JP2016148363A - クラッチおよびそれを備えた変速装置 - Google Patents

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穂 藤堂
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直也 神内
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翔太 池田
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Noriaki Ito
敬晃 伊東
卓也 中島
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卓也 中島
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Abstract

【課題】クラッチの遠心油圧キャンセル室における遠心油圧の発生径を小さくしつつ、当該クラッチの軸長の増加を抑制する。
【解決手段】クラッチC1は、それぞれドラム部材130の内筒部135の一端から環状壁部132に向けて軸方向に延びると共に内周面135isよりも径方向外側に窪むように周方向に間隔をおいて内筒部135に形成された複数の油溝135dと、それぞれ遠心油圧キャンセル室190に連通すると共に周方向に隣り合う油溝135dの間かつ内周面135isで開口する複数の油孔135cと、複数の油溝135dと複数の油孔135cとを連通させるように内周面135isと連結部材125の外周面との間に画成される連通油路139とを有し、摩擦プレート101およびセパレータプレート102には、複数の油溝135dから流出した作動油が潤滑冷却媒体として供給される。
【選択図】図4

Description

本発明は、クラッチハブ、クラッチドラム、ピストン、キャンセル室画成部材、係合油室および遠心油圧キャンセル室を含むクラッチおよびそれを備えた変速装置に関する。
従来、この種のクラッチとして、クラッチドラムと共に回転するピストンシリンダ機構を含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このクラッチでは、ピストンの背後にキャンセルプレートが配置され、ピストンとクラッチドラムの内周部とキャンセルプレートとによりキャンセル室が画成される。また、クラッチドラムの内周部には、キャンセル室とクラッチドラムのキャンセル室側とは反対側の面とに開口するキャンセル油路Cが形成されている。キャンセル油路Cは、クラッチドラムの内周部の内周面に形成されて軸方向に延びる2本の溝と当該内周部に嵌挿されるスリーブとにより画成されるキャンセル油溝Caと、スリーブに設けられてキャンセル油溝Caを入力軸に設けられたキャンセル油の供給油路Rに連通させる供給孔Cbと、クラッチドラムの内周部に設けられてキャンセル油溝Caをキャンセル室Bに連通させる給排孔Ccと、キャンセル油溝Caをクラッチドラムの背面に開口させる排出孔Cdとを含む。
特開2001−50301号公報
上記従来のクラッチでは、キャンセル室がクラッチドラムの内周部に設けられた給排孔Ccを介して排出孔Cdと連通されることから、キャンセル油溝Caの底部(キャンセル油溝Caの最外径)が、キャンセル室における遠心油圧(キャンセル油圧)の発生径(ゼロ基点、すなわち遠心油圧が発生する最内径部)となる。このため、上記従来のクラッチでは、キャンセル室における遠心油圧の発生径がクラッチドラムの内周部の内周面よりもキャンセル油溝Caの深さ分だけ径方向外側に位置することで、当該キャンセル室における遠心油圧を充分に確保し得なくなるおそれがある。一方、上記従来のクラッチにおいて、クラッチドラムの内周部の内周面をキャンセル室における遠心油圧の発生径とするために排出孔Cdを廃止することが考えられる。ただし、単に排出孔Cdを廃止すると、キャンセル室内の油がシールリング11eやブッシュ(軸受)により囲まれた供給孔Cbから排出されることになり、ピストンが動作した際のキャンセル室の排油性が悪化するおそれがある。また、キャンセル油の排油性を確保するために、キャンセル油溝Caを越えた位置にクラッチドラムの内周部の内周面で開口する排出孔を設けることが考えられるが、この場合、排出孔の開口位置までブッシュを移動させなければならず、クラッチの軸長が増加してしまう。
そこで、本発明は、クラッチの遠心油圧キャンセル室における遠心油圧の発生径を小さくしつつ、当該クラッチの軸長の増加を抑制することを主目的とする。
本発明によるクラッチは、本発明によるクラッチは、第1摩擦係合プレートが嵌合されるクラッチハブと、前記第1摩擦係合プレートと交互に並ぶように第2摩擦係合プレートが嵌合される外筒部および支持部材により回転自在に支持される内筒部を有するクラッチドラムと、前記クラッチドラムと共に係合油室を画成するように前記内筒部により支持されるピストンと、前記係合油室で発生する遠心油圧をキャンセルするための遠心油圧キャンセル室を前記ピストンと共に画成するように前記内筒部に取り付けられるキャンセル室画成部材とを含むクラッチにおいて、前記クラッチドラムの前記内筒部に周方向に間隔をおいて形成され、それぞれ前記内筒部の遊端から基端に向けて前記クラッチドラムの軸方向に延びると共に該内筒部の内周面よりも径方向外側に窪む複数の油溝と、前記支持部材と前記内筒部との間に配置され、前記複数の油溝の前記基端側の端部が径方向内側に開口するように該複数の油溝を前記遊端側で径方向内側から塞く軸受と、前記クラッチドラムの前記内筒部を径方向に貫通するように形成され、それぞれ前記遠心油圧キャンセル室に連通すると共に前記周方向に隣り合う前記油溝の間かつ前記内筒部の前記内周面で開口する複数の油孔と、前記軸受よりも前記基端側に位置するように前記内筒部の前記内周面と前記支持部材の外周面との間に画成され、前記複数の油溝と前記複数の油孔とを連通させる連通油路とを備えることを特徴とする。
このクラッチの遠心油圧キャンセル室には、クラッチドラムの内筒部と当該内筒部を支持する支持部材との間に画成される連通油路および内筒部に形成された複数の油孔を介して支持部材側から油が供給され、支持部材側からの油の一部は、内筒部と支持部材との間の連通油路を介して複数の油溝にも流入する。従って、遠心油圧キャンセル室に充分な油を供給しつつ、各油溝から適量の油を流出させて潤滑冷却対象に供給することができる。また、クラッチドラムの回転停止時等には、遠心油圧キャンセル室内の油が複数の油孔を介して支持部材側に流出すると共に、連通油路を介して複数の油溝にも流出する。そして、このクラッチでは、遠心油圧キャンセル室に連通する各油孔が周方向に隣り合う油溝の間かつ内筒部の内周面で開口する。これにより、各油孔は、内筒部の一部により両側の油溝と仕切られることから、油溝の底面ではなく、当該油溝の底面よりも径方向内側に位置する内筒部の内周面を遠心油圧キャンセル室における遠心油圧(キャンセル油圧)の発生径(ゼロ基点)とすることが可能となる。更に、各油孔を周方向に隣り合う油溝の間で開口させると共に、内筒部と支持部材との間の連通油路を介して複数の油溝と複数の油孔とを連通させることで、複数の油溝と複数の油孔との連通を許容しつつ、クラッチの軸長の増加を抑制することができる。この結果、このクラッチでは、遠心油圧キャンセル室における遠心油圧の発生径を小さくしつつ、軸長の増加を抑制することが可能となる。
本発明による変速装置を含む動力伝達装置の概略構成図である。 図1の変速装置における各変速段とクラッチおよびブレーキの作動状態との関係を示す作動表である。 図1の変速装置における入力回転速度に対する各回転要素の回転速度の比を示す速度線図である。 図1の変速装置を示す要部拡大断面図である。 図1の変速装置に含まれるドラム部材を示す要部拡大断面図である。 図1の変速装置に含まれるドラム部材を示す正面図である。 図1の変速装置に含まれるドラム部材を示す要部拡大斜視図である。
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による変速装置である自動変速機20を含む動力伝達装置10の概略構成図である。同図に示す動力伝達装置10は、後輪駆動車両の前部に縦置きに搭載される駆動源としての図示しないエンジン(内燃機関)のクランクシャフトおよび/または電気モータのロータに接続されると共にエンジン等からの動力(トルク)を図示しない左右の後輪(駆動輪)に伝達可能なものである。図示するように、動力伝達装置10は、エンジン等から入力軸(入力部材)20iに伝達された動力を変速して出力軸(出力部材)20oに伝達する自動変速機20に加えて、トランスミッションケース(静止部材)11や、発進装置(流体伝動装置)12、オイルポンプ17等を含む。
発進装置12は、図示しないドライブプレート等を介してエンジンのクランクシャフトおよび/または電気モータのロータに連結されるフロントカバー13や、当該フロントカバー13に密に固定されるポンプシェルを有する入力側のポンプインペラ14p、自動変速機20の入力軸20iに連結される出力側のタービンランナ14t、ポンプインペラ14pおよびタービンランナ14tの内側に配置されてタービンランナ14tからポンプインペラ14pへの作動油の流れを整流するステータ14s、図示しないステータシャフトにより支持されると共にステータ14sの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ14o等を有するトルクコンバータを含む。
更に、発進装置12は、エンジンのクランクシャフト等に連結されたフロントカバー13と自動変速機20の入力軸20iとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するロックアップクラッチ15と、フロントカバー13と自動変速機20の入力軸20iとの間で振動を減衰するダンパ機構16とを含む。本実施形態において、ロックアップクラッチ15は、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)を有する多板摩擦式油圧クラッチとして構成される。ただし、ロックアップクラッチ15は、単板摩擦式油圧クラッチであってもよい。また、発進装置12は、ステータ14sを有さない流体継手を含むものであってもよい。
オイルポンプ17は、ポンプボディとポンプカバーとを含むポンプアッセンブリ、チェーンまたはギヤ列を介して発進装置12のポンプインペラ14pに連結された外歯ギヤ(インナーロータ)、当該外歯ギヤに噛合する内歯ギヤ(アウターロータ)等を有するギヤポンプとして構成される。オイルポンプ17は、エンジンからの動力により駆動され、図示しないオイルパンに貯留されている作動油(ATF)を吸引して図示しない油圧制御装置へと圧送する。
自動変速機20は、10段変速式の変速機として構成されており、図1に示すように、入力軸20iや図示しないデファレンシャルギヤおよびドライブシャフトを介して左右の後輪に連結される出力軸20oに加えて、自動変速機20(入力軸20iや出力軸20o)の軸方向に並べて配設されるシングルピニオン式の第1遊星歯車21および第2遊星歯車22、ダブルピニオン式遊星歯車とシングルピニオン式遊星歯車とを組み合わせて構成される複合遊星歯車列としてのラビニヨ式遊星歯車機構25とを含む。更に、自動変速機20は、入力軸20iから出力軸20oまでの動力伝達経路を変更するための第1係合要素としてのクラッチC1(第1クラッチ)、第2係合要素としてのクラッチC2(第2クラッチ)、第3係合要素としてのクラッチC3(第3クラッチ)、第4係合要素としてのクラッチC4(第4クラッチ)、第5係合要素としてのブレーキB1(第1ブレーキ)および第6係合要素としてのブレーキB2(第2ブレーキ)を含む。
本実施形態において、第1および第2遊星歯車21,22並びにラビニヨ式遊星歯車機構25は、発進装置12すなわちエンジン側(図1における左側)から、ラビニヨ式遊星歯車機構25、第2遊星歯車22、第1遊星歯車21、すなわち、ラビニヨ式遊星歯車機構25を構成するシングルピニオン式遊星歯車、ラビニヨ式遊星歯車機構25を構成するダブルピニオン式遊星歯車、第2遊星歯車22、第1遊星歯車21という順番で並ぶようにトランスミッションケース11内に配置される。これにより、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、発進装置12に近接するように車両の前部側に配置される。また、第1遊星歯車21は、出力軸20oに近接するように車両の後部側に配置される。更に、第2遊星歯車22は、入力軸20iや出力軸20o等の軸方向におけるラビニヨ式遊星歯車機構25と第1遊星歯車21との間に配置される。
第1遊星歯車21は、外歯歯車である第1サンギヤ21sと、第1サンギヤ21sと同心円上に配置される内歯歯車である第1リングギヤ21rと、それぞれ第1サンギヤ21sおよび第1リングギヤ21rに噛合する複数の第1ピニオンギヤ21pと、複数の第1ピニオンギヤ21pを自転(回転)自在かつ公転自在に保持する第1キャリヤ21cとを有する。本実施形態において、第1遊星歯車21のギヤ比λ1(第1サンギヤ21sの歯数/第1リングギヤ21rの歯数)は、例えば、λ1=0.277と定められている。
第1遊星歯車21の第1キャリヤ21cは、図1に示すように、入力軸20iに連結された自動変速機20の中間軸(インターミディエイトシャフト)20mに常時連結(固定)される。これにより、エンジンから入力軸20iに動力が伝達されている際、第1キャリヤ21cには、エンジンからの動力が入力軸20iおよび中間軸20mを介して常時伝達される。また、第1キャリヤ21cは、クラッチC4の係合時に第1遊星歯車21の入力要素として機能し、クラッチC4の解放時には空転する。更に、第1リングギヤ21rは、クラッチC4の係合時に当該第1遊星歯車21の出力要素として機能する。
第2遊星歯車22は、外歯歯車である第2サンギヤ22sと、第2サンギヤ22sと同心円上に配置される内歯歯車である第2リングギヤ22rと、それぞれ第2サンギヤ22sおよび第2リングギヤ22rに噛合する複数の第2ピニオンギヤ22pと、複数の第2ピニオンギヤ22pを自転(回転)自在かつ公転自在に保持する第2キャリヤ(プラネタリキャリヤ)22cとを有する。本実施形態において、第2遊星歯車22のギヤ比λ2(第2サンギヤ22sの歯数/第2リングギヤ22rの歯数)は、例えば、λ2=0.244と定められている。
第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sは、図1に示すように、第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sと一体化(常時連結)されており、当該第1サンギヤ21sと常時一体(かつ同軸)に回転または停止する。ただし、第1サンギヤ21sと第2サンギヤ22sとは、別体に構成されると共に図示しない連結部材(第1連結部材)を介して常時連結されてもよい。また、第2遊星歯車22の第2キャリヤ22cは、出力軸20oに常時連結されており、当該出力軸20oと常時一体(かつ同軸)に回転または停止する。これにより、第2キャリヤ22cは、第2遊星歯車22の出力要素として機能する。更に、第2遊星歯車22の第2リングギヤ22rは、当該第2遊星歯車22の固定可能要素として機能する。
ラビニヨ式遊星歯車機構25は、外歯歯車である第3サンギヤ23sおよび第4サンギヤ24sと、第3サンギヤ23sと同心円上に配置される内歯歯車である第3リングギヤ23rと、第3サンギヤ23sに噛合する複数の第3ピニオンギヤ(ショートピニオンギヤ)23pと、第4サンギヤ24sおよび複数の第3ピニオンギヤ23pに噛合すると共に第3リングギヤ23rに噛合する複数の第4ピニオンギヤ(ロングピニオンギヤ)24pと、複数の第3ピニオンギヤ23pおよび複数の第4ピニオンギヤ24pを自転(回転)自在かつ公転自在に保持する第3キャリヤ23cとを有する。
このようなラビニヨ式遊星歯車機構25は、ダブルピニオン式遊星歯車(第3遊星歯車)とシングルピニオン式遊星歯車(第4遊星歯車)とを組み合わせて構成される複合遊星歯車列である。すなわち、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23s、第3キャリヤ23c、第3および第4ピニオンギヤ23p,24p、並びに第3リングギヤ23rは、ダブルピニオン式の第3遊星歯車を構成する。更に、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第4サンギヤ24s、第3キャリヤ23c、第4ピニオンギヤ24p、および第3リングギヤ23rは、シングルピニオン式の第4遊星歯車を構成する。本実施形態において、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、ダブルピニオン式の第3遊星歯車のギヤ比λ3(第3サンギヤ23sの歯数/第3リングギヤ23rの歯数)が、例えば、λ3=0.488となり、かつシングルピニオン式の第4遊星歯車のギヤ比λ4(第4サンギヤ24sの歯数/第3リングギヤ23rの歯数)が、例えば、λ4=0.581となるように構成される。
また、ラビニヨ式遊星歯車機構25(第3および第4遊星歯車)を構成する回転要素のうち、第4サンギヤ24sは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の固定可能要素(自動変速機20の第2固定可能要素)として機能する。更に、第3キャリヤ23cは、図1に示すように、入力軸20iに常時連結(固定)されると共に、連結部材(第2連結部材)としての中間軸20mを介して第1遊星歯車21の第1キャリヤ21cに常時連結される。これにより、エンジンから入力軸20iに動力が伝達されている際、第3キャリヤ23cには、エンジンからの動力が入力軸20iを介して常時伝達されることになる。従って、第3キャリヤ23cは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の入力要素として機能する。また、第3リングギヤ23rは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1出力要素として機能し、第3サンギヤ23sは、当該ラビニヨ式遊星歯車機構25の第2出力要素として機能する。
クラッチC1は、常時連結された第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1出力要素である第3リングギヤ23rとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、常時連結された第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2出力要素である第3サンギヤ23sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC3は、第2遊星歯車22の第2リングギヤ22rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1出力要素である第3リングギヤ23rとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC4は、第1遊星歯車21の出力要素である第1リングギヤ21rと出力軸20oとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
ブレーキB1は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の固定可能要素である第4サンギヤ24sを静止部材としてのトランスミッションケース11に対して回転不能に固定(接続)すると共に当該第4サンギヤ24sをトランスミッションケース11に対して回転自在に解放するものである。ブレーキB2は、第2遊星歯車22の固定可能要素である第2リングギヤ22rをトランスミッションケース11に対して回転不能に固定(接続)すると共に当該第2リングギヤ22rを静止部材としてのトランスミッションケース11に対して回転自在に解放するものである。
本実施形態では、クラッチC1〜C4として、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、それぞれ作動油が供給される係合油室および遠心油圧キャンセル室等により構成される油圧サーボを有する多板摩擦式油圧クラッチ(摩擦係合要素)が採用される。また、ブレーキB1およびB2としては、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、作動油が供給される係合油室等により構成される油圧サーボを有する多板摩擦式油圧ブレーキが採用される。そして、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2は、油圧制御装置により作動油が給排されることで動作する。
図2に自動変速機20の各変速段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2の作動状態との関係を表した作動表を示し、図3に自動変速機20における入力軸20iの回転速度(入力回転速度)に対する各回転要素の回転速度の比を示す速度線図を示す。自動変速機20は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2を図2の作動表に示す状態とすることで、第1速段から第10速段までの前進段と後進段とを提供する。
また、第1および第2遊星歯車21,22並びにラビニヨ式遊星歯車機構25の10個の回転要素(ただし、第1サンギヤ21sと第2サンギヤ22sとが常時連結されているので、実質的には合計9個の回転要素)は、これらのギヤ比λ1,λ2,λ3,λ4に応じた間隔をおいて図3における左側から図示される順番で並ぶ。このような速度線図上での並び順に従い、本実施形態では、第1サンギヤ21sを自動変速機20の第1回転要素とし、第1キャリヤ21cを自動変速機20の第2回転要素とし、第1リングギヤ21rを自動変速機20の第3回転要素とする。また、第2サンギヤ22sを自動変速機20の第4回転要素とし、第2キャリヤ22cを自動変速機20の第5回転要素とし、第2リングギヤ22rを自動変速機20の第4回転要素とする。更に、第4サンギヤ24sを自動変速機20の第7回転要素とし、第3キャリヤ23cを自動変速機20の第8回転要素とし、第3リングギヤ23rを自動変速機20の第9回転要素とし、第3サンギヤ23sを自動変速機20の第10回転要素とする。
なお、第1および第2遊星歯車21,22並びに第3および第4遊星歯車のギヤ比λ1〜λ4は、上述のものに限られない。また、自動変速機20において、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2の少なくとも何れかは、ドグクラッチあるいはドグブレーキといった噛み合い係合要素とされてもよい。例えば、自動変速機20では、前進第1速段から前進第4速段の形成に際して連続して係合されると共に、後進段の形成に際して係合されるブレーキB2として、ドグブレーキが採用されてもよい。更に、自動変速機20において、第1および第2遊星歯車21,22の少なくとも何れかは、ダブルピニオン式の遊星歯車であってもよく、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、例えばシンプソン型やCR−CR型といった複合遊星歯車列に置き換えられてもよい。また、上述の自動変速機20は、前輪駆動車両に搭載される変速機に改変されてもよい。
図4は、自動変速機20を示す要部拡大断面図である。同図は、自動変速機20に含まれるクラッチC1,C2およびC3の周辺の構成を示すものである。本実施形態において、クラッチC1は、第2遊星歯車22に近接するように当該第2遊星歯車22とラビニヨ式遊星歯車機構25との間に配置される。また、クラッチC2は、クラッチC1の構成部材により少なくとも一部が囲まれると共にラビニヨ式遊星歯車機構25(第3遊星歯車)に近接するように第2遊星歯車22とラビニヨ式遊星歯車機構25との間に配置される。更に、クラッチC3は、第2遊星歯車22に近接するように当該第2遊星歯車22とラビニヨ式遊星歯車機構25との間に配置される。
クラッチC1およびC2は、上述のように、第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sを共通の接続対象要素とする。このため、クラッチC1およびC2は、図4に示すように、第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sに常時連結(固定)されると共にクラッチC1のクラッチハブおよびクラッチC2のクラッチドラムとして機能するドラム部材120を共用する。また、クラッチC1は、上述のように、クラッチC3と同様にラビニヨ式遊星歯車機構25の第3リングギヤ23rを共通の接続対象要素とする。このため、クラッチC1およびC3は、第3リングギヤ23rに常時連結(固定)されると共にクラッチC1のクラッチドラムおよびクラッチC3のクラッチハブとして機能するドラム部材130を共用する。更に、クラッチC3は、上述のように、ブレーキB2と同様に第2遊星歯車22の第2リングギヤ22rを接続対象要素または固定対象要素とする。このため、クラッチC3およびブレーキB2は、クラッチC3のクラッチドラムおよびブレーキB2のブレーキハブとして機能するドラム部材360を共用する。
ドラム部材120は、例えば鋼材(鉄合金)により形成され、クラッチC1およびC2により共用される筒状部121と、筒状部121の内周面から径方向内側に延出された環状部122とを有する。筒状部121の第2遊星歯車22側(図4における右側)の半部の外周面には、スプライン121aが形成されており、筒状部121のラビニヨ式遊星歯車機構25側(図4における左側)の半部の内周面には、スプライン121bが形成されている。また、ドラム部材120は、連結部材125を介して、クラッチC1およびC2の接続対象要素である第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sに常時連結(固定)される。連結部材(支持部材)125は、例えば鋼材(鉄合金)等を鍛造することにより形成され、ラジアル軸受を介して入力軸20iにより同軸かつ回転自在に支持されるシャフト部125sと、シャフト部125sのラビニヨ式遊星歯車機構25側の端部(図4における左端部)から径方向外側に延出されると共に環状部122の内周部が溶接されるフランジ部125fとを有する。
ドラム部材130は、クラッチC1により利用される筒状の外筒部(ドラム部)131と、外筒部131から径方向内側に延出された環状壁部132と、クラッチC3により利用される筒状のハブ部133と、環状壁部132から延出された中間筒状部134と、筒状の内筒部(支持部)135とを含む。本実施形態において、外筒部131、環状壁部132、ハブ部133、中間筒状部134および内筒部135は、例えばアルミニウム合金等を鋳造することにより一体に成形される。外筒部131は、クラッチC1およびC3の接続対象要素であるラビニヨ式遊星歯車機構25の第3リングギヤ23rに常時連結(固定)される開口側端部(図4における左端部)を有する。また、外筒部131の内周面には、スプライン131sが形成されており、外筒部131(円筒部)の外周面は、凹凸を有さない円柱面状に形成されている。これにより、外筒部131の厚みを大きくすることなく、その強度を確保することが可能となる。
ドラム部材130のハブ部133は、環状壁部132から外筒部131の開口側端部とは反対側(図4における右側)に軸方向に延出され、本実施形態では、外筒部131よりも小さい外径を有する筒状に形成されている。また、ハブ部133の外周面には、スプライン133sが形成されており、当該ハブ部133の内周面は、凹凸を有さない凹円柱面状に形成されている。これにより、ハブ部133の厚みを大きくすることなく、その強度を確保することが可能となる。中間筒状部134は、ハブ部133とは反対側に向けて環状壁部132から軸方向に延出されている。
内筒部135は、本実施形態において、環状壁部132の内周部から第2遊星歯車22およびラビニヨ式遊星歯車機構25の双方に向けて軸方向に延出され、当該内筒部135と上記連結部材125の外周面との間に配置されるブッシュ(ラジアル軸受)136f,136rを介して連結部材125により回転自在に支持される。図示するように、一方のブッシュ136fは、内筒部135のラビニヨ式遊星歯車機構25側(図4における左側)の遊端部内に圧入(嵌合)され、他方のブッシュ136rは、内筒部135の第2遊星歯車22側(図4における右側)の遊端部内に圧入(嵌合)される。また、内筒部135内には、2つのブッシュ136f,136rの軸方向における間に位置するように鋼材(鉄合金)等により形成された円筒状のスリーブ137が圧入(嵌合)される。
スリーブ137は、ラビニヨ式遊星歯車機構25側のブッシュ136fと軸方向に間隔をおいて内筒部135内に圧入され、ブッシュ136fとスリーブ137との間における内筒部135の内周面(凹円柱面)135is(図5参照)よりも径方向内側に突出して連結部材125の外周面により支持される内筒部135の被支持部として機能する。更に、内筒部135の連結部材125のフランジ部125fと、内筒部135のラビニヨ式遊星歯車機構25側(図4における左側)の遊端部との間には、当該内筒部135を軸方向に支持するスラスト軸受90が配置される。スラスト軸受90は、図4に示すように、内筒部135のラビニヨ式遊星歯車機構25側の端面と当接するレース部材91を含む。
ドラム部材360は、一端(図4における左端)が開口した有底円筒状に形成されたドラム部と、クラッチC3およびブレーキB2の接続対象要素(固定対象要素)である第2遊星歯車22の第2リングギヤ22rと一体に回転する図示しないリングギヤフランジに常時連結(固定)される連結部とを含む。ドラム部材360の連結部は、当該ドラム部材360のドラム部と第2遊星歯車22との間に位置するようにトランスミッションケース11に固定されて当該トランスミッションケース11(静止部材)の一部を構成する環状のセンターサポート11c(図1参照)により径方向に支持(調心)される。
上述のドラム部材120,130を構成部材とするクラッチC1は、当該ドラム部材120,130に加えて、複数の摩擦プレート(第1摩擦係合プレート)101と、摩擦プレート101と交互に並ぶように配設される複数のセパレータプレート(第2摩擦係合プレート)102およびバッキングプレートと、摩擦プレート101およびセパレータプレート102を押圧して摩擦係合させるピストン140と、ピストン140を摩擦プレート101およびセパレータプレート102から離間するように付勢する複数のリターンスプリング(コイルバネ)SP1と、環状のキャンセルプレート(キャンセル室画成部材)170とを含む。
クラッチC1の複数の摩擦プレート101(それぞれの内周部)は、ドラム部材130の外筒部131によって包囲されるドラム部材(クラッチハブ)120の筒状部121のスプライン121aに嵌合される。これにより、複数の摩擦プレート101は、筒状部121と一体に回転すると共に軸方向に移動可能となるようにクラッチハブとして機能するドラム部材120により支持される。また、クラッチC1の複数のセパレータプレート102(それぞれの外周部)は、ドラム部材(クラッチドラム)130の外筒部131の内周面に形成されたスプライン131sに嵌合される。これにより、複数のセパレータプレート102は、外筒部131と一体に回転すると共に軸方向に移動可能となるようにクラッチドラムとして機能するドラム部材130により支持される。
ピストン140は、ドラム部材130の環状壁部132とドラム部材120の筒状部121との軸方向における間に配置され、ドラム部材130と一体に回転すると共に軸方向に移動自在となるように当該ドラム部材130の内筒部135に嵌合される。図4に示すように、ピストン140は、ドラム部材130の内筒部135により軸方向に移動自在に支持される受圧部141と、ラビニヨ式遊星歯車機構25から最も離間したセパレータプレート202と当接するように受圧部141の外周部から延出されたプレート押圧部142と、受圧部141とプレート押圧部142との径方向における間から軸方向に延出された中間筒状部144とを有する。受圧部141の外周面は、ドラム部材130の中間筒状部134の内周面に摺接し、受圧部141と中間筒状部134の内周面との間には、例えばDリング等のシール部材が配置される。これにより、ピストン140の受圧部141、ドラム部材130の中間筒状部134および内筒部135は、クラッチC1の係合油室150を画成する。すなわち、クラッチC1の係合油室150は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3リングギヤ23r(第1出力要素)と一体に回転するドラム部材130およびピストン140により画成される。
キャンセルプレート170は、ピストン140とドラム部材120の環状部122との軸方向における間、すなわちピストン140に対してドラム部材130の環状壁部132とは反対側に配置され、スナップリング175を用いて当該内筒部135に固定される。また、キャンセルプレート170の外周面は、ピストン140の中間筒状部144の内周面に摺接し、キャンセルプレート170と中間筒状部144の内周面との間には、例えばDリング等のシール部材が配置される。これにより、キャンセルプレート170は、ピストン140および内筒部135と共に係合油室150内で発生する遠心油圧をキャンセルするための遠心油圧キャンセル室190を画成する。すなわち、クラッチC1の遠心油圧キャンセル室190は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3リングギヤ23r(第1出力要素)と一体に回転するドラム部材130、ピストン140およびキャンセルプレート170により画成される。遠心油圧キャンセル室190の内部には、複数のリターンスプリングSP1が、ピストン140の受圧部141とキャンセルプレート170との間に位置するように周方向に間隔をおいて配設される。なお、クラッチC1のリターンスプリングSP1として、複数のコイルバネの代わりに単一の板バネが用いられてもよい。
図4に示すように、ドラム部材130の内筒部135とキャンセルプレート170との間には、例えばDリング等のシール部材176が介設される。シール部材176は、内筒部135に形成された環状の溝内に配置され、遠心油圧キャンセル室190からスナップリング175側への作動油の流出を規制する。また、キャンセルプレート170の内周部には、ドラム部材120の環状部122(ラビニヨ式遊星歯車機構25)側の表面から当該環状部122に向けて軸方向に突出する略筒状のレース支持部171が形成されている。図4に示すように、レース支持部171の内周面は、スラスト軸受90のレース部材91の外周部から軸方向に延出された短尺の円筒部92の外周面と当接する。すなわち、円筒部92の外周面は、キャンセルプレート170のレース支持部171により径方向外側から支持され、レース部材91が入力軸20i等に対して調心される。
上述のドラム部材120を構成部材とするクラッチC2は、当該ドラム部材120に加えて、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23sから第1および第2サンギヤ21s,22sに動力を伝達する動力伝達部材としてのクラッチハブ200と、複数の摩擦プレート201と、複数のセパレータプレート202およびバッキングプレートと、摩擦プレート201およびセパレータプレート202を押圧して摩擦係合させるピストン240と、キャンセル室画成部材270と、ピストン240を摩擦プレート201およびセパレータプレート202から離間するように付勢する複数のリターンスプリング(コイルバネ)SP2とを含む。
クラッチハブ200は、アルミニウム合金等を鋳造することにより形成され、図4に示すように、筒状部と、当該筒状部から径方向内側に延びる環状壁部とを有する。クラッチハブ200の環状壁部には、ラビニヨ式遊星歯車機構25側(図4における左側)に突出する図示しない筒状の突出部が形成されている。当該突出部の内周部は、クラッチC2の接続対象要素であるラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23s(第2出力要素)から軸方向に延出された軸部の外周面にきつくスプラインに嵌合される。これにより、クラッチハブ200は、第3サンギヤ23sと一体に回転可能となる。また、クラッチハブ200の環状壁部の内周部は、ラジアル軸受を介して入力軸20iにより同軸かつ回転自在に支持される支持部材220に緩くスプライン嵌合(遊嵌)される。これにより、支持部材220は、クラッチハブ200に対して回り止めされる。支持部材220は、鋼材(鉄合金)等を鍛造することにより一体に成形されたシャフト部および当該シャフト部の一端から径方向外側に延びる係合油室画成部を有する。
クラッチC2の複数の摩擦プレート201(それぞれの内周部)は、上記ドラム部材120の筒状部121に形成されたスプライン121bに嵌合される。これにより、複数の摩擦プレート201は、筒状部121と一体に回転すると共に軸方向に移動可能となるようにクラッチドラムとして機能するドラム部材120により支持される。また、クラッチC2の複数のセパレータプレート202およびバッキングプレート(それぞれの外周部)は、クラッチハブ200の筒状部の外周面に形成されたスプラインに嵌合される。これにより、複数のセパレータプレート202は、筒状部と一体に回転すると共に軸方向に移動可能となるようにクラッチハブ200により支持される。
クラッチC2のピストン240は、軸方向に移動自在となるように支持部材220に嵌合され、ドラム部材120の筒状部121によって包囲される。ピストン240は、軸方向に延びる筒状の延出部を有し、当該延出部の内周面は、支持部材220の係合油室画成部の外周面に摺接する。更に、当該延出部の内周面と係合油室画成部の外周面との間には、例えばDリング等のシール部材が配置される。これにより、ピストン240および支持部材220の係合油室画成部によりクラッチC2の係合油室250が画成される。係合油室250には、入力軸20iや支持部材220等に形成された油路を介して油圧制御装置により調圧されたクラッチC2への係合油圧(作動油)が供給される。
クラッチC2のキャンセル室画成部材270は、クラッチハブ200の筒状部内に嵌合され、係合油室250内で発生する遠心油圧をキャンセルするための遠心油圧キャンセル室290をピストン240と共に画成する。これにより、自動変速機20において、クラッチC2の係合油室250および遠心油圧キャンセル室290は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23s(第2出力要素)と一体に回転するクラッチハブ200、ピストン240およびキャンセル室画成部材270によって画成される。遠心油圧キャンセル室290には、入力軸20iや支持部材220等に形成された油路を介して油圧制御装置からの作動油(例えば、潤滑・冷却用のドレン油)が供給される。
また、クラッチハブ200の筒状部には、径方向内側に突出する環状の突部が形成されており、クラッチハブ200の環状壁部には、ピストン240に向けて突出する複数の突部が周方向に間隔をおいて形成されている。キャンセル室画成部材270は、図4に示すように、複数のリターンスプリングSP2によりクラッチハブ200の各突部に押し付けられ、当該クラッチハブ200と共に潤滑油室を画成する。当該潤滑油室内には、遠心油圧キャンセル室290に供給される作動油の一部が流入する。これにより、潤滑油室からクラッチハブ200の周囲に配置される摩擦プレート201およびセパレータプレート202に潤滑冷却媒体としての作動油を良好に供給することが可能となる。
クラッチC3は、上述のドラム部材130,360に加えて、複数の摩擦プレート(摩擦係合プレート)301と、摩擦プレート301と交互に配設される複数のセパレータプレート(摩擦係合プレート)302およびバッキングプレートと、摩擦プレート301およびセパレータプレート302を押圧して摩擦係合させるピストン340と、ピストン340を摩擦プレート301およびセパレータプレート302から離間するように付勢する複数のリターンスプリング(コイルバネ)SP3と、環状のキャンセルプレート(キャンセル油室画成部材)370とを含む。
クラッチC3の複数の摩擦プレート301(それぞれの内周部)は、ドラム部材130のハブ部133の外周面に形成されたスプライン133sに嵌合される。これにより、複数の摩擦プレート301は、ハブ部133と一体に回転すると共に軸方向に移動自在となるようにクラッチハブとして機能するドラム部材130により支持される。また、クラッチC3の複数のセパレータプレート302(それぞれの外周部)は、ドラム部材130のハブ部133を囲むように配置されるドラム部材360のドラム部の内周面に形成されたスプラインに嵌合される。これにより、複数のセパレータプレート302は、ドラム部と一体に回転すると共に軸方向に移動自在となるようにクラッチドラムとして機能するドラム部材360により支持される。
ピストン340は、ドラム部材130とドラム部材360のドラム部との間に配置され、ドラム部材360と一体に回転すると共に軸方向に移動自在となるように当該ドラム部材360の連結部により支持される。また、キャンセルプレート370は、ピストン340とドラム部材130との間に配置され、スナップリングを用いてドラム部材360の連結部に固定される。ピストン340は、ドラム部材360と共にクラッチC3の係合油室350を画成する。また、キャンセルプレート370は、ピストン340と共に係合油室350内で発生する遠心油圧をキャンセルするための遠心油圧キャンセル室390を画成する。
クラッチC3の係合油室350には、センターサポート11cに供給された油路や、ドラム部材360の連結部に形成された油路等を介して油圧制御装置により調圧されたクラッチC3への係合油圧(作動油)が供給される。また、遠心油圧キャンセル室390には、中間軸20mやドラム部材120の連結部材125等に形成された油路や、ドラム部材360の連結部に形成された油孔を介して油圧制御装置からの作動油(例えば、潤滑・冷却用のドレン油)が供給される。複数のリターンスプリングSP3は、ピストン340とキャンセルプレート370との間に位置するように遠心油圧キャンセル室390の内部に周方向に間隔をおいて配設される。なお、クラッチC3のリターンスプリングSP3としては、複数のコイルバネの代わりに単一の板バネが用いられてもよい。
続いて、クラッチC1の係合油室150や遠心油圧キャンセル室190に作動油を供給するための油路構造や、摩擦プレート101やセパレータプレート102に潤滑冷却媒体としての作動油を供給するための油路構造について説明する。
図5に示すように、ドラム部材130の内筒部135と一体化されるスリーブ137には、周方向に間隔をおいて複数の油孔137aが形成されている。また、内筒部135には、スリーブ137の対応する油孔137aに連通する油孔135aと、対応する油孔135bに連通すると共に内筒部135の外周面135osで開口して係合油室150に連通する油孔135bとが、それぞれ周方向に間隔をおいて複数配設されている。これにより、クラッチC1の係合油室150には、入力軸20iに形成された油路、連結部材125に形成された油孔や油溝、スリーブ137の油孔137a、内筒部135の油孔135a,135bを介して油圧制御装置により調圧されたクラッチC1への係合油圧(作動油)が供給される。
また、スリーブ137の内周面と連結部材125のシャフト部125sとの間には、図4に示すように、周方向に並ぶ複数の油孔137aを当該スリーブ137の軸方向における両側から挟むように、2つのシール部材138が配設される。ここで、ドラム部材130(内筒部135)は、上述のようにアルミニウム合金により形成されるのに対して、ドラム部材130を回転自在に支持する連結部材125は、鋼材(鉄合金)により形成される。このため、自動変速機20では、連結部材125の外周面により支持される被支持部を構成するように、連結部材125と同種の材料(本実施形態では、鋼材)により形成されたスリーブ137が内筒部135に一体化される。これにより、各シール部材138の変形を抑制して各油孔137aの両側で連結部材125とスリーブ137との間を良好にシールすることが可能となる。なお、ドラム部材130(内筒部135)が連結部材125と同種の材料(例えば、鋼材)により形成される場合には、スリーブ137に相当する被支持部が内筒部135に一体に形成されてもよい。
更に、ドラム部材130の内筒部135には、図4から図6に示すように、クラッチドラムの内筒部135を径方向に(本実施形態では、僅かに斜めに)貫通する複数の油孔135cが形成されている。複数の油孔135cは、係合油室150に連通する油孔135a,135bよりも内筒部135のラビニヨ式遊星歯車機構25側(図4等における左側)の遊端部に近接するように、周方向に間隔をおいて(本実施形態では、60°間隔で6個)形成されている(図6参照)。各油孔135cは、内筒部135の外周面135osで開口して遠心油圧キャンセル室190に連通する。また、各油孔135cは、ブッシュ136fとスリーブ137との間における内筒部135の内周面135isで開口し、ブッシュ136fの端面、スリーブ137の端面、内筒部135の内周面135isおよびシャフト部125s(連結部材125)の外周面により画成される環状の連通油路139に連通する。連通油路139は、図4に示すように、それぞれ連結部材125のシャフト部125sを貫通するように形成された複数の油孔125hに連通する。これにより、遠心油圧キャンセル室190には、入力軸20iに形成された油路や油孔20is(図4参照)、入力軸20iの外周面とシャフト部125s(連結部材125)の内周面との間に画成される環状の油路、シャフト部125sに形成された各油孔125h、連通油路139、内筒部135の各油孔135cを介して、油圧制御装置からの作動油(例えば、潤滑・冷却用のドレン油)が供給される。
加えて、ドラム部材130の内筒部135には、それぞれ当該内筒部135のラビニヨ式遊星歯車機構25側の端面(遊端)から基端すなわち環状壁部132に向けてドラム部材130の軸方向に延びる複数の油溝135dが周方向に間隔をおいて形成されている。図4から図6に示すように、複数の油溝135dは、ドラム部材130の軸方向からみて複数の油孔135cと交互に並ぶように周方向に間隔をおいて(本実施形態では、60°間隔で6個)形成されている。各油溝135dは、内筒部135の内周面135isよりも径方向外側に窪んでおり、内筒部135のラビニヨ式遊星歯車機構25側の端面で軸方向に開口する。図4に示すように、内筒部135のラビニヨ式遊星歯車機構25側の端面は、スラスト軸受90のレース部材91と当接することから、各油溝135dのラビニヨ式遊星歯車機構25側の端部は、レース部材91により塞がれる。
上述のように、内筒部135のラビニヨ式遊星歯車機構25側の遊端部内には、連結部材125により支持されるブッシュ136fが嵌合されることから、各油溝135dは、ブッシュ136fによりラビニヨ式遊星歯車機構25側で径方向内側から部分的に塞がれ、各油溝135dの基端側すなわち環状壁部132側の端部は径方向内側に開口する。また、各油溝135dの環状壁部132側の端部は、ブッシュ136fおよびシール部材176よりも内筒部135のラビニヨ式遊星歯車機構25側の端面すなわちレース部材91から離間すると共に、スリーブ137のラビニヨ式遊星歯車機構25側の端面よりもレース部材91に近接する。これにより、各油溝135dは、ブッシュ136よりも基端側すなわち環状壁部132側に位置するように内筒部135の内周面135isと連結部材125(シャフト部125s)の外周面との間に画成される連通油路139に連通すると共に、連通油路139を介して各油孔135cと連通する。そして、遠心油圧キャンセル室190に連通する各油孔135cは、図7に示すように、周方向に隣り合う油溝135dの間かつ内筒部135の内周面135isで開口し、各油孔135cの連通油路139側の開口は、複数の油溝135dの環状壁部132側の端部と周方向に並ぶ。この結果、連通油路139および内筒部の複数の油孔135cを介して遠心油圧キャンセル室190に供給される作動油の一部は、連通油路139を介して複数の油溝135dにも流入する。
更に、内筒部135には、それぞれ対応する油溝135dに連通すると共に内筒部135の外周面135osで開口する複数の排油孔135eが周方向に間隔をおいて形成されている。また、レース部材91の円筒部92を径方向外側から支持するキャンセルプレート170のレース支持部171には、ドラム部材130の径方向からみて、内筒部135の排油孔135eと重なるように、周方向に間隔をおいて複数(例えば、等間隔に4から6個)の切欠部172が形成されている。これにより、各油溝135dに流入した作動油は、排油孔135eから内筒部135側に流出し、キャンセルプレート170の切欠部(油路)171を通過して、当該キャンセルプレート170とドラム部材120の環状部122との間に流れ込む。更に、作動油は、キャンセルプレート170と環状部122との間からドラム部材120の筒状部121に形成された複数の油孔121hを介して摩擦プレート101およびセパレータプレート102に流入する。従って、クラッチC1では、遠心油圧キャンセル室190に充分な油を供給しつつ、各油溝135dから適量の油を流出させて摩擦プレート101およびセパレータプレート102を潤滑・冷却することができる。また、クラッチドラムとしてのドラム部材130の回転停止時等には、遠心油圧キャンセル室190内の油が複数の油孔135cを介して連結部材125の油孔125hに流入すると共に、連通油路139を介して複数の油溝135dにも流出する。
また、クラッチC1では、上述のように、遠心油圧キャンセル室190に連通する各油孔135cが周方向に隣り合う油溝135dの間かつ内筒部135の内周面135isで開口する。これにより、各油孔135cは、内筒部135の一部、すなわち当該油孔135cと油溝135dとの周方向における間に位置する仕切部135f(図7参照)により両側の油溝135dと仕切られる。この結果、クラッチC1では、油溝135dの底面ではなく、当該油溝135dの底面よりも径方向内側に位置する内筒部135の内周面135isを遠心油圧キャンセル室190における遠心油圧(キャンセル油圧)の発生径(ゼロ基点)とすることが可能となる。
更に、各油孔135cを周方向に隣り合う油溝135dの間で開口させると共に、内筒部135と連結部材125(シャフト部125s)との間の連通油路139を介して複数の油溝135dと複数の油孔135cとを連通させることで、複数の油溝135dと複数の油孔135cとの連通を許容しつつ、クラッチC1の軸長の増加を抑制することができる。この結果、クラッチC1では、遠心油圧キャンセル室190における遠心油圧の発生径を小さくしつつ、軸長の増加を抑制すること可能となる。従って、クラッチC1を含む自動変速機20では、当該クラッチC1における遠心油圧のキャンセル性能を良好に確保しつつ、装置全体の軸長の増加を抑制することができる。
また、クラッチC1では、内筒部135のラビニヨ式遊星歯車機構25側の端面がスラスト軸受90のレース部材91と当接し、内筒部135には、それぞれ油溝135dに連通すると共に内筒部135の外周面135osで開口する複数の排油孔135eが形成されている。これにより、複数の油溝135dを内筒部135にラビニヨ式遊星歯車機構25側の端面側から容易に形成可能としつつ、ドラム部材130の外筒部131側に配置される摩擦プレート101およびセパレータプレート102に内筒部135側から潤滑冷却媒体としての作動油を良好に供給することが可能となる。
更に、クラッチC1のキャンセルプレート170は、レース部材91の円筒部92を径方向外側から支持するレース支持部171を有し、当該レース支持部171には、排油孔135eから流出した作動油を径方向外側に流出させる油路としての切欠部172が複数形成されている。これにより、スラスト軸受90のレース部材91をキャンセルプレート170により調心しつつ、摩擦プレート101およびセパレータプレート102に内筒部135側から潤滑冷却媒体としての作動油を良好に供給することが可能となる。
また、内筒部135とキャンセルプレート170との間には、シール部材176が介設され、内筒部135内には、連結部材125(シャフト部125s)により支持されるブッシュ136fが複数の油溝135dのラビニヨ式遊星歯車機構25側で径方向内側から部分的に塞ぐように嵌合される。更に、複数の油溝135dの基端側すなわち環状壁部132側の端部は、ブッシュ136fおよびシール部材176よりもレース部材91から離間している。これにより、遠心油圧キャンセル室190に連通する各油孔135cと、各油溝135dの環状壁部132側の端部とを内筒部135の周方向に並ぶように配置してクラッチC1の軸長の増加を良好に抑制することが可能となる。
そして、内筒部135には、ブッシュ136fよりもレース部材91から離間すると共に油孔135cの周囲の内周面135isよりも径方向内側に突出して連結部材125(シャフト部125s)の外周面により支持される被支持部としてのスリーブ137が一体化されている。更に、連通油路139は、ブッシュ136fとスリーブ137との軸方向における間に画成される。これにより、連結部材125(シャフト部125s)により内筒部135すなわちドラム部材130を回転自在に支持しつつ、連通油路139を内筒部135の内周面135isと連結部材125(シャフト部125s)の外周面との間に画成することが可能となる。
以上説明したように、本発明によるクラッチは、第1摩擦係合プレートが嵌合されるクラッチハブと、前記第1摩擦係合プレートと交互に並ぶように第2摩擦係合プレートが嵌合される外筒部および支持部材により回転自在に支持される内筒部を有するクラッチドラムと、前記クラッチドラムと共に係合油室を画成するように前記内筒部により支持されるピストンと、前記係合油室で発生する遠心油圧をキャンセルするための遠心油圧キャンセル室を前記ピストンと共に画成するように前記内筒部に取り付けられるキャンセル室画成部材とを含むクラッチにおいて、前記クラッチドラムの前記内筒部に周方向に間隔をおいて形成され、それぞれ前記内筒部の遊端から基端に向けて前記クラッチドラムの軸方向に延びると共に該内筒部の内周面よりも径方向外側に窪む複数の油溝と、前記支持部材と前記内筒部との間に配置され、前記複数の油溝の前記基端側の端部が径方向内側に開口するように該複数の油溝を前記遊端側で径方向内側から塞く軸受と、前記クラッチドラムの前記内筒部を径方向に貫通するように形成され、それぞれ前記遠心油圧キャンセル室に連通すると共に前記周方向に隣り合う前記油溝の間かつ前記内筒部の前記内周面で開口する複数の油孔と、前記軸受よりも前記基端側に位置するように前記内筒部の前記内周面と前記支持部材の外周面との間に画成され、前記複数の油溝と前記複数の油孔とを連通させる連通油路とを備えることを特徴とする。
このクラッチでは、クラッチドラムの内筒部に、当該内筒部の遊端から基端に向けてクラッチドラムの軸方向に延びると共に内筒部の内周面よりも径方向外側に窪むように複数の油溝が周方向に間隔をおいて形成される。複数の油溝は、支持部材と内筒部との間に配置された軸受によって遊端側で径方向内側から塞がれ、複数の油溝の基端側の端部は、径方向内側に開口する。また、クラッチドラムの内筒部には、当該内筒部を径方向に貫通して遠心油圧キャンセル室に連通すると共に周方向に隣り合う油溝の間かつ内筒部の内周面で開口する複数の油孔が形成される。更に、複数の油溝と複数の油孔とは、軸受よりも基端側に位置するように内筒部の内周面と当該内筒部を支持する支持部材の外周面との間に画成される連通油路を介して連通する。
これにより、遠心油圧キャンセル室には、クラッチドラムの内筒部と当該内筒部を支持する支持部材との間に画成される連通油路および内筒部に形成された複数の油孔を介して支持部材側から油が供給され、支持部材側からの油の一部は、内筒部と支持部材との間の連通油路を介して複数の油溝にも流入する。従って、遠心油圧キャンセル室に充分な油を供給しつつ、各油溝から適量の油を流出させて潤滑冷却対象に供給することができる。また、クラッチドラムの回転停止時等には、遠心油圧キャンセル室内の油が複数の油孔を介して支持部材側に流出すると共に、連通油路を介して複数の油溝にも流出する。そして、このクラッチでは、遠心油圧キャンセル室に連通する各油孔が周方向に隣り合う油溝の間かつ内筒部の内周面で開口する。これにより、各油孔は、内筒部の一部により両側の油溝と仕切られることから、油溝の底面ではなく、当該油溝の底面よりも径方向内側に位置する内筒部の内周面を遠心油圧キャンセル室における遠心油圧(キャンセル油圧)の発生径(ゼロ基点)とすることが可能となる。更に、各油孔を周方向に隣り合う油溝の間で開口させると共に、内筒部と支持部材との間の連通油路を介して複数の油溝と複数の油孔とを連通させることで、複数の油溝と複数の油孔との連通を許容しつつ、クラッチの軸長の増加を抑制することができる。この結果、このクラッチでは、遠心油圧キャンセル室における遠心油圧の発生径を小さくしつつ、軸長の増加を抑制することが可能となる。
また、前記内筒部の前記遊端側の端面は、前記ドラム部材を支持するスラスト軸受のレース部材と当接してもよく、前記内筒部には、それぞれ前記油溝に連通すると共に前記内筒部の外周面で開口する複数の排油孔が形成されてもよい。これにより、クラッチドラムの外筒部側に配置される第1および第2摩擦係合プレートに内筒部側から潤滑冷却媒体としての油を良好に供給することが可能となる。
更に、前記キャンセル室画成部材は、前記レース部材の外周面を径方向外側から支持するように形成されたレース支持部を有してもよく、前記レース支持部には、前記排油孔から流出した油を径方向外側に流出させる油路が形成されてもよく、前記第1および第2摩擦係合プレートには、前記複数の油溝から流出した油が潤滑冷却媒体として供給されてもよい。これにより、スラスト軸受のレース部材をキャンセル室画成部材により調心しつつ、クラッチドラムの外筒部側に配置される第1および第2摩擦係合プレートに内筒部側から潤滑冷却媒体としての油を良好に供給することが可能となる。ただし、各油溝から流出する油は、第1および第2摩擦係合プレート以外の軸受といった他の潤滑冷却対象に供給されてもよい。
また、前記内筒部と前記キャンセル室画成部材との間には、シール部材が介設されてもよく、前記複数の油溝の前記基端側の端部は、前記複数の油孔の前記連通油路側の開口と周方向に並ぶように前記シール部材よりも前記基端側に延びてもよい。これにより、遠心油圧キャンセル室に連通する各油孔と、各油溝の基端側の端部とを内筒部の周方向に並ぶように配置してクラッチの軸長の増加を良好に抑制することが可能となる。
更に、前記内筒部は、前記軸受よりも前記レース部材から離間すると共に前記油孔の周囲の前記内周面よりも径方向内側に突出して前記支持部材の外周面により支持される筒状の被支持部を有してもよく、前記連通油路は、前記軸受と前記被支持部との軸方向における間に画成されてもよい。これにより、支持部材により内筒部すなわちクラッチドラムを回転自在に支持しつつ、連通油路を内筒部の内周面と支持部材の外周面との間に画成することが可能となる。
更に、前記クラッチハブは、前記第1摩擦係合プレートの内周部が嵌合される筒状部と、前記筒状部から径方向内側に延出された環状部とを有してもよく、前記支持部材は、前記クラッチハブの前記環状部と前記クラッチの接続対象要素とを連結する連結部材であってもよい。
本発明による変速装置は、上記何れかのクラッチを含み、入力部材に伝達された動力を変速して出力部材に伝達する変速装置であって、入力要素と、固定可能要素と、第1出力要素および第2出力要素とを有するラビニヨ式遊星歯車機構と、複数の回転要素を有する第1遊星歯車と、複数の回転要素を有し、前記第1遊星歯車よりも前記ラビニヨ式遊星歯車機構に近接して配置される第2遊星歯車と、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、前記第1および第2遊星歯車の回転要素の少なくとも何れか1つとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除する第1クラッチと、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第2出力要素と、前記第1および第2遊星歯車の回転要素の前記少なくとも何れか1つとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除する第2クラッチとを備え、前記クラッチは、前記第1クラッチであり、前記クラッチの前記クラッチハブは、前記第2クラッチのクラッチドラムとして兼用されてもよい。このような変速装置において、上述のように構成されたクラッチを第1クラッチとして採用することで、第1クラッチにおける遠心油圧のキャンセル性能を良好に確保しつつ、変速装置全体の軸長の増加を抑制可能となる。
また、前記変速装置は、第3クラッチ、第4クラッチ、第1ブレーキおよび第2ブレーキを更に備えてもよく、前記第1遊星歯車は、第1サンギヤ、第1キャリヤおよび第1リングギヤを有してもよく、前記第2遊星歯車は、第2サンギヤ、第2キャリヤおよび第2リングギヤを有してもよく、前記第1遊星歯車の前記第1サンギヤと前記第2遊星歯車の前記第2サンギヤとは、常時連結されてもよく、前記第1遊星歯車の前記第1キャリヤは、前記入力部材および前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記入力要素に常時連結されてもよく、前記第2遊星歯車の前記第2キャリヤは、前記出力部材に常時連結されてもよく、前記第1クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、常時連結された前記第1および第2サンギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第2クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第2出力要素と、常時連結された前記第1および第2サンギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第3クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、前記第2遊星歯車の前記第2リングギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第4クラッチは、前記第1遊星歯車の前記第1リングギヤと前記第2遊星歯車の前記第2キャリヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、 前記第1ブレーキは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記固定可能要素を静止部材に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第2ブレーキは、前記第2遊星歯車の前記第2リングギヤを前記静止部材に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除してもよい。
そして、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
本発明は、クラッチや変速装置の製造産業等において利用可能である。
10 動力伝達装置、11 トランスミッションケース、11c センターサポート、12 発進装置、13 フロントカバー、14o ワンウェイクラッチ、14p ポンプインペラ、14s ステータ、14t タービンランナ、15 ロックアップクラッチ、16 ダンパ機構、17 オイルポンプ、20 自動変速機、20i 入力軸、20is 油孔、20m 中間軸、20o 出力軸、21 第1遊星歯車、21c 第1キャリヤ、21p 第1ピニオンギヤ、21r 第1リングギヤ、21s 第1サンギヤ、22 第2遊星歯車、22c 第2キャリヤ、22p 第2ピニオンギヤ、22r 第2リングギヤ、22s 第2サンギヤ、23c 第3キャリヤ、23p 第3ピニオンギヤ、23r 第3リングギヤ、23s 第3サンギヤ、24p 第4ピニオンギヤ、24s 第4サンギヤ、25 ラビニヨ式遊星歯車機構、90 スラスト軸受、91 レース部材、92 円筒部、101 摩擦プレート、102 セパレータプレート、120 ドラム部材、121 筒状部、121a,121b スプライン、121h 油孔、122 環状部、125 連結部材、125f フランジ部、125h 油孔、125s シャフト部、130 ドラム部材、131 外筒部、131s スプライン、132 環状壁部、133 ハブ部、133s スプライン、134 中間筒状部、135 ドラム部材、135 内筒部、135a,135b,135c 油孔、135d 油溝、135e 排油孔、135f 仕切部、135is 内周面、135os 外周面、136f,136r ブッシュ、137 スリーブ、137a 油孔、138 シール部材、139 連通油路、140 ピストン、141 受圧部、142 プレート押圧部、144 中間筒状部、150 係合油室、170 キャンセルプレート、171 レース支持部、172 切欠部、175 スナップリング、176 シール部材、190 遠心油圧キャンセル室、200 クラッチハブ、201 摩擦プレート、202 セパレータプレート、220 支持部材、240 ピストン、250 係合油室、270 キャンセル室画成部材、290 遠心油圧キャンセル室、301 摩擦プレート、302 セパレータプレート、340 ピストン、350 係合油室、360 ドラム部材、370 キャンセルプレート、390 遠心油圧キャンセル室、B1,B2 ブレーキ、C1,C2,C3,C4 クラッチ、SP1,SP2,SP3 リターンスプリング。

Claims (8)

  1. 第1摩擦係合プレートが嵌合されるクラッチハブと、前記第1摩擦係合プレートと交互に並ぶように第2摩擦係合プレートが嵌合される外筒部および支持部材により回転自在に支持される内筒部を有するクラッチドラムと、前記クラッチドラムと共に係合油室を画成するように前記内筒部により支持されるピストンと、前記係合油室で発生する遠心油圧をキャンセルするための遠心油圧キャンセル室を前記ピストンと共に画成するように前記内筒部に取り付けられるキャンセル室画成部材とを含むクラッチにおいて、
    前記クラッチドラムの前記内筒部に周方向に間隔をおいて形成され、それぞれ前記内筒部の遊端から基端に向けて前記クラッチドラムの軸方向に延びると共に該内筒部の内周面よりも径方向外側に窪む複数の油溝と、
    前記支持部材と前記内筒部との間に配置され、前記複数の油溝の前記基端側の端部が径方向内側に開口するように該複数の油溝を前記遊端側で径方向内側から塞く軸受と、
    前記クラッチドラムの前記内筒部を径方向に貫通するように形成され、それぞれ前記遠心油圧キャンセル室に連通すると共に前記周方向に隣り合う前記油溝の間かつ前記内筒部の前記内周面で開口する複数の油孔と、
    前記軸受よりも前記基端側に位置するように前記内筒部の前記内周面と前記支持部材の外周面との間に画成され、前記複数の油溝と前記複数の油孔とを連通させる連通油路と、
    を備えることを特徴とするクラッチ。
  2. 請求項1に記載のクラッチにおいて、
    前記内筒部の前記遊端側の端面は、前記ドラム部材を支持するスラスト軸受のレース部材と当接し、
    前記内筒部には、それぞれ前記油溝に連通すると共に前記内筒部の外周面で開口する複数の排油孔が形成されていることを特徴とするクラッチ。
  3. 請求項2に記載のクラッチにおいて、
    前記キャンセル室画成部材は、前記レース部材の外周面を径方向外側から支持するように形成されたレース支持部を有し、
    前記レース支持部には、前記排油孔から流出した油を径方向外側に流出させる油路が形成され、
    前記第1および第2摩擦係合プレートには、前記複数の油溝から流出した油が潤滑冷却媒体として供給されることを特徴とするクラッチ。
  4. 請求項2または3に記載のクラッチにおいて、
    前記内筒部と前記キャンセル室画成部材との間には、シール部材が介設され、
    前記複数の油溝の前記基端側の端部は、前記複数の油孔の前記連通油路側の開口と周方向に並ぶように前記シール部材よりも前記基端側に延びることを特徴とするクラッチ。
  5. 請求項4に記載のクラッチにおいて、
    前記内筒部は、前記軸受よりも前記レース部材から離間すると共に前記油孔の周囲の前記内周面よりも径方向内側に突出して前記支持部材の外周面により支持される筒状の被支持部を有し、
    前記連通油路は、前記軸受と前記被支持部との軸方向における間に画成されることを特徴とするクラッチ。
  6. 請求項1から5の何れか一項に記載のクラッチにおいて、
    前記クラッチハブは、前記第1摩擦係合プレートの内周部が嵌合される筒状部と、前記筒状部から径方向内側に延出された環状部とを有し、
    前記支持部材は、前記クラッチハブの前記環状部と前記クラッチの接続対象要素とを連結する連結部材であることを特徴とするクラッチ。
  7. 請求項1から6の何れか一項に記載のクラッチを含み、入力部材に伝達された動力を変速して出力部材に伝達する変速装置であって、
    入力要素と、固定可能要素と、第1出力要素および第2出力要素とを有するラビニヨ式遊星歯車機構と、
    複数の回転要素を有する第1遊星歯車と、
    複数の回転要素を有し、前記第1遊星歯車よりも前記ラビニヨ式遊星歯車機構に近接して配置される第2遊星歯車と、
    前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、前記第1および第2遊星歯車の回転要素の少なくとも何れか1つとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除する第1クラッチと、
    前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第2出力要素と、前記第1および第2遊星歯車の回転要素の前記少なくとも何れか1つとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除する第2クラッチとを備え、
    前記クラッチは、前記第1クラッチであり、
    前記クラッチの前記クラッチハブは、前記第2クラッチのクラッチドラムとして兼用されることを特徴とする変速装置。
  8. 請求項7に記載の変速装置において、
    第3クラッチ、第4クラッチ、第1ブレーキおよび第2ブレーキを更に備え、
    前記第1遊星歯車は、第1サンギヤ、第1キャリヤおよび第1リングギヤを有し、
    前記第2遊星歯車は、第2サンギヤ、第2キャリヤおよび第2リングギヤを有し、
    前記第1遊星歯車の前記第1サンギヤと前記第2遊星歯車の前記第2サンギヤとは、常時連結され、
    前記第1遊星歯車の前記第1キャリヤは、前記入力部材および前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記入力要素に常時連結され、
    前記第2遊星歯車の前記第2キャリヤは、前記出力部材に常時連結され、
    前記第1クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、常時連結された前記第1および第2サンギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除し、
    前記第2クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第2出力要素と、常時連結された前記第1および第2サンギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除し、
    前記第3クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、前記第2遊星歯車の前記第2リングギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除し、
    前記第4クラッチは、前記第1遊星歯車の前記第1リングギヤと前記第2遊星歯車の前記第2キャリヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除し、
    前記第1ブレーキは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記固定可能要素を静止部材に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除し、
    前記第2ブレーキは、前記第2遊星歯車の前記第2リングギヤを前記静止部材に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除することを特徴とする変速装置。
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