JP2016125558A - 変速装置 - Google Patents

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翔太 池田
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直也 神内
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卓也 中島
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【課題】クラッチハブに形成された油孔からプラネタリキャリヤにより支持されるピニオンシャフトのシャフト内油路に潤滑・冷却用の油を良好に供給可能とする。【解決手段】クラッチC2のハブ部材210は、セパレータプレート202が嵌合される筒状部211と、筒状部211と一体に成形された環状壁部212と、環状壁部212から筒状部211とは反対側に突出すると共に内周部が第3サンギヤ23sの軸部23saにスプライン嵌合される筒状の突出部214とを有し、突出部214は、それぞれ当該突出部214の外周面よりも集油部23ca側に突出する複数の隆起部214pと、それぞれ径方向外側に向かうにつれて第3キャリヤ23cの集油部23caに近接するように傾斜すると共に突出部214を貫通して隆起部214pの頂面214psで開口する複数の油孔214hとを有する。【選択図】図4

Description

本発明は、遊星歯車と、当該遊星歯車のサンギヤから他の回転要素に動力を伝達する動力伝達部材とを含む変速装置に関する。
従来、多板摩擦式油圧クラッチとして構成されたクラッチC4と、多板摩擦式油圧クラッチとして構成されると共にクラッチC4の周囲に配置されたクラッチC3とを含む変速装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この変速装置のクラッチC3およびC4は、インナードラムおよび当該インナードラムの側壁部の外周に溶接される基端部を有するアウタードラムを含むドラム部材を共用する。ドラム部材は、クラッチC4のピストンを支持する内筒部と、当該ピストンと共にクラッチC4の係合油室を画成し、かつクラッチC3のピストンと共に当該クラッチC3の係合油室をクラッチC4の係合油室よりも径方向外側に画成する環状壁部とを有する。また、ドラム部材の内部には、遊星歯車が配置され、ドラム部材の内筒部の先端部には、当該遊星歯車のプラネタリキャリヤにより支持される複数のピニオンシャフトのシャフト内油路に潤滑・冷却用の油を供給するための油孔が形成されている。
特開2013−155849号公報
しかしながら、上述のようにしてピニオンシャフトのシャフト内油路に潤滑・冷却用の油を供給しようとしても、回転するドラム部材の内筒部の油孔から流出した油が当該内筒部の先端部の外周面を伝ってしまうおそれもあり、このような場合、シャフト内油路に充分な油を供給するために油孔に対する油の供給量を増やす必要が生じる。
そこで、本発明は、動力伝達部材に形成された油孔からプラネタリキャリヤにより支持されるピニオンシャフトのシャフト内油路に潤滑・冷却用の油を良好に供給可能とすることを主目的とする。
本発明による変速装置、サンギヤ、リングギヤおよび複数のピニオンギヤを回転自在に支持するプラネタリキャリヤを有する遊星歯車と、前記遊星歯車の前記サンギヤから他の回転要素に動力を伝達する動力伝達部材とを備え、入力部材に伝達された動力を変速して出力部材に伝達する変速装置において、前記動力伝達部材は、径方向に延びる環状壁部と、前記環状壁部から前記遊星歯車側に延びると共に前記サンギヤに連結される筒状の突出部とを有し、前記遊星歯車の前記プラネタリキャリヤは、それぞれ前記ピニオンギヤに挿通される複数のピニオンシャフトの端部を支持するシャフト支持部と、前記ピニオンシャフトのシャフト内油路と連通する集油部とを有し、前記動力伝達部材の前記突出部は、それぞれ該突出部の外周面よりも前記プラネタリキャリヤの前記集油部側に突出する複数の隆起部と、それぞれ径方向外側に向かうにつれて前記集油部に近接するように傾斜すると共に前記突出部を貫通して前記隆起部の頂面で開口する複数の油孔とを有することを特徴とする。
この変速装置の動力伝達部材は、径方向に延びる環状壁部と、環状壁部から遊星歯車側に延びると共にサンギヤに連結される筒状の突出部とを有する。また、遊星歯車のプラネタリキャリヤは、それぞれピニオンギヤに挿通される複数のピニオンシャフトの端部を支持するシャフト支持部と、ピニオンシャフトのシャフト内油路と連通するように形成された集油部とを有する。更に、動力伝達部材の突出部は、それぞれ当該突出部の外周面よりもプラネタリキャリヤの集油部側に突出する複数の隆起部と、それぞれ径方向外側に向かうにつれて集油部に近接するように傾斜すると共に突出部を貫通して隆起部の頂面で開口する複数の油孔とを有する。このように突出部に形成された各隆起部の頂面で油孔を開口させることで、サンギヤと共にクラッチハブが回転する際に、各油孔の開口から流出した油が突出部の外周面を伝ってしまうのを抑制することができる。従って、動力伝達部材の突出部に形成された油孔からプラネタリキャリヤにより支持されるピニオンシャフトのシャフト内油路に潤滑・冷却用の油を良好に供給することが可能となる。
本発明による変速装置を含む動力伝達装置の概略構成図である。 図1の変速装置における各変速段とクラッチおよびブレーキの作動状態との関係を示す作動表である。 図1の変速装置における入力回転速度に対する各回転要素の回転速度の比を示す速度線図である。 図1の変速装置を示す要部拡大断面図である。 図1の変速装置を示す要部拡大断面図である。 図1の変速装置に含まれるクラッチハブのハブ部材を示す斜視図である。 図1の変速装置に含まれるクラッチハブのハブ部材を示す正面図である。 図1の変速装置に含まれるクラッチハブのハブ部材を示す背面図である。
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による変速装置である自動変速機20を含む動力伝達装置10の概略構成図である。同図に示す動力伝達装置10は、後輪駆動車両の前部に縦置きに搭載される駆動源としての図示しないエンジン(内燃機関)のクランクシャフトおよび/または電気モータのロータに接続されると共にエンジン等からの動力(トルク)を図示しない左右の後輪(駆動輪)に伝達可能なものである。図示するように、動力伝達装置10は、エンジン等から入力軸(入力部材)20iに伝達された動力を変速して出力軸(出力部材)20oに伝達する自動変速機20に加えて、トランスミッションケース(静止部材)11や、発進装置(流体伝動装置)12、オイルポンプ17等を含む。
発進装置12は、図示しないドライブプレート等を介してエンジンのクランクシャフトおよび/または電気モータのロータに連結されるフロントカバー13や、当該フロントカバー13に密に固定されるポンプシェルを有する入力側のポンプインペラ14p、自動変速機20の入力軸20iに連結される出力側のタービンランナ14t、ポンプインペラ14pおよびタービンランナ14tの内側に配置されてタービンランナ14tからポンプインペラ14pへの作動油の流れを整流するステータ14s、図示しないステータシャフトにより支持されると共にステータ14sの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ14o等を有するトルクコンバータを含む。
更に、発進装置12は、エンジンのクランクシャフト等に連結されたフロントカバー13と自動変速機20の入力軸20iとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するロックアップクラッチ15と、フロントカバー13と自動変速機20の入力軸20iとの間で振動を減衰するダンパ機構16とを含む。本実施形態において、ロックアップクラッチ15は、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)を有する多板摩擦式油圧クラッチとして構成される。ただし、ロックアップクラッチ15は、単板摩擦式油圧クラッチであってもよい。また、発進装置12は、ステータ14sを有さない流体継手を含むものであってもよい。
オイルポンプ17は、ポンプボディとポンプカバーとを含むポンプアッセンブリ、チェーンまたはギヤ列を介して発進装置12のポンプインペラ14pに連結された外歯ギヤ(インナーロータ)、当該外歯ギヤに噛合する内歯ギヤ(アウターロータ)等を有するギヤポンプとして構成される。オイルポンプ17は、エンジンからの動力により駆動され、図示しないオイルパンに貯留されている作動油(ATF)を吸引して図示しない油圧制御装置へと圧送する。
自動変速機20は、10段変速式の変速機として構成されており、図1に示すように、入力軸20iや図示しないデファレンシャルギヤおよびドライブシャフトを介して左右の後輪に連結される出力軸20oに加えて、自動変速機20(入力軸20iや出力軸20o)の軸方向に並べて配設されるシングルピニオン式の第1遊星歯車21および第2遊星歯車22、ダブルピニオン式遊星歯車とシングルピニオン式遊星歯車とを組み合わせて構成される複合遊星歯車列としてのラビニヨ式遊星歯車機構25とを含む。更に、自動変速機20は、入力軸20iから出力軸20oまでの動力伝達経路を変更するための第1係合要素としてのクラッチC1(第1クラッチ)、第2係合要素としてのクラッチC2(第2クラッチ)、第3係合要素としてのクラッチC3(第3クラッチ)、第4係合要素としてのクラッチC4(第4クラッチ)、第5係合要素としてのブレーキB1(第1ブレーキ)および第6係合要素としてのブレーキB2(第2ブレーキ)を含む。
本実施形態において、第1および第2遊星歯車21,22並びにラビニヨ式遊星歯車機構25は、発進装置12すなわちエンジン側(図1における左側)から、ラビニヨ式遊星歯車機構25、第2遊星歯車22、第1遊星歯車21、すなわち、ラビニヨ式遊星歯車機構25を構成するシングルピニオン式遊星歯車、ラビニヨ式遊星歯車機構25を構成するダブルピニオン式遊星歯車、第2遊星歯車22、第1遊星歯車21という順番で並ぶようにトランスミッションケース11内に配置される。これにより、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、発進装置12に近接するように車両の前部側に配置される。また、第1遊星歯車21は、出力軸20oに近接するように車両の後部側に配置される。更に、第2遊星歯車22は、入力軸20iや出力軸20o等の軸方向におけるラビニヨ式遊星歯車機構25と第1遊星歯車21との間に配置される。
第1遊星歯車21は、外歯歯車である第1サンギヤ21sと、第1サンギヤ21sと同心円上に配置される内歯歯車である第1リングギヤ21rと、それぞれ第1サンギヤ21sおよび第1リングギヤ21rに噛合する複数の第1ピニオンギヤ21pと、複数の第1ピニオンギヤ21pを自転(回転)自在かつ公転自在に保持する第1キャリヤ21cとを有する。本実施形態において、第1遊星歯車21のギヤ比λ1(第1サンギヤ21sの歯数/第1リングギヤ21rの歯数)は、例えば、λ1=0.277と定められている。
第1遊星歯車21の第1キャリヤ21cは、図1に示すように、入力軸20iに連結された自動変速機20の中間軸(インターミディエイトシャフト)20mに常時連結(固定)される。これにより、エンジンから入力軸20iに動力が伝達されている際、第1キャリヤ21cには、エンジンからの動力が入力軸20iおよび中間軸20mを介して常時伝達される。また、第1キャリヤ21cは、クラッチC4の係合時に第1遊星歯車21の入力要素として機能し、クラッチC4の解放時には空転する。更に、第1リングギヤ21rは、クラッチC4の係合時に当該第1遊星歯車21の出力要素として機能する。
第2遊星歯車22は、外歯歯車である第2サンギヤ22sと、第2サンギヤ22sと同心円上に配置される内歯歯車である第2リングギヤ22rと、それぞれ第2サンギヤ22sおよび第2リングギヤ22rに噛合する複数の第2ピニオンギヤ22pと、複数の第2ピニオンギヤ22pを自転(回転)自在かつ公転自在に保持する第2キャリヤ(プラネタリキャリヤ)22cとを有する。本実施形態において、第2遊星歯車22のギヤ比λ2(第2サンギヤ22sの歯数/第2リングギヤ22rの歯数)は、例えば、λ2=0.244と定められている。
第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sは、図1に示すように、第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sと一体化(常時連結)されており、当該第1サンギヤ21sと常時一体(かつ同軸)に回転または停止する。ただし、第1サンギヤ21sと第2サンギヤ22sとは、別体に構成されると共に図示しない連結部材(第1連結部材)を介して常時連結されてもよい。また、第2遊星歯車22の第2キャリヤ22cは、出力軸20oに常時連結されており、当該出力軸20oと常時一体(かつ同軸)に回転または停止する。これにより、第2キャリヤ22cは、第2遊星歯車22の出力要素として機能する。更に、第2遊星歯車22の第2リングギヤ22rは、当該第2遊星歯車22の固定可能要素として機能する。
ラビニヨ式遊星歯車機構25は、外歯歯車である第3サンギヤ23sおよび第4サンギヤ24sと、第3サンギヤ23sと同心円上に配置される内歯歯車である第3リングギヤ23rと、第3サンギヤ23sに噛合する複数の第3ピニオンギヤ(ショートピニオンギヤ)23pと、第4サンギヤ24sおよび複数の第3ピニオンギヤ23pに噛合すると共に第3リングギヤ23rに噛合する複数の第4ピニオンギヤ(ロングピニオンギヤ)24pと、複数の第3ピニオンギヤ23pおよび複数の第4ピニオンギヤ24pを自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持する第3キャリヤ23cとを有する。
このようなラビニヨ式遊星歯車機構25は、ダブルピニオン式遊星歯車(第3遊星歯車)とシングルピニオン式遊星歯車(第4遊星歯車)とを組み合わせて構成される複合遊星歯車列である。すなわち、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23s、第3キャリヤ23c、第3および第4ピニオンギヤ23p,24p、並びに第3リングギヤ23rは、ダブルピニオン式の第3遊星歯車を構成する。更に、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第4サンギヤ24s、第3キャリヤ23c、第4ピニオンギヤ24p、および第3リングギヤ23rは、シングルピニオン式の第4遊星歯車を構成する。そして、本実施形態において、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、ダブルピニオン式の第3遊星歯車のギヤ比λ3(第3サンギヤ23sの歯数/第3リングギヤ23rの歯数)が、例えば、λ3=0.488となり、かつシングルピニオン式の第4遊星歯車のギヤ比λ4(第4サンギヤ24sの歯数/第3リングギヤ23rの歯数)が、例えば、λ4=0.581となるように構成される。
また、ラビニヨ式遊星歯車機構25(第3および第4遊星歯車)を構成する回転要素のうち、第4サンギヤ24sは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の固定可能要素(自動変速機20の第2固定可能要素)として機能する。更に、第3キャリヤ23cは、図1に示すように、入力軸20iに常時連結(固定)されると共に、連結部材(第2連結部材)としての中間軸20mを介して第1遊星歯車21の第1キャリヤ21cに常時連結される。これにより、エンジンから入力軸20iに動力が伝達されている際、第3キャリヤ23cには、エンジンからの動力が入力軸20iを介して常時伝達されることになる。従って、第3キャリヤ23cは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の入力要素として機能する。また、第3リングギヤ23rは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第1出力要素として機能し、第3サンギヤ23sは、当該ラビニヨ式遊星歯車機構25の第2出力要素として機能する。
クラッチC1は、常時連結された第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1出力要素である第3リングギヤ23rとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、常時連結された第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sとラビニヨ式遊星歯車機構25の第2出力要素である第3サンギヤ23sとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC3は、第2遊星歯車22の第2リングギヤ22rとラビニヨ式遊星歯車機構25の第1出力要素である第3リングギヤ23rとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC4は、第1遊星歯車21の出力要素である第1リングギヤ21rと出力軸20oとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。
ブレーキB1は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の固定可能要素である第4サンギヤ24sを静止部材としてのトランスミッションケース11に対して回転不能に固定(接続)すると共に当該第4サンギヤ24sをトランスミッションケース11に対して回転自在に解放するものである。ブレーキB2は、第2遊星歯車22の固定可能要素である第2リングギヤ22rをトランスミッションケース11に対して回転不能に固定(接続)すると共に当該第2リングギヤ22rを静止部材としてのトランスミッションケース11に対して回転自在に解放するものである。
本実施形態では、クラッチC1〜C4として、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、それぞれ作動油が供給される係合油室および遠心油圧キャンセル室等により構成される油圧サーボを有する多板摩擦式油圧クラッチ(摩擦係合要素)が採用される。また、ブレーキB1およびB2としては、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、作動油が供給される係合油室等により構成される油圧サーボを有する多板摩擦式油圧ブレーキが採用される。そして、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2は、油圧制御装置により作動油が給排されることで動作する。
図2に自動変速機20の各変速段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2の作動状態との関係を表した作動表を示し、図3に自動変速機20における入力軸20iの回転速度(入力回転速度)に対する各回転要素の回転速度の比を示す速度線図を示す。自動変速機20は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2を図2の作動表に示す状態とすることで、第1速段から第10速段までの前進段と後進段とを提供する。
また、第1および第2遊星歯車21,22並びにラビニヨ式遊星歯車機構25の10個の回転要素(ただし、第1サンギヤ21sと第2サンギヤ22sとが常時連結されているので、実質的には合計9個の回転要素)は、これらのギヤ比λ1,λ2,λ3,λ4に応じた間隔をおいて図3における左側から図示される順番で並ぶ。このような速度線図上での並び順に従い、本実施形態では、第1サンギヤ21sを自動変速機20の第1回転要素とし、第1キャリヤ21cを自動変速機20の第2回転要素とし、第1リングギヤ21rを自動変速機20の第3回転要素とする。また、第2サンギヤ22sを自動変速機20の第4回転要素とし、第2キャリヤ22cを自動変速機20の第5回転要素とし、第2リングギヤ22rを自動変速機20の第4回転要素とする。更に、第4サンギヤ24sを自動変速機20の第7回転要素とし、第3キャリヤ23cを自動変速機20の第8回転要素とし、第3リングギヤ23rを自動変速機20の第9回転要素とし、第3サンギヤ23sを自動変速機20の第10回転要素とする。
なお、第1および第2遊星歯車21,22並びに第3および第4遊星歯車のギヤ比λ1〜λ4は、上述のものに限られない。また、自動変速機20において、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2の少なくとも何れかは、ドグクラッチあるいはドグブレーキといった噛み合い係合要素とされてもよい。例えば、自動変速機20では、前進第1速段から前進第4速段の形成に際して連続して係合されると共に、後進段の形成に際して係合されるブレーキB2として、ドグブレーキが採用されてもよい。更に、自動変速機20において、第1および第2遊星歯車21,22の少なくとも何れかは、ダブルピニオン式の遊星歯車であってもよく、ラビニヨ式遊星歯車機構25は、例えばシンプソン型やCR−CR型といった複合遊星歯車列に置き換えられてもよい。また、上述の自動変速機20は、前輪駆動車両に搭載される変速機に改変されてもよい。
続いて、図4から図8を参照しながら、自動変速機20の具体的構成について詳細に説明する。
図4および図5は、自動変速機20を示す要部拡大断面図である。これらの図面は、自動変速機20に含まれるクラッチC1およびC2の周辺の構成を示すものである。本実施形態において、クラッチC1は、第2遊星歯車22に近接するように当該第2遊星歯車22とラビニヨ式遊星歯車機構25との間に配置される。また、クラッチC2は、クラッチC1の構成部材により少なくとも一部が囲まれると共にラビニヨ式遊星歯車機構25(第3遊星歯車)に近接するように第2遊星歯車22とラビニヨ式遊星歯車機構25との間に配置される。
クラッチC1およびC2は、上述のように、第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sを共通の接続対象要素とする。このため、クラッチC1およびC2は、図4および図5に示すように、第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sに常時連結(固定)されると共にクラッチC1のクラッチハブおよびクラッチC2のクラッチドラムとして機能するドラム部材120を共用する。また、クラッチC1は、上述のように、クラッチC3と同様にラビニヨ式遊星歯車機構25の第3リングギヤ23rを共通の接続対象要素とする。このため、クラッチC1およびC3は、第3リングギヤ23rに常時連結(固定)されると共にクラッチC1のクラッチドラムおよびクラッチC3のクラッチハブとして機能するドラム部材130を共用する。
ドラム部材120は、クラッチC1およびC2により共用される筒状部121と、筒状部121の内周面から径方向内側に延出された環状部122とを含む。筒状部121の第2遊星歯車22側(図3および図4における右側)の半部の外周面には、スプライン121aが形成されており、筒状部121のラビニヨ式遊星歯車機構25側(図3および図4における左側)の半部の内周面には、スプライン121bが形成されている。また、環状部122の内周部は、連結部材125に溶接され、ドラム部材120は、当該連結部材125を介して、クラッチC1およびC2の接続対象要素である第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sに常時連結(固定)される。
ドラム部材130は、クラッチC1により利用されるドラム部131と、ドラム部131から径方向内側に延出された環状壁部132と、クラッチC3により利用される図示しないハブ部と、筒状の支持部135とを含む。本実施形態において、ドラム部131、環状壁部132、ハブ部および支持部135は、例えばアルミニウム合金等を鋳造することにより一体に成形される。ドラム部131は、クラッチC1およびC3の接続対象要素であるラビニヨ式遊星歯車機構25の第3リングギヤ23rに常時連結(固定)される開口側端部(図4および図5における左端部)を有する。また、ドラム部131の内周面には、スプライン131a(図5参照)が形成されており、ドラム部131(円筒部)の外周面は、凹凸を有さない円柱面状に形成されている。これにより、ドラム部131の厚みを大きくすることなく、その強度を確保することが可能となる。
ドラム部材130のハブ部は、環状壁部132からドラム部131の開口側端部とは反対側(図4および図5における右側)に延出され、本実施形態では、ドラム部131よりも小さい外径を有する筒状に形成されている。また、ハブ部の外周面には、スプラインが形成されており、当該ハブ部の内周面は、凹凸を有さない凹円柱面状に形成されている。これにより、ハブ部の厚みを大きくすることなく、その強度を確保することが可能となる。支持部135は、本実施形態において、環状壁部132の内周部から第2遊星歯車22およびラビニヨ式遊星歯車機構25側に軸方向に延出され、ブッシュあるいはラジアル軸受等を介して上記連結部材125の外周面により回転自在に支持される。
上述のドラム部材120,130を構成部材とするクラッチC1は、当該ドラム部材120,130に加えて、複数の摩擦プレート(摩擦係合プレート)101と、摩擦プレート101と交互に配設される複数のセパレータプレート(摩擦係合プレート)102およびバッキングプレートと、摩擦プレート101およびセパレータプレート102を押圧して摩擦係合させるピストン140と、ピストン140を摩擦プレート101およびセパレータプレート102から離間するように付勢する複数のリターンスプリング(コイルバネ)SP1と、環状のキャンセルプレート(キャンセル室画成部材)170とを含む。
クラッチC1の複数の摩擦プレート101(それぞれの内周部)は、ドラム部材130のドラム部131によって包囲されるドラム部材120の筒状部121のスプライン121aに嵌合される。これにより、複数の摩擦プレート101は、筒状部121と一体に回転すると共に軸方向に移動可能となるようにクラッチハブとして機能するドラム部材120により支持される。また、クラッチC1の複数のセパレータプレート102(それぞれの外周部)は、ドラム部材130のドラム部131の内周面に形成されたスプライン131aに嵌合される。これにより、複数のセパレータプレート102は、ドラム部131と一体に回転すると共に軸方向に移動可能となるようにクラッチドラムとして機能するドラム部材130により支持される。
ピストン140は、ドラム部材130の環状壁部132とドラム部材120の筒状部121との軸方向における間に配置され、ドラム部材130と一体に回転すると共に軸方向に移動自在となるように当該ドラム部材130の支持部135により支持される。図4および図5に示すように、ピストン140は、ドラム部材130の環状壁部132および支持部135と共にクラッチC1の係合油室(第1係合油室)150を画成する。また、キャンセルプレート170は、ピストン140とドラム部材120の環状部122との軸方向における間、すなわちピストン140に対してドラム部材130の環状壁部132とは反対側に配置され、スナップリングを用いて当該支持部135に固定される。図4および図5に示すように、キャンセルプレート170は、ピストン140および支持部135と共に係合油室150内で発生する遠心油圧をキャンセルするための遠心油圧キャンセル室(第1遠心油圧キャンセル室)190を画成する。これにより、クラッチC1の係合油室150および遠心油圧キャンセル室190は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3リングギヤ23r(第1出力要素)と一体に回転するドラム部材130、ピストン140およびキャンセルプレート170により画成される。
クラッチC1の係合油室150には、入力軸20iや連結部材125、ドラム部材130の支持部135等に形成された油路を介して油圧制御装置により調圧されたクラッチC1への係合油圧(作動油)が供給される。また、遠心油圧キャンセル室190には、入力軸20iや連結部材125、ドラム部材130の支持部135等に形成された油路を介して油圧制御装置からの作動油(例えば、潤滑・冷却用のドレン油)が供給される。複数のリターンスプリングSP1は、ピストン140とキャンセルプレート170との間に位置するように遠心油圧キャンセル室190の内部に周方向に間隔をおいて配設される。なお、クラッチC1のリターンスプリングSP1として、複数のコイルバネの代わりに単一の板バネが用いられてもよい。
上述のドラム部材120を構成部材とするクラッチC2は、当該ドラム部材120に加えて、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23sから常時連結された第1および第2サンギヤ21s,22s(他の回転要素)に動力を伝達する動力伝達部材としてのクラッチハブ200と、複数の摩擦プレート(第1摩擦係合プレート)201と、複数のセパレータプレート202(第2摩擦係合プレート)およびバッキングプレートと、摩擦プレート201およびセパレータプレート202を押圧して摩擦係合させるピストン240と、キャンセル室画成部材270と、ピストン240を摩擦プレート201およびセパレータプレート202から離間するように付勢する複数のリターンスプリング(コイルバネ)SP2とを含む。
クラッチハブ200は、図4および図5に示すように、複数のセパレータプレート202およびバッキングプレートの内周部が嵌合されるハブ部材(ハブ部)210と、ピストン240を支持する支持部材220とを含む。ハブ部材210は、例えばアルミニウム合金等により形成されており、筒状部211と、筒状部211の一端(図4および図5における左端)から径方向内側に延びる環状壁部212とを有する。すなわち、筒状部211と環状壁部212とは、アルミニウム合金等を鋳造することにより一体に成形される。また、支持部材220は、鉄合金等により形成されており、筒状のシャフト部221と、当該シャフト部221の一端から径方向外側に延びる環状の係合油室画成部222とを有する。すなわち、シャフト部221と係合油室画成部222とは、鉄合金等を鍛造することにより一体に成形される。図4および図5に示すように、クラッチハブ200の支持部材220(シャフト部221)は、ラジアル軸受を介して入力軸20iにより同軸かつ回転自在に支持される。
ハブ部材210の筒状部211は、図6および図8に示すように、外周面に形成されたスプライン211sと、それぞれ当該筒状部211すなわちスプライン211sの歯先部を径方向に貫通する複数の油孔211hとを有する。なお、複数の油孔211hのうち、筒状部211の両端側に位置する一部は、図4および図5に示すように、筒状部211の径方向に対して若干傾斜するように形成される。ハブ部材210の環状壁部212は、支持部材220のシャフト部221に緩くスプライン嵌合(遊嵌)される内周部213を有する。すなわち、内周部213の内周面には、図6から図8に示すように、スプライン213sが形成されており、当該スプライン213sは、シャフト部221の先端部(遊端部)の外周面に形成されたスプライン221s(図4参照)に緩く嵌合される。内周部213のスプライン213sと、シャフト部221のスプライン221sとは、内側スプライン嵌合部SLiを構成する。
更に、環状壁部212は、筒状部211よりも径方向内側かつ内周部213よりも径方向外側で筒状部211とは反対側(図4および図5における左側、すなわちラビニヨ式遊星歯車機構25側)に突出する筒状の突出部214を有する。突出部214の軸長は、図4および図5に示すように、環状壁部212の内周部213の軸長よりも長く定められており、突出部214の内周面には、図6および図7に示すように、スプライン214sが形成されている。突出部214のスプライン214sは、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23s(第2出力要素)から軸方向に延出された軸部23saの外周面に形成されたスプラインに嵌合される。突出部214のスプライン214sと、第3サンギヤ23sのスプラインとは、外側スプライン嵌合部SLoを構成する。
突出部214は、上述のように、環状壁部212の内周部213よりも径方向外側に位置する。従って、ハブ部材210と第3サンギヤ23sとの嵌合部である外側スプライン嵌合部SLoは、ハブ部材210とシャフト部221(支持部材220)との嵌合部である内側スプライン嵌合部SLiよりも径方向外側に位置することになる。また、環状壁部212の内周部213は、上述のように、突出部214の軸長よりも短い軸長を有する。従って、内側スプライン嵌合部SLiの軸方向における長さは、外側スプライン嵌合部SLoの軸方向における長さよりも短くなる。
本実施形態において、外側スプライン嵌合部SLoの周方向におけるクリアランス、すなわち、突出部214のスプライン214sの歯面と、軸部23saのスプラインの歯面との周方向におけるクリアランスは、極小さく定められている。これにより、突出部214の内周部は、クラッチC2の接続対象要素である第3サンギヤ23sと一体に回転するように軸部23saにきつくスプライン嵌合される。これに対して、内側スプライン嵌合部SLiの周方向におけるクリアランス、すなわち、内周部213のスプライン213sの歯面と、シャフト部221のスプライン221sの歯面との周方向におけるクリアランスは、外側スプライン嵌合部SLoの周方向におけるクリアランスより大きく定められている。これにより、支持部材220のシャフト部221に対して回転しないように当該シャフト部221に遊嵌される。すなわち、互いに一体に成形されたシャフト部221および係合油室画成部222を有する支持部材220は、内側スプライン嵌合部SLiによりハブ部材210に対して回り止めされる。
また、第3サンギヤ23sにスプライン嵌合されるハブ部材210の突出部214は、図4および図5に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3キャリヤ23cの一部、すなわち第3ピニオンギヤ23pや第4ピニオンギヤ24pに挿通されるピニオンシャフト26の端部を支持するシャフト支持部23csの径方向内側に位置する。図示するように、第3キャリヤ23cのシャフト支持部23csの内周面には、各ピニオンシャフト26の内部に形成された軸方向油路(シャフト内油路)26aと連通するように集油部(凹部)23caが形成されている。突出部214は、当該集油部23caにより包囲される。なお、集油部23caは、必ずしも第3キャリヤ23c(シャフト支持部23cs)に形成される必要はなく、第3キャリヤ23cに装着されるオイルレシーバに形成されてもよい。
そして、ハブ部材210の突出部214には、図6および図7に示すように、複数の隆起部214pが周方向に間隔をおいて(等間隔に)形成されている。各隆起部214pは、突出部214の外周面よりも第3キャリヤ23cのシャフト支持部23csに形成された集油部23ca側に突出しており、概ね平坦な頂面214psを有する。更に、突出部214には、それぞれ対応する隆起部214p(突出部214)を貫通して当該隆起部214pの頂面214psで開口する複数(本実施形態では、例えば4個)の油孔214hが周方向に間隔をおいて(等間隔に)形成されている。すなわち、各油孔214hの径方向外側(第3キャリヤ23c側)の開口は、隆起部214pにより取り囲まれる。また、各油孔214hは、図4および図5に示すように、突出部214の内周面から径方向外側に向かうにつれて第3キャリヤ23cの集油部23ca(ラビニヨ式遊星歯車機構25)に近接するように傾斜する。
クラッチC2の接続対象要素である第3サンギヤ23sは、図5に示すように、ギヤ部および軸部23saを軸方向に貫通する中心孔部23scを有しており、当該中心孔部23scには、突出部214の内周面よりも径方向内側で支持部材220のシャフト部221の先端部がインロー嵌合される。これにより、クラッチC2の接続対象要素である第3サンギヤ23sをクラッチハブ200のシャフト部221により入力軸20iに対して調心することが可能となる。更に、シャフト部221の先端部には、支持部材220に対するハブ部材210の軸方向における移動を規制するスナップリング216が装着され、当該スナップリング216とハブ部材210の内周部213との間には、鉄合金製の環状板体であるスペーサ217が介設される。図示するように、スナップリング216の外周面は、第3サンギヤ23sの内周面により径方向外側から支持され、それにより、スナップリング216が径方向に拡張するのを抑制することが可能となる。
また、図4および図5に示すように、スペーサ217(内周部213)と第3サンギヤ23sの軸部23saの端面とは、間隔をおいて対向し、スペーサ217と第3サンギヤ23sの軸部23saの端面との間の空間は、突出部214の各油孔214hと連通する。更に、第3サンギヤ23sの軸部23saには、スペーサ217と第3サンギヤ23sの軸部23saの端面との間の空間と、中心孔部23scの内側とを連通させる複数の油溝23sgが形成されている。そして、第3サンギヤ23sの各油溝23sgには、入力軸20iに形成された油孔20ih等を介して油圧制御装置からの作動油(例えば、潤滑・冷却用のドレン油)が供給される。
これにより、第3サンギヤ23sおよびクラッチハブ200が一体に回転すると、入力軸20iの油孔20ih、第3サンギヤ23sの油溝23sg、スペーサ217と第3サンギヤ23sの軸部23saの端面との間の空間、および突出部214の各油孔214hを介して、第3キャリヤ23cの集油部23caに潤滑・冷却媒体としての作動油が遠心力により供給される。集油部23caにより捕集された作動油は、遠心力により各ピニオンシャフト26の軸方向油路26aに流入し、当該軸方向油路26aと連通する径方向油路(シャフト内油路)26bを介して第3および第4ピニオンギヤ23p,24pを支持するニードルベアリングに供給される。
クラッチC2の複数の摩擦プレート201(それぞれの内周部)は、上記ドラム部材120の筒状部121のラビニヨ式遊星歯車機構25側(図3および図4における左側)の半部に形成されたスプライン121bに嵌合される。これにより、複数の摩擦プレート201は、筒状部121と一体に回転すると共に軸方向に移動可能となるようにクラッチドラムとして機能するドラム部材120により支持される。また、クラッチC2の複数のセパレータプレート202およびバッキングプレート(それぞれの外周部)は、クラッチハブ200の筒状部211の外周面に形成されたスプライン211s(図6および図8参照)に嵌合される。これにより、複数のセパレータプレート202は、筒状部211と一体に回転すると共に軸方向に移動可能となるようにクラッチハブ200により支持される。
クラッチC2のピストン240は、図4および図5に示すように、支持部材220のシャフト部221により軸方向に移動自在に支持される受圧部241と、受圧部241の外周部から軸方向に延出される筒状の延出部242と、ラビニヨ式遊星歯車機構25から最も離間したセパレータプレート202と当接するように延出部242の遊端部から径方向外側に延出されたプレート押圧部243とを有する。ピストン240は、受圧部241がシャフト部221のスプライン221sよりも係合油室画成部222側に位置するように当該シャフト部221に軸方向に移動自在となるように嵌合され、ドラム部材120の筒状部121によって包囲される。
ピストン240の延出部242の内周面は、係合油室画成部222の外周面に摺接し、延出部242の内周面と係合油室画成部222の外周面との間には、シール部材223が配置される。これにより、ピストン240の受圧部241、延出部242および支持部材220の係合油室画成部222とによりクラッチC2の係合油室250が画成される。係合油室250には、入力軸20iやシャフト部221等に形成された油路を介して油圧制御装置により調圧されたクラッチC2への係合油圧(作動油)が供給され、ピストン240の受圧部241は、当該係合油圧を受圧する。
また、ピストン240の受圧部241には、係合油室画成部222に向けて突出する複数の突部241pが周方向に間隔をおいて(本実施形態では、180°間隔で2個)形成されている。更に、係合油室画成部222には、複数の凹部222rが周方向に間隔をおいて(本実施形態では、180°間隔で2個)形成されている。ピストン240の各突部241pは、係合油室画成部222の対応する凹部222rに遊嵌される。このように、突部241pと凹部222rとを係合させることで、ピストン240を係合油室画成部222すなわち支持部材220に対して回り止めすると共に、当該支持部材220(シャフト部221および係合油室画成部222)を介してハブ部材210に対して回り止めすることが可能となる。なお、突部241pおよび凹部222rは、ピストン240または係合油室画成部222に少なくとも1個設けられればよく、3個以上設けられてもよい。また、係合油室画成部222に少なくとも1個の突部が設けられてもよく、ピストン240に当該突部と係合する凹部が設けられてもよい。
クラッチC2のキャンセル室画成部材270は、ハブ部材210の筒状部211内に嵌合され、係合油室250内で発生する遠心油圧をキャンセルするための遠心油圧キャンセル室290をピストン240と共に画成する。これにより、自動変速機20において、クラッチC2の係合油室250および遠心油圧キャンセル室290は、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23s(第2出力要素)と一体に回転するクラッチハブ200、ピストン240およびキャンセル室画成部材270によって筒状部211の内側に画成される。遠心油圧キャンセル室290には、入力軸20iやシャフト部221等に形成された油路を介して油圧制御装置からの作動油(例えば、潤滑・冷却用のドレン油)が供給される。
キャンセル室画成部材270は、図4および図5に示すように、ハブ部材210の筒状部211内に嵌合される円筒状のスリーブ部271と、スリーブ部271の一端(図4および図5における左端)から径方向内側に延出されると共にハブ部材210の環状壁部212の表面に沿って延びる環状のフランジ部272とを有する。スリーブ部271の内周面は、ピストン240の延出部242の外周面に摺接し、スリーブ部271の内周面と延出部242の外周面との間には、シール部材244が配置される。更に、フランジ部272とピストン240の受圧部241との間には、複数のリターンスプリングSP2が周方向に並ぶように配設される。各リターンスプリングSP2の一端(図4および図5における右端)は、ピストン240の受圧部241に形成された複数のスプリング保持凹部の対応する何れかに嵌合され、各リターンスプリングSP2の他端は、キャンセル室画成部材270により支持されるスプリングシートにより保持される。これにより、専用の固定部品等を用いることなく、キャンセル室画成部材270を複数のリターンスプリングSP2によりハブ部材210に押し付けてクラッチハブ200に対して固定することが可能となる。なお、クラッチC2のリターンスプリングSP2として、複数のコイルバネの代わりに単一の板バネが用いられてもよい。
また、ハブ部材210の筒状部211の内周面は、凹円柱面状に形成されており、当該筒状部211の遊端部の内周面には、径方向内側に突出すると共にキャンセル室画成部材270のスリーブ部271の外周面に全周にわたって当接する環状突部211aが形成されている。更に、ハブ部材210の環状壁部212には、キャンセル室画成部材270のフランジ部272に当接する複数の円弧状の突部212pがそれぞれリターンスプリングSP2と対向するように周方向に間隔をおいて(本実施形態では、等間隔に5個)形成されている。また、キャンセル室画成部材270のフランジ部272の内周部には、環状壁部212に向けて突出して当該環状壁部212の表面と当接する複数の当接部272c(図4参照)が周方向に間隔をおいて形成されている。
これにより、キャンセル室画成部材270は、複数のリターンスプリングSP2によりハブ部材210に押し付けられることで、筒状部211の内周面および環状壁部212のピストン240側の表面と共に潤滑油室275を画成する。すなわち、筒状部211の内周面とスリーブ部271の外周面との間には、一端(図4および図5における右端)が環状突部211aにより閉鎖された環状の空間(油溜め)が画成される。また、突部212pと当接したフランジ部272の表面と環状壁部212の表面との間には、当該環状の空間に連通する空間と、互いに隣り合う突部212pの間に延在する複数の連通路が画成される。更に、フランジ部272の互いに隣り合う当接部272cの間には、図4および図5に示すように、複数の連通口273が形成される。
この結果、潤滑油室275は、筒状部211の内周面および環状壁部212の表面に沿って延びると共に、複数の連通口273を介して支持部材220のシャフト部221側、すなわちクラッチハブ200の内周側で遠心油圧キャンセル室290と連通する。また、潤滑油室275は、筒状部211に形成された複数の油孔211hを介して、当該筒状部211の外側すなわち摩擦プレート201およびセパレータプレート202側と連通する。なお、本実施形態では、スリーブ部271の遊端部271aが全周にわたって径方向外側に向けて湾曲させられており、当該遊端部271aの内周面は、R形状を有している。これにより、スリーブ部271内にシール部材244が装着されたピストン240(延出部242)を嵌合する際に、シール部材244を損傷させてしまうのを良好に抑制することが可能となる。
引き続き、自動変速機20の動作等について説明する。
上述の自動変速機20において、前進第1速段、第3速段、第5速段、または第10速段の形成に伴ってクラッチC2が係合されると、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23s(第2出力要素)から出力されるトルクが、クラッチハブ200、セパレータプレート202、摩擦プレート201、ドラム部材120、連結部材125を介して、常時連結された第1遊星歯車21の第1サンギヤ21sおよび第2遊星歯車22の第2サンギヤ22sに伝達される。ここで、クラッチC2では、ハブ部材210の突出部214が第3サンギヤ23sと一体に回転するように軸部23saにきつくスプライン嵌合されるのに対して、環状壁部212の内周部213は、ハブ部材210が支持部材220に対して回転しないようにシャフト部221に緩くスプライン嵌合(遊嵌)されている。すなわち、内周部213のスプライン213sとシャフト部221のスプライン221sとにより構成される内側スプライン嵌合部SLiの周方向におけるクリアランスは、突出部214のスプライン214sと第3サンギヤ23sのスプラインとにより構成される外側スプライン嵌合部SLoの周方向におけるクリアランスよりも大きい。
従って、自動変速機20のクラッチC2では、支持部材220、すなわち互いに一体に成形されるシャフト部221および係合油室画成部222をハブ部材210に対して回り止めしつつ、シャフト部221および係合油室画成部222にハブ部材210からトルクが伝達されないようにすることができる。これにより、支持部材220、すなわち互いに一体化されたシャフト部221および係合油室画成部222、ひいてはクラッチハブ200の全体を小型・軽量化しつつ、耐久性を向上させることが可能となる。
また、外側スプライン嵌合部SLoは、内側スプライン嵌合部SLiよりも径方向外側に位置する。従って、突出部214と第3サンギヤ23sとの嵌合部である外側スプライン嵌合部SLoにおけるトルク半径をより大きくすることができるので、突出部214の軸長を短縮化してクラッチC2の軸長の増加を抑制することが可能となる。更に、環状壁部212の内周部213と支持部材220のシャフト部221との嵌合部である内側スプライン嵌合部SLiを介してトルクが伝達されないことから、内側スプライン嵌合部SLiすなわち内周部213は、支持部材220(シャフト部221および係合油室画成部222)をハブ部材210に対して回り止めすることができる程度の軸長を有していればよい。従って、クラッチC2では、環状壁部212の内周部213の軸方向における長さを突出部214の軸方向における長さよりも短くすることで、軸長をより短縮化することが可能となる。
そして、自動変速機20では、前進第3速段、第5速段および第10速段が形成される際、クラッチC2に加えてブレーキB1が係合されることによりラビニヨ式遊星歯車機構25の第4サンギヤ24s(固定可能要素)が回転不能に固定される(図2参照)。これにより、ラビニヨ式遊星歯車機構25によって第3サンギヤ23s(第2出力要素)の回転速度が第3リングギヤ23r(第1出力要素)の回転速度よりも高くなるように入力軸20iから第3キャリヤ23c(入力要素)に伝達された動力が増速され、第3サンギヤ23sおよび第3リングギヤ23rに伝達される(図3参照)。これにより、自動変速機20の作動中、ラビニヨ式遊星歯車機構25の第3サンギヤ23s(および第3リングギヤ23r)は、後進段の形成時を除いて、第3キャリヤ23cすなわち入力軸20i以上の回転速度で回転する。従って、クラッチC2のクラッチハブ200の小型・軽量化を図ると共に耐久性を向上させることで、入力軸20iや第3リングギヤ23rよりも高速で回転する第3サンギヤ23sおよびそれと一体に回転するクラッチハブ200の回転時のイナーシャを低減化して自動変速機20の変速性能を向上させると共に、当該自動変速機20の耐久性を良好に確保することが可能となる。
また、クラッチC2では、ピストン240の受圧部241に係合油室画成部222に向けて突出する複数の突部241pが形成されており、係合油室画成部222には、それぞれ突部241pと係合する凹部222rが形成されている。これにより、クラッチC2の大型化を抑制しつつ、支持部材220、すなわち互いに一体に成形されるシャフト部221および係合油室画成部222によりピストン240をハブ部材210に対して回り止めすることができる。従って、ピストン240と係合油室画成部222との相対回転や、ピストン240とハブ部材210との相対回転を良好に規制してピストン240や係合油室画成部222の摩耗を良好に抑制し、クラッチハブ200の耐久性を向上させることが可能となる。更に、突部241pをピストン240の受圧部241に形成することで、受圧部241の肉厚の減少を抑制して、ピストン240の耐久性を良好に確保することができる。加えて、入力軸20iや第3リングギヤ23rよりも高速で回転する第3サンギヤ23sおよびそれと一体に回転するクラッチハブ200の構成部材同士の相対回転を良好に規制して耐久性を向上させることで、自動変速機20の耐久性をより向上させることが可能となる。
更に、クラッチC2では、ハブ部材210の筒状部211および環状壁部212とピストン240とにより画成される空間がキャンセル室画成部材270によって遠心油圧キャンセル室290と潤滑油室275とに仕切られ、遠心油圧キャンセル室290と潤滑油室275とは、クラッチハブ200の支持部材220のシャフト部221側で互いに連通する。これにより、筒状部211の内側に画成される遠心油圧キャンセル室290に供給される作動油の一部を潤滑油室275に流入させ、筒状部211の周囲に配置される摩擦プレート201およびセパレータプレート202に潤滑・冷却用の作動油を良好に供給することが可能となる。そして、入力軸20iや第3リングギヤ23rよりも高速で回転する第3サンギヤ23sを接続対象要素とするクラッチC2の摩擦プレート201およびセパレータプレート202に潤滑・冷却用の作動油を良好に供給可能とすることで、自動変速機20の耐久性をより一層向上させることが可能となる。加えて、クラッチC2では、ハブ部材210の筒状部211に長尺の斜め孔を穿設する必要がなくなるので、加工コストの増加やクラッチハブ200の耐久性低下を良好に抑制することができる。
また、キャンセル室画成部材270は、ハブ部材210の筒状部211内に嵌合されるスリーブ部271と、スリーブ部271の一端から径方向内側に延出されたフランジ部272とを有し、スリーブ部271の内周面とピストン240の延出部242との間には、シール部材244が配置される。そして、フランジ部272とピストン240との間には、複数のリターンスプリングSP2が周方向に並ぶように配設される。これにより、専用の固定部品等を用いることなく、キャンセル室画成部材270を複数のリターンスプリングSP2によりハブ部材210に押し付けてクラッチハブ200に対して固定することが可能となる。
更に、ハブ部材210の筒状部211の遊端部の内周面には、径方向内側に突出すると共にスリーブ部271の外周面に当接する環状突部211aが形成され、ハブ部材210の環状壁部212には、フランジ部272に当接する複数の突部212pがリターンスプリングSP2と対向するように周方向に間隔をおいて形成されている。フランジ部272の内周部には、環状壁部212に向けて突出して当該環状壁部212の表面と当接する複数の当接部272cが周方向に間隔をおいて形成され、互いに隣り合う当接部272cの間に、潤滑油室275と遠心油圧キャンセル室290とを連通させる連通口273が形成される。これにより、筒状部211の内周面および環状壁部212の表面に沿って延びるように潤滑油室275を画成すると共に、筒状部211の遊端部からの作動油の流出を規制し、かつ潤滑油室275を支持部材220のシャフト部221側で遠心油圧キャンセル室290と連通させることが可能となる。
また、クラッチハブ200(ハブ部材210)の突出部214は、それぞれ当該突出部214の外周面よりも集油部23ca側に突出する複数の隆起部214pと、それぞれ径方向外側に向かうにつれて第3キャリヤ23cの集油部23caに近接するように傾斜すると共に突出部214を貫通して隆起部214pの頂面214psで開口する複数の油孔214hとを有する。このように突出部214に形成された各隆起部214pの頂面214psで油孔214hを開口させ、各油孔214hの第3キャリヤ23c側の開口を隆起部214pにより取り囲むことで、第3サンギヤ23sと共にクラッチハブ200が高速で回転しても、各油孔214hの開口から流出した油が突出部214の外周面を伝ってしまうのを抑制することができる。従って、クラッチハブ200の突出部214に形成された各油孔214hから第3キャリヤ23cにより支持される複数のピニオンシャフト26の軸方向油路26a等に潤滑・冷却用の作動油を良好に供給することが可能となる。
更に、第3サンギヤ23sの軸部23saは、クラッチハブ200のシャフト部221の先端部がインロー嵌合される中心孔部23scと、当該中心孔部23scの内側と突出部214の各油孔214hとを連通させる油溝23sgとを有する。これにより、第3サンギヤ23sの中心孔部23scに作動油を供給すれば、ハブ部材210の突出部214の各油孔214hに当該作動油を供給することが可能となる。また、ハブ部材210の環状壁部212の内周部213は、突出部214の内周面(スプライン214s)よりも径方向内側で支持部材220のシャフト部221に遊嵌され、第3サンギヤ23sの軸部23saの端面と間隔をおいて対向する。これにより、支持部材220のシャフト部221をハブ部材210に対して回り止めしつつ、第3サンギヤ23sの油溝23sgと突出部214の各油孔214hとを連通させることが可能となる。
以上説明したように、本発明による変速装置は、サンギヤ、リングギヤおよび複数のピニオンギヤを回転自在に支持するプラネタリキャリヤを有する遊星歯車と、前記遊星歯車の前記サンギヤから他の回転要素に動力を伝達する動力伝達部材とを備え、入力部材に伝達された動力を変速して出力部材に伝達する変速装置において、前記動力伝達部材は、径方向に延びる環状壁部と、前記環状壁部から前記遊星歯車側に延びると共に前記サンギヤに連結される筒状の突出部とを有し、前記遊星歯車の前記プラネタリキャリヤは、それぞれ前記ピニオンギヤに挿通される複数のピニオンシャフトの端部を支持するシャフト支持部と、前記ピニオンシャフトのシャフト内油路と連通する集油部とを有し、前記動力伝達部材の前記突出部は、それぞれ該突出部の外周面よりも前記プラネタリキャリヤの前記集油部側に突出する複数の隆起部と、それぞれ径方向外側に向かうにつれて前記集油部に近接するように傾斜すると共に前記突出部を貫通して前記隆起部の頂面で開口する複数の油孔とを有することを特徴とする。
この変速装置の動力伝達部材は、径方向に延びる環状壁部と、環状壁部から遊星歯車側に延びると共にサンギヤに連結される筒状の突出部とを有する。また、遊星歯車のプラネタリキャリヤは、それぞれピニオンギヤに挿通される複数のピニオンシャフトの端部を支持するシャフト支持部と、ピニオンシャフトのシャフト内油路と連通するように形成された集油部とを有する。更に、動力伝達部材の突出部は、それぞれ当該突出部の外周面よりもプラネタリキャリヤの集油部側に突出する複数の隆起部と、それぞれ径方向外側に向かうにつれて集油部に近接するように傾斜すると共に突出部を貫通して隆起部の頂面で開口する複数の油孔とを有する。このように突出部に形成された各隆起部の頂面で油孔を開口させることで、サンギヤと共にクラッチハブが回転する際に、各油孔の開口から流出した油が突出部の外周面を伝ってしまうのを抑制することができる。従って、動力伝達部材の突出部に形成された油孔からプラネタリキャリヤにより支持されるピニオンシャフトのシャフト内油路に潤滑・冷却用の油を良好に供給することが可能となる。
また、前記変速装置は、摩擦プレートと、セパレータプレートと、クラッチハブと、前記摩擦プレートおよび前記セパレータプレートを押圧するピストンとを有し、前記遊星歯車の前記サンギヤを前記他の回転要素に接続するクラッチを更に備えてもよく、前記動力伝達部材は、前記クラッチハブであってもよく、前記クラッチハブは、前記摩擦プレートまたは前記セパレータプレートの内周部が嵌合される筒状部および前記筒状部の一端から径方向内側に延びるように該筒状部と一体に成形された前記環状壁部を有するハブ部と、前記ピストンを移動自在に支持する筒状のシャフト部と、係合油圧が供給される係合油室を前記ピストンと共に画成する係合油室画成部とを含んでもよく、前記突出部は、前記ハブ部の前記環状壁部から前記筒状部よりも径方向内側で該筒状部とは反対側に突出してもよく、前記突出部の内周部が前記サンギヤの軸部にスプライン嵌合されてもよい。これにより、クラッチハブの突出部に形成された油孔からプラネタリキャリヤにより支持されるピニオンシャフトのシャフト内油路に潤滑・冷却用の油を良好に供給することが可能となる。
更に、前記サンギヤの前記軸部は、前記クラッチハブの前記シャフト部の先端部が嵌合される中心孔部と、前記中心孔部の内側と前記突出部の前記油孔とを連通させる油溝とを有してもよい。これにより、サンギヤの中心孔部に油を供給すれば、ハブ部の突出部の各油孔に当該油を供給することが可能となる。
また、前記ハブ部の前記環状壁部の内周部は、前記突出部の内周面よりも径方向内側で前記シャフト部に遊嵌され、前記サンギヤの前記軸部と間隔をおいて対向してもよい。これにより、シャフト部をハブ部に対して回り止めしつつ、サンギヤの油溝と突出部の各油孔とを連通させることが可能となる。
更に、前記変速装置は、入力要素と、固定可能要素と、第1出力要素および第2出力要素とを有するラビニヨ式遊星歯車機構と、複数の回転要素を有する第1遊星歯車と、複数の回転要素を有し、前記第1遊星歯車よりも前記ラビニヨ式遊星歯車機構に近接して配置される第2遊星歯車と、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記固定可能要素を静止部材に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除する第1ブレーキと、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、前記第1および第2遊星歯車の回転要素の少なくとも何れか1つとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除する第1クラッチと、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第2出力要素と、前記第1および第2遊星歯車の回転要素の少なくとも何れか1つとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除する第2クラッチとを更に備えてもよく、前記ラビニヨ式遊星歯車機構は、前記固定可能要素が前記第1ブレーキにより回転不能に固定された際に、前記第2出力要素の回転速度が前記第1出力要素の回転速度よりも高くなるように前記入力要素に伝達された動力を増速して前記第1および第2出力要素に伝達してもよく、前記クラッチは、前記第2クラッチであってもよく、前記サンギヤは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第2出力要素であってもよく、前記プラネタリキャリヤは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記入力要素であってもよい。
この変速装置のラビニヨ式遊星歯車機構は、固定可能要素がブレーキにより回転不能に固定された際に、上記クラッチ(第2クラッチ)の接続対象要素であるサンギヤすなわち第2出力要素の回転速度が第1出力要素の回転速度よりも高くなるように入力要素に伝達された動力を増速して第1および第2出力要素に伝達する。従って、上記クラッチ(第2クラッチ)のクラッチハブの突出部に隆起部を形成しておけば、当該クラッチハブがサンギヤと共に高速で回転しても、各油孔の開口から流出した油が突出部の外周面を伝ってしまうのを抑制することができる。この結果、上記クラッチ(第2クラッチ)のクラッチハブに形成された油孔からプラネタリキャリヤ(ラビニヨ式遊星歯車機構の入力要素)により支持されるピニオンシャフトのシャフト内油路に潤滑・冷却用の油を良好に供給することが可能となる。
また、前記変速装置は、第3クラッチ、第4クラッチおよび第2ブレーキを更に備えてもよく、前記第1遊星歯車は、第1サンギヤ、第1キャリヤおよび第1リングギヤを有してもよく、前記第2遊星歯車は、第2サンギヤ、第2キャリヤおよび第2リングギヤを有してもよく、前記第1遊星歯車の前記第1サンギヤと前記第2遊星歯車の前記第2サンギヤとは、常時連結されてもよく、前記第1遊星歯車の前記第1キャリヤは、前記入力部材および前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記入力要素に常時連結されてもよく、前記第2遊星歯車の前記第2キャリヤは、前記出力部材に常時連結されてもよく、前記第1クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、常時連結された前記第1および第2サンギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第2クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第2出力要素と、常時連結された前記第1および第2サンギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第3クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、前記第2遊星歯車の前記第2リングギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第4クラッチは、前記第1遊星歯車の前記第1リングギヤと前記第2遊星歯車の前記第2キャリヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除してもよく、前記第2ブレーキは、前記第2遊星歯車の前記第2リングギヤを前記静止部材に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除してもよい。
そして、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
本発明は、クラッチや変速装置の製造産業等において利用可能である。
10 動力伝達装置、11 トランスミッションケース、12 発進装置、13 フロントカバー、14o ワンウェイクラッチ、14p ポンプインペラ、14s ステータ、14t タービンランナ、15 ロックアップクラッチ、16 ダンパ機構、17 オイルポンプ、20 自動変速機、20i 入力軸、20ih 油孔、20m 中間軸、20o 出力軸、21 第1遊星歯車、21c 第1キャリヤ、21p 第1ピニオンギヤ、21r 第1リングギヤ、21s 第1サンギヤ、22 第2遊星歯車、22c 第2キャリヤ、22p 第2ピニオンギヤ、22r 第2リングギヤ、22s 第2サンギヤ、23c 第3キャリヤ、23ca 集油部、23cs シャフト支持部、23p 第3ピニオンギヤ、23r 第3リングギヤ、23s 第3サンギヤ、23sa 軸部、23sc 中心孔部、23sg 油溝、24p 第4ピニオンギヤ、24s 第4サンギヤ、25 ラビニヨ式遊星歯車機構、26 ピニオンシャフト、26a 軸方向油路、26b 径方向油路、101 摩擦プレート、102 セパレータプレート、120 ドラム部材、121 筒状部、121a,121b スプライン、122 環状部、125 連結部材、130 ドラム部材、131 ドラム部、131a スプライン、132 環状壁部、135 支持部、140 ピストン、150 係合油室、170 キャンセルプレート、190 遠心油圧キャンセル室、200 クラッチハブ、201 摩擦プレート、202 セパレータプレート、210 ハブ部材、211 筒状部、211a 環状突部、211h 油孔、211s スプライン、212 環状壁部、212p 突部、212r スプリング保持凹部、213 内周部、213s スプライン、214 突出部、214h 油孔、214p 隆起部、214ps 頂面、214s スプライン、216 スナップリング、217 スペーサ、220 支持部材、221 シャフト部、221s スプライン、222 係合油室画成部、222r 凹部、223 シール部材、240 ピストン、241 受圧部、241p 突部、242 延出部、243 プレート押圧部、244 シール部材、250 係合油室、270 キャンセル室画成部材、271 スリーブ部、271a 遊端部、272 フランジ部、272c 当接部、273 連通口、275 潤滑油室、290 遠心油圧キャンセル室、B1,B2 ブレーキ、C1,C2,C3,C4 クラッチ、SLi 内側スプライン嵌合部、SLo 外側スプライン嵌合部、SP1,SP2 リターンスプリング。

Claims (6)

  1. サンギヤ、リングギヤおよび複数のピニオンギヤを回転自在に支持するプラネタリキャリヤを有する遊星歯車と、前記遊星歯車の前記サンギヤから他の回転要素に動力を伝達する動力伝達部材とを備え、入力部材に伝達された動力を変速して出力部材に伝達する変速装置において、
    前記動力伝達部材は、径方向に延びる環状壁部と、前記環状壁部から前記遊星歯車側に延びると共に前記サンギヤに連結される筒状の突出部とを有し、
    前記遊星歯車の前記プラネタリキャリヤは、それぞれ前記ピニオンギヤに挿通される複数のピニオンシャフトの端部を支持するシャフト支持部と、前記ピニオンシャフトのシャフト内油路と連通する集油部とを有し、
    前記動力伝達部材の前記突出部は、それぞれ該突出部の外周面よりも前記プラネタリキャリヤの前記集油部側に突出する複数の隆起部と、それぞれ径方向外側に向かうにつれて前記集油部に近接するように傾斜すると共に前記突出部を貫通して前記隆起部の頂面で開口する複数の油孔とを有することを特徴とする変速装置。
  2. 請求項1に記載の変速装置において、
    摩擦プレートと、セパレータプレートと、クラッチハブと、前記摩擦プレートおよび前記セパレータプレートを押圧するピストンとを有し、前記遊星歯車の前記サンギヤを前記他の回転要素に接続するクラッチを更に備え、
    前記動力伝達部材は、前記クラッチハブであり、
    前記クラッチハブは、前記摩擦プレートまたは前記セパレータプレートの内周部が嵌合される筒状部および前記筒状部の一端から径方向内側に延びるように該筒状部と一体に成形された前記環状壁部を有するハブ部と、前記ピストンを移動自在に支持する筒状のシャフト部と、係合油圧が供給される係合油室を前記ピストンと共に画成する係合油室画成部とを含み、
    前記突出部は、前記ハブ部の前記環状壁部から前記筒状部よりも径方向内側で該筒状部とは反対側に突出し、
    前記突出部の内周部が前記サンギヤの軸部にスプライン嵌合されることを特徴とする変速装置。
  3. 請求項2に記載の変速装置において、
    前記サンギヤの前記軸部は、前記クラッチハブの前記シャフト部の先端部がインロー嵌合される中心孔部と、前記中心孔部の内側と前記突出部の前記油孔とを連通させる油溝とを有することを特徴とする変速装置。
  4. 請求項3に記載の変速装置において、
    前記ハブ部の前記環状壁部の内周部は、前記突出部の内周面よりも径方向内側で前記シャフト部に遊嵌され、前記サンギヤの前記軸部と間隔をおいて対向することを特徴とする変速装置。
  5. 請求項2から4の何れか一項に記載の変速装置において、
    入力要素と、固定可能要素と、第1出力要素および第2出力要素とを有するラビニヨ式遊星歯車機構と、
    複数の回転要素を有する第1遊星歯車と、
    複数の回転要素を有し、前記第1遊星歯車よりも前記ラビニヨ式遊星歯車機構に近接して配置される第2遊星歯車と、
    前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記固定可能要素を静止部材に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除する第1ブレーキと、
    前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、前記第1および第2遊星歯車の回転要素の少なくとも何れか1つとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除する第1クラッチと、
    前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第2出力要素と、前記第1および第2遊星歯車の回転要素の少なくとも何れか1つとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除する第2クラッチとを更に備え、
    前記ラビニヨ式遊星歯車機構は、前記固定可能要素が前記第1ブレーキにより回転不能に固定された際に、前記第2出力要素の回転速度が前記第1出力要素の回転速度よりも高くなるように前記入力要素に伝達された動力を増速して前記第1および第2出力要素に伝達し、
    前記クラッチは、前記第2クラッチであり、前記サンギヤは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第2出力要素であり、前記プラネタリキャリヤは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記入力要素であることを特徴とする変速装置。
  6. 請求項5に記載の変速装置において、
    第3クラッチ、第4クラッチおよび第2ブレーキを更に備え、
    前記第1遊星歯車は、第1サンギヤ、第1キャリヤおよび第1リングギヤを有し、
    前記第2遊星歯車は、第2サンギヤ、第2キャリヤおよび第2リングギヤを有し、
    前記第1遊星歯車の前記第1サンギヤと前記第2遊星歯車の前記第2サンギヤとは、常時連結され、
    前記第1遊星歯車の前記第1キャリヤは、前記入力部材および前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記入力要素に常時連結され、
    前記第2遊星歯車の前記第2キャリヤは、前記出力部材に常時連結され、
    前記第1クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、常時連結された前記第1および第2サンギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除し、
    前記第2クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第2出力要素と、常時連結された前記第1および第2サンギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除し、
    前記第3クラッチは、前記ラビニヨ式遊星歯車機構の前記第1出力要素と、前記第2遊星歯車の前記第2リングギヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除し、
    前記第4クラッチは、前記第1遊星歯車の前記第1リングギヤと前記第2遊星歯車の前記第2キャリヤとを互いに接続すると共に、両者の接続を解除し、
    前記第2ブレーキは、前記第2遊星歯車の前記第2リングギヤを前記静止部材に接続して回転不能に固定すると共に、両者の接続を解除することを特徴とする変速装置。
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