JP2020007183A - 光ファイバ素線の製造装置および製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置構造が簡略であり、かつ被覆層での異常発生を抑制できる光ファイバ素線の製造装置および製造方法を提供する。【解決手段】製造装置1は、熱硬化型樹脂で構成された未硬化の被覆層が形成された光ファイバ裸線を供給する供給部100と、前記被覆層を加熱して硬化させて光ファイバ素線5を得る硬化部50Bと、硬化部50Bより線引き方向の下流側において光ファイバ素線5を保持する光ファイバ保持部60とを備える。光ファイバ保持部60は、光ファイバ素線5を案内するガイド溝を有し、前記ガイド溝内には、流体を吹出させることによって、前記ガイド溝内の光ファイバ素線5を浮揚させる吹出し口が形成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、光ファイバ素線の製造装置および製造方法に関する。
光ファイバ素線の製造装置としては、光ファイバ母材を紡糸する紡糸部と、光ファイバ裸線に被覆層を設けるコーティング部と、被覆層を硬化させる硬化部とを備えた装置がある(例えば、特許文献1を参照)。被覆層に熱硬化型樹脂を用いる場合、樹脂の硬化速度が遅いため、紡糸線速を高めるのは難しい。紡糸線速を高める手法としては、例えば、次の2つが考えられる。(i)硬化部(熱架橋装置)における加熱処理時間を長くする。(ii)硬化部における加熱温度を高くする。
(i)の場合、製造装置の高さ制限、レイアウト上の制約などから、熱架橋装置の長さ確保が難しい場合があり、加熱処理時間を長くするのは容易ではない。設備を拡張すれば熱架橋装置の長さ確保は可能だが、その場合には装置構造が複雑となり設備コストがかさむことになる。
(ii)の場合、熱架橋装置における加熱温度を高くすることにより、被覆層は高温となるため、その機械特性(破断強度など)は低くなりやすい。そのため、高温状態の被覆層が製造装置の構成要素(プーリー、引取り機、ツイスト等)などと接触すると、被覆層に変形、割れ、剥離などの異常が生じる可能性がある。被覆層の温度を下げるために熱架橋装置の下流側に被覆層の冷却のための装置を設置することも考えられるが、その場合には装置構造が複雑となって設備コストの問題が生じることがある。
本発明の一態様は、装置構造が簡略であり、かつ被覆層での異常発生を抑制できる光ファイバ素線の製造装置および製造方法を提供することを課題とする。
本発明の一態様は、熱硬化型樹脂で構成された未硬化の被覆層が形成された光ファイバ裸線を供給する供給部と、前記被覆層を加熱して硬化させることにより光ファイバ素線を得る硬化部と、前記硬化部より線引き方向の下流側において前記光ファイバ素線を保持する光ファイバ保持部と、を備え、前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバ素線を案内するガイド溝を有し、前記ガイド溝内には、流体を吹出させることによって、前記ガイド溝内の前記光ファイバ素線を浮揚させる吹出し口が形成されている、光ファイバ素線の製造装置を提供する。
前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバ素線の走行方向を変換する方向変換器であることが好ましい。
前記供給部は、光ファイバ母材を溶融紡糸して前記光ファイバ裸線を形成する紡糸部と、前記光ファイバ裸線の外周に熱硬化型樹脂で構成された前記被覆層を設けるコーティング部と、を有することが好ましい。
本発明の他の態様は、熱硬化型樹脂で構成された未硬化の被覆層が形成された光ファイバ裸線を供給する供給工程と、前記被覆層を硬化させることにより光ファイバ素線を得る硬化工程と、を有し、前記硬化工程の後に、光ファイバ保持部を用いて前記光ファイバ素線を保持し、前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバ素線を案内するガイド溝を有し、前記ガイド溝内には、流体を吹出させることによって、前記ガイド溝内の前記光ファイバ素線を浮揚させる吹出し口が形成されている、光ファイバ素線の製造方法を提供する。
前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバ素線の走行方向を変換する方向変換器であることが好ましい。
前記供給工程は、光ファイバ母材を溶融紡糸して光ファイバ裸線を形成する紡糸工程と、前記光ファイバ裸線の外周に熱硬化型樹脂で構成された前記被覆層を設けるコーティング工程と、を有することが好ましい。
本発明の一態様によれば、装置構造が簡略であり、かつ被覆層での異常発生を抑制できる光ファイバ素線の製造装置および製造方法を提供できる。
[光ファイバ素線の製造装置]
図1は、本発明に係る光ファイバ素線の製造装置の一実施形態である製造装置1の概略構成を示す模式図である。
製造装置1は、線引き方向(走行方向)の上流側から下流側に、供給部100と、第2硬化部50Bと、第3外径測定部20Cと、方向変換器60と、引取り部70と、巻取り部80とを備えている。
図1は、本発明に係る光ファイバ素線の製造装置の一実施形態である製造装置1の概略構成を示す模式図である。
製造装置1は、線引き方向(走行方向)の上流側から下流側に、供給部100と、第2硬化部50Bと、第3外径測定部20Cと、方向変換器60と、引取り部70と、巻取り部80とを備えている。
供給部100は、線引き方向(走行方向)の上流側から下流側に、紡糸部10と、第1外径測定部20Aと、第1冷却部30Aと、第1コーティング部40Aと、第2外径測定部20Bと、第1硬化部50Aと、第2冷却部30Bと、第2コーティング部40Bと、を備える。
紡糸部10は、加熱炉(図示略)を備えており、加熱炉によって光ファイバ母材2を加熱して溶融紡糸することによって光ファイバ裸線3を形成する。線引き方向は、光ファイバ裸線3が引き出される方向である。
紡糸部10は、加熱炉(図示略)を備えており、加熱炉によって光ファイバ母材2を加熱して溶融紡糸することによって光ファイバ裸線3を形成する。線引き方向は、光ファイバ裸線3が引き出される方向である。
第1外径測定部20Aは、光ファイバ裸線3の外径を測定できる。第1外径測定部20Aは、光ファイバ裸線3に接触せずに光ファイバ裸線3の外径を測定できることが好ましい。第1外径測定部20Aとしては、例えば、光源と検知器とを備えた光学式の測定装置を使用できる。この測定装置は、例えば、光ファイバ裸線3の側方位置に設置された光源(レーザ光源など)から光を照射し、前記光源と対向して設置された検知器で前方散乱光を受光し、そのパターンまたは強度を解析することにより光ファイバ裸線3の外径を測定する。
第1冷却部30Aは、例えば、筒状に形成されている。第1冷却部30Aの内部空間には、光ファイバ裸線3が挿通可能である。第1冷却部30Aの内部空間には、冷却用のガスが導入可能である。第1冷却部30Aは、冷却用のガスによって光ファイバ裸線3を冷却できる。第1冷却部30Aは、外壁と内壁とを有する二重壁構造(ジャケット構造)であってもよい。外壁と内壁との間の流路には冷媒を流通させることができる。
第1コーティング部40Aは、光ファイバ裸線3の外周に、被覆材を塗布(コーティング)して一次被覆層を形成する。第1コーティング部40Aは、ヤング率の低い一次被覆層用の材料を光ファイバ裸線3の外周に塗布して一次被覆層とする。一次被覆層用の材料は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化型樹脂である。
第2外径測定部20Bは、第1外径測定部20Aと同様の構成であり、一次被覆層を有する光ファイバ裸線3の外径を非接触で測定できる。
第1硬化部50Aは、例えば、熱架橋炉(熱架橋装置)である。第1硬化部50Aは、内部に不活性ガス(N2、Arなど)を導入するガス導入管(図示略)を備える。第1硬化部50Aは、不活性ガスの導入によって内部の酸素濃度を低く調整できる。第1硬化部50Aは、加熱により未硬化の一次被覆層を硬化させて光ファイバ素線中間体4を得る。
第2冷却部30Bは、第1冷却部30Aと同様の構成を採用できる。第2冷却部30Bは、冷却用のガスによって光ファイバ素線中間体4を強制冷却できる。
第2コーティング部40Bは、一次被覆層の外周に、一次被覆層に比べてヤング率の高い二次被覆層用の材料を塗布して二次被覆層とする。二次被覆層用の材料は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化型樹脂である。
第2コーティング部40Bは、一次被覆層の外周に、一次被覆層に比べてヤング率の高い二次被覆層用の材料を塗布して二次被覆層とする。二次被覆層用の材料は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化型樹脂である。
第2硬化部50Bは、例えば、熱架橋炉(熱架橋装置)である。第2硬化部50Bは、内部に不活性ガス(N2、Arなど)を導入するガス導入管(図示略)を備える。第1硬化部50Aは、不活性ガスの導入によって内部の酸素濃度を低く調整できる。第2硬化部50Bは、加熱により未硬化の二次被覆層を硬化させ、光ファイバ素線5を得る。
第3外径測定部20Cは、第1外径測定部20Aと同様の構成であり、光ファイバ素線5の外径を非接触で測定できる。
方向変換器60は、光ファイバ素線5を保持しつつ光ファイバ素線5の方向を変換する。例えば、方向変換器60は、第2硬化部50Bから鉛直下向き(第一の経路L1)に引き出された光ファイバ素線5を、90°の方向変換により、水平(第二の経路L2)に向ける。方向変換器60は、光ファイバ保持部の一形態である。方向変換器60は、第2硬化部50Bよりも線引き方向の下流側に設けられている。方向変換器60は、第2硬化部50Bを経た光ファイバ素線5が最初に物理的に接触する構成である引取り部70に対して、線引き方向の上流側に設けられている。
以下、方向変換器60の構造について説明する。図2は、方向変換器60の断面構造を示す模式図である。図2は、方向変換器60の中心軸方向(厚さ方向)に沿う断面を示す。図3は、方向変換器60の第1の例である方向変換器601を示す正面図である。
図3に示すように、方向変換器601は、光ファイバ素線5の向き(走行方向)を90°変換することができる。方向変換器601は、平面視において4分円形(すなわち、中心角が90°である扇形)となる板状とされている。方向変換器601は、ガイド溝61と、内部空間(流体溜部65)とを有する。ガイド溝61は、方向変換器601の外周面60aに、全周長にわたって形成されている。ガイド溝61は、光ファイバ素線5をガイドする機能を有する。なお、「C」は方向変換器601の中心軸である。図2に示す「R」は方向変換器601の径方向である。平面視において円弧形の外周面60aに沿う方向を周方向という。
ガイド溝61の底部には、ガイド溝61に沿って配線された光ファイバ素線5を浮揚させる流体(空気など)の吹出し口62がガイド溝61に沿って形成されている。吹出し口62は、ガイド溝61の全長にわたって形成されている。吹出し口62の一端62aはガイド溝61の一端61aに達している。吹出し口62の他端62bはガイド溝61の他端61bに達している。
なお、図2に示す方向変換器601では、吹出し口62はガイド溝61の底部のみに形成されているが、ガイド溝内における吹出し口の形成位置は底部のみに限定されない。吹出し口は、例えば、ガイド溝の底部だけでなく、内側面(例えば図2に示す内側面61c)にも形成されていてもよい。吹出し口は、光ファイバ素線を非接触で保持できればよく、その形成位置は限定されない。例えば、ガイド溝の内側面(例えば図2に示す内側面61c)のみに形成されていてもよい。吹出し口の数は1でもよいし、2以上の任意の数でもよい。
図2に示すように、方向変換器601は、内部空間(流体溜部65)の流体(例えば空気)を、吹出し口62を通してガイド溝61内に放出できるように構成されている。方向変換器601は、流体を外部から流体溜部65に導入し、吹出し口62を通してガイド溝61内に放出させるように構成することができる。
図3に示すように、方向変換器601には、外部から流体溜部65に流体を導入する導入路66が接続される導入部67が形成されていることが好ましい。導入部67は、流体の導入口である。導入路66は、図示しない送気装置(コンプレッサなど)からの流体を流体溜部65に導入し、吹出し口62からガイド溝61内に放出させる。
図3に示すように、方向変換器601には、外部から流体溜部65に流体を導入する導入路66が接続される導入部67が形成されていることが好ましい。導入部67は、流体の導入口である。導入路66は、図示しない送気装置(コンプレッサなど)からの流体を流体溜部65に導入し、吹出し口62からガイド溝61内に放出させる。
図2に示すように、ガイド溝61は、径方向外方に行くほど幅(内側面61c,61cの間隔)が徐々に大きくなるように、内側面61c,61cが径方向Rに対して傾斜して形成されていることが好ましい。2つの内側面61c,61cは、径方向Rに対する傾斜角度(図2に示すθ)が互いに等しいことが好ましい。
なお、ガイド溝は、光ファイバ素線を非接触で案内する機能を有していればよく、その断面形状は図2に示す形状に限定されない。例えば、ガイド溝の2つの内側面は平行であってもよい。
なお、ガイド溝は、光ファイバ素線を非接触で案内する機能を有していればよく、その断面形状は図2に示す形状に限定されない。例えば、ガイド溝の2つの内側面は平行であってもよい。
図3に示す方向変換器601では、光ファイバ素線5は4分円形のガイド溝61の一端61aから入り、周方向に沿って案内され、他端61bから出ることによって90°の方向変換がなされる。光ファイバ素線5が入線する入線部63はガイド溝61の一端61aを含む部分であり、光ファイバ素線5が出線する出線部64はガイド溝61の他端61bを含む部分である。
図4は、方向変換器60の第2の例を示す正面図である。図4に示す方向変換器602は、平面視において4分の3円形(すなわち、中心角が270°である扇形)とされている。以下、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
方向変換器602は、図3に示す方向変換器601と同じ構造の本体部69aの入線側および出線側に、それぞれ本体部69aと同じ構造の補助部69b,69cが連設された構造とされている。方向変換器602は、光ファイバ素線5が入線部63’から本体部69aのガイド溝61に入り、本体部69aで方向が90°変換された後、出線部64’を通って出線するため、基本的な機能は方向変換器601と同じである。
方向変換器601,602は、図1に示す方向変換器60として使用できる。
なお、第2硬化部50Bと方向変換器60との間には、光ファイバ素線5と物理的に接触する構成要素はない。
方向変換器602は、図3に示す方向変換器601と同じ構造の本体部69aの入線側および出線側に、それぞれ本体部69aと同じ構造の補助部69b,69cが連設された構造とされている。方向変換器602は、光ファイバ素線5が入線部63’から本体部69aのガイド溝61に入り、本体部69aで方向が90°変換された後、出線部64’を通って出線するため、基本的な機能は方向変換器601と同じである。
方向変換器601,602は、図1に示す方向変換器60として使用できる。
なお、第2硬化部50Bと方向変換器60との間には、光ファイバ素線5と物理的に接触する構成要素はない。
図1に示すように、引取り部70は、例えば引取りキャプスタンであり、ここで線引き速度が決定される。引取り部70は、第2硬化部50Bを経た光ファイバ素線5が最初に物理的に接触する構成である。
巻取り部80は、例えば、光ファイバ素線5を巻き取る巻取りボビンである。
巻取り部80は、例えば、光ファイバ素線5を巻き取る巻取りボビンである。
[光ファイバ素線の製造方法]
次に、製造装置1を用いた場合を例として、光ファイバ素線の製造方法の一実施形態を説明する。
(1)供給工程
図1に示すように、紡糸部10において、光ファイバ母材2を加熱して溶融紡糸して光ファイバ裸線3を形成する。光ファイバ裸線3は、光ファイバ母材2から鉛直下向きに引き出される(紡糸工程)。
光ファイバ裸線3は、第1冷却部30Aの内部空間に導入され、冷却用のガスによって冷却される。
第1コーティング部40Aでは、光ファイバ裸線3の外周に、熱硬化型樹脂で構成された被覆材を塗布(コーティング)して一次被覆層(未硬化)を形成する。一次被覆層(未硬化)が形成された光ファイバ裸線3は、第1外径測定部20Aで外径が測定された後、第1硬化部50Aに送られる。
第1硬化部50A(熱架橋炉)では、加熱により未硬化の一次被覆層を熱架橋により硬化させることによって光ファイバ素線中間体4を得る。
次に、製造装置1を用いた場合を例として、光ファイバ素線の製造方法の一実施形態を説明する。
(1)供給工程
図1に示すように、紡糸部10において、光ファイバ母材2を加熱して溶融紡糸して光ファイバ裸線3を形成する。光ファイバ裸線3は、光ファイバ母材2から鉛直下向きに引き出される(紡糸工程)。
光ファイバ裸線3は、第1冷却部30Aの内部空間に導入され、冷却用のガスによって冷却される。
第1コーティング部40Aでは、光ファイバ裸線3の外周に、熱硬化型樹脂で構成された被覆材を塗布(コーティング)して一次被覆層(未硬化)を形成する。一次被覆層(未硬化)が形成された光ファイバ裸線3は、第1外径測定部20Aで外径が測定された後、第1硬化部50Aに送られる。
第1硬化部50A(熱架橋炉)では、加熱により未硬化の一次被覆層を熱架橋により硬化させることによって光ファイバ素線中間体4を得る。
光ファイバ素線中間体4は、第2冷却部30Bの内部空間に導入され、冷却用のガスによって冷却される。
第2コーティング部40Bでは、光ファイバ素線中間体4の外周に、熱硬化型樹脂で構成された被覆材を塗布(コーティング)して二次被覆層(未硬化)を形成する(コーティング工程)。このように、供給部100は、二次被覆層(未硬化)が形成された光ファイバ素線中間体4(すなわち、硬化した一次被覆層と未硬化の二次被覆層とが形成された光ファイバ裸線3)を供給する。二次被覆層(未硬化)が形成された光ファイバ素線中間体4は、第2外径測定部20Bで外径が測定された後、第2硬化部50Bに送られる。
第2コーティング部40Bでは、光ファイバ素線中間体4の外周に、熱硬化型樹脂で構成された被覆材を塗布(コーティング)して二次被覆層(未硬化)を形成する(コーティング工程)。このように、供給部100は、二次被覆層(未硬化)が形成された光ファイバ素線中間体4(すなわち、硬化した一次被覆層と未硬化の二次被覆層とが形成された光ファイバ裸線3)を供給する。二次被覆層(未硬化)が形成された光ファイバ素線中間体4は、第2外径測定部20Bで外径が測定された後、第2硬化部50Bに送られる。
(2)硬化工程
第2硬化部50B(熱架橋炉)では、加熱により未硬化の二次被覆層を熱架橋により硬化させることによって光ファイバ素線5を得る。光ファイバ素線5は、第3外径測定部20Cで外径が測定された後、方向変換器60に送られる。
第2硬化部50B(熱架橋炉)では、加熱により未硬化の二次被覆層を熱架橋により硬化させることによって光ファイバ素線5を得る。光ファイバ素線5は、第3外径測定部20Cで外径が測定された後、方向変換器60に送られる。
図2に示すように、方向変換器60では、流体溜部65内の流体(例えば空気)を、吹出し口62を通してガイド溝61内に放出することによって、光ファイバ素線5を浮揚させつつ周方向に沿って案内することができる。詳細には、放出された流体により、ガイド溝61の深部61dと浅部61eとの圧力差が大きくなるため、光ファイバ素線5に径方向外方の力が作用することによって光ファイバ素線5は浮揚する。光ファイバ素線5は、ガイド溝61内において、前記流体によって加えられる外方への力と、張力による内方への力が釣り合う位置に保持される。方向変換器60は、光ファイバ素線5に接触せずに光ファイバ素線5を方向転換できるため、非接触式の方向変換器である。
流体の温度は、方向変換器60内における光ファイバ素線5の温度より低いことが好ましい。これにより、光ファイバ素線5を効率よく冷却できる。吹出し口62からの流体の導入流量は、例えば、光ファイパ素線5に加えられる張力、光ファイバ素線5の外径等に基づいて調整される。流体としては、光ファイバ素線5を冷却できる気体であれば特に限定されず、例えば、空気に限らず、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などが使用できる。窒素(N2)は低コストであるという利点がある。ヘリウムは熱伝導性が高いため冷却効率の点で有利である。
光ファイバ素線5は、引取り部70により引き取られ、巻取り部80により巻き取られる。
本実施形態の製造装置1では、方向変換器60は、光ファイバ素線5に接触せずに光ファイバ素線5を保持することができる。そのため、接触式の方向変換器(例えばプーリー)を用いる場合とは異なり、方向変換器60に導入される光ファイバ素線5が高温であったとしても、被覆層の異常(変形、割れ、剥離など)は生じにくい。すなわち、製造装置1では、被覆層が高温状態で装置の構成要素と接触することによる被覆層の異常発生を抑制できる。したがって、光ファイバ素線5の断線などのトラブルは起こりにくい。
また、製造装置1では、方向変換器60において、流体によって光ファイバ素線5を冷却できるため、被覆層の機械特性(破断強度など)の低下を抑制できる。したがって、被覆層の異常発生を抑えることができる。
また、製造装置1では、光ファイバ素線5の製造にあたり、流体の吹出しにより光ファイバ素線5を冷却することによって、被覆層の異常(変形、割れ、剥離など)を抑制できる。このため、第2硬化部50Bでの加熱温度を高くできるため、樹脂の硬化速度を高め、紡糸線速を高くすることができる。したがって、光ファイバ素線5の生産性を向上させることができる。
また、製造装置1では、方向変換器60により被覆層の冷却が可能であるため、冷却装置の新設は不要である。そのため、装置構成を簡略にし、設備コストを抑制できる。
また、製造装置1では、光ファイバ素線5の製造にあたり、流体の吹出しにより光ファイバ素線5を冷却することによって、被覆層の異常(変形、割れ、剥離など)を抑制できる。このため、第2硬化部50Bでの加熱温度を高くできるため、樹脂の硬化速度を高め、紡糸線速を高くすることができる。したがって、光ファイバ素線5の生産性を向上させることができる。
また、製造装置1では、方向変換器60により被覆層の冷却が可能であるため、冷却装置の新設は不要である。そのため、装置構成を簡略にし、設備コストを抑制できる。
また、製造装置1は、方向変換器60により光ファイバ素線5の方向を変換することによって、光ファイバ素線5を十分に冷却するための距離を確保し、生産性を高めることができる。
本実施形態の製造方法によれば、方向変換器60は、光ファイバ素線5に接触せずに光ファイバ素線5を保持することができる。そのため、光ファイバ素線5が高温であったとしても、被覆層の異常(変形、割れ、剥離など)は生じにくい。すなわち、本実施形態の製造方法では、被覆層が高温状態で装置の構成要素と接触することによる被覆層の異常発生を抑制できる。したがって、光ファイバ素線5の断線などのトラブルは起こりにくい。
また、前記製造方法では、方向変換器60において、流体によって光ファイバ素線5を冷却できるため、被覆層の機械特性(破断強度など)の低下を抑制できる。したがって、被覆層の異常発生を抑えることができる。
また、前記製造方法では、光ファイバ素線5の製造にあたり、第2硬化部50Bでの加熱温度を高くできるため、紡糸線速を高くし、光ファイバ素線5の生産性を向上させることができる。
また、前記製造方法では、方向変換器60により被覆層の冷却が可能であるため、冷却装置の新設は不要である。そのため、装置構成を簡略にし、設備コストを抑制できる。
また、前記製造方法では、光ファイバ素線5の製造にあたり、第2硬化部50Bでの加熱温度を高くできるため、紡糸線速を高くし、光ファイバ素線5の生産性を向上させることができる。
また、前記製造方法では、方向変換器60により被覆層の冷却が可能であるため、冷却装置の新設は不要である。そのため、装置構成を簡略にし、設備コストを抑制できる。
また、前記製造方法では、方向変換器60により光ファイバ素線5の方向を変換することによって、光ファイバ素線5を十分に冷却するための距離を確保し、生産性を高めることができる。
[方向変換器の変形例]
図5に示す方向変換器160は、図3に示す方向変換器60の変形例である。方向変換器160は、平面視4分円形とされ、流体溜部165から吹出し口162を通してガイド溝161内に流体を放出できる。
図5に示す方向変換器160は、図3に示す方向変換器60の変形例である。方向変換器160は、平面視4分円形とされ、流体溜部165から吹出し口162を通してガイド溝161内に流体を放出できる。
図6(a)に示すように、吹出し口162の一端および他端部分167,168に連通する周方向範囲には、流体溜部165とガイド溝161との間に、流体溜部165より流路の幅が狭い狭隘部169,169が形成されている。図6(b)に示すように、吹出し口162の中間部分166に連通する周方向範囲には、狭隘部169は形成されていない。このため、一端および他端部分167,168に相当する周方向範囲では、中間部分166に相当する周方向範囲に比べて流体が吹出す際の圧力損失が大きくなる。
方向変換器160では、一端および他端部分167,168に相当する範囲に狭隘部169,169が形成されているため、入線部63および出線部64では、吹出し口162からの流体の吹出し流速が、その他の部分(中間部分166)における流体の最低流速より速くなる。
このように、方向変換器160によれば、周方向の位置が異なる部分領域ごとに流体の流速を調節できる。
このように、方向変換器160によれば、周方向の位置が異なる部分領域ごとに流体の流速を調節できる。
[実施例1]
図1に示す製造装置1を用意した。方向変換器60としては、図3に示す方向変換器601を用いた。方向変換器60に導入される流体としては窒素(N2:総流量70L/min)を使用した。第1硬化部50Aおよび第2硬化部50Bとしては、通線方向の長さが800mmである熱架橋炉を用いた。製造装置1を用いて、光ファイバ素線5を製造した。その他の製造条件を表1に示す。
図1に示す製造装置1を用意した。方向変換器60としては、図3に示す方向変換器601を用いた。方向変換器60に導入される流体としては窒素(N2:総流量70L/min)を使用した。第1硬化部50Aおよび第2硬化部50Bとしては、通線方向の長さが800mmである熱架橋炉を用いた。製造装置1を用いて、光ファイバ素線5を製造した。その他の製造条件を表1に示す。
第1硬化部50Aの加熱温度は450℃とした。第2硬化部50Bの加熱温度は550℃とした。第2硬化部50Bでの加熱によって、光ファイバ素線5の被覆層は十分に硬化していた。第2硬化部50Bの直後の光ファイバ素線5の温度は240℃であった。
実施例1では、光ファイバ素線の被覆層に異常(変形、割れ、剥離など)は見られなかった。方向変換器60の直後(下流側)、および引取り部70の直前(上流側)において光ファイバ素線の温度を測定した結果、いずれも40℃以下であった。
[比較例1]
図1に示す方向変換器60に代えて、接触式の方向変換器であるプーリーを使用すること以外は実施例1と同様の製造装置を用いて光ファイバ素線を製造した。第1硬化部50Aおよび第2硬化部50Bの加熱温度は実施例1と同様とした。第2硬化部50Bでの加熱によって、光ファイバ素線5の被覆層は十分に硬化していた。第2硬化部50Bの直後の光ファイバ素線5の温度は240℃であった。
図1に示す方向変換器60に代えて、接触式の方向変換器であるプーリーを使用すること以外は実施例1と同様の製造装置を用いて光ファイバ素線を製造した。第1硬化部50Aおよび第2硬化部50Bの加熱温度は実施例1と同様とした。第2硬化部50Bでの加熱によって、光ファイバ素線5の被覆層は十分に硬化していた。第2硬化部50Bの直後の光ファイバ素線5の温度は240℃であった。
比較例1では、光ファイバ素線の被覆層に割れが観察された。プーリーの直後(下流側)、および引取り部70の直前(上流側)において光ファイバ素線の温度を測定した結果、約180℃〜230℃であった。
比較例1では、接触式の方向変換器であるプーリーを用いたため、光ファイバ素線とプーリーとが接触し、被覆層に割れが生じたと考えられる。これに対し、実施例1では方向変換器601(図3参照)を用いたため、接触式の方向変換器で起こっていた接触が抑制された。この結果、被覆層に割れや剥離が発生しなかったと考えられる。
以上、本発明の光ファイバ素線の製造方法及び製造装置について説明してきたが、本発明は前記の例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本発明の光ファイバ素線の製造方法で用いられる方向変換器の数は、1または複数とすることができる。図1に示す製造装置1では1つの方向変換器60が使用されているが、方向変換器60の数は1でもよいし、2以上の任意の数でもよい。
例えば、本発明の光ファイバ素線の製造方法で用いられる方向変換器の数は、1または複数とすることができる。図1に示す製造装置1では1つの方向変換器60が使用されているが、方向変換器60の数は1でもよいし、2以上の任意の数でもよい。
上記実施形態では、光ファイバ保持部として方向変換器を例示したが、光ファイバ保持部は方向変換器に限定されず、例えば、光ファイバの方向を変えずに光ファイバを保持する構成も可能である。
図1に示す製造装置1では、第2硬化部50Bを経た光ファイバ素線5と最初に物理的に接触する構成は引取り部70であるが、第2硬化部を経た光ファイバ素線と最初に物理的に接触する構成は、引取り部に限らず、他の構成、例えば光ファイバにねじれ(ツイスト)を加える装置であってもよい。
図1に示す製造装置1では、第2硬化部50Bを経た光ファイバ素線5と最初に物理的に接触する構成は引取り部70であるが、第2硬化部を経た光ファイバ素線と最初に物理的に接触する構成は、引取り部に限らず、他の構成、例えば光ファイバにねじれ(ツイスト)を加える装置であってもよい。
図2等に示す方向変換器60は、導入路66を通して内部空間(流体溜部65)に導入された流体(例えば空気)を、吹出し口62を通してガイド溝61内に放出できるように構成されているが、光ファイバ保持部の構造はこれに限定されない。例えば、光ファイバ保持部は、流体を吹出し口からガイド溝内に放出できる構成であれば、流体が導入される内部空間(流体溜部)がなくてもよい。
1…光ファイバ素線の製造装置、2…光ファイバ母材、3…光ファイバ裸線、5…光ファイバ素線、10…紡糸部、40A…第1コーティング部、40B…第2コーティング部、50A…第1硬化部、50B…第2硬化部(硬化部)、60,160,601,602…方向変換器、61,161…ガイド溝、62,162…吹出し口、100…供給部。
Claims (6)
- 熱硬化型樹脂で構成された未硬化の被覆層が形成された光ファイバ裸線を供給する供給部と、
前記被覆層を加熱して硬化させることにより光ファイバ素線を得る硬化部と、
前記硬化部より線引き方向の下流側において前記光ファイバ素線を保持する光ファイバ保持部と、を備え、
前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバ素線を案内するガイド溝を有し、
前記ガイド溝内には、流体を吹出させることによって、前記ガイド溝内の前記光ファイバ素線を浮揚させる吹出し口が形成されている、光ファイバ素線の製造装置。 - 前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバ素線の走行方向を変換する方向変換器である、請求項1記載の光ファイバ素線の製造装置。
- 前記供給部は、光ファイバ母材を溶融紡糸して前記光ファイバ裸線を形成する紡糸部と、
前記光ファイバ裸線の外周に熱硬化型樹脂で構成された前記被覆層を設けるコーティング部と、を有する、請求項1または2に記載の光ファイバ素線の製造装置。 - 熱硬化型樹脂で構成された未硬化の被覆層が形成された光ファイバ裸線を供給する供給工程と、
前記被覆層を硬化させることにより光ファイバ素線を得る硬化工程と、を有し、
前記硬化工程の後に、光ファイバ保持部を用いて前記光ファイバ素線を保持し、
前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバ素線を案内するガイド溝を有し、
前記ガイド溝内には、流体を吹出させることによって、前記ガイド溝内の前記光ファイバ素線を浮揚させる吹出し口が形成されている、光ファイバ素線の製造方法。 - 前記光ファイバ保持部は、前記光ファイバ素線の走行方向を変換する方向変換器である、請求項4記載の光ファイバ素線の製造方法。
- 前記供給工程は、光ファイバ母材を溶融紡糸して光ファイバ裸線を形成する紡糸工程と、
前記光ファイバ裸線の外周に熱硬化型樹脂で構成された前記被覆層を設けるコーティング工程と、を有する、請求項4または5に記載の光ファイバ素線の製造方法。
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