以下に、本発明に係るランフラットタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、ランフラットタイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、ランフラットタイヤ1の回転軸に直交すると共に、ランフラットタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、ランフラットタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあってランフラットタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
図1は、実施形態に係るランフラットタイヤ1の要部を示す子午断面図である。本実施形態に係るランフラットタイヤ1は、子午面断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2は、ゴム組成物から成るトレッドゴム層4を有している。また、トレッド部2の表面、即ち、当該ランフラットタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、接地面3として形成され、接地面3は、ランフラットタイヤ1の輪郭の一部を構成している。トレッド部2には、接地面3にタイヤ周方向に延びる主溝30が複数形成されており、この複数の主溝30により、トレッド部2の表面には複数の陸部20が画成されている。本実施形態では、主溝30は4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、4本の主溝30は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側にそれぞれ2本ずつ配設されている。つまり、トレッド部2には、タイヤ赤道面CLの両側に配設される2本のセンター主溝31と、2本のセンター主溝31のそれぞれのタイヤ幅方向外側に配設される2本のショルダー主溝32との、計4本の主溝30が形成されている。
なお、主溝30とは、少なくとも一部がタイヤ周方向に延在する縦溝をいう。一般に主溝30は、3mm以上の溝幅を有し、6mm以上の溝深さを有し、摩耗末期を示すトレッドウェアインジケータ(スリップサイン)を内部に有する。本実施形態では、主溝30は、9mm以上12mm以下の溝幅を有し、7mm以上8mm以下の溝深さを有しており、タイヤ赤道面CLと接地面3とが交差するタイヤ赤道線(センターライン)と実質的に平行である。主溝30は、タイヤ周方向に直線状に延在してもよいし、波形状又はジグザグ状に設けられてもよい。
主溝30によって画成される陸部20のうち、2本のセンター主溝31同士の間に位置し、タイヤ赤道面CL上に位置する陸部20は、センター陸部21になっている。また、隣り合うセンター主溝31とショルダー主溝32との間に位置し、センター陸部21のタイヤ幅方向外側に配置される陸部20はセカンド陸部22になっている。また、セカンド陸部22のタイヤ幅方向外側に位置し、ショルダー主溝32を介してセカンド陸部22に隣り合う陸部20はショルダー陸部23になっている。
なお、これらの陸部20は、タイヤ周方向の1周に亘ってリブ状に形成されていてもよく、トレッド部2に、タイヤ幅方向に延びるラグ溝(図示省略)が複数形成されることによって陸部20が主溝30とラグ溝とによって画成され、各陸部20がブロック状に形成されていてもよい。本実施形態では、陸部20はタイヤ周方向の1周に亘って形成されるリブ状の陸部20として形成されている。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両外側端にはショルダー部5が位置しており、ショルダー部5のタイヤ径方向内側には、サイドウォール部8が配設されている。即ち、サイドウォール部8は、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に配設されている。換言すると、サイドウォール部8は、タイヤ幅方向におけるランフラットタイヤ1の両側2箇所に配設されており、ランフラットタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出した部分を形成している。
タイヤ幅方向における両側に位置するそれぞれのサイドウォール部8のタイヤ径方向内側には、ビード部10が位置している。ビード部10は、サイドウォール部8と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されており、即ち、ビード部10は、一対がタイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側に配設されている。各ビード部10にはビードコア11が設けられており、ビードコア11のタイヤ径方向外側にはビードフィラー12が設けられている。ビードコア11は、スチールワイヤであるビードワイヤを束ねて円環状に形成される環状部材になっており、ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されるゴム部材になっている。
また、トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層14が設けられている。ベルト層14は、少なくとも2層の交差ベルト141、142が積層される多層構造によって構成されている。この交差ベルト141、142は、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するベルトコードの傾斜角として定義されるベルト角度が、所定の範囲内(例えば、20°以上55°以下)になっている。また、2層の交差ベルト141、142は、ベルト角度が互いに異なっている。このため、ベルト層14は、2層の交差ベルト141、142が、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。トレッド部2が有するトレッドゴム層4は、トレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されている。なお、トレッド部2は、ベルト層14の他に、ベルト層14のタイヤ径方向外側に、ベルト層14の少なくとも一部を覆うベルト補強層を有していてもよい。
ベルト層14のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部8のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス層13が連続して設けられている。このため、本実施形態に係るランフラットタイヤ1は、いわゆるラジアルタイヤとして構成されている。カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設される一対のビード部10間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。
詳しくは、カーカス層13は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10のうち、一方のビード部10から他方のビード部10にかけて配設されており、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにビード部10でビードコア11のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて、ビードコア11に沿って折り返されている。カーカス層13は、このようにビードコア11のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返される部分である巻上げ部132を有している。カーカス層13の巻上げ部132は、ビードコア11のタイヤ径方向外側の位置でタイヤ径方向外側に向かって延びて配設されており、カーカス層13における、一対のビード部10同士の間に亘って配設される部分である本体部131に対して、タイヤ幅方向外側から重ねられている。ビードフィラー12は、ビードコア11のタイヤ径方向外側における、ビードコア11とカーカス層13の本体部131と巻上げ部132とに囲まれた領域に配設されるゴム材になっている。また、ベルト層14は、このように一対のビード部10間に架け渡されるカーカス層13における、トレッド部2に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されている。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成る複数のカーカスコードを、コートゴムで被覆して圧延加工することによって構成されている。カーカスプライを構成するカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつ、タイヤ周方向にある角度を持って複数並設されている。
ビード部10における、ビードコア11及びカーカス層13の巻上げ部132のタイヤ径方向内側やタイヤ幅方向外側には、リムフランジに対するビード部10の接触面を構成するリムクッションゴム17が配設されている。また、カーカス層13の内側、或いは、当該カーカス層13の、ランフラットタイヤ1における内部側には、インナーライナ16がカーカス層13に沿って形成されている。インナーライナ16は、ランフラットタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内面18を形成している。
さらに、サイドウォール部8には、サイド補強ゴム50が配設されている。サイド補強ゴム50は、サイドウォール部8の内部に設けられるゴム部材になっており、タイヤ内表面やタイヤ外表面には露出することなく配設されている。詳しくは、サイド補強ゴム50は、主にカーカス層13におけるサイドウォール部8に位置する部分のタイヤ幅方向内側に位置しており、サイドウォール部8においてカーカス層13とインナーライナ16との間に配置され、ランフラットタイヤ1の子午断面における形状が、タイヤ幅方向外側に凸となる三日月形状に形成されている。サイドウォール部8に配設されるサイド補強ゴム50は、サイドウォール部8を形成するゴムやビード部10に配設されるリムクッションゴム17よりも、強度が高いゴム材料により形成されている。
図2は、図1のA部詳細図である。トレッド部2は、タイヤ幅方向における中央に位置する領域をセンター領域Acとし、タイヤ幅方向における両端に位置する領域をショルダー領域Ashとする場合における、それぞれの領域のタイヤ平均厚さの相対関係が、所定の関係を満たしている。これらの領域のうち、センター領域Acは、複数の陸部20のうち、タイヤ赤道面CLに最も近い陸部20であるセンター陸部21が位置する領域になっている。詳しくは、センター領域Acは、ランフラットタイヤ1の子午面断面視において、センター陸部21を画成するセンター主溝31の溝壁35のうちセンター陸部21側に位置する溝壁35と、センター陸部21のタイヤ径方向外側の外輪郭線を示す接地面3との交点24から、タイヤ内面18に対して垂直に延ばした線をセンター領域境界線Lcとする場合に、センター陸部21のタイヤ幅方向両側に位置する2本のセンター領域境界線Lcの間に位置する領域になっている。
なお、センター主溝31が、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に屈曲したり湾曲したりすることによりタイヤ幅方向に振幅している場合は、センター領域Acは、タイヤ幅方向に最も広くなる範囲で規定される。つまり、センター主溝31がタイヤ幅方向に振幅している場合は、センター領域Acを規定するセンター領域境界線Lcは、センター陸部21を画成するセンター主溝31の溝壁35における、タイヤ周方向上において最もタイヤ幅方向外側に位置する部分と接地面3との交点24からタイヤ内面18に対して垂直に延ばした線になる。
また、ショルダー領域Ashは、ベルト層14のタイヤ幅方向における幅の85%の位置Pとベルト層14のタイヤ幅方向における端部144との間の領域になっている。詳しくは、ショルダー領域Ashは、ランフラットタイヤ1の子午面断面視において、ベルト層14が有する複数の交差ベルト141、142のうち、タイヤ幅方向における幅が最も広い交差ベルトである最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における幅の85%の位置Pと、最幅広ベルト143の端部144とから、タイヤ内面18に対して垂直に延ばした線を、それぞれショルダー領域境界線Lshとする場合に、2本のショルダー領域境界線Lshの間に位置する領域になっている。これらのように規定されるショルダー領域Ashは、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側で規定され、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向における両側にそれぞれ位置している。
本実施形態では、ベルト層14が有する2層の交差ベルト141、142のうち、タイヤ径方向内側に位置する交差ベルト141のタイヤ幅方向における幅が、他方の交差ベルト142のタイヤ幅方向における幅よりも広くなっており、このタイヤ径方向内側に位置する交差ベルト141が、最幅広ベルト143になっている。
また、最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における幅の85%の位置Pは、最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における中心、或いはタイヤ赤道面CLの位置を中心として、最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における幅の85%の領域がタイヤ幅方向両側に均等に振り分けられた際における、85%の領域の端部の位置になっている。このため、最幅広ベルト143のタイヤ幅方向における幅の85%の位置Pと、最幅広ベルト143の端部144との間隔は、タイヤ赤道面CLのタイヤ幅方向両側で同じ大きさになっている。
これらのセンター領域Acとショルダー領域Ashとは、ランフラットタイヤ1を正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態における形状で規定される。ここでいう正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
これらのように規定されるセンター領域Acとショルダー領域Ashとのそれぞれの領域のタイヤ平均厚さは、タイヤ子午断面視における陸部20のタイヤ径方向外側の輪郭線である外輪郭線を示す接地面3からタイヤ内面18までの厚さであるタイヤ厚さの、領域ごとの平均値になっている。つまり、センター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcは、センター領域Acにおける接地面3からタイヤ内面18までの距離の平均値になっており、ショルダー領域Ashにおけるタイヤ平均厚さGshは、ショルダー領域Ashにおける接地面3からタイヤ内面18までの距離の平均値になっている。
センター領域Acのタイヤ平均厚さGcとショルダー領域Ashのタイヤ平均厚さGshとは、ランフラットタイヤ1の子午面断面における、トレッド部2のセンター領域Acとショルダー領域Ashのそれぞれの断面積を、各領域の幅で除算することによって算出してもよい。例えば、センター領域Acのタイヤ平均厚さGcは、センター領域Acの断面積を、センター領域Acを規定する2本のセンター領域境界線Lc同士の距離で除算することによって算出してもよい。2本のセンター領域境界線Lc同士が、互いに傾斜している場合には、それぞれのセンター領域境界線Lc上における接地面3の位置とタイヤ内面18の位置との中間の位置での距離によって、センター領域Acの断面積を割ってセンター領域Acのタイヤ平均厚さGcを算出する。ショルダー領域Ashのタイヤ平均厚さGshも同様に、ショルダー領域Ashの断面積を、ショルダー領域Ashを規定するショルダー領域境界線Lsh同士の距離で除算することにより算出してもよい。
トレッド部2は、これらのように算出するセンター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Ashにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.00≦(Gc/Gsh)≦1.30の範囲内になっている。なお、センター領域Acのタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Ashのタイヤ平均厚さGshとの関係は、1.05≦(Gc/Gsh)≦1.20の範囲内であるのが好ましい。
図3は、サイド領域Asについての説明図である。トレッド部2のセンター領域Acは、サイドウォール部8に定められるサイド領域Asのタイヤ平均厚さに対しても、相対関係が所定の関係を満たしている。この場合におけるサイド領域Asは、サイドウォール部8における、カーカス層13のタイヤ幅方向の幅が最大幅となる部分のタイヤ内面18上の位置CP1から、タイヤ径方向外側にタイヤ断面高さSHの0.15倍のタイヤ内面18上における位置CP2までのタイヤ内面18上の範囲によって区画されるサイドウォール部8の領域になっている。
詳しくは、位置CP1は、カーカス層13における、タイヤ幅方向の幅が最大幅となる部分であるカーカス最大幅位置Cからタイヤ幅方向に延ばした線を第1サイド領域境界線Ls1とする際における、第1サイド領域境界線Ls1とタイヤ内面18との交点になっている。この場合におけるカーカス最大幅位置Cは、カーカス層13の本体部131の、タイヤ幅方向における幅が最大幅となる部分になっている。位置CP2は、位置CP1のタイヤ径方向における位置からタイヤ径方向外側にタイヤ断面高さSHの0.15倍のタイヤ内面18上における位置になっており、換言すると、第1サイド領域境界線Ls1を、タイヤ径方向外側にタイヤ断面高さSHの0.15倍の間隔でオフセットさせた線とタイヤ内面18との交点になっている。タイヤ断面高さSHは、タイヤ外径とリム径との差の1/2の距離であり、タイヤを正規リムに装着して正規内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
サイド領域Asは、位置CP2の位置でタイヤ内面18と直交する線を第2サイド領域境界線Ls2とする際の、サイドウォール部8における第1サイド領域境界線Ls1と第2サイド領域境界線Ls2との間に位置する領域になっている。このように定められるサイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsと、センター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcとは、0.98≦(Gc/Gs)≦1.25の範囲内となる関係になっている。
なお、この場合におけるサイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsは、タイヤ子午断面視におけるサイドウォール部8のタイヤ幅方向外側の表面から、タイヤ内面18までの厚さであるタイヤ厚さの平均値になっている。つまり、サイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsは、サイド領域Asにおけるサイドウォール部8の表面からタイヤ内面18までの距離の平均値になっている。また、センター領域Acのタイヤ平均厚さGcと、サイド領域Asのタイヤ平均厚さGsとの関係は、1.02≦(Gc/Gs)≦1.16の範囲内であるのが好ましい。
カーカス層13は、巻上げ部132が、カーカス最大幅位置Cよりもタイヤ径方向外側に位置しており、巻上げ部132のタイヤ径方向外側の端部である巻上げ部端部133が、サイド領域As内に位置している。また、カーカス層13は、サイド領域Asに位置する部分のタイヤ周方向50mmあたりのカーカスコードの本数が、37本以上44本以下の範囲内になっている。
センター領域Acとショルダー領域Ashとでタイヤ平均厚さの相対関係が所定の範囲内となるトレッド部2は、タイヤ平均厚さのみでなく、トレッド部2に形成された溝を考慮したトレッドゴム層4の厚さである実ゴム厚さも、相対関係が所定の関係を満たしている。つまり、センター領域Acとショルダー領域Ashとの領域ごとに算出する実ゴム厚さである平均実ゴム厚さも、センター領域Acの平均実ゴム厚さとショルダー領域Ashの平均実ゴム厚さとで、相対関係が所定の関係を満たしている。図4は、トレッド部2の要部斜視図であり、トレッドゴム層4の実ゴム厚さについての説明図である。トレッド部2には、主溝30が形成されており、タイヤ周方向に延びる主溝30の他にも、タイヤ幅方向に延びるラグ溝40等の溝が形成されている。トレッドゴム層4の平均実ゴム厚さは、溝の部分にはトレッドゴム層4を構成するゴムが存在しないものとして算出するトレッドゴム層4の厚さになっている。このため、各領域のトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さは、各領域において主溝30やラグ溝40等の溝を含まないトレッドゴム層4の実際の体積を、各領域に位置するタイヤ内面18の面積で除算することによって算出する厚さになっている。
例えば、センター領域Acにおけるトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVcは、センター領域Acにおいて溝を含まないトレッドゴム層4の体積を、センター領域Acに位置するタイヤ内面18の面積で除算することによって算出する。センター領域Acに位置するタイヤ内面18の面積は、タイヤ内面18における、センター領域Acを規定する2本のセンター領域境界線Lcで挟まれてタイヤ周方向に延在する部分の面積になっている。
また、ショルダー領域Ashにおけるトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVshは、ショルダー領域Ashにおいて溝を含まないトレッドゴム層4の体積を、ショルダー領域Ashに位置するタイヤ内面18の面積で除算することによって算出する。ショルダー領域Ashに位置するタイヤ内面18の面積は、タイヤ内面18における、ショルダー領域Ashを規定する2本のショルダー領域境界線Lshで挟まれてタイヤ周方向に延在する部分の面積になっている。
トレッド部2は、これらのように算出するセンター領域Acにおけるトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVcと、ショルダー領域Ashにおけるトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVshとの関係が、1.6≦(Vc/Vsh)≦2.5の範囲内になっている。
なお、各領域のトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さは、ランフラットタイヤ1から領域ごとにトレッドゴム層4を切り出し、切り出したトレッドゴム層4の質量とトレッドゴム層4を構成するゴムの比重とに基づいて体積を算出し、算出した体積を、各領域に位置するタイヤ内面18の面積で除算することによって算出してもよい。
また、トレッドゴム層4を成すゴムのうち、少なくともセンター領域Acに含まれるゴムは、300%伸張時のモジュラスが、10MPa以上16MPa以下の範囲内になっている。なお、300%伸張時のモジュラスは、JIS K6251(3号ダンベル使用)に準拠した23℃での引張試験により測定され、300%伸長時の引張り応力を示す。また、トレッドゴム層4を成すゴムは、センター領域Ac以外に位置するゴムの300%伸張時のモジュラスも、10MPa以上16MPa以下の範囲内であってもよい。
図5は、図2に示すショルダー領域Ashの近傍の詳細図である。タイヤ子午面断面において三日月形状に形成されるサイド補強ゴム50は、タイヤ径方向外側の端部である外側端部51が、ショルダー領域Ash内に位置している。換言すると、サイド補強ゴム50は、外側端部51がトレッド部2におけるベルト層14のタイヤ径方向内側に位置しており、サイド補強ゴム50とベルト層14とは、所定の範囲内のラップ量で、一部がタイヤ径方向に重なって配設されている。
また、サイド補強ゴム50は、100%伸張時のモジュラスが、7MPa以上11MPa以下の範囲内になっている。なお、100%伸張時のモジュラスは、JIS K6251(3号ダンベル使用)に準拠した23℃での引張試験により測定され、100%伸長時の引張り応力を示す。
カーカス層13は、ショルダー領域Ashに位置する部分が、内圧非充填の状態においてタイヤ内面18側に向かって膨出している。つまり、内圧非充填の状態におけるカーカス層13は、トレッド部2に位置する部分の大部分はタイヤ径方向外側に向かって膨出しており、サイドウォール部8に位置する部分の大部分はタイヤ幅方向外側に向かって膨出している。即ち、カーカス層13は、ビード部10以外の部分の大部分では、ランフラットタイヤ1に対して内圧を非充填の状態では、タイヤ外側の表面側に向かって膨出しているのに対し、カーカス層13におけるショルダー領域Ashに位置する部分はタイヤ内面18側に向かって膨出して形成されている。カーカス層13は、ショルダー領域Ashに位置する部分に、このように内圧非充填の状態においてタイヤ内面18側に向かって膨出する内側方向膨出部136を有している。
図6は、図5に示すカーカス層13の内側方向膨出部136の詳細図である。カーカス層13の内側方向膨出部136は、カーカス層13のカーカスプロファイルCPに対するタイヤ内面18側への突出量BPが、0.8mm以上2.0mm以下の範囲内になっている。この場合におけるカーカスプロファイルCPは、カーカス層13における、トレッド部2に位置する部分と、サイドウォール部8に位置する部分とのうち、タイヤ内面18側に向かって膨出していない部分同士を滑らかにつなぐ仮想線になっている。
また、サイド補強ゴム50は、ショルダー領域Ashを規定する2本のショルダー領域境界線Lshのうち、最幅広ベルト143の端部144を通るショルダー領域境界線Lsh上での厚さGrが、3mm以上5mm以下の範囲内になっている。また、サイド補強ゴム50は、この厚さGrと、同じショルダー領域境界線Lsh上でのトレッドゴム層4の厚さGtとの関係が、0.3≦(Gr/Gt)≦0.6の範囲内になっている。
本実施形態に係るランフラットタイヤ1を車両に装着する際には、ビード部10にリムホイールR(図7参照)を嵌合することによってリムホイールRにランフラットタイヤ1をリム組みし、内部に空気を充填してインフレートした状態で車両に装着する。ランフラットタイヤ1を装着した車両が走行すると、接地面3のうち下方に位置する部分の接地面3が路面に接触しながら当該ランフラットタイヤ1は回転する。車両は、接地面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。例えば、駆動力を路面に伝達する際には、車両が有するエンジン等の原動機で発生した動力がリムホイールRに伝達され、リムホイールRからビード部10に伝達され、ランフラットタイヤ1に伝達される。
ランフラットタイヤ1の使用時は、これらのように各部に様々な方向の荷重が作用し、これらの荷重は、内部に充填された空気の圧力や、ランフラットタイヤ1の骨格として設けられるカーカス層13等によって受ける。例えば、車両の重量や路面の凹凸によって、トレッド部2とビード部10との間でタイヤ径方向に作用する荷重は、主に、ランフラットタイヤ1の内部に充填された空気の圧力で受けたり、サイドウォール部8等が撓んだりしながら受ける。即ち、ランフラットタイヤ1の内部に充填された空気は、ランフラットタイヤ1を内部から外側方向に押し広げようとする力として作用する。車両の走行時には、ランフラットタイヤ1は、このように内部に充填された空気による、内部から外側方向への付勢力によって大きな荷重を受けたり、サイドウォール部8等が適度に撓んだりしながら走行することにより、車両は乗り心地を確保しつつ走行することが可能になっている。
ここで、ランフラットタイヤ1は、例えば接地面3に異物が刺さってパンクする等により、内部の空気が漏出する場合がある。内部の空気が漏出すると、空気圧が低下し、ランフラットタイヤ1の内部から外側方向への空気による付勢力が低減するため、車両の走行時における荷重を、内部の空気圧によって受けることが困難になる。この場合、本実施形態に係るランフラットタイヤ1は、空気圧によって受けることが困難になった荷重の一部を、サイドウォール部8に設けられるサイド補強ゴム50によって受けることが可能になっている。つまり、サイド補強ゴム50は、サイドウォール部8を形成するゴムよりも強度が高いゴム材料により形成されているため、サイドウォール部8に対してタイヤ径方向の大きな荷重が作用した場合でも、サイド補強ゴム50は、サイドウォール部8のタイヤ径方向の変形を抑えることが可能になっている。
一方で、ランフラットタイヤ1は、サイドウォール部8にサイド補強ゴム50が配設されることにより、サイドウォール部8にサイド補強ゴム50が配設されない通常の空気入りタイヤと比較して、サイドウォール部8にタイヤ径方向の荷重が作用した際におけるサイドウォール部8の撓みが小さくなっている。このため、車両の走行時に、路面上に存在する石等の路面から突出する突起物をトレッド部2で踏んでしまった場合、ランフラットタイヤ1は、突起物が存在することによる路面の形状の変化を吸収することができず、突起物は、ランフラットタイヤ1のトレッド部2を貫通してしまう虞がある。即ち、サイドウォール部8の剛性が高く、タイヤ径方向の荷重に対するサイドウォール部8の撓みが小さいランフラットタイヤ1は、路面上の突起物を踏んだ際に、サイドウォール部8の撓みが小さいことに起因して突起物がトレッド部2を貫通し、ショックバーストが発生する虞がある。
これに対し、本実施形態に係るランフラットタイヤ1は、センター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcが厚く、ショルダー領域Ashにおけるタイヤ平均厚さGshが薄い傾向にあるため、サイドウォール部8にサイド補強ゴム50が配設されることによってサイドウォール部8の剛性が高い場合におけるショックバーストを抑制することができる。図7は、実施形態に係るランフラットタイヤ1で路面100上の突起物105を踏んだ状態を示す説明図である。本実施形態に係るランフラットタイヤ1では、センター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcを厚めにすることにより、トレッド部2のタイヤ幅方向における中央付近の破断強度を増加させることができるため、路面100上の突起物105をセンター領域Ac付近で踏んだ場合でも、突起物105がトレッド部2を貫通することを抑制することができる。また、ショルダー領域Ashのタイヤ平均厚さGshを薄めにすることにより、トレッド部2のセンター領域Ac付近で突起物105を踏んだ際に、ショルダー領域Ashを優先的に変形させることができ、センター領域Ac付近が路面100から離れる方向に、ショルダー領域Ashを変形させ易くすることができる。これにより、トレッド部2に対する突起物105からの圧力を低減することができ、突起物105がトレッド部2を貫通することを抑制することができる。従って、車両の走行中に突起物105を踏むことに起因するショックバーストを抑制することができる。
具体的には、本実施形態に係るランフラットタイヤ1のトレッド部2は、センター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Ashにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.00≦(Gc/Gsh)≦1.30の範囲内になっているため、転がり抵抗を低減しつつ、ショックバーストを抑制することができる。つまり、センター領域Acのタイヤ平均厚さGcとショルダー領域Ashのタイヤ平均厚さGshとの関係が、(Gc/Gsh)<1.00である場合は、センター領域Acのタイヤ平均厚さGcが薄過ぎるため、センター領域Acの破断強度が増加し難くなる。または、ショルダー領域Ashのタイヤ平均厚さGshが厚過ぎるため、ショルダー領域Ashが変形し難くなり、トレッド部2で突起物105を踏んだ際に、センター領域Ac付近が路面100から離れる方向にショルダー領域Ashが変形し難くなる。このため、ショックバーストを抑制し難くなる。
また、センター領域Acのタイヤ平均厚さGcとショルダー領域Ashのタイヤ平均厚さGshとの関係が、(Gc/Gsh)>1.30である場合は、センター領域Acのタイヤ平均厚さGcが厚過ぎ、ショルダー領域Ashのタイヤ平均厚さGshが薄過ぎるため、接地面3の接地形状のタイヤ幅方向おける中央付近と両端付近とで、接地長さに大きな差がついてしまい、転がり抵抗が大きくなり易くなる。つまり、接地形状のタイヤ幅方向における中央付近の接地長さが長く、タイヤ幅方向における両端付近の接地長さが短いということは、タイヤ幅方向における中央付近と両端付近とでトレッド部2の撓み方が異なることになり、タイヤ幅方向における中央付近の撓み方が、両端付近の撓み方よりも大きくなる。これにより、接地面3の接地時のトレッド部2の撓みは、トレッド部2のタイヤ幅方向における中央付近に集中し、この部分だけ大きく撓むため、トレッド部2のタイヤ幅方向における中央付近が大きく撓むことに起因して転がり抵抗が大きくなり易くなる。
これに対し、センター領域Acのタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Ashのタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.00≦(Gc/Gsh)≦1.30の範囲内である場合は、接地面3の接地時に、トレッド部2のタイヤ幅方向における中央付近のみが大きく撓むことを抑制しつつ、センター領域Acの破断強度を確保し、ショルダー領域Ashの変形のし易さを確保することができる。これにより、転がり抵抗を低減しつつ、ショックバーストを抑制することができ、耐ショックバースト性能を向上させることができる。
さらに、トレッド部2のセンター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、サイドウォール部8のサイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsとの関係が、0.98≦(Gc/Gs)≦1.25の範囲内であるため、ランフラット走行性能の低下を抑えつつ、転がり抵抗を低減することができる。つまり、センター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、サイドウォール部8のサイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsとの関係が、(Gc/Gs)<0.98である場合は、サイド補強ゴム50の厚さが厚過ぎるため、サイド補強ゴム50の粘性による損失エネルギーが大きくなり、転がり抵抗が大きくなり易くなる。また、センター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、サイドウォール部8のサイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsとの関係が、(Gc/Gs)>1.25である場合は、サイド補強ゴム50の厚さが薄過ぎるため、サイド補強ゴム50の剛性が低くなり過ぎる虞があり、ランフラット走行時にサイドウォール部8が撓み易くなってランフラット走行性能が低下し易くなる。
これに対し、センター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、サイドウォール部8のサイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsとの関係が、0.98≦(Gc/Gs)≦1.25の範囲内である場合は、サイド補強ゴム50の剛性が低くなり過ぎない程度にサイド補強ゴム50の厚さを薄くすることができる。これにより、ランフラット走行性能の低下を抑えつつ、転がり抵抗を低減することができる。これらの結果、ランフラット走行性能を確保しつつ耐ショックバースト性能を向上させることができ、さらに、転がり抵抗を低減することができる。
また、サイド補強ゴム50は、100%伸張時のモジュラスが、7MPa以上11MPa以下の範囲内であるため、より確実に低転がり抵抗を確保しつつ、耐ショックバースト性能を向上させることができる。つまり、サイド補強ゴム50の100%伸張時のモジュラスが、7MPa未満である場合は、サイド補強ゴム50が柔らか過ぎるため、サイド補強ゴム50の剛性が低くなり過ぎる虞がある。この場合、サイドウォール部8が撓み過ぎるため、タイヤの損失エネルギーが大きくなり転がり抵抗が大きくなり易くなる。また、サイド補強ゴム50の100%伸張時のモジュラスが、11MPaより大きい場合は、サイド補強ゴム50の剛性が高くなり過ぎるため、サイドウォール部8が撓み難くなる虞がある。この場合、トレッド部2で突起物105を踏んだ際に、トレッド部2が路面100から離れる方向にサイドウォール部8が変形し難くなるため、ショックバーストを抑制し難くなる虞がある。
これに対し、サイド補強ゴム50の100%伸張時のモジュラスが、7MPa以上11MPa以下の範囲内である場合は、転がり抵抗が増大しない程度にサイドウォール部8の撓み易さを確保し、ショックバーストを抑制することができる。この結果、より確実に低転がり抵抗を確保しつつ、耐ショックバースト性能を向上させることができる。
また、トレッド部2は、センター領域Acにおけるトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVcと、ショルダー領域Ashにおけるトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVshとの関係が、1.6≦(Vc/Vsh)≦2.5の範囲内であるため、転がり抵抗を低減しつつ、ショックバーストを抑制することができる。つまり、センター領域Acのトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVcと、ショルダー領域Ashのトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVshとの関係が、(Vc/Vsh)<1.6である場合は、センター領域Acのトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVcが薄過ぎるため、センター領域Acの破断強度が増加し難くなる虞がある。または、ショルダー領域Ashのトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVshが厚過ぎるため、突起物105を踏んだ際にショルダー領域Ashが変形し難くなったりする虞がある。また、センター領域Acのトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVcと、ショルダー領域Ashのトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVshとの関係が、(Vc/Vsh)>2.5である場合は、センター領域Acのトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVcが厚過ぎ、ショルダー領域Ashのトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVshが薄過ぎるため、接地面3の接地形状のタイヤ幅方向における中央付近の接地長さが、タイヤ幅方向における両端付近の接地長さに対して大幅に長くなる虞がある。この場合、接地面3の接地時に、トレッド部2のタイヤ幅方向における中央付近だけ大きく撓み易くなり、これに起因して転がり抵抗が大きくなり易くなる虞がある。
これに対し、センター領域Acのトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVcと、ショルダー領域Ashのトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVshとの関係が、1.6≦(Vc/Vsh)≦2.5の範囲内である場合は、接地面3の接地時に、トレッド部2のタイヤ幅方向における中央付近のみが大きく撓むことを抑制しつつ、センター領域Acの破断強度を確保し、ショルダー領域Ashの変形のし易さを確保することができる。この結果、より確実に耐ショックバースト性能を向上させると共に、転がり抵抗を低減することができる。
また、サイド補強ゴム50は、外側端部51がショルダー領域Ash内に位置するため、より確実に低転がり抵抗を確保しつつ、耐ショックバースト性能を向上させることができる。つまり、サイド補強ゴム50の外側端部51が、ショルダー領域Ashよりもタイヤ幅方向内側に位置する場合、即ち、タイヤ幅方向におけるセンター側に位置する場合は、ショルダー領域Ashにおけるサイド補強ゴム50の割合が大きくなり過ぎるため、ショルダー領域Ashの曲げ剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、ショルダー領域Ashが変形し難くなるため、トレッド部2で突起物105を踏んだ際においても、センター領域Ac付近が路面100から離れる方向にショルダー領域Ashが変形し難くなり、ショックバーストを抑制し難くなる虞がある。また、サイド補強ゴム50の外側端部51が、ショルダー領域Ashよりもタイヤ幅方向外側に位置する場合、即ち、タイヤ幅方向におけるショルダー部5側に位置する場合は、サイド補強ゴム50による、ショルダー領域Ash付近の曲げ剛性の確保の寄与度が低下する虞がある。この場合、トレッド部2のショルダー領域Ashが撓み易くなり、タイヤの損失エネルギーが大きくなり転がり抵抗が大きくなり易くなる。
これに対し、サイド補強ゴム50の外側端部51が、ショルダー領域Ash内に位置する場合は、ショルダー領域Ashの剛性が高くなり過ぎない程度に、トレッド部2のショルダー領域Ashからサイドウォール部8にかけた付近の曲げ剛性をサイド補強ゴム50によって確保することができ、低転がり抵抗を確保することができる。この結果、より確実に低転がり抵抗を確保しつつ、耐ショックバースト性能を向上させることができる。
また、カーカス層13は、サイド領域Asに位置する部分のタイヤ周方向50mmあたりのカーカスコードの本数が、37本以上44本以下の範囲内であるため、より確実に低転がり抵抗を確保しつつ、耐ショックバースト性能を向上させることができる。つまり、カーカス層13は、ランフラットタイヤ1の骨格を構成する部材であるため、ランフラット走行時におけるサイドウォール部8の剛性の確保にも寄与するが、サイド領域Asに位置する部分のタイヤ周方向50mmあたりのカーカスコードの本数が37本未満である場合は、サイド領域Asに位置するカーカス層13の曲げ剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、サイドウォール部8が撓み易くなり、タイヤの損失エネルギーが大きくなり転がり抵抗が大きくなり易くなる。また、カーカス層13における、サイド領域Asに位置する部分のタイヤ周方向50mmあたりのカーカスコードの本数が44本より多い場合は、サイド領域Asに位置するカーカス層13の曲げ剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、サイドウォール部8が変形し難くなるため、トレッド部2で突起物105を踏んだ際においても、センター領域Ac付近が路面100から離れる方向にサイドウォール部8が変形し難くなり、ショックバーストを抑制し難くなる虞がある。
これに対し、カーカス層13における、サイド領域Asに位置する部分のタイヤ周方向50mmあたりのカーカスコードの本数が、37本以上44本以下の範囲内である場合は、サイドウォール部8の曲げ剛性を、転がり抵抗が増大しない程度に適度に撓ませることができる剛性にすることができる。この結果、より確実に低転がり抵抗を確保しつつ、耐ショックバースト性能を向上させることができる。
また、カーカス層13は、巻上げ部132のタイヤ径方向外側の端部である巻上げ部端部133がサイド領域As内に位置するため、より確実に低転がり抵抗を確保しつつ、耐ショックバースト性能を向上させることができる。つまり、カーカス層13の巻上げ部端部133が、サイド領域Asよりタイヤ径方向外側に位置する場合、即ち、タイヤ径方向におけるショルダー部5側に位置する場合は、巻上げ部132がショルダー領域Ashに近付き過ぎるため、ショルダー領域Ashの曲げ剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、ショルダー領域Ashが変形し難くなるため、トレッド部2で突起物105を踏んだ際においても、センター領域Ac付近が路面100から離れる方向にショルダー領域Ash付近が変形し難くなり、ショックバーストを抑制し難くなる虞がある。また、カーカス層13の巻上げ部端部133が、サイド領域Asよりタイヤ径方向内側に位置する場合、即ち、タイヤ径方向におけるビード部10側に位置する場合は、サイド領域As内に位置するカーカス層13は本体部131のみとなるため、サイドウォール部8におけるサイド領域Asの曲げ剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、サイドウォール部8が撓み易くなり、タイヤの損失エネルギーが大きくなり転がり抵抗が大きくなり易くなる。
これに対し、カーカス層13の巻上げ部端部133が、サイド領域As内に位置する場合は、サイドウォール部8の曲げ剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、ショルダー領域Ashの撓み易さを確保することができる。この結果、より確実に低転がり抵抗を確保しつつ、耐ショックバースト性能を向上させることができる。
また、カーカス層13は、ショルダー領域Ashに位置する部分に内側方向膨出部136を有しているため、カーカス層13に作用する張力を低減することができ、より確実に耐ショックバースト性能を向上させることができる。つまり、カーカス層13は、ランフラットタイヤ1の使用時に内圧が充填され、カーカス層13に張力が作用してから、内圧によってタイヤ外側の表面側に向かって膨出する形状になり、その後にカーカス層13の内側方向膨出部136に対して張力が作用する。このため、カーカス層13における内側方向膨出部136は、内圧充填後でも、内圧によって作用する張力を低く抑えることができ、ショルダー領域Ash付近の曲げ剛性を低減することができる。これにより、トレッド部2のセンター領域Ac付近で突起物105を踏んだ際に、より確実にショルダー領域Ashを優先的に変形させることができ、トレッド部2に対する突起物105からの圧力を低減することができる。この結果、より確実に耐ショックバースト性能を向上させることができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態では、主溝30は4本が形成されているが、主溝30は4本以外であってもよい。また、上述した実施形態では、センター領域Acは、タイヤ赤道面CL上に位置する陸部20であるセンター陸部21のタイヤ幅方向における範囲と一致しているが、センター領域Acは、タイヤ赤道面CL上に位置していなくてもよい。例えば、タイヤ赤道面CL上に主溝30が位置している場合、センター領域Acは、タイヤ赤道面CL上に位置する主溝30と、当該主溝30の次にタイヤ赤道面CLに近い主溝30とによって画成される陸部20のタイヤ幅方向における範囲であってもよい。換言すると、センター領域Acは、隣り合う2本の主溝30によって挟まれた領域のうち、タイヤ赤道面CLに最も近い領域がセンター領域Acとして用いられればよい。
また、上述した実施形態では、ラグ溝40は隣り合う主溝30同士の間に亘って形成されていないが、ラグ溝40は隣り合う主溝30同士の間に亘って形成されていてもよい。つまり、各領域の陸部20は、タイヤ幅方向に延びるリブ状に形成されていてもよく、陸部20がタイヤ幅方向に隣り合う主溝30とタイヤ周方向に隣り合うラグ溝40によって画成される、ブロック状に形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、カーカス層13は、ショルダー領域Ashに位置する部分に内側方向膨出部136を有しているが、内側方向膨出部136は、内圧非充填の状態において明確にタイヤ内面18側に向かって膨出していなくてもよい。内側方向膨出部136は、例えば、内圧非充填の状態のタイヤ子午断面視における形状が直線状に形成されていていたり、波状に形成されていたりしてもよい。カーカス層13の内側方向膨出部136は、内圧充填時には、カーカス層13に作用する張力によってタイヤ外側の表面側に向かって膨出する形状になるが、その際に、カーカス層13におけるショルダー領域Ashに位置する部分の張力を低減することができる形状であれば、その形状は問わない。
[実施例]
図8A〜図8Cは、ランフラットタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記のランフラットタイヤ1について、従来例のランフラットタイヤと、本発明に係るランフラットタイヤ1と、本発明に係るランフラットタイヤ1と比較する比較例のランフラットタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、ショックバーストに対する耐久性である耐ショックバースト性と、転がり抵抗についての性能である転がり抵抗性能と、ランフラット走行時の走行性能であるランフラット走行性能とについての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが245/50R19 105Wサイズのランフラットタイヤ1を、リムサイズ19×7.5JのJATMA標準のリムホイールにリム組みしたものを用いて行った。各試験項目の評価方法は、耐ショックバースト性については、試験タイヤの空気圧を220kPaで充填し、プランジャー径19mm、押し込み速度50mm/分にてJIS K6302に準じたプランジャー破壊試験を行い、タイヤ破壊エネルギーを測定することによって評価した。耐ショックバースト性は、後述する従来例を100とした指数で表し、指数値が大きいほどタイヤ強度が優れ、耐ショックバースト性が優れていることを示している。
また、転がり抵抗性能については、試験タイヤの空気圧を250kPaで充填し、ドラム半径854mm、速度80km/h、負荷荷重7.26kNにて30minの予備走行を行った後の転がり抵抗を測定した。転がり抵抗性能は、測定した転がり抵抗の逆数を、後述する従来例を100とする指数で表し、指数値が大きいほど転がり抵抗が小さいことを示している。
また、ランフラット走行性能については、各試験タイヤをリムサイズ19×7.5Jのリムに組み付けた後、空気を抜いた状態で、後輪駆動2000ccの試験用車両の前輪右側に装着して、楕円形の周回コースを80km/hの速度で反時計廻りに走行し、テストドライバーがタイヤ故障による異常振動を感じ、走行を中止するまでの距離を測定した。ランフラット走行性能は、測定した距離を、後述する従来例を100とする指数で表した。この指数値が大きいほどランフラット耐久性が優れ、ランフラット走行性能が高いことを示している。
性能評価試験は、従来のランフラットタイヤの一例である従来例のランフラットタイヤと、本発明に係るランフラットタイヤ1である実施例1〜12と、本発明に係るランフラットタイヤ1と比較するランフラットタイヤである比較例1、2との15種類のランフラットタイヤについて行った。このうち、従来例のランフラットタイヤは、トレッド部2のセンター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Ashにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.00≦(Gc/Gsh)≦1.30の範囲内になっておらず、また、トレッド部2のセンター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、サイドウォール部8のサイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsとの関係が、0.98≦(Gc/Gs)≦1.25の範囲内になっていない。
また、比較例1のランフラットタイヤは、トレッド部2のセンター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、サイドウォール部8のサイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsとの関係が、0.98≦(Gc/Gs)≦1.25の範囲内になっているものの、トレッド部2のセンター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Ashにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.00≦(Gc/Gsh)≦1.30の範囲内になっていない。また、比較例2のランフラットタイヤは、トレッド部2のセンター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Ashにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.00≦(Gc/Gsh)≦1.30の範囲内になっているものの、トレッド部2のセンター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、サイドウォール部8のサイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsとの関係が、0.98≦(Gc/Gs)≦1.25の範囲内になっていない。
これに対し、本発明に係るランフラットタイヤ1の一例である実施例1〜12は、全てトレッド部2のセンター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、ショルダー領域Ashにおけるタイヤ平均厚さGshとの関係が、1.00≦(Gc/Gsh)≦1.30の範囲内になっており、トレッド部2のセンター領域Acにおけるタイヤ平均厚さGcと、サイドウォール部8のサイド領域Asにおけるタイヤ平均厚さGsとの関係が、0.98≦(Gc/Gs)≦1.25の範囲内になっている。さらに、実施例1〜12に係るランフラットタイヤ1は、サイド補強ゴム50の100%伸長時のモジュラス[MPa]や、ショルダー領域Ashにおけるトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVshに対するセンター領域Acにおけるトレッドゴム層4の平均実ゴム厚さVc(Vc/Vsh)、サイド補強ゴム50の外側端部51の位置、サイド領域Asにおけるカーカスコードの50mmあたりの本数、カーカス層13の巻上げ部端部133の位置、カーカス層13の内側方向膨出部136の有無が、それぞれ異なっている。
これらのランフラットタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、図8A〜図8Cに示すように、実施例1〜12に係るランフラットタイヤ1は、ランフラット走行性能を従来例や比較例1、2に対して低下させることなく、従来例や比較例1、2に対して、耐ショックバースト性能を向上させることができると共に転がり抵抗を低減することができることが分かった。つまり、実施例1〜12に係るランフラットタイヤ1は、ランフラット走行性能を確保しつつ耐ショックバースト性能を向上させることができ、さらに、転がり抵抗を低減することができる。