本発明に係る一実施形態の流体圧緩衝器を図面を参照して以下に説明する。
図1に示す本実施形態の流体圧緩衝器1は、作動流体として作動液体が用いられる液圧緩衝器であり、より具体的には作動液体として油液が用いられる油圧緩衝器である。流体圧緩衝器1は、主に自動2輪車または4輪自動車のサスペンション装置に用いられて振動を緩衝するものである。
流体圧緩衝器1は、円筒状の内筒2と、内筒2より大径で内筒2との間にリザーバ室3を形成するように同軸状に配置される外筒4とを有している。つまり、この流体圧緩衝器1は、そのシリンダ5が内筒2と外筒4とを有する複筒式となっている。流体圧緩衝器1は、内筒2の中心軸線上に配置されるとともに軸方向一側が内筒2の内部に挿入され軸方向他側が内筒2および外筒4から外部に延出されるロッド15と、このロッド15の一端部に連結され、シリンダ5の内筒2内に摺動可能に嵌装されて内筒2内を2つの室16,17に仕切るピストン18(仕切部材)とを有している。ロッド15は、一端側がピストン18に連結されると共に、他端側がシリンダ5の外部に延出されている。
なお、本発明は、複筒式に限らず単筒式の液圧緩衝器に用いることができ、さらには、作動流体として気体を用いる緩衝器等にも適用可能である。
ロッド15は、一端部に連結されたピストン18と一体的に移動することになり、他端部がシリンダ5つまり内筒2および外筒4から外部に突出している。シリンダ5は、その内筒2内に、作動液体としての油液が封入されることになり、内筒2と外筒4との間のリザーバ室3には、作動液体としての油液および高圧ガスが封入されることになる。なお、リザーバ室3内には、高圧ガスにかえて大気圧の空気を封入してもよい。
流体圧緩衝器1は、シリンダ5におけるロッド15が突出する側の端部位置に配置されるロッドガイド21と、シリンダ5のロッド15が突出する側の端部位置であってシリンダ5の軸方向における内外方向のロッドガイド21よりも外部側(図1の上下方向上側)に配置されるシール部材22と、シリンダ5の軸方向のロッドガイド21およびシール部材22とは反対側の端部の内側に配置されるベースバルブ23とを有している。
ロッドガイド21およびシール部材22は、いずれも環状をなしており、それぞれの内側にロッド15が摺動可能に挿通される。ロッドガイド21は、ロッド15を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このロッド15の移動を案内する。シール部材22は、その内周部で、軸方向に移動するロッド15の外周部に摺接して、内筒2内の油液と外筒4内のリザーバ室3の高圧ガスおよび油液とがシリンダ5から外部に漏洩するのを防止する。
シリンダ5の外筒4は、円筒状の胴部材31と、この胴部材31におけるロッド15の突出側とは反対の一端側を閉塞する底部材32とを有することにより、有底円筒状をなしている。胴部材31は、ロッド15の突出側の開口部33の位置から径方向内方に突出する係止部34を有している。外筒4の開口部33側には係止部34およびシール部材22を覆うようにカバー36が取り付けられている。底部材32の外側には取付アイ37が固定されている。
シリンダ5の内筒2は、円筒状をなしており、軸方向の一端側が、外筒4の底部材32の内側に配置されるベースバルブ23のベースボディ41に嵌合状態で支持され、軸方向の他端側が外筒4の開口部33の内側に嵌合されるロッドガイド21に嵌合状態で支持されている。
ベースボディ41は、金属製で略円板状をなしており、シリンダ5内を、内筒2内の室17と、内筒2およびベースボディ41と外筒4との間のリザーバ室3との2室に仕切っている。ベースボディ41は、外周部の軸方向一側に他側よりも小径となる段差部42が形成されており、この段差部42において内筒2の軸方向一端側の内周部に嵌合する。また、ベースボディ41は、軸方向他側の外周側に軸方向に突出する複数の突出足部43を有しており、これらの突出足部43において、底部材32に当接して径方向および軸方向に位置決めされる。これらの突出足部43の間は、ベースボディ41を径方向に貫通する流路溝44となっており、流路溝44も周方向に間隔をあけて複数カ所(図1では断面とした関係上1カ所のみ図示)形成されている。流路溝44によって、ベースバルブ23および内筒2の径方向外側の部分からベースバルブ23と底部材32との間の部分までの範囲が連通して、リザーバ室3になる。
図2に示すように、ベースボディ41には、径方向の中央に挿通穴51が軸方向に貫通するように形成されている。また、ベースボディ41には、その軸方向の突出足部43とは反対側に、挿通穴51よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の内側シート部54と、内側シート部54よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の中間シート部55と、中間シート部55よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の外側シート部56とが形成されている。さらに、ベースボディ41には、その軸方向の突出足部43側に、挿通穴51よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の内側シート部58と、内側シート部58よりも径方向の外側かつ突出足部43よりも径方向の内側にて軸方向に突出する円環状の外側シート部59とが形成されている。
ここで、ベースボディ41の軸方向において、内側シート部54、中間シート部55および外側シート部56は、互いに高さ位置を一致させている。また、ベースボディ41の軸方向において、外側シート部59は、内側シート部58よりも突出方向の高さ位置が若干高くなっている。
ベースボディ41は、一端が内側シート部54と中間シート部55との間に開口し、他端が内側シート部58と外側シート部59との間に開口して軸方向に貫通する流路穴62が、周方向に間隔をあけて複数カ所(図2では片側断面とした関係上1カ所のみ図示)形成されている。また、ベースボディ41には、一端が中間シート部55と外側シート部56との間に開口し、他端が外側シート部59よりも径方向の内側シート部58とは反対側に開口して軸方向に貫通する流路穴63が周方向に間隔をあけて複数カ所(図2では片側断面とした関係上1カ所のみ図示)形成されている。内側の流路穴62は、室17とリザーバ室3との間で作動液を流通させる一方の流路64を形成している。外側の流路穴63は、室17とリザーバ室3との間で作動液を流通させる他方の流路65を形成している。流路65は、リザーバ室3に常時連通している。
ベースバルブ23は、金属製の取付ピン71を有しており、取付ピン71は、ベースボディ41の挿通穴51に挿通される軸部72と、軸部72の一端に設けられたこれよりも大径の頭部73とを有している。なお、軸部72の頭部73とは反対側の他端には、加締めにより軸部72よりも大径の加締部74が形成されている。
ベースバルブ23は、ベースボディ41の軸方向の突出足部43側に、ベースボディ41側から順に、いずれも金属製の、減衰バルブとして作用するディスクバルブ81、リテーナ82およびバルブ規制部材83を有している。また、ベースバルブ23は、ベースボディ41の軸方向の突出足部43とは反対側に、ベースボディ41側から順に、いずれも金属製の、サクションバルブとして作用するディスクバルブ91、リテーナ92、バネ部材93、バルブ規制部材94を有している。
リザーバ室3側のディスクバルブ81は、複数枚、具体的には3枚の同形状のディスク105が軸方向に重ねられて構成されている。これらディスク105、リテーナ82およびバルブ規制部材83は、円環状であって有孔円板状である。ディスクバルブ81を構成するディスク105、リテーナ82およびバルブ規制部材83は、それぞれの内周側に取付ピン71の軸部72が嵌合されることになり、この状態で、ベースボディ41の内側シート部58と取付ピン71の加締部74とによって少なくとも内周側がクランプされる。
室17側のディスクバルブ91、リテーナ92およびバルブ規制部材94は、円環状であって有孔円板状である。ディスクバルブ91には、その内周部と外周部との間に流路64に常時連通する貫通孔96が形成されている。バネ部材93は、円環状であって有孔円板状の環状部101と、環状部101の外周縁部から径方向外方に向かって延出する複数(図2では片側断面とした関係上1カ所のみ図示)の脚部102とを有している。ディスクバルブ91、リテーナ92、バネ部材93およびバルブ規制部材94は、それぞれの内周側に取付ピン71の軸部72が嵌合されることになり、この状態で、ベースボディ41の内側シート部54と取付ピン71の頭部73とによって少なくとも内周側がクランプされる。
バネ部材93は、内周側の環状部101においてリテーナ92とバルブ規制部材94とに当接してクランプされることになり、外周側の複数の脚部102は、先端側ほどディスクバルブ91に近づくように環状部101に対し傾斜して直線状に延出し、ディスクバルブ91に当接する。
リザーバ室3側のディスクバルブ81を構成する複数枚のディスク105の外径は、外側シート部59の先端の外径より若干大径となっている。ディスクバルブ81は、内周側がベースボディ41の内側シート部58およびリテーナ82に当接してクランプされると共に、外周側が外側シート部59に当接して内側の流路64を閉じる。
そして、ディスクバルブ81は、図1に示すロッド15が縮み側に移動しピストン18が室17側に移動して室17の圧力が上昇すると、室17とリザーバ室3との差圧で変形し、図2に示す外側シート部59から離座して流路64を開く。これにより、流路64は、ロッド15が縮み側に移動したときに流体が室17からリザーバ室3に向け流通することになり、ディスクバルブ81は、この流路64を開閉し減衰力を発生させる縮み側のディスクバルブとなっている。なお、ディスクバルブ81は、ピストン18に設けられた縮み側の後述する図3に示すディスクバルブ191との関係から、主としてロッド15のシリンダ5への進入により生じる液の余剰分を排出するように室17からリザーバ室3に液を流す機能を果たす。なお、縮み側のディスクバルブ81にかえて、シリンダ内圧が高くなったときに圧力をリリーフするリリーフ弁を設けてもよい。
図2に示すように、リテーナ82は、その外径が、ディスクバルブ81の外径よりも小径であって内側シート部58の先端の外径よりも若干小径となっている。バルブ規制部材83は、その外径が、ディスクバルブ81の外径よりも若干小径であって外側シート部59の先端の外径と同径となっている。バルブ規制部材83は、ディスクバルブ81が外側シート部59から離れる方向に所定量変形したときに、ディスクバルブ81に当接してそれ以上のディスクバルブ81の変形を規制する。言い換えれば、バルブ規制部材83は、ディスクバルブ81の開弁位置を規制して、そのリフト量を抑える。
ベースボディ41の内側シート部58、外側シート部59および流路64と、ディスクバルブ81と、リテーナ82と、バルブ規制部材83とが、ベースバルブ23に設けられた縮み側のバルブ機構108を構成している。
室17側のディスクバルブ91は、その外径が、外側シート部56の先端の外径よりも若干大径となっている。ディスクバルブ91は、内周側がベースボディ41の内側シート部54およびリテーナ92に当接してクランプされると共に、外周側がベースボディ41の中間シート部55および外側シート部56に当接して流路65を閉じる。このディスクバルブ91は、貫通孔96を介して、内側の流路64を常に室17に連通させている。
ディスクバルブ91は、内周側がベースボディ41の内側シート部54とリテーナ82とに当接してクランプされると共に、外周側が中間シート部55と外側シート部56とに当接して外側の流路65を閉じる。そして、ディスクバルブ91は、図1に示すロッド15が伸び側に移動しピストン18が室16側に移動して室17の圧力が下降すると、リザーバ室3と室17との差圧で変形し、図2に示す外側シート部56から離座して流路65を開く。これにより、流路65は、ロッド15が伸び側に移動したときに流体がリザーバ室3から室17に向け流通することになり、ディスクバルブ91は、この流路65を開閉する伸び側のディスクバルブとなっている。なお、ディスクバルブ91は、ピストン18に設けられた後述する図3に示す伸び側のディスクバルブ181との関係から、主としてロッド15のシリンダ5からの突出に伴う液の不足分を補うようにリザーバ室3から室17に液を実質的に抵抗なく(減衰力が出ない程度)流す機能を果たす。
リテーナ92は、その外径が、ディスクバルブ91の外径よりも小径であって内側シート部54の先端の外径よりも若干大径となっている。リテーナ92は、その外径が、バネ部材93の環状部101の外径よりも若干小径となっている。
バネ部材93は、内周側にある環状部101がリテーナ92とバルブ規制部材94とにクランプされることになり、環状部101から径方向に延出する外周側の複数の脚部102でディスクバルブ91に常時接触しこれを軸方向のベースボディ41側に付勢する。言い換えれば、バネ部材93の複数の脚部102は、ディスクバルブ91と当接することで、これを閉弁方向に付勢する。
バルブ規制部材94は、その外径が、ディスクバルブ91の外径よりも若干小径であって外側シート部56の先端の外径と同等になっている。バルブ規制部材94は、ディスクバルブ91がバネ部材93の付勢力に抗して外側シート部56から離れる方向に所定量変形したときに、ディスクバルブ91に当接してそれ以上のディスクバルブ91の変形を規制する。言い換えれば、バルブ規制部材94は、ディスクバルブ91の開弁位置を規制して、そのリフト量を抑える。バルブ規制部材94には、その内周部と外周部との間に貫通穴128が形成されている。
ベースボディ41の内側シート部54、中間シート部55、外側シート部56および流路65と、ディスクバルブ91と、リテーナ92と、バネ部材93と、バルブ規制部材94とが、ベースバルブ23に設けられた伸び側のバルブ機構109を構成している。
図1に示すように、シリンダ5の内筒2内に摺動可能に嵌装されるピストン18は、ロッド15の内筒2内に配置される端部にナット111によって固定されている。
ロッド15は、主軸部115と、シリンダ5の内部に配置される側の端部にあって主軸部115より小径の取付軸部116とを有しており、これにより、主軸部115には取付軸部116側の端部に軸直交方向に沿う段面117が形成されている。取付軸部116には、主軸部115とは反対側の所定範囲に上記したナット111を螺合させるオネジ118が形成されている。ピストン18は、ロッド15の取付軸部116にナット111によって固定されている。
ここで、室16は、ピストン18とロッドガイド21との間に形成されており、その内側にロッド15が貫通するロッド側室となっている。室17は、ピストン18とベースバルブ23との間に形成されており、シリンダ5における底部材32側、すなわち底側にあるボトム側室である。ロッド15は、室17の内側は貫通していない。
ロッド15には、主軸部115のピストン18とロッドガイド21との間の部分に、いずれも円環状のストッパ部材121および緩衝体122が設けられている。ストッパ部材121は、内周側にロッド15を挿通させており、加締められて主軸部115に固定されている。緩衝体122は、内側にロッド15が挿通されており、ストッパ部材121とロッドガイド21との間に配置されている。緩衝体122は、ロッド15が伸び切り位置に移動したときに、ロッドガイド21に当接して衝撃を吸収する。
図3に示すように、ピストン18は、ロッド15の取付軸部116に取り付けられる略円板状の金属製のピストン本体125と、ピストン本体125の外周面に装着されて、内筒2内に摺接する合成樹脂製の摺接部材126とを有している。
ピストン本体125は、摺接部材126が装着される円環状の主体部131と、主体部131の軸方向の室17側に設けられる円環状の鍔状部132とを有している。ピストン本体125には、径方向の中央に挿通穴151が軸方向に貫通するように形成されている。鍔状部132は主体部131の内周側に繋がっており、主体部131の外周側に対しては軸方向に離間するように主体部131の内周側から径方向外方に広がっている。
ピストン本体125の主体部131には、その軸方向の鍔状部132とは反対側に、挿通穴151よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の内側シート部154と、内側シート部154よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の中間シート部155と、中間シート部155よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の外側シート部156とが形成されている。ピストン本体125の鍔状部132には、挿通穴151よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の内側シート部158と、内側シート部158よりも径方向の外側にて軸方向に突出する円環状の外側シート部159とが形成されている。
ここで、ピストン本体125の軸方向において、内側シート部154、中間シート部155および外側シート部156は、互いに高さ位置を一致させている。また、ピストン本体125の軸方向において、外側シート部159は、内側シート部158よりも突出方向の高さ位置が高くなっている。
ピストン本体125は、一端が内側シート部154と中間シート部155との間に開口し、他端が内側シート部158と外側シート部159との間に開口して軸方向に貫通する流路穴162が、周方向に間隔をあけて複数カ所(図3では片側断面とした関係上1カ所のみ図示)形成されている。また、ピストン本体125には、一端が中間シート部155と外側シート部156との間に開口し、他端が主体部131の鍔状部132側に開口して主体部131を軸方向に貫通する流路穴163が周方向に間隔をあけて複数カ所(図3では片側断面とした関係上1カ所のみ図示)形成されている。内側の流路穴162は、室16と室17との間で作動液を流通させる一方の流路164を形成している。外側の流路穴163は、室16と室17との間で作動液を流通させる他方の流路165を形成している。
ピストン18には、ピストン本体125の軸方向の鍔状部132側に、ピストン本体125側から順に、いずれも金属製の、複数枚のリテーナ180、ディスクバルブ181、リテーナ182、バルブ規制ディスク183およびバルブ規制部材184が設けられている。また、ピストン18には、ピストン本体125の軸方向の鍔状部132とは反対側に、ピストン本体125側から順に、いずれも金属製の、ディスクバルブ191、バネ部材192、複数枚のリテーナ193およびバルブ規制部材194(規制部材)が設けられている。
室17側のディスクバルブ181は、複数枚、具体的には5枚の互いに外径が異なるディスク205が軸方向に重ねられて構成されている。複数枚のリテーナ180は、互いに同一外径である。複数枚のリテーナ180、複数枚のディスク205、リテーナ182、バルブ規制ディスク183およびバルブ規制部材184は、円環状であって有孔円板状である。複数枚のリテーナ180、複数枚のディスク205、リテーナ182、バルブ規制ディスク183およびバルブ規制部材184は、それぞれの内周側にロッド15の取付軸部116が嵌合されることになり、この状態で、ピストン本体125の内側シート部158とナット111とによって少なくとも内周側がクランプされる。
室16側のディスクバルブ191、複数枚のリテーナ193およびバルブ規制部材194は、円環状であって有孔円板状である。ディスクバルブ191には、その内周部と外周部との間に流路164に常時連通する貫通孔196が形成されている。バネ部材192は、円環状であって平坦な有孔円板状の環状部201と、環状部201の外周縁部から径方向外方に向かって延出する複数(図3では片側断面とした関係上1カ所のみ図示)の脚部202とを有している。ディスクバルブ191、バネ部材192、複数枚のリテーナ193およびバルブ規制部材194は、それぞれの内周側にロッド15の取付軸部116が嵌合されることになり、この状態で、ピストン本体125の内側シート部154とロッド15の主軸部115の段面117とによって少なくとも内周側がクランプされる。このとき、バネ部材192は、環状部201においてディスクバルブ191とリテーナ193とにクランプされることになる。
室17側の複数枚のリテーナ180は、同一外径であり、厚さが同一のものや異なるものが適宜組み合わせられて軸方向に重ねられている。複数枚のリテーナ180のうちの最もピストン本体125側のものが内側シート部158に当接する。複数枚のリテーナ180は、外径が内側シート部158の先端の外径と同等になっている。リテーナ182は、その外径が、リテーナ180の外径よりも若干小径となっている。
室17側のディスクバルブ181は、円環状であって有孔円板状の複数枚の径が異なるディスク205が軸方向に重ねられて構成されるもので、最も軸方向のピストン18側のディスク205の外径が、外側シート部159の先端の外径より若干大径となっている。ディスクバルブ181は、内周側がリテーナ180およびリテーナ182に当接してクランプされると共に、外周側が外側シート部159に当接して内側の流路164を閉じる。
そして、ディスクバルブ181は、図1に示すロッド15が伸び側に移動しピストン18が室16側に移動して室16の圧力が上昇すると、室16と室17との差圧で変形し、図3に示す外側シート部159から離座して内側の流路164を開く。これにより、ピストン18に設けられた内側の流路164は、ロッド15が伸び側に移動したときに流体が室16から室17に向け流通することになり、ディスクバルブ181は、この流路164を開閉して減衰力を発生させる伸び側のディスクバルブとなっている。なお、ディスクバルブ181とピストン18との間には、ディスクバルブ181が閉じた状態でも室16と室17とを流路164を介して連通させる図示略の固定オリフィスが設けられている。
バルブ規制ディスク183は、その外径がリテーナ182の外径よりも大径であって、ディスクバルブ181の最大外径よりも小径となっている。
バルブ規制部材184は、その外径が、バルブ規制ディスク183の外径よりも若干小径となっている。バルブ規制ディスク183およびバルブ規制部材184は、ディスクバルブ181が外側シート部159から離れる方向に所定量変形したときに、バルブ規制ディスク183においてディスクバルブ181に当接してそれ以上のディスクバルブ181の変形を規制する。言い換えれば、バルブ規制ディスク183およびバルブ規制部材184は、ディスクバルブ181の開弁位置を規制して、そのリフト量を抑える。
ピストン18の内側シート部158、外側シート部159および流路164と、複数枚のリテーナ180と、ディスクバルブ181と、リテーナ182と、バルブ規制ディスク183と、バルブ規制部材184とが、ピストン18に設けられた伸び側のバルブ機構208を構成している。
室16側のディスクバルブ191は、その外径が、外側シート部156の先端の外径よりも若干大径となっている。ディスクバルブ191は、内周側が、ピストン18の内側シート部154およびバネ部材192の環状部201に当接してクランプされると共に、外周側がピストン18の中間シート部155および外側シート部156に当接して外側の流路165を閉じる。このディスクバルブ191は、貫通孔196を介して、内側の流路164を常に室16に連通させている。
ディスクバルブ191は、上記したように、内周側が内側シート部154およびバネ部材192の環状部201にクランプされると共に、外周側が中間シート部155と外側シート部156とに当接して流路165を閉じる。そして、ディスクバルブ191は、図1に示すロッド15が縮み側に移動しピストン18が室17側に移動して室17の圧力が上昇すると、室17と室16との差圧で変形し、図3に示す外側シート部156から離座して流路165を開く。これにより、流路165は、ロッド15が縮み側に移動したときに流体が室17から室16に向け流通することになり、ディスクバルブ191は、この流路165を開閉して減衰力を発生させる縮み側のディスクバルブとなっている。
流路165は、シリンダ5内を一側室である室16と他側室である室17とに仕切る仕切部材であるピストン18に設けられ、シリンダ5の内部へ進入する方向にロッド15が移動したときに作動流体が流通する。環状のディスクバルブ191は、仕切部材であるピストン18の室16側に設けられ、内周側がクランプされ、外周側が流路165を開閉する。
図4に示すように、バネ部材192には、脚部202が複数、具体的には5つ設けられている。これらの脚部202は、いずれも同形状であり、環状部201の周方向の等間隔位置から放射状に延出している。脚部202は、円環状の環状部201の径方向において、最も環状部201側にある基端延出部211と、基端延出部211の環状部201とは反対側の中間延出部212と、中間延出部212の基端延出部211とは反対側にあって最も環状部201とは反対側にある先端延出部213と、からなっている。バネ部材192は一枚の板部材からプレス成形により形成されている。
基端延出部211は、環状部201の外周縁部から環状部201の径方向における外方に直線状に延出しており、図3に示すように、環状部201から径方向に離れるほど環状部201に対しその軸方向にも離れるように傾斜している。
中間延出部212は、基端延出部211の環状部201とは反対側の端部から環状部201の径方向における外方に直線状に延出しており、環状部201から径方向に離れるほど環状部201に対しその軸方向に近づくように傾斜している。
先端延出部213は、中間延出部212の基端延出部211とは反対側の端部から環状部201の径方向における外方に直線状に延出している。バネ部材192がロッド15に組み付けられる前の単体の状態にあって外力を受けない状態で、先端延出部213は、環状部201の軸方向において環状部201よりも基端延出部211とは反対側に若干オフセットしている。中間延出部212は、環状部201の径方向における長さが先端延出部213よりも長く、基端延出部211は、環状部201の径方向における長さが中間延出部212よりも長くなっている。
基端延出部211と中間延出部212とが、環状部201側の基端から先端に向かって一旦環状部201からその軸方向に離間し、先端側が環状部201にその軸方向に近づくように、逆V字状に屈曲する屈曲部215となる。
このバネ部材192は、その環状部201が、上記のようにディスクバルブ191、複数枚のリテーナ193およびバルブ規制部材194と共にロッド15の取付軸部116に嵌合されて軸方向にクランプされると、脚部202の屈曲部215が、環状部201側の基端から先端に向かってディスクバルブ191から一旦離間し、先端側がディスクバルブ191に当接するように屈曲することになり、先端延出部213がディスクバルブ191に当接する。すなわち、バネ部材192は、屈曲部215が、環状部201よりもバルブ規制部材194側に突出するようにロッド15に取り付けられる。バネ部材192は、その最大外径である、複数の先端延出部213の先端位置を通る外接円の径が、ディスクバルブ191の外径よりも小径で、中間シート部155の先端の外径と外側シート部156の先端の内径との間の径となっている。
このバネ部材192は、ディスクバルブ191のピストン18とは反対側に設けられ、径方向内方がディスクバルブ191と共に軸方向にクランプされる環状部201となり、この環状部201から先端側が径方向外方に向かって延出すると共にディスクバルブ191と当接することでディスクバルブ191を閉弁方向に付勢する複数の脚部202を有する。言い換えれば、バネ部材192は、内周側にある環状部201でリテーナ193とディスクバルブ191とにクランプされることになり、環状部201から径方向に延出する複数の脚部202でディスクバルブ191に常時接触しこれを軸方向のピストン18側に付勢する。バネ部材192は、複数の脚部202によって所定のセット荷重をディスクバルブ191に付与する。複数の脚部202の先端延出部213は、図3に示すように変形前のディスクバルブ191に当接する状態では、環状部201と同一平面に配置される。
ディスクバルブ191は、上記のように外側シート部156から離座して流路165を開く際に、バネ部材192の付勢力に抗してこのバネ部材192の複数の脚部202をピストン18から軸方向に離れる方向に変形させながら、変形する。
複数枚のリテーナ193は、円環状であって同一外径であり、厚さが同一のものや異なるものが適宜組み合わせられて軸方向に重ねられている。複数枚のリテーナ193は、その外径が、内側シート部154の先端の外径と同等になっており、バネ部材192の環状部201の外径と同等になっている。
バルブ規制部材194は、円環状であって有孔円板状である。バルブ規制部材194は、円環状であって平坦な有孔円板状をなす主板部221と、主板部221の外周縁部からその軸方向一側に突出する円環状の突出部222とを有している。突出部222は、主板部221の外周縁部からその軸方向一側に、径方向外側に広がりながら斜めに突出する円環状の突出基端部225と、突出基端部225の突出先端側から径方向外方に広がる有孔円板状であって平坦な有孔円板状の突出先端部226とからなっている。突出先端部226は、主板部221と平行に広がっており、主板部221と同等の厚さ、すなわち軸方向長さとなっている。
主板部221には、内周部と外周部との間に軸方向に貫通する貫通穴228が形成されている。貫通穴228は、主板部221の周方向に等間隔で複数(図3では片側断面とした関係上1カ所のみ図示)形成されている。
突出先端部226は、軸方向の主板部221とは反対側が、バルブ規制部材194の軸直交方向に広がる平面からなる規制面231となっており、この規制面231の径方向の内周端縁部には、規制面231から軸方向に離れ、軸方向に離れるほど小径となる突出基端部225の内周面232が繋がっている。この突出基端部225の内周面232の規制面231とは反対側の端縁部には、主板部221の軸方向の突出部222側の、軸直交方向に広がる平面からなるカバー面233が繋がっている。規制面231とカバー面233とは平行をなす。
突出基端部225の内周面232および主板部221のカバー面233は、バルブ規制部材194において規制面231よりも段差状に凹む段差部235を構成している。段差部235と、これを構成する内周面232およびカバー面233と、規制面231とは、いずれも同じ中心軸線を中心とする円環状であり、この中心軸線はバルブ規制部材194の中心軸線である。
突出先端部226の外径、言い換えれば規制面231の外径は、ディスクバルブ191の外径と同等である。突出基端部225の内周面232の最小内径、言い換えれば、主板部221のカバー面233の最大径は、バネ部材192の最大外径である、複数の先端延出部213の外接円の径と同等になっている。
バルブ規制部材194は、主板部221よりも突出部222が軸方向においてディスクバルブ191に近づく向きで、リテーナ193とロッド15の主軸部115の段面117とに当接してクランプされる。この状態で、バルブ規制部材194は、規制面231および内周面232がディスクバルブ191に、カバー面233が、ディスクバルブ191およびバネ部材192に軸方向に対向する。バルブ規制部材194は、ディスクバルブ191に対して、その流路165を開く方向側に配置されている。バルブ規制部材194は、バネ部材192のディスクバルブ191とは反対側に設けられており、外径側にディスクバルブ191側に向かって軸方向に突出する突出部222が形成されている。
バルブ規制部材194は、ディスクバルブ191が外側シート部156から離れる方向に所定量変形したときに、ディスクバルブ191の外周部に突出部222の突出先端部226の規制面231において当接してそれ以上のディスクバルブ191の変形を規制する。言い換えれば、バルブ規制部材194は、突出部222によってディスクバルブ191の開弁位置を規制して、そのリフト量を抑える。
そして、本実施形態においては、バネ部材192の屈曲部215を含む複数の脚部202の全体が、図5に示すように、ディスクバルブ191が開弁し突出部222に当接した状態においても、バルブ規制部材194と当接しない位置に設けられている。言い換えれば、流路165を流れる作動流体の力でディスクバルブ191がバルブ規制部材194で変形が規制される、すなわちリフト規制されるまで最大限変形した状態となっても、バネ部材192は、屈曲部215を含む複数の脚部202の全体がバルブ規制部材194に一切当接しないようになっている。さらに言い換えれば、バルブ規制部材194の内周面232およびカバー面233で形成される凹状の段差部235は、流体圧緩衝器1の非作動時および作動時においては、バネ部材192の屈曲部215を含む複数の脚部202の全体に対し接触せず常に逃げるように段差状をなしている。なお、バルブ規制部材194は、バネ部材192の環状部201との間に、リテーナ193を介在させていることから、複数の脚部202を含むバネ部材192の全体に対しても、流路165を流れる作動流体の力では一切接触しないようになっている。
ここで、バルブ規制部材194と、バネ部材192およびディスクバルブ191とが、上記の位置関係となるように、複数枚のリテーナ193の全体の厚さが設定されている。言い換えれば、バネ部材192は、その形状と、リテーナ193の厚さで決められるバルブ規制部材194との位置関係が、ディスクバルブ191が開弁し突出部222に当接した状態においても、バルブ規制部材194と当接しないように設定されている。なお、複数枚のリテーナ193を重ねて用いずに、上記の位置関係を満たす厚さの一枚のリテーナ193を用いても良い。
ピストン18の内側シート部154、中間シート部155、外側シート部156および流路165と、ディスクバルブ191と、バネ部材192と、複数枚のリテーナ193と、バルブ規制部材194とが、ピストン18に設けられた縮み側のバルブ機構209を構成している。
流体圧緩衝器1は、例えば、ロッド15が車両の車体側に取り付けられ、取付アイ37が車両の車輪側に取り付けられて、車体と車輪との相対的な振動を緩衝する。その際に、ロッド15が伸び側に移動しピストン18が室16側に移動して室16の圧力が上昇すると、ピストン速度が遅い領域では、図示略の固定オリフィスが一定の流路面積で室16から室17に油液を流すことになり、オリフィス特性の減衰力を発生させる。また、ピストン速度が速い領域では、ディスクバルブ181が、ピストン18から離間して流路164を開いて室16から室17に、ピストン18からの離間量に応じた流路面積で油液を流すことになり、バルブ特性の減衰力を発生させる。
ロッド15が縮み側に移動しピストン18が室17側に移動して室17の圧力が上昇すると、ディスクバルブ191が、バネ部材192を変形させながらピストン18から離間して流路165を開いて室17から室16に、ピストン18からの離間量に応じた流路面積で油液を流すことになり、バルブ特性の減衰力を発生させる。
なお、ロッド15が伸び側に移動してシリンダ5からの突出量が増大すると、その分の油液がリザーバ室3からベースバルブ23のディスクバルブ91を開きつつ流路65を介して室17に流れることになり、逆にロッド15が縮み側に移動してシリンダ5への挿入量が増大すると、その分の油液が室17からディスクバルブ81を開きつつ流路64を介してリザーバ室3に流れることになる。
上記した特許文献1には、ディスクバルブをバネ部材で閉弁方向に付勢する緩衝器が記載されている。この緩衝器では、バネ部材が径方向の内端部でディスクバルブに当接し、径方向の中間部が径方向外側ほどディスクバルブから軸方向に離れるように延出し、径方向の外端部が径方向外側ほどディスクバルブに軸方向に近づくように延出してディスクバルブに当接している。
このような形状のバネ部材を用いると、バネ部材は、ディスクバルブの所定以上の変形を規制する規制部材側に突出することになる。すると、ディスクバルブのバルブ剛性が必要以上に上がってしまい、減衰力特性が設定よりもハードになってしまう。例えば、バネ部材を縮み側のディスクバルブに設けることにより、縮み側のディスクバルブのバルブ剛性が上がってしまうと、車両に取り付けたときに、乗り心地が硬くなってしまう。
これに対して、本実施形態の流体圧緩衝器1も、ディスクバルブ191を閉弁方向に付勢するバネ部材192の複数の脚部202が、ディスクバルブ191と共にピストン18にクランプされる環状部201側の基端から先端に向かってディスクバルブ191から一旦離間し、先端側がディスクバルブ191に当接するように屈曲する屈曲部215を有している。そして、本実施形態の流体圧緩衝器1の屈曲部215は、ディスクバルブ191が開弁しバルブ規制部材194の突出部222に当接した状態においても、バルブ規制部材194と当接しない高さに設けられている。よって、ディスクバルブ191の変形時にバネ部材192の屈曲部215が、ディスクバルブ191の変形を規制するバルブ規制部材194に当接してしまうことがなくなる。その結果、バネ部材192で付勢されているディスクバルブ191のバルブ剛性が必要以上に上がってしまうことがなくなる。よって、減衰力特性が設定よりもハードになってしまうことがなく、設定通りの良好な減衰力特性を得ることができる。縮み側のディスクバルブ191のバルブ剛性が上がってしまうことがないことから、車両に取り付けたときに、乗り心地が硬くならず良好になる。
また、このように、ディスクバルブ191がバルブ規制部材194の突出部222に当接した状態においても、バネ部材192の屈曲部215がバルブ規制部材194と当接しない高さに設けられていることから、屈曲部215がバルブ規制部材194に繰り返し当接することによるバネ部材192の耐久性の低下を抑制することができる。
なお、これを検証するために、バルブ機構209を有する自動車用緩衝器のバルブ耐久試験を行った。図6には、そのバルブ耐久試験の結果を示す。ここで、図6は、横軸が、室17と室16との差圧力であり、縦軸が、バネ部材192に掛かる応力を示したグラフである。この結果から明らかなように、図6に破線X2で示す従来のバルブ規制部材の場合、ディスクバルブの変形量が大きく、耐久試験においてバネ部材に掛かる応力が大きくなった。これと比べて、図6に実線X1で示す屈曲部215がバルブ規制部材194と当接しない本実施形態は、バネ部材192に掛かる応力を低減することができることがわかり、その結果、バネ部材192の耐久性を向上させることができることがわかる。ここで、図6のグラフ内のS0,P1およびP2については、S0は、バネ部材192がディスクバルブ191に付与するセット荷重を示し、P1およびP2は、ディスクバルブ191が開弁する開弁圧と、ディスクバルブ191がバルブ規制部材194に当接するときの圧力をそれぞれ示した点である。
ここで、以上の実施形態においては、バネ部材192とバルブ規制部材194との間に介装される複数枚の円環状のリテーナ193が、同一外径である場合を例にとり説明したが、図7に示すように、外径が互いに異なる複数の円環状のリテーナ193を用いても良い。この場合、リテーナ193の径方向外周部がバネ部材192の屈曲部215に当接しないようにする。屈曲部215は、基端延出部211が、環状部201の径方向における外側ほど、軸方向のバルブ規制部材194側に位置するように傾斜しているため、リテーナ193の外径が小さい順に、バネ部材192に重ねるようにする。このように配置すれば、外径が互いに異なる複数の円環状のリテーナ193を用いても、複数のリテーナ193が屈曲部215に当接することがないため、バネ部材192で付勢されているディスクバルブ191のバルブ剛性が必要以上に上がってしまうことがなくなる。よって、良好な減衰力特性を得ることができる。
また、図8に示すように、リテーナ193をなくし、リテーナ193の厚さ分、主板部221から軸方向の突出部222側に突出する円筒状のリテーナ部193Aをバルブ規制部材194の内周側に一体成形しても良い。
また、以上の実施形態においては、ピストン18に設けられた縮み側のバルブ機構209を例にとり説明したが、図2に示すベースバルブ23に設けられた伸び側のバルブ機構109を同様の構造にすることもできる。すなわち、ベースバルブ23の伸び側のディスクバルブ91に、リテーナ92、バネ部材93およびバルブ規制部材94にかえて、実施形態のバネ部材192、複数枚のリテーナ193およびバルブ規制部材194を設ける。
この場合、ベースボディ41が、シリンダ5内を一側室である室17と他側室であるリザーバ室3とに仕切る仕切部材となる。そして、ディスクバルブ91のベースボディ41とは反対側にバネ部材192が設けられ、バネ部材192のディスクバルブ91とは反対側に複数枚のリテーナ193が設けられ、バネ部材192および複数枚のリテーナ193のディスクバルブ91とは反対側にバルブ規制部材194が設けられる。その際に、バネ部材192の複数の脚部202は、環状部201側の基端から先端に向かってディスクバルブ91から一旦離間し、先端側がディスクバルブ91に当接するように屈曲部215を配置する。そして、ベースバルブ23と取付ピン71の頭部73とで、ディスクバルブ91、バネ部材192、複数枚のリテーナ193およびバルブ規制部材194の少なくとも内周側をクランプすることになる。この場合も、屈曲部215は、ディスクバルブ91が開弁し突出部222に当接した状態において、バルブ規制部材194と当接しない位置に配置される。
また、ピストン18に設けられた伸び側のバルブ機構208にかえて、実施形態のバルブ機構209を適用しても良い。この場合、ピストン18の一側室である室16側ではなく、他側室である室17側にディスクバルブ191が設けられることになる。また、ベースボディ41に設けられた縮み側のバルブ機構108にかえて、実施形態のバルブ機構209を適用することも可能である。この場合、ベースボディ41の一側室である室17側ではなく、他側室であるリザーバ室3側にディスクバルブ191が設けられることになる。
また、実施形態では、円環状の突出部222を有するバルブ規制部材194を例にとり説明したが、円形だけでなく、例えば外周側が三角形状や四角形状などの多角形状をなす環状のバルブ規制部材の外周側の角部に、ディスクバルブ191側に向かって突出する突出部を設け、これらの突出部によってディスクバルブ191の開弁位置を規制して、そのリフト量を抑えることも可能である。
また、実施形態のディスクバルブ191とバネ部材192との間にリテーナを挟むことも可能である。このようにすれば、バネ部材192の複数の脚部202によりディスクバルブ191に付与するセット荷重を変更することが可能となる。
また、実施形態のバルブ機構209は、シリンダ5内を少なくとも一側室と他側室との2室に仕切る仕切部材に対して設けることが可能であり、よって、シリンダ5内を3室以上に仕切る仕切部材に対して設けることも可能である。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内を少なくとも一側室と他側室とに仕切る仕切部材と、前記シリンダの外部へ突出するロッドと、前記仕切部材に設けられ、前記ロッドが移動したときに前記作動流体が流通する流路と、前記仕切部材の前記一側室側または前記他側室側に設けられ、内周側がクランプされ、外周側が前記流路を開閉する環状のディスクバルブと、前記ディスクバルブの前記仕切部材とは反対側に設けられ、径方向内方が前記ディスクバルブと共にクランプされる環状部となり、該環状部から先端側が径方向外方に向かって延出すると共に前記ディスクバルブと当接することで該ディスクバルブを閉弁方向に付勢する複数の脚部を有するバネ部材と、前記バネ部材の前記ディスクバルブとは反対側に設けられ、外径側に前記ディスクバルブ側に向かって突出する突出部が設けられ、該突出部によって前記ディスクバルブの開弁位置を規制する環状の規制部材と、を有する流体圧緩衝器であって、前記バネ部材の前記脚部は、前記環状部側の基端から先端に向かって前記ディスクバルブから一旦離間し、先端側が前記ディスクバルブに当接するように屈曲する屈曲部を有し、前記屈曲部は、前記ディスクバルブが開弁し前記突出部に当接した状態において、前記規制部材と当接しない位置にある。これにより、良好な減衰力特性を得ることができる。
第2の態様は、第1の態様において、前記バネ部材と前記規制部材との間には、複数の円環状のリテーナが設けられ、該複数のリテーナは、外径が互いに異なり、径方向外周部が前記屈曲部に当接しない。これにより、さらに良好な減衰力特性を得ることができる。