを組み立てる際は、繊維径が細い面をNafion211面に接するようにして用いた。
炭素繊維紙(SGL CARBON製、SIGRACET GDL39AA、平均繊維径約10μm)を用いた。
寸法300×300×7mmに切り出したメラミンフォーム(BASF Co.Ltd, BASOTECT G)を北川精機社製真空プレス機(KVHC−II)で金属のスペーサーを挟んで厚み0.2mmまでプレスした。このプレスは真空減圧しながら昇温速度:5℃/分で360℃まで昇温した後、設定圧力:2.0MPaで押圧し、10分間保持してから冷却を行った。
続いて、プレスしたメラミンフォームに寸法300×300×4mmの黒鉛板1枚を載せ、熱処理炉内に投入し、真空ポンプにより炉内を減圧排気して炉内の真空度を1Pa未満とし、減圧排気しつつ炉内に窒素ガスを流量:2L/分で供給しながら、炉内の温度を昇温速度:5℃/分で800℃まで昇温した。炉内の温度が800℃に到達した時点で窒素ガスの供給を停止し、昇温速度:5℃/分で2000℃の熱処理温度まで昇温し、1時間保持して炭素化した。
続いて、炭素化したメラミンフォームと炭素繊維紙(SGL CARBON製SIGRACET GDL39AA、寸法150×150×0.38mm)をそれぞれ1L/min乾燥空気気流下で、530℃にて1時間熱処理することにより、表面を酸化させた炭素フォームと炭素繊維紙を得た。得られた炭素フォームの詳細を表3に示す。
レドックスフロー電池、空隙率、1m2あたりの重さの評価は、得られた炭素フォームと炭素繊維紙を1枚ずつ積層して電極として用いた。セルを組みあげる際は、炭素フォーム表面がNafion211面に接するようにして組み立てた。得られた評価結果を表3に示す。
メラミンフォームの寸法を300×300×14mmとし、真空プレスする際の金属スペーサーを0.4mmとした以外は、実施例20と同様に実施した。
メラミンフォームの寸法を300×300×20mmとし、真空プレスする際の金属スペーサーを0.6mmとした以外は、実施例20と同様に実施した。
メラミンフォームの寸法を300×300×4mmとし、真空プレスする際の金属スペーサーを0.4mmとし、炭素化の際の温度を1500℃とし、表面酸化処理温度を450℃とした以外は、実施例20と同様に実施した。
メラミンフォームの寸法を300×300×6mmとし、真空プレスする際の金属スペーサーを0.4mmとした以外は、実施例20と同様に実施した。
実施例21と同様に、炭素フォームと炭素繊維紙を用意した。
炭素フォームと炭素繊維紙を積層する際、AREMCO製グラフィボンド551 RNを使用して2層を接着した。グラフィボンド551 RN 100gにメタノール20gを加えよく混合した後、アプリケータを用いて炭素繊維紙の片面上に厚さ約200μmとなるように塗布した。次に、接着剤と塗布した面に炭素フォームを圧着し、130℃、4時間、続いて260℃、2時間熱処理することによって、接着剤を硬化させた。
得られた電極を用いてセルを組みあげる際は、炭素フォーム表面がNafion211面に接するようにして組み立てた。
実施例21と同様に、炭素フォームと炭素繊維紙を用意した。
炭素フォームと炭素繊維紙を積層する際、炭素繊維紙と炭素フォーム界面を気相成長炭素によって連結することによって接合した。まず、気相炭素化の触媒となるNi触媒を、スパッタを用いて炭素繊維紙の片面上に担持させた。次に、触媒担持面に炭素フォームが接するように積層し、環状炉内に挿入した。続いて、水素ガスと炭素原料ガスであるプロピレンを、流量比90/10となるように流通させ、800℃にて3時間加熱した。得られた炭素フォームと炭素繊維紙の接合体を、希硝酸、蒸留水にて順次洗浄して触媒のニッケルを除去した。接合体の断面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、炭素繊維紙の繊維表面から成長した直径がおよそ0.2μmの気相成長炭素繊維が炭素フォーム内に進入し、炭素フォームの繊維状炭素と絡み合うことによって、両者を接合している様子が確認された。
得られた電極を用いてセルを組みあげる際は、炭素フォーム表面がNafion211面に接するようにして組み立てた。
炭素繊維紙(SGL CARBON製、SIGRACET GDL39AA)を使用した。炭素繊維紙の厚みは380μm、炭素含有率は99%、平均繊維径は10μmであった。
Claims (18)
- 少なくとも一方の表面が繊維構造を有する炭素構造体からなり、前記繊維構造の平均繊維径が0.05〜6.0μmであることを特徴とする、レドックスフロー電池用電極。
- 前記平均繊維径が0.1〜6.0μmである、請求項1に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 蛍光X線分析による表面分析で測定される前記炭素構造体の酸素原子割合が、0.03〜10質量%である、請求項1又は2に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記炭素構造体が、炭素不織布、炭素紙、及び炭素フォームからなる群から選ばれる構造体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記炭素構造体が炭素不織布である、請求項1〜4の何れか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- X線光電子分光法による表面分析によって測定される、前記炭素構造体の全炭素原子数に対する黒鉛を構成する炭素原子数が占める割合が、70at%以上80at%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- X線光電子分光法による表面分析によって測定される、前記炭素構造体の全炭素原子数に対するC−OHを構成する炭素原子数が占める割合が5at%以上15at%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- X線光電子分光法による表面分析によって測定される、前記炭素構造体の全炭素原子数に対するC=Oを構成する炭素原子数が占める割合が10at%以上15at%以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- X線光電子分光法による表面分析によって測定される、前記炭素構造体の全炭素原子数に対するCOOHを構成する炭素原子数が占める割合が0.1at%以上5.0at%以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記電極の空隙率が80%〜99%である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記炭素構造体の炭素含有率が51質量%以上である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記電極の1m2当たりの重量が40g以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記炭素構造体に多孔質炭素基材が積層された、請求項1〜12のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 前記多孔質炭素基材が、炭素ペーパー、炭素フェルト、及び炭素フォームからなる群から選ばれる少なくとも1種類の多孔質炭素基材である、請求項13に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 厚みが150μm以上である、請求項1〜14のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極。
- 請求項1〜15のいずれか一項に記載のレドックスフロー電池用電極の一方の表面が双極板と接していることを特徴とする、レドックスフロー電池用セル。
- 前記双極板の少なくとも一部に流路を有する、請求項16に記載のレドックスフロー電池用セル。
- 請求項16又は17に記載のレドックスフロー電池用セルを含むことを特徴とする、レドックスフロー電池システム。
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