JP2020015232A - 化粧シート - Google Patents

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Abstract

【課題】耐傷性及び後加工性に優れた化粧シートを提供する。【解決手段】化粧シート1は、透明樹脂層4の上に表面保護層5を有する。表面保護層5は、透明樹脂層4側の下層5bと、下層5bの上に形成された上層5aとを有する。上層5aは、層厚が3μm以上5μm未満であり、マルテンス硬さが150N/mm2以上250N/mm2以下である。下層5bは、層厚が3μm以上5μm未満であり、マルテンス硬さが80N/mm2以上150N/mm2以下である。透明樹脂層4のマルテンス硬さが40N/mm2以上60N/mm2以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、建築物の内外装や建具、家具等の表面等に使用される化粧シートに係り、特に、建具・造作用化粧シートに好適な技術に関する。
化粧シートは、特に建具・造作用化粧シートとして使用する場合には、耐傷性及び後加工性を有することが好ましい。
ここで耐傷性を考慮した建具・造作用の化粧シートとしては、例えば特許文献1に記載の化粧シートがある。
特開2013−83139号公報
近年、化粧シートを用いた化粧板の用途の拡大や、消費者の品質に対する意識の益々の高度化のため、表面の耐傷性と共に、V溝曲げ加工等の折り曲げ加工に対する後加工性(加工適性)も求められている。しかし、耐傷性を高くしようとすると後加工性が悪くなるなど、耐傷性と後加工性とは性能的にトレードオフの関係にある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、耐傷性及び後加工性に優れた化粧シートを提供することを目的としている。
発明者は、化粧シートとして使用可能で且つ耐傷性及び後加工性の両方を満足させることを目的として、表面保護層の硬さと表面保護層の層厚との関係を種々検討し、更には透明樹脂層との関係についても検討を加えることによって、本発明を見いだした。
課題を解決するために、本発明の一態様の化粧シートは、透明樹脂層の上に表面保護層を有し、上記表面保護層は、透明樹脂層側の下層と、その下層の上に形成された上層とを有し、上記上層は、層厚が3μm以上5μm未満であり、マルテンス硬さが150N/mm以上250N/mm以下であり、上記下層は、層厚が3μm以上5μm未満であり、マルテンス硬さが80N/mm以上150N/mm以下であり、上記透明樹脂層のマルテンス硬さが40N/mm以上60N/mm以下であることを要旨とする。
本発明の一態様によれば、表面保護層の硬さと層厚との関係、更には、透明樹脂層の硬さを規定することで、耐傷性及び後加工性に優れた化粧シートを提供することができる。
本発明に基づく実施形態の例に係る化粧シートを説明する断面図である。
以下に、本発明に基づく実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状及び構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
本実施形態では、化粧シートとして建具・造作用化粧シートを想定して説明する。しかし、本実施形態の化粧シートは、他の用途で用いられる化粧材用の化粧シートであっても適用可能である。
(構成)
本実施形態の化粧シート1は、図1に示すように、原反層2の上に絵柄模様層3、接着層7(感熱接着層、アンカーコート層、ドライラミ接着剤層)、透明樹脂層4及び表面保護層5がこの順に積層されて構成される。本実施形態の化粧シート1は、原反層2の裏面側に、隠蔽層8及びプライマ層6が設けられている。この隠蔽層8及びプライマ層6はなくても良い。
化粧シート1の総厚は、例えば45μm以上250μm以下が好ましい。
また、本実施形態の化粧シート1は、意匠性を向上させるために透明樹脂層4の表面保護層5側の面には、エンボス模様4aが形成されている。更に、本実施形態の化粧シート1は、意匠性を向上させるために、表面保護層5に光沢調整剤を添加している。このエンボス模様4aや光沢調整剤はなくても良い。
そして、本実施形態の化粧シート1は、図1に示すように、基材Bに貼り合わされることで化粧材を構成する。基材Bは、例えば木質ボード類、無機質ボード類、金属板などから構成される。
<原反層2>
原反層2としては、例えば紙、合成樹脂、あるいは合成樹脂の発泡体、ゴム、不織布、合成紙、金属箔等から任意に選定したものが使用可能である。紙としては、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙等が例示できる。合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等が例示できる。ゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等が例示できる。不織布としては、有機系や無機系の不織布が使用できる。金属箔の金属としては、アルミニウム、鉄、金、銀等が例示できる。
原反層2としてオレフィン系の樹脂を用いる場合には、原反層2の表面が不活性な状態であることが多いので、原反層2と基材Bとの間に、プライマ層6を設けることが好ましい。この他にも、オレフィン系材料からなる原反層2と基材Bとの接着性を向上させるために、原反層2に対してコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等の表面改質処理を施してもよい。
プライマ層6としては、後述の絵柄模様層3と同じ材料を用いることができる。プライマ層6は、化粧シート1の裏面に施されることから、化粧シート1がウエブ状に巻取りされることを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、プライマ層6に無機充填剤を添加させてもよい。無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等が例示できる。
原反層2の層厚は、印刷作業性やコストなどを考慮すれば、20μm以上150μm以下が好ましい。
<絵柄模様層3>
絵柄模様層3は、原反層2に対してインキを用いて施された絵柄印刷の層である。
インキのバインダとしては、硝化綿、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独若しくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。バインダは、水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでもよい。更に、硬化性のインキを使用し、紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させる方法を用いてもよい。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いるもので、イソシアネートによって硬化させる方法である。絵柄模様層3に対し、バインダ以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤などが添加されている。汎用性の高い顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。
また、インキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングで、絵柄模様層3に意匠を施すことも可能である。特に、上記インキに対して光安定化剤が添加されていることが好ましく、これにより、インキの光劣化から生じる化粧シート1自体の劣化を抑制し、化粧シート1の寿命を長くすることができる。
<透明樹脂層4>
透明樹脂層4の樹脂材料としては、オレフィン系樹脂が好適に用いられる。
オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレン又はαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。
また、化粧シート1の表面強度の向上を図るために、透明樹脂層4の樹脂として、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
なお、透明樹脂層4には、必要に応じて熱安定剤、光安定化剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種添加剤を添加することもできる。熱安定剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系等を、任意の組合せで添加するのが一般的である。
透明樹脂層4は、マルテンス硬さが40N/mm以上60N/mm以下となるように設定する。例えば、透明樹脂層4を構成する樹脂の主成分を高結晶性ホモプロプレン樹脂とすることで、透明樹脂層4のマルテンス硬さを40N/mm以上に設定できる。
ここで、本実施形態では、主成分とは、構成する樹脂成分100質量部に対し80質量部以上、好ましくは90質量部以上含むことを指す。
透明樹脂層4のマルテンス硬さの上限については、化粧シート1として使用可能な硬さであれば特に限定はないが、好ましくは後述の下層5bのマルテンス硬さ以下である。透明樹脂層4のマルテンス硬さは、更に、接触する下層5bのマルテンス硬さとの差が100N/mm以下であることがより好ましい。すなわち、透明樹脂層4と下層5bとのマルテンス硬さとの差を100N/mm以下、より好ましくは60N/mm以下にすることで、界面でのマルテンス硬さの傾斜が小さく設定されて、密着性の点で有利である。
透明樹脂層4の厚さは、例えば20μm以上200μm以下とする。
<表面保護層5>
表面保護層5の樹脂材料としては、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が好適に用いられる。
電離放射線硬化性樹脂材料としては、各種モノマーや市販されているオリゴマーなど、公知のものを用いることができるが、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PET4A)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)等の多官能モノマーや、紫光UV−1700B(日本合成化学製)のような多官能オリゴマー、もしくはこれらの混合物を用いることが好ましい。
使用する電離放射線硬化性樹脂としては、一分子中に4個以上の官能基を含むことが好ましい。一分子中の官能基数が4未満だと、硬化物の硬度が不足し十分な耐傷性を得ることができない恐れがある。官能基数は4以上であれば特に限定されないが、その上限は例えば20である。また、重量平均分子量は、500以上5000以下が好ましい。
熱硬化性樹脂は、例えば、以下に述べる水酸基を含むポリマー(ポリオール)とイソシアネート硬化剤を熱により硬化させることで形成される。
上記ポリオール化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、分子構造の伸張などによる機械特性的特徴を付与するために用いてもよく、例えば各種アクリルポリオール、各種ポリエステルポリオール、各種ポリエーテルポリオール、各種ポリカーボネートポリオール、各種カプロラクトンジオールなどから、適宜選択して用いられる。
イソシアネート硬化剤としては、上記同様、特に限定されるものではないが、例えばトルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。
本実施形態の表面保護層5は、透明樹脂層4側の下層5bと、下層5bの上に形成された上層5aとを有する。
<上層5a>
表面保護層5の上層5aは、層厚が3μm以上5μm未満であり、マルテンス硬さが150N/mm以上250N/mm以下の樹脂層である。
例えば、上層5aを構成する樹脂成分の主材料として電離放射線硬化性樹脂を使用することで、上層5aのマルテンス硬さを150N/mm以上とすることが可能である。
上層5aを構成する樹脂成分の主材料としては、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を混合した混合樹脂が好ましい。この場合であっても、マルテンス硬さを確保する観点から、樹脂100質量部のうち電離放射線硬化性樹脂を80質量部以上含むことが好ましい。もっとも、マルテンス硬さを150N/mm以上とすることができれば、上層5aを構成する樹脂成分の主材料を熱硬化性樹脂としても良い。
また、上層5aを構成する樹脂成分の主材料を、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を混合した混合樹脂から構成する場合、電離放射線硬化性樹脂のマルテンス硬さが200N/mm以上であることが好ましい。この場合、混合樹脂で構成しても、上層5aのマルテンス硬さを150N/mm以上250N/mm以下に調整しやすくなる。
また、乾燥後の塗布量が3μm以上5μm未満となるように、上層5a用の塗工液を塗布することで、層厚を3μm以上5μm未満に設定することができる。なお、層厚を5μm以上とした場合、後加工性が不良となる可能性があり好ましくない。また、層厚を3μm未満とした場合、耐傷性が低下し好ましくない。
<下層5b>
表面保護層5の下層5bは、層厚が3μm以上5μm未満であり、マルテンス硬さが80N/mm以上150N/mm未満の樹脂層である。下層5bの層厚は、上層5aの層厚以上であることが好ましい。また、下層5bのマルテンス硬さは、上層5aのマルテンス硬さ以下が好ましい。
例えば、下層5bを構成する樹脂成分の主材料として電離放射線硬化性樹脂若しくは熱硬化性樹脂を使用することで、下層5bのマルテンス硬さを80N/mm以上とすることが可能である。但し、電離放射線硬化性樹脂に比べ、熱硬化性樹脂の方が透明樹脂層4への密着性が良いため、下層5bを構成する樹脂成分の主材料は熱硬化性樹脂が好ましい。
下層5bを構成する樹脂成分の主材料を熱硬化性樹脂とする場合、熱硬化性樹脂を、水酸基を含むポリマー(ポリオール)とイソシアネート硬化剤から構成することが好ましい。この場合、特に、水酸基を含むポリマー(ポリオール)としてアクリルポリオールを採用することが好ましい。
下層5bを構成する熱硬化性樹脂を、アクリルポリオールとイソシアネート硬化剤から構成する場合、熱硬化性樹脂のガラス転移点Tgが35℃以上50℃以下であり、配合するアクリルポリオールの重量平均分子量が50000以上200000以下であることが好ましい。
配合するアクリルポリオールの重量平均分子量が50000未満の場合、後加工性が悪くなる可能性がある。また重量平均分子量が200000を越えると、溶解性が低下し、意匠性が悪くなるおそれがある。また、熱硬化性樹脂のガラス転移点が35℃未満の場合、下層5bとして目的とするマルテンス硬さが確保できない場合があったり、シート作製時における塗工が困難になる可能性がある。また、熱硬化性樹脂のガラス転移点が50℃以上の場合、後加工性が悪くなる可能性がある。
また、乾燥後の塗布量が3μm以上5μm未満となるように、下層5b用の塗工液を塗布することで、層厚を3μm以上5μm未満に設定することができる。なお、層厚を5μm以上とした場合、後加工性が不良となる可能性があり好ましくない。また、層厚を3μm未満とした場合、耐傷性が低下し好ましくない。
ここで、本実施形態の化粧シート1の表面保護層5は、少なくとも上層5aに対し、光沢調整剤として、粒径が3μm以上10μm以下の球状粒子からなるフィラー51を含む。フィラー51の最適な粒径は、粒子の材質や、保護層の厚みで異なるが、保護層の厚みの概ね2倍以下である。2倍を超えると保護層から粒子の脱落が起こりやすく耐傷性が低下する。
フィラー51としてはアクリルビーズ、シリコーンビーズなどの有機材料、アルミナやシリカなどの無機材料のいずれも用いることができるが、耐傷性の点で無機材料からなるシリカが好ましい。シリカは他材料と比較し良好な耐傷性を示すが、これはシリカが適度な硬度を有することに起因すると考えられる。
球状シリカは1ml/g以上の細孔容積を有することが好ましい。細孔容積が大きいと耐傷性に優れる傾向を示すが、バインダ樹脂成分がシリカ細孔へ含侵することが影響していると考えられる。また、細孔容積が大きいシリカは艶消し材としての機能も大きく、艶消し材の必要添加量を減ずる効果も大きい。
フィラー51は、疎水性無機材料であることが好ましい。フィラー51として、親水性のフィラーを使用すると、化粧シート1の耐汚染性が低下する。
本実施形態の化粧シート1の表面保護層5は、各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤の添加も任意に行うことができる。また、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤を添加することもできる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定化剤としては、ヒンダードアミン系等を、任意の組合せで添加するのが一般的である。
<接着層7>
接着層7としては、特に限定されるものではないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などから適宜選択して用いることができる。塗工方法は接着剤の粘度などに応じて適宜選択することができるが、一般的には、グラビアコートが用いられ、絵柄模様層3の上面に対してグラビアコートによって塗布された後、透明樹脂層4とラミネートするようにされている。なお、接着層7は、透明樹脂層4と絵柄模様層3との接着強度が十分に得られる場合には、省略することができる。
<隠蔽層8>
また、化粧シート1に基材Bに対する隠蔽性を付与したい場合には、原反層2に着色シートを用いることや、別途不透明な隠蔽層8を設けることで対応可能である。
隠蔽層8としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料から構成することができるが、隠蔽性を目的としているので、顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また隠蔽性を上げるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。
(製造方法)
本実施形態の化粧シート1を形成するに当たり、積層方法は特に限定するものではなく、熱圧を応用した方法、押し出しラミネート方法及びドライラミネート方法などの一般的に用いられる方法から適宜選択して形成することができる。エンボス模様4aを形成する場合には、一旦、上記積層方法によってラミネートした後に熱圧によってエンボス模様4aを入れる方法又は冷却ロールに凹凸模様を設けて押し出しラミネートと同時にエンボス模様4aを形成する方法を用いることができる。
(作用その他)
本実施形態の化粧シート1は、表面保護層5のマルテンス硬さを適正な範囲に調整すると共に表面保護層5の層厚を上層5a及び下層5bとも3μm以上5μm未満に設定することで、耐傷性を高く設定しながら後加工性も良好となる。このとき、本実施形態の化粧シート1は、表面保護層5のマルテンス硬さ及び層厚を規定することに加えて、透明樹脂層4のマルテンス硬さを40N/mm以上60N/mmとすることで、より確実に耐傷性が高くなるように設定している(後述の実施例を参照)。
ここで、表面保護層5のマルテンス硬さは、光沢調整剤としてのフィラー51を添加しない状態での硬さである。耐汚染性の観点から、含有させるフィラー51は疎水性の無機材料であることが好ましい。
表面保護層5を構成する上層5a及び下層5bにおいて、下層5bの主成分が熱硬化性樹脂であることが、透明樹脂層4との密着性確保の点で好ましい。下層5bの主成分として電離放射線硬化樹脂を採用する場合には、密着性確保の点で架橋密度が低い材料を使用することが好ましい。
表面保護層5の主成分として電離放射線硬化樹脂を採用する場合には、耐傷性を確保する点で、官能基数が4以上の樹脂を使用することが好ましい。
以上のように、本実施形態では、より耐傷性及び後加工性に優れた化粧シート1を提供することが可能となる。特に本実施形態の化粧シート1は、建具・造作用の化粧材として好適である。
以下に本実施形態に基づく実施例について説明する。
<実施例1>
高結晶性ホモポリプロピレン樹脂100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010;BASF社製)を0.5質量部、トリアジン系紫外線吸収剤(CYASORB UV−1164;SUNCHEM製)を0.5質量部、NOR型光安定剤(Tinuvin XT850 FF;BASF社製)を0.5質量部それぞれ配合した樹脂を、押出機を用いて溶融押出しして、厚さ100μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートからなる、シート状の透明樹脂層4を製膜した。なお、押出時に調温管理することで、マルテンス硬さを60N/mmとした。得られた透明樹脂層4の両面にコロナ処理を施し、シート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。
また、隠蔽性のある厚さ80μmのポリエチレンシートを原反層2とし、その原反層2の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ(株)製)を用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄模様層を設けた。また、該原反層2の他方の面にプライマーコートを施した。
しかる後、上記原反層2の絵柄模様層の面上に、透明樹脂層4をドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製;塗布量2g/m)を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。この貼り合わせたシートの透明樹脂層4の表面にエンボス模様を施した。
エンボス模様を施した透明樹脂層4に、下記の表面保護層形成用組成物を使用し、熱硬化組成物(乾燥後の厚さ3μm)、熱硬化と光硬化のハイブリッド組成物(乾燥後の厚さ3μm)を順次積層することで、熱硬化層(下層5b)と熱硬化と光硬化のハイブリッド層(上層5a)の2層からなる表面保護層5を形成し、総厚190μmからなる実施例1の化粧シート1を得た。
(表面保護層形成用組成物)
表面保護層形成用組成物を構成する熱硬化組成物及び熱硬化・光硬化ハイブリッド組成物(熱硬化組成物と光硬化性組成物との混合組成物)は、下記の通りである。
[熱硬化組成物]
熱硬化組成物は、下記のポリオール溶液Aに、下記の硬化剤、光沢調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤を配合して構成した。
・ポリオール溶液A
撹拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコ内に、メチルメタクリレートを50g、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを10g、ブチルアクリレートを40g導入し、酢酸エチル100gを加えて溶解し、油浴上で窒素雰囲気下撹拌した。これに0.1gのα, α’−アゾビスイソブチロニトリルを配合することで重合を開始し、60℃の油浴上で5時間加熱撹拌を続けて、無色、粘ちょうなポリマー溶液Aを得た。
配合:80質量部
・硬化剤
品名:デュラネート TSE−100(旭化成社製)
配合:5質量部
・光沢調整剤(無機粒子)
品名:サイロホービック702(富士シリシア化学(株)製)
性状:不定形、平均粒子径4μm、吸油量170mL/100g
配合:20質量部
・紫外線吸収剤
品名:Tinuvin 400(BASF社製)
配合:5.0質量部
・光安定剤
品名:Tinuvin 123(BASF社製)
配合:2.0質量部
・希釈溶剤
品名:酢酸エチル
配合:50質量部
[熱硬化・光硬化ハイブリッド組成物]
熱硬化・光硬化ハイブリッド組成物は、下記のポリオール溶液B、UV樹脂に、下記の硬化剤、光開始剤、光沢調整剤、光安定剤を配合して構成した。
・ポリオール溶液B
撹拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコ内に、メチルメタクリレートを80g、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを20g導入し、酢酸エチル100gを加えて溶解し、油浴上で窒素雰囲気下撹拌した。これに0.2gのα, α’−アゾビスイソブチロニトリルを配合することで重合を開始し、60℃の油浴上で5時間加熱撹拌を続けて、無色、粘ちょうなポリマー溶液Aを得た。
配合:45質量部
・UV樹脂
品名:U−6LPA
性状:重量平均分子量760、官能基数6
配合:45質量部
・硬化剤
品名:デュラネート TPA−100(旭化成社製)
配合:5質量部
・光開始剤
品名:イルガキュア184
配合:8質量部
・光沢調整剤(無機粒子)
品名:サイロホービック702(富士シリシア化学(株)製)
性状:不定形、平均粒子径4μm、吸油量170mL/100g
配合:10質量部
・光安定剤
品名:Tinuvin 123(BASF社製)
配合:2.0質量部
・希釈溶剤
品名:酢酸エチル
配合:60質量部
<実施例2>
実施例1の熱硬化層(下層)を厚さ4.9μmに置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして実施例2の化粧シート1を得た。
<実施例3>
実施例1の熱硬化と光硬化のハイブリッド層(上層)を厚さ4.9μmに置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして実施例3の化粧シート1を得た。
<実施例4>
実施例1の熱硬化と光硬化のハイブリッド組成物中のUV樹脂をUA−33H(重量平均分子量1400、官能基数9)に置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして実施例4の化粧シート1を得た。
<実施例5>
実施例1の熱硬化組成物中の硬化剤をE405−70B(旭化成社製)に置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして実施例5の化粧シート1を得た。
<実施例6>
実施例1の透明樹脂層4のマルテンス硬さを40N/mmに置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして実施例6の化粧シート1を得た。
<実施例7>
実施例1の熱硬化組成物中のポリオール溶液を下記のポリマー溶液Cに置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして実施例7の化粧シート1を得た。
・ポリオール溶液C
撹拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコ内に、メチルメタクリレートを50g、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを10g、ブチルアクリレートを40g導入し、酢酸エチル100gを加えて溶解し、油浴上で窒素雰囲気下撹拌した。これに0.05gのα, α’−アゾビスイソブチロニトリルを配合することで重合を開始し、60℃の油浴上で5時間加熱撹拌を続けて、無色、粘ちょうなポリマー溶液Aを得た。
<実施例8>
実施例1の熱硬化組成物中のポリオール溶液を下記のポリマー溶液Dに置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして実施例8の化粧シート1を得た。
・ポリオール溶液D
撹拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコ内に、メチルメタクリレートを50g、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを10g、ブチルアクリレートを60g導入し、酢酸エチル100gを加えて溶解し、油浴上で窒素雰囲気下撹拌した。これに0.15gのα, α’−アゾビスイソブチロニトリルを配合することで重合を開始し、60℃の油浴上で5時間加熱撹拌を続けて、無色、粘ちょうなポリマー溶液Dを得た。
<比較例1>
実施例1の熱硬化層を厚さ2μmに置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして比較例1の化粧シート1を得た。
<比較例2>
実施例1の熱硬化と光硬化のハイブリッド層を厚さ2μmに置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして比較例2の化粧シート1を得た。
<比較例3>
実施例1の熱硬化と光硬化のハイブリッド組成物中のUV樹脂をUA−53H(重量平均分子量2300、官能基数15)に置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして比較例3の化粧シート1を得た。
<比較例4>
実施例1の熱硬化と光硬化のハイブリッド組成物中のUV樹脂をU−2PPA(重量平均分子量500、官能基数2)に置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして比較例4の化粧シート1を得た。
<比較例5>
実施例1の熱硬化組成物中の硬化剤を24A−100(旭化成社製)に置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして比較例5の化粧シート1を得た。
<比較例6>
実施例1の熱硬化組成物中のポリオール溶液を下記のポリマー溶液Eに置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして比較例6の化粧シート1を得た。
・ポリオール溶液E
撹拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた4つ口フラスコ内に、メチルメタクリレートを50g、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを10g、ブチルアクリレートを60g導入し、酢酸エチル100gを加えて溶解し、油浴上で窒素雰囲気下撹拌した。これに0.1gのα, α’−アゾビスイソブチロニトリルを配合することで重合を開始し、60℃の油浴上で5時間加熱撹拌を続けて、無色、粘ちょうなポリマー溶液Eを得た。
<比較例7>
実施例1の透明樹脂層4のマルテンス硬さを30N/mmに置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして比較例7の化粧シート1を得た。
<比較例8>
実施例1の透明樹脂層4のマルテンス硬さを70N/mmに置き換えた以外は、全て実施例1と同様にして比較例8の化粧シート1を得た。
<マルテンス硬さ測定方法>
マルテンス硬さの測定方法について説明する。
各化粧シートのマルテンス硬さは、ISO14577に準拠したマルテンス硬さ測定装置(フィッシャースコープHM2000;株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて測定を行った。
なお、測定は断面から行うため、サンプルについて化粧シート1を冷間硬化タイプのエポキシ樹脂やUV硬化樹脂などの樹脂に包埋して十分に硬化させた後に、化粧シート1の断面が現れるように切断し、機械研磨を施すことによって測定面を得た。
具体的な測定方法は、各サンプルの測定面に対して圧子を押し込み、その押し込み深さと荷重からマルテンス硬さを算出する。測定条件を、試験力10mN、試験力負荷所要時間10秒、試験力保持時間5秒として測定を行った。
(評価)
上記の方法により得られた実施例1〜8及び比較例1〜8の化粧シート1について、ウレタン系の接着剤を用いて木質基材Bに貼り付けた後、鉛筆硬度試験及びV溝曲げ加工適性試験を行った。各評価試験の詳しい評価方法を下記に説明する。
<鉛筆硬度試験>
試験方法はJIS−K5600に準拠し、4B、3B、2B、B、HB、H、2H、3Hの鉛筆を用い、化粧シート1に対して鉛筆の角度を45±1°に固定して、当該鉛筆に750gの荷重を付加した状態でスライドさせて、化粧シート1に傷が形成されるか否かの判定をした。評価結果として、表1には、化粧シート1の表面に傷が付かない最高硬度の鉛筆高度を表示した。
<V溝曲げ加工適性試験>
基材Bの裏面から、基材Bと化粧シート1とを貼り合わせている境界までV型の溝を入れる。次に、化粧シート1の面が山折りとなるように基材Bを当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シート1の表面の折れ曲がった部分に白化が生じていないかを目視で観察し、加工適性の優劣の評価を行う。
加工適性の評価は下記のように行った。
○:白化なし
△:一部白化あり(製品として許容されるレベルの白化)
×:白化あり
評価結果を、表1及び表2に示す。
Figure 2020015232
Figure 2020015232
表1から分かるように、表面保護層5のマルテンス硬さ及び層厚と、透明樹脂層4のマルテンス硬さの両方が、本発明の範囲を満足する実施例1〜実施例8では、鉛筆硬度として3B以上の耐傷性が確保されていることが分かる。更に、実施例1〜実施例8では、加工適性(後加工性)も良好である。
一方、表2から分かるように、比較例1〜8では、表面保護層5のマルテンス硬さ及び層厚、透明樹脂層4のマルテンス硬さのいずれかが本発明の範囲から外れていることで、耐傷性若しくは後加工性が悪くなった。
比較例1、2では、表面保護層5のマルテンス硬さ及び透明樹脂層4のマルテンス硬さは本発明の範囲を満足するものの、表面保護層5の下層又は上層の膜厚が薄いために、実施例1〜実施例8に比べ耐傷性が劣っている。
比較例3では、表面保護層5の上層のマルテンス硬さが本発明の範囲の上限値よりも大きいため、鉛筆硬度として3Bの耐傷性が確保されているが、実施例1〜実施例8に比べ加工適性が劣っている。
比較例4では、表面保護層5の上層のマルテンス硬さが本発明の範囲の下限値よりも小さいため、実施例1〜実施例8に比べ耐傷性が劣っている。
比較例5では、表面保護層5の下層のマルテンス硬さが本発明の範囲の上限値よりも大きいため、鉛筆硬度として2Bの耐傷性が確保されているが、実施例1〜実施例8に比べ加工適性が劣っている。
比較例6では、表面保護層5の下層のマルテンス硬さが本発明の範囲の下限値よりも小さいため、実施例1〜実施例8に比べ耐傷性が劣っている。
比較例7、8は、表面保護層5のマルテンス硬さ及び層厚は、本発明の範囲を満足する。しかし、比較例7では、透明樹脂層4のマルテンス硬さが本発明の範囲の下限値よりも小さいため、実施例1〜実施例8に比べ、耐傷性が劣っている。また、比較例8では、透明樹脂層4のマルテンス硬さが本発明の範囲の上限値よりも大きいため、実施例1〜実施例8に比べ、加工適性が劣っている。
1 化粧シート
2 原反層
3 絵柄模様層
4 透明樹脂層
4a エンボス模様
5 表面保護層
5a 上層
5b 下層
6 プライマ層
7 接着層
8 隠蔽層
51 フィラー
B 基材

Claims (4)

  1. 透明樹脂層の上に表面保護層を有し、
    上記表面保護層は、透明樹脂層側の下層と、その下層の上に形成された上層とを有し、
    上記上層は、層厚が3μm以上5μm未満であり、マルテンス硬さが150N/mm以上250N/mm以下であり、
    上記下層は、層厚が3μm以上5μm未満であり、マルテンス硬さが80N/mm以上150N/mm以下であり、
    上記透明樹脂層のマルテンス硬さが40N/mm以上60N/mm以下であることを特徴とする化粧シート。
  2. 上記上層を構成する樹脂成分の主材料が熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂の混合組成物であり、
    上記下層を構成する樹脂成分の主材料が熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
  3. 上記下層の熱硬化性樹脂は、アクリルポリオールとイソシアネート硬化剤からなり、
    上記下層のガラス転移点Tgが35℃以上50℃以下であり、上記下層を構成する上記アクリルポリオールの重量平均分子量が50000以上であることを特徴とする請求項2に記載した化粧シート。
  4. 上記電離放射線硬化性樹脂は、マルテンス硬さが200N/mm以上であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載した化粧シート。
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