JP2020008183A - アンモニアの燃焼方法及び水素製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
水素は、クリーンな二次エネルギーの第一候補とされる。しかし、水素自体の液化が困難であるため、水素を生成し得る貯蔵・輸送し易い液体キャリアが望まれる。
その中で、アンモニア(NH3)は、水素密度が高い上、液化が容易であること(液化条件:1MPa未満、室温)から、前記の液体キャリアとして有望視されている。
以下に、NH3燃焼(発熱反応)に関する反応式を示す。
また、アンモニア燃焼用触媒として、特許文献2には、触媒A成分としてマンガン−セリウム酸化物及び触媒B成分として周期表8〜11族に属する非貴金属元素の中から選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を含有するアンモニア選択酸化分解用触媒、及びこれを用いたアンモニア含有物のアンモニアの選択酸化分解方法が提案されている。
さらに、特許文献3には、Ru等の触媒金属と、前記触媒金属を担持しているゼオライト担体とを有するアンモニア酸化分解触媒及びこれを用いた水素製造方法が提案されている。
本発明のアンモニアの燃焼方法は、600〜900℃の温度範囲で用いることが好ましい。
本発明のアンモニアの燃焼方法は、触媒の存在下でアンモニアと酸素とを反応させる方法である。
本発明における触媒は、触媒組成物が担体に担持された担持体からなる担持触媒である。
本発明における触媒組成物は、銅の酸化物、銅、白金、イリジウム及びロジウムからなる群から選ばれる1種以上を含有する。
触媒組成物中、銅の酸化物、銅、白金、イリジウム及びロジウムからなる群から選ばれる1種以上の含有割合は、触媒組成物の総質量(100質量%)に対して50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。
銅、白金、イリジウム及びロジウム以外の金属としては、例えば貴金属(銀、金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム)等が挙げられ、中でも、銀が好ましい。
触媒組成物に含まれる銅、白金、イリジウム及びロジウム以外の金属は、1種単独でもよいし2種以上でもよい。
触媒組成物が銅、白金、イリジウム及びロジウム以外の金属を含有する場合、触媒組成物中、銅、白金、イリジウム及びロジウム以外の金属の含有割合は、触媒組成物の総質量(100質量%)に対して70質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5〜70質量%である。
本発明における担体は、αAl2O3・βSiO2(α及びβはそれぞれ正の数である)、γAl2O3・δB2O3(γ及びδはそれぞれ正の数である)及びAl2O3からなる群から選ばれる1種以上を含有する。
前記の担体αAl2O3・βSiO2において、α及びβは、それぞれモル数を示す。αAl2O3・βSiO2を含有する担体を採用することで、触媒活性及びN2選択性が共に高められる。
α/βで表されるモル比は、0.01〜100が好ましく、0.1〜10がより好ましく、0.5〜5がさらに好ましく、1〜3が特に好ましく、1.5が最も好ましい。
α/βが前記の好ましい範囲内であると、触媒活性が高められやすくなり、触媒としての耐熱性もより向上する。
βは、正の数であり、例えば0.01〜10の範囲である。この中でも、好ましくは0.1〜5であり、より好ましくは0.5〜5であり、さらに好ましくは1〜3であり、特に好ましくは1又は2であり、最も好ましくは2である。
中でも、αとβとの組合せとしては、αが1〜5であり、βが1〜3である組合せが好ましい。
担体に含まれるαAl2O3・βSiO2は、1種単独でもよいし2種以上でもよい。その中でも、3Al2O3・2SiO2を含有する担体がより好ましく、3Al2O3・2SiO2のみからなる担体が特に好ましい。
αは、正の数であり、2〜20が好ましく、より好ましくは2〜10、特に好ましくは10である。
βは、正の数であり、1〜5が好ましく、より好ましくは1又は2、特に好ましくは2である。
担体に含まれるγAl2O3・δB2O3は、1種単独でもよいし2種以上でもよい。その中でも、10Al2O3・2B2O3を含有する担体がより好ましく、10Al2O3・2B2O3のみからなる担体が特に好ましい。
Al2O3を含有する担体を採用することで、低温活性及びN2選択性が共に高められる。
担体に含まれる前記任意成分は、1種単独でもよいし2種以上でもよい。
担体が前記任意成分を含有する場合、担体中、前記任意成分の含有割合は、担体の総質量(100質量%)に対して50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
(1)銅の酸化物又は銅と、3Al2O3・2SiO2、10Al2O3・2B2O3又はAl2O3とからなる担持触媒;具体例としてCu/3Al2O3・2SiO2、Cu/Al2O3、Cu/10Al2O3・2B2O3が挙げられる。
(2)白金、イリジウム又はロジウムと、Al2O3とからなる担持触媒;具体例としてPt/Al2O3、Ir/Al2O3、Rh/Al2O3が挙げられる。
担持触媒に占める触媒組成物の割合が、前記の好ましい下限値以上であると、NOxの生成の抑制、及びN2選択性の向上の各効果が充分に得られやすくなる。一方、前記の好ましい上限値を超えても、前記の各効果は頭打ちの傾向にある。
前記担持触媒について、その比表面積は、例えば1〜150m2・g−1であり、好ましくは2〜100m2・g−1であり、より好ましくは5〜80m2・g−1であり、特に好ましくは10〜50m2・g−1である。
担持触媒の比表面積は、N2吸着(BET)法により測定される。
上述した本発明で用いられる担持触媒は、担体に触媒組成物を担持させる従来公知の製造方法によって製造できる。かかる担持触媒の製造方法としては、例えば、湿式含浸法、イオン交換法、逆共沈法、ゾル−ゲル法、化学気相成長法などが挙げられ、これらの中でも、低温活性及びN2選択性がより良好なことから、湿式含浸法が好ましい。
ここでの粒子径は、走査型透過電子顕微鏡により測定される値を意味する。
本発明におけるアンモニアと酸素との反応は、上述した触媒(担持触媒)の存在下で、かつ、アンモニアと酸素との実際の混合気の空燃比/アンモニアと酸素との理論空燃比、で表される酸素過剰率λ<1.0の条件下で行う。
かかるアンモニアと酸素との反応(アンモニアの燃焼)は、例えば、上述した担持触媒が充填された反応器に、アンモニアと酸素とを含む供給ガス(酸素過剰率λ<1.0)を、前記担持触媒に接触するように通流することにより行われる。
供給ガスは、アンモニア及び酸素以外のガスを含んでいてもよく、例えば窒素、アルゴン等の希ガス、又は、二酸化炭素などのアンモニア燃焼に対して不活性なガスを含んでいてもよい。
酸素過剰率λは、アンモニアを燃焼するのに必要な酸素量に対する、供給されるガス中の酸素量の比率(倍率)であり、アンモニアと酸素との実際の混合気の空熱比/アンモニアと酸素との理論空燃比、で表される。完全燃焼後に酸素が余る条件では酸素過剰率が1.0以上となり、酸素が不足して不完全燃焼となる条件では酸素過剰率が1.0未満となる。
NH3+0.75O2→0.5N2+1.5H2O
ΔH°=−317kJ/mol
酸素過剰率λ=0.75の場合、供給されるガス組成は、1.0%NH3、0.56%O2、ヘリウム(He)バランスである。ΔH°=−225kJ/mol
NH3+0.45O2→0.5N2+0.6H2+0.9H2O
ΔH°=−172kJ/mol
酸素過剰率λを、前記の範囲内の条件としてアンモニアの燃焼を行うことにより、特に高温域でのNO生成を抑制することができる。
本発明のアンモニア燃焼方法は、特に高温域でのNO生成の抑制効果に優れることから、600℃〜900℃の温度範囲内で用いる燃焼方法として有用である。
本発明の水素製造方法は、アンモニアから水素を製造する方法である。
かかる水素製造方法は、上述した本発明のアンモニアの燃焼方法を用いて、触媒の存在下でアンモニアと酸素とを反応させるアンモニアの燃焼工程、及び、前記のアンモニアと酸素との反応により発生する熱を利用して、アンモニアを水素と窒素とに分解するアンモニア分解工程を有する。
以下、図面を参照しながら各実施形態について説明する。
図2は、水素製造装置の一実施形態、いわゆる外燃型装置を示している。
図2に示す水素製造装置100は、円筒状の反応器本体110と、反応器本体110内に配置され、円筒状の反応器からなるアンモニア燃焼部120と、アンモニアが通流する流路140と、から概略構成される。
反応器本体110とアンモニア燃焼部120との間には、反応器本体110内周面に沿って設けられた支持部130が介在し、アンモニア燃焼部120を反応器本体110内に固定している。図2において、アンモニア燃焼部120の内部には、ハニカム構造化した担持触媒125が設置されている。担持触媒125には、上述した本発明のアンモニアの燃焼方法において用いられる特定の担持触媒が適用されている。
流路140は、反応器本体110外周に沿って設けられている。
アンモニア燃焼工程(1)の操作は、上述した本発明のアンモニアの燃焼方法を用いて行えばよい。
例えば、水素製造装置100においては、反応器本体110内に、一方の開口部112から他方の開口部114に向かって、酸素過剰率λ<1.0となるように調整したアンモニアと空気とを供給する。これにより、アンモニア燃焼部120内を、アンモニアと空気とを含む供給ガスが担持触媒125に接触しながら通流する。この際、アンモニアと空気中の酸素とが反応(燃焼)して、窒素と水とが生成し、この生成した窒素及び水と未反応の酸素とが他方の開口部114から流出する。このアンモニアと酸素との反応、すなわちアンモニア燃焼は発熱反応であり、熱の発生を伴い、反応器本体110の開口部114側の温度が例えば900℃程度まで上昇する。
アンモニア分解工程(1)の操作は、アンモニア燃焼工程(1)の操作によって流路140内の温度が上昇したところで、流路140内に、反応器本体110内の供給ガスとは逆方向、すなわち反応器本体110の開口部114側から開口部112側に向かって、アンモニアを供給する。これにより、流路140内を通流するアンモニアは、前記のアンモニア燃焼により発生する熱によって加熱され、水素と窒素とに分解し、アンモニアから水素が製造される。ここでは、アンモニア燃焼により発生する熱を利用し、無触媒条件でもアンモニアが分解することから、外部からの熱供給を低減して水素製造が可能である(オートサーマル状態)。
図3は、水素製造装置の他の実施形態、いわゆる内燃型装置を示している。
図3に示す水素製造装置200は、アンモニアが通流する略円筒状の流路240と、流路240内に配置された円筒状の反応器本体210と、反応器本体210内に配置され、円筒状の反応器からなるアンモニア燃焼部220と、から概略構成される。
流路240は、一方の開口部242(円形状)に向かって狭くされている。
反応器本体210とアンモニア燃焼部220との間には、反応器本体210内周面に沿って設けられた支持部230が介在し、アンモニア燃焼部220を反応器本体210内に固定している。図3において、アンモニア燃焼部220の内部には、ハニカム構造化した担持触媒225が設置されている。担持触媒225には、上述した本発明のアンモニアの燃焼方法において用いられる特定の担持触媒が適用されている。
アンモニア燃焼工程(2)の操作は、上述したアンモニア燃焼工程(1)の操作と同様にして行えばよい。
例えば、水素製造装置200においては、反応器本体210内に、アンモニア供給口212からアンモニアと、空気供給口214から空気とが供給される。この際、酸素過剰率λ<1.0となるように調整する。これにより、アンモニア燃焼部220内を、アンモニアと空気とを含む供給ガスが担持触媒225に接触しながら通流する。この際、アンモニアと空気中の酸素とが反応(燃焼)して、窒素と水とが生成し、この生成した窒素及び水とが流路240の開口部242側へ流出する。このアンモニア燃焼は発熱反応であり、熱の発生を伴い、流路240の開口部242側の温度が例えば900℃程度まで上昇する。
アンモニア分解工程(2)の操作は、例えば以下のようにして行われる。
アンモニア燃焼工程(2)の操作によって流路240の開口部242側の温度が上昇したところで、流路240内に、反応器本体210内の供給ガスと同じ方向、すなわち反応器本体210のアンモニア供給口212側から、流路240の開口部242側に向かって、予め加熱されたアンモニアが供給される。これにより、流路240内を通流して開口部242側に達したアンモニアは、前記のアンモニア燃焼により発生する熱によってさらに加熱され、水素と窒素とに分解し、アンモニアから水素が製造される。
そして、アンモニア燃焼工程(2)で生成した窒素及び水と、アンモニア分解工程(2)で生成した水素及び窒素と、が流路240の開口部242から流出する。
かかる水素製造方法においては、本発明のアンモニアの燃焼方法における、特定の担持触媒の存在下、かつ、酸素過剰率λ<1.0の条件下でアンモニアを燃焼することにより、例えばフューエルNOxの生成量が数ppmで、かつ、900℃程度の発熱が得られ、その熱の利用によりアンモニアを分解して水素を製造することが可能である。加えて、特に、NH3燃焼反応の完結後の高温域(約600℃以上)でのNOの生成が抑えられる。
前記のアンモニア分解を無触媒条件とすれば、かかる水素製造方法は、気相分解反応によるものであることから、三次元の反応空間で、短時間に、大量の水素を容易に製造することができる。
例えば、上述した第1の実施形態では、アンモニア燃焼部120が反応器本体110内に配置されていたが、これに限定されず、流路140内にアンモニア燃焼部120を配置し、アンモニアと空気とを含む供給ガスを流路140に通流してアンモニアを燃焼させ、アンモニアを反応器本体110内に供給してアンモニアを分解させるような実施形態でもよい。
また、上述した第2の実施形態では、アンモニア燃焼部220が反応器本体210内に配置されていたが、これに限定されず、流路240内にアンモニア燃焼部220を配置し、アンモニアと空気とを含む供給ガスを流路240に通流してアンモニアを燃焼させ、アンモニアを反応器本体210内に供給してアンモニアを分解させるような実施形態でもよい。
アンモニア転化率は、株式会社堀場製作所製の赤外線ガス分析計EIA−51dを用いて、非分散型赤外線吸収法により測定した。
上記のアンモニア転化率が10%に達した時の反応器内の温度(℃)を測定した。
上記のアンモニア転化率が90%に達した時の反応器内の温度(℃)を測定した。
N2選択率(%)は、株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフィーGC−8Aを用いて測定した。
N2O選択率(%)は、株式会社堀場製作所製の前記VA−3011を用いて、非分散型赤外線吸収法により測定した。
NO選択率(%)は、株式会社堀場製作所製の赤外線ガス分析計VA−3011を用いて、非分散型赤外線吸収法により測定した。
担体として3Al2O3・2SiO2を、アルコキシド法によって合成した。
シリコンアルコキシドSi(OC2H5)4をエタノールに溶解し、この溶液と水と塩酸とを混合しつつ、70℃で50時間の反応を行い、反応液(a)を得た。
別途、アルミニウムのリン酸塩と、イソブタノールとを混合し、95℃で24時間の還流を行い、反応液(b)を得た。
次いで、反応液(a)と反応液(b)とを混合して、担体の前駆体含有液を得た。
次いで、前駆体含有液に水を加えて沈澱させ、この沈澱物を分離して乾燥(大気中、600℃、3時間)した。この後、さらに、各温度(1000℃、1200℃、1400℃)に調整した空気中で5時間の乾燥を行い、Mullite(ムライト)型結晶構造体である3Al2O3・2SiO2を得た。
触媒組成物としてCu(Cuの酸化物)、Pt、Ir、Rh、Ni、Ru、Pd、Ag及びAuと、前記の担体とを用いて、湿式含浸法により、以下のようにして担持触媒1〜14をそれぞれ製造した。
担体として3Al2O3・2SiO2に、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が5.0質量%となるようにCu(NO3)2(和光純薬社製)を含浸させて、含浸体を得た。その後、得られた含浸体を、600℃に調整した空気中で3時間焼成し、さらに、900℃に調整した空気中で100時間焼成して担持触媒1を得た。
担体を3Al2O3・2SiO2からAl2O3に変更したこと以外は、担持触媒1の製造方法と同様にして担持触媒2を得た。
担体としてAl2O3に、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が1.0質量%となるように[Pt(NH3)2(NO3)2](田中貴金属社製)を含浸させて、含浸体を得た。その後、得られた含浸体を、600℃に調整した空気中で3時間焼成し、さらに、900℃に調整した空気中で100時間焼成して担持触媒3を得た。
[Pt(NH3)2(NO3)2](田中貴金属社製)をIrCl4(和光純薬社製)に変更し、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が1.0質量%となるように含浸させたこと以外は、担持触媒3の製造方法と同様にして担持触媒4を得た。
[Pt(NH3)2(NO3)2](田中貴金属社製)をRh(NO3)3(田中貴金属社製)に変更し、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が1.0質量%となるように含浸させたこと以外は担持触媒3の製造方法と同様にして担持触媒5を得た。
担体を3Al2O3・2SiO2から10Al2O3・2B2O3に変更したこと以外は、担持触媒1の製造方法と同様にして担持触媒6を得た。
担体としてAl2O3に、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が5.0質量%となるようにCu(NO3)2(和光純薬社製)と、担持量が10質量%となるようにAgNO3(和光純薬社製)とを含侵させて、含浸体を得た。その後、得られた含浸体を、600℃に調整した空気中で3時間焼成し、さらに、800℃に調整した空気中で100時間焼成して担持触媒7を得た。
担体としてAl2O3に、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が5.0質量%となるようにCu(NO3)2(和光純薬社製)と、担持量が1.0質量%となるように[Pt(NH3)2(NO3)2](田中貴金属社製)とを含侵させて、含浸体を得た。その後、得られた含浸体を、600℃に調整した空気中で3時間焼成し、さらに、1000℃に調整した空気中で5時間焼成して担持触媒8を得た。
担体を3Al2O3・2SiO2からSiO2に変更したこと以外は、担持触媒1の製造方法と同様にして担持触媒9を得た。
担体としてAl2O3に、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が5.0質量%となるようにNi(NO3)2・6H2O(和光純薬社製)を含浸させて、含浸体を得た。その後、得られた含浸体を、600℃に調整した空気中で3時間焼成し、さらに、900℃に調整した空気中で100時間焼成して担持触媒10を得た。
Ni(NO3)2・6H2O(和光純薬社製)をRu(NO3)3(田中貴金属社製)に変更し、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が1.0質量%となるように含浸させたこと以外は、担持触媒10の製造方法と同様にして担持触媒12を得た。
Ni(NO3)2・6H2O(和光純薬社製)をPd(NO3)2(和光純薬社製)に変更し、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が1.0質量%となるように含浸させたこと以外は、担持触媒10の製造方法と同様にして担持触媒12を得た。
Ni(NO3)2・6H2O(和光純薬社製)をAgNO3(和光純薬社製)に変更し、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が10質量%となるように含浸させたこと以外は、担持触媒10の製造方法と同様にして担持触媒13を得た。
Ni(NO3)2・6H2O(和光純薬社製)をK[Au(CN)2](キシダ化学社製)に変更し、担持触媒の総質量(100質量%)に対して触媒組成物の担持量が1.0質量%となるように含浸させたこと以外は、担持触媒10の製造方法と同様にして担持触媒14を得た。
担持触媒2:Cu/Al2O3
担持触媒3:Pt/Al2O3
担持触媒4:Ir/Al2O3
担持触媒5:Rh/Al2O3
担持触媒6:Cu/10Al2O3・2B2O3(10A2B)
担持触媒7:Cu/Ag/Al2O3
担持触媒8:Cu/Pt/Al2O3
担持触媒9:Cu/SiO2
担持触媒10:Ni/Al2O3
担持触媒11:Ru/Al2O3
担持触媒12:Pd/Al2O3
担持触媒13:Ag/Al2O3
担持触媒14:Au/Al2O3
(試験例1〜14)
反応器を備えた流通型反応装置を用い、各例の担持触媒がそれぞれ充填された反応器内に、アンモニア1.0%と酸素0.45%とヘリウム残部とを含む供給ガス(酸素過剰率λ=0.60)、アンモニア1.0%と酸素0.56%とヘリウム残部とを含む供給ガス(酸素過剰率λ=0.75)、アンモニア1.0%と酸素0.68%とヘリウム残部とを含む供給ガス(酸素過剰率λ=0.90)、アンモニア1.0%と酸素1.5%とヘリウム残部とを含む供給ガス(酸素過剰率λ=2.0)を、それぞれ担持触媒に接触するように通流して、各試験例に示すアンモニアの燃焼を行った。担持触媒の使用量を50mgとした。
アンモニアの燃焼、すなわち、アンモニアと酸素との反応は、反応器内の温度を、室温(25℃)から900℃まで、10℃/minで昇温させながら行った。尚、担持触媒11を用いた試験例11においては、反応器内の温度を、室温(25℃)から600℃まで、10℃/minで昇温させながら行った。いずれの試験例においても、反応器内を通流する供給ガスの流速を100mL・min−1とした。
図4〜17は、それぞれ、担持触媒1〜14を用いた際の各挙動を示している。
「Before reaction」は、製造後(反応前)のものについての組成を示している。「After reaction」は、酸素過剰率λ=0.60の条件下でのアンモニアと酸素との反応後のものについての組成を示している。
図18〜19は、製造後(反応前)及び酸素過剰率λ=0.60の条件下でのアンモニアと酸素との反応後の担持触媒1〜5、9〜14についてのX線回折パターンをそれぞれ示す図である。
例えば、担持触媒2:Cu/Al2O3について、製造後(反応前)のものは、CuAl2O4を含有する触媒組成物が担体(α,γ−Al2O3)に担持された担持体からなる。酸素過剰率λ=0.60の条件下でのアンモニアと酸素との反応後のものは、金属Cu単体を含有する触媒組成物が担体(α,γ−Al2O3)に担持された担持体からなる。すなわち、反応により、触媒組成物の組成が変化している。
例えば、担持触媒5:Rh/Al2O3について、製造後(反応前)のものは、金属Rh単体とRh2O3とを含有する触媒組成物が担体(γ,θ−Al2O3)に担持された担持体からなる。酸素過剰率λ=0.60の条件下でのアンモニアと酸素との反応後のものは、反応前と同様である。
例えば、担持触媒12:Pd/Al2O3について、製造後(反応前)のものは、金属Pd単体とPdOとを含有する触媒組成物が担体(γ,θ−Al2O3)に担持された担持体からなる。酸素過剰率λ=0.60の条件下でのアンモニアと酸素との反応後のものは、金属Pd単体を含有する触媒組成物が担体(γ,θ−Al2O3)に担持された担持体からなる。すなわち、反応により、触媒組成物の組成が変化している。
試験例10及び12〜14は、酸素過剰率λ<1.0の条件下でアンモニアを燃焼させる際、アンモニア燃焼において要求される特性(燃焼活性、NOx生成の抑制、N2選択性)の点で劣っていた。
試験例2、3、5〜8のアンモニアの燃焼試験は、特に酸素過剰率λ=0.75の条件下で用いることが、高温域でのNO生成の抑制効果及び要求特性(燃焼活性、NOx生成の抑制、N2選択性)の点から好適である。
試験例4のアンモニアの燃焼試験は、特に酸素過剰率λ=0.60の条件下で用いることが、高温域でのNO生成の抑制効果及び要求特性(燃焼活性、NOx生成の抑制、N2選択性)の点から好適である。
(試験例15)
上記<アンモニアの燃焼試験(1)>において、反応器内に、アンモニア1.0%と酸素0.68%とヘリウム残部とを含む供給ガス(酸素過剰率λ=0.90)を、担持触媒1:Cu/3Al2O3・2SiO2(3A2S)に接触するように通流した以外は、同様にしてアンモニアの燃焼を行った。かかるアンモニアの燃焼試験を、5回繰り返して行った。
上記<アンモニアの燃焼試験(1)>において、反応器内に、アンモニア1.0%と酸素0.56%とヘリウム残部とを含む供給ガス(酸素過剰率λ=0.75)を、担持触媒2:Cu/Al2O3に接触するように通流した以外は、同様にしてアンモニアの燃焼を行った。かかるアンモニアの燃焼試験を、5回繰り返して行った。
上記<アンモニアの燃焼試験(1)>において、反応器内に、アンモニア1.0%と酸素0.56%とヘリウム残部とを含む供給ガス(酸素過剰率λ=0.75)を、担持触媒3:Pt/Al2O3に接触するように通流した以外は、同様にしてアンモニアの燃焼を行った。かかるアンモニアの燃焼試験を、5回繰り返して行った。
図20は、担持触媒1を用いた際の各挙動を示している。図21は、担持触媒2を用いた際の各挙動を示している。図22は、担持触媒3を用いた際の各挙動を示している。
「Before reaction」は、製造後(反応前)のものについての組成を示している。「After reaction」は、それぞれの酸素過剰率λの条件下でのアンモニアと酸素との反応を5回繰り返して行った後のものについての組成を示している。
図23は、製造後(反応前)及びアンモニア燃焼の5回繰り返し反応後の担持触媒1〜3についてのX線回折パターンをそれぞれ示す図である。
試験例16における担持触媒2:Cu/Al2O3について、製造後(反応前)のものは、CuAl2O4を含有する触媒組成物が担体(α,γ−Al2O3)に担持された担持体からなる。酸素過剰率λ=0.75の条件下でのアンモニアと酸素との5回繰り返し反応後のものは、金属Cu単体とCu2Oとを含有する触媒組成物が担体(α−Al2O3)に担持された担持体からなる。
試験例17における担持触媒3:Pt/Al2O3について、製造後(反応前)のものは、Ptを含有する触媒組成物が担体(γ−Al2O3)に担持された担持体からなる。酸素過剰率λ=0.75の条件下でのアンモニアと酸素との5回繰り返し反応後のものは、反応前と同様である。
したがって、本発明を適用したアンモニアの燃焼方法は、耐久性に優れていること、が確認された。
また、アンモニアの輸送形態として、水に溶解させる場合も想定され、この場合におけるアンモニアの燃焼は、水蒸気を含んだ燃焼反応となる。そして、このような水蒸気を含んだ燃焼反応に対し、本発明を適用することが有用である。
本発明は、例えば燃料電池、ガソリン自動車、ディーゼル自動車、火力発電、化成品製造、排ガス処理、暖房等での利用が可能である。
燃料電池:本発明の水素製造方法を適用してアンモニアを水素へと分解し、得られた水素を燃料として利用して電力を取り出す。燃料電池自動車に搭載することで、オンサイトでアンモニア分解及び水素製造並びにその利用が可能になる。
ガソリン自動車:本発明の燃焼方法を用いてアンモニアを燃焼し、この際に発生する熱を燃焼器へ利用する。
ディーゼル自動車:ディーゼル自動車におけるNOx浄化用として用いることができる。
火力発電:本発明の燃焼方法を用いてアンモニアを燃焼し、この際に発生する熱によってタービン(主にスチームタービン)を駆動する。又は、本発明の水素製造方法を適用してアンモニアを水素へと分解し、得られた水素によってタービン(H2ガスタービン)を駆動する。
化成品製造:本発明の燃焼方法を用いてアンモニアを燃焼し、この際に発生する熱を、常温から900℃程度の範囲で製造される化成品製造(エチレン製造、石油精製、天然ガスからの水素製造、重油脱硫など)へ利用する。
排ガス処理:微少量NH3の無害化方法として用いることができる。
暖房:本発明の燃焼方法を用いてアンモニアを燃焼し、この際に発生する熱を暖房に利用する。
Claims (4)
- 触媒の存在下でアンモニアと酸素とを反応させる、アンモニアの燃焼方法であって、
前記触媒は、触媒組成物が担体に担持された担持体からなる担持触媒であり、
前記触媒組成物は、銅の酸化物、銅、白金、イリジウム及びロジウムからなる群から選ばれる1種以上を含有し、
前記担体は、αAl2O3・βSiO2(α及びβはそれぞれ正の数である)、γAl2O3・δB2O3(γ及びδはそれぞれ正の数である)及びAl2O3からなる群から選ばれる1種以上を含有し、
アンモニアと酸素との実際の混合気の空燃比/アンモニアと酸素との理論空燃比、で表される酸素過剰率λ<1.0の条件下で、アンモニアと酸素とを反応させる、アンモニアの燃焼方法。 - 前記触媒組成物は、さらに銀を含有する、請求項1に記載のアンモニアの燃焼方法。
- 600〜900℃の温度範囲で用いる、請求項1又は2に記載のアンモニアの燃焼方法。
- アンモニアから水素を製造する水素製造方法であって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアンモニアの燃焼方法を用いて、触媒の存在下でアンモニアと酸素とを反応させるアンモニア燃焼工程、及び、
前記のアンモニアと酸素との反応により発生する熱を利用して、アンモニアを水素と窒素とに分解するアンモニア分解工程、
を有する、水素製造方法。
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