JP7480521B2 - 化粧シート及び化粧シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建築内装・建具の表面材、家電製品などに用いられる化粧シート及び化粧シートの製造方法に関する。化粧シートは、例えば木質ボード類、無機系ボード類、金属板、プラスチックなどの基板に貼り合わせて化粧板として用いられる。
近年、特許文献1、2に示すように、ポリ塩化ビニル製の化粧シートに替わる化粧シートとして、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが多く提案されている。これらの化粧シートは、塩化ビニル樹脂を使用しないことで、焼却時における有毒ガス等の発生が抑制される。
しかし、従来のオレフィン系樹脂製の化粧シートは、一般的なポリプロピレンシートを使用しているために、表面の耐傷性が、従来のポリ塩化ビニル製の化粧シートに比べて劣っているという欠点があった。
これに対し、本発明者等は、これらの欠点を解消するべく、特許文献3に記載のような表面の耐傷性に優れた化粧シートを提案した。しかし、このような化粧シートを用いた化粧板の用途が益々拡大しているとともに、消費者の品質に対する意識も益々高度化していることから、化粧シートに対し耐傷性以外の品質の向上、特に、V溝曲げ加工等などの耐後加工性の向上が求められている。
後加工性を向上させた化粧シートとしては、例えば特許文献4~6に記載の化粧シートが提案されている。これらの化粧シートは、意匠性を向上するために、後加工でV字加工やエンボス加工などの表面に凹凸をつける。この様な加工を低温で実施すると、版に追従した形状とならない問題がある。その為、版に追従した形状を賦形しようとすると、高温での加工が必要となるが、コストがかかる上、樹脂層の酸化劣化を促進してしまう問題がある。また、耐傷性を高めるために、表面保護層を設けるが、表面保護層と透明層の密着が良好でないという問題点がある。
特開平2-128843号公報 特開平6-198831号公報 特許第3772634号公報 特許第3185590号公報 特許第3567899号公報 特許第3175482号公報
本発明は、以上のような問題点を解決する為になされたもので、高い耐傷性と透明性を維持しつつ、V溝曲げ加工性などの後加工性の優れた透明樹脂層を有する化粧シート及び化粧シートの製造方法を提供することを課題とする。
この課題を解決するべく本発明者等は、鋭意研究を行い、高い耐傷性と透明性を保ちつつ、密着性に優れた透明樹脂層が後加工性にも優れている事を見出し、本発明を完成するに至った。
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、基材層の、一方の面に少なくともプライマー層を備え、もう一方の面に少なくとも、絵柄模様層と、透明樹脂層と、表面保護層とを備えた化粧シートにおいて、
前記透明樹脂層は、前記表面保護層側から、低温軟化性樹脂層と高温軟化性樹脂層を備えており、
前記高温軟化性樹脂層の軟化温度は170℃ ~230℃であり、
前記低温軟化性樹脂層の軟化温度は50℃ ~130℃であり、
前記高温軟化性樹脂層の層厚に対する前記低温軟化性樹脂層の層厚の比率が1%~50 %であり、
前記高温軟化性樹脂層が含む樹脂は、メソペンタッド分率が95%以上である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂からなる高温軟化性樹脂であり、
前記低温軟化性樹脂層が含む樹脂は、結晶性ポリプロピレン樹脂を含む低温軟化性樹脂であり、
前記低温軟化性樹脂の全質量に対する前記結晶性ポリプロピレン樹脂の比率は50質量%以上100質量%以下である事を特徴とする化粧シートである。
また、請求項2に記載の発明は、前記低温軟化性樹脂は前記結晶性ポリプロピレン樹脂に加えて他のオレフィン系樹脂を更に含み、前記低温軟化性樹脂に占める前記他のオレフィン系樹脂の質量の割合が、50質量%以下である事を特徴とする請求項1に記載の化粧シートである。
また、請求項3に記載の発明は、前記低温軟化性樹脂は、メソペンタッド分率が20%以上60%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シートである。
また、請求項4に記載の発明は、前記低温軟化性樹脂は、230℃におけるメルトフローレートが30 ~100(g/10分)であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の化粧シートである。
また、請求項5に記載の発明は、前記低温軟化性樹脂の重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の化粧シートである。
また、請求項6に記載の発明は、前記低温軟化性樹脂の重量平均分子量を平均分子量で除した分子量分布の値が4未満であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の化粧シートである。
また、請求項7に記載の発明は、前記透明樹脂層の引張り弾性率が25MPa~500MPaであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の化粧シートである。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれかに記載の化粧シートの製造方法であって、
軟化温度が170℃~230℃の前記高温軟化性樹脂を使用して溶融押出機にて前記高温軟化性樹脂層を形成する工程と、
軟化温度が50℃~130℃の前記低温軟化性樹脂を使用して溶融押出機にて、高温軟化性樹脂層上に前記低温軟化性樹脂層を形成する事により前記透明樹脂層を形成する工程と、
前記基材層の一方の面に前記プライマー層を形成する工程と、
前記基材層のもう一方の面に前記絵柄模様層を形成する工程と、
前記絵柄模様層の上に接着剤層を介して、前記透明樹脂層を貼り合わせる工程と、
前記透明樹脂層の表面に表面保護層を形成する工程と、を備え
前記高温軟化性樹脂は、メソペンタッド分率が95%以上である前記高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であり、
前記低温軟化性樹脂は、その全質量に対して50質量%以上100質量%以下の比率で前記結晶性ポリプロピレン樹脂を含み、
前記高温軟化性樹脂層の層厚に対する前記低温軟化性樹脂層の層厚の比率を1%~50%とする事を特徴とする化粧シートの製造方法である。
本発明の態様によれば、透明樹脂層の主成分を、軟化温度が170℃~230℃の高温軟化性樹脂とすることで、化粧シートの表面強度(耐傷性)が高くなる。また、軟化温度が50℃~130℃の低温軟化性ポリプロピレン樹脂は高温軟化性樹脂や表面保護層との高い密着性・相溶性を示すため、これらの間に低温軟化性ポリプロピレン樹脂を設けることで、透明樹脂層に対して高い透明性を付与しつつ後加工性を向上させることができる。
さらに、高温軟化性樹脂層に対する低温軟化性樹脂層の層比を0.01以上0.5以下とすることによって、耐傷性と後加工性に優れた化粧シートを得ることができる。
本発明に基づく実施形態に係る化粧シート及び化粧板の構成の一例を示す断面図である。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
本実施形態の化粧シート1は、基材層6の表面側に、複数の樹脂層が積層し、且つその複数の樹脂層のうちの表面側の樹脂層として透明樹脂層3が配置される。具体的には、本実施形態の化粧シート1は、図1に示すように、原反層を構成する基材層6の一方の面(表面)の上に、絵柄模様層5、透明樹脂層3、及び表面保護層2がこの順に積層している。符号4は接着剤層を示す。
また、基材層6の他方の面(裏面)に、隠蔽層7、プライマー層8がこの順に形成されている。なお、隠蔽層7は、基材層6と絵柄模様層5との間に形成しても良いし、省略しても構わない。
また上記構成の化粧シート1の層厚は、例えば、印刷作業性やコストなどを考慮して、表面保護層2は3~20μm、透明樹脂層3は20~200μm、接着剤層4は1~20μm、絵柄模様層5は3~20μm、基材層6は20~150μm、隠蔽層7は2~20μm、プライマー層8は0.1~20μmの範囲内とし、化粧シート1の総厚は49~450μmの範囲内とする。
なお、図1においては、本実施形態の化粧シート1を基材Bに貼り付けて化粧板を構成する場合を例示している。
<基材層6>
基材層6は、紙、樹脂シート、箔などから構成される。
紙としては、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙、有機もしくは無機系の不織布、合成紙等が例示出来る。
樹脂シートの樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴムが例示出来る。
箔としては、アルミニウム、鉄、金、銀等の金属箔が例示出来る。
<絵柄模様層5>
絵柄模様層5は、既知の印刷手法を用いて設けることが出来る。基材層6が巻取りの状態で用意できる場合には、ロールツーロールの印刷装置で絵柄模様層5の形成のための印刷を行うことができる。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。
絵柄模様は、床材や壁材などの使用箇所に応じた意匠性を考慮して任意の絵柄模様を採
用すればよく、木質系の絵柄であれば各種木目が好んで用いられることが多く、木目以外にもコルクを絵柄模様とすることもできる。例えば大理石などの石材の床をイメージしたものであれば大理石の石目などの絵柄模様として用いられることもある。また天然材料の絵柄模様以外にそれらをモチーフとした人工的絵柄模様や幾何学模様などの人工的絵柄模様も用いることができる。
印刷インキについては、特に限定するものではないが、印刷方式に対応したインキを適宜選ぶことができる。とくに樹脂製の基材層6に対する密着性や印刷適性また化粧材としての耐候性等を考慮して選択することが好ましい。
印刷インキには、適宜、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、バインダーを添加する。顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。なお、バインダーは、水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、硬化方法についても1液タイプ、主剤と硬化剤とからなる2液タイプ、もしくは、紫外線や電子線などによって硬化するタイプなど特に限定するものではない。中でも最も一般的な方法は、2液タイプのもので、ウレタン系の主剤と、イソシアネートからなる硬化剤を用いる方法である。この他にも、各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すようにしてもよい。
<接着剤層4>
接着剤層4は、基材層6および絵柄模様層5と透明樹脂層3の接着を強固にする目的で設けられる。この接着が強固であることによって、化粧シート1に対し、曲面や直角面に追随する曲げ加工性を付与することができる。接着剤層4は透明であることが好ましい。また、接着剤層4は、その接着方法としては任意の材料選定が可能で、熱ラミネート、押出ラミネート、ドライラミネート等による積層方法があり、接着剤はアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などから適宜選択できる。通常はその凝集力から2液硬化タイプのものとして、特にイソシアネートを用いたポリオールとの反応で得られるウレタン系の材料を用いることが望ましい。なお、接着剤層4は、透明樹脂層3と絵柄模様層5との接着強度が十分に得られる場合には、省略してもよい。
<透明樹脂層3>
透明樹脂層3は、例えば透明樹脂シートとして製造して積層する。透明樹脂層3は、高温軟化性ポリプロピレン樹脂を主成分とする。主成分とは、例えば、透明樹脂層3を構成する樹脂のうちの80~100質量部、好ましくは90~100質量部であることを指す。
透明樹脂層3は、高温軟化性樹脂層3aと低温軟化性樹脂層3bからなり、低温軟化性樹脂層3bは表面保護層2と高温軟化性樹脂3aの中間にある。
また、透明樹脂層3は、オレフィン系樹脂に対して、造核剤を添加すると、分散性や透明性が向上する。造核剤は、結晶性高分子の結晶化を促進する添加剤であり、高分子に少量添加することで、生産性(成形性)の改善や力学物性、透明性の向上が期待される材料を指す。樹脂毎に、各種の造核剤が知られている。
なお、上記造核剤は、透明樹脂層3を形成する、例えば結晶性ポリプロピレン樹脂100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲内で含有されていることが好ましい。造核剤の含有量が上記範囲内であれば、透明樹脂層3の透明性、耐傷性、後加工性がさらに高まる。
(軟化温度の測定方法)
軟化温度とは、例えば樹脂を加熱して行くと、流動性が高まり、変形を開始する温度で
ある。軟化温度を評価する方法として、加熱機構を有するカンチレバー(自由端近傍に探針が形成された構造)から構成されたナノサーマル顕微鏡を備える原子間力顕微鏡を用いる方法がある。この様な原子間力顕微鏡の試料台に固定した固体状態の試料表面にカンチレバーを接触させて、コンタクトモードにてカンチレバーに一定の力(触圧)を加え、電圧を印加することにより加熱していくと、まず、試料表面が熱膨張し、カンチレバーは上昇する。さらにカンチレバーを加熱すると、試料表面は軟化し大きな硬度の変化がみられ、カンチレバーは下降し、試料表面に入り込む。このときの急激なディフレクション(Deflection、カンチレバーの探針の変位)の変化を検知する。この電圧の変化点が軟化点であり、電圧を温度に変換することで、軟化温度となる。このような測定を行うことで、ナノスケール領域の局所的、且つ表面近傍の軟化温度を知ることができる。
原子間力顕微鏡(AFM)はオックスフォード・インストゥルメンツ株式会社製のMPF-3D-SA(商品名)、Zthermシステム(商品名)を好適に用いることができる。特にこの装置に限定されることはなく、ブルカー・ジャパン社のNano Thermal Analysis(商品名)シリーズやnanoIR(商品名)シリーズでも可能である。さらに、他のメーカーのAFMに付属として、Nano Thermal Analysis(商品名)を取り付けて、測定することも可能である。
カンチレバーはアナシス・インスツルメンツ社製のAN2-200(商品名)を好適に用いることができる。特にこのカンチレバーに限定されることはなく、レーザー光を十分に反射することができ、電圧を印加することができれば、他のカンチレバーを使用してもよい。
カンチレバーに印加する電圧範囲は測定対象の樹脂等にもよるが、1Vから10Vまでが好ましく、試料の損傷を少なく、より空間分解能を高く測定するためには、3Vから8Vまでがより好ましい。
測定可能な軟化温度範囲は測定対象の樹脂等にもよるが、一般的に測定開始温度は常温の25℃程度から測定終了温度は400℃程度まで測定することができる。軟化温度を算出する温度範囲については、25℃以上300℃以下であることが好ましい。
軟化温度の測定においては、カンチレバーに触圧を一定にして熱をかけるが、触圧は試料に接する必要があり、表面を破壊しない力とする必要がある。その為、カンチレバーのばね定数は0.1~3.5N/mが好ましく、タッピングモードとコンタクトモードの両モードでの測定を行うためには、0.5~3.5N/mのばね定数のカンチレバーを用いるのが好ましい。また触圧は、0.1~3.0Vが好ましい。
なお、原子間力顕微鏡のタッピングモードとは、米国・Bruker社の独自の技術であり、周期的に振動するプローブチップで試料表面を軽くタッピングし、試料表面とカンチレバーの探針との原子間引力を測定し、表面形状を計測する測定方法である。一方、コンタクトモードは、試料表面と探針間の原子間斥力を用いて観察・測定するモードである。
カンチレバーの昇温速度については、カンチレバーが備える加熱機構等にもよるが、一般的に0.1V/秒以上10V/秒以下の昇温速度で加熱することが好ましい。より好ましくは0.2V/秒以上5V/秒以下の昇温速度で加熱することが好ましい。試料表面が軟化すると、カンチレバーが試料に侵入するようになり、針は下降する。カンチレバーの侵入量は軟化曲線のピークトップが認識できる深さが必要であるため、3~500nmが好ましい、侵入量が大きいと、カンチレバーが破損することがあるため、より好ましくは5~100nmである。
特にこれらに限定されるわけではないが、膨張の曲線と軟化の曲線を適切な関数によってそれぞれ近似し、これらの交点を算出することで、軟化点や軟化温度とする方法でもよい。または、探針の変位のピークトップを軟化点や軟化温度とする解析方法でもよい。膨張もしくは軟化において、定常状態からのある一定値までの変位としてもよい。
また、試料の正確な温度を計測するため、試料測定後に校正曲線の作成を行う事が望ましい。校正用サンプルとしては、ポリカプロラクトン(融点:55℃)、低密度ポリエチレン(LDPE、融点:110℃)、ポリプロピレン(PP、融点:181℃)、ポリエチレンテレフタレート(PET、融点:235℃)の4種を用いる事ができる。それぞれ測定位置を変えて2回測定し、その平均値を表面軟化温度として検量線を作成して、校正曲線を作成する。この校正曲線を使用して、電圧を軟化点とし、温度に換算し軟化温度とする事ができる。
透明樹脂層3における高温軟化性樹脂層3aに対する低温軟化性樹脂層3bの層比は0.01以上0.5以下である事が好ましい。また、透明樹脂層3の引張り弾性率は、好ましくは25MPa以上500MPa以下である事が好ましい。
(高温軟化性樹脂層)
透明樹脂層3の高温軟化性樹脂層3aの軟化温度は170~230℃が好ましい。
透明樹脂層3の主成分となる高温軟化性樹脂3aは、例えば、ペンタッド分率の異なるアイソタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンおよびこれらの混合物から適宜選択して設計することができる。本実施形態においては、当該高温軟化性ポリプロピレン樹脂3aが、メソペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上、より好ましくは96%以上のプロピレンの単独重合体、すなわちホモポリマーである高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
なお、上記ペンタッド分率とは、質量数13の炭素C(核種)を用いた13C-NMR測定法(核磁気共鳴測定法)により、透明樹脂層3を構成する樹脂組成物を所定の共鳴周波数にて共鳴させて得られる数値(電磁波吸収率)から算出されるものであり、樹脂組成物中の原子配置、電子構造、分子の微細構造を規定する。ポリプロピレン樹脂のペンタッド分率とは、13C-NMRにより求めたプロピレン単位が5個並んだ割合のことである。立体規則性にはメソとラセモがあるが、メソの方が剛性が高いため、メソの割合、メソペンタッド分率(mmmm分率)が重要となる。立体規則性は、融点や結晶化度、剛性などの高分子の高次構造や物性特性を支配する。メソペンタッド分率が高いほど樹脂シートの結晶化度が高くなるため、耐傷性が向上する。
そのため、透明樹脂層3の主成分を高温軟化性樹脂3aとすることで、化粧シートの表面強度(耐傷性)が高くなる。
(低温軟化性樹脂層)
透明樹脂層3に設けられた低温軟化性樹脂3bの軟化温度は、好ましくは0~130℃であり、より好ましくは50~130℃である。
低温軟化性樹脂3bは、結晶性ポリプロピレン樹脂を含有するものが好ましい。特に、低温軟化性樹脂3bの全質量に対して、50質量%以上100質量%以下含有するものがより好ましい。これにより、結晶性ポリプロピレン樹脂の比率が高くなるため、透明樹脂層3を十分に硬くすることができ、耐傷性を向上することができる。
上記に加えて、下記に示す(1)~(3)の特徴のうち、少なくとも1つを満たすポリプロピレン樹脂であることが好ましい。
(1)メソペンタッド分率が、20~60%、より好ましくは、40~55%である。
(2)230℃におけるMFR(Melt Flow Rate、メルトフローレート、溶融樹脂の流動性を表す指標)が、0~100、より好ましくは、30~100(g/10分)である。
(3)高分子の重量平均分子量(Mw)が、10,000~500,000、より好ましくは、50,000~200,000である。且つ、重量平均分子量(Mw)と平均分子量(Mn)の比である分子量分布(Mw/Mn)が、4未満である。
低温軟化性樹脂3bに用いられる樹脂としては、オレフィン系樹脂が好ましく、低温軟化性樹脂3bの全質量に対して、0質量%以上50質量%以下含有するものがより好ましい。
オレフィン系樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたもの、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のように、エチレンまたはαオレフィンとその他のモノマーとを共重合させたものを用いることができる。
これらを含有することによって、化粧シート1に高アスペクトなどの複雑な形を賦形することが可能となり、意匠性が向上する。また、化粧シート1の耐候性、耐磨耗性能を向上させることができる。また、環境適合性や加工性、価格等などの所望の特性を得ることができる。
低温軟化性樹脂3bは、低結晶性、軟質、低融点、溶剤への高い溶解性という性能の傾向があり、このような低温軟化性樹脂3bを採用することで、高温軟化性樹脂層3aを設けた場合に、高い相溶性、結晶化速度の遅化という性能を有しつつ、高温軟化性樹脂3aの結晶化度に影響がない、もしくは、結晶化度への影響が大幅に低く抑えられる。
また、表面保護層2との密着をよくするために、低温軟化性樹脂3bの層厚は、高温軟化性樹脂3aの層厚に対して、層厚比で0.01(1%)~0.5(50%)である事が望ましい。低温軟化性樹脂3bの層厚比が大ききいと、耐傷性に劣るため、また、低温軟化性樹脂3bの膜厚比が小さ過ぎるとV溝曲げ加工等などの後加工性が劣る為、0.03~0.1がより好ましい。
また、透明樹脂層は、溶融押出法やキャスト法などの既知の製法にて製造される。所望の性能を得るために、無延伸、一軸延伸、二軸延伸などを行ってもよい。
<表面保護層2>
化粧シート1の最表面には、表面の保護や艶の調整としての役割を果たす表面保護層2が設けられている。
表面保護層2の材料としては、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などから適宜選択して用いることができる。材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても一液タイプ、二液タイプ、紫外線硬化法など
適宜選択して行うことができる。
表面保護層2の主成分としては、イソシアネートを用いたウレタン系のものが作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。イソシアネートには、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などから適宜選択することができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)が好適である。この他にも、表面硬度の向上を図る場合には、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は相互に組み合わせて用いることが可能であり、例えば、熱硬化型と光硬化型とのハイブリッド型とすることにより、表面硬度の向上、硬化収縮の抑制および密着性の向上を図ることができる。
<隠蔽層7>
隠蔽層7は、隠蔽性を保たせることを目的として、例えば、絵柄模様層5と同様に印刷によって形成される。印刷に用いるインキに含ませる顔料としては、不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また隠蔽性を上げるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加することが多い。なお、隠蔽層7は、基材層6が不透明で隠蔽性を有している場合には、省略することができる。
<プライマー層8>
プライマー層8は、基材Bと、隠蔽層7との密着性を向上させるために形成する。プライマー層8の材料としては、基材Bが木質系基材の場合には、例えば、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂を単独ないし混合して接着組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。この場合、プライマー層8を構成する樹脂としては、ウレタン-アクリレート系樹脂が好ましい。更に詳しくは、アクリル系樹脂とウレタン系樹脂との共重合体とイソシアネートとからなる樹脂で形成するのが特に好ましい。
<本実施形態の効果>
本発明の化粧シート1は透明樹脂層3を備えている。透明樹脂層3は、高温軟化性樹脂層3aと、低温軟化性樹脂層3bと、を備えており、本実施形態の範囲内で、表面保護層と高温軟化性樹脂層との間に低温軟化性樹脂層を備えている。低温軟化性樹脂は、高温軟化性樹脂との密着も良い上に、透明樹脂層3に対して高い透明性を付与することができる。さらに、低温軟化性樹脂の膜厚比を本実施形態の範囲とすることによって、密着性と耐傷性に優れた化粧シートを得ることができる。
本発明の化粧シートは、上記の層構成を備え、且つ以下の特性値の範囲とする事により、各特徴を発揮する事ができる。
(1)上記で説明した局所熱分析を用いて、試料とカンチレバーを接触させ、カンチレバーに0.2Vの電圧を印加して、その電圧に対応した力を加えながら、0.5V/秒で昇温させることによって得られた測定カーブにおいて、最も高温度側にピークがある軟化曲線と、膨張曲線と、の交点、もしくはピークトップとして定義される軟化温度が、50~130℃の低温軟化性樹脂を使用することで、透明樹脂層3に含まれる添加剤のブリードを抑制することができる。
(2)低温軟化性樹脂層において低温軟化性樹脂の全質量に対するオレフィン系樹脂の質量割合が0%以上50%以下とする事により、耐衝撃性を保つことができる。
(3)高温軟化性樹脂層に対する低温軟化性樹脂層の層厚比を0.01以上0.5以下とする事により、接着剤や表面処理を必要とすることなく、高温軟化性樹脂層と接着することができる。
(4)低温軟化性樹脂のメソペンタッド分率を20~60%とする事により、溶融押出時に固化が遅くならず、製膜後の透明樹脂層3がべたつくのを抑制することができる。
(5)低温軟化性樹脂の230℃におけるMFRを30~100(g/10分)とすることにより、低温軟化性樹脂の流動性が適度となり、溶融押出機にて問題なく製膜することができる。
(6)低温軟化性樹脂の重量平均分子量(Mw)を10,000~500,000とすることにより、低温軟化性脂の粘度が適度となり、溶融押出時に問題なく製膜することができる。
(7)低温軟化性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)を4未満とすることにより、低分子量化合物が少ないため、透明樹脂層3の製膜性の低下が抑制される。
(8)引張り弾性率を25MPa以上500MPa以下とすることで、表面保護層2との密着性を向上することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
透明樹脂層3を有する化粧シート1を以下の様にして作製した。
まず、高温軟化性樹脂としてペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高温軟化性ホモポリプロピレン樹脂を用意した。
その高温軟化性ホモポリプロピレン樹脂に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944:BASF社製)を、2000PPMを添加して、溶融押出機に用いて押し出す事により高温軟化性ホモポリプロピレン樹脂層からなる樹脂シートを形成した。その後、高温軟化性ホモポリプロピレン樹脂に対して、1-ブテン40質量%を含有させた低温軟化性ポリプロピレン樹脂を、溶融押出機を用いてその樹脂シートに押し出し、厚さ80μmの透明樹脂シートを作製した。この透明樹脂シートを透明樹脂層3として使用する。
次に、透明樹脂シートの軟化温度を、原子間力顕微鏡を用いて測定した。
原子間力顕微鏡(AFM)としてオックスフォード・インストゥルメンツ株式会社製のMPF-3D-SA(商品名)およびZthermシステム(商品名、原子間力顕微鏡の熱解析用のオプション)を用い、カンチレバーは、ばね定数:1.5N/mのアナシス・インスツルメンツ社製のAN2-200(商品名)を用いて、軟化温度の測定を行った。
カンチレバーの触圧を0.2V、昇温速度を0.5V/秒として加熱した。
その結果、試料表面が熱で膨張し、針が上昇した。さらに、加熱すると、軟化し針が下降した。試料表面に対してカンチレバーが50nm侵入したところで、測定終了とした。
試料の正確な温度を計測するため、校正曲線の作成を行った。キャリブレーション用サンプルとしては、ポリカプロラクトン(融点:55℃)、低密度ポリエチレン(LDPE、融点:110℃)、ポリプロピレン(PP、融点:181℃)、ポリエチレンテレフタレート(PET、融点:235℃)の4種を用いた。それぞれ測定位置を変えて2回測定し、その平均値を表面軟化温度として検量線を作成して、校正曲線を作成した。膨張の曲線と軟化の曲線を近似し、これらの交点を算出することで軟化温度した。
その結果、透明樹脂層の高温軟化性ホモポリプロピレン樹脂層の軟化点は6.7Vで軟化温度は180℃、低温軟化性樹脂層の軟化点は5.5Vで軟化温度は100℃であった。
次に、得られた透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施し、透明樹脂シート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。他方、隠蔽性のある70μmのポリエチレンシート(図1の基材層6)の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、そのインキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量%添加したインキを用いて、グラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄模様層5を設けた。
次に、基材層6の他方の面にプライマー層8を設けた。図1の層構成のうち、隠蔽層7を省いた層構成とした。
次に、基材層6の絵柄模様層5の上に、接着剤層4としてドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学(株)製;塗布量2g/m)を介して、透明樹脂シート3をドライラミネート法にて貼り合わせた。
次に、透明樹脂シート3の表面にエンボス模様3cを施した後、2液硬化型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)を塗布厚6g/mにて塗布して表面保護層2を形成し、図1に示す総厚170μmの化粧シートを得た。
この様にして得た化粧シートは、低温軟化性樹脂層3bについて、含まれるオレフィン系樹脂として1-ブテンの含有量が40質量%、メソペンタッド分率が55%、230℃におけるMFRが50g/10分、重量平均分子量(Mw)が130000、分子量分布(Mw/Mn、Mnは平均分子量)が2、高温軟化性樹脂層3aに対する低温軟化性樹脂層3bの膜厚比(低温軟化性樹脂層3b÷高温軟化性樹脂層3aの厚さ)が0.1であった。
<実施例2>
低温軟化性樹脂層3bについて、含まれるオレフィン系樹脂として1-ブテンの含有量を20質量%、メソペンタッド分率を60%、230℃におけるMFRを100g/10分、重量平均分子量(Mw)を500000とした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。なお、低温軟化性樹脂層3bの軟化温度は130℃となった。
<実施例3>
低温軟化性樹脂層3bについて、含まれるオレフィン系樹脂として1-ブテンの含有量を50質量%、メソペンタッド分率を20%、230℃におけるMFRを30g/10分、重量平均分子量(Mw)を10000とした以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。なお、低温軟化性樹脂層3bの軟化温度は90℃となった。
<比較例1>
低温軟化性樹脂層3bを形成しなかった事、および1-ブテンの含有率を50質量%とした事、以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
<比較例2>
高温軟化性樹脂層3aに対する低温軟化性樹脂層3bの膜厚比を0.005とした事、および1-ブテンの含有率を50質量%とした事、以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
<比較例3>
高温軟化性樹脂層3aに対する低温軟化性樹脂層3bの膜厚比を0.7とした事、および1-ブテンの含有率を50質量%とした事、以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
実施例1~3および比較例1~3について、高温軟化性樹脂層の軟化温度(℃)、メソペンタッド分率、重量平均分子量Mw、分子量分布(重量平均分子量Mwを平均分子量Mnで除した値、低温軟化性樹脂層の軟化温度(℃)、高温軟化性樹脂層に対する低温軟化樹脂層の膜厚比、低温軟化性樹脂層の1-ブテン含有率(質量%)、メソペンタッド分率、重量平均分子量Mw、分子量分布(重量平均分子量Mwを平均分子量Mnで除した値)を表1にまとめて示した。
Figure 0007480521000001
<性能評価>
実施例1~3及び比較例1~3の化粧シートについて、製膜性、結晶性の低下(結晶化度)、透明性、耐傷性、後加工性について評価を行った。その結果を表2に示した。
Figure 0007480521000002
(製膜性)
溶融押出時の透明樹脂シートの状態を目視にて観察する事によって評価した。評価は下記の2段階にて行った。
○:良好(ネックインやフィルムの破断が確認できなかった。)
△:やや劣る(ネックインやフィルムの破断が認められたが、実用上問題ないレベルである。)
×:劣る(ネックインやフィルムの破断が認められた。)
なお、ネックインとは溶融押出時に樹脂シートの幅が狭くなる現象を指す。
(結晶性)
結晶性について、赤外分光法にて結晶化度を算出したのち、低結晶性ポリプロピレン樹脂を添加していない場合(比較例1)と比較した。
結晶性を表す結晶化度は、フーリエ型赤外分光測定において得られた吸光スペクトルから、(I997-I938)÷(I973-I938)として算出した。ここで、I997は波数997cm-1のピーク強度値、I938は波数938cm-1のピーク強度値、I973は波数973cm-1のピーク強度値をあらわす。
評価は下記の2段階にて行った。
○:良好(比較例1の結晶化度と同等以上。)
×:劣る(比較例1の結晶化度より劣る。)
(透明性)
製造した透明樹脂層3を目視で観察し、下層の絵柄模様の視認性によって評価した。評価は下記の3段階にて行った。
○:良好(白濁が認められず、透明である。)
△:意匠性は問題ないが、やや白濁している(実用上問題ないレベル)。
×:劣る(白濁している。)
(耐傷性)
鉛筆硬度試験にて評価した。
試験方法はJIS-K5600に準拠し、評価方法としては、透明樹脂層3の表面に凹みが付かない最高硬度がHB以上の場合を「○」、2B以上の場合を「△」、3B以下の場合を「×」とした。
(密着性)
クロスカット法にて試験し、評価した。試験方法はJIS-K5600に準拠し、評価方法としては、格子パターンの各方向でのカット数は6個となるよう表面保護層をカットし、表面にセロテープ(登録商標)を貼り、剥離を行った。その後、表面保護層が剥離した箇所をカウントした。
〇:良好(剥離箇所0~10個)
△:やや劣る(剥離箇所11~18個)
×:劣る(剥離箇所19~36個)
(後加工性)
V溝曲げ加工適性試験に評価した。
以下に、V溝曲げ加工適性試験の詳しい方法について述べる。
まず、基材Bを構成する中質繊維板(MDF、Medium Density Fiberboad)の一方の面に対して、上記の方法で作製した化粧シートをウレタン系の接着剤を用いて貼り付け、基材Bの他方の面に対して、反対側の化粧シートにキズが付かないようにV型の溝を、基材Bと化粧シートとを貼り合わせている境界まで入れる。
次に、化粧シートの面が山折りとなるように基材Bを当該V型の溝に沿って90度まで曲げ、化粧シートの表面の折れ曲がった部分に白化や亀裂などが生じていないかを光学顕微鏡を用いて観察し、耐後加工性の優劣の評価を行う。
評価は下記の3段階にて行った。
○:良好(白化・亀裂などが認められない。)
△:やや劣る(軽微な白化・亀裂が認められるが、実用上問題ない。)
×:劣る(化粧シートとして容認できない白化・亀裂が認められる。)
実施例1~3においては、低温軟化性ポリプロピレン樹脂を積層することにより、柔軟性が付与され、さらに、耐傷性も含め、全ての評価項目で良好な結果となった。密着性の低下が見られていないことから、低温軟化性ポリプロピレン樹脂が、高温軟化性ポリプロピレン樹脂の非晶部に選択的に入り込んでいるものと推察される。これにより、耐傷性と後加工性のバランスが保たれているものと思われる。
比較例1の化粧シートでは、結晶性が低下し、表面保護層との密着性がわるく、剥離した。また、後加工性も劣っていた。
比較例2の化粧シートでは、結晶性の低下は無く、透明性は良好であったが、製膜性、密着性、耐傷性、後加工性が良好とは言えず、後加工性ではV溝加工時に白化した。
比較例3の化粧シートでは、結晶性が低下した。また溶融押出時にシート幅が狭くなるネックインが発生し、製膜性が不良となった。また、透明性も良好とは言えなかった。更に、軟らかすぎて耐傷性が劣っていた。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
基材層の、一方の面に少なくともプライマー層を備え、もう一方の面に少なくとも、絵柄模様層と、透明樹脂層と、表面保護層とを備えた化粧シートにおいて、
透明樹脂層は、表面保護層側から、低温軟化性樹脂層と高温軟化性樹脂層を備えており、
高温軟化性樹脂層の軟化温度は170℃~230℃であり、
低温軟化性樹脂層の軟化温度は50℃~130℃であり、
高温軟化性樹脂層の層厚に対する低温軟化性樹脂層の層厚の比率が1%~50%である事を特徴とする化粧シート。
[2]
前記低温軟化性樹脂層に占めるオレフィン系樹脂の質量の割合が、50質量%以下である事を特徴とする項1に記載の化粧シート。
[3]
前記低温軟化性樹脂層に用いられる樹脂は、メソペンタッド分率が20%以上60%以下であることを特徴とする項1または2に記載の化粧シート。
[4]
前記低温軟化性樹脂層に用いられる樹脂は、230℃におけるメルトフローレートが30~100(g/10分)であることを特徴とする項1~3のいずれかに記載の化粧シート。
[5]
前記低温軟化性樹脂層に用いられる樹脂の重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000であることを特徴とする項1~4のいずれかに記載の化粧シート。
[6]
前記低温軟化性樹脂層に用いられる樹脂の重量平均分子量を平均分子量で除した分子量分布の値が4未満であることを特徴とする項1~5のいずれかに記載の化粧シート。
[7]
前記透明樹脂層の引張り弾性率が25MPa~500MPaであることを特徴とする項1~6 のいずれかに記載の化粧シート。
[8]
項1~7のいずれかに記載の化粧シートの製造方法であって、
軟化温度が170℃~230℃の高温軟化性樹脂を使用して溶融押出機にて前記高温軟化性樹脂層を形成する工程と、
軟化温度が50℃~130℃の低温軟化性樹脂を使用して溶融押出機にて、高温軟化性樹脂層上に前記低温軟化性樹脂層を形成する事により前記透明樹脂層を形成する工程と、
前記基材層の一方の面に前記プライマー層を形成する工程と、
前記基材層のもう一方の面に前記絵柄模様層を形成する工程と、
前記絵柄模様層の上に接着剤層を介して、前記透明樹脂層を貼り合わせる工程と、
前記透明樹脂層の表面に表面保護層を形成する工程と、を備えている事を特徴とする化粧シートの製造方法。
1 化粧シート
2 表面保護層
3 透明樹脂層
3a 高温軟化性樹脂層
3b 低温軟化性樹脂層
3c エンボス模様
4 接着剤層
5 絵柄模様層
6 基材層
7 隠蔽層
8 プライマー層
B 基材

Claims (8)

  1. 基材層の、一方の面に少なくともプライマー層を備え、もう一方の面に少なくとも、絵柄模様層と、透明樹脂層と、表面保護層とを備えた化粧シートにおいて、
    前記透明樹脂層は、前記表面保護層側から、低温軟化性樹脂層と高温軟化性樹脂層を備えており、
    前記高温軟化性樹脂層の軟化温度は170℃~230℃であり、
    前記低温軟化性樹脂層の軟化温度は50℃~130℃であり、
    前記高温軟化性樹脂層の層厚に対する前記低温軟化性樹脂層の層厚の比率が1%~50%であり、
    前記高温軟化性樹脂層が含む樹脂は、メソペンタッド分率が95%以上である高結晶性ホモポリプロピレン樹脂からなる高温軟化性樹脂であり、
    前記低温軟化性樹脂層が含む樹脂は、結晶性ポリプロピレン樹脂を含む低温軟化性樹脂であり、
    前記低温軟化性樹脂の全質量に対する前記結晶性ポリプロピレン樹脂の比率は50質量%以上100質量%以下である事を特徴とする化粧シート。
  2. 前記低温軟化性樹脂は前記結晶性ポリプロピレン樹脂に加えて他のオレフィン系樹脂を更に含み、前記低温軟化性樹脂に占める前記他のオレフィン系樹脂の質量の割合が、50質量%以下である事を特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記低温軟化性樹脂は、メソペンタッド分率が20%以上60%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。
  4. 前記低温軟化性樹脂は、230℃におけるメルトフローレートが30~100(g/10分)であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の化粧シート。
  5. 前記低温軟化性樹脂の重量平均分子量(Mw)が10,000~500,000であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の化粧シート。
  6. 前記低温軟化性樹脂の重量平均分子量を平均分子量で除した分子量分布の値が4未満であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の化粧シート。
  7. 前記透明樹脂層の引張り弾性率が25MPa~500MPaであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の化粧シート。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載の化粧シートの製造方法であって、
    軟化温度が170℃~230℃の前記高温軟化性樹脂を使用して溶融押出機にて前記高温軟化性樹脂層を形成する工程と、
    軟化温度が50℃~130℃の前記低温軟化性樹脂を使用して溶融押出機にて、前記高温軟化性樹脂層上に前記低温軟化性樹脂層を形成する事により前記透明樹脂層を形成する工程と、
    前記基材層の一方の面に前記プライマー層を形成する工程と、
    前記基材層のもう一方の面に前記絵柄模様層を形成する工程と、
    前記絵柄模様層の上に接着剤層を介して、前記透明樹脂層を貼り合わせる工程と、
    前記透明樹脂層の表面に表面保護層を形成する工程と、を備え
    前記高温軟化性樹脂は、メソペンタッド分率が95%以上である前記高結晶性ホモポリプロピレン樹脂であり、
    前記低温軟化性樹脂は、その全質量に対して50質量%以上100質量%以下の比率で前記結晶性ポリプロピレン樹脂を含み、
    前記高温軟化性樹脂層の層厚に対する前記低温軟化性樹脂層の層厚の比率を1%~50%とする事を特徴とする化粧シートの製造方法。
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