JP2017000109A - 洋菓子のボリューム維持剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】洋菓子のボリューム維持剤を提供することを課題とする。
【解決手段】ホスホリパーゼを含む、洋菓子のボリューム維持剤を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、洋菓子のボリューム維持剤に関する。
ホスホリパーゼは、大豆、卵黄、菜種などに含まれるグリセロリン脂質に作用する酵素である。ホスホリパーゼは、その反応位置特異性により、1位のエステル結合を加水分解するホスホリパーゼA1、2位のエステル結合を加水分解するホスホリパーゼA2に分類される。ホスホリパーゼA2(EC 3.1.1.4、以下PLA2と略す)は、微生物から動物まで幅広く存在し、産業用酵素としては、ブタ膵臓(Biocatalysts社製、製品名:Lipomod 699L)および放線菌由来のPLA2(ナガセケムテックス製、製品名:デナベイクRICH)や、ブタ膵臓由来のPLA2遺伝子をカビで発現させたもの(DSM社製、製品名:Maxapal A2)が流通している。
PLA2は種々の食品に含まれるリン脂質に作用して、乳化機能により優れたリゾリン脂質を生成する。リン脂質を豊富に含む卵を予めホスホリパーゼで処理した改質卵を使用するベーカリー製品の改良に関して、複数の試みがなされてきた。特許文献1にはホスホリパーゼで分解した卵液を使うことで、含気が十分で口触りがソフトで、しかも苦みが無いスポンジケーキの製造方法が記載されている。特許文献2には、食味を損なうことなく型枠からのはがれをなめらかにし、しっとりとした口溶けの良い食感で、ボリューム感等の外観にも優れており、保存中の老化を抑制するパンやケーキなどのベーカリー食品を提供し得ることが記載されている。特許文献3には、ホスホリパーゼは、ケーキ生地の粘性、比重、初期のクラムの柔らかさ、クラムの細孔均質性、貯蔵時のクラムの柔らかさ、貯蔵寿命および/またはケーキ体積の群から選択される特性の少なくとも一つを改善でき、製法で使用される卵および/または脂肪の量の減少を可能にすることも記載されている。特許文献4にも、ホスホリパーゼを使用することでケーキバッター中の卵の量を減らせることが記載されている。
しかし、従来のホスホリパーゼで改質した卵を用いた、あるいは生地にホスホリパーゼを添加したベーカリー製品の改良方法は、少量生産にのみ当てはまる方法であり、真に工業化による大量生産を考慮した使用方法は未だ未確立であった。一度に多量の生地を製造し、順番にライン上で焼成していくオートメーションシステムにおいては、最初に出来上がるケーキと最後に出来上がるケーキとでは、生地調製時からの経過時間に違いが生じ、その間に生地の状態が変化するため品質にばらつきが生じるという課題があった。卵を泡立ててつくるスポンジケーキやシフォンケーキではふっくらとした柔らかい食感が特徴的であるが、これには泡が重要な役割を果たしている。このようなケーキにおいては泡が壊れやすいため、生地の製造には熟練した作業者が細心の注意を払うことが必要となる。また、生地調製後ただちに焼成することが好ましいが、大量生産の現場においてはボールディングタンクの中に生地が長時間置かれることになり、その間に気泡が徐々に潰れてしまい、ケーキに十分な膨らみや柔らかさが得られないという課題があった。この課題を解決するために、化学合成された乳化剤が使用されているが、味や食感への悪影響が生じるほか、近年の天然志向・健康志向の高まりにより、化学合成品の使用を減らすことが望まれている。
卵の気泡状態を安定化させケーキのボリュームを維持するものとしては、固形分中に55〜100重量%のα−D−グルコピラノシル−1,6−ソルビトールを含有する糖アルコール組成物を含む気泡安定剤(特許文献5)、全甘味成分の20重量%以上が糖アルコール甘味料であり、全糖アルコール甘味料が固形分中に55〜100重量%のα−D−グルコピラノシル−1,6−ソルビトール、および45〜0重量%のα−D−グルコピラノシル−1,1−マンニトールおよび/またはα−D−グルコピラノシル−1,1−ソルビトールを含有している焼き菓子用生地(特許文献6)が知られている。これらはいずれも、スポンジケーキの生地を調製後、3時間置いた後にケーキを焼成し、ケーキ体積の保持率/減少率について記載されているが、ボリューム維持効果は十分なものとはいえなかった。
その他にも、起泡した卵類含有生地に液状の水性成分を添加、混合して製造するケーキ生地の製造方法であって、液状の水性成分を、少なくとも乳蛋白質とゲル化剤と水とで構成される複合体を混合した後、これを起泡した卵類含有生地に添加する事を特徴とするケーキ生地の製造方法が知られている(特許文献7)。これによると、ソフトでしっとり感があり、体積が大きく内相が均質であるケーキを安定して得る事ができるが、ケーキに寝かし時間が発生した場合に品質を保持できるか不明である。
特公平4−41979号公報 特開2003−325140号公報 特表2010−517521号公報 特許第4881437号 特開2004−222529号公報 特開2004−33108号公報 特開2013−172668号公報
洋菓子のボリューム維持剤を提供することを課題とする。
本発明者は、ホスホリパーゼを利用したケーキ類の製造方法について鋭意研究し、ケーキを大量生産する場合にも気泡を安定化させ、ボリュームや柔らかさの低下を起こすことなく、高品質のケーキを安定的に製造する方法を見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、ホスホリパーゼを含む、洋菓子のボリューム維持剤に関する。
また、本発明は、洋菓子生地に前記ボリューム維持剤を添加する工程、および洋菓子生地を焼成する工程を含む、洋菓子の製造方法に関する。
さらに、洋菓子生地を寝かせる工程を含むことが好ましい。
下記式:
反応率(%)=(LPC+LPE)/(LPC+LPE+PC+PE)×100
により算出される、焼成前の生地の反応率が8〜40%であることが好ましい。
乳化剤を添加する工程を含まないことが好ましい。
また、本発明は、前記の製造方法により製造された洋菓子に関する。
乳化剤の含有量が生地重量に対して3%以下であることが好ましい。
また、本発明は、洋菓子生地に前記ボリューム維持剤を添加する工程、および洋菓子生地を焼成する工程を含む、洋菓子のボリューム維持方法に関する。
本発明により、大規模生産においても安定的に高品質なケーキを生産することができ、またトラブル等で生産ラインを停止せざるを得なかった場合にもケーキ生地の劣化を抑え、廃棄を低減させることが可能となる。リテールベーカリーにおいても、製造したケーキ生地を寝かすことが可能となることから、一回の仕込み量を増やす事ができ、製造の効率を上げる事ができる。
スポンジケーキ類の泡立ちを良くし、気泡の安定性を保持する合成乳化剤は数多く存在する(起泡性乳化油脂、起泡性ショートニング、粉末起泡剤、ペースト状起泡剤など)が、本発明は、これらの化学合成品を用いることなく、天然素材である酵素を使用して気泡安定性を向上させることができる。また、天然のたんぱく質である酵素をケーキ生地に添加した場合、ケーキの焼成工程で生地温度が上がり、生地内に含まれる酵素は熱変性して働きを失って、卵や他の原材料に含まれるたんぱく質と同様に体内で消化吸収される。
実施例1〜4および比較例1の焼成前の洋菓子生地、および焼成後の洋菓子を示す。 実施例1〜4および比較例1の洋菓子の比容積を示す。 実施例5〜6および比較例2の洋菓子の比容積を示す。 実施例5および比較例2の洋菓子を示す。 実施例7〜8および比較例3の洋菓子の比容積を示す。 実施例9〜10および比較例4の洋菓子の比容積を示す。 実施例11〜13および比較例5の洋菓子の比容積を示す。
本発明のボリューム維持剤は、洋菓子のボリュームを維持する。ここで、洋菓子のボリューム維持とは、焼成前の洋菓子生地の気泡を長時間にわたり安定化し、その結果、焼成後の洋菓子の比容積を一定の水準に保つことをいう。通常、焼成前の洋菓子生地の気泡は時間の経過と共に崩壊し、出来上がりのケーキのキメが粗くなると同時に焼成後の洋菓子の比容積も低下してしまう。これにより見た目が悪くなり、また柔らかさも悪化するため食感も悪くなり、製品価値が低下する。しかし、本発明のボリューム維持剤を含む洋菓子生地は、焼成前に長時間保存された場合でも焼成後の洋菓子の比容積は一定水準に保たれる。焼成後の洋菓子は寝かし時間の有無にかかわらず一定した品質を有しており、ふっくらとして柔らかく、キメが細かく、しっとり感や口どけ感にも優れる。
洋菓子としては、スポンジケーキ、ロールケーキ、スイスロール、スフレ、ブッセ、スフレチーズケーキ、シフォンケーキ、バウムクーヘン、バターケーキ、マドレーヌ、マフィン、ホットケーキ、蒸しケーキなどが挙げられる。
本発明のボリューム維持剤は、ホスホリパーゼを含む。ホスホリパーゼ(以下、図表においてはPLと表記)はリン脂質の分解酵素である。ホスホリパーゼとしては、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼB、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼDが挙げられる。この中でも、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼDが好ましく、ホスホリパーゼA2がより好ましい。
ホスホリパーゼは、微生物由来、動物由来、植物由来のものが挙げられる。微生物としてはAspergillus fumigatus、Aspergillus oryzae、Fusarium oxysporum、Saccharomyces cerevisiae、Actinomadura sp.、Bacillus subtilis、B.cereus、Escherichia coli、Listeria monocytegenes、Pseudomonas aeruginosa、Serratia sp.MK1、Streptomyces antibioticus、S.cinnamoneus、S.chromofuscus、S.hachijoensis、S.septatus、S.violaceoruber、Thermomyces lanuginosus、Yersinia enterocoliticaが挙げられる。動物としてはブタ、ヘビ、ウサギ、ウシ、ウマ、イノシシ、ヒツジ、ネズミ、ハムスターが挙げられる。植物としてはシロイヌナズナ、ピーナツ、キャベツが挙げられる。これらの中でも、微生物由来であることが好ましく、放線菌(Streptomyces属)由来であることがより好ましい。Streptomyces violaceoruber由来のホスホリパーゼA2であることがさらに好ましい。また、ホスホリパーゼとしては、起源となる微生物、動物、または植物から抽出したもの、遺伝子組み換え技術を用いて大量生産させたもののいずれを用いてもよく、また野生型ホスホリパーゼを用いてもよく、変異型ホスホリパーゼを用いてもよい。
本発明の洋菓子のボリューム維持剤は、ホスホリパーゼ以外に、食品に許容される他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、賦形剤、pH調整剤、酵素、増粘多糖類、乳化剤、乳化剤と重合リン酸塩との混合物、乳製品、エキス類、糖質、甘味料、発酵風味料、卵、無機塩類、保存料などが挙げられる。本発明のボリューム維持剤に含有される他の成分の含有量は特に限定されず、当業者によって任意の量が選択され得る。
pH調整剤としては、例えば、アスコルビン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、およびアジピン酸、ならびにこれらの有機酸のナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、およびカリウム(K)塩ならびに炭酸、リン酸、およびピロリン酸、ならびにこれらの無機酸のNa塩およびK塩が挙げられる。
酵素としては、例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、マルトジェニックアミラーゼ、グルカン1,4−α−マルトトリオヒドロラーゼ、グルカン1,4−α−マルトテトラオヒドロラーゼ、グルカン1,4−α−マルトヘキサオシダーゼ、へミセルラーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼ、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、グルタチオンデヒドロゲナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、トランスグルタミナーゼ、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、β−グルカナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼなどが挙げられる。
増粘多糖類としては、例えば、加工澱粉、ガム類、アルギン酸、アルギン酸誘導体、ペクチン、カラギーナン、カードラン、プルラン、ゼラチン、セルロース誘導体、寒天、タマリンド、サイリウム、グルコマンナンなどが挙げられる。
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サポニンなどが挙げられる。
乳製品としては、例えば、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、ホエイ粉、カゼイン、チーズ、ヨーグルト、練乳、発酵乳、クリームなどが挙げられる。
エキス類としては、例えば、酵母エキス、モルトエキスなどが挙げられる。
糖質としては、例えば、ブドウ糖、果糖などの単糖;砂糖、マルトース、イソマルトース、トレハロース、ラクトース、ラクツロース、セロビオースなどの二糖;マルトトリオース以上のマルトオリゴ糖、ラフィノース、パノース、スタキオース、グルコオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ゲンチオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、ラクトスクロースなどの直鎖もしくは分岐オリゴ糖;異性化糖、水あめ、粉あめ、はちみつなどの糖混合物;デンプン、加工デンプン、デキストリン、水酸化ヘミセルロースなどの多糖;還元水あめ、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、パラチニット、エリスリトール、オリゴ糖還元物などの糖アルコールなどが挙げられる。二糖類、オリゴ糖類、デンプン、加工デンプン類、デキストリンは賦形剤としても用いられる。
甘味料としては、例えば、ステビア、アスパルテーム、グリチルリチン、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテームなどが挙げられる。
無機塩類としては、例えば、食塩、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、重合リン酸塩などが挙げられる。
保存料としては、例えば、プロピオン酸、プロピオン酸塩、亜硫酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩などが挙げられる。塩としては、ナトリウム(Na)塩、カルシウム(Ca)塩、およびカリウム(K)塩などが挙げられる。
本発明の洋菓子の製造方法は、洋菓子生地に前記ボリューム維持剤を添加する工程、および洋菓子生地を焼成する工程を含む。また、本発明の洋菓子のボリューム維持方法は、洋菓子生地に前記ボリューム維持剤を添加する工程、および洋菓子生地を焼成する工程を含む。洋菓子生地の材料としては、卵(全卵、卵黄、卵白、乾燥卵、凍結卵など)、砂糖、小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉、全粒粉、グラハム粉など)、油脂(バター、マーガリン、ショートニング、液状油、乳化油脂など)、ベーキングパウダー、水が挙げられる。風味や味、食感に変化をつけるために、小麦粉以外の穀物粉(例えば、ライ麦粉、コーンスターチ、大豆粉など)、牛乳、生クリーム、ヨーグルト、クリームチーズ、サワークリーム等の乳製品、チョコレート類、ココアパウダー、コーヒー、抹茶、紅茶等の粉末材料、シナモン、バニラビーンズ等のスパイス・ハーブ類、果汁、フルーツ、ナッツ、アルコール、香料などを加えてもよい。
洋菓子生地の製造方法としては、共立て法、別立て法、オールインミックス法が挙げられる。共立て法では、全卵に砂糖を加えて泡立てたのち、小麦粉や油脂を加える工程で生地を製造する。別立て法では、卵白と卵黄を別々に泡立てた後に、両者と粉類を順次合わせて生地を製造する。オールインミックス法では、全ての材料を同時に混合し、泡立てて生地を製造する。配合には乳化起泡剤が使用される。洋菓子生地の製造方法としては、共立て法、別立て法、オールインミックス法を組み合わせた方法でも良い。本発明のボリューム維持剤は、共立て法、別立て法、オールインミックス法のどの方法で製造された洋菓子生地においても、ボリュームを維持する効果を奏するが、乳化剤や起泡剤を使用しない方法でより顕著な効果を奏する。
洋菓子生地中のボリューム維持剤の含有量は、スポンジケーキにおいては、使用する全卵の重量に対して0.02〜2%であることが好ましく、0.05〜1%であることがより好ましく、0.1〜0.4%であることがさらに好ましい。全卵の代わりに卵黄を使用する場合は、ボリューム維持剤は全卵の場合の使用量の3倍量を使用すればよい。
焼成前の生地の反応率は、生地に含まれる成分を高速液体クロマトグラフ法で解析して算出することができる。高速液体クロマトグラフ法における使用カラムはULTRASPHERE SILICA(4.6mmI.D.x25cm、ベックマンコールター社製)、移動相はアセトニトリル:メタノール:リン酸=900:90:10(V/V/V)、流速1ml/分、カラム温度37℃とし、検出器は示唆屈折計を用いることができる。
焼成前の生地の反応率は下記式により算出することができる。
反応率(%)=(LPC+LPE)/(LPC+LPE+PC+PE)×100
LPCはリゾホスファチジルコリン、LPEはリゾホスファチジルエタノールアミン、PCはホスファチジルコリン、PEはホスファチジルエタノールアミンに相当するピークのエリア面積値である。
焼成前の生地の反応率は8〜40%であることが好ましく、8.5〜38%であることがより好ましく、8.7〜36%であることがさらに好ましい。特に、スポンジケーキにおいては、焼成前の生地の反応率は8〜40%であることが好ましく、8.5〜38%であることがより好ましく、8.7〜36%であることがさらに好ましく、9〜34%であることがなお好ましく、10〜23%であることがなお一層好ましい。
シフォンケーキにおいては、焼成前の生地の反応率は8〜19%であることが好ましく、9〜18%であることがより好ましい。
本発明のボリューム維持剤は、焼成前の洋菓子生地の気泡を長時間にわたり安定化できるので、本発明のボリューム維持剤を含む洋菓子生地は、焼成前に寝かせても焼成後の洋菓子のボリュームが損なわれない。洋菓子生地を寝かせる際の温度は、10〜40℃であることが好ましく、15〜30℃であることがより好ましい。焼成前に洋菓子生地を寝かせる時間としては、例えば0.2時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間が挙げられるがこれらに限定されるものではない。ここで、生地を寝かせる工程とは、意図の有無にかかわらず、生地が出来上がってから焼成を開始するまでの時間が概ね10分以上発生する場合をいう。生地を大量に調製し順次焼成していく場合、工程の都合上待ち時間が生じた場合、機械トラブル等で生産ラインが停止した場合等も、生地の寝かし工程を含むといえる。
洋菓子の焼成温度は、100〜250℃であることが好ましく、170〜200℃であることがより好ましい。洋菓子の焼成時間としては、例えば0.1時間、0.2時間、0.5時間、1時間が挙げられるが、焼成する菓子の種類やサイズ、個数によって適宜調整される。
通常、洋菓子の気泡を安定化するためには乳化剤が使用されるが、本発明のボリューム維持剤を使用する場合には、気泡が十分に安定化されるので、乳化剤の使用量を低減でき、或いは、乳化剤を添加する必要がない。化学合成された乳化剤は味や風味、食感への悪影響が生じる。また、近年の天然志向・健康志向の高まりにより化学合成品の使用を減らすことが望まれている。よって、本発明の洋菓子における乳化剤の含有量は、生地重量に対して3%以下であってもよく、1%以下であってもよい。
(実施例1〜4および比較例1)
全卵をホスホリパーゼ(ナガセケムテックス社製、品名:デナベイクRICH)で処理して処理卵を調製した。処理卵と非処理卵とを表1に記載の量で混ぜ合わせて卵混合物を調製し、卵混合物の酵素反応率を下記の方法で測定した。その結果を表1に示す。
卵もしくは生地の酵素反応率の測定方法:
卵もしくはケーキ生地を有機溶媒(クロロホルム−メタノール)にて抽出し、HPLCで分析した。反応率は、リン脂質の主成分であるPCおよびPE、および、その反応生成物であるLPC、PLEに相当するピークのエリア面積から、下記式に基づき算出した。
反応率(%)=(LPC+LPE)/(LPC+LPE+PC+PE)×100
上記の卵混合物を全卵として用いて共立て法によりスポンジケーキの生地を調製した。ミキサー(愛工舎製作所ケンミックスmajor)を使用し、全卵と砂糖を泡立てた。その後にふるっておいた薄力粉を混ぜ合わせ、続いて湯煎で溶かした無塩バターを混ぜ合わせた。ホスホリパーゼ処理卵とは、あらかじめホスホリパーゼを全卵に作用させ、反応させた卵であり、非処理卵とは酵素反応をしていない卵を意味する。
上記の生地をビーカーに入れて室温で放置した。約20時間後の生地を図1上段に示す。時間の経過に伴い、細かな泡が潰れていき、乳化が壊れて水分が分離してくる様子が観察できた。乳化が安定しているものほど水分の分離が少なく、また気泡も細かな状態を維持していた。
生地における気泡安定性は下記の基準により判定した。その結果を表1に示す。
比較例1と比較して分離が極めて抑えられている=◎
比較例1と比較して分離が抑えられている=○
比較例1と比較して分離がやや抑えられている=△
水分の分離がかなり進行している=×
表1に示すように、ホスホリパーゼはケーキ生地の気泡を安定化させ、乳化の崩壊や水分の分離を抑制する事ができる。
ホスホリパーゼによって気泡が安定化された生地を5号丸型に250gずつ分注し、オーブンで30分間焼成してケーキを調製した(上火180℃、下火170℃)。焼成後のケーキを図1下段に示す。焼成後のケーキの比容積を、下記の方法で測定した。その結果を図2に示す。
比容積の測定方法:
ケーキの比容積は、菜種置換法にて計測した。すなわち、ケーキが入る大きさの容器に菜種を満たして取り分けておき、次に、同じ容器に、取り分けた菜種と焼成したケーキを詰めて満杯にしたときに、容器からあふれた菜種の体積をメスシリンダーで計量することにより間接的にケーキの体積を求めた。得られた数値を重量で割り、比容積を算出した。
(実施例5〜8および比較例2〜3)
共立てのスポンジケーキの生地を表3に記載の組成で調製した。あらかじめ卵をホスホリパーゼで処理した改質卵は使用せず、ホスホリパーゼを小麦粉に混ぜ合わせて使用した。
すぐに焼成(寝かし時間0分)したものと、30分室温においてから焼成したもの(寝かし時間30分)、60分室温においてから焼成したもの(寝かし時間60分)とで、出来上がりのケーキの比容積を測定した。その結果を表4、図3および図4に示す。
ホスホリパーゼを添加しない比較例2では、寝かし時間30分で比容積が24%低下した。ホスホリパーゼを全卵に対して0.2%添加した実施例5では、寝かし時間30分、60分のいずれも全く小さくならず、寝かし時間0分と同等の比容積を維持していた。ホスホリパーゼを0.8%添加した実施例6も、比容積の低下率は4%未満であり、生地を寝かすことによる品質の低下を抑制できた。
同様にして、生地を3時間寝かした後に焼成してケーキの比容積を測定した。その結果を表5および図5に示す。
ホスホリパーゼ無添加の比較例3では27%のボリューム低下が発生した。ホスホリパーゼを0.05%もしくは0.1%添加した実施例7〜8では、3時間生地を寝かした後のケーキでも比容積の低下は全く認められず、むしろ比容積が増大していた。これは、生地を寝かしている間にホスホリパーゼによる反応が進行し、気泡をより安定化したことによると考えられる。
ケーキの官能評価を行ったところ、ボリュームが低下した比較例2〜3では、クラムが硬く絞まった状態で食味性も大きく低下した。ホスホリパーゼを添加した実施例5〜8では、寝かし時間を1時間取った場合でもふっくらとして柔らかく、日にちが経過した場合でも硬くなりにくかった。キメが細かく、しっとり感や口どけ感にも優れていた。
(実施例9〜10および比較例4)
オールインミックス法は大量のケーキを作る際に用いられる方法である。材料を同時に混ぜ合わせることから簡便で時間短縮にもなる。その一方で、オールインミックス法は、卵を泡立てるために乳化剤の使用が欠かせない方法ともされている。
表6に記載の全ての材料をミキサーボール(愛工舎製作所ケンミックスmajor)に入れ、ミキシングを行って、生地比重が0.50〜0.52になるまで泡立てることにより、オールインミックスのケーキ生地を調製した。4号丸型に120gずつ分注し、上火180℃、下火160℃で22分間焼成した。
生地の寝かし時間を0分、30分、60分とした場合の、焼成後のケーキの比容積を測定した。その結果を表7および図6に示す。
表7において、ボリュームアップとボリューム維持は下記の基準により判定した。
ボリュームアップ:
比較例4の寝かし時間0分のケーキと比較して、ボリュームが低下している=×
比較例4の寝かし時間0分のケーキと比較して、ボリュームが増大している=○
ボリューム維持:
各々の試験区における寝かし時間0分のケーキと比較して、ボリュームが低下している=×
各々の試験区における寝かし時間0分のケーキと比較して、ボリュームが低下していない=○
ホスホリパーゼを添加しない比較例4では、寝かし時間30分でボリュームが3.3%、寝かし時間60分で3.7%低下した。ホスホリパーゼを全卵に対して0.2%もしくは0.3%添加した実施例9〜10では、比較例4と比べてボリュームの増大が確認され、また生地を30分間および60分間寝かした場合でも比容積は低下しなかった。
(実施例11〜13および比較例5)
(別立てのシフォンケーキ作製法)
3分の1量の砂糖と卵黄をミキサーボール(愛工舎製作所ケンミックスmajor)に入れ、ミキシングしながら油脂、続いて水を添加した。そこへ予めふるっておいたホスホリパーゼと小麦粉を加えて均一になるまで混ぜ合わせた(卵黄生地)。キッチンエイド(関東ミキサー)のボールに3分の2量の卵白と砂糖を入れ泡立てた(メレンゲ)。卵黄生地にメレンゲを加え、均一になるまで混ぜ合わせて、シフォンケーキ型(13cm)に180gずつ分注した。最終的な生地比重は0.36〜0.38となるようにした。上火170℃、下火170℃で25分間焼成した。
生地の寝かし時間を0分、60分とした場合の焼成後のケーキの比容積を測定した。その結果を表9および図7に示す。
ホスホリパーゼを添加しない比較例5では、生地を60分間寝かした後で焼成した場合に、寝かさなかった場合と比較して約5%の比容積の低下が認められた。ホスホリパーゼを卵黄に対して0.2%〜0.4%添加した実施例11〜12では、生地を60分間寝かした後で焼成しても全く比容積の低下がなかった。ホスホリパーゼを卵黄に対して0.6%添加した実施例13でも、ホスホリパーゼを添加しない比較例5よりも大きなケーキが得られた。

Claims (8)

  1. ホスホリパーゼを含む、洋菓子のボリューム維持剤。
  2. 洋菓子生地に請求項1に記載のボリューム維持剤を添加する工程、および洋菓子生地を焼成する工程を含む、洋菓子の製造方法。
  3. さらに、洋菓子生地を寝かせる工程を含む、
    請求項2に記載の製造方法。
  4. 下記式:
    反応率(%)=(LPC+LPE)/(LPC+LPE+PC+PE)×100
    により算出される、焼成前の生地の反応率が8〜40%である、
    請求項2または3に記載の製造方法。
  5. 乳化剤を添加する工程を含まない、
    請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 請求項2〜5のいずれかに記載の製造方法により製造された洋菓子。
  7. 乳化剤の含有量が生地重量に対して3%以下である、請求項6に記載の洋菓子。
  8. 洋菓子生地に請求項1に記載のボリューム維持剤を添加する工程、および洋菓子生地を焼成する工程を含む、洋菓子のボリューム維持方法。
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