以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、以下の説明では、タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
図1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム層50を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、接地面3として形成され、接地面3は、空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成している。トレッド部2には、接地面3にタイヤ周方向に延びる主溝30が複数形成されており、この複数の主溝30により、トレッド部2の表面には複数の陸部20が画成されている。本実施形態1では、主溝30は4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、4本の主溝30は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ2本ずつ配設されている。つまり、トレッド部2には、タイヤ赤道面CLの両側に配設される2本のセンター主溝31と、2本のセンター主溝31のそれぞれのタイヤ幅方向外側に配設される2本のショルダー主溝32との、計4本の主溝30が形成されている。
なお、主溝30とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。一般に主溝30は、3mm以上の溝幅を有し、6mm以上の溝深さを有し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する。本実施形態1では、主溝30は、9mm以上12mm以下の溝幅を有し、7mm以上8mm以下の溝深さを有しており、タイヤ赤道面CLと接地面3とが交差するタイヤ赤道線(センターライン)と実質的に平行である。主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在してもよいし、波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。
主溝30によって画成される陸部20のうち、2本のセンター主溝31同士の間に位置し、タイヤ赤道面CL上に位置する陸部20は、センター陸部21になっている。また、隣り合うセンター主溝31とショルダー主溝32との間に位置し、センター陸部21のタイヤ幅方向外側に配置される陸部20はセカンド陸部22になっている。また、セカンド陸部22のタイヤ幅方向外側に位置し、ショルダー主溝32を介してセカンド陸部22に隣り合う陸部20はショルダー陸部23になっている。
なお、これらの陸部20は、タイヤ周方向の1周に亘ってリブ状に形成されていてもよく、トレッド部2に、タイヤ幅方向に延びるラグ溝(図示省略)が複数形成されることによって陸部20が主溝30とラグ溝とによって画成され、各陸部20がブロック状に形成されていてもよい。本実施形態1では、陸部20はタイヤ周方向の1周に亘って形成されるリブ状の陸部20として形成されている。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドウォール部8が配設されている。即ち、サイドウォール部8は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に配設されている。換言すると、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されており、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出した部分を形成している。
タイヤ幅方向における両側に位置するそれぞれのサイドウォール部8のタイヤ径方向内側には、ビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されており、即ち、ビード部10は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤを束ねて円環状に形成される環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材になっている。
また、トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層14が設けられている。ベルト層14は、複数のベルト141、142が積層される多層構造によって構成されており、本実施形態1では、2層のベルト141、142が積層されている。ベルト層14を構成するベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。また、2層のベルト141、142は、タイヤ周方向に対するベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が互いに異なっている。このため、ベルト層14は、2層のベルト141、142が、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成されている。つまり、2層のベルト141、142は、それぞれのベルト141、142が有するベルトコードが互いに交差する向きで配設される、いわゆる交差ベルトとして設けられている。トレッド部2が有するトレッドゴム層50は、トレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されている。
ベルト層14のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。即ち、カーカス層13は、少なくとも1層が一対のビード部10間に亘って配設されている。
詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11に沿ってタイヤ幅方向外側に巻き返されている。ビードフィラー12は、このようにカーカス層13がビード部10で折り返されることにより、ビードコア11のタイヤ径方向外側に形成される空間に配置されるゴム材になっている。また、ベルト層14は、このように一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13における、トレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成されている。インナーライナ16は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
図2は、図1のA部詳細図である。トレッド部2は、タイヤ幅方向における中央に位置する領域をセンター領域Tcとし、タイヤ幅方向における両端に位置する領域をショルダー領域Tshとする場合における、それぞれの領域のタイヤ平均厚さの相対関係が、所定の関係を満たしている。これらの領域のうち、センター領域Tcは、複数の陸部20のうち、タイヤ赤道面CLに最も近い陸部20であるセンター陸部21が位置する領域になっている。詳しくは、センター領域Tcは、タイヤ子午断面において、センター陸部21を画成するセンター主溝31の溝壁35のうちセンター陸部21側に位置する溝壁35と、センター陸部21のタイヤ径方向外側の外輪郭線を示す接地面3との交点24から、タイヤ内面18に対して垂直に延ばした線をセンター領域境界線Lcとする場合に、センター陸部21のタイヤ幅方向両側に位置する2本のセンター領域境界線Lcの間に位置する領域になっている。本実施形態1では、センター領域Tcは、タイヤ赤道面CL上に位置しており、センター領域Tcのタイヤ幅方向における中心位置とタイヤ赤道面CLとは、タイヤ幅方向における位置がほぼ同じ位置になっている。
なお、センター主溝31が、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に屈曲したり湾曲したりすることによりタイヤ幅方向に振幅している場合は、センター領域Tcは、タイヤ幅方向に最も広くなる範囲で規定される。つまり、センター主溝31がタイヤ幅方向に振幅している場合は、センター領域Tcを規定するセンター領域境界線Lcは、センター陸部21を画成するセンター主溝31の溝壁35における、タイヤ周方向上において最もタイヤ幅方向外側に位置する部分と接地面3との交点24からタイヤ内面18に対して垂直に延ばした線になる。
また、ショルダー領域Tshは、ベルト層14のタイヤ幅方向における幅の85%の位置Pとベルト層14のタイヤ幅方向における端部144との間の領域になっている。詳しくは、ショルダー領域Tshは、タイヤ子午断面において、ベルト層14が有する複数のベルト141、142のうち、タイヤ幅方向における幅が最も広いベルトである最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における幅の85%の位置Pと、最幅広ベルト143の端部144とから、タイヤ内面18に対して垂直に延ばした線を、それぞれショルダー領域境界線Lshとする場合に、2本のショルダー領域境界線Lshの間に位置する領域になっている。これらのように規定されるショルダー領域Tshは、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側で規定され、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側にそれぞれ位置している。
本実施形態1では、ベルト層14が有する2層のベルト141、142のうち、タイヤ径方向内側に位置するベルト141のタイヤ幅方向における幅が、他方のベルト142のタイヤ幅方向における幅よりも広くなっており、このタイヤ径方向内側に位置するベルト141が、最幅広ベルト143になっている。
また、最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における幅の85%の位置Pは、最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における中心、或いはタイヤ赤道面CLの位置を中心として、最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における幅の85%の領域がタイヤ幅方向両側に均等に振り分けられた際における、85%の領域の端部の位置になっている。このため、最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における幅の85%の位置Pと、最幅広ベルト143の端部144との間隔は、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側で同じ大きさになっている。
これらのセンター領域Tcとショルダー領域Tshとは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態における形状で規定される。ここでいう正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
これらのように規定されるセンター領域Tcとショルダー領域Tshとのそれぞれの領域のタイヤ平均厚さは、タイヤ子午断面における陸部20のタイヤ径方向外側の輪郭線である外輪郭線を示す接地面3からタイヤ内面18までの厚さであるタイヤ厚さの、領域ごとの平均値になっている。つまり、センター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcは、センター領域Tcにおける接地面3からタイヤ内面18までの距離の平均値になっており、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshは、ショルダー領域Tshにおける接地面3からタイヤ内面18までの距離の平均値になっている。
センター領域Tcのタイヤ平均厚さGcとショルダー領域Tshのタイヤ平均厚さGshとは、タイヤ子午面断面におけるトレッド部2のセンター領域Tcとショルダー領域Tshのそれぞれの断面積を、各領域の幅で除算することによって算出してもよい。例えば、センター領域Tcのタイヤ平均厚さGcは、センター領域Tcの断面積を、センター領域Tcを規定する2本のセンター領域境界線Lc同士の距離で除算することによって算出してもよい。2本のセンター領域境界線Lc同士が、互いに傾斜している場合には、それぞれのセンター領域境界線Lc上における接地面3の位置とタイヤ内面18の位置との中間の位置での距離によって、センター領域Tcの断面積を割ってセンター領域Tcのタイヤ平均厚さGcを算出する。ショルダー領域Tshのタイヤ平均厚さGshも同様に、ショルダー領域Tshの断面積を、ショルダー領域Tshを規定するショルダー領域境界線Lsh同士の距離で除算することにより算出してもよい。
トレッド部2は、これらのように算出するセンター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.05≦(Gc/Gsh)≦1.35の範囲内になっている。なお、センター領域Tcのタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Tshのタイヤ平均厚さGshとの関係は、1.08≦(Gc/Gsh)≦1.20の範囲内であるのが好ましい。
トレッド部2は、タイヤ平均厚さのみでなく、トレッド部2に形成された溝を考慮したトレッドゴム層50の厚さである実ゴム厚さも、相対関係が所定の関係を満たしている。つまり、センター領域Tcとショルダー領域Tshとの領域ごとに算出する実ゴム厚さである平均実ゴム厚さも、センター領域Tcの平均実ゴム厚さとショルダー領域Tshの平均実ゴム厚さとで、相対関係が所定の関係を満たしている。図3は、トレッド部2の要部斜視図であり、トレッドゴム層50の実ゴム厚さについての説明図である。トレッド部2には、主溝30が形成されており、タイヤ周方向に延びる主溝30の他にも、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40等の溝が形成されている。トレッドゴム層50の平均実ゴム厚さは、溝の部分にはトレッドゴム層50を構成するゴムが存在しないものとして算出するトレッドゴム層50の厚さになっている。このため、各領域のトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さは、各領域において主溝30やラグ溝40等の溝を含まないトレッドゴム層50の実際の体積を、各領域に位置するタイヤ内面18の面積で除算することによって算出する厚さになっている。
例えば、センター領域Tcにおけるトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVcは、センター領域Tcにおいて溝を含まないトレッドゴム層50の体積を、センター領域Tcに位置するタイヤ内面18の面積で除算することによって算出する。センター領域Tcに位置するタイヤ内面18の面積は、タイヤ内面18における、センター領域Tcを規定する2本のセンター領域境界線Lcで挟まれてタイヤ周方向に延在する部分の面積になっている。
また、ショルダー領域Tshにおけるトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVshは、ショルダー領域Tshにおいて溝を含まないトレッドゴム層50の体積を、ショルダー領域Tshに位置するタイヤ内面18の面積で除算することによって算出する。ショルダー領域Tshに位置するタイヤ内面18の面積は、タイヤ内面18における、ショルダー領域Tshを規定する2本のショルダー領域境界線Lshで挟まれてタイヤ周方向に延在する部分の面積になっている。
トレッド部2は、これらのように算出するセンター領域Tcにおけるトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVcと、ショルダー領域Tshにおけるトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVshとの関係が、1.6≦(Vc/Vsh)≦2.5の範囲内になっている。
なお、各領域のトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さは、空気入りタイヤ1から領域ごとにトレッドゴム層50を切り出し、切り出したトレッドゴム層50の質量とトレッドゴム層50を構成するゴムの比重とに基づいて体積を算出し、算出した体積を、各領域に位置するタイヤ内面18の面積で除算することによって算出してもよい。
また、トレッドゴム層50は、タイヤ径方向における外側から内側に向かってキャップゴム層51、中間ゴム層52、ベースゴム層53の3層が積層されることによって形成されている(図2参照)。即ち、トレッドゴム層50は、キャップゴム層51と中間ゴム層52とベースゴム層53のうち、キャップゴム層51が最もタイヤ径方向外側に配置され、ベースゴム層53が最もタイヤ径方向内側に配置され、中間ゴム層52は、タイヤ径方向おけるキャップゴム層51とベースゴム層53との間に配置されている。このため、トレッド部2の接地面3は、キャップゴム層51によって形成され、トレッド部2におけるベルト層14に接する側の面は、ベースゴム層53によって形成されている。これらのキャップゴム層51と中間ゴム層52とベースゴム層53とは、全てトレッド部2のタイヤ幅方向における一端側から他端側にかけて配置されている。
トレッドゴム層50が有するキャップゴム層51と中間ゴム層52とベースゴム層53とは、互いに物性が異なっている。例えば、キャップゴム層51と中間ゴム層52とベースゴム層53とは、300%伸長時のモジュラスが互いに異なっており、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaと、中間ゴム層52の300%伸長時のモジュラスMbと、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとの関係が、Ma<Mb<Mcを満たしている。具体的には、キャップゴム層51は、300%伸長時のモジュラスMaが、6MPa以上10MPa以下の範囲内になっており、ベースゴム層53は、300%伸長時のモジュラスMcが、15MPa以上22MPa以下の範囲内になっている。
また、中間ゴム層52の300%伸長時のモジュラスMbは、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMa及びベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとの関係が、(0.7Ma+0.3Mc)<Mb<(0.3Ma+0.7Mc)の範囲内になる大きさになっている。また、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcは、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaに対して、10MPa以上16MPa以下の範囲内で大きくなっている。なお、300%伸張時のモジュラスは、JIS K6251(3号ダンベル使用)に準拠した23℃での引張試験により測定され、300%伸長時の引張り応力を示す。
図4は、図2に示すセンター領域Tcの詳細図である。図5は、図2に示すショルダー領域Tshの詳細図である。トレッドゴム層50が有する3層のゴム層のうち、ベースゴム層53は、トレッド部2の厚さに対するベースゴム層53の厚さの割合が、ショルダー領域Tshに位置する部分よりもセンター領域Tcに位置する部分の方が大きくなっている。つまり、ベースゴム層53は、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分の平均厚さccと、センター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcとの比(cc/Gc)と、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshと、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの比(csh/Gsh)とが、(cc/Gc)>(csh/Gsh)の関係を満たしている。
これらの厚さのうち、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分の平均厚さccは、センター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcに対して、0.12≦(cc/Gc)≦0.25の範囲内になっている。また、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshは、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshに対して、0.03≦(csh/Gsh)≦0.07の範囲内になっている。
ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分は、タイヤ幅方向におけるセンター領域Tcの端部位置を示すセンター領域境界線Lc側からセンター領域Tcの中心側に向かって厚さが漸増するのが好ましい。即ち、ベースゴム層53は、センター領域境界線Lcの位置側から、センター領域Tcのタイヤ幅方向における中心側に向かって、タイヤ径方向における厚さが徐々に厚くなるのが好ましい。本実施形態1では、センター領域Tcのタイヤ幅方向における中心位置と、タイヤ赤道面CLとは、タイヤ幅方向における位置がほぼ同じ位置になっているため、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分が、センター領域Tcの中心側に向かって厚さが漸増する場合には、ベースゴム層53は、センター領域境界線Lc側から、タイヤ赤道面CL側に向かって、厚さが徐々に厚くなる。
また、このようにベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分が、センター領域境界線Lcの位置側からセンター領域Tcの中心側に向かって厚さが漸増する場合は、中間ゴム層52も同様に厚さが漸増するのが好ましい。即ち、中間ゴム層52も、中間ゴム層52におけるセンター領域Tcに位置する部分が、タイヤ幅方向におけるセンター領域Tcの端部位置を示すセンター領域境界線Lc側からセンター領域Tcの中心側に向かって厚さが漸増するのが好ましい。
本実施形態1に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、ビード部10にリムホイールR(図6参照)を嵌合することによってリムホイールRに空気入りタイヤ1をリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、接地面3のうち下方に位置する部分の接地面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両は、接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。
例えば、空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主に接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、接地面3と路面との間の水が主溝30やラグ溝40等の溝に入り込み、これらの溝で接地面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、接地面3は路面に接地し易くなり、接地面3と路面との間の摩擦力により、車両は所望の走行をすることが可能になる。
また、車両の制動時には、接地面3と路面との間での大きな摩擦力が必要となるが、特に、乾燥した路面での制動性能であるドライ制動性能では、溝による排水性はドライ制動性能に対して影響がないため、接地面3と路面との間での摩擦力が重要になる。接地面3と路面との間の摩擦力を高めるには、例えば、トレッド部2を構成するトレッドゴム層50における接地面3する構成する部分のモジュラスを低減する手法が挙げられる。トレッドゴム層50における接地面3する構成する部分のモジュラスを低減することにより、接地面3の摩擦係数を高めることができると共に、路面上の凹凸に接地面3の形状を極力追随させることができ、実質的な接地面積を増やすことができる。これにより、接地面3と路面との間の摩擦力を高めることができ、ドライ制動性能を高めることができる。
本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、トレッドゴム層50は、キャップゴム層51と中間ゴム層52とベースゴム層53との3層が積層されると共に、接地面3を形成するキャップゴム層51は、300%伸長時のモジュラスMaが、中間ゴム層52やベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMb、Mcよりも小さくなっている。これにより、空気入りタイヤ1は、接地面3と路面との間の摩擦力を高めることができるため、ドライ制動性能を高めることができる。
また、車両が走行する路面には、石等の路面から突出する突起物が存在することがあり、走行中の車両は、このような突起物を空気入りタイヤ1のトレッド部2で踏んでしまうことがある。この場合、トレッド部2は、突起物から大きな力を受ける。その際に、トレッドゴム層50のモジュラスが低く、トレッドゴム層50が軟らかいと、トレッド部2の破断強度が低下するため、空気入りタイヤ1は、突起物から受ける大きな力によってトレッド部2が損傷し易くなり、突起物がトレッド部2を貫通してしまう虞がある。即ち、トレッドゴム層50のモジュラスが低くてトレッドゴム層50が比較的軟らかい空気入りタイヤ1は、路面上の突起物を踏んだ際に、トレッド部2の破断強度が低いため突起物がトレッド部2を貫通し、ショックバーストが発生する虞がある。
これに対し、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、センター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcが厚く、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshが薄くなっているため、トレッドゴム層50における接地面3を構成する部分のモジュラスを低くした際におけるショックバーストを抑制することができる。図6は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1で路面100上の突起物105を踏んだ状態を示す説明図である。本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、センター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcを厚くすることにより、トレッド部2のタイヤ幅方向における中央付近の破断強度を増加させることができるため、路面100上の突起物105をセンター領域Tc付近で踏んだ場合でも、突起物105がトレッド部2を貫通することを抑制することができる。また、ショルダー領域Tshのタイヤ平均厚さGshを薄くすることにより、トレッド部2のセンター領域Tc付近で突起物105を踏んだ際に、ショルダー領域Tshを優先的に変形させることができ、センター領域Tc付近が路面100から離れる方向に、ショルダー領域Tshを変形させ易くすることができる。これにより、トレッド部2に対する突起物105からの圧力を低減することができ、突起物105がトレッド部2を貫通することを抑制することができる。従って、車両の走行中に突起物105を踏むことに起因するショックバーストを抑制することができる。
具体的には、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1のトレッド部2は、センター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.05≦(Gc/Gsh)≦1.35の範囲内になっているため、ドライ制動性能を確保しつつ、ショックバーストを抑制することができる。つまり、センター領域Tcのタイヤ平均厚さGcとショルダー領域Tshのタイヤ平均厚さGshとの関係が、(Gc/Gsh)<1.05である場合は、センター領域Tcのタイヤ平均厚さGcが薄過ぎるため、センター領域Tcの破断強度を確保し難くなる。または、ショルダー領域Tshのタイヤ平均厚さGshが厚過ぎるため、ショルダー領域Tshが変形し難くなり、トレッド部2で突起物105を踏んだ際に、センター領域Tc付近が路面100から離れる方向にショルダー領域Tshが変形し難くなる。この場合、トレッド部2で踏んだ突起物105がトレッド部2を貫通することを抑制するのが困難になる。
また、センター領域Tcのタイヤ平均厚さGcとショルダー領域Tshのタイヤ平均厚さGshとの関係が、(Gc/Gsh)>1.35である場合は、ショルダー領域Tshのタイヤ平均厚さGshに対してセンター領域Tcのタイヤ平均厚さGcが厚過ぎるため、センター領域Tcと比較してショルダー領域Tshが接地し難くなる虞がある。この場合、接地面3におけるショルダー領域Tsh付近が接地し難くなるため、ドライ制動時に接地面3と路面100との間の摩擦力によって制動力を発生させる際に、ショルダー領域Tsh付近の接地面3の寄与度が低下する虞がある。これにより、接地面3と路面100と間の摩擦力の全体量を確保し難くなるため、ドライ制動性能を確保し難くなる。
これに対し、センター領域Tcのタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Tshのタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.05≦(Gc/Gsh)≦1.35の範囲内である場合は、センター領域Tcからショルダー領域Tshにかけた接地面3全体の接地性を確保し、ドライ制動時における接地面3と路面100と間の摩擦力を確保しつつ、センター領域Tcの破断強度を確保し、ショルダー領域Tshの変形のし易さを確保することができる。これにより、ドライ制動性能を確保しつつ、ショックバーストを抑制することができ、耐ショックバースト性能を向上させることができる。
また、トレッドゴム層50は、タイヤ径方向において最も内側に位置するベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが、キャップゴム層51や中間ゴム層52の300%伸長時のモジュラスMa、Mbよりも大きくなっているため、より確実にベルト層14を保護することができる。つまり、ベースゴム層53は、ベルト層14に対して直接接触するため、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcを大きくすることにより、トレッド部2で突起物105を踏んだ際に、突起物105からの大きな圧力がベルト層14に作用することを抑制することができ、ベルト層14を保護することができる。これにより、突起物105がトレッド部2を貫通することを抑制することができ、より確実にショックバーストを抑制することができる。
さらに、トレッドゴム層50は、キャップゴム層51とベースゴム層53との間に、300%伸長時のモジュラスMbが、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaとベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとの間の大きさになる中間ゴム層52を配置している。これにより、トレッドゴム層50は、隣接するゴム層同士の間で、300%伸長時のモジュラスの差が大きくなり過ぎることを抑制することができ、隣接するゴム層同士の間で300%伸長時のモジュラスの差が大きくなり過ぎることに起因して、ゴム層同士の界面で大きな応力集中が発生することを抑制することができる。従って、トレッド部2で突起物105を踏んだ際に、トレッドゴム層50が有するゴム層同士の界面で大きな応力集中が発生することを抑制でき、トレッドゴム層50が損傷することを抑制することができるため、より確実にショックバーストを抑制することができる。これらの結果、ドライ制動性能と耐ショックバースト性能とを両立することができる。
また、ベースゴム層53は、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分の平均厚さccと、センター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcとの比(cc/Gc)と、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshと、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの比(csh/Gsh)とが、(cc/Gc)>(csh/Gsh)の関係を満たすため、より確実にショックバーストを抑制することができる。つまり、ベースゴム層53は、トレッド部2の厚さに対するベースゴム層53の厚さの割合が、ショルダー領域Tshに位置する部分よりもセンター領域Tcに位置する部分の方が大きくなって配置されることにより、より確実にセンター領域Tcの破断強度を確保することができる。換言すると、ベースゴム層53は、トレッド部2の厚さに対するベースゴム層53の厚さの割合が、センター領域Tcに位置する部分よりもショルダー領域Tshに位置する部分の方が小さくなって配置されることにより、より確実にショルダー領域Tshの変形のし易さを確保することができ、トレッド部2に負荷が作用した際に、ショルダー領域Tshを優先的に変形させることができる。これにより、突起物105がトレッド部2を貫通することを抑制することができ、より確実にショックバーストを抑制することができる。この結果、より確実に耐ショックバースト性能を向上させることができる。
また、ベースゴム層53は、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分の平均厚さccが、センター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcに対して、0.12≦(cc/Gc)≦0.25の範囲内であるため、ドライ制動性能を確保しつつ、より確実にショックバーストを抑制することができる。つまり、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分の平均厚さccが、(cc/Gc)<0.12である場合は、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分の平均厚さccが薄過ぎるため、300%伸長時のモジュラスMcが大きいベースゴム層53をセンター領域Tcに配置しても、センター領域Tcの破断強度を効果的に向上させるのが困難になる虞がある。この場合、トレッド部2で踏んだ突起物105がトレッド部2を貫通することを効果的に抑制し難くなる虞がある。また、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分の平均厚さccが、(cc/Gc)>0.25である場合は、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分の平均厚さccが厚過ぎるため、トレッド部2におけるセンター領域Tcの剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、センター領域Tcの接地面3と路面100との間の摩擦力を高めるのが困難になる虞がある。
これに対し、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分の平均厚さccが、0.12≦(cc/Gc)≦0.25の範囲内である場合は、センター領域Tcの接地面3と路面100との間の摩擦力を確保しつつ、より確実にセンター領域Tcの破断強度を確保することができる。これにより、ドライ制動性能を確保しつつ、より確実にショックバーストを抑制することができる。この結果、より確実にドライ制動性能と耐ショックバースト性能とを両立することができる。
また、ベースゴム層53は、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshが、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshに対して、0.03≦(csh/Gsh)≦0.07の範囲内であるため、これにより、偏摩耗を抑制しつつ、より確実にドライ制動性能を確保し、より確実にショックバーストを抑制することができる。つまり、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshが、(csh/Gsh)<0.03である場合は、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshが薄過ぎるため、ショルダー領域Tshの剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、車両への積載量が多いことによって空気入りタイヤ1に作用する荷重が高荷重になる際に、ショルダー領域Tshの変形が大きくなり過ぎ、ショルダー領域Tshに位置する接地面3の接地圧が大きくなり過ぎる虞がある。これにより、センター領域Tc付近の接地面3と比較してショルダー領域Tsh付近の接地面3の摩耗が大きくなり、偏摩耗が発生し易くなる虞がある。
また、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshが、(csh/Gsh)<0.07である場合は、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshが厚過ぎるため、ショルダー領域Tshが変形し難くなる虞がある。この場合、トレッド部2で突起物105を踏んだ際に、センター領域Tc付近が路面100から離れる方向にショルダー領域Tshが優先的に変形し難くなる虞がある。また、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshが、(csh/Gsh)<0.07であることにより、ショルダー領域Tshが変形し難い場合は、接地面3の接地時に、接地面3におけるショルダー領域Tshに位置する部分が接地し難くなる虞がある。この場合、ドライ制動時に接地面3と路面100との間の摩擦力によって制動力を発生させる際に、ショルダー領域Tsh付近の接地面3の寄与度が低下する虞がある。これにより、接地面3と路面100と間の摩擦力の全体量を確保し難くなるため、ドライ制動性能を確保し難くなる。
これに対し、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshが、0.03≦(csh/Gsh)≦0.07の範囲内である場合は、ショルダー領域Tshの変形が大きくなり過ぎることなく、ショルダー領域Tshを優先的に適度に変形させることができ、ドライ制動時におけるショルダー領域Tsh付近の接地面3と路面100との摩擦力を確保することできる。この結果、偏摩耗の発生を抑制しつつ、より確実にドライ制動性能と耐ショックバースト性能とを両立することができる。
また、キャップゴム層51は、300%伸長時のモジュラスMaが6MPa以上10MPa以下の範囲内であるため、ドライ制動性能を確保しつつ、より確実にショックバーストを抑制することができる。つまり、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaが6MPa未満である場合は、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaが小さ過ぎるため、トレッド部2の破断強度を効果的に向上させるのが困難になる虞がある。この場合、トレッド部2で踏んだ突起物105がトレッド部2を貫通することを効果的に抑制し難くなる虞がある。また、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaが10MPaより大きい場合は、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaが大き過ぎるため、トレッド部2の剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、接地面3と路面100との間の摩擦力を高めるのが困難になり、ドライ制動性能を確保し難くなる虞がある。
これに対し、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaが6MPa以上10MPa以下の範囲内である場合は、トレッド部2の接地面3と路面100との間の摩擦力を確保しつつ、より確実にトレッド部2の破断強度を確保することができる。これにより、ドライ制動性能を確保しつつ、より確実にショックバーストを抑制することができる。この結果、より確実にドライ制動性能と耐ショックバースト性能とを両立することができる。
また、ベースゴム層53は、300%伸長時のモジュラスMcが15MPa以上22MPa以下の範囲内であるため、ドライ制動性能を確保しつつ、より確実にショックバーストを抑制することができる。つまり、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが15MPa未満である場合は、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが小さ過ぎるため、トレッド部2の破断強度を効果的に向上させるのが困難になる虞がある。この場合、トレッド部2で踏んだ突起物105がトレッド部2を貫通することを効果的に抑制し難くなる虞がある。また、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが22MPaより大きい場合は、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが大き過ぎるため、トレッド部2の剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、接地面3と路面100との間の摩擦力を高めるのが困難になり、ドライ制動性能を確保し難くなる虞がある。
これに対し、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが15MPa以上22MPa以下の範囲内である場合は、トレッド部2の接地面3と路面100との間の摩擦力を確保しつつ、より確実にトレッド部2の破断強度を確保することができる。これにより、ドライ制動性能を確保しつつ、より確実にショックバーストを抑制することができる。この結果、より確実にドライ制動性能と耐ショックバースト性能とを両立することができる。
また、中間ゴム層52は、300%伸長時のモジュラスMbが、キャップゴム層51とベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMa、Mcとの関係が、(0.7Ma+0.3Mc)<Mb<(0.3Ma+0.7Mc)の範囲内であるため、中間ゴム層52と、キャップゴム層51及びベースゴム層53とで、300%伸長時のモジュラスの差が大きくなり過ぎることを抑制することができる。これにより、隣接するゴム層同士の界面で大きな応力集中が発生することを、より確実に抑制することができる。従って、トレッド部2で突起物105を踏んだ際に、ゴム層同士の界面で大きな応力集中が発生することによってトレッドゴム層50が損傷することをより確実に抑制することができ、より確実にショックバーストを抑制することができる。この結果、より確実に耐ショックバースト性能を向上させることができる。
また、トレッド部2は、センター領域Tcにおけるトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVcと、ショルダー領域Tshにおけるトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVshとの関係が、1.6≦(Vc/Vsh)≦2.5の範囲内であるため、より確実にドライ制動性能を確保しつつ、ショックバーストを抑制することができる。つまり、センター領域Tcのトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVcと、ショルダー領域Tshのトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVshとの関係が、(Vc/Vsh)<1.6である場合は、センター領域Tcのトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVcが薄過ぎるため、センター領域Tcのセンター領域Tcの破断強度を増加させ難くなる虞がある。または、ショルダー領域Tshのトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVshが厚過ぎるため、トレッド部2で突起物105を踏んだ際に、センター領域Tc付近が路面100から離れる方向にショルダー領域Tshが変形し難くなる虞がある。
また、センター領域Tcのトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVcと、ショルダー領域Tshのトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVshとの関係が、(Vc/Vsh)>2.5である場合は、センター領域Tcのトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVcが厚過ぎ、ショルダー領域Tshのトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVshが薄過ぎるため、センター領域Tcと比較してショルダー領域Tshが接地し難くなる虞がある。この場合、接地面3におけるショルダー領域Tsh付近が接地し難くなるため、ドライ制動時における、ショルダー領域Tsh付近の接地面3と路面100との間の摩擦力が低下する虞がある。これにより、接地面3と路面100と間の摩擦力の全体量を確保し難くなるため、ドライ制動性能を確保し難くなる虞がある。
これに対し、センター領域Tcのトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVcと、ショルダー領域Tshのトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVshとの関係が、1.6≦(Vc/Vsh)≦2.5の範囲内である場合は、センター領域Tcからショルダー領域Tshにかけた接地面3全体の接地性を確保し、ドライ制動時における接地面3と路面100と間の摩擦力を確保しつつ、センター領域Tcの破断強度を確保し、ショルダー領域Tshの変形のし易さを確保することができる。この結果、より確実にドライ制動性能と耐ショックバースト性能とを両立することができる。
また、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaに対して、10MPa以上16MPa以下の範囲内で大きいため、ドライ制動性能を確保しつつ、より確実にショックバーストを抑制することができる。つまり、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとキャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaとの差が、10MPa未満である場合は、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが小さ過ぎるか、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaが大き過ぎる虞がある。ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが小さ過ぎる場合は、トレッド部2の破断強度を効果的に向上させるのが困難になり、トレッド部2で踏んだ突起物105がトレッド部2を貫通することを効果的に抑制し難くなる虞がある。一方、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaが大き過ぎる場合は、トレッド部2の剛性が高くなり過ぎて接地面3と路面100との間の摩擦力を高めるのが困難になり、ドライ制動性能を確保し難くなる虞がある。
また、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとキャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaとの差が、16MPaより大きい場合は、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが大き過ぎるか、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaが小さ過ぎる虞がある。ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcが大き過ぎる場合は、トレッド部2の剛性が高くなり過ぎて接地面3と路面100との間の摩擦力を高めるのが困難になり、ドライ制動性能を確保し難くなる虞がある。一方、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaが小さ過ぎる場合は、トレッド部2の破断強度を効果的に向上させるのが困難になり、トレッド部2で踏んだ突起物105がトレッド部2を貫通することを効果的に抑制し難くなる虞がある。
これに対し、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとキャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaとの差が、10MPa以上16MPa以下の範囲内である場合は、トレッド部2の接地面3と路面100との間の摩擦力を確保しつつ、より確実にトレッド部2の破断強度を確保することができる。これにより、ドライ制動性能を確保しつつ、より確実にショックバーストを抑制することができる。この結果、より確実にドライ制動性能と耐ショックバースト性能とを両立することができる。
また、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分が、タイヤ幅方向におけるセンター領域Tcの端部位置を示すセンター領域境界線Lc側からセンター領域Tcの中心側に向かって厚さが漸増して形成される場合は、センター領域Tcの破断強度を、より確実に向上させることができる。この結果、より確実に耐ショックバースト性能を向上させることができる。
[実施形態2]
実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と略同様の構成であるが、サイドウォール部8にサイド補強ゴム60を備える点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図7は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の要部詳細断面図である。実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と同様に、トレッド部2のセンター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcとショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.05≦(Gc/Gsh)≦1.35の範囲内になっている。また、トレッドゴム層50は、キャップゴム層51、中間ゴム層52、ベースゴム層53の3層が積層され、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaと、中間ゴム層52の300%伸長時のモジュラスMbと、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとの関係が、Ma<Mb<Mcを満たしている。
また、実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、サイドウォール部8にサイド補強ゴム60を備えており、パンク等によって空気が漏出した場合でも走行可能な、いわゆるランフラットタイヤとして用いられる。サイドウォール部8に配設されるサイド補強ゴム60は、サイドウォール部8の内部に設けられるゴム部材になっており、タイヤ内表面やタイヤ外表面には露出することなく配設されている。詳しくは、サイド補強ゴム60は、主にカーカス層13におけるサイドウォール部8に位置する部分のタイヤ幅方向内側に位置しており、サイドウォール部8においてカーカス層13とインナーライナ16との間に配置され、タイヤ子午断面における形状が、タイヤ幅方向外側に凸となる三日月形状に形成されている。
三日月形状に形成されるサイド補強ゴム60は、タイヤ径方向における外側の端部である外側端部61が、トレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向内側に位置しており、サイド補強ゴム60とベルト層14とは、所定の範囲内のラップ量で、一部がタイヤ径方向に重なって配設されている。このため、サイド補強ゴム60は、外側端部61近傍の少なくとも一部が、ショルダー領域Tshに位置している。このように配設されるサイド補強ゴム60は、サイドウォール部8を形成するゴムやビード部10に配設されるリムクッションゴム17よりも、強度が高いゴム材料により形成されている。
サイド補強ゴム60の外側端部61の近傍部分は、ショルダー領域Tshのみでなく、一部がショルダー領域Tshのタイヤ幅方向内側に位置していてもよい。また、サイド補強ゴム60の一部がショルダー領域Tshのタイヤ幅方向内側に位置する場合のショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshは、サイド補強ゴム60を含んだ厚さが用いられる。
本実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、これらのようにサイドウォール部8の内側にサイド補強ゴム60が配設されるため、サイドウォール部8の曲げ剛性が高くなっている。これにより、パンク等によって空気が漏出して大きな荷重がサイドウォール部8に作用する場合でも、サイドウォール部8の変形を低減することができ、所定の速度以下の速度であれば走行を行うことができる。
一方で、ランフラットタイヤでは、サイドウォール部8にサイド補強ゴム60が配設されることにより、サイドウォール部8の曲げ剛性が高くなっているため、内圧を充填した状態で突起物105を踏んだ場合、サイドウォール部8は撓み難くなっている。このため、突起物105を踏んだ際における応力は、トレッド部2に集中し易くなっており、ショックバーストが発生し易くなる。
これに対し、本実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、センター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcが厚く、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshが薄くなっているため、トレッド部2で突起物105を踏んだ場合に、ショルダー領域Tshが変形し易くなっている。これにより、突起物105を踏んだ場合における、トレッド部2に対する突起物105からの圧力を低減することができ、突起物105がトレッド部2を貫通してショックバーストが発生することを抑制することができる。この結果、ランフラット性能と耐ショックバースト性能とを両立させることができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態1では、主溝30は4本が形成されているが、主溝30は4本以外であってもよい。また、上述した実施形態1では、センター領域Tcは、タイヤ赤道面CL上に位置する陸部20であるセンター陸部21のタイヤ幅方向における範囲と一致しているが、センター領域Tcは、タイヤ赤道面CL上に位置していなくてもよい。例えば、タイヤ赤道面CL上に主溝30が位置している場合、センター領域Tcは、タイヤ赤道面CL上に位置する主溝30と、当該主溝30の次にタイヤ赤道面CLに近い主溝30とによって画成される陸部20のタイヤ幅方向における範囲であってもよい。換言すると、センター領域Tcは、隣り合う2本の主溝30によって挟まれた領域のうち、タイヤ赤道面CLに最も近い領域がセンター領域Tcとして用いられればよい。
また、上述した実施形態1では、ラグ溝40は隣り合う主溝30同士の間に亘って形成されていないが、ラグ溝40は隣り合う主溝30同士の間に亘って形成されていてもよい。つまり、各領域の陸部20は、タイヤ幅方向に延びるリブ状に形成されていてもよく、陸部20がタイヤ幅方向に隣り合う主溝30とタイヤ周方向に隣り合うラグ溝40によって画成される、ブロック状に形成されていてもよい。
また、上述した実施形態1では、3層のゴム層が積層されるトレッドゴム層50は、ベルト層14に対してタイヤ径方向外側に直接積層されているが、ベルト層14のタイヤ径方向外側には、ベルト141、142と同様にスチール、または有機繊維材から成る複数の補強コードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されるベルト補強層(図示省略)を配置してもよい。この場合、トレッドゴム層50は、ベルト補強層のタイヤ径方向外側にベースゴム層53が配置され、ベースゴム層53のタイヤ径方向外側に、タイヤ径方向外側に向かって中間ゴム層52、キャップゴム層51が積層される。このように、ベルト補強層を配置することにより、トレッド部2の破断強度を向上させると共に、ベルト層14を保護し易くなるため、より確実に耐ショックバースト性能を向上させることができる。
また、上述した実施形態1、2や変形例は、適宜組み合わせてもよい。空気入りタイヤ1は、少なくともトレッド部2のセンター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.05≦(Gc/Gsh)≦1.35の範囲内となり、トレッドゴム層50は、キャップゴム層51、中間ゴム層52、ベースゴム層53の3層が積層され、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaと、中間ゴム層52の300%伸長時のモジュラスMbと、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとの関係が、Ma<Mb<Mcを満たすことにより、ドライ制動性能と耐ショックバースト性能とを両立させることができる。
[実施例]
図8A、図8Bは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、ショックバーストに対する耐久性である耐ショックバースト性能と、乾燥した路面での制動性能であるドライ制動性能とについての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが245/50R19 105Wサイズの空気入りタイヤ1を、リムサイズ19×7.5JのJATMA標準のリムホイールにリム組みしたものを用いて行った。各試験項目の評価方法は、耐ショックバースト性能については、試験タイヤの空気圧を220kPaで充填し、プランジャー径19mm、押し込み速度50mm/分にてJIS K6302に準じたプランジャー破壊試験を行い、タイヤ破壊エネルギーを測定することによって評価した。耐ショックバースト性能は、後述する従来例を100とする指数評価によって表し、指数値が大きいほどタイヤ強度が優れ、耐ショックバースト性能が優れていることを示している。
また、ドライ制動性能については、試験タイヤの空気圧を230kPaで充填して、試験車両として用いられる排気量2500ccのSUV車両に装着し、直線のテストコースを初速100km/hで制動を開始して、停止するまでの走行距離を制動距離[m]として測定した。ドライ制動性能は、制動距離の測定値の逆数を、後述する従来例を100とする指数評価によって表し、指数値が大きいほど制動距離が短く、ドライ制動性能が優れていることを示している。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜13と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1〜4との18種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例の空気入りタイヤは、トレッド部2のセンター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcとショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、(Gc/Gsh)≧1.05を満たしておらず、トレッドゴム層50が3層になっていない。
また、比較例1の空気入りタイヤは、トレッド部2のセンター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、(Gc/Gsh)≦1.35を満たしておらず、トレッドゴム層50が3層になっていない。また、比較例2、3の空気入りタイヤは、トレッド部2のセンター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.05≦(Gc/Gsh)≦1.35の範囲内に入っていない。また、比較例4の空気入りタイヤは、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaと、中間ゴム層52の300%伸長時のモジュラスMbと、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとの関係が、Ma<Mb<Mcを満たしていない。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜13は、全てトレッド部2のセンター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcとショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.05≦(Gc/Gsh)≦1.35の範囲内になっており、トレッドゴム層50は、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMaと、中間ゴム層52の300%伸長時のモジュラスMbと、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとの関係が、Ma<Mb<Mcを満たしている。さらに、実施例1〜13に係る空気入りタイヤ1は、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMa、中間ゴム層52の300%伸長時のモジュラスMb、ベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMc、ベースゴム層53におけるセンター領域Tcに位置する部分の平均厚さccと、センター領域Tcにおけるタイヤ平均厚さGcとの比(cc/Gc)、ベースゴム層53におけるショルダー領域Tshに位置する部分の平均厚さcshと、ショルダー領域Tshにおけるタイヤ平均厚さGshとの比(csh/Gsh)、中間ゴム層52の300%伸長時のモジュラスMbと、キャップゴム層51の300%伸長時のモジュラスMa及びベースゴム層53の300%伸長時のモジュラスMcとの関係が、(0.7Ma+0.3Mc)<Mb<(0.3Ma+0.7Mc)の範囲内であるか否か、ショルダー領域Tshにおけるトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVshに対するセンター領域Tcにおけるトレッドゴム層50の平均実ゴム厚さVc(Vc/Vsh)が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図8A、図8Bに示すように、実施例1〜13に係る空気入りタイヤ1は、ドライ制動性能を従来例に対して低下させることなく、耐ショックバースト性能を従来例に対して向上させることができることが分かった。つまり、実施例1〜13に係る空気入りタイヤ1は、ドライ制動性能と耐ショックバースト性能とを両立することができる。