JP2020011216A - コロイド水溶液及びその製造方法、並びに基材難燃化加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】油性成分を実質的に含有しない、水に不溶性の物質が分散されてなるコロイド水溶液を提供する。【解決手段】融点が250℃以下である水に不溶性の物質(A)及び水分散性の成分(B)からなるコロイド粒子が、水溶媒中に分散してなるコロイド水溶液である。当該コロイド水溶液中におけるコロイド粒子の含有割合は、0.01質量%以上30質量%以下であり、且つ、コロイド水溶液の水溶媒中における油性成分の含有割合が、コロイド粒子の総質量を100質量%として、1質量%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、コロイド水溶液及びその製造方法、並びに基材難燃化加工方法に関するものである。より具体的には、本発明は、コロイド水溶液及びその製造方法、並びにかかるコロイド水溶液を用いた、皮革、繊維、及び織物等の基材の難燃化加工方法に関するものである。
分散質としての、直径が1nmから10μmである粒子が、分散媒としての溶媒中に安定に分散している物質は、「コロイド」と呼ばれ、様々な産業分野で利用されており、古くからその性質について研究されてきた。分散媒が水であるコロイドは、分散質の構造から、分子コロイド、ミセルコロイド、及び分散コロイドがあり、その製造方法は分散質に応じて多数存在していた。
例えば、分子コロイドは、親水性基を有する等、分子内に親水性の構造部を有する高分子を用いて良好に製造することができる。また、親水性基等の親水性の構造を有さない化合物であっても、オイルを用いることでミセルコロイドを形成できる場合がある。より具体的には、特許文献1では、所定のオイル形成剤を用いることで、水に対して不溶性の化合物である写真用助剤が分散されてなる親水性コロイド組成物を得る技術が開示されている。或いは、疎水性の金属酸化物については、特許文献2に記載されているように、金属塩化物を水中で加水分解して沈殿物を得て、得られた沈殿物をアルカリ水溶液に分散することで、分散コロイドを得ることができる場合がある。
特開昭58−130337号公報 特公昭35−006616号公報
しかし、特許文献1に記載の技術では、得られたミセルコロイド中に、オイル形成剤の成分が残留することを抑制することができず、かかる残留成分がコロイド水溶液の品質を劣化させる虞があった。また、特許文献2に記載の技術は、限られた化合物にしか適用することができなかった。
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明は、油性成分を実質的に含有しない、水に不溶性の物質が分散されてなる、コロイド水溶液を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、油性成分を実質的に含有しない、水に不溶性の物質が分散されてなるコロイド水溶液を良好に製造することができる、コロイド水溶液の製造方法を提供することを目的とする。
さらにまた、本発明は、水に不溶性の物質としての難燃剤が分散されてなる上記コロイド水溶液を用いた、基材難燃化加工方法を提供することを目的とする。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のコロイド水溶液は、融点が250℃以下である水に不溶性の物質(A)及び水分散性の成分(B)からなるコロイド粒子が、水溶媒中に分散してなる、コロイド水溶液であって、前記コロイド水溶液中における前記コロイド粒子の含有割合が、0.01質量%以上30質量%以下であり、且つ、前記コロイド水溶液の水溶媒中における油性成分の含有割合が、前記コロイド粒子の総質量を100質量%として、1質量%以下であることを特徴とする。本発明に従う、コロイド粒子が水媒体中に分散してなるコロイド水溶液は、油性成分を実質的に含有しないため、種々の用途に好適に用いることができる。なお、「コロイド粒子」は、1つの粒子内に、物質(A)及び成分(B)の双方を含んでなる。
なお、物質(A)の融点は、示差走査熱量測定法(Differential scanning calorimetry:DSC)に従って、実施例に記載した方法により測定することができる。
また、ある物質又は成分が「水に不溶性」であるとは、1atm、20℃における水への溶解度が1質量%未満であることを意味する。
また、水分散性の成分(B)とは、明細書の実施例に記載した試験方法にて水分散性が確認されうる成分を意味する。
さらにまた、「油性成分を実質的に含有しない」とは、コロイド水溶液の水溶媒中における油性成分の含有割合が1質量%以下であることを意味する。
また、本発明に係るコロイド水溶液において、前記成分(B)が親水性部分及び疎水性部分を含む、少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。成分(B)が、親水性部分及び疎水性部分を含む少なくとも一種の化合物(b1)を含んでいれば、コロイド粒子が安定性に富み、コロイド水溶液の安定性を一層高めることができるからである。
さらにまた、本発明に係るコロイド水溶液において、前記コロイド粒子の体積平均粒子径D90が、10μm以下であることが好ましい。コロイド粒子の体積平均粒子径D90が、10μm以下であれば、コロイド水溶液中にてコロイド粒子が沈降し難く、コロイド水溶液の分散安定性を一層高めることができるからである。
なお、「体積平均粒子径D90」は、コロイド粒子について体積基準の粒子径分布を取得した場合に、小径側から計算した累積体積が90%となる粒子径を意味し、実施例に記載した方法により測定することができる。
そして、本発明に係るコロイド水溶液において、前記物質(A)が難燃剤であっても良い。物質(A)として難燃剤を含む本発明のコロイド水溶液は、皮革、繊維、及び織物等の基材を難燃化加工する際に良好に使用することができる。
ここで、本発明は上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のコロイド水溶液の製造方法は、上述した何れかのコロイド水溶液を得るための、コロイド水溶液の製造方法であって、前記物質(A)及び前記成分(B)を、40℃以上280℃未満の加熱温度T1℃で加熱混合して、加熱混合物を得る、加熱混合工程と、前記加熱混合物の温度を、90℃以下、且つ、前記加熱温度T1℃未満である、冷却温度T2℃以下として冷却混合物を得る、冷却工程と、前記冷却混合物と水とを撹拌混合して前記物質(A)及び前記成分(B)よりなるコロイド粒子を形成し、該コロイド粒子が水中に分散してなるコロイド水溶液を得る、加水工程と、を含むことを特徴とする。上記各工程を経ることで、上述した本発明のコロイド水溶液を良好に製造することができる。
なお、本明細書に記載した各種温度は、特段記載しない限り、全て、1atmにおける温度である。
また、本発明に係るコロイド水溶液の製造方法において、前記加水工程は、前記冷却混合物に対して水を添加しつつ撹拌して水含有割合が0.01質量%以上50質量%以下の不透明混合物(C)を得る、不透明混合物形成工程と、前記不透明混合物(C)の量の3倍以上の量の水を準備し撹拌しつつ、該水に対して、前記不透明混合物を徐々に添加してコロイド水溶液を得る、コロイド粒子形成工程と、を含むことが好ましい。加水工程にて上記のような二段階の加水操作を実施することで、一層良好にコロイド粒子を形成することができる。
また、本発明に係るコロイド水溶液の製造方法において、前記不透明混合物(C)の粘度が、1mPa・s以上107Pa・s以下であることが好ましい。不透明混合物(C)の粘度を上記範囲内とすることで、一層良好にコロイド粒子を形成することができる。
なお、不透明混合物(C)の粘度は、実施例に記載した方法により測定することができる。
ここで、本発明は上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の基材難燃化加工方法は、物質(A)が難燃剤である本発明のコロイド水溶液を用いて、基材を難燃化処理する工程を含むことを特徴とする。本発明のコロイド水溶液は、油性成分を実質的に含有しないため、難燃化加工対象である基材に不所望な品質劣化が生じることを効果的に抑制することができる。
本発明によれば、油性成分を実質的に含有しない、水に不溶性の物質が分散されてなる、コロイド水溶液を提供することができる。
さらに、本発明によれば、油性成分を実質的に含有しない、水に不溶性の物質が分散されてなるコロイド水溶液を良好に製造することができる、コロイド水溶液の製造方法を提供することができる。
さらにまた、本発明によれば、水に不溶性の物質としての難燃剤が分散されてなる上記コロイド水溶液を用いた、基材難燃化加工方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に例示説明する。本発明のコロイド水溶液は、本発明のコロイド水溶液の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」とも称する)を通じて効率的に製造することができる。
ここで、本発明のコロイド水溶液は、皮革、繊維、及び織物等の基材の難燃化加工及び帯電防止加工の際の加工溶液;難燃性付与及び帯電防止能付与のために用いうる機能性塗料;及び磁性薄膜等の機能性薄膜の形成材料等として、好適に用いることができる。
(コロイド水溶液)
本発明のコロイド水溶液は、融点が250℃以下である水に不溶性の物質(A)及び水分散性の成分(B)からなるコロイド粒子が水溶媒中に分散してなるコロイド水溶液である。そして、かかるコロイド水溶液中におけるコロイド粒子の含有割合が0.01質量%以上30質量%以下であり、且つ、コロイド水溶液の水溶媒中における油性成分の含有割合が、コロイド粒子の総質量を100質量%として、1質量%以下である。換言すれば、本発明のコロイド水溶液は、油性成分の含有割合が1質量%以下であり、油性成分を実質的に含有しない。従って、本発明のコロイド水溶液では、油性成分に起因して、コロイド水溶液自体の品質が劣化すること、コロイド水溶液を適用した対象物の品質が劣化すること、及びコロイド水溶液を用いた工程にて工程汚染が生じること、等を効果的に抑制することができる。上述の通り、本発明のコロイド水溶液は、所定の性状を満たす物質(A)及び成分(B)よりなるコロイド粒子、水、及び用途に応じて添加されうる任意の添加剤等を含みうる。以下、各種構成要素についてそれぞれ詳述する。
<コロイド粒子>
本発明のコロイド水溶液は、物質(A)及び成分(B)よりなるコロイド粒子を含む。より具体的には、本発明のコロイド水溶液は、溶媒としての水中にコロイド粒子が分散されてなる。コロイド粒子は、特に限定されることなく、物質(A)よりなるコア部が、成分(B)よりなるシェル部によって包含されてなる構造、あるいは、物質(A)と成分(B)との混合物よりなるミセル構造をとり得る。そして、コロイド粒子は、成分(B)の作用により水中で安定的に分散しうる。
<<物質(A)>>
本発明のコロイド水溶液に含有されうる物質(A)としては、融点が250℃以下である水に不溶性の物質が挙げられる。物質(A)の融点は、250℃以下である必要があり、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは、150℃以下である。物質(A)の融点が上記上限値以下であれば、良好にコロイド粒子を形成することができる。また、物質(A)の融点は、特に限定されることなく、通常、0℃以上でありうる。
具体的には、物質(A)としては、上位条件を満たす化合物であって、難燃剤、帯電防止剤、撥水剤、潤滑剤等として機能し得る物質が挙げられる。中でも、難燃剤としては、大塚化学(株)製の、SPS‐100、SPB‐100、SPE‐100などのホスファゼン系難燃剤、大八化学(株)製の、PX‐200、CR‐741、CR‐7335、トリフェニルホスフェート(TPP)などのリン酸エステル系難燃剤、クアライアントケミカルズ(株)製のエグゾリットなどのホスフィン酸金属塩系難燃剤、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤、株式会社ADEKA製のアデカスタブFP‐2000シリーズなどのイントメッセント系難燃剤、及び、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。また、帯電防止剤としては、カーボン粉末などの導電性炭素材料、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子等が挙げられる。なお、帯電防止剤として機能し得る導電性高分子の上市製品には、三洋化成工業(株)製のベレクトロンシリーズ等がある。
<<成分(B)>>
本発明のコロイド水溶液に含有されうる成分(B)としては、それ自体が水に分散しコロイドになり得る、少なくとも一種の化合物又は複数の化合物を含む組成物が挙げられる。候補となる化合物又は組成物について、実施例の<成分(B)の水分散性>の項目に記載した判定方法に従って試験することで、本発明において成分(B)として配合可能であるか否かを判定することができる。そして、成分(B)が水媒体中にて上述した物質(A)を包含してコロイド粒子を安定的に形成して、本発明のコロイド水溶液を得ることができる。
ここで、本発明のコロイド水溶液は、親水性部分及び疎水性部分を有する化合物(b1)を含むことが好ましい。なお、化合物(b1)として、複数種の化合物を含んでいても良い。また、化合物(b1)は、23℃、1atmの条件下にて液体であることが好ましい。
かかる化合物としては、例えば、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物等のフェノール性樹脂のアルキレンオキサイド付加物;ドデカノールエチレンオキサイド付加物等の、炭素数6以上のアルコールのアルキレンオキサイド付加物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらは、フェノール性樹脂及び上記所定の炭素数のアルコール等の疎水性化合物を、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのような親水性化合物と反応させることで調製することができる。或いは、化合物(b1)としては、三洋化成工業社製「ナロアクティー(登録商標)」シリーズ、及び信越化学工業社製「信越シリコーン」シリーズ界面活性剤等の上市製品を好適に用いることもできる。
ここで、化合物(b1)は、HLB値が3以上であることが好ましい。化合物(b1)のHLB値は、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、19以下であることが好ましい。HLB値が上記3以上であれば、コロイド分散液の安定性を高めることができる。なお、HLB値は、グリフィン法(HLB値=20×親水性部分の式量の総和/分子量)に従って算出することができる。
そして、化合物(b1)は、重量平均分子量が、400以上であることが好ましく、1,000,000未満であることが好ましく、100,000未満であることがより好ましく、10,000未満であることが更に好ましく、1,000未満であることが特に好ましい。化合物(b1)の重量平均分子量が上記範囲内であれば、コロイド水溶液の生産性に優れる。特に、後述する本発明の製造方法では、化合物(b1)として重量平均分子量が400以上の化合物を採用することで、冷却工程にて結晶化して沈殿物を生じることを抑制することができ、加水工程にて効率的にコロイド粒子を形成することができる。また、後述する本発明の製造方法にて、化合物(b1)として重量平均分子量が1,000,000未満の化合物を採用することで、加熱混合工程にて得られる混合物の粘度が過度に高まることを抑制することができ、高い作業性にて混合物を調製することができる。
さらに、化合物(b1)は、式:重量平均分子量/数平均分子量に従って算出することができる多分散度(即ち、分子量分布)が、1以上である、多分散化合物であることが好ましい。化合物(b1)の多分散度は、1以上であることがより好ましく、1.3以上であることが更に好ましい。
そして、成分(B)は、化合物(b1)のみからなる成分であっても良いし、化合物(b1)とは異なる他の化合物(b2)を更に含んでいても良い。かかる他の化合物(b2)としては、特に限定されることなく、アクリル系ポリマー又はコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)系ポリマー又はコポリマー、フェノール系ポリマー又はコポリマー、及びポリスチレン系ポリマー又はコポリマー等が挙げられる。他の化合物(b2)は、親水性部分のみを有していても良いし、疎水性部分のみを有していても良い。また、他の化合物(b2)の好適な分子量範囲は、化合物(b1)と同じ範囲であり得る。
なお、成分(B)は、成分(B)全体に占める質量割合が最も大きい構造単位のSP(Solubility Parameter)値と、物質(A)のSP値との差の絶対値が、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。なお、SP値は、市販のソフトウエアであるJ−OCTAを用いて算出することができる。
そして、上記したSP値の差の絶対値以外に、物質(A)と、成分(B)との好適な組み合わせを選定するための基準としては、所定の条件で混合した場合に、透明又は半透明の混合物が得られること、が挙げられる。かかる混合時の条件は、後述する本発明の製造方法における加熱混合工程と同じ、40℃以上280℃未満の加熱温度での加熱混合である。物質(A)と、成分(B)とを質量比(A):(B)=1:2で上記条件に従って混合した場合に、透明と判断可能な混合物が得られた場合に、用いた物質(A)と、成分(B)との組み合わせが好適な組み合わせであったと判断することができる。ここで、本明細書にて、「透明又は半透明」とは、分光光度計を用いて測定し、ランベルト・ベールの法則に従い、基準となる脱イオン水に対し全光線透過率が50%以上であることを意味する。
<<コロイド粒子の体積平均粒子径分布>>
コロイド粒子は、体積平均粒子径D90が、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。体積平均粒子径D90が上記上限値以下であれば、コロイド水溶液中にてコロイド粒子の沈降が生じることを良好に抑制することができる。なお、コロイド粒子の体積平均粒子径D90は、通常、0.1μm以上でありうる。
<コロイド粒子の含有割合>
コロイド水溶液中におけるコロイド粒子の含有割合は、コロイド水溶液の全質量を100質量%として、0.01質量%以上30質量%以下である必要があり、好ましくは、0.1質量%以上20質量%以下であり得る。なお、コロイド粒子の含有割合は用途に応じて適切な量を決定することができる。また、コロイド粒子の含有割合は、溶媒としての水の配合量を増減することで調節することができる。
<油性成分比率>
本発明のコロイド水溶液は、水溶媒中における油性成分の含有割合が、コロイド粒子の総質量を100質量%として、1質量%以下である必要があり、好ましくは、0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。本発明のコロイド水溶液を後述する本発明の製造方法に従って製造することで、油性成分を実質的に含有しないようにすることができる。これは、コロイド粒子を調製する際に、油性成分を使用する必要が無いためである。ここで、「油性成分」とは、室温(物質(A)及び成分(B)とは異なる成分であって、1atmでの沸点が100℃未満であり、23℃、0.1Pa以上10000Pa以下の真空条件下で揮発する、水に不溶性の成分を意味する。油性成分としては、かかる条件を満たす各種炭化水素油及び各種エステル油等が挙げられる。
<任意の添加剤>
本発明のコロイド水溶液が含有し得る任意の添加剤としては、特に限定されることなく、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等が挙げられる。
(コロイド水溶液の製造方法)
本発明のコロイド水溶液の製造方法は、上述したような物質(A)及び成分(B)を、40℃以上280℃未満の加熱温度T1℃で加熱混合して、加熱混合物を得る加熱混合工程と、加熱混合物の温度を、90℃以下、且つ、加熱温度T1℃未満である、冷却温度T2℃以下として冷却混合物を得る冷却工程と、冷却混合物と水とを撹拌混合して物質(A)及び成分(B)よりなるコロイド粒子を形成し、該コロイド粒子が水中に分散してなるコロイド水溶液を得る加水工程と、を含むことを特徴とする。そして、本発明の製造方法は、上記の加熱混合工程、冷却工程、及び加水工程をこの順で実施するため、上述した本発明のコロイド水溶液を効率的に製造することができる。即ち、上記の加熱混合工程にて物質(A)及び成分(B)を加熱及び混合して、水に不溶性の物質(A)と、水分散性である成分(B)とが均一に混合されてなる混合物を調製することができる。そして、冷却工程にて、加熱混合工程にて得られた加熱混合物を所定以下の温度まで冷却してから、加水工程を実施することで、物質(A)よりなるコア部が、成分(B)よりなるシェル部により包含されてなるコロイド粒子を良好に形成することができる。
以下、各工程について詳述する。
<加熱混合工程>
加熱混合工程では、物質(A)及び成分(B)を、40℃以上280℃未満の加熱温度T1℃で加熱混合して、加熱混合物を得る。ここで、物質(A)としては、(コロイド水溶液)<<物質(A)>>の項目にて述べた物質と同じ物質を用いることができる。また、成分(B)としては(コロイド水溶液)<<成分(B)>>の項目にて述べた成分と同じ成分を用いることができる。なお、成分(B)は、上記した各種化合物に加えて、水を含有していても良い。加熱混合工程にて添加する成分(B)に含有されうる水の割合は、成分(B)の全質量を100質量%として、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。なお、成分(B)が水を非含有であっても良い。なお、成分(B)における水含有割合は、カールフィッシャー法に従って実施例に記載のようにして測定することができる。
加熱混合工程における加熱温度T1℃は、40℃以上280℃未満である必要があり、60℃以上200℃未満であることが好ましく、80℃以上150℃未満であることが更に好ましい。加熱温度T1℃が上記下限値以上であれば、加熱混合物を効率的に調製することができる。また、加熱温度T1℃が上記上限値以下であれば、物質(A)及び成分(B)が変質することを効果的に抑制することができる。
より具体的には、物質(A)が23℃、1atmの条件下にて固体の物質であり、成分(B)が23℃、1atmの条件下にて液体である化合物(b1)を含む場合には、加熱混合工程にて、上記加熱温度T1℃で物質(A)及び成分(B)の混合物を加熱し、物質(A)を成分(B)(なかでも、化合物(b1))に対して溶解させることが好ましい。なお、加熱温度T1℃は、加熱混合工程にて加熱を行うために用いるヒーター等の加熱機構の設定温度であり得る。
そして、上記加熱の開始と同時に、或いは、数分間の加熱を経て物質(A)が充分に溶解した後に、混合物の撹拌を開始して、物質(A)及び成分(B)を含む撹拌混合物を得る。かかる撹拌は、特に限定されることなく、ラボミキサー等の高速撹拌装置を用いて実施することができる。また、撹拌速度は、特に限定されないが、300rpm以上であり得る。なお、撹拌を行っている間、加熱を継続しても良いし、一旦加熱を停止しても良い。また、撹拌及び加熱を終了するタイミングは、撹拌及び加熱の何れか一方を先に終了した後に、他方を終了しても良いし、双方を同時に終了しても良い。終了するタイミングは、撹拌混合物が透明化又は半透明化していることを目視又は分光光度計を用いて測定して確認することで、一義的に決定することができる。
なお、物質(A)が23℃、1atmの条件下にて液体の物質である場合であっても、撹拌混合物が透明化又は半透明化したことを目視又は分光光度計を用いて測定して確認することで、撹拌及び加熱の終了タイミングを決定することができる。
<冷却工程>
冷却工程では、加熱混合工程で得られた加熱混合物の温度を冷却温度T2℃以下まで冷却して冷却混合物を得る。なお、冷却温度T2℃は、冷却混合物自体の温度であり得る。冷却温度T2℃は、90℃以下であるとともに、加熱温度T1℃未満である必要がある。そして、冷却温度T2℃は、80℃以下であることが好ましい。冷却温度T2℃が上記上限値以下であれば、後続する加水工程にてコロイド粒子を効率的に形成することができる。なお、冷却工程における冷却は、特に限定されることなく、上記工程で得られた加熱混合物を室温で放置することで行うことができる。
<加水工程>
加水工程では、冷却混合物と水とを撹拌混合して物質(A)及び成分(B)よりなるコロイド粒子を形成し、該コロイド粒子が水溶媒中に分散してなるコロイド水溶液を得る。加水工程にて冷却混合物と混合しうる水の温度は、90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、70℃未満であることが更に好ましい。加水工程にて冷却混合物と混合しうる水の温度が上記上限値以下であればコロイド水溶液中で物質(A)が析出することを良好に抑制することができる。さらに、加水工程にて冷却混合物と混合しうる水の温度は、冷却混合物の温度よりも低いことが好ましい。また、加水工程にて冷却混合物と混合しうる水の温度と、冷却混合物の温度との差の絶対値が10℃以上であることが好ましい。
ここで、加水工程では、冷却混合物と水との混合操作を、一段階の操作で行っても良いし、後述するような二段階の操作で行っても良い。加水工程を一段階の操作で行うか、二段階の操作で行うかという点に関しては、成分(B)における水の含有量に基づいて、適宜選択することができる。より具体的には、成分(B)における水の含有量が、0.01質量%以上である場合には、加水工程を一段階で行っても良いし、二段階で行っても良い。従って、工数を少なくして製造効率を高める観点からは、加水工程を一段階で行うことができる。或いは、工数の少なさよりも得られるコロイド粒子の均一性を重視する場合には、成分(B)における水の含有量が0.01質量%以上である場合でも、加水工程を二段階で行うことができる。また、成分(B)における水の含有量が0.01質量%未満である場合には、コロイド粒子の形成容易性の観点から、加水工程を二段階で行うことが好ましい。
まず、加水工程を一段階の操作で行う場合には、冷却混合物の全量を100体積%とした場合に500体積%以上の水を準備して、かかる水を撹拌しているところに、冷却混合物を徐々に添加する。撹拌速度は特に限定されないが、例えば300rpm以上でありうる。また、冷却混合物の添加時間は、特に限定されることなく1分以上300分以下であり得る。
また、加水工程を二段階の操作で行う場合には、不透明混合物形成工程と、コロイド粒子形成工程とを実施することができる。まず、不透明混合物形成工程では、冷却混合物に対して水を添加しつつ撹拌して不透明混合物(C)を得る。ここで、不透明混合物(C)における水含有割合は、0.01質量%以上50質量%以下である必要がある。水含有割合が0.01質量%以上であれば、後続するコロイド粒子形成工程にて得られるコロイド水溶液を均一化することができる。また、水含有割合が50質量%以下であれば、後続するコロイド粒子形成工程にて、物質(A)が水溶媒中にて析出することを良好に抑制することができる。そして、水含有割合は、コロイド水溶液の均一性を一層高める観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、コロイド粒子形成工程における撹拌時間を短縮して製造効率を高める観点から、5質量%以上であることがより好ましい。そしてまた、水含有割合は、コロイド水溶液の安定性を一層向上させる観点から、30質量%以下であることがより好ましく、コロイド水溶液の均一性を容易に判定可能とする観点から20質量%以下であることが更に好ましい。不透明混合物形成工程における撹拌速度は特に限定されないが、例えば300rpm以上でありうる。また、水の添加時間は、特に限定されることなく30秒以上60分以下であり得る。
ここで、不透明混合物(C)の粘度は、1mPa・s以上が好ましく、10mPa・s以上がより好ましく、107Pa・s以下であることが好ましく、105Pa・s以下であることがより好ましい。なお、不透明混合物の粘度は、104mPa・s以下の場合には回転数100rpmにおける粘度を意味し、104mPa・s超の場合には、回転数1rpmにおける粘度を意味する。不透明混合物(C)の粘度を上記範囲内とすることで、一層良好にコロイド粒子を形成することができるからである。なお、不透明混合物の粘度は、不透明混合物形成工程にて添加する水の量を増減することによって、所望の範囲に調節することができる。
そして、コロイド粒子形成工程では、不透明混合物(C)の量(体積基準)の3倍以上の量の水を準備して撹拌しつつ、該水に対して不透明混合物(C)を徐々に添加して水溶媒中に不透明混合物(C)から形成されたコロイド粒子が分散してなるコロイド水溶液を得る。かかる工程を経て得られたコロイド水溶液は、ミセルコロイド水溶液である。
ここで、得られるコロイド水溶液の安定性及び製造効率の双方を一層良好にバランスする観点から、コロイド粒子形成工程で準備する水の量は、不透明混合物(C)の量の7倍以上であることが好ましい。なお、コロイド粒子形成工程における撹拌速度は特に限定されないが、例えば300rpm以上でありうる。また、不透明混合物の添加時間は、特に限定されることなく1分以上100分以下であり得る。
なお、コロイド粒子形成工程にて水に対して不透明混合物(C)を添加することに先立って、任意で、水に対して所望の添加成分を配合しておいても良い。即ち、コロイド粒子形成工程にて、水及び当該水に対して添加した添加成分、並びに不透明混合物(C)が共存していても良い。添加成分としては、例えば、アクリル酸エステル単量体単位及び/又はメタクリル酸エステル単量体単位を主成分(重合体を構成する全単量体単位100質量%に対して50質量%超)とするアクリル系ポリマー及びコポリマー等が挙げられる。
なお、本発明の方法は、コロイド粒子形成工程の後段にて、任意の添加剤を添加する工程を含んでいても良い。
(基材難燃化方法)
本発明の基材難燃化方法は、上述した本発明のコロイド水溶液(物質(A)として難燃剤を含有する)を用いて、基材を難燃化処理する工程を含むことを特徴とする。本発明の基材難燃化方法では、本発明のコロイド水溶液を用いるため、難燃化加工対象である基材にて、油性成分に起因し得る不所望な品質劣化が生じ難い。より具体的には、例えば、基材として皮革を用いた場合には、油性成分が存在することで染色ムラが生じる虞があったが、本発明のコロイド水溶液によれば、油性成分に起因する染色ムラを抑制することが可能となりうる。
<難燃化処理工程>
皮革、繊維、及び織物等の基材を難燃化するための難燃化処理工程は、物質(A)として難燃剤を含有する本発明のコロイド水溶液を用いる限りにおいて特に限定されることなく、既知のあらゆる方途により実施することができる。例えば、基材が皮革又は織物である場合には、通常、なめし工程と称されうる工程にて、水と共にコロイド水溶液を添加することで、皮革を難燃化処理することができる。より具体的には、ドラム槽に対して、皮革/織物、コロイド水溶液と任意の水とを添加してから、当該ドラム槽を数時間回転させ、その後ドラム槽から水分を排出し、さらにドラム槽に注水して皮革/織物を洗浄する、という操作により皮革/織物を難燃化処理することができる。なお、基材が皮革である場合には、ドラム槽に対して、皮革、コロイド水溶液と任意の水とを添加してドラム槽を数時間回転させた後に、さらに酸(pH4以下)を添加し、数分間〜数時時間ドラム槽を回転させた後に排水を行っても良い。
また、例えば、上記のような方途によらず、インクジェット法等のコーティング方法にてコロイド水溶液を用いることで、上記のような基材を難燃化処理することも可能である。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される単量体単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
実施例において、物質(A)の融点、物質(A)の水への溶解度、化合物(b1)のHLB値、成分(B)の水含有割合、成分(B)の水分散性、不透明混合物の粘度、水溶媒中における油性成分の含有割合、コロイド粒子の体積平均粒子径D90、重量平均分子量、及びSP値は、それぞれ以下のようにして測定した。
<物質(A)の融点>
示差熱分析測定装置(島津製作所社製、DSC-60)を用いて、基準物質をアルミナとして測定した。物質(A)の融点が示す吸熱曲線の吸熱が極大となる位置の温度を融点とした。極大となる温度が2つ以上観察された場合には、最も高い温度を物質(A)の融点として採用した。
<物質(A)の水への溶解度>
1atm、20℃における水への溶解度(質量%)を測定した。
<化合物(b1)のHLB値>
グリフィン法(HLB値=20×親水性部分の式量の総和/分子量)に従って算出に従って算出した。
<成分(B)の水含有割合>
カールフィッシャー水分測定装置(三菱ケミカルアナリテック社製、CA-310)を用いて、JIS K 0068−2001に従って測定した。
<成分(B)の水分散性>
実施例で用いた各成分(B)0.5gを、室温で100gの水に対して分散して、800rpmで高速撹拌を行いながら80℃まで加熱した。1時間80℃で高速攪拌を行った後、高速攪拌を行いながら室温まで冷却し、その後1時間静置した。静置後の水溶液を目視観察して、沈殿物が観察されなければ、かかる成分(B)は水分散性を有すると判定した。
<不透明混合物の粘度>
実施例で得られた不透明混合物について、23℃条件下、B型粘度計(回転数:100rpm)で測定した。
<水溶媒中における油性成分の含有割合>
実施例で調製したコロイド水溶液をろ過してコロイドと水溶媒とを分離し、水溶媒をガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製GCMS-TQ8050)で分析して、油性成分の含有割合を測定した。
<コロイド粒子の体積平均粒子径D90>
コロイド粒子の体積平均粒子径D90は、実施例で調製したコロイド水溶液を使用し、JIS Z8825に準拠してレーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製、「SALD−2300」)を用いて測定した。得られた体積基準の粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が90%となる粒子径を、コロイド粒子の体積平均粒子径D90として求めた。
<重量平均分子量>
実施例で配合した化合物(b1)についてゲル浸透クロマトグラフィーを用いて重量平均分子量(Mw)を測定した。
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ(島津製作所製、LC-20)を使用し、展開溶媒として水を用いて、化合物(b1)の重量平均分子量(Mw)を標準ポリスチレン換算値として求めた。
<SP値>
物質(A)のSP値、及び成分(B)全体に示す質量割合が最も大きい構造単位のSP値は、J−OCTAを用いて算出した。
(実施例1)
<化合物(b1−1)の調製>
攪拌及び温度調節機能の付いたステンレス製のオートクレーブに、フェノール性樹脂としてのビスフェノールA228部(1モル)及びイオン捕捉剤としての「キョーワード500」24.2部(0.04モル)を投入し、減圧下(1〜5mmHg)、160℃にて3時間前処理した。次いでエチレンオキサイド(EO)110部(2.5モル)を、180℃にて、ゲージ圧が1〜3kgf/cm2となるように導入した。EOの付加重合反応に要した時間は3.5時間であった。得られた化合物(b1−1)であるビスフェノールAエチレンオキサイド付加物について、上記に従って、重量平均分子量、並びに水含有割合を測定した。結果を表1に示す。また、成分(B)全体に占める質量割合が最も大きい構造単位である、化合物(b1−1)のビスフェノールA由来の構造単位のSP値をOCTAで計算した。結果を表1に示す。
<コロイド水溶液の製造>
<<加熱混合工程>>
物質(A)としてのホスファゼン系難燃剤(大塚化学社製、SPB-100)(表1中、「PZ」と略記する、以下例についても同じ。OCTAで計算されたSP値:19.5(MPa)1/2)40部と、成分(B)を構成する、上記で得られた化合物(b1−1)100部とを、容量500mlのステンレスビーカーに分取し、100℃に設定したヒーターで加熱した。100℃で3分間放置したところ、物質(A)が成分(B)に対して溶解したので、ラボミキサーで10分間攪拌した(800rpm)。攪拌終了後、再度ビーカーをヒーターで加熱したところ、1分ほどで内容物全体が透明となり、透明な、加熱混合物が得られた。
<<冷却工程>>
ヒーターによるビーカーの加熱を停止し、室温に放置し冷却した。加熱混合物の温度が70℃となるまで静置し、冷却混合物を得た。
<<加水工程>>
3000mlの水(温度:30℃)をミキサーに入れ、高速攪拌(400rpm)を開始した。ここに、上記冷却工程で得られた冷却混合物200mlを10分間かけてステンレスビーカーから滴下した。すなわち、本例における加水工程は一段階の操作で実施した。加水工程で混合した水は、冷却混合物の15倍量であった。
得られたコロイド水溶液を用いて、上記に従って、水媒体中における油性成分量(基準:コロイド粒子総量)、及びコロイド粒子の体積平均粒子径D90を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
<化合物(b1−3)の準備>
化合物(b1−3)として、三洋化成社製、「ナロアクティー(登録商標)CL−70」を準備した。化合物(b1−3)について、実施例1と同様の各種測定を行った。結果を表1に示す。
<コロイド水溶液の製造>
<<加熱混合工程〜冷却工程>>
加熱混合工程にて、物質(A)としてのSPB−100を50部と、成分(B)を構成する、上記で準備した化合物(b1−3)100部とを、500mlのステンレスビーカーに仕込んだ以外は実施例1と同様にして、冷却工程まで実施した。
<<加水工程>>
―不透明混合物形成工程―
上記冷却工程で70℃まで冷却した冷却混合物を、ラボミキサーで高速攪拌(800rpm)し、ここに、50mlの水(温度:30℃)を1分間かけて滴下した。滴下後も30分間攪拌を続けながら、室温まで冷却して、不透明な乳白色である不透明混合物を得た。
―コロイド粒子形成工程―
2000mlの水(温度:30℃)をミキサーに入れ、高速攪拌(800rpm)を開始した。ここに、上記工程で得られた不透明混合物200mlを10分間かけてステンレスビーカーから滴下した。
得られたコロイド水溶液について、実施例1と同様の各種測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
<成分(B)としての成分(B1)の調製>
化合物(b1−4)として、三洋化成社製、「ナロアクティー(登録商標)CL−40」を準備した。化合物(b1−4)について、実施例1と同様の各種測定を行った。結果を表1に示す。そして、準備した化合物(b1−4)100部と、化合物(b2)としてのアクリル系ポリマー(綜研科学株式会社製、アクトフロー(登録商標)UMM1001(重量平均分子量:1000)30部(室温、1atmで液状)とを、高速攪拌機で攪拌(800rpm)し、成分(B1)としての組成物を得た。かかる組成物について、実施例1と同様にして水分含有量を測定した。結果を表1に示す。
<コロイド水溶液の製造>
<<加熱混合工程>>
物質(A)としてのSPB−10050部と、上記で得られた成分(B1)130部とを、容量500mlのステンレスビーカーに分取し、100℃に設定したヒーターで加熱した。100℃で5分間放置したところ、物質(A)が成分(B1)に対して溶解したので、高速ラボミキサーで10分間攪拌した(800rpm)。攪拌終了後、再度ビーカーをヒーターで加熱したところ、1分ほどで全体がステンレスビーカーの底部がかろうじて見える程度の半透明な加熱混合物が得られた。
<<冷却工程>>
ヒーターによるビーカーの加熱を停止し、室温に放置し冷却した。加熱混合物の温度が70℃となるまで静置し、冷却混合物を得た。
<<加水工程>>
―不透明混合物形成工程―
上記冷却工程で70℃まで冷却した冷却混合物を、ラボミキサーで高速攪拌(800rpm)し、ここに、20mlの水(温度:30℃)を1分間かけて滴下した。滴下後も45分間攪拌を続けながら、室温まで冷却して、不透明な乳白色である不透明混合物を得た。
―コロイド粒子形成工程―
2000mlの水(温度:30℃)をミキサーに入れ、高速攪拌(400rpm)を開始した。ここに、上記工程で得られた不透明混合物200mlを10分間かけてステンレスビーカーから滴下した。
得られたコロイド水溶液について、実施例1と同様の各種測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
<成分(B)としての成分(B2)の調製>
実施例3と同じ成分(B1)130部を、容量500mlのステンレスビーカーに仕込み、ここに、PET系ポリマー10部を添加して、100℃に加熱した。ステンレスビーカーの内容物をラボミキサーで高速攪拌(800rpm)し、内容物全体を均一乳白色液状とした。
<<加熱混合工程>>
上記工程で得られた加温された成分(B2)に対して、SPB−100を30部添加し、ラボミキサーで10分間高速攪拌(800rpm)した。攪拌終了後、再度ビーカーをヒーターで加熱したところ、5分ほどで内容物全体が半透明となり、半透明な、加熱混合物が得られた。
<<冷却工程>>
ヒーターによるビーカーの加熱を停止し、室温に放置し冷却した。加熱混合物の温度が80℃となるまで静置し、冷却混合物を得た。
<<加水工程>>
―不透明混合物形成工程―
上記冷却工程で80℃まで冷却した冷却混合物を、ラボミキサーで高速攪拌(800rpm)し、ここに、40mlの水(温度:30℃)を1分間かけて滴下した。滴下後も30分間攪拌を続けながら、室温まで冷却して、不透明な乳白色である不透明混合物を得た。
―コロイド粒子形成工程―
3000mlの水(温度:30℃)をミキサーに入れ、高速攪拌(400rpm)を開始した。ここに、上記工程で得られた不透明混合物210mlを10分間かけてステンレスビーカーから滴下した。
得られたコロイド水溶液について、実施例1と同様の各種測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
<化合物(b1−2)の調製>
ビスフェノールAに代えて、1‐ドデカノール186部(1モル)を使用した以外は、実施例1にて化合物(b1−1)を調製した際と同様の操作を行い、化合物(b1−2)であるドデカノールエチレンオキサイド付加物を得た。化合物(b1−2)について、実施例1と同様の各種測定を行った。結果を表1に示す。なお、上記方法に従う成分(B)についてのSP値の測定にあたり、化合物(b1−2)のドデカノール由来の構造単位を対象とした。
<コロイド水溶液の製造>
<<加熱混合工程>>
物質(A)としてのSPB−100を50部と、成分(B)としての、上記で得られた化合物(b1−2)100部とを、容量500mlのステンレスビーカーに分取し、100℃に設定したヒーターで加熱した。100℃で5分間放置したところ、物質(A)が成分(B)に対して溶解したので、高速ラボミキサーで10分間攪拌した(800rpm)。攪拌終了後、再度ビーカーをヒーターで加熱したところ、1分ほどで全体がステンレスビーカーの底部がかろうじて見える程度の半透明な加熱混合物が得られた。
<<冷却工程>>
ヒーターによるビーカーの加熱を停止し、室温に放置し冷却した。加熱混合物の温度が70℃となるまで静置し、冷却混合物を得た。
<<加水工程>>
―不透明混合物形成工程―
上記冷却工程で70℃まで冷却した冷却混合物を、ラボミキサーで高速攪拌(800rpm)し、ここに、100mlの水(温度:30℃)を10分間かけて滴下した。滴下後も5分間攪拌を続けながら、室温まで冷却して、不透明な乳白色である不透明混合物を得た。
―コロイド粒子形成工程―
2000mlの水(温度:30℃)をミキサーに入れ、高速攪拌(400rpm)を開始した。ここに、上記工程で得られた不透明混合物250mlを10分間かけてステンレスビーカーから滴下した。
得られたコロイド水溶液について、実施例1と同様の各種測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
本例では、実施例1で得られたコロイド水溶液を用いて、基材としての皮革(牛革)を難燃化処理した。具体的な操作は以下の通りであった。
牛革400gを切り出し、ドラム槽に入れた。同じドラム槽に対して、実施例1で得られたコロイド水溶液2000mlと、水道水7000mlとを更に添加し、ドラム槽を、20回転/分で3時間にわたり回転させた。3時間経過したところで、ドラム槽に対して濃度20%のギ酸水溶液100mlを投入し、更に30分間上記と同じ条件でドラム槽を回転させた。そして、ドラム槽より牛革を取り出し、ドラム槽を洗浄した。再度、水道水10000mlをドラム槽に入れて、牛革を投入してドラム槽を上記と同じ条件で30分間回転させる、洗浄操作を実施した。かかる洗浄操作を2度繰り返し、得られた難燃化処理済牛革を2日間陰干しし、乾燥牛革を得た。乾燥牛革にライターで火をつけたところ、着火後すぐに炭化した。このようにして、得られた乾燥牛革が上記難燃化処理を経て自己消火性を獲得したことを確認した。
(実施例7)
本例では、実施例4で得られたコロイド水溶液を用いて、基材としてのポリエステル織布を難燃化処理した。具体的な操作は以下の通りであった。
基材としてポリエステル織布を用い、ギ酸水溶液の添加を行わず、洗浄操作の回数を1回とした以外は、実施例6と同様にして、難燃化処理済ポリエステル織布を得た。そして、得られた難燃化処理済ポリエステル織布を、1日間日向干して、乾燥ポリエステル織布を得た。乾燥ポリエステル織布にライターで火をつけたところ、着火後すぐに炭化した。このようにして、得られた乾燥ポリエステル織布が上記難燃化処理を経て自己消火性を獲得したことを確認した。
(実施例8)
本例では、本発明に従うコロイド水溶液を用いて、インクジェット法に従って基材としてのポリエステル織布を難燃化処理した。具体的な操作は以下の通りであった。
<コロイド水溶液の調製>
<<加熱混合工程>>
物質(A)としてのSPB−100を50部と、成分(B)としての、実施例2と同様にして得た化合物(b1−3)100部とを、容量500mlのステンレスビーカーに分取し、100℃に設定したヒーターで加熱した。100℃で5分間放置したところ、物質(A)が成分(B)に対して溶解したので、ラボミキサーで10分間攪拌した(800rpm)。攪拌終了後、再度ビーカーをヒーターで加熱したところ、1分ほどで内容物全体が透明となり、透明な加熱混合物が得られた。
<<冷却工程>>
ヒーターによるビーカーの加熱を停止し、室温に放置し冷却した。加熱混合物の温度が70℃となるまで静置し、冷却混合物を得た。
<<加水工程>>
―不透明混合物形成工程―
上記工程で得られた混合物を、ラボミキサーで高速攪拌(400rpm)し、ここに、140mlの水(温度:30℃)を10分間かけて滴下し不透明な乳白色である不透明混合物を得た。
―コロイド粒子形成工程―
水分量が60%であるアクリル系ポリマー含有水溶液(アクリル系ポリマー:アイカ工業社製、ウルトラゾール(登録商標)捺染用)2000mlをステンレスビーカーに分取し、高速攪拌(400rpm)を開始した。ここに、上記工程で得られた不透明混合物290mlを、1時間かけて滴下した。
得られたコロイド水溶液について、実施例1と同様の各種測定を行った。結果を表1に示す。
<難燃化工程>
上記に従って得られたコロイド水溶液を、インクジェットプリンタ(コニカミノルタ製ナッセンジャーV)のインクボトルに入れ、ポリエステル織布の表面(片面)に対してコロイド水溶液をプリントして、コーティングを施した。コーティング済ポリエステル織布は、インクジェットプリンタの排出口にてドライヤーにより乾燥した。
得られた難燃化処理済ポリエステル織布にライターで火をつけたところ、着火後すぐに溶融した。このようにして、得られた乾燥ポリエステル織布が上記難燃化処理を経て自己消火性を獲得したことを確認した。
Figure 2020011216
本発明によれば、油性成分を実質的に含有しない、水に不溶性の物質が分散されてなる、コロイド水溶液を提供することができる。
さらに、本発明によれば、油性成分を実質的に含有しない、水に不溶性の物質が分散されてなるコロイド水溶液を良好に製造することができる、コロイド水溶液の製造方法を提供することができる。
さらにまた、本発明によれば、水に不溶性の物質としての難燃剤が分散されてなる上記コロイド水溶液を用いた、基材難燃化加工方法を提供することができる。

Claims (8)

  1. 融点が250℃以下である水に不溶性の物質(A)及び水分散性の成分(B)からなるコロイド粒子が、水溶媒中に分散してなる、コロイド水溶液であって、
    前記コロイド水溶液中における前記コロイド粒子の含有割合が、0.01質量%以上30質量%以下であり、且つ、
    前記コロイド水溶液の水溶媒中における油性成分の含有割合が、前記コロイド粒子の総質量を100質量%として、1質量%以下である、
    コロイド水溶液。
  2. 前記成分(B)が親水性部分及び疎水性部分を含む、少なくとも一種の化合物(b1)を含む、請求項1に記載のコロイド水溶液。
  3. 前記コロイド粒子の体積平均粒子径D90が、10μm以下である、請求項1又は2に記載のコロイド水溶液。
  4. 前記物質(A)が難燃剤である、請求項1〜3の何れかに記載のコロイド水溶液。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載のコロイド水溶液を得るための、コロイド水溶液の製造方法であって、
    前記物質(A)及び前記成分(B)を、40℃以上280℃未満の加熱温度T1℃で加熱混合して、加熱混合物を得る、加熱混合工程と、
    前記加熱混合物の温度を、90℃以下、且つ、前記加熱温度T1℃未満である、冷却温度T2℃以下として冷却混合物を得る、冷却工程と、
    前記冷却混合物と水とを撹拌混合して前記物質(A)及び前記成分(B)よりなるコロイド粒子を形成し、該コロイド粒子が水中に分散してなるコロイド水溶液を得る、加水工程と、
    を含む、コロイド水溶液の製造方法。
  6. 前記加水工程は、
    前記冷却混合物に対して水を添加しつつ撹拌して水含有割合が0.01質量%以上50質量%以下の不透明混合物(C)を得る、不透明混合物形成工程と、
    前記不透明混合物(C)の量の3倍以上の量の水を準備し撹拌しつつ、該水に対して、前記不透明混合物を徐々に添加してコロイド水溶液を得る、コロイド粒子形成工程と、
    を含む、請求項5に記載のコロイド水溶液の製造方法。
  7. 前記不透明混合物(C)粘度が、1mPa・s以上107Pa・s以下である、請求項6に記載のコロイド水溶液の製造方法。
  8. 請求項4に記載のコロイド水溶液を用いて、基材を難燃化処理する工程を含む、
    基材難燃化加工方法。
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