以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、ボトル形状を有する二重容器1の中心軸Zに沿った方向を「軸方向」とも称し、二重容器1の中心軸Zを回転軸として周回する方向を「周方向」とも称し、二重容器1の中心軸Zに直交する方向を「径方向」とも称する。また、本実施形態では、二重容器1の口部3から底部6へ向かう軸方向を「下方」とも称し、二重容器1の底部6から口部3へ向かう軸方向を「上方」とも称する。また、本実施形態では、二重容器1の中心軸Zに沿った平面で二重容器1を切断した断面を「縦断面」とも称し、二重容器1の中心軸Zに直交する平面で二重容器1を切断した断面を「横断面」とも称する。
[実施形態1:二重容器の容器本体の構成]
図1は、実施形態1に係る二重容器1の容器本体2の縦断面を模式的に示す図である。
二重容器1は、ボトル形状を有する容器である。二重容器1は、内容物を収容する容器本体2と、容器本体2に装着されるキャップ50(図2参照)とを備える。
容器本体2は、図1に示されるように、容器本体2の一端部であり内容物が注出される口部3と、容器本体2の他端部であり接地面を有する底部6と、径方向外方に広がりながら口部3から下方へ延びる肩部4と、肩部4から下方に延びて底部6に連なる胴部5とを備える。
容器本体2は、容器本体2の外郭を構成し内容器20を内包する外容器10と、内容物を収容する収容空間S1を有し内容物の減少に伴って収縮可能な内容器20とを備える。容器本体2は、外容器10の内面と内容器20の外面とが剥離可能に積層されたボトルである。
外容器10及び内容器20は、合成樹脂製の容器であり、ブロー成形によって製造される。好適には、外容器10及び内容器20は、試験管形状のプリフォームを用いた二軸延伸ブロー成形によって製造される。具体的には、外容器10及び内容器20は、外容器10のプリフォームの中に内容器20のプリフォームを挿入して重ねた状態で、外容器10のプリフォームと内容器20のプリフォームとを、同時に延伸ブロー成形することによって製造される。或いは、外容器10及び内容器20は、外容器10のプリフォームを延伸ブロー成形した後に、外容器10の内側において内容器20のプリフォームを延伸ブロー成形することによって製造されてよい。
外容器10及び内容器20は、ポリオレフィン系樹脂、エチレン−ビニル系共重合体、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフエニレンオキサイド樹脂、又は、生分解性樹脂を用いて製造される。好適には、外容器10及び内容器20は、ポリオレフィン系樹脂、又は、ポリエステル系樹脂を用いて製造される。より好適には、外容器10及び内容器20は、ポリエステル系樹脂を用いて製造される。このポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及び、これらの共重合ポリエステル等の樹脂が挙げられる。特に好適には、外容器10及び内容器20は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される。
外容器10は、底部6が接地して自立するように形成される。外容器10は、自立した状態で、口部3、肩部4、胴部5及び底部6の形態が保持されるように形成される。外容器10の肩部4及び胴部5は、スクイズ操作により押圧されると内方に撓んで変形し、押圧が解除されると押圧前の原形に復元するように形成される。
内容器20は、内容物を収容する収容空間S1を有し、外容器10に沿った形状を有するように形成される。内容器20の肩部4及び胴部5は、内容物の減少に伴って収縮するよう、外容器10よりも薄い肉厚を有するように形成される。
外容器10の口部3は、外容器10の胴部5より高い剛性を有するように形成される。外容器10の口部3の上端部には、内容器20の口部3が挿入される開口部11が設けられる。外容器10の開口部11は、内容器20の口部3に設けられた後述の開口部22よりも下方に配置される。開口部11の縁部の上面は、後述する内容器20のリング部24の下面と当接し、内容器20を下方から支持する。
外容器10の口部3の下部には、外容器10の把持及び搬送に利用されるサポートリング12が設けられる。サポートリング12は、径方向外方に突出し周方向に延びるように設けられる。外容器10の開口部11とサポートリング12との間には、外容器10と内容器20との間に外気を導入するための外気導入孔13が設けられる。外気導入孔13は、空隙A1及び空気層A2と連通するように設けられる。空隙A1は、外容器10の口部3と内容器20の口部3との間に位置する空間である。空気層A2は、外容器10と内容器20とが剥離することによって、外容器10の肩部4から底部6と、内容器20の肩部4から底部6との間に形成される空間である。
内容器20の口部3は、内容器20の胴部5より高い剛性を有するように形成され、外容器10の口部3と固定される。内容器20の口部3は、外容器10の開口部11から上方に突出する上部21と、上部21から下方に延びて外容器10の開口部11より下方に位置する下部25とを含む。
上部21の上端部には、内容器20とキャップ50とを連通するための開口部22が設けられる。上部21の開口部22より下方には、キャップ50が装着される被装着部23が設けられる。被装着部23は、キャップ50が打栓式で装着可能となるよう、周方向に延びる突条によって構成される。或いは、被装着部23は、キャップがねじ込み式で装着可能となるよう、螺旋状のねじ山又はねじ溝によって構成されてよい。上部21の被装着部23より下方には、内容器20の把持及び搬送に利用されるリング部24が設けられる。リング部24は、径方向外方に突出し周方向に延びるように設けられる。リング部24は、外容器10の開口部11の縁部と当接し、外容器10の位置を規制する。下部25は、空隙A1が形成されるよう、少なくとも外気導入孔13から下方の外径が、外容器10の口部3の内径より小さくなるように設けられる。
[実施形態1:二重容器のキャップの構成]
図2は、実施形態1に係る二重容器1のキャップ50の縦断面を模式的に示す図である。図3は、図2に示されたK部を拡大して示す図である。図4は、図2に示された中栓80の構成を模式的に示す図である。図4(a)は、中栓80の上面図を示し、図4(b)は、中栓80の縦断面図を示す。図5は、図2に示された逆止弁90の構成を模式的に示す図である。図5(a)は、逆止弁90の上面図を示し、図5(b)は、逆止弁90の側面図を示す。
キャップ50は、二重容器1の収容空間S1に収容された内容物を、スクイズ操作で二重容器1の外へ注出するためのキャップである。キャップ50は、図2に示されるように、キャップ本体60と、蓋70と、中栓80と、逆止弁90とを備える。
キャップ本体60は、キャップ50の外郭を構成する部材である。キャップ本体60は、図2に示されるように、内容器20の開口部22の上方に配置される略円板形状の上板部61を含む。上板部61の略中央部には、底面が無い中空の略円筒形状を有して上方へ延びるように形成された内容物の注出口62が設けられる。上板部61の縁部には、少なくとも内容器20の上部21の外面と外容器10の外気導入孔13とを径方向外方から覆うように、下方へ延びる外壁部63が設けられる。外壁部63の内面には、内容器20の被装着部23に対応する装着部64が設けられる。外壁部63の下部は、外容器10の口部3の外面と、隙間A3を空けて径方向外方から対向するように形成される。隙間A3は、外気導入孔13と連通し、外容器10と内容器20との間の空気層A2に対して外気が導入される際に、外気を外気導入孔13へと導く通路となる。外壁部63の下端部の内面には、径方向内方へ突出して周方向に延びるように形成された空気弁67が設けられる。空気弁67は、空気層A2へ外気が導入される際には上方へ撓んで隙間A3を開放し、空気層A2へ外気が導入された後には隙間A3を閉塞するような逆止弁構造を有するように設けられる。
上板部61の外壁部63より径方向内方には、内容器20の上部21の内面を径方向内方から覆うように下方へ延びる中壁部65が設けられる。外壁部63及び中壁部65は、外壁部63及び中壁部65の間において、径方向外方及び内方から内容器20の上部21を挟持するように設けられる。上板部61の中壁部65より径方向内方には、略円筒形状を有するように下方へ延びる内壁部66が設けられる。内壁部66に囲まれた径方向内方の空間は、内容物が注出される際に収容空間S1に収容された内容物を注出口62へ供給する供給室S2を構成する。供給室S2は、注出口62の下方に位置して注出口62と連通すると共に、中栓80及び逆止弁90を介して収容空間S1と連通する。
蓋70は、注出口62を開放又は閉塞する上蓋である。蓋70は、図2に示されるように、キャップ本体60の上板部61の縁部とヒンジで接続された天板部71と、天板部71から略垂直に突出する栓部72とを含む。天板部71は、蓋70が閉じられる際、上板部61の上面と密着するように設けられる。栓部72は、蓋70が閉じられる際、注出口62に挿入されて注出口62を閉塞するように設けられる。
中栓80は、図2に示されるように、供給室S2に収容され、内容物が注出される際に、収容空間S1から供給室S2への内容物の供給量を規制する。中栓80は、図3〜図4(b)に示されるように、略円環形状を有するように形成され、その内縁部において逆止弁90と当接可能な弁座81を含む。弁座81は、その外縁部が内縁部よりも下方に位置するよう、径方向内方から外方へ向けて下方へ傾斜するように形成される。弁座81の内縁部には、内容物が注出される際に収容空間S1に収容された内容物を供給室S2へ供給するための供給口82が設けられる。供給口82は、底面が無い中空の略円筒形状を有して、弁座81の内縁部から下方へ延びるように形成される。供給口82は、供給室S2の下方に位置し、供給室S2と収容空間S1とを連通する。
弁座81の外縁部には、図4(a)及び図4(b)に示されるように、周方向に沿って互いに等間隔に配置された複数の柱部83が設けられる。複数の柱部83のそれぞれは、図2〜図4(b)に示されるように、弁座81の外縁部からキャップ本体60の内壁部66の内面に沿って上方に延び、内壁部66の内面に掛止される。弁座81の外縁部には、図3及び図4(a)に示されるように、内容物が注出された際に注出口62と逆止弁90との間に滞留する内容物を収容空間S1へ回収するための流路である回収路84が設けられる。回収路84は、複数の柱部83同士の間の位置において弁座81の外縁部の上面から下面にかけて溝を形成することによって、形成される。回収路84は、供給室S2の下方であって供給口82の径方向外方に位置し、供給室S2と収容空間S1とを連通する。回収路84の上端部の開口は、供給口82の上端部の開口よりも下方に位置する。
逆止弁90は、図2に示されるように、供給室S2において中栓80の上方かつ内方に収容され、内容物が注出される際に、中栓80の供給口82をスクイズ操作に応じて開放又は閉塞する。逆止弁90は、エラストマー又は低密度ポリエチレンのような軟質の合成樹脂を用いて製造される。逆止弁90は、図3、図5(a)及び図5(b)に示されるように、上面及び下面の略中央部が上方に膨らんだ略円板形状を有するように形成された弁体91を含む。弁体91は、その外径が中栓80の供給口82の内径より大きくなるように形成され、その外周面の下部において中栓80の弁座81の内縁部と当接可能に設けられる。
弁体91の縁部には、図5(a)及び図5(b)に示されるように、周方向に沿って互いに等間隔に配置された複数のばね部92が設けられる。複数のばね部92のそれぞれは、弁体91の縁部から直線状又は螺旋状で上方へ延びるように形成され、支持部93に接続される。支持部93は、図5(a)及び図5(b)に示されるように、略円環形状を有するように形成される。支持部93は、図2、図5(a)及び図5(b)に示されるように、その外縁部において中栓80の柱部83の内面と当接すると共に、その上面部においてキャップ本体60の上板部61の下面と当接して、ばね部92を支持する。この際、支持部93は、ばね部92の下方への復元力によって弁体91を弁座81へ押し付け可能となるよう、ばね部92を自然長より縮ませて付勢した状態でキャップ本体60の上板部61に当接される。
[実施形態1:外気流入に関するキャップの構成]
図6は、使用初期段階及び使用終盤段階における内容器20の内圧の変化を説明するための図である。図6(a)は、1回のスクイズ操作における内容器20の内圧の変化を模式的に示す図です。図6(b)は、使用初期段階における内容器20の収縮状態を模式的に示す図である。図6(c)は、使用終盤段階における内容器20の収縮状態を模式的に示す図である。
図6(a)は、使用初期段階の二重容器1においてスクイズ操作により外容器10の押圧が開始される時点を基準とした時間を横軸に示し、大気圧を基準とした内容器20の内圧を縦軸に示している。本実施形態において、内容器20の内圧はゲージ圧である。図6(a)の一点鎖線は、使用初期段階における内容器20の内圧を示し、図6(a)の実線は、使用終盤段階における内容器20の内圧を示す。
二重容器1では、内容物が注出される際、スクイズ操作によって外容器10が押圧されることで内容物が注出口62から注出され、外容器10の押圧が解除されることで内容物の注出が停止される。この1回のスクイズ操作において、内容器20の内圧は、図6(a)に示されるように、大気圧より高い正圧状態から大気圧より低い負圧状態に低下し、その後、大気圧と同程度まで上昇するように変化する。
内容器20の内圧の変化は、収容空間S1に収容された内容物の収容量が多い二重容器1の使用初期段階と、収容空間S1に収容された内容物の収容量が少ない二重容器1の使用終盤段階とにおいて、図6(a)に示されるように、異なる態様を示す。すなわち、内容器20の内圧の変化は、使用初期段階から使用終盤段階へ移行すると、図6(a)に示されるように、内容器20の内圧の実質的な上昇開始時点Taが遅くなり、内圧の上限値Pmax及び下限値Pminが低下する。
使用初期段階では、収容空間S1に収容された内容物の収容量が多いことから、図6(b)に示されるように、内容物より圧縮性が高い大気で満たされた空気層A2の体積が小さい。これに対し、使用終盤段階では、収容空間S1に収容された内容物の収容量が少ないことから、図6(c)に示されるように、空気層A2の体積が大きい。
それにより、使用初期段階から使用終盤段階へ移行すると、スクイズ操作により発生した外容器10に対する押圧力が内容器20へ伝達され難くなるため、内容器20の内圧の実質的な上昇開始時点Taが遅くなると共に、内圧の上限値Pmaxが低下する。内容器20の内圧の実質的な上昇開始時点Taとは、スクイズ操作により発生した外容器10に対する押圧力のうち内容器20に伝達された押圧力の大きさが、内容器20の収縮変形に寄与する程度になった時点である。更に、使用初期段階から使用終盤段階へ移行すると、外容器10の押圧による内方への押込量が増加することから、外容器10が原形へ復元する際の空気層A2の膨張量も増加する。それにより、使用初期段階から使用終盤段階へ移行すると、空気層A2の圧力も低下し易くなり、空気層A2の圧力と平衡を保つ内容器20の内圧も低下し易くなるため、内容器20の内圧の下限値Pminが低下する。
ここで、使用初期段階とは、内容物が余り注出されておらず、収容空間S1に収容された内容物の収容量が、所定量に到達する前の段階である。使用終盤段階とは、収容空間S1に収容された内容物の収容量が、所定量に到達して以降の段階である。この所定量は、収容空間S1の容積に対して3%以上25%以下の範囲に含まれる値である。好適には、所定量は、4%以上20%以下の範囲に含まれる値であってよい。より好適には、所定量は、5%以上15%以下の範囲に含まれる値であってよい。すなわち、使用初期段階とは、収容空間S1に収容された内容物の収容量が、収容空間S1の容積に対して5%以上15%以下の範囲に含まれる所定量に到達する前の段階であってよい。使用終盤段階とは、収容空間S1に収容された内容物の収容量が、収容空間S1の容積に対して5%以上15%以下の範囲に含まれる所定量に到達して以降の段階であってよい。
内容器20の内圧が負圧状態になると、二重容器1には、外気を注出口62から収容空間S1へ吸引する吸引力が作用する。この吸引力の作用により、逆止弁90は、弁体91が中栓80の弁座81に押し付けられて密着するため、供給口82を閉塞する。それにより、逆止弁90は、外気が収容空間S1へ流入することを防ぐ。すなわち、逆止弁90は、内容物が注出された際の注出口62から収容空間S1への外気流入を規制する規制部として機能する。本実施形態では、内容物が注出された際の注出口62から収容空間S1への外気流入を、単に「外気流入」とも称する。
注出口62から吸引された外気が収容空間S1へ流入するか否かは、外気流入に対する逆止弁90の耐圧Pwと、負圧状態となった内容器20の内圧との関係で決定される。外気流入に対する逆止弁90の耐圧Pwとは、外気が逆止弁90に与える圧力のうち、逆止弁90が収容空間S1への流入を遮断可能な圧力の限界値である。負圧状態となった内容器20の内圧が低くなると、内容器20の内圧と大気圧との差が大きくなり、外気が逆止弁90に与える圧力が増加する。そして、外気流入に対する逆止弁90の耐圧Pwを超えると、互いに密着する弁体91と弁座81との間において外気がリークし収容空間S1へ流入する。
実施形態1に係るキャップ50では、使用初期段階と使用終盤段階とにおいて、収容空間S1への外気流入を規制する規制部として機能する逆止弁90の動作モードが異なる。使用初期段階における逆止弁90の動作モードは、収容空間S1への外気流入を遮断する遮断モードである。使用終盤段階における逆止弁90の動作モードは、収容空間S1への外気流入を許容する許容モードである。そして、キャップ50では、使用初期段階から使用終盤段階へ移行すると、逆止弁90の動作モードが、遮断モードから許容モードへ移行する。
具体的には、逆止弁90は、外気流入に対する耐圧Pwが、使用初期段階における内容器20の内圧の下限値Pmin(1)と、使用終盤段階における内容器20の内圧の下限値Pmin(2)との間を取り得るように設けられる。すなわち、逆止弁90は、外気流入に対する耐圧Pwが、ゲージ圧における絶対値で、使用初期段階における内容器20の内圧の下限値Pmin(1)より大きく、使用終盤段階における内容器20の内圧の下限値Pmin(2)より小さくなるように設けられる。言い換えると、二重容器1は、逆止弁90が、使用初期段階において外気流入を遮断し、使用終盤段階において外気流入を許容するよう、逆止弁90の外気流入に対する耐圧Pwを、ゲージ圧における絶対値で、Pmin(1)より大きくPmin(2)より小さい値に設定することによって、製造される。二重容器1では、ばね部92が弁体91を弁座81へ押し付ける力を調整することによって、逆止弁90の外気流入に対する耐圧Pwを、ゲージ圧における絶対値で、Pmin(1)より大きくPmin(2)より小さい値に設定することができる。
二重容器1が使用初期段階であるか使用終盤段階であるかの区別は、収容空間S1に収容された内容物の収容量に応じて決定される。このため、逆止弁90は、収容空間S1に収容された内容物の収容量に基づいて、遮断モードから許容モードへ移行すると言える。逆止弁90は、収容空間S1に収容された内容物の収容量が、収容空間S1の容積に対して5%以上15%以下の範囲に含まれる所定量に到達した時期に、遮断モードから許容モードへ移行することができる。
許容モードにおいて、収容空間S1へ流入した外気は、内容物よりも比重が軽いことから、二重容器1を傾けて内容物を注出する際には二重容器1の底部6へ向けて移動する。そして、二重容器1を傾けた状態でスクイズ操作が行われると、収容空間S1へ流入した外気は、収容空間S1に収容された内容物を供給口82へ向けて押し出し、収容空間S1へ留まる。このため、収容空間S1へ流入した外気の累計流入量が多くなると、収容空間S1に収容された内容物を供給口82へ向けて押し出す力が大きくなる。よって、逆止弁90が使用終盤段階において許容モードで動作することは、注出し切れずに収容空間S1へ残留する内容物の残留量を低減することができる。
また、1回のスクイズ操作において収容空間S1へ流入する外気の流入量は、1回のスクイズ操作において注出される内容物の注出量と略等しい。このため、内容物が注出された際に収容空間S1へ流入した外気は、注出された内容物と置き換わったと見做すことができる。そこで、逆止弁90は、遮断モードだけで動作させた際の内容物の残留量に相当する外気を収容空間S1へ流入させる。すなわち、逆止弁90は、許容モードによって収容空間S1へ流入する外気の累計流入量を、遮断モードだけで動作させた際の内容物の残留量とする。遮断モードだけで動作させた際の内容物の残留量が、収容空間S1の容積に対して2%以上12%以下の範囲に含まれるとする。この場合、逆止弁90は、許容モードによって収容空間S1へ流入する外気の累計流入量が、収容空間S1の容積に対して2%以上12%以下の範囲に含まれる所定量となるように、収容空間S1への外気流入を規制する。それにより、逆止弁90は、注出し切れずに収容空間S1へ残留する内容物の残留量を低減することができる。
[実施形態1:二重容器の動作]
図7は、内容物が注出される際の二重容器1の動作と、内容器20の内圧との関係を模式的に示す図であって、使用初期段階での関係を示す図である。図8は、内容物の流れ及び逆止弁90の様子を説明するための図である。図8(a)は、注出口62から内容物を注出中である場合の様子を示す。図8(b)は、回収路84から内容物を回収中である場合の様子を示す。
使用初期段階の二重容器1では、内容物が注出される際に、スクイズ操作により外容器10の押圧が開始されると、外容器10が、収縮するように変形し始める。外容器10に対する押圧力は、空気層A2の体積が小さいため、内容器20へ直ちに伝達される。それにより、内容器20は、Taの時点で示されるように、収縮するよう直ちに変形し始める。そして、内容器20の内圧は、直ちに上昇し始めて正圧状態となる。
内容器20の内圧が上昇すると、Tbの時点で示されるように、逆止弁90は、弁体91が中栓80の弁座81から離れるよう上方へ移動し、供給口82を開放する。それにより、二重容器1では、収容空間S1に収容された内容物が、図8(a)に示されるように、供給口82を通って供給室S2へ供給され、注出口62から注出され始める。なお、図8(a)及び図8(b)の矢印Qは、内容物の流れを示す。
スクイズ操作による外容器10の押圧が解除されると、二重容器1では、Tcの時点で示されるように、外容器10が、収縮した状態から押圧前の原形に復元するように変形し始める。図7に示されるように、内容物が注出口62から注出され始めて以降においても、スクイズ操作により継続して外容器10が強く押圧される場合、内容器20の内圧は、外容器10の押圧が解除されたTcの時点において、上限値Pmax(1)となり得る。なお、スクイズ操作の途中で外容器10に対する押圧力が軽減されるような場合には、内容器20の内圧は、Tbの時点とTcの時点との間の任意の時点において、上限値Pmax(1)となり得る。このことは、使用終盤段階での内容器20の内圧の上限値Pmax(2)についても同様である。
外容器10が復元するように変形し始めると、空気層A2の圧力が低下し、内容器20の内圧が低下し始める。内容器20の内圧が低下すると、Tdの時点で示されるように、逆止弁90は、弁体91が中栓80の弁座81に密着するよう下方へ移動し、供給口82を閉塞する。それにより、二重容器1では、収容空間S1に収容された内容物の供給室S2へ供給が停止し、注出口62からの内容物の注出が停止する。
Teの時点で示されるように、内容器20の内圧が低下し負圧状態に移行すると、二重容器1では、注出口62と逆止弁90との間に滞留する内容物が、図8(b)に示されるように、回収路84を通って収容空間S1へ回収され始める。その後、二重容器1では、Tfの時点で示されるように、内容器20の内圧が下限値Pmin(1)に達して上昇に転じる。外容器10と内容器20との間の空気層A2に対して外気導入孔13から外気が導入され始める時点は、外容器10が原形に復元する過程のいずれかの時点である。図7では、外気導入孔13から空気層A2への外気導入が開始する時点は、内容器20の内圧が負圧状態に移行するTeの時点を少し過ぎて、その負圧状態が進行し、キャップ50の空気弁67が隙間A3を開放した時点である例を示している。
外容器10が復元し終わると、二重容器1では、Tgの時点で示されるように、負圧状態にある内容器20の内圧が、大気圧に近い圧力となり得る。そして、内容器20の内圧が大気圧と同程度まで上昇すると、外気導入孔13から空気層A2への外気導入が停止し、内容物の収容空間S1への回収が停止する。この際、回収路84を通る内容物は、その表面張力によって回収路84で留まり、回収路84を閉塞する液膜を形成する。それにより、二重容器1では、回収路84を経由する収容空間S1への外気流入が遮断される。また、二重容器1では、逆止弁90が使用初期段階において遮断モードで動作するため、収容空間S1への外気流入は発生しない。
図9は、内容物が注出される際の二重容器1の動作と、内容器20の内圧との関係を模式的に示す図であって、使用終盤段階での関係を示す図である。図10は、収容空間S1への外気流入及び逆止弁90の様子を説明するための図である。
なお、図9の一点鎖線は、使用初期段階における内容器20の内圧を示し、図9の実線は、使用終盤段階における内容器20の内圧を示す。
使用終盤段階の二重容器1では、内容物が注出される際に、スクイズ操作により外容器10の押圧が開始されると、使用初期段階と同様に、外容器10が、収縮するよう変形し始める。但し、使用終盤段階の二重容器1では、内容物より圧縮性の高い空気層A2の体積が多い。このため、外容器10に対する押圧力は、使用初期段階よりも内容器20へ伝達され難い。それにより、内容器20は、Taの時点で示されるように、外容器10の押圧が開始される時点よりも実質的に遅れて、収縮するように変形し始める。その結果、内容器20の内圧は、使用初期段階よりも実質的に遅れて上昇し始め、正圧状態となる。
その後、二重容器1では、Tbの時点からTeの時点までの間、使用初期段階と同様に動作し、収容空間S1に収容された内容物が注出口62から注出されると共に、注出口62と逆止弁90との間に滞留する内容物が回収路84を通って収容空間S1へ回収される。但し、上述のように、外容器10に対する押圧力が使用初期段階よりも内容器20へ伝達され難いため、内容器20の内圧の上限値Pmax(2)は、使用初期段階の上限値Pmax(1)よりも低くなる。また、外気導入孔13から空気層A2への外気導入が開始される時点は、使用初期段階と同様に、外容器10が復元する過程のいずれかの時点である。図9では、図7と同様に、外気導入孔13から空気層A2への外気導入が開始する時点は、Teの時点を少し過ぎて、内容器20の内圧の負圧状態が進行し、キャップ50の空気弁67が隙間A3を開放した時点である例を示している。
内容器20の内圧が外気流入に対する逆止弁90の耐圧Pwを超えると、二重容器1では、Tiの時点で示されるように、外気が収容空間S1へ流入し始める。この際、逆止弁90では、図10に示されるように、弁体91が弁座81に当接したままであるが、弁体91と弁座81との間において外気がリークし収容空間S1へ流入する。なお、図10の矢印Qは内容物の流れを示し、図10の矢印Rは外気の流れを示す。
その後、二重容器1では、Tfの時点で示されるように、内容器20の内圧が下限値Pmin(2)に達して上昇に転じる。内容器20の内圧が耐圧Pwまで上昇すると、二重容器1では、Tjの時点で示されるように、収容空間S1への外気流入が停止する。
その後、二重容器1では、Tgの時点及びThの時点において、使用初期段階と同様に動作し、外気導入孔13から空気層A2への外気導入が停止すると共に、内容物の収容空間S1への回収が停止する。
[実施形態1:作用効果]
以上のように、実施形態1に係る二重容器1は、キャップ50が、内容物が注出された際の注出口62から収容空間S1への外気流入を規制する規制部として機能する逆止弁90を備える。そして、逆止弁90は、収容空間S1に収容された内容物の収容量に基づいて、収容空間S1への外気流入を遮断する遮断モードから、収容空間S1への外気流入を許容する許容モードへ移行する。このため、実施形態1に係る二重容器1では、内容物の収容量に基づいて、ヘッドスペースの体積を意図的に増加することができる。それにより、実施形態1に係る二重容器1は、ヘッドスペースを構成する気体によって、内容物を供給口82へ押し出し易くすることができると共に、収容空間S1における内容物の流路を確保し易くすることができる。その結果、実施形態1に係る二重容器1は、予め大きなヘッドスペースを設けなくても、内容物の収容量に関わらず内容物を注出し易くすることができると共に、注出し切れずに収容空間S1へ残留する内容物の残留量を大幅に低減することができる。よって、実施形態1に係る二重容器1では、容器サイズを大型化したり内容物の初期充填量を減らしたりすることなく、内容物の注出性を向上させ残留量を低減することができる。
更に、実施形態1に係る二重容器1では、規制部として機能する逆止弁90が、使用初期段階において遮断モードで動作し、使用終盤段階において許容モードで動作する。このため、実施形態1に係る二重容器1では、内容物の収容量が少ない使用終盤段階で初めて、ヘッドスペースの体積を意図的に増加することができる。それにより、実施形態1に係る二重容器1は、収容空間S1への外気流入をより適切な段階で行って、内容物を効果的に注出し易くすることができると共に内容物の流路を効果的に確保することができる。よって、実施形態1に係る二重容器1は、容器サイズを大型化したり内容物の初期充填量を減らしたりすることなく、内容物の注出性を効果的に向上させ残留量を効果的に低減することができる。
更に、実施形態1に係る二重容器1では、規制部として機能する逆止弁90は、収容空間S1への外気流入に対する耐圧が、絶対値で、使用初期段階における内容器20の内圧の下限値より大きく、使用終盤段階における内容器20の内圧の下限値より小さくなるように設けられる。このため、実施形態1に係る二重容器1では、使用初期段階から使用終盤段階へ移行する時期に合わせて、逆止弁90の動作モードを遮断モードから許容モードへ確実に移行することができる。それにより、実施形態1に係る二重容器1では、収容空間S1に収容された内容物の収容量が多い使用初期段階において収容空間S1への外気流入を確実に遮断し、収容量が少ない使用終盤段階において収容空間S1への外気流入を確実に許容することができる。よって、実施形態1に係る二重容器1は、容器サイズを大型化したり内容物の初期充填量を減らしたりすることなく、内容物の注出性を確実に向上させ残留量を確実に低減することができる。
更に、実施形態1に係る二重容器1では、規制部として機能する逆止弁90は、内容物の収容量が、収容空間S1の容積に対して5%以上15%以下の範囲に含まれる所定量に到達した時期に、遮断モードから許容モードへ移行する。また、実施形態1に係る二重容器1では、規制部として機能する逆止弁90は、許容モードによって収容空間S1へ流入する外気の累計流入量が、収容空間S1の容積に対して2%以上12%以下の範囲に含まれる所定量となるように、収容空間S1への外気流入を規制する。従来の二重容器では、注出し切れずに収容空間へ残留する内容物の残留量が、収容空間の容積に対して5%以上15%以下であることが多い。また、従来の二重容器では、内容物の初期充填時におけるヘッドスペースの体積が、収容空間の容積に対して3%程度であることが多い。実施形態1に係る二重容器1では、収容空間S1の容積に対して2%以上12%以下の範囲に含まれる所定量だけ外気が累計して収容空間S1へ流入される。それにより、実施形態1に係る二重容器1では、従来の二重容器の構成を大幅に変更しなくても、略全ての内容物を注出し切ることができる。よって、実施形態1に係る二重容器1では、容器サイズを大型化したり内容物の初期充填量を減らしたりすることなく、内容物の注出性を簡単に向上させ、残留量を簡単かつ劇的に低減することができる。
[他の実施形態]
実施形態2に係る二重容器1について説明する。実施形態2に係る二重容器1の説明において、実施形態1に係る二重容器1と同様の構成及び動作に係る説明については、重複する説明となるため省略する。
実施形態1に係る二重容器1では、スクイズ操作による外容器10の押圧が解除されて内容器20の内圧が負圧状態になると、注出口62と逆止弁90との間に滞留する内容物は、回収路84を通って収容空間S1へ回収される。この際、回収路84を通る内容物は、その表面張力によって回収路84に留まり、回収路84を閉塞する液膜を形成する。それにより、実施形態1に係る二重容器1では、回収路84を経由する収容空間S1への外気流入が遮断される。すなわち、回収路84を通る内容物は、内容物が注出された際の注出口62から収容空間S1への外気流入を規制し得る。
そこで、実施形態2に係る二重容器1では、内容物が注出された際の注出口62から収容空間S1への外気流入を規制する規制部を、回収路84を通る内容物によって構成する。具体的には、実施形態2に係る二重容器1では、回収路84を通る内容物によって形成される液膜の外気流入に対する耐圧を、実施形態1に係る逆止弁90の外気流入に対する耐圧Pwと同様に設定する。
すなわち、実施形態2に係る二重容器1では、回収路84に形成される液膜の外気流入に対する耐圧が、ゲージ圧における絶対値で、使用初期段階における内容器20の内圧の下限値Pmin(1)より大きく、使用終盤段階における内容器20の内圧の下限値Pmin(2)より小さくなるように、回収路84を設ける。例えば、二重容器1では、回収路84を形成する溝のサイズを大きくしたり、溝の数を増やしたりすることによって、回収路84に形成された液膜の外気流入に対する耐圧を、ゲージ圧における絶対値で、Pmin(1)より大きくPmin(2)より小さい値に設定することができる。
それにより、実施形態2に係る二重容器1では、回収路84を通る内容物が、使用初期段階において遮断モードで働く規制部として機能し、使用終盤段階において許容モードで働く規制部として機能する。そして、実施形態2に係る二重容器1では、内容器20の内圧が、回収路84に形成される液膜の外気流入に対する耐圧を超えると、液膜が破られ、回収路84から収容空間S1へ外気が流入し得る。
また、実施形態2に係る二重容器1においても、実施形態1と同様に、内容物の収容量が、収容空間S1の容積に対して5%以上15%以下の範囲に含まれる所定量に到達した時期に、遮断モードから許容モードへ移行する。更に、実施形態2に係る二重容器1においても、実施形態1と同様に、許容モードによって収容空間S1へ流入する外気の累計流入量が、収容空間S1の容積に対して2%以上12%以下の範囲に含まれる所定量となるように、収容空間S1への外気流入が規制される。
このように、実施形態2に係る二重容器1では、回収路84を通る内容物が、内容物が注出された際の注出口62から収容空間S1への外気流入を規制する規制部として機能するよう回収路84を形成することができる。そして、実施形態2に係る二重容器1では、回収路84を通る内容物が、収容空間S1に収容された内容物の収容量に基づいて、収容空間S1への外気流入を遮断する遮断モードから、収容空間S1への外気流入を許容する許容モードへ移行するよう回収路84を形成することができる。よって、実施形態2に係る二重容器1では、実施形態1と同様に、容器サイズを大型化したり内容物の初期充填量を減らしたりすることなく、内容物の注出性を向上させ残留量を低減することができる。
なお、二重容器1では、規制部が、逆止弁90又は回収路84を通る内容物により構成されるだけでなく、実施形態1及び2の技術を組み合わせて、逆止弁90及び回収路84を通る内容物の両方によって構成されてよい。すなわち、二重容器1では、収容空間S1への外気流入において、弁体91と弁座81との間及び回収路84の両方から、外気が収容空間S1へ流入してもよい。
[その他]
上述の実施形態において、二重容器1は、特許請求の範囲に記載された「二重容器」の一例に該当する。外容器10は、特許請求の範囲に記載された「外容器」の一例に該当する。内容器20は、特許請求の範囲に記載された「内容器」の一例に該当する。容器本体2は、特許請求の範囲に記載された「容器本体」の一例に該当する。キャップ50は、特許請求の範囲に記載された「キャップ」の一例に該当する。収容空間S1は、特許請求の範囲に記載された「収容空間」の一例に該当する。注出口62は、特許請求の範囲に記載された「注出口」の一例に該当する。供給口82及び供給室S2は、特許請求の範囲に記載された「供給路」の一例に該当する。逆止弁90は、特許請求の範囲に記載された「逆止弁」の一例に該当する。回収路84は、特許請求の範囲に記載された「回収路」の一例に該当する。
上述の実施形態は、変形例を含めて各実施形態同士で互いの技術を適用することができる。上述の実施形態は、本発明の内容を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない程度に変更を加えることができる。
上述の実施形態及び特許請求の範囲で使用される用語は、限定的でない用語として解釈されるべきである。例えば、「含む」という用語は、「含むものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「備える」という用語は、「備えるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。