JP2019206971A - 緩衝器 - Google Patents

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Mikiro Yamashita
幹郎 山下
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Abstract

【課題】ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能な緩衝器を提供する。【解決手段】ピストンの移動により第1室および第2室32の一方から作動流体が流れ出す第1通路108および第2通路251と、第1通路108に設けられて減衰力を発生させる第1弁体91と、を有し、第2通路251には、第1弁体91よりも小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる第2弁体と、第1室から第2室32に作動流体が流れるとき、ハウジング210内を上流側と下流側とに画成しつつハウジング210内で移動可能であり、第2室32から第1室に作動流体が流れるときに開弁可能な第3弁体204を有する周波数感応部200と、が直列に設けられている。【選択図】図3

Description

本発明は、緩衝器に関する。
緩衝器には、周波数に応じて減衰力を可変とする減衰力可変機構を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−202800号公報
緩衝器において、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させたいという要求がある。
したがって、本発明は、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能な緩衝器の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、ピストンの移動により第1室および第2室の一方から作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる第1弁体と、を有し、前記第2通路には、前記第1弁体よりも小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる第2弁体と、前記第1室から前記第2室に作動流体が流れるとき、ハウジング内を上流側と下流側とに画成しつつ該ハウジング内で移動可能であり、前記第2室から前記第1室に作動流体が流れるときに開弁可能な第3弁体を有する周波数感応部と、が直列に設けられている。
本発明によれば、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能となる。
本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す断面図である。 本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示すピストン周辺の部分断面図である。 本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す周波数感応部周辺の部分断面図である。 本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す油圧回路図である。 本発明に係る第1実施形態の緩衝器のピストン速度に対する減衰力の関係を概念的に示す特性線図である。 本発明に係る第1実施形態の緩衝器のピストン速度が0.03m/sのときのストロークと減衰力との関係を示すリサージュ波形線図である。 本発明に係る第1実施形態の緩衝器のピストン速度が0.03m/sのときの周波数に対する減衰力の関係を示す周波数特性線図である。 本発明に係る第1実施形態の緩衝器のピストン速度が0.3m/sのときのストロークと減衰力との関係を示すリサージュ波形線図である。 本発明に係る第1実施形態の緩衝器のピストン速度が0.3m/sのときの周波数に対する減衰力の関係を示す周波数特性線図である。 本発明に係る第2実施形態の緩衝器を示す周波数感応部周辺の部分断面図である。 本発明に係る第2実施形態の緩衝器を示す油圧回路図である。 本発明に係る第2実施形態の緩衝器のピストン速度に対する減衰力の関係を概念的に示す特性線図である。 本発明に係る第3実施形態の緩衝器を示す周波数感応部周辺の部分断面図である。
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図面における上側を「上」とし、図面における下側を「下」として説明する。
図1に示すように、第1実施形態の緩衝器11は、いわゆる単筒型の油圧緩衝器であり、作動流体としての油液が封入されるシリンダ12を有している。シリンダ12は、有底円筒状の一体成形品であり、その上部開口側を覆うようにカバー15が取り付けられている。カバー15にはシリンダ12とは反対側に板状体16が取り付けられている。シリンダ12は、円筒状の胴部21と、胴部21の下部を閉塞する底部22とからなっており、胴部21の底部22とは反対側が開口している。
カバー15は、筒状部25と筒状部25の上端側から径方向内方に延出する内フランジ部26とを有している。カバー15は、胴部21の上端開口部を内フランジ部26で覆い胴部21の外周面を筒状部25で覆うように胴部21の開口側に被せられており、この状態で、筒状部25の一部が径方向内方に加締められて胴部21に固定されている。内フランジ部26の筒状部25とは反対側に板状体16が固定されている。
シリンダ12の胴部21内には、ピストン30が摺動可能に嵌装されている。このピストン30は、シリンダ12内を上室31(第1室,ロッド側室)と下室32(第2室,ボトム側室)の2室に区画している。また、シリンダ12の胴部21内には、ピストン30よりも底部22側に区画ピストン35が設けられている。区画ピストン35は、底部22との間に下室32と区画して室36を形成している。シリンダ12内の上室31および下室32内には作動流体としての油液が封入されており、シリンダ12内の室36内には高圧ガスが封入されている。
シリンダ12内には、一端がシリンダ12の外部へと延出されるピストンロッド41の他端側が挿入されており、ピストン30は、このピストンロッド41のシリンダ12内に配置される他端側に連結されている。ピストン30およびピストンロッド41は一体に移動する。ピストンロッド41がシリンダ12からの突出量を増やす伸び行程において、ピストン30は上室31側へ移動することになり、ピストンロッド41がシリンダ12からの突出量を減らす縮み行程において、ピストン30は下室32側へ移動することになる。上室31はピストンロッド41が配置されたロッド側室となり、下室32はシリンダ12の底部22側にあるボトム側室となっている。
シリンダ12の上端開口側には、ロッドガイド42が嵌合されており、ロッドガイド42よりもシリンダ12の外部側である上側にシール部材43が嵌合されている。シリンダ12の上端部は、一部が径方向内方に加締められて、シール部材43を係止している。ロッドガイド42とシール部材43との間には摩擦部材44が設けられている。ロッドガイド42、シール部材43および摩擦部材44は、いずれも環状をなしており、ピストンロッド41は、これらロッドガイド42、摩擦部材44およびシール部材43のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ12の外部に延出されている。
ここで、ロッドガイド42は、ピストンロッド41を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド41の移動を案内する。シール部材43は、その外周部でシリンダ12に密着し、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド41の外周部に摺接して、シリンダ12内の油液が外部に漏洩するのを防止する。摩擦部材44は、その内周部でピストンロッド41の外周部に摺接して、ピストンロッド41に摩擦抵抗を発生させる。なお、摩擦部材44は、シールを目的とするものではない。
ピストンロッド41は、ロッドガイド42、シール部材43および摩擦部材44に挿通されてシリンダ12から外部へと延出されるロッド本体51と、ロッド本体51のシリンダ12内側の端部のオネジ52にメネジ54において螺合されてロッド本体51から底部22側に延びる先端ロッド55と、ロッド本体51を内側に挿通させて先端ロッド55に当接する円環部材57と、円環部材57を先端ロッド55との間で挟持するようにオネジ52に螺合されるナット部材58とから構成されている。
ロッド本体51の先端ロッド55側の外周部には、係止部材61が固定されている。ロッド本体51の外周側には、係止部材61とロッドガイド42との間に、円環状のバネ受62,63が設けられている。これらバネ受62,63は、ロッド本体51を内側に挿通させることでロッド本体51に沿って摺動可能となっている。これらバネ受62,63の間には、コイルスプリングからなるリバウンドスプリング64が、その内側にロッド本体51を挿通させるようにして介装されている。ロッドガイド42側のバネ受63のリバウンドスプリング64とは反対には円環状の弾性材料からなる緩衝体65が設けられている。緩衝体65もロッド本体51を内側に挿通させることでロッド本体51に沿って摺動可能となっている。
先端ロッド55は、メネジ54が形成された基軸部71と、これより小径の取付軸部72とを有している。取付軸部72にはピストン30等が取り付けられている。基軸部71の取付軸部72側の端部は、軸直交方向に沿って広がる軸段部73となっている。取付軸部72の外周部には、軸方向の中間位置に軸方向に延在する通路溝75が形成されており、軸方向の基軸部71とは反対側の先端位置にオネジ76が形成されている。通路溝75は、ピストンロッド41の中心軸線に直交する面での断面の形状が長方形、正方形、D字状のいずれかをなすように形成されている。
緩衝器11は、例えばピストンロッド41のシリンダ12からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ12の底部22側が下部に配置されて車輪側に連結される。これとは逆に、シリンダ12側が車体により支持され、ピストンロッド41が車輪側に連結されるようにしても良い。車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ12とピストンロッド41との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン30およびピストンロッド41の少なくともいずれか一方に形成された流路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン30およびピストンロッド41の少なくともいずれか一方に形成された流路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ12とピストンロッド41との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力がシリンダ12とピストンロッド41との間に作用する。以下で説明するとおり、緩衝器11は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
図2に示すように、ピストン30は、ピストン本体83を有している。ピストン本体83は、互いに連結されて内周部に先端ロッド55の取付軸部72が嵌合される二つの金属製のピストン構成体80,81と、ピストン構成体80,81の外周面に一体に装着されてシリンダ12内を摺動する円環状の合成樹脂製の摺動部材82とを有している。ピストン30は、このピストン本体83が、シリンダ12内を上室31と下室32の2室に区画している。
ピストン本体83には、軸方向に貫通することで上室31と下室32とを連通可能な複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴88と、軸方向に貫通することで上室31と下室32とを連通可能な複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴89とが設けられている。つまり、複数の通路穴88内の通路と複数の通路穴89内の通路とが、ピストン30の移動により上室31と下室32との間を作動流体である油液が流れるように連通する。通路穴88は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴89を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン本体83の軸方向一側(図2の上側)が径方向外側に軸方向他側(図2の下側)が径方向内側に開口している。
これら半数の通路穴88に対して、減衰力を発生する減衰力発生機構90が設けられている。減衰力発生機構90は、ピストン本体83の軸方向の一端側である下室32側に配置されて、ピストンロッド41に取り付けられる弁体91(第1弁体)を有している。通路穴88は、その内側の通路が、ピストン30の上室31側への移動、つまりピストンロッド41およびピストン30が伸び側(図2の上側)に移動する伸び行程において油液が通過する伸び側の通路108(第1通路)を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構90は、伸び側の通路108の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。弁体91は、通路108に設けられて減衰力を発生させる。
また、残りの半数を構成する通路穴89は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴88を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン本体83の軸線方向他側(図2の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図2の上側)が径方向内側に開口している。
これら残り半数の通路穴89に、減衰力を発生する減衰力発生機構92が設けられている。減衰力発生機構92は、ピストン本体83の軸方向の他端側である上室31側に配置されて、ピストンロッド41に取り付けられる弁体93を有している。通路穴89は、その内側の通路が、ピストン30の下室32側への移動、つまりピストンロッド41およびピストン30が縮み側(図2の下側)に移動する縮み行程において油液が通過する縮み側の通路119を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構92は、縮み側の通路119内の通路の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。
ピストン本体83は、円環状をなしており、その内周部に先端ロッド55の取付軸部72が嵌合している。ピストン本体83の軸方向の下室32側の端部には、通路穴88の下室32側の開口よりも径方向外側に、弁体91とで減衰力発生機構90を構成する環状のバルブシート部97が形成されている。また、ピストン本体83の軸方向の上室31側の端部には、通路穴89の上室31側の開口よりも径方向外側に、弁体93とで減衰力発生機構92を構成する環状のバルブシート部99が形成されている。
ピストン本体83において、バルブシート部97の外周側は、バルブシート部97よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に縮み側の通路穴89の下室32側の開口が配置されている。また、同様に、ピストン本体83において、バルブシート部99の外周側は、バルブシート部99よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に伸び側の通路穴88の上室31側の開口が配置されている。
弁体91は、複数枚の有孔円板状のディスク101が重ねられて構成されており、最もピストン本体83側のディスク101の外径が最も大径で、最もピストン本体83とは反対側のディスク101の外径がこれよりも小径となっている。また、積み重ね方向の中間部のディスク101の外径は、これらの中間径となっている。これらディスク101の内周部に取付軸部72が嵌合している。弁体91は、最もピストン本体83側のディスク101でピストン本体83のバルブシート部97に当接して、通路穴88内の通路を開閉する。
弁体91とピストン本体83との間には、複数枚の有孔円板状のディスク103が設けられている。これらディスク103は、いずれもバルブシート部97の内径よりも外径が小径となっている。弁体91のピストン本体83とは反対側には、有孔円板状のディスク104が設けられている。このディスク104は、弁体91のピストン本体83とは反対側の端部のディスク101よりも外径が小径となっている。ディスク104の弁体91とは反対側には、有孔円板状のディスク105が設けられている。このディスク105は、ディスク104よりも外径が大径となっている。これらディスク103〜105の内周部に取付軸部72が嵌合している。
弁体91は、バルブシート部97に離着座可能であり、バルブシート部97から離座することで通路穴88内の通路を下室32に開放可能であって、上室31から下室32への油液の流れを許容しつつ抑制する。弁体91のバルブシート部97に当接するディスク101には、外周側に切欠部107が形成されており、この切欠部107は、ディスク101がバルブシート部97に当接状態にあっても上室31と下室32とを連通させる固定オリフィス106をバルブシート部97とで構成している。ディスク105は、弁体91の開方向への規定以上の変形を抑制する。
ピストン本体83に設けられた伸び側の通路穴88内の通路と、固定オリフィス106と、離座時の弁体91とバルブシート部97との隙間とが、伸び行程でのピストン30の移動により上室31から下室32に向けて油液が流れ出す伸び側の通路108を構成している。伸び側の減衰力発生機構90は、この縮み側の通路108に設けられて減衰力を発生させる。
弁体93は、複数枚の有孔円板状のディスク111が重ねられて構成されており、最もピストン本体83側のディスク111の外径が最も大径で、最もピストン本体83とは反対側のディスク111の外径がこれよりも小径となっている。また、積み重ね方向の中間部のディスク111の外径は、これらの中間径となっている。これらディスク111の内周部に取付軸部72が嵌合している。弁体93は、最もピストン本体83側のディスク111でピストン本体83のバルブシート部99に当接して、通路穴89内の通路を開閉する。
弁体93とピストン本体83との間には、有孔円板状の複数枚のディスク113が設けられている。これらディスク113は、同外径であり、バルブシート部99の内径よりも外径が小径となっている。弁体93のピストン本体83とは反対側には、有孔円板状のディスク114が設けられている。このディスク114は、弁体93のピストン本体83とは反対側の端部のディスク111よりも外径が小径となっている。ディスク114の弁体93とは反対側には、有孔円板状の複数枚のディスク115が設けられている。これらディスク115は、同外径であり、ディスク114よりも外径が大径となっている。ディスク115のディスク114とは反対側には、有孔円板状のディスク116が設けられている。このディスク116は、ディスク115よりも外径が小径となっている。これらディスク113〜116の内周部に取付軸部72が嵌合している。
弁体93は、バルブシート部99に離着座可能であり、バルブシート部99から離座することで通路穴89内の通路を上室31に開放可能であって、下室32から上室31への油液の流れを許容しつつ抑制する。弁体93のバルブシート部99に当接するディスク111には、外周側に切欠部118が形成されている。この切欠部118は、ディスク111がバルブシート部99に当接状態にあっても上室31と下室32とを連通させる固定オリフィス117をバルブシート部99とで構成している。ディスク115は、弁体93の開方向への規定以上の変形を抑制する。
ピストン本体83に設けられた縮み側の通路穴89内の通路と、固定オリフィス117と、離座時の弁体93とバルブシート部99との隙間とが、縮み行程でのピストン30の移動により下室32から上室31に向けて油液が流れ出す縮み側の通路119を構成している。縮み側の減衰力発生機構92は、この縮み側の通路119に設けられて減衰力を発生させる。
先端ロッド55の取付軸部72には、ディスク116の弁体93とは反対側に隣接して、バルブ機構131が設けられている。バルブ機構131は、ピストン本体83と共にピストン30を構成している。バルブ機構131は、ケース体132と、通路形成部材133と、弁体134(第2弁体)と、シート部材135と、Oリング136と、弁体137とを有している。
ケース体132は、有孔円板状の底板部141と、底板部141の外周側から軸方向に延出する円筒状の筒状部142とを有しており、底板部141の内周部に取付軸部72が嵌合している。ケース体132は、底板部141がディスク116に当接しており、筒状部142を底板部141からディスク116とは反対方向に延出させている。
通路形成部材133は、ケース体132の筒状部142内に配置されている。通路形成部材133は、円筒状の通路形成部145と、通路形成部145の軸方向の一端側から径方向内方に突出する円環状の内フランジ部146とを有している。内フランジ部146の内周部に取付軸部72が嵌合しており、通路形成部145がケース体132の底板部141に当接している。通路形成部145には、径方向に貫通する通路溝147が形成されている。取付軸部72の通路溝75は、ケース体132の底板部141を横断しており、内フランジ部146と底板部141との間位置に開口している。
シート部材135は、円環状をなしており、内周部に取付軸部72が嵌合している。シート部材135は、ケース体132の筒状部142内に配置されて、弁体134の通路形成部材133とは反対側に配置されている。シート部材135は、外周部にOリング136が装着されており、外周部においてケース体132の筒状部142内に嵌合している。その際に、Oリング136がシート部材135とケース体132との隙間をシールする。シート部材135は、ケース体132との間に、中間室150を、上室31と区画して形成している。
シート部材135には、上室31と中間室150とを連通させる複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴151と、上室31と中間室150とを連通させる複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴152とが設けられている。通路穴151は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴152を挟んで等ピッチで形成されており、シート部材135の軸方向一側(図2の上側)が径方向外側に軸方向他側(図2の下側)が径方向内側に開口している。
これら半数の通路穴151に対して、減衰力を発生する弁体134を含む減衰力発生機構155が設けられている。減衰力発生機構155の弁体134は、シート部材135の軸方向の一端側にある中間室150側に配置されて、ピストンロッド41に取り付けられている。通路穴151内の通路は、ピストンロッド41およびピストン30が伸び側(図2の上側)に移動するときに油液が通過する伸び側の通路であり、これらに対して設けられた減衰力発生機構155は、伸び側の通路穴151内の通路の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。
また、残りの半数を構成する通路穴152は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴151を挟んで等ピッチで形成されており、シート部材135の軸線方向他側(図2の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図2の上側)が径方向内側に開口している。
これら残り半数の通路穴152に対して、減衰力を発生する弁体137を含む減衰力発生機構156が設けられている。減衰力発生機構156の弁体137は、シート部材135の軸方向の他端側である中間室150とは反対側に配置されて、ピストンロッド41に取り付けられている。通路穴152内の通路は、ピストンロッド41およびピストン30が縮み側(図2の下側)に移動するときに油液が通過する縮み側の通路であり、これらに対して設けられた減衰力発生機構156は、縮み側の通路穴152内の通路の油液の流動を抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。
シート部材135の軸方向の中間室150側の端部には、通路穴151の中間室150側の開口よりも径方向外側に、弁体134とで減衰力発生機構155を構成する環状のバルブシート部161が形成されている。また、シート部材135の軸方向の中間室150とは反対側の端部には、通路穴152の上室31側の開口よりも径方向外側に、弁体137とで減衰力発生機構156を構成する環状のバルブシート部162が形成されている。
シート部材135において、バルブシート部161の径方向外側は、バルブシート部161よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に縮み側の通路穴152の中間室150側の開口が配置されている。また、同様に、シート部材135において、バルブシート部162の径方向外側は、バルブシート部162よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に伸び側の通路穴151の上室31側の開口が配置されている。
弁体134は、複数枚の有孔円板状のディスク171が重ねられて構成されており、最もシート部材135側のディスク171の外径が最も大径で、最もシート部材135とは反対側のディスク171の外径がこれよりも小径となっている。また、積み重ね方向の中間部のディスク171の外径は、これらの中間径となっている。これらディスク171の内周部に取付軸部72が嵌合している。弁体134は、最もシート部材135側のディスク171でシート部材135のバルブシート部161に当接して、通路穴151内の通路を開閉する。
弁体134とシート部材135との間には、複数枚の有孔円板状のディスク173が設けられている。これらディスク173は、同外径であり、バルブシート部161の内径よりも外径が小径となっている。弁体134のシート部材135とは反対側には、複数枚の有孔円板状のディスク174が設けられている。これらディスク174は、同外径であり、弁体134のシート部材135とは反対側の端部のディスク171よりも外径が小径となっている。ディスク174の弁体134とは反対側には、有孔円板状の複数枚のディスク175が設けられている。これらディスク175は、同外径であり、ディスク174よりも外径が大径となっている。これらディスク173〜175の内周部に取付軸部72が嵌合している。
弁体134は、バルブシート部161に離着座可能であり、バルブシート部161から離座することで通路穴151内の通路を中間室150に開放可能である。弁体134は、上室31から中間室150への油液の流れを許容しつつ抑制する。弁体134のバルブシート部161に当接するディスク171には、外周側に切欠部177が形成されている。この切欠部177は、ディスク171がバルブシート部161に当接状態にあっても上室31と中間室150とを連通させる固定オリフィス176をバルブシート部161とで構成している。ディスク175は、弁体134の開方向への規定以上の変形を抑制する。
弁体137は、有孔円板状の複数枚のディスク181が重ねられて構成されており、最もシート部材135側のディスク181の外径が最も大径で、最もシート部材135とは反対側のディスク181の外径がこれよりも小径となっている。また、積み重ね方向の中間部のディスク181の外径は、これらの中間径となっている。これらディスク181の内周部に取付軸部72が嵌合している。弁体137は、最もシート部材135側のディスク181でシート部材135のバルブシート部162に当接して、通路穴152内の通路を開閉する。
弁体137とシート部材135との間には、複数枚の有孔円板状のディスク183が設けられている。これらディスク183は、同外径であり、バルブシート部162の内径よりも外径が小径となっている。弁体137のシート部材135とは反対側には、複数枚のディスク184が設けられている。これらディスク184は、同外径であり、弁体137のシート部材135とは反対側の端部のディスク181よりも外径が小径となっている。ディスク184の弁体134とは反対側には、有孔円板状のディスク185が設けられている。このディスク185は、ディスク184よりも外径が大径となっている。ディスク185のディスク184とは反対側には、円環状の円環部材186が設けられている。円環部材186は、ディスク185よりも外径が小径となっている。これらディスク183〜185および円環部材186の内周部に取付軸部72が嵌合している。円環部材186は、先端ロッド55の軸段部73に当接している。
弁体137は、バルブシート部162に離着座可能であり、バルブシート部162から離座することで通路穴152内の通路を上室31に開放可能である。弁体137は、中間室150から上室31への油液の流れを許容しつつ抑制する。弁体137のバルブシート部162に当接するディスク181には、外周側に切欠部188が形成されている。この切欠部188は、ディスク181がバルブシート部162に当接状態にあっても上室31と中間室150とを連通させる固定オリフィス187をバルブシート部162とで構成している。ディスク185は、弁体137の開方向への規定以上の変形を抑制する。
図3に示すように、先端ロッド55の取付軸部72には、ディスク105の弁体91とは反対側に隣接して、伸び行程でピストン30の往復動の周波数(以下、ピストン周波数と称す)に感応して減衰力を可変とする周波数感応部200が設けられている。
周波数感応部200は、軸方向のディスク105側から順に、ケース部材201と、通路形成ディスク202と、複数枚のディスク203および弁体(第3弁体)204と、複数枚のシートディスク205と、蓋部材206とを有している。ケース部材201は、有底筒状であり、内周部に先端ロッド55の取付軸部72が嵌合している。通路形成ディスク202、複数枚のディスク203、複数枚のシートディスク205および蓋部材206は、いずれも一定厚さの有孔円板状であり、内周部に先端ロッド55の軸部としての取付軸部72が嵌合している。取付軸部72もケース部材201内に配置される部分が周波数感応部200を構成している。弁体204は、環状であり、内側に取付軸部72を貫通させて、ケース部材201内に配置されている。蓋部材206は、ケース部材201に嵌合されてハウジング210をケース部材201とで構成している。
ケース部材201は、軸直交方向に沿う有孔円板状の基部221と、基部221の内周側から軸方向一側に突出する円環状の環状突出部220と、基部221の内周側から軸方向他側に突出する円筒状の内側円筒状部222と、基部221の径方向の中間位置から内側円筒状部222と同側に突出する円筒状のシート部223と、基部221の外周縁部からシート部223と同側に延出する円筒状の筒状部224とを有している。
ケース部材201の内周部には、軸方向の環状突出部220側に先端ロッド55の取付軸部72を嵌合させる小径穴部225が形成されており、軸方向の内側円筒状部222側に小径穴部225より大径の大径穴部226が形成されている。取付軸部72の通路溝75は、小径穴部225を横断して、大径穴部226内に開口している。通路溝75は、図2に示すケース体132の底板部141、ディスク116、複数枚のディスク115、ディスク114、弁体93、複数枚のディスク113、ピストン本体83、複数枚のディスク103、弁体91、ディスク104、ディスク105および図3に示すケース部材201の小径穴部225を軸方向に貫通している。
ケース部材201は、環状突出部220がディスク105に当接しており、内側円筒状部222が通路形成ディスク202の内周側に当接している。ケース部材201のシート部223は、その突出先端側の端部で、弁体204を支持している。シート部223には、周方向部分的に径方向に貫通する切欠部231が形成されており、これにより、ケース部材201におけるシート部223の径方向内側と径方向外側とが常時連通する。
通路形成ディスク202は、ケース部材201の筒状部224内に配置されており、内側円筒状部222のこれに接触する部分よりも大径且つシート部223の内径よりも小径の外径となっている。通路形成ディスク202には、内周側に切欠部232が形成されている。切欠部232は、内側円筒状部222の通路形成ディスク202への接触部分を径方向に横断している。複数枚のディスク203は、ケース部材201の筒状部224内に配置されており、同外径であって、通路形成ディスク202の外径よりも小径の外径となっている。
弁体204は、ケース部材201の筒状部224内に配置されており、金属製のベースディスク235と、ベースディスク235の外周側に固着されるゴム製のシール部材236とからなっている。弁体204は、弾性変形可能、つまり撓み可能となっている。ベースディスク235は、一定厚さの有孔円形平板状をなしており、内径がディスク203の外径よりも大径となっている。これにより、ベースディスク235は、その内側のディスク203に対し径方向に隙間をもって配置可能となっている。ベースディスク235は、複数枚のディスク203を合わせた厚さよりも厚さが薄くなっている。ベースディスク235は、ケース部材201のシート部223の外径よりも大径の外径となっている。
シール部材236は、ベースディスク235の外周側に固着されている。シール部材236は、弾性体であり、ベースディスク235から軸方向の蓋部材206とは反対側に突出する円筒状のシール本体部238と、ベースディスク235から軸方向の蓋部材206側に突出する複数の突出部239とを有している。シール部材236は、ベースディスク235の外周部においてシール本体部238と複数の突出部239とを連結しており、この状態で、シール本体部238と複数の突出部239とがベースディスク235の両面に固着されている。ベースディスク235の外径は、ケース部材201の筒状部224の内径よりも小径とされており、よって、ベースディスク235と、ケース部材201との間には、環状の隙間が設けられる。シール部材236は、この隙間を介してシール本体部238と突出部239とを連結している。このような構成としたことにより、ベースディスク235へのシール部材236の固着を容易にしている。
シール本体部238は、ベースディスク235側の端部の内径つまり最小内径がシート部223の外径よりも大径となっている。これにより、弁体204は、そのベースディスク235がケース部材201のシート部223に着座可能となっている。複数の突出部239は、ベースディスク235の周方向に間隔をあけて配置されており、隣り合う突出部239の間は、径方向に貫通する径方向溝241となっている。なお、シート部223に切欠部231が設けられているため、弁体204のシール本体部238が設けられる側と、突出部239が設けられる側の受圧面積とは同じ程度となる。
複数枚のシートディスク205は、ケース部材201の筒状部224内に配置されており、最もディスク203側のシートディスク205の外径が最も小径であり、最もディスク203とは反対側のシートディスク205の外径がこれよりも大径となっている。また、積み重ね方向の中間部のシートディスク205の外径は、これらの中間径となっている。最もディスク203側のシートディスク205は、ディスク203の外径およびベースディスク235の内径よりも大径の外径となっている。弁体204のベースディスク235は、通路形成ディスク202とシートディスク205との間に配置されており、その厚さがシートディスク205とシート部223との軸方向距離よりも厚くなっている。これにより、弁体204は、径方向中間部がシート部223に当接して支持され、内周側がシートディスク205に当接して支持される。
弁体204は、そのベースディスク235の内周側が、通路形成ディスク202とシートディスク205との間で軸方向に移動可能となっている。また、弁体204は、非支持側である外周側にケース部材201との間をシールする環状のシール部材236が設けられており、シール部材236がハウジング210に接触してハウジング210に対し芯出しされる。弁体204の内周側は、両面側からクランプされずに片面側のみシートディスク205に支持される単純支持構造となっている。
蓋部材206は、有孔円板状であり、内側に先端ロッド55の取付軸部72が嵌合している。また、蓋部材206は、外側が、ケース部材201の筒状部224内に嵌合している。蓋部材206には、シートディスク205よりも径方向外側に軸方向に貫通する複数の貫通穴247が形成されている。貫通穴247は、蓋部材206におけるシートディスク205よりも径方向外側に形成されており、ベースディスク235が撓むことで蓋部材206に接触するシール部材236よりも径方向内側に形成されている。
弁体204のシール本体部238は、ケース部材201の筒状部224の内周面に全周にわたり接触して、弁体204と筒状部224との隙間をシールする。つまり、弁体204はパッキンバルブである。シール本体部238は、弁体204がハウジング210内で許容される範囲で変形しても、弁体204と筒状部224との隙間を常時シールする。弁体204は、そのシール本体部238が筒状部224に全周にわたり接触することで上記のようにハウジング210に対し芯出しされる。
弁体204は、ハウジング210内を、ケース部材201の基部221側の容量可変な可変室245と、蓋部材206側の容量可変な可変室246とに区画する。言い換えれば、周波数感応部200は、弁体204により画成されて設けられたケース部材201内の2つの可変室245,246を有している。可変室246は蓋部材206の貫通穴247内の通路を介して下室32に常時連通している。
弁体204は、可変室245の圧力が可変室246の圧力よりも高いとき、ベースディスク235が全周にわたってシートディスク205に当接してシートディスク205との間に隙間を形成しない。よって、可変室245から可変室246への油液の流れを規制する。また、弁体204は、可変室246の圧力が可変室245の圧力よりも高いとき、ベースディスク235がシートディスク205から離座しシートディスク205との間に隙間を形成して、可変室246つまり下室32から可変室245への油液の流れを許容する。弁体204とシートディスク205とがチェック弁248を構成している。
図2に示すシート部材135の通路穴151内の通路と、固定オリフィス176と、離座時の弁体134とバルブシート部161との隙間と、通路形成部材133の通路溝147内の通路を含む中間室150と、先端ロッド55の通路溝75内の通路と、図3に示すケース部材201の大径穴部226内の通路と、通路形成ディスク202の切欠部232内の通路とが、伸び行程でのピストン30の移動により上室31から可変室245に向けて油液が流れ出す伸び側の通路251(第2通路)を構成している。
蓋部材206の貫通穴247内の通路と、可変室246と、離座時の弁体204とシートディスク205との隙間と、可変室245と、通路形成ディスク202の切欠部232内の通路と、ケース部材201の大径穴部226内の通路と、先端ロッド55の通路溝75内の通路と、図2に示す中間室150と、シート部材135の通路穴152内の通路と、固定オリフィス187と、離座時の弁体137とバルブシート部162との隙間とが、縮み行程でのピストン30の移動により下室32から上室31に向けて油液が流れ出す縮み側の通路252を構成している。中間室150および先端ロッド55の通路溝75内の通路等は、通路251,252で共通となっている。
そして、通路251に、弁体134を含む減衰力発生機構155と、図3に示す弁体204を含む周波数感応部200とが直列に設けられている。通路251に設けられた図2に示す減衰力発生機構155の弁体134は、伸び行程において通路251と同様に上室31から油液が流れ出す通路108に設けられた減衰力発生機構90の弁体91よりも小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる。つまり、弁体134は、弁体91よりも剛性が低い。減衰力発生機構90,155のうち、減衰力発生機構155はソフトバルブとなり、減衰力発生機構90はハードバルブとなっている。
通路252に設けられた減衰力発生機構156の弁体137は、縮み行程において通路252と同様に下室32から油液が流れ出す通路119に設けられた減衰力発生機構92の弁体93よりも小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる。つまり、弁体137は、弁体93よりも剛性が低い。減衰力発生機構92,156のうち、減衰力発生機構156はソフトバルブとなり、減衰力発生機構92がハードバルブとなっている。
通路251に設けられた図3に示す周波数感応部200は、ピストン30が図2に示す上室31側に移動して、上室31から下室32に向け油液が流れる伸び行程のときは、図2に示す可変室245の圧力が下流側の可変室246の圧力よりも高くなる。これにより、チェック弁248の弁体204が、シートディスク205に着座し閉じていてハウジング210内を上流側の可変室245と下流側の可変室246とに画成しつつハウジング210内で、可変室245を広げ可変室246を狭めるように移動する。その結果、周波数感応部200は、減衰力を周波数に応じて可変させることができる。
また、周波数感応部200は、ピストン30が下室32側に移動して、下室32から図2に示す上室31に向け油液が流れる縮み行程のときは、図3に示す可変室245の圧力よりも可変室246の圧力の方が高くなる。その結果、チェック弁248の弁体204が開弁してシートディスク205から離座する。これにより、チェック弁248が通路252を開き、下室32から上室31に向けて油液が流れ出す。
蓋部材206のシートディスク205とは反対側には、複数枚の有孔円板状のディスク255が設けられている。これらディスク255は、同外径であり、蓋部材206の径方向における複数の貫通穴247の内接円よりも小径の外径となっている。これらディスク255の蓋部材206とは反対側には、円環状の円環部材256が設けられている。この円環部材256は、ディスク255よりも外径が大径となっている。これらディスク255および円環部材256の内周部に取付軸部72が嵌合している。円環部材256のディスク255とは反対側には、取付軸部72のオネジ76に螺合されてナット260が設けられている。
図2に示す円環部材186、ディスク185、複数枚のディスク184、弁体137、複数枚のディスク183、シート部材135、複数枚のディスク173、弁体134、複数枚のディスク174、複数枚のディスク175、通路形成部材133、ケース体132の底板部141、ディスク116、複数枚のディスク115、ディスク114、弁体93、複数枚のディスク113、ピストン本体83、複数枚のディスク103、弁体91、ディスク104,105、図3に示すケース部材201、通路形成ディスク202、複数枚のディスク203、複数枚のシートディスク205、蓋部材206、複数枚のディスク255および円環部材256は、それぞれ内周側または全部が、図2に示す先端ロッド55の軸段部73と図3に示すナット260とに挟持されて軸方向にクランプされている。他方、弁体204は、内周側および外周側が共に、軸方向にクランプされることはない。ナット260は、汎用の六角ナットである。
第1実施形態の緩衝器11の油圧回路図は、図4に示すようになっている。すなわち、上室31と下室32とを結ぶ通路108にハードバルブである減衰力発生機構90が、上室31と下室32とを結ぶ通路119にハードバルブである減衰力発生機構92が、それぞれ設けられ、通路108,119に固定オリフィス106,117が設けられている。また、上室31と中間室150との間の通路251にソフトバルブである減衰力発生機構155が、上室31と中間室150との間の通路252にソフトバルブである減衰力発生機構156が、それぞれ設けられ、通路251,252に固定オリフィス176,187が設けられている。
また、中間室150と下室32との間に周波数感応部200が設けられている。周波数感応部200は、上室31から下室32に向けて油液が流れるときに、チェック弁248が閉じ可変室245,246を画成して、中間室150から可変室245に油液を受け入れる。これにより、減衰力を周波数に応じて可変させる。また、周波数感応部200は、下室32から上室31に向けて油液が流れるときに、チェック弁248が開き、下室32から中間室150に油液を流す。
ピストンロッド41が伸び側に移動する伸び行程で、図2に示す伸び側のハードバルブである減衰力発生機構90のみが作用する場合には、ピストン30の移動速度(以下、ピストン速度と称す)が遅い時、上室31からの油液は、通路108を構成する、通路穴88内の通路および固定オリフィス106を介して下室32に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図5に破線X1で示すようになり、図5の左端側の低速域(オリフィス域)では、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率が高くなる。また、ピストン速度が速くなると、上室31からの油液は、通路108を構成する、通路穴88内の通路から伸び側の減衰力発生機構90の弁体91を開きながら、弁体91とバルブシート部97との間を通って、下室32に流れることになり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率が、低速域(オリフィス域)よりも、やや下がることになる。
ピストンロッド41が縮み側に移動する縮み行程で、縮み側の減衰力発生機構92のみが作用する場合には、ピストン速度が遅い時、下室32からの油液は、縮み側の通路119を構成する通路穴89内の通路および固定オリフィス117を介して上室31に流れオリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図5に破線X2で示すようになり、図5の左端側の低速域(オリフィス域)では、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。また、ピストン速度が速くなると、下室32から縮み側の通路119を構成する通路穴89内の通路に導入された油液が、基本的に弁体93を開きながら弁体93とバルブシート部99との間を通って上室31に流れることになり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率が、低速域(オリフィス域)よりも、やや下がることになる。
以上が、図2に示す減衰力発生機構90,92のみが作用する場合であるが、第1実施形態では、図3に示す周波数感応部200が、ピストン速度が同じ場合でも、ピストン周波数に応じて減衰力を可変とする。
つまり、ピストン周波数が高いときの伸び行程では、ピストン速度が遅い時、上記のように減衰力発生機構90のみが作用する場合では固定オリフィス106を介して流れるオリフィス域であっても、上室31からの油液が、通路穴151内の通路から固定オリフィス176、中間室150、通路溝75内の通路を介して周波数感応部200の可変室245に導入される。これに応じて、それまでシート部223とシートディスク205とに当接していた弁体204が、突出部239を蓋部材206に近づけるように変形して可変室245に油液を導入させながら、可変室246から、蓋部材206の貫通穴247内の通路を介して下室32に油液を排出させる。
このように弁体204が変形して可変室245に上室31から油液を導入することにより、上室31から通路108を通過して下室32に流れる油液の流量が減ることになる。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図5に実線X3で示すようになり、図5の左端側の低速域(オリフィス域)から伸び側の減衰力がソフトになる。ここで、弁体204の内周側は、通路形成ディスク202から離間してシートディスク205に片面側からのみ支持されているため、内周側が通路形成ディスク202に近づくように変形し易く、よって、外周側の突出部239が蓋部材206に近づくように容易に変形する。
ピストン速度がやや速くなると、上室31からの油液が、通路穴151内の通路から伸び側のソフトバルブである減衰力発生機構155の弁体134を開きながら、弁体134とバルブシート部161との間を通り、中間室150、通路溝75内の通路を介して周波数感応部200の可変室245に導入される。このときも、弁体204が変形して可変室245に油液を導入させることになり、上室31から通路108を通過して下室32に流れる油液の流量が減ることになる。このため、図5の左端側の低速域において引き続き伸び側の減衰力がソフトになる。
ピストン速度がさらに速くなると、上室31からの油液は、上記のようにソフトバルブである減衰力発生機構155の弁体134を開いて周波数感応部200の可変室245に導入されるのに加えて、通路108を構成する、通路穴88内の通路から伸び側の減衰力発生機構90の弁体91を開きながら、弁体91とバルブシート部97との間を通って、下室32に流れることになる。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図5の左右方向中間から右側の中高速域でも、伸び側の減衰力がソフトになる。
ピストン周波数が高いときの伸び行程では、弁体204の変形の周波数も追従して高くなり、伸び行程の都度、上記のように上室31からの油液を周波数感応部200の可変室245に導入する。
他方で、ピストン周波数が低いときの伸び行程では、弁体204の変形の周波数も追従して低くなるため、伸び行程の初期に、上室31から可変室245に油液が流れるものの、その後は弁体204が蓋部材206に当接して停止し、上室31から通路251を介して可変室245に油液が流れなくなる。これにより、上室31から通路穴88内の通路を含む通路108に導入され、減衰力発生機構90を通過して下室32に流れる油液の流量が減らない状態となり、ピストン速度に対する減衰力の特性は、減衰力発生機構90のみが作用する場合と同様になって、図5に破線X1で示すように伸び側の減衰力がハードになる。
このように、伸び行程において、図5に破線X1で示すピストン周波数が低いときのハードな特性に対して、ピストン周波数が高いときの特性は、図5に実線X3で示すように、ピストン速度が遅い低速域(オリフィス域)から高速域まで全域にわたってソフトになる。
縮み行程では、ピストン速度が遅い時、下室32からの油液が、一方で通路119から、その固定オリフィス117を通って上室31に流れ、他方で、周波数感応部200内のチェック弁248を構成する弁体204をシートディスク205から離座させて、通路252を通り、その固定オリフィス187から上室31に流れる。これにより、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図5に実線X4で示すようになり、図5の左端側の低速域(オリフィス域)から縮み側の減衰力がソフトになる。
ピストン速度がやや速くなると、通路252を通る下室32からの油液が、ソフトバルブである減衰力発生機構156の弁体137を開きながら、弁体137とバルブシート部162との間を通って、上室31に導入される。これにより、バルブ特性の減衰力が発生するため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図5の左右方向中間の低中速域では、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がることになる。
ピストン速度がさらに速くなると、下室32からの油液は、通路252を通る上記の流れに加えて、通路119の流れが、減衰力発生機構92の弁体93を開きながら、弁体93とバルブシート部99との間を通って、上室31に導入される。これにより、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図5のさらに右側の高速域では、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はさらに下がることになる。
つまり、縮み行程では、周波数感応部200がなく、ハードバルブの減衰力発生機構92とソフトバルブの減衰力発生機構156とが並列している構造になる。これらが並列していることによって、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図5に実線X4で示すようになり、図5に破線X2で示す減衰力発生機構92のみが設けられる場合と比べて、ピストン速度が遅い低速域(オリフィス域)から高速域まで全域にわたってソフトになる。ここで、図5に示す二点鎖線X5は、ハードバルブである減衰力発生機構92を設けずにソフトバルブである減衰力発生機構156のみを設けた場合の減衰力特性である。
上記した特許文献1には、周波数に応じて減衰力を可変とする減衰力可変機構を備えた緩衝器が記載されている。緩衝器において、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させたいという要求がある。
第1実施形態の緩衝器11は、ピストン30の移動により上室31から油液が流れ出す通路108に減衰力を発生させる弁体91を設けている。また、ピストン30の移動により上室31から油液が流れ出す別の通路251に、弁体より91も小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる弁体134と、上室31から下室32に油液が流れるとき、ハウジング210内を上流側と下流側とに画成しつつハウジング210内で移動可能であり、下室32から上室31に油液が流れるときに開弁可能な弁体204を有する周波数感応部200と、を直列に設けている。これにより、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能となる。
また、上室31がロッド側室であり、下室32はボトム側室であり、伸び行程のときは、弁体204がハウジング210内を上流側と下流側とに画成しつつハウジング210内で移動することにより減衰力を周波数に応じて可変させ、縮み行程のときは、弁体204が開弁可能である。これにより、伸び行程で、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能となる。
図6は、緩衝器11において、ピストン30の速度が0.03m/sでの作動をシミュレーションし、その際のピストンストロークと減衰力との関係を示したリサージュ波形である。図6では、外側から内側に行くにしたがってピストン30の作動周波数が高くなっており、ピストン30のストロークが小さい原点近辺において、低周波数の時の減衰力に対して、高周波数の時の減衰力を矢印Y1で示すように低くできることがわかる。また、図7は、ピストン30の速度が0.03m/sでの作動をシミュレーションし、その際の周波数と減衰力との関係を示したものである。この結果からも、図7の左側の低周波数の時の減衰力に対して、右側の高周波数の時の減衰力を矢印Y2で示すように低くできることがわかる。
図8は、緩衝器11において、ピストン30の速度が0.3m/sでの作動をシミュレーションし、その際のピストンストロークと減衰力との関係を示したリサージュ波形である。図8でも、外側から内側に行くにしたがってピストン30の作動周波数が高くなっており、ピストン30のストロークが小さい原点近辺において、低周波数の時の減衰力に対して、高周波数の時の減衰力を矢印Y3で示すように低くできることがわかる。また、図9は、ピストン30の速度が0.3m/sでの作動をシミュレーションし、その際の周波数と減衰力との関係を示したものである。この結果からも、図9の左側の低周波数の時の減衰力に対して、右側の高周波数の時の減衰力を矢印Y4で示すように低くできることがわかる。
周波数感応部200は、ケース部材201との間をシールする環状のシール部材236が設けられた環状の弾性変形可能な弁体204でケース部材201内に可変室245,246を画成するものであるため、軸方向長を短縮可能であり、緩衝器11の全体の基本長を短く小型化することが可能となる。
また、周波数感応部200は串刺し構造のため、ピストン30および周波数感応部200のケース部材201のそれぞれの内周側を、ピストンロッド41が挿通された状態で汎用のナット260でピストンロッド41に締結することができる。よって、ピストン30および周波数感応部200をピストンロッド41に締結することが容易にでき、組み立て性が飛躍的に向上する。また、軸方向長を短縮可能である。
また、弁体204は、内周側が、両面側からクランプされずに片面側のみ支持されているため、変形が容易となり、可変室245,246の容積を容易に変更することができる。よって、周波数感応部200の減衰力可変調整幅を広くさせることができる。
また、伸び行程において機能する周波数感応部200が設けられており、縮み行程において機能する周波数感応部が設けられていないため、コスト増を抑制しつつ、例えば伸び行程でピストン周波数に感応して減衰力を可変とすることにより効果的な路面状態等に対して、乗り心地の向上が図れる。また、縮み行程においてピストン周波数に感応して減衰力を可変とする周波数感応部を有する緩衝器では姿勢制御が難しく、伸び行程においてピストン周波数に感応して減衰力を可変とする周波数感応部200を有する緩衝器で効果的に姿勢制御が可能な車両に用いて好適となる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図10〜図12に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図10に示すように、第2実施形態においては、第1実施形態のケース部材201にかえて、筒状部224よりも軸方向長さが長い筒状部224Aを設けた点が異なるケース部材201Aが用いられている。また、蓋部材206のシートディスク205とは反対側に、シートディスク205と同様の複数枚のシートディスク205Aが、シートディスク205とは反対向きに設けられている。また、シートディスク205Aの蓋部材206とは反対側に、ディスク203と同様の複数枚のディスク203Aと、弁体204と同様の弁体204A(第4弁体)とが設けられている。弁体204Aは、弁体204とは反対向きに、弁体204と直列で設けられている。
ディスク203Aおよび弁体204Aのシートディスク205Aとは反対側に、蓋部材281Aが設けられている。蓋部材281Aは、ケース部材201の環状突出部220と基部221と内側円筒状部222とシート部223と切欠部231とを有し、筒状部224が設けられていない形状のものである。また、蓋部材281Aには、基部221に複数の貫通穴282Aが形成されている。蓋部材281Aは、シート部223を弁体204Aに向けた状態で、ケース部材201Aの筒状部224Aに嵌合されて筒状のハウジング210Aをケース部材201Aとで構成する。
通路形成ディスク202、複数枚のディスク203、弁体204、複数枚のシートディスク205、蓋部材206、複数枚のシートディスク205A、複数枚のディスク203Aおよび弁体204Aは、ケース部材201Aの筒状部224A内に配置されており、蓋部材281Aは、ケース部材201Aの筒状部224A内に嵌合されている。
第2実施形態においては、ケース部材201Aの基部221、内側円筒状部222、シート部223、筒状部224Aおよび切欠部231と、通路形成ディスク202と、複数枚のディスク203と、弁体204と、複数枚のシートディスク205と、蓋部材206とが、第1実施形態の周波数感応部200と同様の周波数感応部200Aとなっている。また、蓋部材206と、ケース部材201Aの筒状部224Aと、複数枚のシートディスク205Aと、複数枚のディスク203Aと、弁体204Aと、蓋部材281Aとが、別の周波数感応部284Aとなっている。取付軸部72もケース部材201A内に配置される部分が周波数感応部200A,284Aを構成している。弁体204Aは、環状であり、取付軸部72を内側に貫通させてケース部材201A内に配置されている。
弁体204Aは、内周側が、シートディスク205Aに支持されている。弁体204Aは、そのベースディスク235の内周側が、シートディスク205Aと蓋部材281Aとの間で軸方向に移動可能となっている。また、弁体204Aは、非支持側である外周側にケース部材201Aとの間をシールする環状のシール部材236が設けられており、シール部材236がハウジング210Aに接触してハウジング210Aに対し芯出しされる。弁体204Aの内周側は、両面側からクランプされずに片面側のみシートディスク205Aに支持される単純支持構造となっている。
弁体204Aのシール本体部238は、ケース部材201Aの筒状部224Aの内周面に全周にわたり接触して、弁体204Aと筒状部224Aとの隙間をシールする。弁体204Aのシール本体部238も、弁体204Aがハウジング210A内で許容される範囲で変形しても、弁体204Aと筒状部224Aとの隙間を常時シールする。弁体204Aは、そのシール本体部238が筒状部224Aに全周にわたり接触することで上記のようにハウジング210Aに対し芯出しされる。
弁体204Aは、ハウジング210A内を、ケース部材201Aの基部221側の容量可変な可変室245と、弁体204,204A間の容量可変な可変室246Aとに区画する。弁体204Aは、ハウジング210A内を、可変室246Aと、弁体204Aの蓋部材281A側の容量可変な可変室285Aとに区画する。言い換えれば、周波数感応部284Aは、弁体204Aにより画成されて設けられたケース部材201A内の2つの可変室246A,285Aを有している。可変室285Aは蓋部材281Aの貫通穴282A内の通路を介して下室32に常時連通している。周波数感応部284Aは、周波数感応部200Aの弁体204の下室32側に設けられている。
弁体204Aは、可変室285Aの圧力が可変室246Aの圧力よりも高いとき、ベースディスク235がシートディスク205Aに当接してシートディスク205Aとの間に隙間を形成しない。よって、可変室285Aから可変室246Aへの油液の流れを規制する。また、弁体204Aは、可変室246Aの圧力が可変室285Aの圧力よりも高いとき、ベースディスク235がシートディスク205Aから離座しシートディスク205Aとの間に隙間を形成して、可変室246Aから可変室285Aつまり下室32への油液の流れを許容する。弁体204Aとシートディスク205Aとがチェック弁248Aを構成している。
周波数感応部200Aは、ピストン30が上室31側に移動して、上室31から下室32に向け油液が流れる伸び行程のときは、可変室245の圧力が下流側の可変室246Aの圧力よりも高くなる。これにより、チェック弁248の弁体204が、シートディスク205に着座し閉じていてハウジング210A内を上流側の可変室245と下流側の可変室246Aとに画成しつつハウジング210A内で、可変室245Aを広げ可変室246Aを狭めるように移動する。その際に、周波数感応部284Aは、可変室246Aの圧力が高くなっても、チェック弁248Aの弁体204Aが、シートディスク205Aから離座し開弁して、可変室246Aの圧力の上昇を抑制し、弁体204の移動の抵抗となることを抑制する。その結果、周波数感応部200Aが、第1実施形態の周波数感応部200と同様に、減衰力を周波数に応じて可変させることになる。
周波数感応部284Aは、ピストン30が下室32側に移動して、下室32から上室31に向け油液が流れる縮み行程のときは、可変室285Aの圧力が下流側の可変室246Aの圧力よりも高くなる。これにより、チェック弁248Aの弁体204Aが、シートディスク205Aに着座し閉じていてハウジング210A内を上流側の可変室285Aと下流側の可変室246Aとに画成しつつハウジング210A内で、可変室285Aを広げ可変室246Aを狭めるように移動可能となる。その際に、周波数感応部200Aは、可変室246Aの圧力が高くなっても、チェック弁248の弁体204が、シートディスク205から離座し開弁して、可変室246Aの圧力の上昇を抑制し、弁体204Aの移動の抵抗となることを抑制する。その結果、周波数感応部284Aが、縮み行程において、減衰力を周波数に応じて可変させることになる。
第2実施形態の油圧回路図は、図11に示すようになっている。すなわち、周波数感応部200Aが、伸び行程で上室31から下室32に向けて油液が流れるときに、チェック弁248が閉じ可変室245,246Aを画成して減衰力を周波数に応じて可変させる。また、周波数感応部284Aが、縮み行程で下室32から上室31に向けて油液が流れるときに、チェック弁248Aが閉じ可変室285A,246Aを画成して減衰力を周波数に応じて可変させる。
第2実施形態では、ピストン周波数が高いときの縮み行程では、ピストン速度が遅い領域であっても、下室32からの油液が、周波数感応部284Aの可変室285Aに導入される。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、図12に実線X6で示すようになり、図12の左端側の低速域(オリフィス域)から伸び側まで減衰力がソフトになる。
第2実施形態では、弁体204の下室32側に、縮み行程のとき、ハウジング210A内を上流側と下流側とに画成しつつハウジング210A内で移動可能であり、伸び行程のときは開弁可能な弁体204Aを有する周波数感応部284Aが設けられている。これにより、縮み行程でも、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能となる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図13に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図13に示すように、第3実施形態においては、第1実施形態の伸び側の周波数感応部200とは異なる周波数感応部300が設けられている。周波数感応部300は、いずれも取付軸部72を嵌合させる有孔円板状の蓋部材301と有底筒状のケース部材302とからなるハウジング303を有している。ケース部材302内に配置される取付軸部72も周波数感応部300を構成している。
蓋部材301に円筒状のシート部305が設けられており、シート部305には、その内周側と外周側とを常時連通する切欠部306が形成されている。蓋部材301の内周側には取付軸部72に嵌合する小径穴部307と、これより大径の大径穴部308とが形成されている。
ケース部材302内に、弁体311(第3弁体)が設けられている。弁体311は、金属製の有孔円板状のディスク312とその内周側に設けられたゴム製の弾性のシール部材313とを有しており、環状である。弁体311は、撓み可能であり、内側に取付軸部72を貫通させてケース部材302内に配置されている。
ケース部材302は、有孔円板状の底部315と、底部315の外周縁部から軸方向に延びる筒状部316とを有しており、筒状部316に蓋部材301を嵌合させている。ケース部材302の底部315には下室に開口する貫通穴317が形成されている。
ケース部材302の筒状部316の内周側には、大径部320および小径部321が設けられることで段部322が形成されている。段部322が弁体311の外周側を支持している。なお、段部322とシート部143との間の軸方向の寸法はディスク312の厚さよりも小さくなっている。これにより、弁体311にセット荷重を与えることができる。弁体311の非支持側に設けられるシール部材313は、ピストンロッド41を構成する先端ロッド55の取付軸部72側に設けられる。弁体311は、先端ロッド55との間を環状のシール部材313によりシールする。
ピストンロッド41の先端ロッド55に取り付けられた状態で、先端ロッド55の通路溝75内の通路と、周波数感応部300の蓋部材301の大径穴部308内の通路とが連通することになる。ケース部材302内には、弁体311によって2つの可変室331と可変室332とが画成されて設けられている。通路溝75内の通路に連通する可変室331と貫通穴317内の通路を介して下室32に連通する可変室332とが画成されている。弁体311は、段部322に着座することにより可変室331から可変室332への油液の流れを規制する一方、段部322から離座することにより開弁して可変室332から可変室331への油液の流れを許容するチェック弁333となっている。
第3実施形態の周波数感応部300は、弁体311の支持側と非支持側とが、第1実施形態の周波数感応部200の弁体204に対して、内外逆となっているが、機能は同じである。
なお、第2実施形態の周波数感応部284Aについても、第3実施形態と同様に、弁体204Aを、外周側で支持し、非支持側である内周側で取付軸部72との間をシールする構造にしても良い。
以上に述べた実施形態は、以下の態様が考えられる。
第1の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を第1室および第2室の2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記第1室および前記第2室の一方から作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる第1弁体と、を有し、前記第2通路には、前記第1弁体よりも小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる第2弁体と、前記第1室から前記第2室に作動流体が流れるとき、ハウジング内を上流側と下流側とに画成しつつ該ハウジング内で移動可能であり、前記第2室から前記第1室に作動流体が流れるときに開弁可能な第3弁体を有する周波数感応部と、が直列に設けられている。これにより、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能となる。
第2の態様は、第1の態様において、前記第1室はロッド側室であり、前記第2室はボトム側室であって、伸び行程のときは、前記第3弁体が前記ハウジング内を上流側と下流側とに画成しつつ該ハウジング内で移動することにより減衰力を周波数に応じて可変させ、縮み行程のときは、前記第3弁体が開弁可能である。これにより、伸び工程において、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能となる。
第3の態様は、第2の態様において、前記第3弁体の前記第2室側には、縮み行程のときは、ハウジング内を上流側と下流側とに画成しつつ該ハウジング内で移動可能であり、伸び行程のときは開弁可能な第4弁体を有する周波数感応部が設けられている。これにより、縮み工程において、ピストン速度が遅い領域から周波数に応じて減衰力を大きく可変させることが可能となる。
第4の態様は、第1乃至第3のいずれか一態様において、前記周波数感応部は、筒状のケース部材と、該ケース部材内に配置される軸部と、該軸部を貫通させて前記ケース部材内に配置され、内周側または外周側が支持され、非支持側に前記ケース部材との間または前記軸部との間をシールする環状の弾性シール部材が設けられ、撓み可能な環状の前記第3弁体と、前記第3弁体により画成されて設けられた前記ケース部材内の2つの室と、を有する。これにより、軸方向長を短縮可能であり、全体の基本長を短く小型化することが可能となる。
11 緩衝器
12 シリンダ
30 ピストン
31 上室(第1室,ロッド側室)
32 下室(第2室,ボトム側室)
41 ピストンロッド
72 取付軸部(軸部)
91 弁体(第1弁体)
108 通路(第1通路)
134 弁体(第2弁体)
200,200A,284A,300 周波数感応部
201,201A,302 ケース部材
204,311 弁体(第3弁体)
204A 弁体(第4弁体)
210,210A,303 ハウジング
236 シール部材
245,246,246A,285A,331,332 可変室(室)
251 通路(第2通路)

Claims (4)

  1. 作動流体が封入されるシリンダと、
    前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を第1室および第2室の2室に区画するピストンと、
    前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、
    前記ピストンの移動により前記第1室および前記第2室の一方から作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、
    前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる第1弁体と、を有し、
    前記第2通路には、
    前記第1弁体よりも小さな圧力で開弁して減衰力を発生させる第2弁体と、
    前記第1室から前記第2室に作動流体が流れるとき、ハウジング内を上流側と下流側とに画成しつつ該ハウジング内で移動可能であり、前記第2室から前記第1室に作動流体が流れるときに開弁可能な第3弁体を有する周波数感応部と、
    が直列に設けられていることを特徴とする緩衝器。
  2. 前記第1室はロッド側室であり、前記第2室はボトム側室であって、
    伸び行程のときは、前記第3弁体が前記ハウジング内を上流側と下流側とに画成しつつ該ハウジング内で移動することにより減衰力を周波数に応じて可変させ、
    縮み行程のときは、前記第3弁体が開弁可能であることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
  3. 前記第3弁体の前記第2室側には、
    縮み行程のときは、ハウジング内を上流側と下流側とに画成しつつ該ハウジング内で移動可能であり、伸び行程のときは開弁可能な第4弁体を有する周波数感応部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
  4. 前記周波数感応部は、
    筒状のケース部材と、
    該ケース部材内に配置される軸部と、
    該軸部を貫通させて前記ケース部材内に配置され、内周側または外周側が支持され、非支持側に前記ケース部材との間または前記軸部との間をシールする環状の弾性シール部材が設けられ、撓み可能な環状の前記第3弁体と、
    前記第3弁体により画成されて設けられた前記ケース部材内の2つの室と、を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の緩衝器。
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