JP2020016731A - 画像形成装置 - Google Patents

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Koji Nihonyanagi
亘児 二本柳
内山 高広
Takahiro Uchiyama
高広 内山
洋彦 相場
Hirohiko Aiba
洋彦 相場
雅人 迫
Masato Sako
雅人 迫
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Abstract

【課題】簡易で装置の小型化にも有利な構成で像加熱装置を通過した後の記録材の温度を推定し、加熱部材による加熱を制御することのできる画像形成装置を提供する。【解決手段】画像形成装置は、像加熱装置と、温度検知手段による加熱部材の温度の検知結果を用いて、第1の回転体、第2の回転体、及びニップ部を通過した後の記録材の温度を、それぞれに対応して予め設定された演算式を用いた差分法による演算によりリアルタイムで推定し、推定した記録材の温度と、予め設定された目標温度と、の偏差に基づいて加熱部材に供給する電力を制御する制御手段と、を有し、制御手段が、第1及び第2の回転体の温度を、第1及び第2の回転体が回転しており記録材がニップ部を通過している時と、第1及び第2の回転体が回転しており記録材がニップ部を通過していない時と、第1及び第2の回転体が回転していない時と、で異なる演算式を用いて推定する。【選択図】図4

Description

本発明は、画像を担持した記録材を加熱する像加熱装置を備えた、電子写真方式や静電記録方式などを用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置では、紙などの記録材(以下、「用紙」ともいう。)に形成されたトナー像を加熱溶融させることにより用紙に定着させる、像加熱装置である定着装置が用いられている。定着装置は、一般に、加熱部材としてのヒータに電力を供給して定着ローラや定着ベルトなどの定着部材を加熱し、その熱でトナー像を加熱溶融させて用紙に定着させる処理を行う。定着品質を一定に保つためには、定着装置を通過した後の用紙の温度を一定にすることが求められる。
特許文献1では、定着装置を通過した後の用紙の温度を一定に保つ方法として、次のような方法が提案されている。つまり、定着装置を通過した後の用紙の温度を非接触式の温度センサで測定し、用紙の温度が一定になるように、ヒータに供給する電力を調整する。
また、特許文献2では、次のような方法が提案されている。つまり、定着部材温度、加圧部材温度、定着前の用紙温度を検知し、その検知結果を用いて伝熱方程式により定着後の用紙温度をリアルタイムで推定する。そして、推定した用紙温度と、予め設定された目標とする用紙温度との偏差が最小になるように、ヒータに供給する電力を調整する。
特開平7−230231号公報 特許第5724500号
しかしながら、特許文献1の方法では、応答速度の速い非接触式の温度センサが必要であり、画像形成装置の製造コストが高くなりやすい。また、定着装置を通過した直後の用紙温度を測定する必要があるので、温度センサの配置場所は限定される。そのため、温度センサの位置によって画像形成装置の用紙搬送路が制約されるため、画像形成装置の小型化が難しくなることがある。
また、特許文献2の方法では、精度良く定着後の用紙温度を推定するためには、定着部材表面、加圧部材表面、定着前の用紙の各温度を検知するためにセンサが必要になる。そのため、このようにセンサを増やしていった場合には、画像形成装置の製造コストが高くなりやすい。また、定着部材の表面温度を検知するセンサとして、比較的安価な接触式センサを用いると、定着部材表面に傷跡がつき、これが出力画像へ光沢スジなどの影響を与えてしまう可能性がある。そのため、比較的高価な非接触式のセンサが必要となり、更にコストが高くなりやすくなる。
したがって、本発明の目的は、簡易な構成で、像加熱装置を通過した後の記録材の温度を推定して、像加熱装置による記録材の加熱を制御することのできる画像形成装置を提供することである。
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、第1の回転体と、前記第1の回転体を加熱する加熱部材と、前記第1の回転体と圧接してニップ部を形成する第2の回転体と、前記加熱部材を加熱するための電力を前記加熱部材に供給する電源と、前記加熱部材の温度を検知する温度検知手段と、を備え、画像を担持した記録材を前記ニップ部で前記第1の回転体と前記第2の回転体とで挟持して搬送しつつ加熱する像加熱装置と、前記温度検知手段による前記加熱部材の温度の検知結果を用いて、前記第1の回転体、前記第2の回転体、及び前記ニップ部を通過した後の記録材の温度を、それぞれに対応して予め設定された演算式を用いた差分法による演算によりリアルタイムで推定し、推定した記録材の温度と、予め設定された目標温度と、の偏差に基づいて前記加熱部材に供給する電力を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記第1及び第2の回転体の温度を、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過している時と、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過していない時と、前記第1及び第2の回転体が回転していない時と、で異なる前記演算式を用いて推定することを特徴とする画像形成装置である。
本発明の他の態様によると、第1の回転体と、前記第1の回転体を加熱する加熱部材と、前記第1の回転体と圧接してニップ部を形成する第2の回転体と、前記加熱部材を加熱するための電力を前記加熱部材に供給する電源と、前記加熱部材で消費された電力を検知する電力検知手段と、を備え、画像を担持した記録材を前記ニップ部で前記第1の回転体と前記第2の回転体とで挟持して搬送しつつ加熱する像加熱装置と、前記電力検知手段による前記加熱部材で消費された電力の検知結果を用いて、前記第1の回転体、前記加熱部材、前記第2の回転体、及び前記ニップ部を通過した後の記録材の温度を、それぞれに対応して予め設定された演算式を用いた差分法による演算によりリアルタイムで推定し、推定した記録材の温度と、予め設定された目標温度と、の偏差に基づいて前記加熱部材に供給する電力を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記第1及び第2の回転体の温度を、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過している時と、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過していない時と、前記第1及び第2の回転体が回転していない時と、で異なる前記演算式を用いて推定することを特徴とする画像形成装置が提供される。
本発明の他の態様によると、第1の回転体と、前記第1の回転体を加熱する加熱部材と、前記第1の回転体と圧接してニップ部を形成する第2の回転体と、前記加熱部材を加熱するための電力を前記加熱部材に供給する電源と、前記第1の回転体の温度を検知する温度検知手段と、を備え、画像を担持した記録材を前記ニップ部で前記第1の回転体と前記第2の回転体とで挟持して搬送しつつ加熱する像加熱装置と、前記温度検知手段による前記第1の回転体の温度の検知結果を用いて、前記第2の回転体、及び前記ニップ部を通過した後の記録材の温度を、それぞれに対応して予め設定された演算式を用いた差分法による演算によりリアルタイムで推定し、推定した記録材の温度と、予め設定された目標温度と、の偏差に基づいて前記加熱部材に供給する電力を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記第2の回転体の温度を、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過している時と、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過していない時と、前記第1及び第2の回転体が回転していない時と、で異なる前記演算式を用いて推定することを特徴とする画像形成装置が提供される。
本発明によれば、簡易な構成で、像加熱装置を通過した後の記録材の温度を推定して、像加熱装置による記録材の加熱を制御することができる。
画像形成装置の概略断面図である。 実施例1の定着装置の模式的な断面図である。 実施例1における伝熱モデルを示す模式図である。 実施例1における制御の手順の概略を示すフローチャート図である。 実施例2の定着装置の模式的な断面図である。 実施例3の定着装置の模式的な断面図である。 実施例3における伝熱モデルを示す模式図である。 変形例における伝熱モデルを示す模式図である。 比較例における制御の手順の概略を示すフローチャート図である。
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例における画像形成装置1の概略断面図である。本実施例の画像形成装置1は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能なタンデム方式及び中間転写方式を採用したレーザープリンタである。
画像形成装置1は、それぞれY(イエロー)色、M(マゼンタ)色、C(シアン)色、K(ブラック)色のトナー像を形成する4つの画像形成部UY、UM、UC、UKを有する。各画像形成部UY、UM、UC、UKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。画像形成部Uは、像担持体としての感光ドラム2、帯電手段としての帯電ローラ3、露光手段としてのレーザースキャナ4、現像手段としての現像装置5、一次転写手段としての一次転写ローラ6、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーナ7などを有する。
回転する感光ドラム2の表面は、帯電ローラ3によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理された感光ドラム2の表面は、レーザースキャナ4によって走査露光され、感光ドラム2上に静電像(静電潜像)が形成される。レーザースキャナ4は、各感光ドラム2を露光する1つのユニットとして構成されている。感光ドラム2上に形成された静電像は、現像装置5によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム2上にトナー像が形成される。
各感光ドラム2に対向して、中間転写体としての中間転写ベルト8が配置されている。中間転写ベルト8の内周面側には、各感光ドラム2に対応して一次転写ローラ6が配置されている。一次転写ローラ6は、中間転写ベルト8を介して感光ドラム2に向けて押圧され、感光ドラム2と中間転写ベルト8とが接触する一次転写部(一次転写ニップ部)16を形成する。感光ドラム2上に形成されたトナー像は、一次転写部16において、一次転写ローラ6の作用によって、回転(周回移動)している中間転写ベルト8上に一次転写される。例えばフルカラー画像の形成時には、各感光ドラム2上に形成されたY、M、C、Kの各色のトナー像が、中間転写ベルト8上に重ね合わされるようにして順次一次転写される。
中間転写ベルト8の外周面側において、中間転写ベルト8の複数の張架ローラのうちの1つである二次転写対向ローラに対向する位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配置されている。二次転写ローラ12は、中間転写ベルト8を介して上記二次転写対向ローラに向けて押圧され、中間転写ベルト8と二次転写ローラ12とが圧接する二次転写部(二次転写ニップ部)13を形成する。中間転写ベルト8上に形成されたトナー像は、二次転写部13において、二次転写ローラ12の作用によって、中間転写ベルト8と二次転写ローラ12とに挟持されて搬送される用紙P上に二次転写される。用紙Pは、カセット9に収容されている。用紙Pは、カセット9から1枚ずつ分離されて給送される。この用紙Pは、レジストローラ対10を含む搬送路11を通って、所定の制御タイミングで二次転写部13へと搬送される。
トナー像が転写された用紙Pは、定着手段として像加熱装置である定着装置40へと搬送される。定着装置40は、未定着のトナー像を担持した用紙Pを加熱及び加圧することによって、トナー像を用紙P上に定着(溶融、固着)させる。トナー像の定着処理を受け、定着装置40から排出された用紙Pは、排出ローラ対14によって、画像形成装置1の装置本体の外部に設けられた排出トレイ15上に排出(出力)される。
また、一次転写時に感光ドラム2の表面に残った一次転写残トナーは、ドラムクリーナ7によって感光ドラム2の表面から除去されて回収される。また、二次転写時に中間転写ベルト8の表面に残った二次転写残トナーは、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーナ17によって中間転写ベルト8の表面から除去されて回収される。
なお、各画像形成部Uにおいて、感光ドラム2、帯電ローラ3、現像装置5及びドラムクリーナ7は、画像形成装置1の装置本体の所定の装着部に対して一体的に着脱可能なプロセスカートリッジを構成している。
2.定着装置
図2は、本実施例における定着装置40の模式的な断面図である。本実施例の定着装置40は、ベルト加熱方式及び加圧部材駆動方式を採用したオンデマンド定着装置である。
定着装置40は、大別して、ベルトユニット41と、ベルトユニット41と協働してニップ部(定着ニップ部)Nを形成するニップ形成部材としての加圧ローラ42と、を有する。
ベルトユニット41は、第1の回転体としての可撓性を有する無端状(円筒状)のベルトで構成された定着部材であるスリーブ(定着フィルム、定着ベルト)43を有する。また、ベルトユニット41は、スリーブ43の内部(中空部)に設けられ、スリーブ43を加圧ローラ42に圧接させるためのバックアップ部材を兼ねる、加熱部材(加熱体、熱源)としてのヒータ44を有する。また、ベルトユニット41は、ヒータ44を保持する保持部材としてのヒータホルダ45を有する。また、ベルトユニット41は、ヒータホルダ45を支持する支持部材としてのステイ46を有する。上記ヒータ44、ヒータホルダ45及びステイ46をスリーブ内部部材ともいう。スリーブ内部部材44〜46は、いずれもスリーブ43の長手方向(用紙Pの搬送方向と略直交する幅方向)に長い部材である。スリーブ内部部材44〜46は、スリーブ43を加圧ローラ42に圧接させるためのバックアップ機構を構成する。
ステイ46は、長手方向の一端部と他端部とがそれぞれスリーブ43の長手方向の両端部から外方に突出しており、その突出部に対してそれぞれフランジ部材(図示せず)が嵌合されて固定されている。スリーブ43は、ステイ46の長手方向の一端側と他端側のフランジ部材の互いに対向する面間において、スリーブ内部部材44〜46の外側にルーズに巻きかけられている。
本実施例では、スリーブ43は、エンドレスベルト状に形成された基層の外周に弾性層が形成され、その弾性層の外周に離型性層が形成されて構成されており、全体的に可撓性を有する。基層には、ポリイミドなどの樹脂系材料、又はSUSなどの金属系材料が用いられる。また、弾性層には、シリコーンゴムなどの耐熱性ゴムなどが用いられ、離型性層には、PTFE、PFAなどのフッ素樹脂などが用いられる。
本実施例では、ヒータ44は、発熱抵抗体層に対する通電により全体的に急峻な立ち上がり特性で昇温する低熱容量のセラミックヒータである。ヒータ44は、細長い基板を有する。基板は、アルミナや窒化アルミなどのセラミックで形成された良熱伝導性の絶縁性基板である。基板の裏面(スリーブ43の内周面と接触する面とは反対側の面)には、基板の長手方向に沿って発熱体としての抵抗発熱体の層が形成されている。抵抗発熱体層は、基板の長手方向における両端部の電極部(図示せず)から通電(電力が供給)されることにより発熱する。また、基板の裏面には、抵抗発熱体層をオーバーコートして絶縁ガラス層が形成されている。絶縁ガラス層は、外部の導電性部材との絶縁性を確保する役割の他、抵抗発熱体層の酸化などによる抵抗値変化を防ぐ役割(耐食機能)、機械的な損傷を防止する役割などを有する。抵抗発熱体層は、制御手段としての定着温度コントローラ(以下、単に「コントローラ」ともいう。)50によって制御される電源部E(PWM駆動回路51などを有する。)により電力が供給される。
ヒータホルダ45は、ヒータ44をスリーブ43を介して加圧ローラ42に圧接させるためのバックアップ部材としての役割と、スリーブ43の回転時の走行安定性を図るガイドとしての役割と、を有する。ヒータホルダ45には、十分な摺動、耐熱及び断熱特性を有する材料が用いられる。本実施例では、ヒータホルダ45には液晶ポリマー樹脂が用いられている。ヒータホルダ45の加圧ローラ42側の面には溝が形成されている。ヒータ44は、ヒータホルダ45に形成された上記溝に嵌合されて、ヒータホルダ45によって保持されている。
ヒータホルダ45の長手方向の略中央部には、上記ヒータホルダ45を貫通してヒータ44と接触可能なように、ヒータ44の温度を検知する温度検知手段としての温度検知素子であるサーミスタ47が設けられている。
ステイ46には、ヒータホルダ45を支持してニップ部Nに圧力を加えるのに十分な剛性を有する材料が用いられる。本実施例では、ステイ46は鉄製である。ステイ46は、ヒータホルダ45のヒータ44側の面とは反対側の面に押し当てられることで、ヒータホルダ45及びヒータ44に強度を持たせ、ニップ部Nを確保する。付勢手段としての付勢部材である加圧バネ(図示せず)によって、ステイ16を介してヒータホルダ45が加圧ローラ42に向けて加圧されることで、ヒータホルダ45及びヒータ44と加圧ローラ42とが圧接してニップ部Nが形成される。
第2の回転体としての加圧ローラ42は、芯金(基材)48と、芯金48の外周に同心一体的に成形被覆された弾性層49と、を有して構成される。弾性層49には、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの耐熱ゴムなどが用いられる。弾性層49の外周に、更に表層(離型層)が設けられていてもよい。
3.定着動作
加圧ローラ42の芯金48に対して、駆動手段としての駆動モータ70の駆動力が駆動力伝達機構71を介して伝達される。これにより加圧ローラ42が駆動回転体として所定の周速度で回転駆動される。加圧ローラ42が回転駆動されることで、ヒータホルダ45及びヒータ44と加圧ローラ42とに挟持されているスリーブ43は、その内周面がヒータ44に密着して摺動しながら従動して回転する。
また、ヒータ44の抵抗発熱体層に対して電源部Eから給電されることにより、抵抗発熱体層が発熱してヒータ44が急峻な立ち上がり特性で昇温する。また、詳しくは後述するように、ヒータ44の温度がサーミスタ47で検知され、この検知温度情報がコントローラ50にフィードバックされる。
定着装置40に搬送された未定着のトナー像を担持した用紙Pは、ニップ部Nに進入してスリーブ43と加圧ローラ42とによって挟持されて搬送される。これにより、ニップ部Nで用紙Pの加熱及び加圧が行われ、トナー像は用紙Pに固着像として定着される。ニップ部Nを通過した用紙Pは、スリーブ43の面から曲率分離されて定着装置40から排出され、画像形成装置1の装置本体の外部に向けて搬送されていく。
本実施例では、コントローラ50は、演算処理を行う中心的素子であるCPUなどを備えたマイクロコンピュータで構成されている。コントローラ50には、記憶手段としてのROM、RAMなどのメモリ(記憶媒体)60が接続されている。書き換え可能な記憶媒体であるRAMには、コントローラ50に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。コントローラ50とメモリ60とは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。また、コントローラ50には、画像形成装置1の内部又は外部の温度を検知する環境検知手段として、画像形成装置1の筐体の内部の温度を検知する環境センサ80が接続されている。環境センサ80は、更に湿度を検知するものであってよい。また、コントローラ50には、操作部90が接続されている。操作部90は、画像形成装置1の電源をON/OFFする電源スイッチを有し、更に情報を表示する表示手段としての表示部、情報を入力するための入力手段としての入力部などを有していてよい。本実施例では、ユーザーやサービス担当者などの操作者が操作部90において画像形成装置1の電源をONとすることにより、コントローラ50への給電が行われて、詳しくは後述するリアルタイムでの温度の推定が可能となる。
4.定着温度制御
次に、本実施例における定着装置40の温度(定着温度)の制御方式について説明する。
本実施例では、サーミスタ47により検知されたヒータ44の温度[℃]の情報と、予め設定されたニップ部Nを通過した後の用紙Pの目標温度[℃]の情報とが、コントローラ50へ入力される。用紙Pの目標温度の情報は、予め設定されてメモリ60に記憶されている。コントローラ50は、詳しくは後述するように、サーミスタ47によるヒータ44の温度の検知結果を用いて、ニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度をリアルタイムで推定する。コントローラ50は、この推定した用紙Pの温度と、予め設定されている用紙Pの目標温度と、の偏差の情報に基づいて、電源部Eからヒータ44に供給する電力を単位時間当たりの通電時間(Duty)として算出する。そして、コントローラ50は、この算出した通電時間に応じて、電源部EのPWM駆動回路51を通して、ヒータ44の抵抗発熱体に電力を供給する。これにより、ニップ部Nを通過する用紙P及びトナーに与える熱量が所定の状態になるように、ヒータ44に供給する電力を制御する。なお、用紙Pの目標温度は、用紙Pの種類ごとに設定されていてよい。その場合、操作部90や、画像形成装置1と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置などにおいて指定された、印字動作に用いられる用紙Pの種類に対応する用紙Pの目標温度が選択されて用いられる。用紙Pの種類とは、普通紙、厚紙、薄紙、光沢紙、コート紙などの一般的特徴に基づく属性、メーカー、銘柄、品番、坪量、厚さ、サイズなど、用紙Pを区別可能な任意の情報を包含するものである。
ここで、ニップ部Nを通過した後の用紙Pに対するトナーの接着強度としての、定着品質を略一定にするためには、ニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度を略一定にすることが求められる。本実施例では、用紙Pの温度を検知するのではなく、用紙Pの温度をリアルタイムで推定し、この推定した用紙Pの温度が略一定になるように、ヒータ44の目標温度を設定する。
次に、本実施例におけるニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度の推定方法について説明する。図3は、定着装置40における各部材(用紙Pを含む)間の熱伝導を簡略化して表した伝熱モデルの模式図である。図3中の矢印は、互いに接触する部材間の伝熱経路を示している。また、図3(a)は、用紙Pがニップ部Nを通過している時の伝熱モデルであり、図3(b)は、用紙Pが通過していない時の伝熱モデルである。
図3(a)の伝熱モデルを用いて、印字動作中(スリーブ43及び加圧ローラ42が回転している時)に用紙Pがニップ部Nを通過している時の各部材の温度は、次のようにして推定することができる。この時の各部材の温度を推定するための式は、サンプリングの回数をk(サンプリングの時間周期は、例えば10m秒)、nをk以下の整数とすると、下記式1〜式5の差分方程式で表される。下記式1〜式5の係数S1、R1、H1、L1、U1、P1、S2、R2、H2、P2は、実験により測定した各部材の温度(ヒータホルダ温度、スリーブ温度、用紙温度、加圧ローラ上層温度、加圧ローラ下層温度)の測定値と、各式から得られた推定値と、の間の誤差が最小になるように(すなわち、許容し得る程度に十分に小さくなるように)フィッティングされる。また、本実施例では、各部材の温度の初期値として、環境センサ80により取得された温度(典型的には室温)が用いられる。なお、印字動作中に用紙Pがニップ部Nを通過している時には、スリーブ43及び加圧ローラ42は回転している。なお、係数P1、P2は、用紙Pの種類ごとに設定されていてよい。その場合、上記同様にして指定された、印字動作に用いられる用紙Pの種類に対応する係数P1、P2が選択されて用いられる。
Tp(k)=S1{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)}+R1{Tr(k-1)+…+Tr(k-n)} (式1)
Ts(k)=H1{Th(k-1)+…+Th(k-n)}+L1{Tl(k-1)+…+Tl(k-n)}+P1{Tp(k-1)+…+Tp(k-n)} (式2)
Tl(k)=H2{Th(k-1)+…+Th(k-n)}+S2{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)} (式3)
Tr(k)=P2{Tp(k-1)+…+Tp(k-n)}+U1{Tu(k-1)+…+Tu(k-n)} (式4)
Tu(k)=R2{Tr(k-1)+…+Tr(k-n)} (式5)
[ただし、
Tp:用紙温度
Ts:スリーブ温度
Th:ヒータ温度
Tl:ヒータホルダ温度
Tr:加圧ローラ上層温度(本実施例では弾性層49の表面の温度)
Tu:加圧ローラ下層温度(本実施例では芯金48の温度)]
つまり、用紙Pの温度Tpは、スリーブ43の温度Ts、及び加圧ローラ42の上層(本実施例では加圧ローラ42の外周面を構成する弾性層49の表面)の温度Trのそれぞれの、初期値から所定の時間間隔ごとの差分を逐次加算していった値に予め設定された係数をかけ、それらの値を加算することで、ある時点での初期値からの差分を累積した値として逐次求めることができる。ここで、スリーブ43及び加圧ローラ42は、それぞれ用紙Pに接触する部材である。同様に、スリーブ43の温度Ts、ヒータホルダ45の温度Tl、加圧ローラ42の上層の温度Tr、加圧ローラ42の下層(本実施例では芯金48)の温度Tuは、それぞれ当該部材に接触する部材の温度の、初期値からの所定の時間間隔ごとの差分を逐次加算していった値に予め設定された係数をかけ、その値を加算(接触する部材が単数の場合は加算は必要ない)することで、ある時点での初期値からの差分を累積した値として逐次求めることができる。また、本実施例では、ヒータ温度Thは、サーミスタ47の検知結果を用いる。
また、本実施例では、印字動作中に用紙Pがニップ部Nを通過している時と通過していない時とに応じて、各部材の温度の推定式を切り替える。つまり、上記と同様にして、図3(b)の伝熱モデルを用いて、印字動作中に用紙Pがニップ部Nを通過していない時の各部材の温度(スリーブ温度Ts及び加圧ローラ上層温度Tr)は、下記式6、式7で推定できる。下記式6、式7の係数R3、S3は、実験による測定値と各式による推定値との間の誤差が最小になるようにフィッティングされる。スリーブ温度Ts及び加圧ローラ上層温度Tr以外の部材の温度(ヒータホルダ温度Tl、加圧ローラ下層温度Tu)は、用紙Pがニップ部Nを通過している時と同じ式(式3、式5)を用いて推定できる。スリーブ43、加圧ローラ42の上層以外については、伝熱モデルとしては印字動作中に用紙Pがニップ部Nを通過していない時(図3(b))も、印字動作中に用紙Pがニップ部Nを通過している時(図3(a))も同じであるからである。ここで、印字動作中に用紙PがニップNを通過していない時とは、スリーブ43及び加圧ローラ42は回転しているが、用紙PがニップNを通過していない時である。
Ts(k)=H1{Th(k-1)+…+Th(k-n)}+L1{Tl(k-1)+…+Tl(k-n)}+R3{Tr(k-1)+…+Tr(k-n)} (式6)
Tr(k)=S3{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)}+U1{Tu(k-1)+…+Tu(k-n)} (式7)
そして、本実施例では、印字動作中(スリーブ43及び加圧ローラ42が回転している時)には、推定された用紙温度Tp(k)と、予め設定された用紙Pの目標温度TgPと、の偏差e(k)に基づいて、ヒータ44の目標温度TgHが決定される。具体的には、本実施例では、コントローラ50は、下記式8で表されるPI制御式によりヒータ44の目標温度TgHを求める。なお、ヒータ44のフィードバック制御方法自体は利用可能な任意の方法を採用することができる。
TgH=P*e(k)+I*Σe(k) (式8)
[ただし、
e(k)=TgP-Tp(k)
TgP:ニップ部Nを通過した後の用紙Pの目標温度]
また、本実施例では、定着装置40の動作状況(スリーブ43及び加圧ローラ42が回転しているか否か)に応じて、各部材の温度の推定式を切換える。つまり、定着装置40のスリーブ43及び加圧ローラ42は、印字動作中は駆動モータ70の駆動力により回転しているが、印字動作が開始する前及び印字動作が終了した後には停止状態になる。本実施例では、印字動作中も、印字動作の開始前及び終了後も、各部材の温度をリアルタイムで計算して推定している。ここで、停止状態での伝熱モデルとしては、図3(b)に示す伝熱モデルを用いることができるが、各部材の温度の推定式としては下記式9〜式12を用いる。定着装置40の回転体が回転している時の回転体の回転に伴う熱移動は、回転体が回転していない時の熱移動とは異なるからである。下記式9〜式12の係数H4、L4、U4、S4、R4、H5、S5、R5は、実験による測定値と各式による推定値との間の誤差が最小になるようにフィッティングされる。
Ts(k)=H4{Th(k-1)+…+Th(k-n)}+L4{Tl(k-1)+…+Tl(k-n)}+R4{Tr(k-1)+…+Tr(k-n)} (式9)
Tl(k)=H5{Th(k-1)+…+Th(k-n)}+S4{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)} (式10)
Tr(k)=S5{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)}+U4{Tu(k-1)+…+Tu(k-n)} (式11)
Tu(k)=R5{Tr(k-1)+…+Tr(k-n)} (式12)
このように、本実施例では、コントローラ50は、サーミスタ47によるヒータ44の温度の検知結果を用いて、スリーブ43、ヒータホルダ45、加圧ローラ42、及びニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度を推定する。このとき、コントローラ50は、上記各部材のそれぞれに対応して予め設定された演算式を用いた差分法による演算によりリアルタイムで上記各部材の温度を推定する。つまり、上述の各推定式の係数は、予め設定されてメモリ60に記憶されている。本実施例では、コントローラ50は、画像形成装置1の電源がONとされ、コントローラ50への給電が開始されると、ヒータ44への給電が開始される前に、可及的に早期に用紙Pの温度を推定する演算を開始する。このとき、本実施例では、コントローラ50は、各部材の温度の初期値として、環境センサ80によって取得した温度(典型的には室温)を用いる。なお、通常、画像形成装置1には、転写電圧の制御などの種々の動作設定の制御などのために環境センサ80は設けられている。
本実施例では、コントローラ50は、画像形成装置1の電源がONの間は、所定の頻度で実質的に常に各部材の温度の推定を行う。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、十分な精度で温度を推定することができれば、画像形成装置1の電源がONの間に、温度の推定を行わない期間があってもよい。例えば、画像形成装置1の電源がONされてから、最初のプリントジョブのために定着装置100の駆動(スリーブ43及び加圧ローラ49の回転)が開始されるまでの期間の温度の推定を省略するなどしてよい。また、制御回路などの一部の構成を除いて給電が停止されるスリーブ状態の期間の温度の推定を省略するなどしてもよい。なお、プリントジョブとは、一つの開始指示により開始される単一又は複数の記録材に画像を形成して出力する一連の動作のことを言う。また、印字動作中と定着装置40の停止状態とで、温度を推定する頻度(時間間隔)を異ならせてもよい。例えば印字動作中には10m秒間隔で温度を推定し、定着装置40の停止状態ではそれよりも長い時間間隔で温度を推定するようにすることができる。
そして、本実施例では、コントローラ50は、ニップ部Nを用紙Pが通過している場合、ニップ部Nを用紙Pが通過していない場合、定着装置40の回転体が回転していない場合にわけて各部の温度を計算し推定する。ニップ部Nを用紙Pが通過している場合の図3(a)に示す伝熱モデルを「モデルA」ともいう。また、ニップ部Nを用紙Pが通過していない場合の図3(b)の伝熱モデルを「モデルB1」ともいう。また、定着装置40の回転体が回転していない場合の図3(b)の伝熱モデルを「モデルB2」ともいう。本実施例における、上記各場合のそれぞれにおいて用いる推定式をまとめると下記表1のようになる。
Figure 2020016731
なお、図3に示した伝熱モデルでは、加圧ローラ42を上層と下層との2個の部材に分割している。これは、部材の推定温度と、実験による測定温度との誤差を少なくするためである。本実施例では、各部材の温度を上記推定式のような一次式で計算している。つまり、各部材の温度は均一な温度として扱い、各部材の内部で温度勾配を持たないモデルとして計算している。ここで、本実施例の定着装置40を構成する部材の中で、加圧ローラ42は他の部材より熱容量が極端に大きく、また加圧ローラ42は、その表面からのみ加熱されている。そのため、本実施例の構成では、印字動作中の実際の加圧ローラ42は、その表面から内部へ向かって比較的大きな温度勾配を持っている。つまり、伝熱モデルにおいて加圧ローラ42を単層として扱うと、実際の加圧ローラ42の温度分布との差が大きくなってしまう。そのため、上記推定式において係数をフィッティングしても、測定温度との誤差が大きくなってしまう。
本実施例では、加圧ローラ42の弾性層49(より詳細にはその外周面)を上層、弾性層49に接触している芯金48を下層として、加圧ローラ42を2個の部材に分割し、それぞれの温度を推定した。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、加圧ローラ42の弾性層49をより外周側の所定の厚さの上層と、この上層に接触しているより内周側の下層と、の2個の部材(部分)に分割して、それぞれの温度を推定してもよい。また、加圧ローラ42を3個以上の部材(部分)に分割して、それぞれの温度を推定してもよい。例えば、弾性層49を2個の部材(部分)に分割してそれぞれの温度を推定すると共に、更に芯金48の温度を推定してもよい。弾性層49のみを3個以上の部材(部分)に分割してそれぞれの温度を推定することもできる。一方、像加熱装置の第2の回転体の熱容量が小さく、上述のような温度勾配による誤差が許容し得る構成(ベルトなど)の場合には、第2の回転体を厚さ方向に複数の部分に分割して各部分の温度を推定しなくてもよい。また、像加熱装置の第1の回転体の熱容量が大きく、上述のような温度勾配による誤差が無視できない構成(ローラなど)の場合には、第1の回転体を厚さ方向に複数の部分に分割して各部分の温度を推定してもよい。つまり、第1及び第2の回転体のうち少なくとも1つの温度として、該少なくとも1つを厚さ方向に複数の部分に分割した各部分の温度を、各部分に対応して予め設定された演算式を用いて推定することができる。なお、第1、第2の回転体の厚さ方向は、より詳細にはニップ部Nにおける接線と略直交する方向である。
また、本実施例では、ヒータホルダ45は、ヒータ44と共に加圧ローラ42に対してスリーブ43をバックアップする。また、本実施例では、ヒータホルダ45は、スリーブ43をガイドする。このように、本実施例ではヒータホルダ45がスリーブ43と接触するため、ヒータホルダ45の温度を推定したが、例えばヒータホルダ45がスリーブ43に接触しない構成の場合、ヒータホルダ45の温度は推定しなくてよい。
5.制御フロー
次に、本実施例における各部材の温度を推定する動作の手順について説明する。図4は、本実施例における温度推定動作の手順の概略を示すフローチャート図である。
コントローラ50は、画像形成装置1の電源がONされると(S101)、定着装置40の回転体を駆動するための駆動モータ70がONされているか否かを判断する(S102)。コントローラ50は、S102で駆動モータ70がONされている(「Yes」)と判断した場合は、用紙Pがニップ部Nを通過しているか否かを判断する(S103)。コントローラ50は、S103で用紙Pがニップ部Nを通過している(「Yes」)と判断した場合は、モデルAの推定式を用いて各部材の温度を計算し(S104)、S103の判断へ戻る。一方、コントローラ50は、S103で用紙Pがニップ部Nを通過していない(「No」)と判断した場合は、モデルB1の推定式を用いて各部材の温度を計算し(S105)、S102の判断へ戻る。
また、コントローラ50は、S102で駆動モータ70がONされていない(「No」)と判断した場合は、モデルB2の推定式を用いて各部材の温度を計算し(S106)、S107へ移行する。そして、コントローラ50は、画像形成装置1の電源がONされているか否かを判断し(S107)、電源がONの場合はS102へ戻り、電源がONではない場合は温度推定動作を終了する。
以上説明したように、本実施例では、ニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度をリアルタイムで推定する。そして、この推定した用紙Pの温度が略一定になるように、ヒータ44の目標温度を設定することで、定着品質を略一定にすることができる。本実施例によれば、センサの数を増やすことなく定着装置40を通過した後の用紙Pの温度を略一定に制御することができるので、定着品質を略一定にしつつ、装置構成の簡易化、小型化を図ることができる。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
1.本実施例の概要
図5は、本実施例における定着装置40の模式的な断面図である。実施例1では、サーミスタ47を用いてヒータ44の温度を検知した。これに対し、本実施例では、定着装置40にはヒータ44の温度を検知するサーミスタ47(図2)は設けられておらず、ヒータ44の温度はヒータ44に供給される電力に関する情報に基づいて推定する。
2.定着温度制御
次に、本実施例における定着装置40の温度(定着温度)の制御方式について説明する。
本実施例では、電力検知手段としての電力検知回路52によって、ヒータ44へ投入された電力が検知される。電力検知回路52により検知された電力[W]の情報と、予め設定されたニップ部Nを通過した後の用紙Pの目標温度[℃]の情報とが、コントローラ50へ入力される。コントローラ50は、詳しくは後述するように、電力検知回路52による電力の検知結果を用いて、ニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度をリアルタイムで推定する。コントローラ50は、この推定した用紙Pの温度と、予め設定されている用紙Pの目標温度と、の偏差の情報に基づいて、電源部Eからヒータ44に供給する電力を単位時間当たりの通電時間(Duty)として算出する。そして、コントローラ50は、この算出した通電時間に応じて、電源部EのPWM駆動回路51を通して、ヒータ44の抵抗発熱体に電力を供給する。これにより、ニップ部Nを通過する用紙P及びトナーに与える熱量が所定の状態になるように、ヒータ44に供給する電力を制御する。
次に、本実施例におけるニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度の推定方法について説明する。定着装置40における各部材(用紙Pを含む)の温度を推定するめの伝熱モデルとしては、実施例1で説明したものと同じ図3に示す伝熱モデルを使用する。また、ヒータ温度Th以外の部材の温度(用紙温度Tp、スリーブ温度Ts、ヒータホルダ温度Tl、加圧ローラ上層温度Tr、加圧ローラ下層温度Tu)は、実施例1と同じ推定式を用いて推定できる。なお、本実施例においても、実施例1と同様に、各部材の温度の初期値として、環境センサ80により取得された温度(典型的には室温)が用いられる。
ヒータ44の温度を推定するための式は、サンプリングの回数をk(サンプリングの時間周期は、例えば10m秒)、nをk以下の整数とすると、下記式13の差分方程式で表される。下記式13の係数S6、L6、αは、実験により測定した各部材の温度(ヒータ温度、ヒータホルダ温度、スリーブ温度、用紙温度、加圧ローラ上層温度、加圧ローラ下層温度)の測定値と、下記式から得られた推定値と、の間の誤差が最小になるようにフィッティングされる。また、本実施例では、ヒータ44で消費された電力Qは、電力検知回路52の検知結果を用いる。
Th(k)=S6{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)}+L6{Tl(k-1)+…+Tl(k-n)}+αQ (式13)
[ただし、Q:ヒータ44で消費された電力]
図3(a)の伝熱モデルを用いて、印字動作中に用紙Pがニップ部Nを通過している時の用紙温度Tpは式1、スリーブ温度Tsは式2、ヒータホルダ温度Tlは式3、加圧ローラ上層温度Trは式4、加圧ローラ下層温度Tuは式5を用いて推定できる。上述のように、ヒータ温度Thは、上記式13を用いて推定できる。
また、図3(b)の伝熱モデルを用いて、印字動作中に用紙Pがニップ部Nを通過していない時のスリーブ温度Tsは式6、ヒータホルダ温度Tlは式3、加圧ローラ上層温度Trは式7、加圧ローラ下層温度Tuは式5を用いて推定できる。上述のように、ヒータ温度Thは、上記式13を用いて推定できる。
さらに、定着装置40が停止状態にある時のスリーブ温度Tsは式9、ヒータホルダ温度Tlは式10、加圧ローラ上層温度Trは式11、加圧ローラ下層温度Tuは式12を用いて推定できる。上述のように、ヒータ温度Thは、上記式13を用いて推定できる。
本実施例における、ニップ部Nを用紙Pが通過している場合、ニップ部Nを用紙Pが通過していない場合、定着装置40の回転体が回転していない場合のそれぞれにおいて用いる推定式をまとめると下記表2のようになる。
Figure 2020016731
そして、本実施例においても、実施例1と同様に、推定された用紙温度Tp(k)と、予め設定された目標とする用紙温度TgPと、の偏差e(k)に基づいて、ヒータ44の目標温度TgHが決定される。
また、本実施例における各部材の温度を推定する動作の手順は、図4のフローチャート図を参照して説明した実施例1のものと同様である。
以上説明したように、本実施例では、ヒータ44に投入された電力を検知することで、ニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度をリアルタイムで推定する。そして、この推定した用紙Pの温度が略一定になるように、ヒータ44の目標温度を設定することで、定着品質を略一定にすることができる。本実施例によれば、サーミスタ44を省略することができるので、装置構成の更なる簡易化、小型化を図ることができる。
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
1.本実施例の概要
図6は、本実施例における定着装置40の模式的な断面図である。実施例1では、ヒータ44の温度を、サーミスタ47を用いて検知した。これに対し、本実施例では、スリーブ43(より詳細にはその内周面)の温度を検知する。
本実施例では、定着装置40は、スリーブ43(より詳細にはその内周面)の温度を検知する温度検知手段としてのスリーブサーミスタ53を有する。スリーブサーミスタ53は、弾性支持部材54を介して、ヒータホルダ45の長手方向の略中央部に取り付けられており、スリーブ43の長手方向の略中央部の内周面の温度を検知する。スリーブサーミスタ53は、スリーブ43の内周面に弾性的に当接している。これにより、回転するスリーブ43のスリーブサーミスタ53と当接する面が波打つなどの位置変動が生じたとしても、スリーブサーミスタ53がこれに追従してスリーブ43の内周面との良好な接触状態が維持される。なお、本実施例では、スリーブ43は熱容量は小さいため、内周面の温度と外周面の温度との温度差は十分に小さい。
2.定着温度制御
次に、本実施例における定着装置40の温度(定着温度)の制御方式について説明する。
本実施例における定着温度の制御方式は、実施例1と同様である。つまり、本実施例では、スリーブサーミスタ53により検知されたスリーブ43の温度[℃]の情報と、予め設定されたニップ部Nを通過した後の用紙Pの目標温度[℃]の情報とが、コントローラ50へ入力される。コントローラ50は、詳しくは後述するように、スリーブサーミスタ53によるスリーブ43の温度の検知結果を用いて、ニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度をリアルタイムで推定する。コントローラ50は、この推定した用紙Pの温度と、予め設定されている用紙Pの目標温度と、の偏差の情報に基づいて、電源部Eからヒータ44に供給する電力を単位時間当たりの通電時間(Duty)として算出する。また、コントローラ50は、この算出した通電時間に応じて、電源部EのPWM駆動回路51を通して、ヒータ44の抵抗発熱体に電力を供給する。これにより、ニップ部Nを通過する用紙P及びトナーに与える熱量が所定の状態になるように、ヒータ44に供給する電力を制御する。
次に、本実施例におけるニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度の推定方法について説明する。図7は、定着装置40における各部材(用紙Pを含む)間の熱伝導を簡略化して表した伝熱モデルの模式図である。図7中の矢印は、互いに接触する部材間の伝熱経路を示している。また、図7(a)は、用紙Pがニップ部Nを通過している時の伝熱モデルであり、図7(b)は、用紙Pが通過していない時の伝熱モデルである。本実施例では、スリーブ43の温度をスリーブサーミスタ53で検知できるため、温度を推定する必要がある部材の数が実施例1よりも少なくなる。つまり、用紙Pの温度を推定するためには、次の部材の温度を推定することが望まれる。まず、用紙Pに接触可能な部材である。また、温度検知手段と用紙Pとの間に存在する部材のうち温度検知手段によって直接的に温度が検知されない部材(ここでは「中間部材」ともいう。)である(用紙Pと接触可能な部材であってよい。)。また、上記中間部材に接触する部材である。実施例1では、スリーブ43と加圧ローラ42とが用紙Pに接触可能であり、スリーブ43は上記中間部材に相当し、ヒータホルダ45がこの中間部材に接触する。そのため、実施例1では、スリーブ43、ヒータホルダ45、及び加圧ローラ42の温度を推定して、用紙Pの温度を推定した。これに対して、本実施例では、スリーブ43と加圧ローラ42とが用紙Pに接触可能であり、スリーブ43の温度がスリーブサーミスタ53によって検知される。そのため、本実施例では、用紙Pの温度を推定するためには、加圧ローラ42の温度を推定すればよい。したがって、本実施例では、実施例1よりも少ない計算式で用紙Pの温度を推定できるので、コントローラ50の計算負荷を低減することができる。
図7(a)の伝熱モデルを用いて、印字動作中(スリーブ43及び加圧ローラ42が回転している時)に用紙Pがニップ部Nを通過している時の各部材の温度は、次のようにして推定することができる。この時の各部材の温度を推定するための式は、サンプリングの回数をk(サンプリングの時間周期は、例えば10m秒)、nをk以下の整数とすると、下記式14〜式16の差分方程式で表される。下記式14〜式16の係数S7、R7、U7、P7、R8は、実験により測定した各部材の温度(スリーブ温度、用紙温度、加圧ローラ上層温度、加圧ローラ下層温度)の測定値と、各式から得られた推定値と、の間の誤差が最小になるようにフィッティングされる。また、本実施例では、各部材の温度の初期値として、環境センサ80により取得された温度(典型的には室温)が用いられる。なお、係数P7は、用紙Pの種類ごとに設定されていてよい。その場合、前述と同様にして指定された、印字動作に用いられる用紙Pの種類に対応する係数P7が選択されて用いられる。
Tp(k)=S7{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)}+R7{Tr(k-1)+…+Tr(k-n)} (式14)
Tr(k)=P7{Tp(k-1)+…+Tp(k-n)}+U7{Tu(k-1)+…+Tu(k-n)} (式15)
Tu(k)=R8{Tr(k-1)+…+Tr(k-n)} (式16)
また、本実施例では、スリーブ温度Tsは、スリーブサーミスタ53の検知結果を用いる。
また、本実施例では、印字動作中に用紙Pがニップ部Nを通過している時と通過していない時とに応じて、各部材の温度の推定式を切り替える。つまり、上記と同様にして、図7(b)の伝熱モデルを用いて、印字動作中に用紙Pがニップ部Nを通過していない時の加圧ローラ上層温度Trは、下記式17で推定できる。下記式17の係数S9、U9は、実験による測定値と下記式による推定値との間の誤差が最小になるようにフィッティングされる。一方、加圧ローラ下層温度Tuは、用紙Pがニップ部Nを通過している時と同じ式(式16)を用いて推定できる。
Tr(k)=S9{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)}+U9{Tu(k-1)+…+Tu(k-n)} (式17)
そして、本実施例では、印字動作中(スリーブ43及び加圧ローラ42が回転している時)には、推定された用紙温度Tp(k)と、予め設定された用紙Pの目標温度TgPと、の偏差e(k)に基づいて、スリーブ43の目標温度TgSが決定される。具体的には、本実施例では、コントローラ50は、下記式18で表されるPI制御式によりスリーブ43の目標温度TgSを求める。なお、ヒータ44のフィードバック制御方法自体は利用可能な任意の方法を採用することができる。
TgS=P*e(k)+I*Σe(k) (式18)
[ただし、
e(k)=TgP-Tp(k)
TgP:ニップ部Nを通過した後の用紙Pの目標温度]
また、本実施例においても、実施例1と同様に、定着装置40の動作状況(スリーブ43及び加圧ローラ42が回転しているか否か)に応じて、各部材の温度の推定式を切換える。ここで、定着装置40が停止状態にある時の伝熱モデルとしては、図7(b)に示す伝熱モデルを用いることができるが、各部材の温度の推定式としては下記式19、式20を用いる。下記式19、式20の係数U10、R10、S10は、実験による測定値と各式による推定値との間の誤差が最小になるようにフィッティングされる。
Tr(k)=S10{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)}+U10{Tu(k-1)+…+Tu(k-n)} (式19)
Tu(k)=R10{Tr(k-1)+…+Tr(k-n)} (式20)
このように、本実施例においても、実施例1と同様に、ニップ部Nを用紙Pが通過している場合、ニップ部Nを用紙Pが通過していない場合、定着装置40の回転体が回転していない場合にわけて、各部材の温度をリアルタイムで推定する。本実施例における、ニップ部Nを用紙Pが通過している場合の図7(a)に示す伝熱モデルを「モデルC」ともいう。また、ニップ部Nを用紙Pが通過していない場合の図7(b)の伝熱モデルを「モデルD1」ともいう。また、定着装置40の回転体が回転していない場合の図7(b)の伝熱モデルを「モデルD2」ともいう。本実施例における、上記各場合のそれぞれにおいて用いる推定式をまとめると表3のようになる
Figure 2020016731
また、本実施例における各部材の温度を推定する動作の手順は、図4のフローチャート図を参照して説明した実施例1のものと同様である。
以上説明したように、本実施例では、スリーブ43の温度を検知して、ニップ部Nを通過した後の用紙Pの温度をリアルタイムで推定する。そして、この推定した用紙Pの温度が略一定になるように、スリーブ43の目標温度を設定することで、定着品質を略一定にすることができる。本実施例によれば、各部材の温度を推定するための計算負荷を実施例1よりも低減することができる。
[実験例]
次に、上述の実施例の効果を確認するための実験の結果について説明する。ここでは、上述の実施例1〜3、実施例1の変形例、及び比較例1〜2について同様の実験を行って定着品質を比較した。変形例、比較例1〜2の画像形成装置の構成及び動作は、以下に説明する点を除いて実施例1のものと実質的に同じである。変形例、比較例1〜2についても、実施例1と同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には同一の符号を付すものとする。
<変形例>
図8は、本変形例における各部材の温度を推定する伝熱モデルであり、加圧ローラ42を単層として扱っていること以外は、実施例1と同様である。本変形例では、各部材の温度を推定する式は、以下のようになる。本変形例において単層として扱われる加圧ローラ温度Tr以外の部材の温度は、実施例1と同様の式を用いて推定できる。また、下記式21、式22、式23の係数A、B、Cは、実験による測定値との各式による推定値との間の誤差が最小になるようにフィッティングされる。
・用紙Pがニップ部Nを通過している時
Tr(k)=A{Tp(k-1)+…+Tp(k-n)} (式21)
・用紙Pがニップ部Nを通過していない時
Tr(k)=B{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)} (式22)
・定着装置40が停止状態にある時
Tr(k)=C{Ts(k-1)+…+Ts(k-n)} (式23)
本変形例における、ニップ部Nを用紙Pが通過している場合、ニップ部Nを用紙Pが通過していない場合、定着装置40の回転体が回転していない場合のそれぞれにおいて用いる推定式をまとめると表4のようになる。
Figure 2020016731
<比較例1>
本比較例では、定着装置40の動作状況(スリーブ43及び加圧ローラ42が回転しているか否か)に応じては、各部材の温度の推定式を切り替えない。つまり、本比較例では、定着装置40の回転体が回転している時と、停止している時とで、伝熱モデルを切り替えておらず、各部材の温度を同一の推定式を用いて推定している。
図9(a)は、本比較例における各部材の温度を推定する動作の手順の概略を示すフローチャート図である。コントローラ50は、画像形成装置1の電源がONされると(S201)、用紙Pがニップ部Nを通過しているか否かを判断する(S202)。コントローラ50は、S202で用紙Pがニップ部Nを通過している(「Yes」)と判断した場合は、モデルAの推定式を用いて各部材の温度を計算し(S203)、S202の判断へ戻る。一方、コントローラ50は、S202で用紙Pがニップ部Nを通紙していない(「No」)と判断した場合は、モデルB1の推定式を用いて各部材の温度を計算し(S204)、S205へ移行する。そして、コントローラ50は、画像形成装置1の電源がONされているか否かを判断し(S205)、電源がONの場合はS202へ戻り、電源がONではない場合は温度推定動作を終了する。
<比較例2>
本比較例では、印字動作中(スリーブ43及び加圧ローラ42が回転している時)に用紙Pがニップ部Nを通過している時と通過していない時とに応じては、各部材の温度の推定式を切り替えない。つまり、本比較例では、印字動作中に用紙Pがニップ部Nを通過している時と、通過していない時とで、伝熱モデルを切り替えておらず、各部材の温度を同一の推定式を用いて推定している。
図9(b)は、本比較例における各部材の温度を推定する動作の手順の概略を示すフローチャート図である。コントローラ50は、画像形成装置1の電源がONされると(S301)、定着装置40の回転体を駆動するための駆動モータ70がONされているか否かを判断する(S302)。コントローラ50は、S302で駆動モータ70がONされている(「Yes」)と判断した場合は、モデルAの推定式を用いて各部材の温度を計算し(S303)、S305へ移行する。一方、コントローラ50は、S302で駆動モータ70がONされていない(「No」)と判断した場合は、モデルB2の推定式を用いて各部材の温度を計算し(S304)、S305へ移行する。そして、コントローラ50は、画像形成装置1の電源がONされているか否かを判断し(S305)、電源がONの場合はS302へ戻り、電源がONではない場合は温度推定動作を終了する。
<効果の比較>
実施例1〜3、変形例、及び比較例1〜2における定着品質を比較するために、A4サイズの用紙Pに毎分50枚印字できる画像形成装置1を用いて、以下の実験を行った。印字条件は、次のとおりである。画像形成装置1の電源ON後に連続で50枚のA4サイズの用紙Pに印字する(印字サイクル1)。その後、10分間の休止時間を経たのちに10枚のA4サイズの用紙Pに印字する(印字サイクル2)。その後、10分間の休止時間を経たのちに10枚のA4サイズの用紙Pに印字する(印字サイクル3)。このようにして合計70枚の印字を行い、それぞれの用紙Pに形成された試験画像の定着品質を評価した。定着品質の評価方法は、次のとおりである。試験画像として5mm角のハーフトーンのパッチ画像を用紙Pに形成する。次に、用紙P上のパッチ画像の反射濃度D0を測定する。測定器としては、マクベス社製反射濃度計RD914を用いた。次に、用紙P上のパッチ画像を不織布により10g/cmの圧力で擦り、擦った後の反射濃度D1を測定する。次に、下記式24を用いて定着率を算出する。そして、上記印字サイクル1〜3ごとに、印字した用紙Pの全ての定着率の平均値を算出した。結果を表5に示す。
D1/D0×100 (式24)
Figure 2020016731
実施例1〜3では、全ての印字サイクルにおいて、平均90%の定着率となり、略一定の定着品質が得られた。
変形例では、サイクル1における定着率が低下した。これは、変形例では、加圧ローラ42を単層として扱った伝熱モデルを用いて各部材の温度の推定を行ったためであると考えられる。つまり、変形例の構成では加圧ローラ42は他の部材より熱容量が極端に大きい。また、加圧ローラ42は、表面側から加熱される。50枚の連続印字を行うと、初期は表面と中心部とでの温度勾配が大きくなる。このとき、変形例では、加圧ローラ42を単層として扱い、温度勾配を持たないモデルとして加圧ローラ42の温度を推定している。そのため、推定される温度は、実際の加圧ローラ42の温度と乖離してしまう。その結果、用紙Pの温度の推定値も実際の温度と乖離して、定着率が悪化したものと考えられる。その後、印字動作が進むにつれて上記温度勾配は小さくなる。また、変形例では、定着装置40が停止状態にある時にも各部材の温度を推定している。そのため、サイクル2以降は比較的高い定着率が維持される。変形例については、例えば印字動作を開始する前に、ヒータ44の加熱を行いながらスリーブ43及び加圧ローラ49を回転させる空回転期間を設けることなどにより、サイクル1における定着率を改善することができる。ただし、画像の生産性などの観点から、実施例1〜3のように加圧ローラ49を複数の部材として扱う伝熱モデルに基づいて加圧ローラ49の温度を推定する構成の方が好ましい。
比較例1では、サイクル1における定着率は良好であった。しかし、サイクル2における定着率は低下し、サイクル3における定着率は更に低下した。これは、比較例1では、印字中と休止中、つまり定着装置40の回転体が回転している時と停止している時とで同一の伝熱モデルを用いて各部材の温度の推定を行ったためであると考えられる。つまり、サイクル1の定着率が良好なことから、定着装置40の回転体が回転している時の各部材の温度の推定式は、実際の温度にフィッティングしていると言える。しかし、その後定着装置40が停止状態にある時の各部材の推定温度と実際の温度とが乖離したため、徐々に定着率が低下したものと考えられる。
比較例2では、印字枚数が増加するにつれて定着率が低下した。これは、比較例1では、印字中の用紙Pがニップ部Nを通過している時と通過していない時とで同一の伝熱モデルを用いて各部材の温度の推定を行ったためであると考えられる。つまり、印字中の用紙Pがニップ部Nを通過しない期間が増えるにつれて、各部材の推定温度と実際の温度とが乖離してくるため、徐々に定着率が低下したものと考えられる。
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
画像を担持した記録材を加熱する像加熱装置は、典型的には未定着のトナー像を記録材に定着させる定着装置であるが、例えばトナー像が定着された記録材を再加熱して光沢を制御する装置などであってもよい。この場合も、像加熱装置を通過した後の記録材の温度を略一定とすることが、所望の結果を得る上で重要になるため、本発明を適用することで、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
また、上述の実施例では、像担持体(感光体)を複数備えたカラー画像形成装置が備える像加熱装置を例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、像担持体を1つ備えたモノクロ画像形成装置が備える像加熱装置にも本発明を等しく適用することができ、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
1 画像形成装置
40 定着装置
41 ベルトユニット
42 加圧ローラ
43 スリーブ
44 ヒータ
45 ヒータホルダ
46 ステイ
47 サーミスタ
48 芯金
49 弾性層
50 コントローラ
51 PWM駆動回路

Claims (13)

  1. 第1の回転体と、前記第1の回転体を加熱する加熱部材と、前記第1の回転体と圧接してニップ部を形成する第2の回転体と、前記加熱部材を加熱するための電力を前記加熱部材に供給する電源と、前記加熱部材の温度を検知する温度検知手段と、を備え、画像を担持した記録材を前記ニップ部で前記第1の回転体と前記第2の回転体とで挟持して搬送しつつ加熱する像加熱装置と、
    前記温度検知手段による前記加熱部材の温度の検知結果を用いて、前記第1の回転体、前記第2の回転体、及び前記ニップ部を通過した後の記録材の温度を、それぞれに対応して予め設定された演算式を用いた差分法による演算によりリアルタイムで推定し、推定した記録材の温度と、予め設定された目標温度と、の偏差に基づいて前記加熱部材に供給する電力を制御する制御手段と、
    を有し、
    前記制御手段は、前記第1及び第2の回転体の温度を、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過している時と、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過していない時と、前記第1及び第2の回転体が回転していない時と、で異なる前記演算式を用いて推定することを特徴とする画像形成装置。
  2. 第1の回転体と、前記第1の回転体を加熱する加熱部材と、前記第1の回転体と圧接してニップ部を形成する第2の回転体と、前記加熱部材を加熱するための電力を前記加熱部材に供給する電源と、前記加熱部材で消費された電力を検知する電力検知手段と、を備え、画像を担持した記録材を前記ニップ部で前記第1の回転体と前記第2の回転体とで挟持して搬送しつつ加熱する像加熱装置と、
    前記電力検知手段による前記加熱部材で消費された電力の検知結果を用いて、前記第1の回転体、前記加熱部材、前記第2の回転体、及び前記ニップ部を通過した後の記録材の温度を、それぞれに対応して予め設定された演算式を用いた差分法による演算によりリアルタイムで推定し、推定した記録材の温度と、予め設定された目標温度と、の偏差に基づいて前記加熱部材に供給する電力を制御する制御手段と、
    を有し、
    前記制御手段は、前記第1及び第2の回転体の温度を、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過している時と、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過していない時と、前記第1及び第2の回転体が回転していない時と、で異なる前記演算式を用いて推定することを特徴とする画像形成装置。
  3. 前記制御手段は、前記第1及び第2の回転体のうち少なくとも1つの温度として、該少なくとも1つを厚さ方向に複数の部分に分割した各部分の温度を、各部分に対応して予め設定された演算式を用いて推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
  4. 前記制御手段は、前記第2の回転体の温度として、前記第2の回転体を厚さ方向に複数の部分に分割した各部分の温度を、各部分に対応して予め設定された演算式を用いて推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
  5. 前記第1の回転体は、可撓性を有する無端状のベルトであり、前記第2の回転体は、基材と前記基材の外周に形成された弾性層とを備えたローラであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  6. 前記像加熱装置は、前記加熱部材を保持する保持部材を備えており、
    前記制御手段は更に、前記保持部材の温度を、前記保持部材に対応して予め設定された演算式を用いた差分法による演算によりリアルタイムで推定するように構成されており、
    前記制御手段は、前記保持部材の温度を、前記第1及び第2の回転体が回転している時と、前記第1及び第2の回転体が回転していない時と、で異なる前記演算式を用いて推定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  7. 前記保持部材は、前記加熱部材と共に前記第2の回転体に対して前記第1の回転体をバックアップすることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
  8. 第1の回転体と、前記第1の回転体を加熱する加熱部材と、前記第1の回転体と圧接してニップ部を形成する第2の回転体と、前記加熱部材を加熱するための電力を前記加熱部材に供給する電源と、前記第1の回転体の温度を検知する温度検知手段と、を備え、画像を担持した記録材を前記ニップ部で前記第1の回転体と前記第2の回転体とで挟持して搬送しつつ加熱する像加熱装置と、
    前記温度検知手段による前記第1の回転体の温度の検知結果を用いて、前記第2の回転体、及び前記ニップ部を通過した後の記録材の温度を、それぞれに対応して予め設定された演算式を用いた差分法による演算によりリアルタイムで推定し、推定した記録材の温度と、予め設定された目標温度と、の偏差に基づいて前記加熱部材に供給する電力を制御する制御手段と、
    を有し、
    前記制御手段は、前記第2の回転体の温度を、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過している時と、前記第1及び第2の回転体が回転しており記録材が前記ニップ部を通過していない時と、前記第1及び第2の回転体が回転していない時と、で異なる前記演算式を用いて推定することを特徴とする画像形成装置。
  9. 前記制御手段は、前記第2の回転体の温度として、前記第2の回転体を厚さ方向に複数の部分に分割した各部分の温度を、各部分に対応して予め設定された演算式を用いて推定することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
  10. 前記第1の回転体は、可撓性を有する無端状のベルトであり、前記第2の回転体は、基材と前記基材の外周に形成された弾性層とを備えたローラであることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
  11. 前記温度検知手段は、前記第1の回転体の内周面に接触して前記第1の回転体の温度を検知することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
  12. 前記制御手段は、前記画像形成装置の電源がONの間は所定の頻度で前記推定を行うことを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
  13. 前記像加熱装置は、画像を記録材に定着させる定着装置であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
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