JP2020018218A - パンの風味改善剤 - Google Patents

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正俊 塩尻
耕司 宇野
Koji Uno
耕司 宇野
裕理 荒木
Hiromichi Araki
裕理 荒木
庄治 池上
Shoji Ikegami
庄治 池上
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Abstract

【課題】商品への表示が必要な食品添加物の使用量を低減して近年の健康志向に対応するために、甘味料等の食品添加物や砂糖の使用量を増やすことなく、甘くて美味しい、風味が改善されたパンを製造するためのパンの風味改善剤、パンの風味改善方法、及び風味が改善されたパンを提供する。【解決手段】エキソマルトテトラオヒドロラーゼ、およびブランチングエンザイムを含む、パンの風味改善剤を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、パンの風味改善剤に関する。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼ(G4生成酵素)(EC 3.2.1.60)は、澱粉を非還元末端からマルトテトラオース単位で加水分解し、マルトテトラオースを生成するエキソ型のアミラーゼであり、澱粉糖化工業においてマルトテトラオースを製造する酵素として用いられている。パンの製造においては、エキソマルトテトラオヒドロラーゼはパンの弾力、しなやかさの改善、および固化現象の防止などの作用を有することが知られている(特許文献1〜3)。
ブランチングエンザイム(EC 2.4.1.18、以下「BE」とも称する)は、澱粉に作用する転移酵素(6−α−グルカノトランスフェラーゼ)であり、澱粉、グリコーゲンなどのグルコース構成多糖においてα−1,4グルカン鎖を他のα−1,4グルカン鎖の内部のグルコースの6位に転移し、分岐構造を生成する。ブランチングエンザイムはクラスターデキストリンの製造や飲食物の製造において用いられており、ブランチングエンザイムの活性で生成されたクラスターデキストリンが食品の苦みや甘味を低減することが知られている(非特許文献1)。パンの製造においては、ブランチングエンザイムがパンの凝集性を低減することが知られている(特許文献4)。
製パン業界ではパンの多様化・バラエティ化が進んでおり、特徴的なパンに対する需要が高く、中でも甘くて美味しいパンの開発が求められている。パンの風味は糖類の含有量により大きく影響されると考えられており、糖類の添加によりパンの風味を改善できる。しかし、単に砂糖の量を増加しても、砂糖が酵母に消費されてしまいパンの甘味が増強せず、原材料コストの上昇を補う程の利点を得られないことがある。さらに、近年、乳化剤やイーストフード不使用を謳った商品も増えており、食品添加物を含まないことも消費者の商品選択のポイントとなっている。食品添加物の使用量を低減する等の健康志向も進んできているため、様々な添加物を使用することは必ずしも好まれない。一方、酵素はパンの高温焼成中に失活しその機能が失われるため、商品への表示は不要である。また、酵素は植物や純粋培養された微生物から抽出して作られた天然の素材であることが多く、 大規模な製パン工場を有する製パンメーカーのみならずリテールベーカリーにおいてもその使用が広がっている。近年の健康志向を踏まえて、糖類等の添加物の使用量を低減しながらパンの風味を改善する方法が求められていた。
特開平11−266773号公報 特開平11−178499号公報 特表2007−526752号公報 国際公開第2015/152099号公報
生物工学会誌、2006年、第84巻、第2号、61−66頁
本発明は、商品への表示が必要な食品添加物の使用量を低減して近年の健康志向に対応するために、甘味料等の食品添加物や砂糖の使用量を増やすことなく、甘くて美味しい、風味が改善されたパンを製造するためのパンの風味改善剤、パンの風味改善方法、及び風味が改善されたパンを提供することを目的とする。
本発明者らは、酵素の組み合わせがパンの風味にもたらす影響を研究した結果、エキソマルトテトラオヒドロラーゼとブランチングエンザイムとを組み合わせて使用するとパンの風味を改善できることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ、およびブランチングエンザイムを含む、パンの風味改善剤に関する。
ブランチングエンザイムが、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来であることが好ましい。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼが、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来であることが好ましい。
風味改善が、甘味の増強であることが好ましい。
また、本発明は、パン材料に、前記パンの風味改善剤を添加する工程を含む、パンの製造方法に関する。
また、本発明は、前記製造方法により製造されたパンに関する。
また、本発明は、パン材料に、前記パンの風味改善剤を添加する工程を含む、パンの風味改善方法に関する。
本発明のパンの風味改善剤はエキソマルトテトラオヒドロラーゼとブランチングエンザイムとを組み合わせて含むため、甘味料等の商品への表示が必要な食品添加物の使用量を低減し、砂糖の使用量および摂取カロリーを増やすことなく、パンの風味を改善することができる。また、ブランチングエンザイムの作用によりパンの風味成分を際立たせることができ、健康志向に反する甘味料等の添加物の使用量を低減し、砂糖の使用量を増やすことなく、甘くて美味しいパンを製造できる。
官能試験によるパンの甘味の評価結果(総得点)を示す。 官能試験によるパンの甘味の評価結果(最も甘いと評価した人数)を示す。 パンに含まれる糖含有量を示す。
<<パンの風味改善剤>>
本発明のパンの風味改善剤は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ、およびブランチングエンザイムを含む。
<エキソマルトテトラオヒドロラーゼ>
エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、澱粉をエキソ型で加水分解する酵素であり、4分子のグルコースからなるマルトテトラオースを生成する。様々な生物がエキソマルトテトラオヒドロラーゼを有しており、本発明で使用するエキソマルトテトラオヒドロラーゼの由来は特に限定されず、微生物由来、動物由来、植物由来のものが挙げられる。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼの由来となる微生物としてはシュードモナス属、バシラス属が挙げられる。シュードモナス属の微生物としてはシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・サッカロフィリア(Pseudomonas saccharophilia)、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)が挙げられる。バシラス属の微生物としてはバシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バシラス・エスピー(Bacillus sp.)が挙げられる。動物としては哺乳類、爬虫類が挙げられる。哺乳類としては、ブタ、ウサギ、ウシ、ウマ、イノシシ、ヒツジ、ネズミ、ハムスターが挙げられる。爬虫類としてはヘビが挙げられる。植物としてはシロイヌナズナ、ピーナツ、キャベツが挙げられる。これらの中でも、微生物由来であることが好ましく、シュードモナス属由来であることがより好ましく、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来であることがさらに好ましい。また、エキソマルトテトラオヒドロラーゼとしては、起源となる微生物、動物、または植物から抽出したもの、微生物細胞で大量生産させたもののいずれを用いてもよい。また、遺伝子組み換え型エキソマルトテトラオヒドロラーゼを用いることもできるが、非遺伝子組み換え(Non−GMO)品であることが好ましい。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、pH4〜10に至適pHを有するエキソマルトテトラオヒドロラーゼが好ましく、pH5〜8に至適pHを有するエキソマルトテトラオヒドロラーゼがより好ましい。また、エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、20℃〜70℃に至適温度を有するエキソマルトテトラオヒドロラーゼが好ましく、25℃〜50℃に至適温度を有するエキソマルトテトラオヒドロラーゼがより好ましい。
酵素タンパク質であるエキソマルトテトラオヒドロラーゼをパン生地に添加すると、加熱する工程で生地温度が上がり、生地内に含まれるエキソマルトテトラオヒドロラーゼは熱変性して働きを失う。加熱後のパンに含まれる、熱変性したエキソマルトテトラオヒドロラーゼは、卵や他の原材料に含まれるタンパク質と同様に体内で消化吸収される。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼは、天然に存在する生物から調製することが可能である。天然に存在する微生物からエキソマルトテトラオヒドロラーゼを製造する場合、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを生産する微生物を培養する工程、培養液から微生物菌体を分離する工程、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを精製する工程を含む方法により製造できる。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼを生産する微生物を培養する工程では、該微生物が利用し得る栄養源を含む培地で該微生物を培養する。培地の形態としては、エキソマルトテトラオヒドロラーゼの生産を促進する限り、液体状であってもよく、固体状であってもよい。大量培養には、培地の調製が容易であり、かつ撹拌可能のため高い菌濃度にまで培養が可能であるという点から液体培地が好ましい。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼとしては、市販の製剤に含まれる酵素を利用することもできる。市販の製剤としては、特に限定されないが、例えば、デナベイク(R)EXTRA(6,500U/g)(ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
風味改善剤中のエキソマルトテトラオヒドロラーゼの含有量は限定されないが、風味改善剤の重量1gあたり、0.5U〜750000U、好ましくは1U〜720000U、より好ましくは5U〜700000U、さらに好ましくは10U〜100000U、さらにより好ましくは100U〜10000U、最も好ましくは6000U〜8000Uの割合でエキソマルトテトラオヒドロラーゼを含有する。ここで、エキソマルトテトラオヒドロラーゼの活性は、酵素を基質澱粉に作用させ、生成した還元糖の還元力をソモギー・ネルソン変法により定量することにより、測定できる。酵素活性の単位は、1分間に1μmolのグルコースに相当する還元力を生成する酵素量を1Uとする。
エキソマルトテトラオヒドロラーゼの形態としては、エキソマルトテトラオヒドロラーゼを含む溶液をそのまま液体状で使用してもよいし、真空乾燥、凍結乾燥またはスプレードライして得られた粉末状の酵素として使用してもよい。
<ブランチングエンザイム>
ブランチングエンザイム(EC2.4.1.18)は、澱粉に作用する転移酵素(6−α−グルカノトランスフェラーゼ)である。ブランチングエンザイムは、一般的に、澱粉、グリコーゲンなどのグルコース構成多糖においてα−1,4グルカン鎖を他のα−1,4グルカン鎖の内部のグルコースの6位に転移し、分岐構造を生成する活性を有し、澱粉中のアミロペクチンクラスターの継ぎ目に作用して、環状クラスターデキストリン(CCD)を生成することが知られている。本発明のパンの風味改善剤を用いた場合にもパンの中で環状クラスターデキストリンが生成している可能性がある。なお、環状クラスターデキストリン(CCD)自体には甘味がほとんどなく、クラスターデキストリンは食品の苦みや甘味を低減させることが知られている(非特許文献1)。
ブランチングエンザイムは、pH4〜10に至適pHを有するブランチングエンザイムが好ましく、pH5〜8に至適pHを有するブランチングエンザイムがより好ましい。また、ブランチングエンザイムは、20℃〜70℃に至適温度を有するブランチングエンザイムが好ましく、25℃〜50℃に至適温度を有するブランチングエンザイムがより好ましい。ブランチングエンザイムは、パンの生地の調製の間、活性を有するが、高温条件(例えば焼成工程)では活性が失われる。
ブランチングエンザイムの由来および調製方法は特に限定されない。ブランチングエンザイムの調製方法としては、例えば、ブランチングエンザイムを含有する天然に存在する生物(例えば植物または微生物)から、抽出、精製などの当業者が通常用いる方法を用いて調製する方法が挙げられる。また、ブランチングエンザイムは、当該技術分野で周知の組換えDNA技術を用いて調製することもできる。ブランチングエンザイムを含有する生物としては、アルスロバクタ・グロビホルミス(Arthrobacter globiformis);バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium);ストレプトコッカス・ミチス(Streptococcus mitis);サルモネラ・タイフィムリウム(Salmonella typhimurium);藻類シアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium);大腸菌;バチルス・カルドリチクス(Bacillus caldolyticus);ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus);シネココッカス(Synechococcus)種などが挙げられる。なかでも、ゲオバチルス属由来のブランチングエンザイムが好ましく、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来のブランチングエンザイムがより好ましい。
ブランチングエンザイムを天然に存在する生物から調製する方法は、例えば、ブランチングエンザイムを生産する微生物を培養する工程、培養液から微生物菌体を分離する工程、および微生物菌体からブランチングエンザイムを抽出かつ精製する工程を含む。ブランチングエンザイムを生産する微生物を培養する工程では、該微生物が利用し得る栄養源を含む培地で該微生物を培養する。培地の形態としては、ブランチングエンザイムの生産を促進する限り、液体状であっても固体状であってもよい。大量培養には、培地の調製が容易であり、かつ撹拌可能のため高い菌濃度にまで培養が可能であるという点から液体培地が好ましい。
ブランチングエンザイムとしては、市販の製剤に含まれる酵素を利用することもできる。市販の製剤としては、特に限定されないが、例えば、デナチームBBR LIGHT(50,000U/g)(ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
本発明において、ブランチングエンザイムの活性は、アミロース水溶液(0.1%アミロース(ポテト由来、シグマアルドリッチ社))に酵素液を加え、50℃、10分間反応させた後にヨウ素呈色させた時、1分間あたりの吸光度(660nm)の減少率が1%である酵素量を1ユニット(U)とすることにより算出することができる。
パンの風味改善剤におけるブランチングエンザイムの含有量は限定されないが、風味改善剤の重量1gあたり、好ましくは300U〜1000000U、より好ましくは800U〜100000U、さらに好ましくは1000U〜85000U、さらにより好ましくは5000U〜70000U、最も好ましくは10000U〜60000Uの割合でブランチングエンザイムを含有する。
ブランチングエンザイムの形態としては、ブランチングエンザイムを含む溶液をそのまま液体状で使用してもよいし、真空乾燥、凍結乾燥またはスプレードライして得られた粉末状の酵素として使用してもよい。
<任意成分>
本発明の風味改善剤は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼおよびブランチングエンザイムのみで構成されていてもよいし、両酵素以外に、本発明の効果を阻害しない程度において、酵素製剤が通常含有し得る他の成分を含有していてもよい。このような成分として、賦形剤、pH調整剤、保存料、酵素、増粘多糖類、乳化剤、乳製品、エキス、糖質、甘味料、無機塩類が挙げられる。パンの風味改善剤に含有されるエキソマルトテトラオヒドロラーゼとブランチングエンザイム以外の成分の含有量は特に限定されず、当業者によって任意の量が選択され得る。
賦形剤としては、当業者が適宜選択し、必要に応じて複数種を組み合わせて用いることができる。賦形剤の例としては、例えば、デキストリン、トレハロース、米粉、小麦粉等の穀物粉が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、アスコルビン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、およびアジピン酸、ならびにこれらの有機酸のナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、およびカリウム(K)塩ならびに炭酸、リン酸、およびピロリン酸、ならびにこれらの無機酸のNa塩およびK塩が挙げられる。
保存料としては、例えば、プロピオン酸、プロピオン酸塩、亜硫酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩などが挙げられる。塩としては、ナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、およびカリウム(K)塩などが挙げられる。
酵素としては、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、マルトジェニックアミラーゼ、グルカン1,4−α−マルトトリオヒドロラーゼ、グルカン1,4−α−マルトヘキサオヒドロラーゼ、ヘミセルラーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼ、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ぺルオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、カタラーゼ、グルタチオンデヒドロゲナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、トランスグルタミナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、β−グルカナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、キチナーゼなどが挙げられる。
増粘多糖類としては、例えば、加工澱粉、ガム類、アルギン酸、アルギン酸誘導体、ペクチン、カラギーナン、カードラン、プルラン、ゼラチン、セルロース誘導体、寒天、タマリンド、サイリウム、グルコマンナンなどが挙げられる。
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サポニンなどが挙げられる。
乳製品としては、例えば、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、ホエイ粉、カゼイン、チーズ、ヨーグルト、練乳、発酵乳、クリームなどが挙げられる。
エキス類としては、例えば、酵母エキス、モルトエキスなどが挙げられる。
糖質としては、例えば、グルコース、果糖などの単糖;砂糖、マルトース、イソマルトース、トレハロース、ラクトース、ラクツロース、セロビオースなどの二糖;マルトトリオース以上のマルトオリゴ糖、ラフィノース、パノース、スタキオース、グルコオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ゲンチオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、ラクトスクロースなどの直鎖もしくは分岐オリゴ糖;異性化糖、水あめ、粉あめ、はちみつなどの糖混合物;澱粉、加工澱粉、デキストリン、水酸化ヘミセルロースなどの多糖;還元水あめ、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、パラチニット、エリスリトール、オリゴ糖還元物などの糖アルコールなどが挙げられる。二糖類、オリゴ糖類、澱粉、加工澱粉類、デキストリンは賦形剤としても用いられる。
甘味料としては、例えば、ステビア、アスパルテーム、グリチルリチン、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテームなどが挙げられる。
無機塩類としては、例えば、食塩、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、重合リン酸塩などが挙げられる。
<パンの風味改善剤の製造方法および形状>
パンの風味改善剤は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ、ブランチングエンザイムを含んでいればその製造方法は特に限定されない。例えば、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ、ブランチングエンザイム、および賦形剤を含むパンの風味改善剤を製造する場合は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ、ブランチングエンザイム、および賦型剤を混合機にて混合する。混合機としては、容器回転型、容器固定型、複合型等が挙げられ、目的の活性値や量、賦型剤の種類に応じて適宜選択できる。
パンの風味改善剤の形状は特に限定されず、粉末状、顆粒状、液体状、ペースト状、固形状が挙げられる。粉末状の場合、エキソマルトテトラオヒドロラーゼおよびブランチングエンザイムを水もしくは糖液などの溶媒に溶解した後、必要に応じてデキストリンなどの賦形剤を配合した後、乾燥させて粉末状としたものであってもよい。
<風味改善>
本発明のパンの風味改善剤をパン生地に配合すると、風味が改善したパンが得られる。パンの風味は、適切なパネラーによる官能試験により評価できる。改善される風味として、しっとり感、甘味、香りが挙げられる。したがって、本発明の風味改善剤は、パンの甘味増強剤、しっとり感増強剤、香り増強剤として用いることができる。
本発明の風味改善剤を配合して得られたパンは、マルトース等の糖含有量に顕著な増加はないが、官能試験では甘味が増強される。その理由の1つとして、次の機構が推定される。すなわち、エキソマルトテトラオヒドロラーゼは小麦粉に含まれる澱粉に作用してマルトテトラオースを生成し、小麦粉に含まれるアミラーゼがマルトテトラオースを分解してマルトースを生じ、マルト―スがパンに蓄積する。一方、ブランチングエンザイムはパンの凝集性を改善し、口腔内でパンをほぐれやすくさせる。その結果、パンに蓄積したマルトースが唾液に溶出しやすくなり、マルトースの舌上の味覚受容体による認識が促進された可能性がある。
<<パンの製造方法>>
本発明のパンの製造方法は、パン材料に、パンの風味改善剤を添加する工程を含む。
<パン材料>
パン材料としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉、全粒粉、グラハム粉など)、イースト(例えば、生イースト、ドライイースト、インスタントドライイーストなど)、糖(例えば、上白糖、グラニュー糖、三温糖、黒糖などの砂糖、異性化糖、粉飴、水あめ、糖アルコール、オリゴ糖、トレハロースなど)、食塩、乳成分(例えば、牛乳、クリーム、全粉乳、脱脂粉乳、乳タンパク質、濃縮乳など)、油脂(例えば、ショートニング、マーガリン、バター、液状油、乳化油脂など)、水、卵(全卵、卵黄、卵白、乾燥卵、凍結卵など)、ベーキングパウダーなどや、これらの混合物が挙げられる。
さらに、風味や味、食感や風味に変化をつけるために、小麦粉以外の穀物粉(例えば、米粉、ライ麦粉、コーンスターチ、大豆粉など)、牛乳、生クリーム、ヨーグルト、クリームチーズ、サワークリーム等の乳製品、チョコレート類、ココアパウダー、コーヒー、抹茶、紅茶等の粉末材料、シナモン、バニラビーンズ等のスパイス・ハーブ類、果汁、フルーツ、ナッツ、アルコール、香料などを加えてもよい。
<パン材料への添加方法>
本発明のパンの風味改善剤をパン材料に添加する方法は特に限定されない。パンの風味改善剤は、パン種の混捏工程の前、間または後のいずれにおいても、添加もしくは配合することができる。ここで、「混捏」(ミキシング)とは、パン生地材料と本発明の風味改善剤とを混合して捏ねることをいう。混捏は、通常のパンの製造において用いられる条件で行うことができる。また、パンの風味改善剤は、パンの最終加熱の前までにパン材料に添加することが好ましい。エキソマルトテトラオヒドロラーゼ、およびブランチングエンザイムを含むパン材料を最終加熱すると、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ、およびブランチングエンザイムは高温により失活し、原材料に含まれる他のタンパク質と同様に体内で消化吸収される。
パンの風味改善剤はパン材料のいずれかに直接加えてもよく、水などの液体に予め溶解させてからパン材料に加えてもよい。また、パンの風味改善剤はパン材料の全体に加えて混合してもよいし、パン材料の一部分、例えば小麦粉に加えて混合した後に、その他のパン材料を加えて混合してもよい。例えば、本発明のパンの風味改善剤が粉末状の場合、パンの粉体原料と混合してもよく、例えば、混合して篩がけする方法が挙げられる。パンの風味改善剤は必要に応じて食塩もしくは糖と共に水に溶解(粉末状の場合)もしくは希釈(液状の場合)してもよく、マーガリンなどの油脂に予め配合もしくは分散溶解させてから、使用してもよい。
<製パン法>
パン生地の製造と、パン生地の加熱は、通常の方法で行うことができる。パン生地の製造法としては、湯種法、中種法(スポンジ法)、直捏(ストレート)法、冷蔵法、冷凍法、液種法(水種法)、サワー種法、酒種法、ホップ種法、中麺法(浸漬法)、チョリーウッド法、連続製パン法が挙げられ、この中でも小麦粉澱粉をα化させ、パンの風味改善剤が作用しやすくなる点で湯種法が好ましい。
湯種法では、小麦粉の一部または全部を湯と混合して湯種を製造し、その後、残りの小麦粉や材料を加えて本捏を行い、発酵して加熱する。湯種法でパンを製造する場合、パンの風味改善剤は湯種材料、または本捏材料どちらに配合してもよいが、生地のベタツキが生じにくく作業しやすい点で本捏材料に配合することが好ましい。
例えば、湯種法では、パンは、次のようにして製造することができる。小麦粉と、加熱水を3〜10分間混捏した後、室温において25〜35℃まで自然に冷却させて湯種を製造する。加熱水の温度は80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。湯種に本捏原料を配合して得られた最終的なパン種に含まれる小麦粉100重量部に対し、湯種に使用する小麦粉の量は5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましく、15重量部以上がさらに好ましい。また、前記小麦粉100重量部に対し、湯種に使用する小麦粉の量は40重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、25重量部以下がさらに好ましい。前記小麦粉100重量部に対し、湯種に使用する加熱水の量は5重量部以上が好ましく、15重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましい。前記小麦粉100重量部に対し、湯種に使用する加熱水の量は30重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましい。湯種に使用する加熱水の量が30重量部を超えると生地のベタツキが強くなり、作業性が低下する傾向がある。湯種における小麦粉と加熱水の重量比は小麦粉:加熱水=1:2〜2:1が好ましい。
上記方法により得られた湯種を本捏材料と混捏する。このとき、最終的なパン種に含まれる小麦粉100重量部に対し、本捏材料として添加する水の量は35重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましく、43重量部以上がさらに好ましい。また、前記小麦粉100重量部に対し、本捏材料として添加する水の量は、65重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましく、47重量部以下がさらに好ましい。また、湯種に使用する加熱水と本捏材料として添加する水の合計量は、最終的なパン種に含まれる小麦粉100重量部に対し65重量部以上が好ましく、70重量部以上がより好ましい。また、湯種に使用する加熱水と本捏材料として添加する水の合計量は、75重量部以下が好ましく、73重量部以下がより好ましい。水の合計量が65重量部未満では風味改善効果が得られにくく、75重量部を超えると生地のベタツキが強くなり、作業性が低下する傾向がある。
得られたパン生地を15℃〜35℃で10分〜50分間放置する(フロアタイム)。次いで、所望のパンの形状に合わせて生地を適宜分割し、15℃〜35℃で10分〜30分間放置する(ベンチタイム)。これを成型し、25℃〜45℃で適当な大きさに生地が膨張するまで最終発酵させた後、160℃〜250℃で10分〜60分間加熱してパンを製造することができる。
中種法では、小麦粉の一部または全部を先に発酵させて中種を製造し、その後、残りの小麦粉や材料を加えて本捏を行う。中種法でパンを製造する場合、パンの風味改善剤は中種材料、または本捏材料どちらに配合してもよいが、中種材料に配合することが好ましい。
例えば、中種法では、パンは、次のようにして製造することができる。中種材料を混捏し、例えば、25℃〜35℃で2時間〜5時間発酵(中種発酵)させる。これを、本捏材料と混捏し、得られたパン生地を通常、15℃〜35℃で10分〜40分間放置する(フロアタイム)。次いで、所望のパンの形状に合わせて生地を適宜分割し、例えば、15℃〜35℃で10分〜30分間放置する(ベンチタイム)。これを成型し、例えば、25℃〜45℃で適当な大きさに生地が膨張するまで最終発酵させた後、160℃〜250℃で10分〜60分間焼成してパンを製造することができる。
ストレート法では、最初からすべての材料を混合し、発酵させて生地を製造する。ストレート法の場合には、パンの風味改善剤を他の材料とともに最初から配合することが好ましい。
例えば、ストレート法では、パンは次のようにして製造することができる。パン生地材料に本発明の風味改善剤を加えて混捏し、パン生地を得る。得られた生地を、例えば、25℃〜40℃で30分〜120分間発酵させる(一次発酵)。次いで、必要に応じて、所望の形状に合わせてパン生地を適宜分割し、これを成型し、例えば、25℃〜45℃で適当な大きさに生地が膨張するまで(例えば、30分〜150分)さらに発酵させる。発酵後、160℃〜250℃で10分〜60分間加熱(例えば、焼成)してパンを製造することができる。
冷蔵法では、中種法、およびストレート法と同様の方法で生地を製造する。その後の各工程のいずれかの段階で一度冷蔵保管を行うことが特徴である。なお、中種を製造する場合は、中種を冷蔵してもよい。冷蔵法において、中種法と同様の方法で生地を製造する場合、パンの風味改善剤を中種材料、または本捏材料どちらに配合しても本発明の効果を達成できるが、中種材料に配合することが好ましい。ストレート法と同様に生地を製造する場合、パンの風味改善剤を他の材料とともに最初から配合することが好ましい。
冷凍法では、中種法、及びストレート法と同様の方法で生地を製造する。その後の各工程のいずれかの段階で一度冷凍保管を行うことが特徴である。冷凍法において、中種法と同様の方法で生地を製造する場合、パンの風味改善剤を中種材料、または本捏材料どちらに配合しても本発明の効果を達成できるが、中種材料に配合することが好ましい。ストレート法と同様の方法で生地を製造する場合、パンの風味改善剤を他の材料とともに最初から配合することが好ましい。
冷凍処理は、パン生地を−80℃〜−5℃の温度条件下に保持することにより行うことができる。温度条件は、一定であってもよいが、適宜変化させることもできる。温度条件を変化させる場合、例えば−40℃〜−30℃の温度で1時間〜3時間程度保持した後に−20℃〜−10℃の温度で数日〜数ヶ月保持する条件を用いることもできるが、これに限定されない。冷凍処理の時間は、パンの種類および大きさにより、また所望の保存期間に応じて適宜調節することができる。
パン生地を冷凍処理に付した場合、その後に解凍処理を施して製造するのが好ましい。解凍処理は、パン生地が完全に解凍されるまで例えば15℃〜30℃の温度に保持することにより行うことができる。
液種法では、あらかじめ液体中でパン酵母の発酵生成物を製造することが特徴であり、中種法と同様の方法で生地を製造する。液種法において、パンの風味改善剤を中種材料、または本捏材料どちらに配合しても本発明の効果を達成できるが、中種材料に配合することが好ましい。
いずれの製法においても、パン生地の発酵処理時の温度は、通常の製パン法において用いられる条件であれば特に限定されず、パンの種類によって適宜選択できるが、0〜45℃が好ましく、25〜45℃がより好ましく、35〜38℃がさらに好ましい。
パン生地の発酵処理時の湿度は、通常の製パン法において用いられる条件であれば特に限定されず、パンの種類によって適宜選択できるが、50〜95%が好ましく、65〜95%がより好ましく、80〜90%がさらに好ましい。
パン生地の発酵処理の時間は、通常の製パン法において用いられる条件であれば特に限定されず、パンの種類によって適宜選択できるが、0〜20時間が好ましく、0〜4時間がより好ましく、50〜100分がさらに好ましい。ここで発酵時間とは、成形後の最終発酵の時間のことをいう。
いずれの製法においても、水の合計量は、最終的なパン種に含まれる小麦粉100重量部に対し60重量部以上が好ましく、65重量部以上がより好ましく、70重量部以上がさらに好ましい。また、水の合計量は、80重量部以下が好ましく、78重量部以下がより好ましく、75重量部以下がさらに好ましい。
パン生地中の風味改善剤の含有量は、その際の製パン法に用いられる条件に応じて適宜選択できるが、エキソマルトテトラオヒドロラーゼとブランチングエンザイムのそれぞれについて、最終的なパン種に含まれる強力粉の合計量に対する酵素原末として0.1〜100ppmとなることが好ましく、1〜60ppmとなることがより好ましく、3〜40ppmとなることがさらに好ましい。
パン生地の加熱方法としては、焼成加熱、蒸し加熱が挙げられる。パン生地の加熱温度は、通常の製パン法において用いられる条件であれば特に限定されず、パンの種類に応じて適宜選択できるが、焼成加熱の場合には170〜250℃が好ましく、190〜220℃がより好ましい。蒸し加熱の場合には、100〜140℃が好ましく、115〜125℃がより好ましい。
パン生地の加熱時間は、通常の製パン法において用いられる条件であれば特に限定されず、パンの種類に応じて適宜選択できるが、10〜70分が好ましく、15〜60分がより好ましく、20〜50分がさらに好ましく、21〜40分がさらにより好ましい。
加熱後のパンに、フィリングを詰めたり、表面にスプレッドを塗ったりすることもできる。このようなフィリングまたはスプレッドとしては、例えば、カスタードクリーム、チョコクリーム、ジャム類、餡、惣菜類(カレー、焼きそば、ツナ、卵、ポテトなど)が挙げられる。
また、本発明は、上記製造方法により製造されたパンに関する。本発明のパンとしては、例えば、食パン、健康パン、菓子パン、ロールパン、フランスパン、蒸しパン、調理パン、コッペパン、フルーツブレッド、コーンブレッド、バターロール、バンズ、サンドイッチ、クロワッサン、デニッシュペーストリー、乾パン、ベーグルおよびプレッツェルが挙げられる。
また、本発明は、パン材料に、パンの風味改善剤を添加する工程を含むパンの風味改善方法に関する。パン材料に、パンの風味改善剤を添加する工程は、上記製造方法に関して記載した通りである。
<1>湯種法によるパンの製造および評価1
(1)酵素粉末
エキソマルトテトラオヒドロラーゼ粉末として、デナベイク(R)EXTRA(ナガセケムテックス株式会社製)を用いた。ブランチングエンザイム粉末として、デナチームBBR LIGHT(ナガセケムテックス株式会社製)を用いた。
(2)湯種の製造
湯種法によるレシピでパンを製造した。湯種は、表1に記載の湯種材料を混合して、ミキサー(株式会社愛工舎製作所製:MT−20)により低速30秒、および中高速5分でミキシングした後、室温に置き、約30℃まで冷却することにより製造した。製造した湯種は4℃で冷蔵した。
Figure 2020018218
なお、表1において酵素粉末以外の成分の含有量は、湯種に本捏原料を配合して得られた最終的なパン種に含まれる強力粉を100重量部としたときの重量部を表す。また、エキソマルトテトラオヒドロラーゼ粉末とブランチングエンザイム粉末の含有量は、最終的なパン種に含まれる強力粉(湯種に含まれる強力粉と、本捏に含まれる強力粉の合計量)に対する上記(1)の酵素粉末の量を表す。
(3)本捏材料の配合
上記(2)で得た湯種に表1に記載の本捏材料のうちショートニングを除いたものを配合して最終的なパン種を得た。実施例1では上記(1)で得たエキソマルトテトラオヒドロラーゼ粉末およびブランチングエンザイム粉末を混合して得られた合剤を配合した。比較例1では酵素粉末は配合せず、比較例2では上記(1)エキソマルトテトラオヒドロラーゼ粉末のみを配合した。
(4)発酵および焼成
(4−1)ミキシングおよび捏上げ
上記(3)で得たパン種を、25〜26℃の条件で、ミキサー(株式会社愛工舎製作所製:MT−20)により低速で3分間、中低速で3分間、中高速で1分間ミキシングした。次に、表1に記載のショートニングを配合し、低速で3分間、中低速で3分間、中高速で1分間ミキシングした。
(4−2)フロアタイムおよび分割
捏上げ後のパン種を室温(28℃:湿度80%)で40分間、一次発酵を行った(フロアタイム)。次いで、パン種を(a)1.5斤角食パン用として210g、(b)ワンローフ用として300gに分割した。
(4−3)ベンチタイム
各パン種を室温で20分間寝かせた。
(4−4)成形
(a)1.5斤角食パン用のパン種はU字逆方向で3個充填した。
(b)ワンローフ用のパン種はロール状で充填した。
(4−5)ホイロ(最終発酵)
各パン種を温度35℃、湿度80%の条件で、(a)1.5斤角食パン用のパン種は型の80%の高さとなるまで発酵させた。(b)ワンローフ用のパン種は型上の1.5cmの高さとなるまで発酵させた。
(4−6)焼成
(a)1.5斤角食パン用のパン種は上火220℃、下火210℃で35分間焼成した。
(b)ワンローフ用のパン種は上火195℃、下火210℃で25分間焼成した。
(5)パンの甘味の官能評価
実施例1、比較例1〜2の1.5斤角食パンを、8名のパネラーA〜Hに提供し、各試験者に、実施例1、比較例1〜2のパンのうちいずれに最も甘味を感じるか官能評価させ、順位法に基づき甘味が最も強いパンから順に3点、2点、1点を付与した。下位の2つのパンに差がない場合には両方に1.5点を付与した。採点結果を表2および図1に示す。実施例1のパンでは比較例1〜2のパンよりも総得点数が多く、最も甘味が強かった。
Figure 2020018218
また、各実施例および比較例のパンについて、最も強い甘味を感じると評価したパネラーの人数を合計した。その結果を図2に示す。6名のパネラーが実施例1のパンを最も甘いと評価した。比較例1のパンを最も甘いと感じる試験者はおらず、比較例2のパンを最も甘いと感じる試験者は2名であった。
実施例1はブランチングエンザイムを含む点のみで比較例2と相違するが、表2および図1〜2に示すように、実施例1は比較例2よりも甘味が強いと評価された。
(6)糖組成
実施例1、比較例1〜2の1.5斤角食パンの糖組成を、下記(i)〜(vi)の方法により測定した。
(i)パンクラムを3cm角に4個切り出し、それぞれ粉砕して混合した。
(ii)50mLビーカーに(i)の粉砕物を5g計りとり、イオン交換水を30g添加した。
(iii)室温にて60分間撹拌した。
(iv)全量を50mL遠沈管に入れ、遠心分離(8000rpm×10分)した。
(v)上清2mLを遠心分離(14000rpm×15分)した。
(vi)上清をHPLC分析に供した。
HPLC分析によりフルクトース、グルコース、スクロース、マルトース(G2)の含有量を測定し、各成分の割合(%)を算出した。結果を図3に示す。
HPLC条件は下記の通りであった。
カラム:XBridge Amide 3.5μm(4.6×150mm)Waters製
ガードカラム:XBridge Amide 3.5μm用:VanGuard Cartridge(3.9×5mm)Waters製
溶離液:77(v/v)%アセトン水溶液および0.05(w/v)%トリエチルアミン
検出器:示唆屈析計(RI)
流速:0.3mL/min
カラム温度:85℃
図3に示すように、実施例1と比較例2のパンは、マルトース含有量が同等であり、フルクトース、グルコース、スクロース含有量にも大きな差異は認められなかった。この結果は、表2および図1〜2で確認された実施例1のパンの甘味は、パン中のマルトース含有量以外の要素に起因することを示している。実施例1のパンの甘味の原因として、次の機構が推定される。すなわち、エキソマルトテトラオヒドロラーゼが小麦粉に含まれる澱粉に作用してマルトテトラオースを生成し、小麦粉に含まれるアミラーゼがマルトテトラオースを分解してマルトースを生じ、マルトースがパンに蓄積する。一方、ブランチングエンザイムはパンの凝集性を改善し、口腔内でパンをほぐれやすくさせる。その結果、パンに蓄積したマルトースが唾液に溶出しやすくなり、舌上の味覚受容体によるマルトースの認識が促進された可能性がある。
<2>湯種法によるパンの製造および評価2
原料配合量を表3に記載の量とした以外は、実施例1と同じ工程で湯種法により1.5斤角食パンを製造した(実施例2)。実施例2は、湯種における湯の配合量、および本捏材料における水の配合量が実施例1と相違する。
Figure 2020018218
実施例2の1.5斤角食パンの甘味を、比較例1〜2の1.5斤角食パンとともに官能評価した。その結果、実施例2のパンは比較例1〜2のパンよりも甘いと評価された。この結果は、エキソマルトテトラオヒドロラーゼとブランチングエンザイムを組み合わせると、加水量の変化にかかわらず甘味を増強できることを示す。

Claims (7)

  1. エキソマルトテトラオヒドロラーゼ、およびブランチングエンザイムを含む、パンの風味改善剤。
  2. ブランチングエンザイムが、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来である、請求項1に記載のパンの風味改善剤。
  3. エキソマルトテトラオヒドロラーゼが、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)由来である、請求項1または2に記載のパンの風味改善剤。
  4. 風味改善が、甘味の増強である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパンの風味改善剤。
  5. パン材料に、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパンの風味改善剤を添加する工程を含む、パンの製造方法。
  6. 請求項5に記載の製造方法により製造されたパン。
  7. パン材料に、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパンの風味改善剤を添加する工程を含む、パンの風味改善方法。

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