JP2023105758A - ベーカリー用油脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】ソフトでしとりがあり、歯切れと口溶けが良好であり、且つ、保形性が良好であるベーカリー製品を、生地物性に影響なく安定して製造可能であるベーカリー用油脂組成物を提供すること。【解決手段】糖転移酵素を含有することを特徴とするベーカリー用油脂組成物。上記糖転移酵素が4-α-グルカノトランスフェラーゼであることが好ましい。また重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維を含有することも好ましい。糖分解酵素を含有することも好ましい。【選択図】なし
Description
本発明は、ベーカリー用油脂組成物に関する。
一般的に焼成後のベーカリー製品は、貯蔵・保管中に、老化現象と呼ばれる経時的な劣化に伴って、その食感が変化し、パサパサとした食感となったり、口溶けが悪化したりすることが知られており、この現象を抑制するための手法との一として、ベーカリー生地中に各種酵素を含有させ、分散させることが従来検討されている。
例えば、耐酸性を有するα-アミラーゼと耐熱性を有するα-アミラーゼを併せて含有させたベーカリー生地を調製する方法(特許文献1)やマルトテトラオース生成酵素を含有させたベーカリー生地を調製する方法(特許文献2)、乳化剤とアミラーゼ類、特定のトリグリセリド組成を有する可塑性油脂組成物を含有するベーカリー生地(特許文献3)、トランスグルコシダーゼを含有する生地を調製する方法(特許文献4)など、ベーカリー生地中に酵素を直接含有させる方法が開示されている。
しかし、これら特許文献1~4のような、ベーカリー生地に酵素を直接含有させる方法では、通常ベーカリー生地に対する酵素の使用量は僅少量であるために、ベーカリー生地中で酵素が偏在しやすい上、使用した酵素の影響でベーカリー生地の調製時に生地が扱いにくくなることが知られている。
この為、近年では、ベーカリー生地に対する、酵素の働きや作用するタイミングを遅らせると共に、ベーカリー生地中に均一に分散させる方法が検討されており、至適温度が異なる2種のアミラーゼを併用したベーカリー用油脂組成物(特許文献5)や、異なる2種のアミラーゼとアルギン酸エステルを含有する油脂組成物(特許文献6)や、4糖生成アミラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物(特許文献7)等の、酵素を含有した油脂組成物を、ベーカリー生地調製時に用いる方法が開示されている。
ベーカリー製品、特にパン製品においてケービング・体積維持等の保形性、ソフトでしとりがあり、歯切れと口溶けが良好であることが求められる。しかし、これらを両立させることは、従来の技術では困難であった。
したがって、本発明の目的は、ベーカリー製品、特にパン製品において高い製品改良効果を安定して付与することのできる、ベーカリー用油脂組成物を提供することにある。
したがって、本発明の目的は、ベーカリー製品、特にパン製品において高い製品改良効果を安定して付与することのできる、ベーカリー用油脂組成物を提供することにある。
また本発明の目的は、ソフトでしとりがあり、歯切れと口溶けが良好であり、且つ、保形性が良好であるベーカリー製品を製造可能であるベーカリー用油脂組成物を提供することにある。
本発明者等による鋭意検討の結果、糖転移酵素を含有するベーカリー用油脂組成物をベーカリー生地の調製時に用いることで、上記問題を解決可能であることを見だした。
本発明は上記知見に基づくものである。すなわち、本発明は、糖転移酵素を含有することを特徴とするベーカリー用油脂組成物を提供するものである。
本発明のベーカリー用油脂組成物を使用することにより、ベーカリー製品、特にパン製品において高い製品改良効果を安定して付与することができる。
また、本発明のベーカリー用油脂組成物を使用することにより、ソフトでしとりがあり、歯切れと口溶けが良好であって、且つ、保形性が良好であるため、ケービングが抑制されるほか体積が維持され、外観・形状が良好である。また保形性が良好であるため、フィリング材の重量によるつぶれがないベーカリー製品を製造可能である。また、冷凍後の生地だれが効果的に抑制される。
また、本発明のベーカリー用油脂組成物を使用することにより、ソフトでしとりがあり、歯切れと口溶けが良好であって、且つ、保形性が良好であるため、ケービングが抑制されるほか体積が維持され、外観・形状が良好である。また保形性が良好であるため、フィリング材の重量によるつぶれがないベーカリー製品を製造可能である。また、冷凍後の生地だれが効果的に抑制される。
以下、本発明のベーカリー用油脂組成物について詳述する。
まず、本発明で使用する糖転移酵素について述べる。
本発明者は、特許文献4のように糖転移酵素を直接生地に添加する方法では、得られるベーカリー製品の食感が過度にもっちりしたものとなり、ソフトな食感や、良好な口溶けが得られなかったりする場合があることを知見した。更に検討した結果、糖転移酵素を油脂組成物に含有させてベーカリー生地に添加することで、生地の作業性のみならず、外観・形状が良好であり歯切れやしとり感を得ながら、ソフト性や口溶けを改善できることを知見した。
まず、本発明で使用する糖転移酵素について述べる。
本発明者は、特許文献4のように糖転移酵素を直接生地に添加する方法では、得られるベーカリー製品の食感が過度にもっちりしたものとなり、ソフトな食感や、良好な口溶けが得られなかったりする場合があることを知見した。更に検討した結果、糖転移酵素を油脂組成物に含有させてベーカリー生地に添加することで、生地の作業性のみならず、外観・形状が良好であり歯切れやしとり感を得ながら、ソフト性や口溶けを改善できることを知見した。
糖転移酵素とは、糖鎖におけるα-1,4結合をα-1,6結合に変換する、糖転移活性を有する酵素であり、具体的には、1,4-α-グルカンに分岐鎖を生じさせる酵素である1,4-α-グルカン分枝酵素(EC2.4.1.18)、1,4-α-グルカンのα-D-グルコシル残基を、グルコース又は1,4-α-グルカンの1位の水酸基に転移させる化学反応を触媒する1,4-α-グルカン 6-α-グルコシルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.24)、及び、1,4-α-グルカンの一部分を、グルコース又は1,4-α-グルカン等の炭化水素の別の部分に転移させる化学反応を触媒する4-α-グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.25)が挙げられる。
なお、これらの酵素には別名が多く、たとえば、1,4-α-グルカン分枝酵素は、澱粉枝作り酵素、ブランチングエンザイムと言われることもあり、1,4-α-グルカン 6-α-グルコシルトランスフェラーゼは、6-α-D-グルコシルトランスフェラーゼ、T-エンザイムと言われることもあり、4-α-グルカノトランスフェラーゼは、4-α-D-グリコシルトランスフェラーゼ、D-エンザイム、デキストリントランスグルコシダーゼ、アミロマルターゼ、マルトデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デキストリングリコシルトランスフェラーゼとよばれることもある。
本発明では、これらの糖転移酵素のうちの1種又は2種以上を使用することができる。
なお、本発明で用いられる糖転移酵素製剤の由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることができる。
糖転移酵素製剤としては、例えばデナチームBBR LIGHT(登録商標)(ナガセケムテックス社製)、SenseaForm(登録商標)(ノボザイムズジャパン社製)、グライコトランスフェラーゼ「アマノ」(登録商標)(天野エンザイム株式会社社製)等が挙げられる。
本発明では、糖転移酵素のなかでも、至適温度が20~65℃の酵素であることが好ましく、25~60℃の酵素であることがより好ましい。これは、生地の段階からこの酵素が効くことによる生地のべとつきを防止することができることに加え、ベーカリー製品がパンの場合に焼成中後期にかけて酵素が過剰に作用するのを防止することにより、ソフトでしとりがありながら、ねちゃつきがなく歯切れのよい食感が得られやすいためである。
本発明では、この糖転移酵素のなかでも、至適pHが6.0~9.0の酵素であることが好ましく、7.0~8.0の酵素であることがより好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物中の糖転移酵素の含有量は、糖転移酵素の種類によって異なるが、好ましくは0.1~60000単位/油脂組成物100g、より好ましくは10~20000単位/油脂組成物100gの範囲から選択することができる。
具体的には、1,4-α-グルカン分枝酵素(EC2.4.1.18)を使用する場合は、好ましくは100~60000単位/油脂組成物100g、より好ましくは100~20000単位/油脂組成物100g、最も好ましくは200~3000単位/油脂組成物100gとなる量である。
また、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.25)を使用する場合は、好ましくは1~2000単位/油脂組成物100g、より好ましくは15~600単位/油脂組成物100g、最も好ましくは15~100単位/油脂組成物100gとなる量である。
上記糖転移酵素の含有量とすることでベーカリー生地への適用範囲において本発明の効果が明瞭となり、且つ、保存時の安定性が良好であり、且つ、生地のべとつき、得られるベーカリー製品のねちゃつきを防止し、保形性を良好に保ちやすい。
なお、糖転移酵素の使用量は、ベーカリー生地で使用する澱粉類100質量部に対し、使用する酵素の活性にもよるが、好ましくは0.0001質量部~0.1質量部、より好ましくは0.0005質量部~0.02質量部程度である。
なお、上記糖転移酵素の酵素活性は、例えば至適条件(温度及びpH)下において、基質に酵素を作用させ、1分間に1μmolの糖や糖鎖を転移させる酵素量を1単位(ユニット)とすることができる。具体的な測定方法は転移酵素の種類によって異なり、例えば以下のような方法で測定することができる。
なお、一般に酵素の1単位は「u」又は「U」と記載されている。以下では酵素1単位を便宜上「1u」と記載する場合がある。
なお、一般に酵素の1単位は「u」又は「U」と記載されている。以下では酵素1単位を便宜上「1u」と記載する場合がある。
1,4-α-グルカン分枝酵素(EC2.4.1.18)の場合は例えば、アミロース水溶液(0.1%アミロース(ポテト由来、シグマアルドリッチ社))に酵素液を加え、50℃、10分間反応させた後にヨウ素呈色させた時、1分間あたりの吸光度(660nm)の減少率が1%である酵素量を1単位(u)とすることにより算出することができる。
4-α-グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.25)の場合、例えば3糖単位で転移させる転移酵素の場合、1%マルトテトラオース(林原生物化学研究所製)を含む10mmol/L MES緩衝液(pH6.5)2mLに酵素溶液0.5mLを添加して、40℃で60分間反応させた際に生成したグルコースをグルコース CII-テスト ワコー(和光純薬製)で定量し、1分間に反応液2.5mL中に1μmolのグルコースを生成する酵素量を1単位とすることにより算出することができる。
本発明では、上記糖転移酵素の中でも、より高い効果を有する点で、1,4-α-グルカン分枝酵素(EC2.4.1.18)及び/又は4-α-グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.25)を使用することが好ましい。
なお、本発明では、生地のべたつきや保形性を改善させることができるか、少なくとも影響なく、且つよりソフトでしとりが良好なベーカリー製品が得られることから、糖転移酵素として4-α-グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.25)を単独で使用するか、1,4-α-グルカン分枝酵素(EC2.4.1.18)と4-α-グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.25)を併用することが好ましい。
ここで、本発明では、上記1,4-α-グルカン分枝酵素(EC2.4.1.18)を使用する場合は、ソフトでしとりが良好でありながら、ねちゃつきがなく保形性が良好であり、さらには良好な食感を時間を経ても保持可能なベーカリー製品を得ることができる点で、至適温度が上記の温度、すなわち、至適温度が20℃~70℃の酵素であることが好ましく、至適温度が25℃~50℃の酵素であることがより好ましい。
このような糖転移酵素製剤としては、例えば、デナチームBBRLight等が挙げられる。
このような糖転移酵素製剤としては、例えば、デナチームBBRLight等が挙げられる。
また、本発明では、上記4-α-グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.25)を使用する場合はソフトでしとりが良好でありながら、ねちゃつきがなく保形性が良好であり、さらには良好な食感を時間を経ても保持可能なベーカリー製品を得ることができる点で、至適温度が上記の温度、すなわち、至適温度が40~65℃の酵素であることが好ましく、至適温度が40~60℃の酵素であることがより好ましい。
本発明では、この4-α-グルカノトランスフェラーゼのなかでも、特に上記の高い効果が得られる点、下記の重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維との相乗効果が高い点で、3糖単位(「マルトトリオース単位」ともいう。)で糖鎖末端を転移させる酵素を使用することが特に好ましい。
このような糖転移酵素製剤としては、例えばグライコトランスフェラーゼ「アマノ」(登録商標)(天野エンザイム株式会社製)等が挙げられる。
このような糖転移酵素製剤としては、例えばグライコトランスフェラーゼ「アマノ」(登録商標)(天野エンザイム株式会社製)等が挙げられる。
糖転移酵素、特に、4-α-グルカノトランスフェラーゼ、とりわけ、3糖単位で糖鎖末端を転移させる酵素が、なぜベーカリー製品、特にパンにおいて本発明の高い効果を示すのかは定かではないが、該酵素の生産物である分岐を有する様々な分子量のデキストリンがバランスよく生地物性の改良と製パン改良効果を生み出すのではないかと想像される。そして該酵素を油脂組成物中に配合してパン生地に使用することで、グルテン骨格の形成に影響することなく作用するため、焼成後にケービングをおこすことなくソフトな食感と、歯切れ・口溶けを有するベーカリー製品とすることができるものと想像される。
本発明では更に、重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維を、ベーカリー用油脂組成物中に含有させることにより、上記糖転移酵素があまり働かない段階である生地段階での生地改良効果があり、特に生地のべたつきを抑えながら、ソフトな食感と、歯切れ・口溶けを、特に、時間を経てもなお、一層好ましく有するベーカリー製品を得ることができる。
ここで、重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維について述べる。
本発明に好ましく用いられる水溶性食物繊維としては、デキストランやデキストリン(これらのうち高分岐のものや、環状のものも含む)等のグルコースを構成糖とするものを挙げることができ、このうち重量平均分子量が20万以下のものが好ましく選択される。
本発明に好ましく用いられる水溶性食物繊維としては、デキストランやデキストリン(これらのうち高分岐のものや、環状のものも含む)等のグルコースを構成糖とするものを挙げることができ、このうち重量平均分子量が20万以下のものが好ましく選択される。
選択される水溶性食物繊維の重量平均分子量は、好ましくは20万以下、より好ましくは10万以下、さらに好ましくは5万以下、最も好ましくは1万以下である。水溶性食物繊維の重量平均分子量の下限は生地物性を悪化させることなく、ソフトでしっとりとした食感と歯切れとが両立されたベーカリー製品を得る観点から2500であることが好ましい。
ここで選択される水溶性食物繊維の重量平均分子量が20万以下であることで、得られるベーカリー製品が、特にパンの場合に、ソフトでありつつもっちりした食感にならず、良好な歯切れとなりやすい。また、パン生地の物性に影響を与えることを防止できる。
上記の重量平均分子量の測定方法としては、サイズ排除クロマトグラフィ法などにより行われる。
上記の重量平均分子量の測定方法としては、サイズ排除クロマトグラフィ法などにより行われる。
重量平均分子量が20万以下を満たすものであれば、任意の水溶性食物繊維を用いることができるが、酵素分解、特にアミラーゼによる分解を受けにくくする観点から、該水溶性食物繊維を構成する構成糖残基のうち、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の比率が30%以下のものを選択することが好ましく、25%以下のものを選択することがより好ましい。ここで、「構成糖残基のうち、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基」は、他の構成糖と結合する水酸基を1位と4位において2つ有するものであり、1位と4位以外の別の位置に他の構成糖と結合する水酸基を更に有するものは含まない。なお、該水溶性食物繊維を構成する構成糖残基のうち、1位と4位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の比率は、例えば10%以上であると口溶けや歯切れが向上するという利点がある。
また、同様に酵素分解を受けにくくする観点から、該水溶性食物繊維を構成する構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の比率が30%以上のものを選択することが好ましく、40%以上のものを選択することがより好ましい。ここで、「構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基」は、他の構成糖と結合する水酸基を1位と6位において2つ有するものであり、1位と6位以外の別の位置に他の構成糖と結合する水酸基を更に有するものは含まない。なお、該水溶性食物繊維を構成する構成糖残基のうち、1位と6位の水酸基で他の構成糖と結合しているグルコース残基の比率は80%以下であると、口溶けや歯切れが向上するという利点がある。
これらに加えて、一層ソフト、或いは口溶けよく歯切れがよい食感を得るために、より多分岐の構造を有する水溶性食物繊維を選択することが好ましく、とりわけ、該水溶性食物繊維を構成する構成糖残基のうち、3つのα結合を有するグルコース残基の比率の和が8%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
「3つのα結合を有するグルコース残基」とは、例えば、グルコース残基の1位と3位と6位の水酸基にα結合を有するものや、グルコース残基の1位と4位と6位の水酸基にα結合を有するものなど、グルコース残基中の3か所で他の構成糖とのα結合を形成しているものを指す。従って、グルコース残基中の4か所以上で他の構成糖とのα結合を形成しているものは「3つのα結合を有するグルコース残基」に含まない。
この各結合様式を有するグルコース残基の比率は、グルコース残基数の比率であり、例えば、糖鎖構造の解析を行う手法として一般的に知られている、メチル化分析により測定することができる。
これらの条件を満たす、好ましい水溶性食物繊維としては、市販のいずれの水溶性食物繊維や製剤を使用することも可能であり、例えば、重量平均分子量が20万以下であり、構成糖残基組成において、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が30%以下、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が30%以上である水溶性食物繊維としてはデキストラン10(名糖産業株式会社)等を挙げることができ、さらに前記条件を満たし、且つ構成糖残基組成において、3つのα結合を有するグルコース残基の比率の和が8%以上である水溶性食物繊維としては、ファイバリクサ(株式会社林原)などを挙げることができる。
本発明においては、これらの水溶性食物繊維を1種又は2種以上を組合せて使用してもよく、用いる場合は油相に分散させても水相に分散させてもよい。
なお、上記の重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維の含有量は、該水溶性食物繊維の重量平均分子量にも依るが、生地作業性と食感の両立を図る観点から、本発明のベーカリー用油脂組成物中、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%である。
本発明のベーカリー用油脂組成物では、上記糖転移酵素に加え、1種又は2種以上の糖分解酵素を含有することが好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物で使用することのできる糖分解酵素としては一般的にパン類の生地やベーカリー用油脂組成物に使用可能なものを特に制限なく使用することができる。糖分解酵素の具体例としては、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、ペントサナーゼ、プルラナーゼ等の細胞壁分解酵素、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、マルトース生成α-アミラーゼ、3糖生成アミラーゼ、4糖生成アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、アミログルコシダーゼ等の澱粉分解酵素等を挙げることができ、また、市販の酵素製剤を用いることもできる。
本発明のベーカリー用油脂組成物では、糖転移酵素を油脂組成物中に単独で加えた場合よりもベーカリー生地が扱いやすく作業性が向上する他、ベーカリー製品の経時的な老化現象を一層抑制できる上、ソフトさと、歯切れ・口溶けとを両立した良好な食感をより維持することが可能となるため、上記糖分解酵素としてマルトオリゴ糖生成アミラーゼを使用することが好ましい。
マルトオリゴ糖生成アミラーゼは、デンプン等のα-グルカンを基質として、ある特定の重合度でグルコースがα-1,4結合したマルトオリゴ糖を生成するアミラーゼをいう。マルトオリゴ糖とは、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース等をいう。
上記マルトオリゴ糖生成アミラーゼの例は、マルトースを生成するマルトース生成型アミラーゼ、マルトトリオースを生成する3糖生成アミラーゼ、マルトテトラオースを生成する4糖生成アミラーゼなどが挙げられるが、上記効果が高い点で、本発明のベーカリー用油脂組成物では、マルトース生成型アミラーゼ、及び/又は、4糖生成アミラーゼを使用することが好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物中のマルトオリゴ糖生成アミラーゼの含有量は、好ましくは下記のマルトース生成型アミラーゼや4糖生成アミラーゼも含め好ましくは50~10000単位/油脂組成物100g、より好ましくは65~4000単位/油脂組成物100g、更に好ましくは300~2500単位/油脂組成物100gとなる量である。
マルトオリゴ糖生成アミラーゼの使用量は、ベーカリー生地で使用する澱粉類100質量部に対し、使用する酵素の活性にもよるが、0.0001質量部~0.1質量部、より好ましくは0.001質量部~0.025質量部程度である。
なお、上記マルトオリゴ糖生成アミラーゼの酵素活性は、例えば至適条件(至適温度、至適pH)下において、可溶性澱粉を基質に酵素を作用させ、1分間に1μmolのブドウ糖に相当する還元力を生成する酵素量を指標とすることができる。
本発明において、糖転移酵素とマルトオリゴ糖生成アミラーゼを併用する場合は、ベーカリー用油脂組成物中、糖転移酵素1単位に対して、マルトオリゴ糖生成アミラーゼが好ましくは0.003~1000単位、より好ましくは0.08~160単位、最も好ましくは0.24~60単位の範囲から選択することができる。
具体的には、1,4-α-グルカン分枝酵素(EC2.4.1.18)を使用する場合は、当該糖転移酵素1単位に対して、マルトオリゴ糖生成アミラーゼが好ましくは0.003~650単位、より好ましくは0.08~10単位、最も好ましくは0.24~5単位の範囲から選択することができる。
また、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.25)を使用する場合は、当該糖転移酵素1単位に対して、マルトオリゴ糖生成アミラーゼが好ましくは0.1~1000単位、より好ましくは2.5~160単位、最も好ましくは7.5~60単位の範囲から選択することができる。
ここで、上記マルトース生成型アミラーゼについて述べる。
本発明で用いることのできるマルトース生成型アミラーゼとしては、α-1,4グルコシド結合を切断してマルトースを生成する酵素であれば特に限定されるものではなく、市販のマルトース生成α-アミラーゼやβ-アミラーゼ等から選ばれた1種又は2種以上を選択することができるが、好ましくはマルトース生成α-アミラーゼを使用する。
本発明で用いることのできるマルトース生成型アミラーゼとしては、α-1,4グルコシド結合を切断してマルトースを生成する酵素であれば特に限定されるものではなく、市販のマルトース生成α-アミラーゼやβ-アミラーゼ等から選ばれた1種又は2種以上を選択することができるが、好ましくはマルトース生成α-アミラーゼを使用する。
なお、本発明で用いられるマルトース生成型アミラーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることができる。
マルトース生成α-アミラーゼ製剤としては、例えばノバミル10000BG、ノバミル3D BG、オプティケーキフレッシュ50 BG(Novozymes A/S、デンマーク)、コクラーゼ(登録商標)(三菱化学フーズ社製)、グリンドアミル(登録商標)MAX-LIFE100(ダニスコジャパン社製)等が挙げられる。
β-アミラーゼ製剤としては、例えばオプチマルトBBA(ジェネンコア協和社製)、β-アミラーゼ#1500、β-アミラーゼL、β-アミラーゼ#1500S(以上、ナガセケムテックス社製)、ハイマルトシン(登録商標)G、ハイマルトシン(登録商標)GL(以上、エイチビィアイ社製)、ユニアーゼ(登録商標)L(ヤクルト薬品工業社製)、GODO-GBA(合同清酒社製)等が挙げられる。
本発明においては、上記マルトース生成型アミラーゼの中でも、酵素の至適温度が60℃以上である高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼが好ましい。高温耐熱性マルトース生成型アミラーゼの至適温度は、好ましくは40~95℃、より好ましくは50~95℃、最も好ましくは60~90℃である。
本発明のベーカリー用油脂組成物中のマルトース生成型アミラーゼの含有量は、好ましくは100~10000単位/油脂組成物100g、より好ましくは200~4000単位/油脂組成物100g、更に好ましくは701~2500単位/油脂組成物100gとなる量である。上記のマルトース生成型アミラーゼの含有量は、マルトオリゴ糖生成アミラーゼとしてマルトース生成型アミラーゼのみを使用する場合に特に好ましい。
上記マルトース生成型アミラーゼの含有量が油脂組成物100gあたり100単位以上であると、生成されるマルトース量が一定量以上であることによって、得られるベーカリー製品、特にパンの場合、しっとりとソフトな食感になりやすく、また10000単位以下であると、ベーカリー生地、特にパン類の生地においてべとつきにくく、又、得られるベーカリー製品の食感が、くちゃついた食感となってしまうことをより容易に防止できる。なお、本明細書中、しっとりとした食感をしとり感ともいう。
マルトース生成型アミラーゼの使用量は、ベーカリー生地で使用する澱粉類100質量部に対し、使用する酵素の活性にもよるが、0.0001質量部~0.1質量部、より好ましくは0.001質量部~0.02質量部程度である。上記のマルトース生成型アミラーゼの含有量は、マルトオリゴ糖生成アミラーゼとしてマルトース生成型アミラーゼのみを使用する場合に特に好ましい。
なお、上記マルトース生成型アミラーゼの酵素活性は、例えば至適条件(至適温度、至適pH)下において、マルトトリオースを基質に酵素を作用させ、1分間に1μmolのマルトースを生成する酵素量を指標とすることができる。本発明において、マルトース生成型アミラーゼの酵素活性は、該酵素量を1単位とするか、後述するノバミル10000BGを基準とした定義を採用でき、いずれであってもよい。マルトースの測定は、「還元糖の定量法第2版」(福井作蔵著、学会出版センター)を参照して行うことができる。
本発明においてマルトース生成型アミラーゼの酵素活性をいうときは、特に記載した場合を除き、市販の酵素剤ノバミル10000BG(Novozymes A/S、デンマーク)1gを10000単位と定義する。
以下、4糖生成アミラーゼについて述べる。
本発明で用いることのできる4糖生成アミラーゼとしては、澱粉を含めた多糖類や糖類中のα-1,4グルコシド結合をマルトテトラオース単位で切断する酵素であれば、特に限定されるものではなく、該酵素が含有される酵素製剤を使用することもできる。
本発明で用いることのできる4糖生成アミラーゼとしては、澱粉を含めた多糖類や糖類中のα-1,4グルコシド結合をマルトテトラオース単位で切断する酵素であれば、特に限定されるものではなく、該酵素が含有される酵素製剤を使用することもできる。
なお、本発明で用いられる4糖生成アミラーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることができる。
市販の4糖生成アミラーゼ酵素製剤としては、例えばPOWERFresh 3050、POWERFresh 3150、POWERFresh 4150 (Danisco社)、デナベイクExtra(ナガセケムテックス社)などが挙げられる。
また、本発明で用いられる4糖生成アミラーゼの至適温度は、加熱処理に伴って生地中の澱粉がα化していく過程で作用することが好ましいため、30~90℃であることが好ましく、40~80℃であることがより好ましく、最も好ましくは45~75℃である。
本発明のベーカリー用油脂組成物中の4糖生成アミラーゼの含有量は、好ましくは50~3900単位/油脂組成物100g、より好ましくは320~2600単位/油脂組成物100g、更に好ましくは800~2000単位/油脂組成物100gとなる量である。上記4糖生成アミラーゼの含量を油脂組成物100gあたり50単位以上とすることで、老化現象の抑制効果を十分に得ることが容易となり、又、3900単位以下とすることで、最終的に得られるベーカリー製品、とりわけパン類において、過度にもっちりとしたり、べとついた食感となることを防止できる。上記の4糖生成アミラーゼの含有量は、マルトオリゴ糖生成アミラーゼとして4糖生成アミラーゼのみを使用する場合に特に好ましい。
なお、4糖生成アミラーゼの使用量は、ベーカリー生地で使用する澱粉類100質量部に対し、使用する酵素の活性にもよるが、0.0001質量部~0.1質量部、より好ましくは0.001質量部~0.025質量部程度である。上記の4糖生成アミラーゼの含有量は、マルトオリゴ糖生成アミラーゼとして4糖生成アミラーゼのみを使用する場合に特に好ましい。
なお、4糖生成アミラーゼの酵素活性は、例えば至適条件(至適温度、至適pH)下において、可溶性澱粉を基質に酵素を作用させ、1分間に1μmolのブドウ糖に相当する還元力を生成する酵素量を指標とすることができる。本発明において4糖生成アミラーゼの酵素活性は、該酵素量を1単位とする。
本発明で4糖生成アミラーゼに関し、酵素活性をいうときは、特に記載した場合を除き、上述の定義による。この定義によると、市販の酵素剤デナベイク(登録商標)Extra1gは6500単位となる。
本発明で4糖生成アミラーゼに関し、酵素活性をいうときは、特に記載した場合を除き、上述の定義による。この定義によると、市販の酵素剤デナベイク(登録商標)Extra1gは6500単位となる。
本発明において、マルトース生成型アミラーゼと4糖生成アミラーゼを併用する場合は、ベーカリー用油脂組成物中、マルトース生成型アミラーゼ1単位に対して、4糖生成アミラーゼが0.01~100単位の範囲で含有されることが好ましく、0.05~50単位の範囲で含有されることがより好ましく、0.1~10単位の範囲で含有されることが最も好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物では、上記糖分解酵素としてα-アミラーゼを使用することが好ましい。α-アミラーゼを使用することにより、糖転移酵素が作用するグルカン末端をより増加させることができ、より効率的に糖転移酵素の活性を高めることができる。また、よりソフト性の高いベーカリー製品を得ることができ、パンの場合には体積増の効果がある。さらには、澱粉の老化が発生しやすい水分含有量のベーカリー製品、例えば食パンであってもソフトで歯切れと口溶けのよい食感を長期にわたって保持することが可能となる。
ここで、α-アミラーゼについて述べる。
α-アミラーゼとは澱粉を基質として、そのα-1,4グルコシド結合をランダムに切断する酵素である。本発明で用いられるα-アミラーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることができる。
α-アミラーゼとは澱粉を基質として、そのα-1,4グルコシド結合をランダムに切断する酵素である。本発明で用いられるα-アミラーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることができる。
α-アミラーゼとしては市販のα-アミラーゼ製剤を使用することができ、例えばα-アミラーゼ製剤としては、クライスターゼL1、ビオザイム(登録商標)A、(以上アマノエンザイム社製)、ビオテックス(登録商標)L#3000、ビオテックス(登録商標)TS、スピターゼ(登録商標)HS、スピターゼ(登録商標)CP-40FG、スピターゼ(登録商標)CP3、スピターゼ(登録商標)L、スピターゼ(登録商標)XP-404、ネオスピターゼPK-2、T-50(以上、ナガセケムテックス社製)、グリンドアミル(登録商標)A(ダニスコジャパン社製)、BAN、ファンガミル(登録商標)(以上、ノボザイムズジャパン社製)、フクタミラーゼ(登録商標)30、フクタミラーゼ(登録商標)50、フクタミラーゼ(登録商標)10L、リクィファーゼL45(以上、エイチビィアイ社製)、VERON Soft+、VERONVERON M4、Sternzyme A6003(以上、樋口商会社製)、ユニアーゼ(登録商標)BM-8(ヤクルト薬品工業社製)、ソフターゲン(登録商標)・3H(タイショウテクノス社製)、ベイクザイムAN301登録商標)、MatL Classic(登録商標)、Mycolase(登録商標)、ベイクザイム(登録商標)P500(DSM社製)、スミチーム AS(登録商標)、スミチーム L(登録商標)(以上、新日本化学工業社製)等が挙げられる。
また、本発明で用いられるα-アミラーゼの至適温度は、ソフトなパンを得られるという理由から、20~90℃であることが好ましい。また、α-アミラーゼの至適温度は、糖転移酵素が作用するグルカン末端をより増加させることができ、より効率的に転移酵素の活性を高めることができるため、及び、歯切れ及び口溶けの良いパンを得る目的においては、好ましくは30~60℃、より好ましくは40~60℃のα-アミラーゼを使用することが好ましい。
なお、本発明のベーカリー用油脂組成物が糖分解酵素として上述のマルトオリゴ糖生成アミラーゼを含有しない場合であって、ベーカリー製品がパン、特に食パンにおいて、よりソフトな食感と、より高い老化防止効果を求める場合には、好ましくは65~85℃、より好ましくは70~85℃の至適温度を有するα-アミラーゼを使用することが好ましい。
すなわち、この場合は、至適温度が好ましくは30~60℃、より好ましくは40~60℃のα-アミラーゼと、至適温度が65~85℃、より好ましくは70~85℃のα-アミラーゼを併用することが好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物中のα-アミラーゼの含有量は、好ましくは10~12500単位/油脂組成物100g、より好ましくは25~1200単位/油脂組成物100g、さらに好ましくは30~500単位/油脂組成物100gとなる量である。上記α-アミラーゼの含有量が10単位よりも少ないと、α-アミラーゼの添加効果がわかりにくく、また、12500単位以下とすることで、高いソフト性に起因したケービングの発生や、ベーカリー生地、特にパン生地のべたつき又はねちゃつきをより防止しやすくなる。
なお、α-アミラーゼの使用量は、ベーカリー生地で使用する澱粉類100質量部に対し、使用する酵素の活性にもよるが、0.0001質量部~0.1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.0005質量部~0.01質量部程度である。
上記α-アミラーゼの酵素活性は、標準の条件(37℃及びpH4.7)下で、1時間当たり5260mgの澱粉を分解する酵素の量(菌類α-アミラーゼ単位・FAUともいう)を指標とすることができる。本発明においてα-アミラーゼの酵素活性は、該酵素量を1単位とする。
本発明のベーカリー用油脂組成物がα-アミラーゼを含有する場合は、ベーカリー用油脂組成物中、糖転移酵素1単位に対して、α-アミラーゼが好ましくは0.00035~100単位、より好ましくは0.01~35単位、最も好ましくは0.02~6単位の範囲から選択することができる。
具体的には、1,4-α-グルカン分枝酵素(EC2.4.1.18)を使用する場合は、当該糖転移酵素1単位に対して、α-アミラーゼが好ましくは0.00035~6単位、より好ましくは0.01~2単位、最も好ましくは0.02~0.4単位の範囲から選択することができる。
また、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.25)を使用する場合は、当該糖転移酵素1単位に対して、α-アミラーゼが好ましくは0.001~100単位、より好ましくは0.3~35単位、最も好ましくは0.5~5.2単位の範囲から選択することができる。
本発明のベーカリー用油脂組成物では、上記糖分解酵素としてヘミセルラーゼを使用することが好ましい。ヘミセルラーゼを使用することによって、ベーカリー生地、特にパン生地において、グルテンの形成を阻害するヘミセルラーゼを分解し、グルテン形成に関与する水の割合を増加させることが可能となる。それに起因して、内相骨格をよりしっかりとしたものとすることができ、ケービングが特に効果的に抑制され、さらにフィリング材の重量によるつぶれがないベーカリー製品を得ることが可能となる。よって、得られるベーカリー製品の歯切れやボリューム感が向上する上、ベーカリー生地を、生地物性を悪化させることなくより安定して得ることができる。
ここで、ヘミセルラーゼについて述べる。
ヘミセルラーゼとはヘミセルロースを基質として加水分解する酵素の総称である。へミセルロースとは、陸上植物細胞の細胞壁を構成する多糖類のうち、セルロースとペクチン以外のものであり、水溶性のものと不溶性のものがあるが、具体的には例えばキシラン、アラビノキシラン、アラビナン、マンナン、ガラクタン、キシログルカン、グルコマンナン等が挙げられる。
ヘミセルラーゼとはヘミセルロースを基質として加水分解する酵素の総称である。へミセルロースとは、陸上植物細胞の細胞壁を構成する多糖類のうち、セルロースとペクチン以外のものであり、水溶性のものと不溶性のものがあるが、具体的には例えばキシラン、アラビノキシラン、アラビナン、マンナン、ガラクタン、キシログルカン、グルコマンナン等が挙げられる。
そのため、ヘミセルラーゼは具体的には、キシランを分解するキシラナーゼ、アラビノキシランを分解するアラビノキシラナーゼ等に分類することができるが、実態としてはこれらの活性を混合して有するものであることが多く、実際に市販されている酵素製品もこれらの活性を混合して有するものである場合が多い。
本発明では、上記ヘミセルラーゼの中でも、ベーカリー製品がパンの場合、べたつきが少ないパン生地が得られる点、及びくちゃつきがなく、歯切れのよいパンが得られる点で、アラビノキシランを主基質とし、且つ、不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)が10以上であるヘミセルラーゼを使用することが好ましい。
なお、本発明で用いられるヘミセルラーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることができる。
ヘミセルラーゼとしては市販のヘミセルラーゼ製剤を使用することができ、例えば 市販のヘミセルラーゼ製剤としては、ヘミセルラーゼ「アマノ」(天野製薬株式会社)、ベイクザイムBXP5001BG、ベイクザイムHS2000、ベイクザイムIConc(DMS株式会社)、エンチロンLQ(洛東化成工業社製)、ヘミセルラーゼM(以上、エイチビィアイ社製)、スミチーム(登録商標)X(新日本化学工業社製)、グリンドアミル(登録商標)H121(ダニスコジャパン社製)等が挙げられる。
また、本発明で用いられるヘミセルラーゼの至適温度は、20~90℃であることが好ましく、特にベーカリー生地がパン生地の場合、ミキシング中に、ヘミセルロースに作用させ、好ましいグルテン形成を図る目的から、25~50℃であることがより好ましく、最も好ましくは25~40℃である。
本発明のベーカリー用油脂組成物中のヘミセルラーゼの含有量は、好ましくは10~10000単位/油脂組成物100g、より好ましくは25~2000単位/油脂組成物100g、更に好ましくは25~1000単位/油脂組成物100gとなる量である。上記ヘミセルラーゼの含有量が油脂組成物100gあたり10単位以上であると、ヘミセルラーゼの添加効果が得やすい。一方、10000単位以下であると、ベーカリー生地がパン生地の場合、べたつきにくく、更にはくちゃついた食感のパンとなってしまうことを防止しやすい。
なお、ヘミセルラーゼの使用量は、ベーカリー生地で使用する澱粉類100質量部に対し、使用する酵素の活性にもよるが、好ましくは0.0001質量部~0.1質量部、より好ましくは0.0005質量部~0.01質量部程度である。
なお、ヘミセルラーゼの酵素活性は、対象となる酵素を、至適条件(至適温度、至適pH)下で基質に作用させ、単位時間あたりに所定のモル数の分解物を生成する酵素量として定義することができる。
本発明においてヘミセルラーゼの酵素活性をいうときは、特に記載した場合を除き、市販の酵素剤ベイクザイムBXP5001BG(DSM株式会社)を5000単位/gと定義する。
本発明においてヘミセルラーゼの酵素活性をいうときは、特に記載した場合を除き、市販の酵素剤ベイクザイムBXP5001BG(DSM株式会社)を5000単位/gと定義する。
本発明のベーカリー用油脂組成物がヘミセルラーゼを含有する場合には、ベーカリー用油脂組成物中、糖転移酵素1単位に対して、ヘミセルラーゼが好ましくは0.0015~1000単位、より好ましくは0.008~650単位、最も好ましくは0.006~80単位の範囲から選択することができる。
具体的には、1,4-α-グルカン分枝酵素(EC2.4.1.18)を使用する場合は、当該糖転移酵素1単位に対して、ヘミセルラーゼが好ましくは0.0015~60単位、より好ましくは0.008~40単位、最も好ましくは0.006~5単位の範囲から選択することができる。
また、4-α-グルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.25)を使用する場合は、当該糖転移酵素1単位に対して、ヘミセルラーゼが好ましくは0.05~1000単位、より好ましくは0.25~650単位、最も好ましくは0.2~80単位の範囲から選択することができる。
なお、本発明のベーカリー用油脂組成物は、上記の糖転移酵素、糖分解酵素の他にも、製菓製パン改良効果を有する酵素を含有させることが可能であり、例えばリパーゼ、プロテアーゼ等が挙げられる。
本発明のベーカリー用油脂組成物で使用する油脂としては、特に制限はなく、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、ハイエルシン菜種油、キャノーラ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、落花生油、ゴマ油、オリーブ油、カカオ脂、サル脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに完全水素添加、分別及びエステル交換から選択された一又は二以上の処理を施した加工油脂や、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)等が挙げられる。本発明では、これらの食用油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
なかでも、本発明では、ヨウ素価52~75のパーム分別軟部油を70質量%以上、特に90質量%以上、とりわけ100質量%含む油脂配合物をエステル交換したエステル交換油脂を、油相中に50~95質量%、特に81~95質量%含有させることが、しとりのある食感のパンが得られる点で好ましい。
上記油脂配合物における上記パーム分別軟部油以外の油脂は、適宜選択することができる。例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、本発明では、上記エステル交換油脂1質量部に対しパーム油、パームステアリン、パームオレインから選ばれる少なくとも一種を0.03~0.3質量部、特に0.03~0.1質量部含有させることが、体積が大きく且つソフトなパンが得られる点で好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物中の油脂の含有量は、好ましくは10~99質量%、より好ましくは50~95質量%、更に好ましくは60~90質量%である。
なお、本発明のベーカリー用油脂組成物に、油脂を含有する成分を使用した場合は、上記油脂含有量には、それらの成分に含まれる油分も含めるものとする。
なお、本発明のベーカリー用油脂組成物に、油脂を含有する成分を使用した場合は、上記油脂含有量には、それらの成分に含まれる油分も含めるものとする。
なお油脂組成物とは、油脂を含有する組成物の意である。本発明においては、糖転移酵素、糖分解酵素等の酵素類は、油脂組成物中に含有された状態でベーカリー生地に使用される。酵素類が油脂組成物として使用されることで、酵素類が生地に作用するタイミングを遅らせることができる。そのため、特に使用されるベーカリー生地の種類がパン生地である場合においては生地がべとついて作業性が低下することを抑制できる。また、酵素類が油脂組成物として使用されることで、ベーカリー生地に対する、酵素類の働きや作用するタイミングを遅らせると共に、ベーカリー生地中に均一に分散させることができるため、得られるベーカリー製品の食感が向上しうる。
本発明のベーカリー用油脂組成物は、上記糖転移酵素、及び油脂以外に、必要に応じて、糖分解酵素、その他酵素、上記水溶性食物繊維、並びに、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の原材料を含有させることができる。
本発明のベーカリー用油脂組成物に含有させることができるその他の原材料としては、例えば、水、乳化剤、増粘安定剤、デキストリン、澱粉類、上記以外の食物繊維、糖類や甘味料、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・脱脂濃縮乳・蛋白質濃縮ホエイ等の乳や乳製品、ステビア・アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロールや茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
乳化剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム等が挙げることができる。これらの乳化剤は単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
乳化剤を含有する場合、その含有量は本発明のベーカリー用油脂組成物中、風味を損ねない観点から15質量%以下、より好ましくは10質量%以下となるように含有させる。乳化剤を含有する場合、その含量の下限は限定されないが、例えば0.05質量%以上が挙げられる。
増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられる。これらの増粘安定剤は単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
なお、上記その他原料は、本発明の目的を損なわない範囲で任意に含有させ、使用することができるが、本発明のベーカリー用油脂組成物中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下となる範囲で含有させ、使用することが好ましい。
またベーカリー用油脂組成物が水を含有する場合、ベーカリー用油脂組成物中の水の含有量は、1~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。
なお、本発明のベーカリー用油脂組成物に、水分を含有する成分を使用した場合は、上記水分含有量には、それらの成分に含まれる水分も含めるものとする。
なお、本発明のベーカリー用油脂組成物における水分含有量は、例えば、常圧乾燥減量法により測定することができる。
ベーカリー用油脂組成物の形態としては、油脂を含有する食品、例えばマーガリン・ファットスプレッド・ショートニング・バター等の可塑性油脂組成物や、流動ショートニング、流動状マーガリン、液状油組成物、粉末油脂、純生クリーム、植物性クリーム、コンパウンドクリーム、濃縮牛乳状組成物、クリームチーズ、チョコペースト等を挙げることができる。本発明では本発明品の効果が得られ易いことから、可塑性油脂組成物であることが好ましい。
ベーカリー用油脂組成物が可塑性油脂組成物である場合、ベーカリー製品製造時の使用形態として、好ましくは練り込み油脂や折り込み油脂の形態が挙げられるが、練り込み油脂として、ベーカリー製品製造時に用いることが、ベーカリー生地中に酵素を均一に分散する観点から、特に好ましい。
ベーカリー用油脂組成物が乳化物である場合、その乳化形態は特に問われず、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれでも構わないが、油中水型乳化物の形態であることが好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物の好ましい形態の例として、ショートニング、及び油中水型乳化油脂組成物が挙げられるが、本発明のベーカリー用油脂組成物は、ショートニングの形態をとっても、油中水型乳化油脂組成物の形態をとっても、同様の効果が得られる。
本発明のベーカリー用油脂組成物の比重は特に限定されないが、好ましくは0.9未満、より好ましくは0.4~0.84、さら好ましくは0.5~0.8、最も好ましくは0.60~0.75である。このような0.9未満の低比重とすることにより、パン生地製造時に生地への分散性が特に優れ、且つ、良好な体積と歯切れ、口溶け、ソフト性を有するパンを得ることができる。
ベーカリー用油脂組成物の比重は、容積法により測定することができる。具体的には、一定容積の計量カップに油脂組成物を充填し、該カップ内の油脂組成物の質量を測定し、その質量を計量カップの容積で除して得られる数値をベーカリー用油脂組成物の比重とする。なお、ベーカリー用油脂組成物の比重は20℃において測定するものとする。
本発明のベーカリー用油脂組成物は、少なくとも糖転移酵素を含有し、これらがベーカリー生地に適度に作用する。その結果、得られるベーカリー製品を喫食する際にソフトな食感と、歯切れ・口溶けが得られる。そして、得られたベーカリー製品は、ソフトでありながら内相骨格がしっかりとしたものになるので、ケービングをおこしにくいという特徴を有する。さらに、ベーカリー製品がフィリング材を含有する場合、たとえば、フィリング材を分散、包餡、積載、サンドした状態で加熱処理したレーズンパン、あんぱん、クリームパン、総菜パンなどのベーカリー製品や、得られたベーカリー製品にフィリング材を注入、積載、サンドしたコッペパンやサンドウィッチなどにおいては、フィリング材の重みで、その下のベーカリー食品が潰れてしまうことがあるが、本発明の油脂組成物を使用した場合、ソフトでありながら内相骨格がしっかりとしたものになるので、つぶれてしまうことが効果的に抑制される。
本発明のベーカリー用油脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、最終的に本発明の有効成分である糖転移酵素、好ましくはさらに重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維や糖分解酵素が油脂組成物中に含有されるものであれば公知の方法で製造することができる。
例えば、本発明のベーカリー用油脂組成物が可塑性油脂組成物の形態をとる場合は、可塑性油脂組成物の製造の過程で、油脂中に上述の酵素を直接分散してから、急冷可塑化により可塑性油脂組成物を製造することができる。或いは、水相を含有する場合は水相に上述の酵素を分散させてから、油相と共に急冷可塑化することにより、可塑性油脂組成物を製造することができる。これらの場合、複数の酵素を用いる場合、酵素を別個に、或いは前もって複数の酵素を混合したものを油脂中、及び/又は、水相に分散すればよい。
また或いは、可塑性油脂組成物の製造の過程で、急冷可塑化後に上述の酵素、若しくは上記の酵素が含有された水溶液を添加、混合する方法によることもできる。
また或いは、可塑性油脂組成物の製造の過程で、急冷可塑化後に上述の酵素、若しくは上記の酵素が含有された水溶液を添加、混合する方法によることもできる。
本発明では、高い酵素活性を有し、且つ、保存時の酵素活性の低下が防止される点で、急冷可塑化後に、酵素、若しくは上記の酵素が含有された水溶液を添加、混合する方法であることが好ましい。
上記のベーカリー用油脂組成物において、比重を0.9未満とする場合は、得られた油脂組成物をクリーミングして比重が0.9未満となるように含気させる方法でもよいが、ベーカリー用油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で油脂組成物に窒素、空気等を含気させる方法によることが好ましい。特に、冷却後のまだ流動状を呈する間に含気させることが好ましい。その場合は、連続式の含気装置を使用して連続的に注入する方法であることが好ましい。
次に、本発明のベーカリー生地、及びベーカリー製品について述べる。
まず、本発明のベーカリー生地について述べる。
まず、本発明のベーカリー生地について述べる。
本発明のベーカリー生地は、本発明のベーカリー用油脂組成物を含有するベーカリー生地である。具体的には本発明のベーカリー用油脂組成物を練り込み、又は折り込んでなるものであり、好ましくは練り込んでなるものである。
本発明のベーカリー用油脂組成物を含有することのできるベーカリー生地としては、特に限定されず、任意のパン類の生地、菓子類の生地が挙げられ、例えば食パン生地、菓子パン生地、バラエティーブレッド生地、バターロール生地、ソフトロール生地、バンズ生地、ハードロール生地、スイートロール生地、デニッシュ生地、ペストリー生地、総菜パン生地、フランスパン生地、パイ生地、イーストパイ生地、イングリッシュマフィン生地、シュー生地、イーストドーナツ生地、ケーキドーナツ生地、バターケーキ生地、スポンジケーキ生地、ハードビスケット生地、ワッフル生地、スコーン生地、蒸しパン生地等が挙げられる。
本発明では、油脂組成物を含有する状態での生地としての存在時間が長く、本発明の効果が得やすい点、及びホイロ時において本発明の高い効果が得られる点で、パン類の生地であることが好ましく、中でも、ソフトでありながら内相骨格のしっかりしたパンが得られること、さらにはフィリング材を分散・積載・包餡することが多いことから、食パン生地、菓子パン生地、バラエティーブレッド生地、ソフトロール生地、バンズ生地、スイートロール生地、総菜パン生地のいずれかであることが好ましく、中でもサンドウィッチにした際のフィリング材の重量による潰れの問題がおきやすい食パン生地、又は、水分の多い総菜による潰れの影響の出やすい総菜パン生地であることが特に好ましい。
本発明のベーカリー生地における上記本発明のベーカリー用油脂組成物の含有量は、通常のベーカリー生地製造時の添加量と特に変わることなく、ベーカリー生地の種類に応じて適宜決定することができるが、ベーカリー生地で使用する澱粉類100質量部に対し、好ましくは3~45質量部、さらに好ましくは5~25質量部である。ここで含有量が3質量部以上とすることで、本発明の効果が得られやすく、45質量部以下とすることで、ベーカリー生地、特にパン生地の場合における生地のべたつきを容易に防止できる。
また、本発明では、上述のように、油脂組成物の添加量は、ベーカリー生地で使用する澱粉類100質量部に対し、糖転移酵素が上述の酵素活性や酵素添加量となるような添加量とすることが好ましい。
ベーカリー生地に用いる上記澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉及び胚芽などの小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉などのその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシューナッツ粉、オーナッツ粉及び松実粉などの堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉及び米澱粉などの澱粉並びにこれらの澱粉に酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理及びグラフト化処理から選択される1以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明では、これらの中でも、澱粉類中、好ましくは小麦粉類を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは100質量%使用することが望ましい。
また小麦粉類は強力粉のみ又は、強力粉と薄力粉の併用が好ましい。
また小麦粉類は強力粉のみ又は、強力粉と薄力粉の併用が好ましい。
ベーカリー生地のうち、パン類の生地を調製する場合に、小麦粉以外の澱粉類を使用する際、グルテンを別途添加することが好ましい。その添加量は、穀粉類とグルテンを合わせた合計量に対し、蛋白質含量が好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~18質量%となる量である。
本発明のベーカリー生地は必要により一般のパン類や菓子類の材料として使用することのできるその他の材料を配合することができる。該その他の原料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類や甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、酵素、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、各種食品素材や食品添加物等を挙げることができる。
また、上記の糖類や甘味料としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、液糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、転化糖液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖、ポリデキストロース、還元乳糖、還元水飴、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、はちみつ、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、甘草などが挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のベーカリー生地における上記糖類や甘味料の含有量は、ベーカリー生地の種類に応じて適宜設定可能であるが、本発明のベーカリー生地がパン生地である場合における上記糖類や甘味料の含有量は、ベーカリー生地で使用する澱粉類100質量部に対し、好ましくは3~45質量部、さらに好ましくは5~25質量部である。
なお、水については、本発明のベーカリー生地がパン生地の場合の場合は、パン生地で使用する澱粉類100質量部に対し、好ましくは30~150質量部であるが、本発明のベーカリー用油脂組成物は、ソフトでありながらしっかりした骨格のパンを得ることが可能であることから、澱粉類100質量部に対し、50質量部以上の多加水パンにおいて高い効果を有する。すなわち、本発明では水について、パン生地で使用する澱粉類100質量部に対し、さらに好ましくは50~100質量部となるとなる範囲で使用する。
なお、その他の原料として、水分を含有する原料を使用した場合は、ここでいう水の量は、その他の原料に含まれる水分も含めた量である。
ベーカリー生地の製造方法は特に限定されず、通常使用されている、あらゆるパン類・菓子類のための製造方法を適用することができる。パン類の製造方法の例としては中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法、チョリーウッド法、連続製パン法、冷蔵生地法、冷凍生地法等が挙げられ、菓子類の製造方法の例としてはシュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法、共立て法、別立て法が挙げられる。
ここで冷凍生地法を使用した場合は、従来よりも優れた性質を有した冷凍生地を得ることができる。即ち、本発明のベーカリー用油脂組成物を使用した冷凍生地は、解凍後も生地ダレを起こしにくく、且つ、該冷凍生地から得られたパンは、風味が良好で、外観(体積・表面)、内相とも良好となる。
なお冷凍生地法において冷凍の段階は特に制限されず、生地玉冷凍生地、成形冷凍生地、ホイロ済み冷凍生地等の各種の段階の冷凍生地とすることができるが、成形冷凍生地であることが好ましい。
本発明のベーカリー製品のうち、とりわけパン類を製造する場合は、澱粉類、水及びイーストを含む製パン原料を混捏して、グルテンが形成された後の生地に、上記本発明のベーカリー用油脂組成物を添加し、さらに混捏することにより練り込み、含有させることが好ましい。この場合、中種法であれば本捏生地に添加することが好ましい。
なお、得られた本発明のパン生地は、通常のパンと同様に、フロアタイム、分割、ベンチタイム、成形、ホイロ後に、焼成などの加熱工程を経ることにより、パンを得ることができる。
本発明のベーカリー製品は、本発明のベーカリー用油脂組成物を含有するベーカリー生地を加熱処理することにより得られる。ベーカリー生地の加熱処理の方法は特に限定されず、焼成、フライ、蒸し、蒸し焼き、電子レンジ処理を挙げられるが、焼成によるものであることが好ましい。
なお、焼成温度や時間などの各種条件は通常のベーカリー製品同様、適宜選択することができる。
得られたベーカリー製品がパンの場合、特に食パンや総菜パン、なかでも多加水パンである場合、上述のとおり、本発明のベーカリー用油脂組成物を使用することで、ソフトであるにも係わらずしっかりした骨格を有するため、フィリング材を分散・包餡・積載・挟んで焼成した場合や、焼成後にフィリング材を注入・積載・サンドした場合に、フィリング材の下部が潰れにくいという特徴を有する。そのため、サンドウィッチに使用することが特に好ましい。その場合、サンドウィッチを店頭販売する場合、通常、パンを立てて置くことでフィリング材の重さによるパンの潰れを防止することが多いが、フィリング材の下側にしてもパンが潰れにくい場合、横にして販売することができるため、省スペースとなる。
なお、本発明のベーカリー製品は再加熱しても食感の変化が少ないという特徴を有する。そのため、冷蔵又は冷凍保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
以下に、本発明の実施例、比較例、使用例等によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等によって制限されるものではない。なお、以下の表の配合の数値は質量部を意味する。
<油脂配合物の調製>
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部をそれぞれ60℃に加熱し、溶解・混合し、混合油脂Aを調製した。
また表1~表4に記載の乳化剤としては、グリセリンモノパルミチン酸エステルを用いた。また表1~表4に記載の酸化防止剤としてはミックストコフェロールを用いた。
ヨウ素価60のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂95質量部、パーム油5質量部をそれぞれ60℃に加熱し、溶解・混合し、混合油脂Aを調製した。
また表1~表4に記載の乳化剤としては、グリセリンモノパルミチン酸エステルを用いた。また表1~表4に記載の酸化防止剤としてはミックストコフェロールを用いた。
<使用した酵素剤、水溶性食物繊維等>
以下の実施例、比較例では、下記の酵素及び食物繊維を用いた。なお、下記u/gは酵素剤1gあたりの活性値である。各々の1uは製造者の示す定義による。
〔糖転移酵素〕
・糖転移酵素(1):グライコトランスフェラーゼ「アマノ」(4-α-グルカノトランスフェラーゼ(25)、3000u/g、天野エンザイム社製)(至適温度45~55℃、至適pH7.0~8.0)
・糖転移酵素(2):センシアフォーム(1,4-α-グルカン分枝酵素(18)、25000u/g以上、Novozymes A/S)(至適温度65~75℃、至適pH5.0~7.0)
・糖転移酵素(3):デナチームBBRLight(1,4-α-グルカン分枝酵素(18)、50000u/g、ナガセケムテックス株式会社)(至適温度25℃~50℃、至適pH5.0~7.0)
以下の実施例、比較例では、下記の酵素及び食物繊維を用いた。なお、下記u/gは酵素剤1gあたりの活性値である。各々の1uは製造者の示す定義による。
〔糖転移酵素〕
・糖転移酵素(1):グライコトランスフェラーゼ「アマノ」(4-α-グルカノトランスフェラーゼ(25)、3000u/g、天野エンザイム社製)(至適温度45~55℃、至適pH7.0~8.0)
・糖転移酵素(2):センシアフォーム(1,4-α-グルカン分枝酵素(18)、25000u/g以上、Novozymes A/S)(至適温度65~75℃、至適pH5.0~7.0)
・糖転移酵素(3):デナチームBBRLight(1,4-α-グルカン分枝酵素(18)、50000u/g、ナガセケムテックス株式会社)(至適温度25℃~50℃、至適pH5.0~7.0)
〔糖分解酵素〕
・マルトオリゴ糖生成アミラーゼ(1):ノバミル10000BG(マルトース生成α-アミラーゼ、10000u/g、Novozymes A/S)(至適温度65~85℃)
・マルトオリゴ糖生成アミラーゼ(2):ノバミル3D(マルトース生成α-アミラーゼ、10000u/g、Novozymes A/S)(至適温度75~85℃)
・マルトオリゴ糖生成アミラーゼ(3):デナベイクExtra(4糖生成アミラーゼ、6500u/g、ナガセケムテックス株式会社)(至適温度45~75℃)
・α-アミラーゼ:ファンガミルUltra WF G(5300u/g、Novozymes A/S)(至適温度40~60℃)
・ヘミセルラーゼ(1):ベイクザイムBXP5001BG(アラビノキシラナーゼ、5000u/g、DSM株式会社、(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)が10以上)(至適温度25~40℃)
・ヘミセルラーゼ(2):グリンドアミルH121(キシラナーゼ、20000±15u/g、ダニスコジャパン株式会社)(至適温度30~60℃)
・マルトオリゴ糖生成アミラーゼ(1):ノバミル10000BG(マルトース生成α-アミラーゼ、10000u/g、Novozymes A/S)(至適温度65~85℃)
・マルトオリゴ糖生成アミラーゼ(2):ノバミル3D(マルトース生成α-アミラーゼ、10000u/g、Novozymes A/S)(至適温度75~85℃)
・マルトオリゴ糖生成アミラーゼ(3):デナベイクExtra(4糖生成アミラーゼ、6500u/g、ナガセケムテックス株式会社)(至適温度45~75℃)
・α-アミラーゼ:ファンガミルUltra WF G(5300u/g、Novozymes A/S)(至適温度40~60℃)
・ヘミセルラーゼ(1):ベイクザイムBXP5001BG(アラビノキシラナーゼ、5000u/g、DSM株式会社、(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)が10以上)(至適温度25~40℃)
・ヘミセルラーゼ(2):グリンドアミルH121(キシラナーゼ、20000±15u/g、ダニスコジャパン株式会社)(至適温度30~60℃)
〔水溶性食物繊維〕
・水溶性食物繊維(1):ファイバリクサ(株式会社林原、重量平均分子量5000、構成糖残基組成中、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が19%、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が49%、3つのα結合を有するグルコース残基の比率の和が12%)
・水溶性食物繊維(2):デキストラン10(名糖産業株等式会社、重量平均分子量10000、構成糖残基組成中、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が10%未満、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が90%超、3つのα結合を有するグルコース残基の比率の和が1%未満)
・水溶性食物繊維(1):ファイバリクサ(株式会社林原、重量平均分子量5000、構成糖残基組成中、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が19%、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が49%、3つのα結合を有するグルコース残基の比率の和が12%)
・水溶性食物繊維(2):デキストラン10(名糖産業株等式会社、重量平均分子量10000、構成糖残基組成中、1位と4位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が10%未満、1位と6位の水酸基で結合しているグルコース残基の比率が90%超、3つのα結合を有するグルコース残基の比率の和が1%未満)
<ベーカリー用油脂組成物の調製>
(比較例1、実施例1~32)
下記の表1~表4に記載の配合に従い、可塑性油脂組成物(マーガリン)であるベーカリー用油脂組成物A~R、AA~AH、及び、BA~BGを調製した。
(比較例1、実施例1~32)
下記の表1~表4に記載の配合に従い、可塑性油脂組成物(マーガリン)であるベーカリー用油脂組成物A~R、AA~AH、及び、BA~BGを調製した。
詳細には、表1~表4に記載の油相原料を加熱溶解し、ここに水相原料を添加し、油中水型に乳化し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化し、まだ流動状を呈する間に連続式の含気装置を使用して連続的に窒素を注入し(BG以外)、さらに酵素液(比較例1については水)を添加・混合し、ベーカリー用油脂組成物A~R、AA~AH、及び、BA~BFを調製した。
ベーカリー用油脂組成物BGについては、窒素を注入する工程を行わない以外はベーカリー用油脂組成物BFと同様にして比重を0.9とした。
ベーカリー用油脂組成物BGについては、窒素を注入する工程を行わない以外はベーカリー用油脂組成物BFと同様にして比重を0.9とした。
なお、得られたベーカリー用油脂組成物の比重、及び、含有する酵素活性(単位/油脂組成物100g)についても表1~表4に記載した。
<ワンローフ型食パンの製造>
(比較例1、実施例1~32)
調製したベーカリー用油脂組成物A~R、AA~AH、及び、BA~BGそれぞれを用いて、下記の配合及び製法で、食パン生地A~R、AA~AH、及び、BA~BG、及び、ワンローフ型食パンA~R、AA~AH、及び、BA~BGを製造した。
(比較例1、実施例1~32)
調製したベーカリー用油脂組成物A~R、AA~AH、及び、BA~BGそれぞれを用いて、下記の配合及び製法で、食パン生地A~R、AA~AH、及び、BA~BG、及び、ワンローフ型食パンA~R、AA~AH、及び、BA~BGを製造した。
(配合・製法)
強力粉(商品名「イーグル」)70質量部、生イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、上白糖3質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。
強力粉(商品名「イーグル」)70質量部、生イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、上白糖3質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。
この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、2時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。
この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉30質量部、上白糖8質量部、脱脂粉乳1質量部、食塩1.2質量部及び水25質量部を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。
ここで、ベーカリー用油脂組成物10質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で4分ミキシングを行ない食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。
ここで、フロアタイムを30分とった後、360gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、ワンローフ型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定オーブンに入れ25分焼成してワンローフ型食パンを得た。
(比較例2)
なお、酵素及び食物繊維無添加の比較例1のマーガリンを使用し、実施例1の油脂組成物の製造に使用した糖転移酵素を、本捏ミキシングの最初にパン生地中で実施例1と等量となるように添加した以外は同様の配合及び製法で製造した食パン生地E-2及びワンローフ型食パンE-2も製造した。
なお、酵素及び食物繊維無添加の比較例1のマーガリンを使用し、実施例1の油脂組成物の製造に使用した糖転移酵素を、本捏ミキシングの最初にパン生地中で実施例1と等量となるように添加した以外は同様の配合及び製法で製造した食パン生地E-2及びワンローフ型食パンE-2も製造した。
<食パン生地及びワンローフ型食パンの評価>
分割・丸目時の食パン生地の作業性、得られたワンローフ型食パンの外観について下記評価基準に従って評価し、結果を表1~表4に示した。
分割・丸目時の食パン生地の作業性、得られたワンローフ型食パンの外観について下記評価基準に従って評価し、結果を表1~表4に示した。
また、20℃にて2日保管後の食感(ソフト性、しとり感、口溶け及び歯切れ)について、下記評価方法に従って評価し、結果を表1~表4に示した。
●評価基準(生地作業性)
○+:良好な作業性であった。
○:わずかにべとつきが感じられるか又はわずかに伸展性が悪く感じられるが、良好な作業性であった。
△:ややべとつきが感じられるか又はやや伸展性が悪く、作業性が若干劣るものであった。
×:べとつきがあるか又は伸展性が悪く、作業性が劣るものであった。
○+:良好な作業性であった。
○:わずかにべとつきが感じられるか又はわずかに伸展性が悪く感じられるが、良好な作業性であった。
△:ややべとつきが感じられるか又はやや伸展性が悪く、作業性が若干劣るものであった。
×:べとつきがあるか又は伸展性が悪く、作業性が劣るものであった。
●評価基準(外観)
外観を目視により「伸びの勢いと体積」を3段階、「ケービング」を4段階で評価を行い、その合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして表1~表4に示した。ケービング評価0点の実施例はなかった。
外観を目視により「伸びの勢いと体積」を3段階、「ケービング」を4段階で評価を行い、その合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして表1~表4に示した。ケービング評価0点の実施例はなかった。
「伸びの勢いと体積」
3点:勢いのある伸びの外観で体積も大きい
2点:体積は大きいが伸びの勢いが弱い
1点:伸びが弱く体積も小さい
3点:勢いのある伸びの外観で体積も大きい
2点:体積は大きいが伸びの勢いが弱い
1点:伸びが弱く体積も小さい
「ケービング」
3点:ケービングが見られない
2点:わずかにケービングがみられる
1点:はっきりとしたケービングが見られる
0点:ケービングが激しい
3点:ケービングが見られない
2点:わずかにケービングがみられる
1点:はっきりとしたケービングが見られる
0点:ケービングが激しい
(外観の合計点の評価基準)
◎+ :6点
◎ :5点
○+ :4点
○ :3点
△ :2点
× :1点
◎+ :6点
◎ :5点
○+ :4点
○ :3点
△ :2点
× :1点
●評価基準(食感)
得られたワンローフ型食パンの食感(ソフト性、しとり感、口溶け及び歯切れ)について、パネラー20名にて下記評価方法及び評価基準により5段階評価を行い、その合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして表2に示した。
得られたワンローフ型食パンの食感(ソフト性、しとり感、口溶け及び歯切れ)について、パネラー20名にて下記評価方法及び評価基準により5段階評価を行い、その合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして表2に示した。
(食感の合計点の評価基準)
◎+ :76~80点
◎ :71~75点
◎- :66~70点
○++:61~65点
○+ :56~60点
○ :51~55点
○- :46~50点
○--:41~45点
△ :21~40点
× :20点以下
◎+ :76~80点
◎ :71~75点
◎- :66~70点
○++:61~65点
○+ :56~60点
○ :51~55点
○- :46~50点
○--:41~45点
△ :21~40点
× :20点以下
〔ワンローフ型食パン評価基準〕
●食感(ソフト性)
4点:きわめて良好
3点:良好
2点:やや不良
1点:不良
0点:きわめて不良
●食感(ソフト性)
4点:きわめて良好
3点:良好
2点:やや不良
1点:不良
0点:きわめて不良
●食感(しとり感)
4点:きわめて良好
3点:良好
2点:やや不良
1点:不良
0点:きわめて不良
4点:きわめて良好
3点:良好
2点:やや不良
1点:不良
0点:きわめて不良
●食感(口溶け)
4点:きわめて良好
3点:良好
2点:ややくちゃつきを感じるがねちゃつきまでは感じられない
1点:ねちゃつきが強い
0点:ねちゃつきが激しい
4点:きわめて良好
3点:良好
2点:ややくちゃつきを感じるがねちゃつきまでは感じられない
1点:ねちゃつきが強い
0点:ねちゃつきが激しい
●食感(歯切れ)
4点:きわめて良好
3点:良好
2点:ややヒキが感じられ、やや不良である
1点:ヒキが強く、不良である
0点:ヒキが極めて強く、極めて不良である
4点:きわめて良好
3点:良好
2点:ややヒキが感じられ、やや不良である
1点:ヒキが強く、不良である
0点:ヒキが極めて強く、極めて不良である
表1及び表2に示すとおり、糖転移酵素を含有する実施例1~17の油脂組成物は糖転移酵素を非含有である比較例1の油脂組成物に比して、製パン時の生地作業性、得られる食パン外観・形状及び食感のいずれの点でも優れていた。特に水溶性食物繊維を用いた場合、生地作業性や食感改善効果が一層優れていた。
また、実施例1~17と比較例2を比較すると、比較例2の食パンは、食感のソフト性及び口溶けの点で実施例1~17の食パンよりも劣っていた。この結果より、糖転移酵素はパン生地に直接添加するのではなく、油脂組成物中に予め混合させることで、食感改善効果に優れることが分かる。
表3では、糖転移酵素に加えて、糖分解酵素及び/又は水溶性食物繊維を油脂組成物に含有させることで、更に一層生地作業性や食感改善効果に優れることが示されている。
表4においても、糖転移酵素に加えて、糖分解酵素及び/又は特定の水溶性食物繊維を油脂組成物に含有させることで、更に一層生地作業性や外観・形状、食感改善の効果に優れることが示されている。
<バターロール冷凍生地試験>
(実施例33~35、比較例3)
上記<ベーカリー用油脂組成物の調製>で得られたベーカリー用油脂組成物A、E、BE及びBFを用いて、下記に示す配合及び製法によりバターロール生地の成形冷凍生地を得た。得られた成形冷凍生地を、-20℃の冷凍庫で保管した。20日後、0℃の冷蔵庫に移庫し、12時間かけて解凍した。次いで、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してバターロールを得た。
(実施例33~35、比較例3)
上記<ベーカリー用油脂組成物の調製>で得られたベーカリー用油脂組成物A、E、BE及びBFを用いて、下記に示す配合及び製法によりバターロール生地の成形冷凍生地を得た。得られた成形冷凍生地を、-20℃の冷凍庫で保管した。20日後、0℃の冷蔵庫に移庫し、12時間かけて解凍した。次いで、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してバターロールを得た。
解凍後の生地だれの状態、得られたバターロールの外観及び内相について下記評価基準に従って4段階で評価し、結果を表5に示した。
(配合・製法)
強力粉(商品名「カメリア」)90質量部、薄力粉(商品名「ハート」)10質量部、生イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、上白糖12質量部、食塩1.2質量部、脱脂粉乳3質量部、全卵(正味)15質量部及び水45質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で5分ミキシングした。ここで、ベーカリー用油脂組成物15質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、バターロール生地を得た。得られたバターロール生地の捏ね上げ温度は27℃であった。
強力粉(商品名「カメリア」)90質量部、薄力粉(商品名「ハート」)10質量部、生イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、上白糖12質量部、食塩1.2質量部、脱脂粉乳3質量部、全卵(正味)15質量部及び水45質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で5分ミキシングした。ここで、ベーカリー用油脂組成物15質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、バターロール生地を得た。得られたバターロール生地の捏ね上げ温度は27℃であった。
このバターロール生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、90分間醗酵を行なった。40gに分割し、次いで、ベンチタイムを20分とった後、手成形でバターロール成形し、20分間の-40℃の急速冷凍を行い、バターロール生地の成形冷凍生地とした。
●評価基準(解凍後の生地だれの状態)
◎:生地だれは全くなく、極めて良好であった。
○:生地だれはほとんどなく良好であった。
△:やや生地だれが見られる。
×:激しい生地だれが見られる。
◎:生地だれは全くなく、極めて良好であった。
○:生地だれはほとんどなく良好であった。
△:やや生地だれが見られる。
×:激しい生地だれが見られる。
●評価基準(外観(体積・表面))
◎:体積が大きく、ナシ肌もみられず良好な外観であった。
○:体積が大きいが、若干のナシ肌が見られた。
△:体積がやや小さく、明瞭なナシ肌が見られた。
×:体積が小さく、顕著なナシ肌が見られた。
◎:体積が大きく、ナシ肌もみられず良好な外観であった。
○:体積が大きいが、若干のナシ肌が見られた。
△:体積がやや小さく、明瞭なナシ肌が見られた。
×:体積が小さく、顕著なナシ肌が見られた。
●評価基準(内相)
◎:膜が薄く均一なすだちであり、極めて良好である。
○:良好である。
△:膜がやや厚く、やや不均一なすだちである。
×:膜が厚く、不均一なすだちであり、不良である。
◎:膜が薄く均一なすだちであり、極めて良好である。
○:良好である。
△:膜がやや厚く、やや不均一なすだちである。
×:膜が厚く、不均一なすだちであり、不良である。
表5に示すように、バターロールの製造に関して、糖転移酵素を使用した実施例33は、糖転移酵素を使用しなかった比較例3よりも解凍後の生地だれ抑制、体積の大きさや外観、内相に優れていた。また、糖転移酵素に加えて水溶性食物繊維及び糖分解酵素を使用した実施例33及び34では、特に、体積が大きく外観に優れ、また内相にも優れたバターロールが得られた。
Claims (10)
- 糖転移酵素を含有する、ベーカリー用油脂組成物。
- 上記糖転移酵素が4-α-グルカノトランスフェラーゼである、請求項1に記載のベーカリー用油脂組成物。
- 重量平均分子量が20万以下の水溶性食物繊維を含有する、請求項1又は2に記載のベーカリー用油脂組成物。
- 糖分解酵素を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物。
- 上記糖分解酵素がマルトオリゴ糖生成アミラーゼを含有する、請求項4に記載のベーカリー用油脂組成物。
- 上記糖分解酵素がα-アミラーゼを含有する、請求項4又は5に記載のベーカリー用油脂組成物。
- 上記糖分解酵素がヘミセルラーゼを含有する、請求項4~6のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物。
- 比重が0.9未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物。
- 請求項1~8のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物を含有するベーカリー生地。
- 請求項9に記載のベーカリー生地の加熱処理品であるベーカリー製品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022006770A JP2023105758A (ja) | 2022-01-19 | 2022-01-19 | ベーカリー用油脂組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022006770A JP2023105758A (ja) | 2022-01-19 | 2022-01-19 | ベーカリー用油脂組成物 |
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JP2023105758A true JP2023105758A (ja) | 2023-07-31 |
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ID=87468756
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2022006770A Pending JP2023105758A (ja) | 2022-01-19 | 2022-01-19 | ベーカリー用油脂組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2023105758A (ja) |
-
2022
- 2022-01-19 JP JP2022006770A patent/JP2023105758A/ja active Pending
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