次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示の動力伝達装置10を搭載する車両1の概略構成図である。本開示の車両1は、後輪駆動車両であり、図1に示すように、動力伝達装置10に加えて、車両前部に縦置きに搭載されると共にガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン80や、エンジン80を制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)84等を備える。
図1に示すように、動力伝達装置10は、エンジン80のクランクシャフトCSに接続されると共にエンジン80からの動力(トルク)を左右の後輪(駆動輪)Wrに伝達可能なものである。動力伝達装置10は、トランスミッションケース(変速機構ケース、且つ、静止部材)11や、発進装置(流体伝動装置)12、オイルポンプ17、エンジン80から入力軸(入力部材)20iに伝達された動力を変速して出力軸(出力部材)20oに伝達すると共に各回転軸が車両前後方向に延びる自動変速機(変速機構)20、自動変速機20の何れかの回転部材をロックすると共にそのロックを解除するパーキングロック装置30、発進装置12や自動変速機20に作動油を供給する油圧制御装置38、発進装置12および自動変速機20(油圧制御装置38)とパーキングロック装置30とを制御する変速機用電子制御ユニット(以下、「変速機ECU」という)40等を備える。トランスミッションケース11は、発進装置12や自動変速機20、パーキングロック装置30等を収容する。
発進装置12は、エンジン80のクランクシャフトCSに連結されるフロントカバー13や、フロントカバー13に密に固定されるポンプシェルを有する入力側のポンプインペラ14p、自動変速機20の入力軸20iに連結される出力側のタービンランナ14t、ポンプインペラ14pおよびタービンランナ14tの内側に配置されてタービンランナ14tからポンプインペラ14pへの作動油(ATF)の流れを整流するステータ14s、ステータ14sの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ14o等を有するトルクコンバータ(流体伝動装置)を備える。なお、発進装置12は、ステータ14sを有さない流体継手を備えてもよい。
更に、発進装置12は、フロントカバー13と自動変速機20の入力軸20iとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するロックアップクラッチ15と、フロントカバー13と自動変速機20の入力軸20iとの間で振動を減衰するダンパ機構16とを備える。本実施形態において、ロックアップクラッチ15は、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)を有する多板摩擦式油圧クラッチとして構成される。ただし、ロックアップクラッチ15は、単板摩擦式油圧クラッチとして構成されてもよい。
オイルポンプ17は、チェーン17a等を介して発進装置12のポンプインペラ14pに連結されるロータや、複数の外歯を有すると共にロータと一体に回転する外歯ギヤ(ドライブギヤ)、外歯ギヤの外歯に噛合する外歯の総数よりも1つ多い複数の内歯を有すると共に外歯ギヤに対して偏心して配置される内歯ギヤ(ドリブンギヤ)を備える。オイルポンプ17は、チェーン17a等を介して伝達されるエンジン80からの動力により駆動され、オイルパン18に貯留されている作動油を吸引して油圧制御装置38に圧送する。
自動変速機20は、10段変速式の変速機として構成されており、図1に示すように、発進装置12のタービンランナ14tに連結される入力軸20iや、デファレンシャルギヤDFを介して左右の後輪Wrに連結される出力軸20oに加えて、自動変速機20(入力軸20iや出力軸20o)の軸方向に並べて配設されるシングルピニオン式の第1遊星歯車21および第2遊星歯車22と、ダブルピニオン式遊星歯車とシングルピニオン式遊星歯車とを組み合わせて構成される複合遊星歯車機構としてのラビニヨ式遊星歯車機構25とを備える。更に、自動変速機20は、入力軸20iから出力軸20oまでの動力伝達経路を変更するための第1係合要素としてのクラッチC1(第1クラッチ)、第2係合要素としてのクラッチC2(第2クラッチ)、第3係合要素としてのクラッチC3(第3クラッチ)、第4係合要素としてのクラッチC4(第4クラッチ)、第5係合要素としてのブレーキB1(第1ブレーキ)および第6係合要素としてのブレーキB2(第2ブレーキ)を備える。
本実施形態において、第1,第2遊星歯車21,22およびラビニヨ式遊星歯車機構25は、発進装置12すなわちエンジン80側(図1における左側)から、ラビニヨ式遊星歯車機構25、第2遊星歯車22、第1遊星歯車21という順番、即ち、ラビニヨ式遊星歯車機構25を構成するシングルピニオン式遊星歯車、ラビニヨ式遊星歯車機構25を構成するダブルピニオン式遊星歯車、第2遊星歯車22、第1遊星歯車21という順番で並ぶようにトランスミッションケース11内に配置される。これにより、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、発進装置12に近接するように車両の前部側に配置される。また、第1遊星歯車21は、出力軸20oに近接するように車両の後部側に配置される。更に、第2遊星歯車22は、入力軸20iや出力軸20o等の軸方向におけるラビニヨ式遊星歯車機構25と第1遊星歯車21との間に配置される。
第1遊星歯車21は、外歯歯車である第1サンギヤ21sと、第1サンギヤ21sと同心円上に配置される内歯歯車である第1リングギヤ21rと、それぞれ第1サンギヤ21sおよび第1リングギヤ21rに噛合する複数の第1ピニオンギヤ21pと、複数の第1ピニオンギヤ21pを自転(回転)自在かつ公転自在に保持する第1キャリヤ21cとを有する。本実施形態において、第1遊星歯車21のギヤ比λ1(第1サンギヤ21sの歯数/第1リングギヤ21rの歯数)は、例えば、λ1=0.277と定められている。
第1遊星歯車21の第1キャリヤ21cは、図1に示すように、入力軸20iに連結された自動変速機20の中間軸(インターミディエイトシャフト)20mに常時連結(固定)される。これにより、エンジン80から入力軸20iに動力が伝達されている際、第1キャリヤ21cには、エンジン80からの動力が入力軸20iおよび中間軸20mを介して常時伝達される。また、第1キャリヤ21cは、クラッチC4の係合時に第1遊星歯車21の入力要素として機能し、クラッチC4の解放時には空転する。更に、第1リングギヤ21rは、クラッチC4の係合時に第1遊星歯車21の出力要素として機能する。
第2遊星歯車22は、外歯歯車である第2サンギヤ22sと、第2サンギヤ22sと同心円上に配置される内歯歯車である第2リングギヤ22rと、それぞれ第2サンギヤ22sおよび第2リングギヤ22rに噛合する複数の第2ピニオンギヤ22pと、複数の第2ピニオンギヤ22pを自転(回転)自在かつ公転自在に保持する第2キャリヤ(プラネタリキャリヤ)22cとを有する。本実施形態において、第2遊星歯車22のギヤ比λ2(第2サンギヤ22sの歯数/第2リングギヤ22rの歯数)は、例えば、λ2=0.244と定められている。
第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sは、図1に示すように、第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sと一体化(常時連結)されており、第1サンギヤ21sと常時一体(かつ同軸)に回転または停止する。ただし、第1サンギヤ21sと第2サンギヤ22sとは、別体に構成されると共に図示しない連結部材(第1連結部材)を介して常時連結されてもよい。また、第2遊星歯車22の第2キャリヤ22cは、出力軸20oに常時連結されており、出力軸20oと常時一体(かつ同軸)に回転または停止する。これにより、第2キャリヤ22cは、第2遊星歯車22の出力要素として機能する。更に、第2遊星歯車22の第2リングギヤ22rは、第2遊星歯車22の固定可能要素として機能する。
ラビニヨ式遊星歯車機構25は、外歯歯車である第3サンギヤ23sおよび第4サンギヤ24sと、第3サンギヤ23sと同心円上に配置される内歯歯車である第3リングギヤ23rと、第3サンギヤ23sに噛合する複数の第3ピニオンギヤ(ショートピニオンギ
ヤ)23pと、第4サンギヤ24sおよび複数の第3ピニオンギヤ23pに噛合すると共に第3リングギヤ23rに噛合する複数の第4ピニオンギヤ(ロングピニオンギヤ)24pと、複数の第3ピニオンギヤ23pおよび複数の第4ピニオンギヤ24pを自転(回転)自在かつ公転自在に保持する第3キャリヤ23cとを有する。
このようなラビニヨ式遊星歯車機構25は、ダブルピニオン式遊星歯車(第3遊星歯車)とシングルピニオン式遊星歯車(第4遊星歯車)とを組み合わせて構成される複合遊星歯車機構である。すなわち、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23s、第3キャリヤ23c、第3および第4ピニオンギヤ23p,24p、並びに第3リングギヤ23rは、ダブルピニオン式の第3遊星歯車を構成する。更に、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第4サンギヤ24s、第3キャリヤ23c、第4ピニオンギヤ24p、および第3リングギヤ23rは、シングルピニオン式の第4遊星歯車を構成する。そして、本実施形態において、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、ダブルピニオン式の第3遊星歯車のギヤ比λ3(第3サンギヤ23sの歯数/第3リングギヤ23rの歯数)が、例えば、λ3=0.488となり、かつシングルピニオン式の第4遊星歯車のギヤ比λ4(第4サンギヤ24sの歯数/第3リングギヤ23rの歯数)が、例えば、λ4=0.581となるように構成される。
また、ラビニヨ式遊星歯車機構25(第3,第4遊星歯車)を構成する回転要素のうち、第4サンギヤ24sは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の固定可能要素(自動変速機20の第2固定可能要素)として機能する。更に、第3キャリヤ23cは、図1に示すように、入力軸20iに常時連結(固定)されると共に、連結部材(第2連結部材)としての中間軸20mを介して第1遊星歯車21の第1キャリヤ21cに常時連結される。これにより、エンジン80から入力軸20iに動力が伝達されている際、第3キャリヤ23cには、エンジン80からの動力が入力軸20iを介して常時伝達されることになる。従って、第3キャリヤ23cは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の入力要素として機能する。また、第3リングギヤ23rは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1出力要素として機能し、第3サンギヤ23sは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第2出力要素として機能する。
クラッチC1は、常時連結された第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1出力要素である第3リングギヤ23rとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、常時連結された第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2出力要素である第3サンギヤ23sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC3は、第2遊星歯車22の第2リングギヤ22rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1出力要素である第3リングギヤ23rとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC4は、第1遊星歯車21の出力要素である第1リングギヤ21rと出力軸20oとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
ブレーキB1は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の固定可能要素である第4サンギヤ24sを静止部材としてのトランスミッションケース11に対して回転不能に固定(接続)すると共に第4サンギヤ24sをトランスミッションケース11に対して回転自在に解放するものである。ブレーキB2は、第2遊星歯車22の固定可能要素である第2リングギヤ22rをトランスミッションケース11に対して回転不能に固定(接続)すると共に第2リングギヤ22rを静止部材としてのトランスミッションケース11に対して回転自在に解放するものである。
本実施形態では、クラッチC1〜C4として、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、それぞれ作動油が供給される係合油室および遠心油圧キャンセル室等により構成される油圧サーボを有する多板摩擦式油圧クラッチ(摩擦係合要素)が採用される。また、ブレーキB1,B2としては、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、作動油が供給される係合油室等により構成される油圧サーボを有する多板摩擦式油圧ブレーキが採用される。そして、クラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2は、油圧制御装置38により作動油が給排されることで動作する。
図2に自動変速機20の各変速段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2の作動状態との関係を表した作動表を示し、図3に自動変速機20における入力軸20iの回転速度(入力回転速度)に対する各回転要素の回転速度の比を示す速度線図を示す。自動変速機20は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2を図2の作動表に示す状態とすることにより、第1速段から第10速段までの前進段と後進段とを提供する。
図3に示すように、第1,第2遊星歯車21,22およびラビニヨ式遊星歯車機構25の10個の回転要素(ただし、第1サンギヤ21sと第2サンギヤ22sとが常時連結されているため、実質的には合計9個の回転要素)は、これらのギヤ比λ1,λ2,λ3,λ4に応じた間隔をおいて図3における左側から図示される順番で並ぶ。このような速度線図上での並び順に従い、本実施形態では、第1サンギヤ21sを自動変速機20の第1回転要素とし、第1キャリヤ21cを自動変速機20の第2回転要素とし、第1リングギヤ21rを自動変速機20の第3回転要素とする。また、第2サンギヤ22sを自動変速機20の第4回転要素とし、第2キャリヤ22cを自動変速機20の第5回転要素とし、第2リングギヤ22rを自動変速機20の第4回転要素とする。更に、第4サンギヤ24sを自動変速機20の第7回転要素とし、第3キャリヤ23cを自動変速機20の第8回転要素とし、第3リングギヤ23rを自動変速機20の第9回転要素とし、第3サンギヤ23sを自動変速機20の第10回転要素とする。
なお、第1,第2遊星歯車21,22および第3,第4遊星歯車のギヤ比λ1〜λ4は、上述の値に限定されない。また、自動変速機20において、クラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2のうちの少なくとも何れかは、ドグクラッチあるいはドグブレーキといった噛み合い係合要素とされてもよい。例えば、自動変速機20では、前進第1速段から前進第4速段の形成に際して連続して係合されると共に、後進段の形成に際して係合されるブレーキB2として、ドグブレーキが採用されてもよい。更に、自動変速機20において、第1,第2遊星歯車21,22のうちの少なくとも何れかは、ダブルピニオン式の遊星歯車であってもよく、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、例えばシンプソン型やCR−CR型といった複合遊星歯車機構に置き換えられてもよい。
図4は、エンジン80および動力伝達装置10の外観図(動力伝達装置10の側方(車両左方)から見た側面図)であり、図5は、動力伝達装置10の一部の上面図であり、図6は、動力伝達装置10の一部の断面図であり、図7は、図6のA−A断面図である。なお、図7において、変速機ECU40内の断面については図示を省略した。
図7に示すように、エンジン80の排気管82および動力伝達装置10は、フロアパネル90に対して車両下方に配置される。具体的には、動力伝達装置10(トランスミッションケース11、自動変速機20、電子制御ユニット40等)は、フロアパネル90により形成されるフロアトンネル91内に配置される。図4〜図7に示すように、トランスミッションケース11は、車両1に搭載され、その前端がエンジン80のエンジン本体81に締結される。図4および図7に示すように、エンジン80の2つの排気管82は、トランスミッションケース11に対して車両側方(車両右側および車両左側)で自動変速機20の軸方向に沿って(車両前後方向に)延びるように配置される。なお、エンジン80の排気管82は、2つに限定されるものではなく、1つであってもよい。
パーキングロック装置30は、図1に示すように、自動変速機20の出力軸20oおよび第2遊星歯車22の第2キャリヤ22cをロックすると共にそのロックを解除するものである。このパーキングロック装置30は、図6および図7に示すように、自動変速機20の出力軸20oと一体に回転するパーキングロックギヤ31や、パーキングロックギヤ31と係合可能なパーキングポール32、パーキングポール32をトランスミッションケース11に対して回動自在に支持するパーキングピボットピン33、パーキングロックカム34、パーキングブラケット35等を有する。これらは、何れも周知の構成を有する。
トランスミッションケース11は、アルミニウムを素材としたアルミダイキャストにより鋳造される。図4〜図6に示すように、トランスミッションケース11は、エンジン80に近い側(車両前方)から遠い側(車両後方)に向かうにつれて縮径しながら延びる筒状の筒状部110と、筒状部110の内周から径方向内側に延出されると共に図示しない軸受等を介して自動変速機20の出力軸20oを回転自在に支持する出力軸支持部111と、筒状部110の上面から動力伝達装置10の上方(図4,図6の上側)に延出される4個のボス部112a〜112dと、パーキングピボットピン33を支持するピン支持部115とを有する。
図6に示すように、筒状部110の内側のうち出力軸支持部111よりもエンジン80に近い側(車両前方)に、自動変速機20における出力軸20o以外の要素やパーキングロック装置30等が配置され、自動変速機20の出力軸20oは、出力軸支持部111により回転自在に支持されると共に車両前後方向に延びる。なお、筒状部110の内側のうち出力軸支持部111よりもエンジン80に近い側(車両前方)において、発進装置12や自動変速機20の各回転要素に潤滑・冷却用に作動油が供給されると共にこれらの各係合要素に係合・解放用に作動油が供給される。
また、筒状部110の内周のうち出力軸支持部111よりもエンジン80に近い側(車両前方)には、ブレーキB2の摩擦係合プレートがスプライン嵌合されるスプライン部116が切削加工により形成される(図6中、二点鎖線で囲んだ領域参照)。
図5および図6に示すように、ボス部112a,112bは、筒状部110の上面のうち出力軸支持部111やピン支持部115(パーキングピボットピン33)よりもエンジン80に近い側(車両前方)で且つスプライン部116よりもエンジン80から遠い側(車両後方)に、互いに自動変速機20の軸方向に直交する直交方向(車両左右方向)に間隔をおいて形成される。ボス部112c,112dは、筒状部110の上面のうち出力軸支持部111やピン支持部115(パーキングピボットピン33)よりもエンジン80から遠い側(車両後方)に、互いに自動変速機20の軸方向に直交する直交方向(車両左右方向)に間隔をおいて形成される。ボス部112a,112cは、互いに自動変速機20の軸方向に沿って(車両前後方向に)間隔をおいて形成され、ボス部112b,112dは、互いに自動変速機20の軸方向に沿って(車両前後方向に)間隔をおいて形成される。
ボス部112a〜112dには、それぞれ、ボルト55a〜55dにより変速機ECU40をトランスミッションケース11に固定するためのボルト孔113a〜113dが形成される。ボス部112a,112bに形成されるボルト孔113a,113bは、ボス部112a,112bの先端(上端)から筒状部110の内周側に貫通しないようにドリル等により穿設される。この際には、トランスミッションケース11の鋳造の際に鋳巣が生じ得ることを考慮してマージンが設けられる。これにより、トランスミッションケース11の内外が連通しないようにし、トランスミッションケース11内の作動油がトランスミッションケース11外に漏れないようにすることができる。ボス部112c,112dに形成されるボルト孔113c,113dは、ボス部112c、112dの先端(上端)から筒状部110の内周側に貫通するようにドリル等により穿設される。ボス部112c,112dは、上述したように、出力軸支持部111よりもエンジン80から遠い側(車両後方)に形成されるから、基本的に、筒状部110の内側に作動油が供給されない。このため、ボルト孔113c,113dは、トランスミッションケース11の内外を連通させてもよいのである。
図4および図6に示すように、トランスミッションケース11のエンジン80から遠い側の端部(後端部)には、エクステンションハウジング86がボルトにより締結(固定)される。このエクステンションハウジング86は、トランスミッションケース11と同様にアルミダイキャストにより鋳造される。
図5および6に示すように、変速機ECU40は、マイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という)や各種素子など発熱する発熱部品41と、発熱部品41が取り付けられた基板42と、基板42等を収容するケース本体43と、変速機ECU40(ケース本体43)をトランスミッションケース11に締結するための4個の締結部53a〜53dとを備える。マイコンは、CPUやROM、RAM、入出力ポート等を有する。ケース本体43は、動力伝達装置10の上方から見て矩形状に形成され、第1本体構成部44と、第1本体構成部44とボルト等により締結(固定)される第2本体構成部49とを有する。変速機ECU40は、トランスミッションケース11の上面に、第1本体構成部44がトランスミッションケース11に近い側(車両下側)、第2本体構成部49がトランスミッションケース11から遠い側(車両上側)となるように固定される。
第1本体構成部44は、アルミニウムなどの金属や樹脂により形成されている。この第1本体構成部44は、矩形状の底部45と、底部45の外周から立ち上がる側壁部46とを有し、開口するように形成される。側壁部46は、矩形状の底部45の短辺側の部分から立ち上がる2つの短辺側側壁部と、長辺側の部分から立ち上がる2つの長辺側側壁部とを有する。
第2本体構成部49は、アルミニウムなどの熱伝導性の比較的高い材料により形成されている。この第2本体構成部49は、第1本体構成部44の開口を覆うための矩形状の矩形部50と、矩形部50の基板42側(第1本体構成部44の底部45側)の面から延出される放熱台座51とを有する。また、基板42の発熱部品41が取り付けられた側とは反対側の面(図6における上面)と第2本体構成部49の放熱台座51とは、放熱材52を介して接続される。なお、放熱台座51は、矩形部50とは別体に形成され、矩形部50に取り付けられてもよい。また、放熱台座51と基板42とは、放熱材52を介さずに直接に接続(接触)されてもよい。
締結部53a〜53dは、アルミニウムなどの金属や樹脂により、第1本体構成部44と一体に形成されている。締結部53a〜53dは、第1本体構成部44の側壁部46から延出され、トランスミッションケース11との締結用の孔54a〜54dをそれぞれ有する。締結部53a,53bは、一方の短辺側側壁部(変速機ECU40がトランスミッションケース11に固定される際にエンジン80に近い側(車両前側)となる側壁部)から延出されてその短辺側側壁部から離間するように延びる。締結部53c,53dは、他方の短辺側側壁部(変速機ECU40がトランスミッションケース11に固定される際にエンジン80から遠い側(車両後側)となる側壁部)から延出されてその短辺側側壁部から離間するように延びる。締結部53a〜53dは、変速機ECU40がトランスミッションケース11に固定される際に、孔54a〜54dがボス部112a〜112dのボルト孔113a〜113dと整合するように形成される。なお、締結部53a〜53dは、第2本体構成部49と一体に形成されるものとしてもよいし、第1本体構成部44および第2本体構成部49とは別体に形成されて第1本体構成部44および/または第2本体構成部49に取り付けられるものとしてもよい。
図4〜図6に示すように、変速機ECU40は、自動変速機20の軸方向に直交する直交方向(車両左右方向)がケース本体43の短手方向となるように配置され、トランスミッションケース11のボス部112a〜112dのボルト孔113a〜113dと、第1本体構成部44の締結部53a〜53dの孔54a〜54dと、がそれぞれ整合している状態でボルト55a〜55dがそれぞれ孔54a〜54dに挿通されてボルト孔113a〜113dと螺合することにより、トランスミッションケース11の上面に固定される。このとき、締結部53a〜53dは、ケース本体43に対して自動変速機20の軸方向(車両前後方向)に位置する。
本実施形態の動力伝達装置10では、図4〜図7に示すように、変速機ECU40が、動力伝達装置10の上方から見て自動変速機20と少なくとも一部が重なる位置でトランスミッションケース11の上面に固定される。「変速機ECU40がトランスミッションケース11の上面に固定される」とは、実施形態では、図5や図7に示すように、動力伝達装置10の上方や前方(エンジン80側)から見て変速機ECU40がトランスミッションケース11の筒状部110の車両左右方向における端部から車両左右方向に突出せずに、且つ、図4や図6に示すように、動力伝達装置10の側方から見て変速機ECU40がトランスミッションケース11の筒状部110よりも上方に位置するように、変速機ECU40がトランスミッションケース11に固定されることをいう。
このように、変速機ECU40がトランスミッションケース11の上面に固定されることにより、変速機ECU40がトランスミッションケース11の側面に固定される比較形態に比して、変速機ケースの下面から見て変速機ECU40がトランスミッションケース11の陰に隠れやすくなるから、飛石等に対して変速機ECU40をより保護することができる。また、比較形態では、変速機ECU40を飛石等からある程度保護するためには、特開2004−9884号公報のように、エンジン80の排気管82のレイアウト(排気管82がトランスミッションケース11に対して車両右側および車両左側のうちの何れに配置されるか)に応じて変速機ECU40の固定位置(トランスミッションケース11の右側面または左側面)を定める必要があり、作業性や生産性に課題が生じる。これに対して、実施形態では、エンジン80の排気管82のレイアウトを考慮する必要がないから、作業性や生産性を良好にすることができる。さらに、実施形態では、比較形態に比して、変速機ECU40とエンジン80の排気管82との距離を長くすることができるから、変速機ECU40がエンジン80の排気管82からの輻射熱の影響を受けるのをより抑制することができる。
また、本実施形態の動力伝達装置10では、図5に示すように、変速機ECU40が、その短手方向が自動変速機20の軸方向に直交する直交方向(車両左右方向)となるようにトランスミッションケース11の上面に固定される。これにより、変速機ECU40がその長手方向が車両左右方向となるようにトランスミッションケース11の上面に固定されるものに比して、変速機ケースの下面やエンジン80の排気管82から見て変速機ECU40がトランスミッションケース11の陰により十分に隠れやすくなるから、飛石等に対して変速機ECU40をより十分に保護することができると共に変速機ECU40がエンジン80の排気管82からの熱の影響を直接に受けるのをより十分に抑制することができる。
さらに、本実施形態の動力伝達装置10では、図4〜図6に示すように、変速機ECU40において、締結部53a〜53dがケース本体43に対して自動変速機20の軸方向(車両前後方向)に位置する。変速機ECU40がトランスミッションケース11の筒状部110の上面に固定されることから、このようにすることにより、締結部53a〜53dがケース本体43に対して自動変速機20の軸方向に直交する直交方向(車両左右方向)に位置するものに比して、筒状部110の外周におけるボス部112a〜112dが形成される位置と締結部53a〜53dとの距離を短くすることができ、ボス部112a〜112dの長さを短くすることができる。
本実施形態の動力伝達装置10では、図4〜図6に示すように、変速機ECU40の一部が、動力伝達装置10の上方から見て自動変速機20の後端部(エンジン80から遠い側の端部)と重なる。これにより、変速機ECU40が動力伝達装置10の上方から見て自動変速機20の前端部(エンジン80に近い側の端部)や中央部と重なるものに比して、変速機ECU40とエンジン80本体(燃焼室)との距離を長くすることができ、変速機ECU40がエンジン80本体からの輻射熱の影響を受けるのを抑制することができる。
本実施形態の動力伝達装置10では、図5および図6に示すように、トランスミッションケース11のボス部112a,112b(ボルト孔113a,113b)が出力軸支持部111やピン支持部115およびパーキングピボットピン33よりも自動変速機20の軸方向におけるエンジン80に近い側(車両前方)に形成されると共に、ボス部112c,112d(ボルト孔113c,113d)が出力軸支持部111よりも自動変速機20の軸方向におけるエンジン80から遠い側(車両後方)に形成される。これにより、変速機ECU40の少なくとも一部が、自動変速機20の軸方向に直交する直交方向から見て自動変速機20の軸方向に(車両上下方向から見て車両前後方向に)トランスミッションケース11の出力軸支持部111やピン支持部115およびパーキングピボットピン33と重なる。
坂路での駐車時(パーキングロック装置30のパーキングロックギヤ31とパーキングポール32との噛合時)には、車重の分力(路面に沿った方向の力)によるトルクが後輪Wrに作用して自動変速機20の出力軸20o、パーキングロックギヤ31、パーキングポール32、パーキングピボットピン33を介してトランスミッションケース11のピン支持部115に伝達され、トランスミッションケース11がピン支持部115と車両前端(エンジン80との締結部)との間でトランスミッションケース11の周方向に捩れ得る。変速機ECU40が自動変速機20の軸方向に直交する直交方向から見て自動変速機20の軸方向に(車両上下方向から見て車両前後方向に)ピン支持部115と重ならない場合、筒状部110の延在方向(車両前後方向)における両者の距離が比較的長いから、トランスミッションケース11の捩れによるボス部112a〜112dの位置関係の変化が比較的大きくなり、変速機ECU40にトランスミッションケース11の周方向および車両前後方向の合成力(変速機ECU40に対する捻りの力)が作用し、変速機ECU40を変形させようとし得る。これに対して、変速機ECU40の少なくとも一部が自動変速機20の軸方向に直交する直交方向から見て自動変速機20の軸方向に(車両上下方向から見て車両前後方向に)ピン支持部115(パーキングピボットピン33)と重なる場合、筒状部110の延在方向(車両前後方向)における両者の距離が比較的短いから、トランスミッションケース11の捩れが生じても、ボス部112a〜112dの位置関係はそれほど変化せずに、変速機ECU40にはトランスミッションケース11の略周方向の力が作用する。これにより、変速機ECU40の変形を抑制することができる。この結果、変速機ECU40の寿命の向上を図ることができる。
トランスミッションケース11の筒状部110の出力軸支持部111との連続部分は、筒状部110のそれ以外の部分に比して強度が高いから、変速機ECU40の少なくとも一部が自動変速機20の軸方向に直交する直交方向から見て自動変速機20の軸方向に(車両上下方向から見て車両前後方向に)トランスミッションケース11の出力軸支持部111と重なることにより、重ならないものに比して、トランスミッションケース11から変速機ECU40に変形させようとする力が作用するのを抑制することができる。この結果、変速機ECU40の寿命の向上を図ることができる。
本実施形態の動力伝達装置10では、図6に示すように、トランスミッションケース11のボス部112c,112dが出力軸支持部111よりも自動変速機20の軸方向におけるエンジン80から遠い側(車両後方)に形成され、ボルト孔113c,113dがトランスミッションケース11の内外が連通するように形成される。これにより、ボルト孔113c,113dがトランスミッションケース11の内外が連通しないように形成されるものに比して、ボルト孔113c,113dの長さ(ボルト55c,55dとの螺合部分の長さ)を確保しつつ、ボス部112c,112dの長さを短くすることができる。
本実施形態の動力伝達装置10では、図6に示すように、トランスミッションケース11のボス部112a,112bが自動変速機20の軸方向に直交する直交方向から見て自動変速機20の軸方向に(車両上下方向から見て車両前後方向に)スプライン部116(筒状部110の内周が切削加工されている部分)とは重ならない位置に形成される。これにより、ボス部112a,112bがスプライン部116と重なるものに比して、トランスミッションケース11の鋳造の際に鋳巣が生じても、トランスミッションケース11の内外が連通するのを抑制することができる。この結果、トランスミッションケース11内の作動油がトランスミッションケース11外に漏れるのを抑制することができる。
本実施形態の動力伝達装置10では、図4〜図6に示すように、変速機ECU40は、第1本体構成部44がトランスミッションケース11側となるようにトランスミッションケース11に固定される。そして、発熱部品41が取り付けられた基板42は、放熱材52を介して或いは直接に第2本体構成部49(放熱台座51)に接続され、互いに接触する。これにより、発熱部品41からの熱が第2本体構成部49(トランスミッションケース11から遠い側の部材)に伝達されるから、発熱部品41からの熱が第1本体構成部44(トランスミッションケース11に近い側の部材)に伝達されるものに比して、トランスミッションケース11の外面に沿って車両前方から車両後方に流れる空気(車両1の走行の際に車内に導入される空気)との熱交換により、発熱部品41を効率よく冷却することができる。第2本体構成部49の熱伝導性が第1本体構成部44の熱伝導性よりも高い場合、例えば、第2本体構成部49がアルミニウムなどの熱伝導性の比較的高い材料により形成されると共に第1本体構成部44が樹脂などの熱伝導性のそれほど高くない材料により形成される場合、こうした効果はより顕著なものとなる。
上述の実施形態では、変速機ECU40が、その短手方向が自動変速機20の軸方向に直交する直交方向(車両左右方向)となるようにトランスミッションケース11の上面に固定されるものとしたが、その長手方向が車両左右方向となるようにトランスミッションケース11の上面に固定されるものとしてもよい。
上述の実施形態では、変速機ECU40において、締結部53a〜53dがケース本体43に対して自動変速機20の軸方向(車両前後方向)に位置するものとしたが、自動変速機20の軸方向に直交する直交方向(車両左右方向)に位置するものとしてもよい。
上述の実施形態では、トランスミッションケース11が4個のボス部112a〜112dを有すると共に変速機ECU40が4個の締結部53a〜53dを有するものとしたが、ボス部および締結部の数は、4個に限定されるものではない。
上述の実施形態では、変速機ECU40の一部が動力伝達装置10の上方から見て自動変速機20の後端部(エンジン80から遠い側の端部)と重なるものとしたが、変速機ECU40全体が動力伝達装置10の上方から見て自動変速機20の後端部と重なるものとしてもよい。また、変速機ECU40が動力伝達装置10の上方から見て自動変速機20の前端部(エンジン80に近い側の端部)や中央部と重なるものとしてもよい。
上述の実施形態では、変速機ECU40の少なくとも一部が、自動変速機20の軸方向に直交する直交方向から見て自動変速機20の軸方向に(車両上下方向から見て車両前後方向に)、トランスミッションケース11のピン支持部115およびパーキングロック装置30のパーキングピボットピン33と重なるものとしたが、ピン支持部115およびパーキングピボットピン33のうちの一方とだけ重なるものとしてもよいし、ピン支持部115およびパーキングピボットピン33の何れとも重ならないものとしてもよい。
上述の実施形態では、変速機ECU40の少なくとも一部が、自動変速機20の軸方向に直交する直交方向から見て自動変速機20の軸方向に(車両上下方向から見て車両前後方向に)、トランスミッションケース11の出力軸支持部111と重なるものとしたが、筒状部110の内周から延出されると共に自動変速機20の出力軸20o以外の何れかの回転部材を回転自在に支持する支持部と重なるものとしてもよいし、これらとは重ならないものとしてもよい。
上述の実施形態では、トランスミッションケース11のボス部112c,112dが出力軸支持部111よりも自動変速機20の軸方向におけるエンジン80から遠い側(車両後方)に形成され、ボルト孔113c,113dがトランスミッションケース11の内外が連通するように形成されるものとした。しかし、ボス部112c,112dが出力軸支持部111よりも車両後方に形成され且つボルト孔113c,113dがトランスミッションケース11の内外が連通しないように形成されるものとしてもよい。また、ボス部112c,112dが出力軸支持部111よりも車両前方に形成され且つボルト孔113c,113dがトランスミッションケース11の内外が連通しないように形成されるものとしてもよい。
上述の実施形態では、トランスミッションケース11のボス部112a,112bが自動変速機20の軸方向に直交する直交方向から見て自動変速機20の軸方向に(車両上下方向から見て車両前後方向に)スプライン部116とは重ならない位置に形成されるものとしたが、重なる位置に形成されるものとしてもよい。
上述の実施形態では、変速機ECU40は、発熱部品41からの熱が第2本体構成部49(トランスミッションケース11から遠い側の部材)に伝達されるように構成されるものとしたが、第1本体構成部44(トランスミッションケース11に近い側の部材)に伝達されるように構成されるものとしてもよい。この場合、第1本体構成部44と第2本体構成部49とは、同一材料により形成されるものとしてもよいし、第1本体構成部44が第2本体構成部49よりも高い熱伝導性を有する材料により形成されるものとしてもよい。
上述の実施形態では、動力伝達装置10は、後輪駆動車両に搭載されるものとしたが、トランスミッションケース11の車両後端にエクステンションハウジング86に代えてトランスファーが締結(固定)され、トランスファーにより自動変速機20の出力軸20oの動力が後輪Wrと前輪とに分配される四輪駆動車両に搭載されるものとしてもよい。この場合、図8に示すように、トランスファーと前輪とを連結するフロントプロペラシャフト88が、オイルパン18とエンジン80の排気管82との車両左右方向における間で車両前後方向に延びるように配置されるものとしてもよい。
上述の実施形態では、動力伝達装置10は、後輪駆動車両に搭載されるものとしたが、自動変速機20の各回転軸が車両前後方向に延びると共に自動変速機20の少なくとも一部がフロアトンネル91内に位置するものであれば、前輪駆動車両に搭載されるものとしてもよい。
以上説明したように、本開示の動力伝達装置は、車両前部に搭載されるエンジン(80)から入力部材(20i)に伝達される動力を変速して出力部材(20o)に伝達すると共に各回転軸が車両前後方向に延びる変速機構(20)と、前記変速機構(20)を収容する変速機構ケース(11)と、前記変速機構(20)を制御する電子制御ユニット(40)とを備え、前記変速機構(20)の少なくとも一部が車両(1)のフロアトンネル(91)内に位置する動力伝達装置(10)であって、前記電子制御ユニット(40)は、前記動力伝達装置(10)の上方から見て前記変速機構(20)と少なくとも一部が重なる位置で前記変速機構ケース(11)の上面に固定されることを要旨とする。
この本開示の動力伝達装置では、車両前部に搭載されるエンジンから入力部材に伝達される動力を変速して出力部材に伝達すると共に各回転軸が車両前後方向に延びる変速機構と、変速機構を収容する変速機構ケースと、変速機構を制御する電子制御ユニットとを備え、変速機構の少なくとも一部が車両のフロアトンネル内に位置されるものにおいて、電子制御ユニットは、動力伝達装置の上方から見て変速機構と少なくとも一部が重なる位置で変速機構ケースの上面に固定される。したがって、電子制御ユニットが変速機構ケースの上面に固定されるから、変速機構ケースの側面に固定されるものに比して、変速機ケースの下面から見て電子制御ユニットが変速機構ケースの陰に隠れやすくなる。これにより、飛石等に対して電子制御ユニットをより保護することができる。
本開示の動力伝達装置において、前記電子制御ユニット(40)は、前記動力伝達装置(10)の上方から見て矩形状に形成され、前記変速機構(20)の軸方向に直交する直交方向が前記矩形状の短手方向となるように前記変速機構ケース(11)の上面に固定されるものとしてもよい。こうすれば、電子制御ユニットがその矩形状の長手方向が車両左右方向となるように変速機構ケースに固定されるものに比して、変速機ケースの下面から見て電子制御ユニットが変速機構ケースの陰により十分に隠れやすくなる。これにより、飛石等に対して電子制御ユニットをより十分に保護することができる。
本開示の動力伝達装置において、前記変速機構ケース(11)は、筒状の筒状部(110)と、前記筒状部(110)の上面から延出される所定数のボス部(112a〜112d)とを有し、前記電子制御ユニット(40)は、ケース本体(43)と、前記ケース本体(43)と一体の前記所定数の締結部(53a〜53d)とを有し、前記所定数のボス部(112a〜112d)と前記所定数の締結部(53a〜53d)との前記所定数のボルト(55a〜55d)による締結により前記変速機構ケース(11)に固定され、前記所定数の締結部(53a〜53d)は、前記ケース本体(43)に対して前記変速機構(20)の軸方向に位置するものとしてもよい。こうすれば、所定数の締結部がケース本体に対して車両左右方向に位置するものに比して、所定数の締結部と変速機構ケースの外周におけるボスが形成される位置との距離を短くすることができるから、所定数のボス部の長さを短くすることができる。
本開示の動力伝達装置において、前記電子制御ユニット(40)の少なくとも一部は、前記変速機構(20)の軸方向に直交する直交方向から見て前記変速機構(20)の前記エンジン(80)から遠い側の端部と重なるものとしてもよい。こうすれば、電子制御ユニットが変速機構のエンジン側の端部や中央部と重なるものに比して、電子制御ユニットとエンジン本体との距離を長くすることができる。この結果、電子制御ユニットがエンジン本体からの輻射熱の影響を受けるのを抑制することができる。
本開示の動力伝達装置において、前記変速機構ケース(11)に収容され、前記変速機(20)の何れかの回転部材をロックすると共にそのロックを解除するパーキングロック装置(30)を備え、前記電子制御ユニット(40)の少なくとも一部は、前記変速機構(20)の軸方向に直交する直交方向から見て前記軸方向に前記パーキングロック装置(30)と重なるものとしてもよい。こうすれば、坂路での駐車時に、タイヤからパーキングロック装置および変速機構ケースを介して電子制御ユニットに変形させようとする力が作用するのを抑制し、電子制御ユニットの変形を抑制することができる。
この場合、前記パーキングロック装置(30)は、前記何れかの回転部材と一体に回転するパーキングロックギヤ(31)と、前記パーキングロックギヤ(31)と係合可能なパーキングポール(32)と、前記パーキングポール(32)を前記変速機構ケース(11)に対して回動自在に支持するパーキングピボットピン(33)とを有し、前記変速機構ケース(11)は、前記パーキングピボットピン(33)を支持するピン支持部(115)を有し、前記電子制御ユニット(40)の少なくとも一部は、前記直交方向から見て前記軸方向に前記パーキングピボットピン(33)および/または前記ピン支持部(115)と重なるものとしてもよい。
本開示の動力伝達装置において、前記変速機構ケース(11)は、筒状の筒状部(110)と、前記筒状部(110)の内周から径方向内側に延出されると共に前記変速機構(20)の何れかの回転部材を回転自在に支持する回転部材支持部(111)とを有し、前記電子制御ユニット(40)の少なくとも一部は、前記変速機構(20)の軸方向に直交する直交方向から見て前記軸方向に前記回転部材支持部(111)と重なるものとしてもよい。筒状部の回転部材支持部との連続部分は、筒状部のそれ以外の部分に比して強度が高いから、このようにすることにより、変速機構ケースから電子制御ユニットに変形させようとする力が作用するのを抑制することができる。
この場合、前記回転部材支持部(111)は、前記出力部材(20o)を回転自在に支持するものとしてもよい。変速機の出力部材は、変速機の他の部材(例えば、入力部材など)に比して車両後方に配置されるから、電子制御ユニットを比較的車両後方に配置することになる。したがって、電子制御ユニットとエンジン本体との距離を長くすることができる。この結果、電子制御ユニットがエンジン本体からの輻射熱の影響を受けるのを抑制することができる。
変速機構ケースの回転部材支持部が出力部材を支持する態様の本開示の動力伝達装置において、前記変速機構ケース(11)は、筒状の筒状部(110)と、前記筒状部(110)の上面から延出されると共にそれぞれ第1孔(113a〜113d)を有する所定数のボス部(112a〜112d)とを有し、前記電子制御ユニット(40)は、ケース本体(43)と、前記ケース本体(43)と一体で且つそれぞれ第2孔(54a〜54d)を有する前記所定数の締結部(53a〜53d)とを有し、前記所定数の第1孔(113a〜113d)と前記所定数の第2孔(54a〜54d)とが整合している状態で前記所定数のボルト(115a〜115d)により前記変速機構ケース(11)に固定され、前記所定数のボス部(112a〜112d)のうちの少なくとも一部は、前記筒状部(110)の上面のうち前記回転部材支持部(111)よりも前記変速機構(20)の軸方向における前記エンジン(80)から遠い側に形成され、前記回転部材支持部(111)よりも前記変速機構(20)の軸方向における前記エンジン(80)から遠い側に形成される前記ボス部(112c,112d)に形成される前記第1孔(113c,113d)は、前記変速機構ケース(11)の内外を連通するように形成されるものとしてもよい。こうすれば、変速機構ケースの回転部材支持部よりも車両後方に形成されるボス部の長さを短くすることができる。
本開示の動力伝達装置において、前記変速機構ケース(11)は、筒状の筒状部(110)と、前記筒状部(110)の上面から延出されると共にそれぞれ第1孔(113a〜113d)を有する所定数のボス部(112a〜112d)とを有し、前記電子制御ユニット(40)は、ケース本体(43)と、前記ケース本体(43)と一体で且つそれぞれ第2孔(54a〜54d)を有する前記所定数の締結部(53a〜53d)とを有し、前記所定数の第1孔(113a〜113d)と前記所定数の第2孔(54a〜54d)とが整合している状態で前記所定数のボルト(115a〜115d)により前記変速機構ケース(11)に固定され、前記第1孔(113a,113b)と前記筒状部(110)の内周が切削加工されている部分とは、前記変速機構(20)の軸方向に直交する直交方向から見て前記軸方向に重ならないものとしてもよい。こうすれば、両者が重なるものに比して、変速機構ケースの内外が連通するのを抑制することができる。この結果、変速機構ケース内の作動油が変速機構ケース外に漏れるのを抑制することができる。
この場合、前記変速機(20)は、何れかの回転部材を前記変速機構ケース(11)に対して回転不能に固定すると共にその固定を解除するブレーキ(B2)を有し、前記筒状部(110)の内周が切削加工されている部分は、前記ブレーキ(B2)における摩擦係合プレートが嵌合されるスプライン部(116)であるものとしてもよい。即ち、ボルト孔とスプライン部とが変速機構の軸方向に直交する直交方向から見て変速機構の軸方向に重ならないようにしてもよいのである。
本開示の動力伝達装置において、前記電子制御ユニット(40)は、発熱部品(41)が取り付けられた基板(42)を収容するケース本体(43)を有し、前記ケース本体(43)は、前記変速機構(20)に近い側の第1本体構成部(44)および前記変速機構(20)から遠い側の第2本体構成部(49)を有し、前記第2本体構成部(49)と前記基板(42)とは、直接にまたは放熱部材(52)を介して接触するものとしてもよい。こうすれば、発熱部品からの熱が基板(および放熱部材)を介して第2本体構成部(変速機構ケースから遠い側の部材)に伝達される。これにより、発熱部品からの熱が第1本体構成部(変速機構に近い側の部材)に伝達されるものに比して、変速機構ケースの外面に沿って車両前方から車両後方に流れる空気(車両の走行の際に車内に導入される空気)との熱交換により、発熱部品を効率よく冷却することができる。
この場合、前記第2本体構成部(49)は、前記第1本体構成部(44)よりも高い熱伝導性を有するものとしてもよい。こうすれば、発熱部品をより効率よく冷却することができる。
本開示の動力伝達装置において、前記エンジン(80)の排気管(82)が前記変速機構ケース(11)に対して側方で前記変速機構(20)の軸方向に沿って延びるように配置される車両に搭載されるものとしてもよい。こうした動力伝達装置において、上述したように、電子制御ユニットが変速機構ケースの上面に固定されることにより、変速機構ケースの側面に固定されるものに比して、電子制御ユニットとエンジンの排気管との距離を長くすることができ、電子制御ユニットがエンジンの排気管からの輻射熱の影響を受けるのを抑制することができる。
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。