JP2020001047A - Ni基超耐熱合金溶接材 - Google Patents

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【課題】γ’相の量が多いNi基超耐熱合金溶接材として、溶接性低下のリスクを低減することに寄与し、コスト的にも有利なNi基超耐熱合金溶接材を提供する。【解決手段】700℃におけるガンマプライム相の平衡析出量が35モル%以上の成分組成を有し、径が0.5〜5mmである線状のNi基超耐熱合金溶接材であって、長手方向に沿った断面の組織観察において長手方向に連なった炭化物群を有し、酸素含有量が0.002質量%以下であることを特徴とする。【選択図】図7

Description

本発明は、Ni基超耐熱合金溶接材に関するものである。
航空機エンジンや発電用のガスタービンに用いられる耐熱部品として、例えば、インコネル(登録商標)718合金のようなNi基超耐熱合金が多く用いられている。Ni基超耐熱合金は、鋳造合金、鍛造合金、焼結合金等の形態で提供される。
上述の耐熱部品の使用環境において酸化、摩耗、クラック等の損傷が発生した場合には、廃棄コストを抑えるために、損傷が発生した部分は肉盛溶接等によって補修される。補修用の溶接材としては、例えば耐熱部品と同じ成分組成、または、これに近い成分組成の線材が用いられる。また、かかる溶接材は、耐熱部品を複数の部材を溶接して構成する場合にも用いられる。
例えば、米国特許第4777710号(特許文献1)には、タービンブレードの溶接ワイヤとして好適なワイヤの製造方法として、鋳造ワイヤを束ねたものを熱間押出した後、分離する手法が提案されている。
米国特許第4777710号明細書 特表2016−511150号公報 特開2006−265591号公報
ガスタービンの高性能化と低燃費化に伴って、より高い耐熱性を有する耐熱部品が求められている。耐熱部品に用いられるNi基超耐熱合金の耐熱性(高温強度)を向上させるためには、NiAlを主組成とする金属間化合物の析出強化相であるガンマプライム相(以下、「γ’相」とも記す。)量を増やすことが最も有効である。そして、Ni基超耐熱合金が、更に、γ’生成元素であるAl、Ti、Nbを含有することで、Ni基超耐熱合金の高温強度をさらに向上させることができる。今後、高耐熱性、高強度を満足させるために、γ’相の量がより多いNi基超耐熱合金が求められる。
しかし、Ni基超耐熱合金は、γ’相の増加と共に、熱間加工の変形抵抗が大きくなり、難加工であることが知られている。とりわけ、γ’相の量が35〜40モル%以上のγ’モル率になると加工性は特に低下するため、特許文献1に開示される製造方法であってもγ’相の量が多いワイヤ状の溶接材を提供することは困難になる。例えば、インコネル(登録商標)713C合金、IN939、IN100、Mar−M247等のNi基超耐熱合金は、特別にγ’相が多く、塑性加工が不可能とされ、通常は鋳造合金として鋳造まま(as−cast)で使用されている。したがって、これらのNi基超耐熱合金の補修のためにγ’相の量が多い溶接材が必要とされる場合、鋳造材から加工によってワイヤ状に削り出す必要がある。この場合、加工ロスの増大等により、製造コストが非常に高くなる。一方、特許文献2に開示されているように、γ’相の量が多いNi基超耐熱合金を粉末材とフラックス材料を準備し、それを溶接材として使用し、溶融とスラグ除去を繰り返す方法もある。しかし、粉末材は比表面積がワイヤ材に比べて格段に大きいため、粉末材の準備から溶接に至る工程で、ガス成分が混入しやすく、強度や溶接性が低下するリスクが高まる。例えば、Ni基自溶合金粉末の技術分野に関するものではあるが、特許文献3に開示されているNi基合金粉末の酸素量は、少ないものでも約40ppmである。
本発明の目的は、γ’相の量が多いNi基超耐熱合金溶接材として、溶接性低下のリスクを低減することに寄与し、コスト的にも有利な溶接材を提供することである。
本発明の一観点によれば、700℃におけるガンマプライム相の平衡析出量が35モル%以上の成分組成を有し、径が0.5〜5mmである線状のNi基超耐熱合金溶接材であって、長手方向に沿った断面の組織観察において長手方向に連なった炭化物群を有し、酸素含有量が0.002質量%以下であるNi基超耐熱合金溶接材が提供される。
一具体例によれば、このNi基超耐熱合金は700℃におけるガンマプライム相の平衡析出量が66モル%以上の成分組成を有することが好ましい。
また、一具体例によれば、このNi基超耐熱合金が500HV以上の硬さを有することが好ましい。
以下の非限定的な具体例の説明および添付の図面を参照することにより、本発明の利点、特徴及び詳細が明らかになるであろう。
本発明例No.1−2のNi基超耐熱合金溶接材の断面ミクロ組織の電子線後方散乱回折(EBSD)像の一例を示す図である。 本発明例No.1−4のNi基超耐熱合金溶接材の断面ミクロ組織のEBSD像の一例を示す図である。 本発明例No.1−5のNi基超耐熱合金溶接材の断面ミクロ組織のEBSD像の一例を示す図である。 本発明例No.1−7のNi基超耐熱合金溶接材の断面ミクロ組織のEBSD像の一例を示す図である。 本発明例No.1−9のNi基超耐熱合金溶接材の断面ミクロ組織のEBSD像の一例を示す図である。 比較例No.1−1のNi基超耐熱合金溶接材の断面ミクロ組織のEBSD像の一例を示す図である。 本発明例No.5−7のNi基超耐熱合金溶接材の断面ミクロ組織の光学顕微鏡像の一例を示す図である。 本発明例No.5−7のNi基超耐熱合金溶接材の断面ミクロ組織の走査電子顕微鏡像の一例を示す図である。
本発明は、従来の熱間塑性加工によらない新しいアプローチによって、塑性加工性に優れたNi基超耐熱合金を提供することが可能になり、それを基に溶接材を提供するという、実に斬新なものである。
本発明者は、γ’相の量が多いNi基超耐熱合金の塑性加工性について研究した。その結果、Ni基超耐熱合金の組織中に「ナノ結晶粒」を生成させることにより、Ni基超耐熱合金の冷間塑性加工性が飛躍的に向上する現象を突きとめた。そして、これによって線状の溶接材を提供できることを見いだして、本発明に至った。
本発明によるNi基超耐熱合金溶接材(以下、単に溶接材ともいう。)は、700℃におけるガンマプライム相の平衡析出量が35モル%以上の成分組成を有し、径が0.5〜5mmである線状のNi基超耐熱合金溶接材であり、長手方向に沿った断面の組織観察において長手方向に連なった炭化物群を有し、酸素含有量が0.002質量%以下である。長手方向に沿った断面の組織観察において長手方向に連なった炭化物群を有するということは、塑性加工によって線状の溶接材が得られていることを意味し、酸素含有量が少ないことと相俟って、溶接性低下のリスクを低減することに寄与し、コスト的にも有利な溶接材の提供を可能にする。
ここで、Ni基超耐熱合金のγ’相の量は、そのγ’相の「体積率」や「面積率」等の数値的指標で表すことができる。本明細書では、γ’相の量を、「γ’モル率」の数値的指標で表す。γ’モル率とは、Ni基超耐熱合金が熱力学的な平衡状態において析出することができる、安定的なガンマプライム相の平衡析出量のことである。ガンマプライム相の平衡析出量を「モル率」で表した値は、Ni基超耐熱合金が有する成分組成により決定される。この平衡析出量のモル%の値は、熱力学平衡計算による解析で求めることができる。熱力学平衡計算による解析では、各種の熱力学平衡計算ソフトを用いることで、精度よく、かつ、容易に求めることができる。
本発明では、Ni基超耐熱合金のγ’モル率を、「700℃における平衡析出量」とする。Ni基超耐熱合金の高温強度は、組織中のガンマプライム相の平衡析出量で評価でき、この高温強度が大きいほど、熱間塑性加工は困難になる。組織中のガンマプライム相の平衡析出量は、一般的に、概ね700℃以下で温度依存性が小さくなり、概ね一定となるので、上記の「700℃」のときの値を基準とする。
上記の通り、通常はNi基超耐熱合金のγ’モル率が大きいほど熱間塑性加工は困難である。しかし、本発明においては、γ’モル率を大きくすることが、Ni基超耐熱合金の冷間の塑性加工性の向上に大きく関与する。本発明のNi基超耐熱合金溶接材を製造するための方法においては、その断面組織中に「ナノ結晶粒」を有することで、冷間塑性加工性を飛躍的に改善できる。このナノ結晶粒は、Ni基超耐熱合金のマトリックスであるオーステナイト相(ガンマ(γ))とガンマプライム相との相界面から最も発生しやすい。したがって、Ni基超耐熱合金のγ’モル率を大きくすることは、上記の相界面の増加に繋がって、ナノ結晶粒の生成に寄与する。そして、γ’モル率が35%のレベルにまで達すると、上記のナノ結晶粒の生成が促進される。700℃におけるガンマプライム相の平衡析出量が40モル%以上の成分組成がより好ましい。更に好ましいガンマプライム相の平衡析出量は、50モル%以上であり、更により好ましくは60モル%以上である。特に好ましいガンマプライム相の平衡析出量は63モル%以上であり、いっそう好ましくは66モル%以上、よりいっそう好ましくは68モル%以上である。700℃におけるガンマプライム相の平衡析出量の上限は、特に限定しないが、75モル%程度が現実的である。
700℃におけるガンマプライム相の平衡析出量が35モル%以上の析出強化型のNi基超耐熱合金として、例えば、質量%で、C:0〜0.25%、Cr:8.0〜25.0%、Al:0.5〜8.0%、Ti:0.4〜7.0%、Co:0〜28.0%、Mo:0〜8%、W:0〜6.0%、Nb:0〜4.0%、Ta:0〜3.0%、Fe:0〜10.0%、V:0〜1.2%、Hf:0〜1.0%、B:0〜0.300%、Zr:0〜0.300%を含み、残部がNiおよび不純物からなる組成を有することが好ましい。
あるいは、Ni基超耐熱合金は、質量%で、C:0〜0.03%、Cr:8.0〜22.0%、Al:2.0〜8.0%、Ti:0.4〜7.0%、Co:0〜28.0%、Mo:2.0〜7.0%、W:0〜6.0%、Nb:0〜4.0%、Ta:0〜3.0%、Fe:0〜10.0%、V:0〜1.2%、Hf:0〜1.0%、B:0〜0.300%、Zr:0〜0.300%を含み、残部がNiおよび不純物からなる組成を有することが好ましい。
以下、本発明のNi基超耐熱合金の一形態として好ましい組成の各成分について説明する(成分組成の単位は「質量%」である)。
炭素(C)
Cは、従来、Ni基超耐熱合金の鋳造性を高める元素として含有するものである。そして、特に、γ’相の量の多いNi基超耐熱合金は、塑性加工が困難であるため、通常、鋳造部品として使用され、一定量のCが添加されている。この添加されたCは、鋳造組織中に炭化物として残り、一部は粗大な共晶炭化物として形成される。そして、このような粗大な炭化物は、Ni基超耐熱合金を塑性加工したときに、特に、室温で塑性加工したときに、き裂の起点およびき裂の進展経路となり、Ni基超耐熱合金の塑性加工性に悪影響を及ぼす。
したがって、γ’相の量の多いNi基超耐熱合金を、鋳造部品としてではなく、塑性加工性に優れたNi基超耐熱合金材として提供することを目的とした場合、そのNi基超耐熱合金中のCの低減は大変に重要である。そして、この一方で、本発明のNi基超耐熱合金溶接材を製造するための方法では、その断面組織中に「ナノ結晶粒」を有することで、冷間塑性加工性を飛躍的に改善しているので、例えば、鋳造部品における含有量と同程度のC含有量を許容することができる。本発明の場合、Cの含有量は0.25%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.1%以下、0.03%以下の順とすることである。さらに好ましくは0.025%以下、さらにより好ましくは0.02%以下である。特に好ましくは0.02%未満である。
本発明のNi基超耐熱合金溶接材にとって、Cは規制元素であり、より低く管理されることが好ましい。そして、Cを無添加(不可避不純物レベル)としても良い場合は、Cの下限を0質量%とできる。通常、C無添加のNi基超耐熱合金であっても、その成分組成を分析したときには、例えば、0.001%程度のC含有量が認められ得る。
一方、溶接割れの抑制、溶接材と母材との物性バランスの観点から、溶接する相手材(母材)のC量に合わせて溶接材のC量を調整することもできる。例えば、0.1〜0.2%の母材のC量に合わせて、溶接材のC量を0.1〜0.2%にすることもできる。また、溶接材の加工性を優先して、溶接材のC量を母材のC量よりも少なくすることもできるし、溶接割れの抑制の観点から母材よりもC量を多くすることもできる。
クロム(Cr)
Crは、耐酸化性、耐食性を向上させる元素である。しかし、Crを過剰に含有すると、σ(シグマ)相などの脆化相を形成し、強度や素材準備の際の熱間加工性を低下させる。したがって、Crは、例えば、8.0〜25.0%とすることが好ましい。より好ましくは8.0〜22.0%である。好ましい下限は9.0%であり、より好ましくは9.5%である。さらに好ましくは10.0%である。また、好ましい上限は18.0%であり、より好ましくは16.0%である。さらに好ましくは14.0%である。特に好ましくは12.5%である。
モリブデン(Mo)
Moは、マトリックスの固溶強化に寄与し、高温強度を向上させる効果がある。しかし、Moが過剰になると金属間化合物相が形成されて高温強度を損なう。よって、Moは、0〜8%とすることが好ましい(無添加(不可避不純物レベル)でもよい)。より好ましくは、2.0〜7.0%である。さらに好ましい下限は2.5%であり、より好ましくは3.0%である。さらに好ましくは3.5%である。また、さらに好ましい上限は6.0%であり、より好ましくは5.0%である。
アルミニウム(Al)
Alは、強化相であるγ’(NiAl)相を形成し、高温強度を向上させる元素である。しかし、過度の添加は素材準備の際の熱間加工性を低下させ、加工中の割れなどの材料欠陥の原因となる。よって、Alは、0.5〜8.0%が好ましい。より好ましくは2.0〜8.0%である。さらに好ましい下限は2.5%であり、より好ましくは3.0%である。さらに好ましくは4.0%であり、よりさらに好ましくは4.5%である。特に好ましくは5.1%である。また、さらに好ましい上限は7.5%であり、より好ましくは7.0%である。さらに好ましくは6.5%である。
なお、上述したCrとの関係で、素材準備の際の熱間加工性を確保するために、Crの含有量を低減したときには、その低減分のAlの含有量を許容することができる。そして、例えば、Crの上限を13.5%にしたときに、Alの含有量の下限を3.5%とすることが好ましい。
チタン(Ti)
Tiは、Alと同様、γ’相を形成し、γ’相を固溶強化して高温強度を高める元素である。しかし、過度の添加は、γ’相が高温で不安定となって高温での粗大化を招くとともに、有害なη(イータ)相を形成し、素材準備の際の熱間加工性を損なう。よって、Tiは、例えば、0.4〜7.0%が好ましい。他のγ’生成元素やNiマトリックスとのバランスを考慮すると、Tiの好ましい下限は0.6%であり、より好ましくは0.7%である。さらに好ましくは0.8%である。また、好ましい上限は6.5%であり、より好ましくは6.0%である。さらに好ましくは4.0%であり、特に好ましくは2.0%である。
以下、本発明のNi基超耐熱合金溶接材に添加可能な任意成分について説明する。
コバルト(Co)
Coは、組織の安定性を改善し、強化元素であるTiを多く含有しても素材準備の際の熱間加工性を維持することを可能とする。一方で、Coは高価なものであるため、コストが上昇する。よって、Coは、他元素との組み合わせにより、例えば、28.0%以下の範囲で含有することができる任意元素の一つである。Coを添加する場合の好ましい下限は8.0%とすると良い。より好ましくは10.0%である。また、Coの好ましい上限は18.0%とする。より好ましくは16.0%である。なお、γ’生成元素やNiマトリックスとのバランスにより、Coを無添加レベル(原料の不可避不純物レベル)としても良い場合は、Coの下限を0%とする。
タングステン(W)
Wは、Moと同様、マトリックスの固溶強化に寄与する選択元素の一つである。しかし、Wが過剰となると有害な金属間化合物相が形成されて高温強度を損なうため、例えば、上限を6.0%とする。好ましい上限は5.5%であり、より好ましくは5.0%である。上記のWの効果をより確実に発揮させるには、Wの下限を1.0%とすると良い。また、WとMoとを複合添加することにより、より固溶強化効果が発揮できる。複合添加の場合のWは0.8%以上の添加が好ましい。なお、Moの十分な添加により、Wを無添加レベル(原料の不可避不純物レベル)としても良い場合は、Wの下限を0%とする。
ニオブ(Nb)
Nbは、AlやTiと同様、γ’相を形成し、γ’相を固溶強化して高温強度を高める選択元素の一つである。しかし、Nbの過度の添加は有害なδ(デルタ)相を形成し、素材準備の際の熱間加工性を損なう。よって、Nbの上限は、例えば、4.0%とする。好ましい上限は3.5%であり、より好ましくは2.5%である。なお、上記のNbの効果をより確実に発揮させるには、Nbの下限を1.0%とすると良い。好ましくは2.0%とすると良い。他のγ’生成元素の添加により、Nbを無添加レベル(不可避不純物レベル)としてもよい場合は、Nbの下限を0%とする。
タンタル(Ta)
Taは、AlやTiと同様、γ’相を形成し、γ’相を固溶強化して高温強度を高める選択元素の一つである。ただし、Taの過度の添加は、γ’相が高温で不安定となって高温での粗大化を招くとともに、有害なη(イータ)相を形成し、素材準備の際の熱間加工性を損なう。よって、Taは、例えば、3.0%以下とする。好ましくは2.5%以下である。なお、上記のTaの効果をより確実に発揮させるには、Taの下限を0.3%とすると良い。TiやNbなどのγ’生成元素添加やマトリックスとのバランスにより、Taは無添加レベル(不可避不純物レベル)としても良い場合は、Taの下限を0%とする。
鉄(Fe)
Feは、高価なNi、Coの代替として用いる選択元素の一つであり、合金コストの低減に有効である。この効果を得るには、他元素との組み合わせで添加するかどうかを決定すると良い。ただし、Feを過剰に含有するとσ(シグマ)相などの脆化相を形成し、強度や素材準備の際の熱間加工性を低下させる。よって、Feの上限は、例えば、10.0%とする。好ましい上限は9.0%であり、より好ましくは8.0%である。一方、γ’生成元素やNiマトリックスとのバランスにより、Feを無添加レベル(不可避不純物レベル)としてもよい場合は、Feの下限を0%とする。
バナジウム(V)
Vは、マトリックスの固溶強化、炭化物生成による粒界強化に有用な選択元素の一つである。ただし、Vの過度の添加は製造過程の高温不安定相の生成を招き、製造性および高温力学性能に悪影響を招く。よって、Vの上限は、例えば、1.2%とする。好ましい上限は1.0%であり、より好ましくは0.8%である。なお、上記のVの効果をより確実に発揮させるには、Vの下限を0.5%とすると良い。合金中の他合金元素とのバランスにより、Vを無添加レベル(不可避不純物レベル)としても良い場合は、Vの下限を0%とする。
ハフニウム(Hf)
Hfは、合金の耐酸化性向上、炭化物生成による粒界強化に有用な選択元素の一つである。ただし、Hfの過度の添加は、製造過程の酸化物生成、高温不安定相の生成を招き、製造性および高温力学性能に悪影響を招く。よって、Hfの上限は、例えば、1.0%とする。なお、上記のHfの効果をより確実に発揮させるには、Hfの下限を0.1%とすると良い。合金中の他合金元素とのバランスにより、Hfが無添加レベル(不可避不純物レベル)としても良い場合は、Hfの下限を0%とする。
ホウ素(B)
Bは、粒界強度を向上させ、クリープ強度、延性を改善する元素である。一方で、Bは融点を低下させる効果が大きいこと、また、粗大なホウ化物が形成されると素材準備の際の熱間加工性が阻害されることから、例えば、0.300%を超えないように制御すると良い。好ましい上限は0.200%であり、より好ましくは0.100%である。さらに好ましくは0.050%であり、特に好ましくは0.020%である。なお、上記の効果を得るには最低0.001%の含有が好ましい。より好ましい下限は0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。特に好ましくは0.010%である。合金中の他合金元素とのバランスにより、Bが無添加レベル(不可避不純物レベル)としても良い場合は、Bの下限を0%とする。
ジルコニウム(Zr)
Zrは、Bと同様、粒界強度を向上させる効果を有している。一方で、Zrが過剰となると、やはり融点の低下を招き、高温強度や素材準備の際の熱間加工性が阻害される。よって、Zrの上限は、例えば、0.300%とする。好ましい上限は0.250%であり、より好ましくは0.200%である。さらに好ましくは0.100%であり、特に好ましくは0.050%である。なお、上記の効果を得るには最低0.001%の含有が好ましい。より好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。合金中の他合金元素とのバランスにより、Zrが無添加レベル(不可避不純物レベル)としても良い場合は、Zrの下限を0%とする。
以上に説明した元素以外の残部はNiであるが、不可避的不純物を含んでもよい。ただし、溶接材準備工程および溶接工程において混入するガス元素である酸素は酸化物を形成し、溶接性を阻害する。また、多層溶接する場合には、下層の表面に酸化物が溶接スラグとして存在すると、その上に溶接する際の溶接性を阻害する可能性がある。したがって、溶接材および溶接後の状態においてO(酸素)量は制限する必要がある。かかる観点から、溶接材においては、O量は0.002%以下に規定する。O量は、より好ましくは0.0015%以下、さらに好ましくは0.001%以下である。また、溶接後のO量等の増加も抑制することが好ましい。Nは、固溶強化元素であるが、これが多すぎると脆化しやすくなるため、例えば、0.02%以下であることが好ましく、0.0001〜0.005%がより好ましい。溶接材として粉末材ではなく線材を使うことで、これらのガス元素の含有量を低減できる。
また、不可避的不純物のうち、例えば、Siは溶接時の脱酸の効果が期待できる一方で、Si、S、Pは溶接のわれ感受性を高めるため、制限することが好ましい。Siは0.1%以下が好ましく、0.02%以下がより好ましい。SおよびPはそれぞれ0.03%以下が好ましく、0.005%以下がより好ましい。
本発明のNi基超耐熱合金溶接材を製造するための方法においては、その断面組織中に最大径が75nm以下の「ナノ結晶粒」を有することによって、冷間での塑性加工性が飛躍的に向上する。このメカニズムはまだ十分に解明できていない。しかし、上述したようにγ相とγ’相との相界面が、ナノ結晶粒の生成に寄与しているものと思われる。そして、この生成されたナノ結晶粒は、塑性加工率の上昇とともにその数が増加し、かつ、これが粒界滑りを生じたり結晶回転したりすることによってNi基超耐熱合金の塑性変形を実現し、従来の転位の発生と増殖とによる結晶のすべりによる塑性変形とは、その変形のメカニズムが異なる可能性がある。この可能性を示唆する一つの事実として、Ni基超耐熱合金に後述する冷間での塑性加工を行ったとき、ナノ結晶粒が一旦生成し始めると、更に塑性加工を行うことで(塑性加工率を増加させることで)、ナノ結晶粒の数が増えていくが、合金の硬さは塑性加工率の増加によらず(若干増大する場合も含み)“ほぼ一定”(例えば、上記のγ’モル率が35モル%以上のNi基超耐熱合金の場合で500HV以上)であることを、本発明者は確認している。この現象は、塑性加工による転位密度の上昇が生じていないことを示唆する。
このように塑性加工性の向上に寄与するナノ結晶粒の大きさは、Ni基超耐熱合金の断面組織において、「最大径が75nm以下」のものである。そして、この最大径が75nm以下という結晶粒のサイズは、従来の通常のプロセスにおいて見られる結晶粒のサイズと区別できるものである。このとき、上記の断面組織は、例えば線材の場合、長手方向に半割したときの断面(つまり、線材の中心軸を含む断面)から採取すればよい。そして、この断面において、例えば、線材の表面の位置、線材の表面から中心軸に向かって1/4D入った位置(Dは線径である)、および、線材の中心軸の位置の、それぞれの断面から採取すればよい。そして、これらそれぞれの断面の一つ、または二つ以上の断面組織に、上記のナノ結晶粒が存在していることを確認すればよい。
なお、線材以外の形状でも、上記と同様に、長手方向に半割したときの断面を観察すればよい。
上記の通り本発明のNi基超耐熱合金溶接材を製造するための方法においては、断面組織中に「最大径が75nm以下」のナノ結晶粒を有する。この断面組織中の最大径が75nm以下のナノ結晶粒は、断面組織1μmあたり5個以上存在することが好ましい。ナノ結晶粒が増えることで、塑性変形の役割を果たす媒体が増えて、塑性加工性がさらに向上する。さらには好ましくは、最大径が75nm以下の結晶粒が、断面組織1μmあたり10個以上、より好ましくは50個以上、さらに好ましくは100個以上存在することである。そして、200個以上、300個以上の順番で、よりさらに好ましい。上記のナノ結晶粒の個数密度は、観察した全ての断面組織で確認されたナノ結晶粒の総個数を、観察した全ての視野面積で割って、平均して求めればよい。
なお、断面組織中の最大径が75nm以下のナノ結晶粒について、その最大径の下限は特に設定する必要がない。そして、断面組織中の最大径が75nm以下のナノ結晶粒の有無や個数は、例えば、EBSD像によって確認することができる。そして、EBSDの測定条件を、スキャンステップ:0.01μmとし、結晶粒の定義を方位差15°以上の粒界としたときに認識できる結晶粒のうちから、最大径が75nm以下のナノ結晶粒を抽出して数えることができる。そして、一例として、最大径が約25nm以上のナノ結晶粒の有無および個数を確認することができる。
このようなNi基超耐熱合金は、500HV以上の硬さを有することが好ましい。
上記の冷間塑性加工による強い塑性変形によって、溶接材中には炭化物の集合的な流れが形成され、その結果、長手方向(塑性加工の展伸方向)に沿った断面の組織観察において長手方向に連なった炭化物群を有する溶接材が得られる。大きな炭化物は塑性加工によって破砕されるため、破砕されて細かくなった炭化物は塑性加工の展伸方向に連なるようになる。換言すれば、溶接材が長手方向に連なった炭化物群を有するということは、塑性加工によって得られた、コスト的に有利な溶接材であることを意味する。上述の冷間塑性加工によって得られた溶接材は、γ’相が長手方向に沿って展伸された組織、すなわちγ’相の集合的な流れも有する。上記炭化物群やγ’相の集合的な流れの有無は、例えば、0.5mm以上の視野面積で確認すればよい。
次に、本発明のNi基超耐熱合金溶接材を得る製造方法を説明する。この製造方法は、上記成分組成を有するNi基超耐熱合金の素材(raw material)を準備する準備工程と、この素材に500℃以下の温度で、累積の加工率が30%以上となるように複数回の塑性加工を行なう加工工程とを含む。この圧縮加工の「加工率」を高くすることで、Ni基超耐熱合金材の組織中に「ナノ結晶粒」を形成させることができることを突きとめた。
この製造方法を説明する。
Ni基超耐熱合金の素材は、溶湯を鋳型に注湯して鋳塊を作製する溶製法によって得られたものであってもよい。そして、鋳塊の製造には、例えば、真空溶解と、真空アーク再溶解やエレクトロスラグ再溶解等の常法を、組み合わせる等して適用すればよい。また、素材は、粉末冶金法によって得られたものであってもよい。そして、上記の鋳塊や、粉末冶金法で作製された合金塊に対して、必要に応じて、熱間加工や機械加工を施して、所定の形状、例えば、ビレット(billet)や棒材(bar material)の形状の素材に仕上げればよい。
次に、500℃以下の温度で累積加工率が30%以上の塑性加工を行う。従来の「熱間による」塑性加工によるものとは異なり、「冷間による」塑性加工によって、Ni基超耐熱合金の組織中にナノ結晶粒を生成でき、かつ、塑性加工性に優れたNi基超耐熱合金を得られるものである。この達成のために、上記の冷間による塑性加工は、その塑性加工中に回復や再結晶が発生できない低い温度領域であることが必要である。したがって、塑性加工中に熱処理を行わないことが好ましい。ここでいう熱処理とは、回復や再結晶が発生するような高い温度領域での熱処理のことであり、例えば、500℃を超える温度に加熱する熱処理である。
上記の塑性加工温度は、「500℃以下」とすることが重要である。好ましくは300℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは50℃以下(例えば、室温)である。
以上に説明したNi基超耐熱合金溶接材の製造は、線材形態に適用できることは明らかである。
とりわけNi基超耐熱合金の素材が棒材の場合、上記のナノ結晶粒を形成させるためには、棒材の場合は断面積を圧縮する棒材加工を行なうことができる。この場合、Ni基超耐熱合金の「棒材」を出発材料として、この棒材に行う塑性加工の様態として、棒材中に均一に圧力を付与することができる「棒材の長手方向に垂直な断面の断面積を圧縮する加工」を施すことが好ましい。そして、この棒材の素材に、断面積(棒径)を塑性的に圧縮して、長さを伸ばしていく加工を行う。特に、Ni基超耐熱合金の線材を得る場合、線材よりも断面積(直径)が大きい「棒材」を塑性加工して作製することが効率的である。棒材の周面から軸心に向けて、500℃以下の温度で累積加工率が30%以上の塑性加工を行って、棒材の断面積を圧縮する。このような加工として、スエジング、カセットローラダイス伸線、孔型ダイス伸線などがある。
本発明のNi基超耐熱合金溶接材を得るための製造方法では、ナノ結晶粒の形成のためには、上記の塑性加工の累積加工率を「30%以上」に高くする。累積加工率は、40%以上が好ましく、これは、上記のナノ結晶粒の断面組織1μmあたりの個数を、例えば、10個以上生成させるのに好ましい。
そして、累積加工率は60%以上が更に好ましく、これは上記のナノ結晶粒の個数を、例えば50個以上生成させるのに好ましい。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であり、これは上記のナノ結晶粒の個数を、例えば100個以上生成させるのに好ましい。よりさらに好ましくは90%以上、特に好ましくは97%以上であり、これらの累積加工率は上記のナノ結晶粒の個数を、例えば、順に、200個以上、300個以上生成させるのに好ましい。
ここで、加工率とは、棒材をスエジングやダイス伸線を行なう場合には、減面率により表す。減面率は、塑性加工前の棒材の断面積Aと、塑性加工後の線材の断面積Aとの関係で、
[(A−A)/A]×100(%) (1)
の式で算出される。
累積加工率とは塑性加工を複数回、あるいは複数パスにわたって行なった場合の、最終加工物の素材に対する加工率を示す。
組織中にナノ結晶粒が生成されるメカニズムは、まだ完全に解明できていない。しかし、ナノ結晶粒が十分に生成されるためには、上記の加工率が最低でも30%程度必要であることを実験的に確認した(実施例参照)。つまり、上記のNi基超耐熱合金の棒材に冷間による塑性加工を行って、その累積の加工率が約30%に到達したときに、ナノ結晶粒が、最初に、γ相とγ’相との相界面に優先的に生成されることを観察した。そして、このナノ結晶粒が一旦生成したNi基超耐熱合金(例えば、棒材(線材))に、さらに冷間による塑性加工を加えていくと、ナノ結晶粒の数が増加し、このナノ結晶粒の増加が、Ni基超耐熱合金(例えば、棒材(線材))の塑性加工性をさらに向上させる。そして、この塑性加工の繰り返しによって(累積の加工率の増加によって)、Ni基超耐熱合金(例えば、棒材(線材))の塑性加工性は益々向上して、塑性加工の途中に熱処理を行わずに、冷間で累積の加工率が97%以上にも及ぶ塑性加工が可能であったという、「室温超塑性的な」塑性加工の現象を確認した。
上記の「30%以上」の加工率の塑性加工は、一回の塑性加工で完了するのではなくて、組織中にナノ結晶粒が形成されるまでの間において、例えば、合金に割れや疵等が発生することを抑制するために、複数回の塑性加工に分けて完了することがよい。30%以上の加工率による「大きなひずみ」を、複数回の塑性加工に分けて素材に付与することで、そのひずみが素材中に適度に分散して、上述したナノ結晶粒の粒界滑りや結晶回転を素材中で均一に生じさせるのに効果的である。その結果、素材中にナノ結晶粒を均一かつ均等に形成させることができるとともに、その塑性加工中の割れや疵等の発生も抑制することができる。複数回の塑性加工に分けるときは、その各々の塑性加工間に熱処理を行う必要はない。そして、上記の30%以上の加工率の上限は、特に設定する必要がなく、例えば、中間製品や最終製品の形状等に応じて、適宜、設定すればよい。そして、後述する合金材料を準備するのであれば、その仕様等に応じて、例えば、50%、45%、40%、35%といった数値を設定することができる。
また、複数回の塑性加工に分ける場合、ある任意の塑性加工(パス)における加工率(減面率)を、その前の回の塑性加工(パス)における加工率(減面率)よりも大きくして、加工効率を上げることも可能である。各塑性加工(パス)毎に加工率(減面率)を大きくしてもよい。
上述の冷間加工における「パス」については、上述したスエジングやダイス伸線といった種類の塑性加工において、一つの(または、一対でなる)ダイスによって塑性加工されたときを「1パス」と数えることができる。
とりわけNi基超耐熱合金の素材が棒材の場合、ナノ結晶粒の形成のためには、上記の塑性加工で、棒材中に均一かつ均等に圧力を付与することが重要と思われる。そして、このためには、棒材の周面から軸心に向けて、棒材の断面積を圧縮するような塑性加工が効果的である。このとき、塑性加工方式を限定する必要はない。但し、塑性加工される棒材の全周に均等に圧力を加える塑性加工方式が有利である。この具体例として、スエジング加工が挙げられる。スエジング加工は、棒材の全周を囲む複数のダイスを回転させながら、棒材の周面を鍛造するので、ナノ結晶粒の生成に好ましい。その他、カセットローラダイス伸線、孔型ダイス伸線などその他の塑性加工も適用可能である。
本発明の場合、上記の塑性加工を行う前の素材(例えば棒材)を、γ’固溶温度(ソルバス温度)Ts以上の温度Thに加熱保持して冷却する熱処理を行ってもよい。この熱処理を行うことにより、素材の組織中にγ’相を均一に再析出させることができる。このことによって、塑性加工後の組織中にナノ結晶粒が形成されやすくなる。これは、Ni基超耐熱合金が有するγ相とγ’相との相界面が均一になることで、ナノ結晶粒の形成が促されるものと考えられる。
上記の加熱保持温度Thは、ソルバス温度Tsよりも10℃以上高い温度であることが好ましい。そして、加熱保持温度Thの上限を設ける必要はない。加熱保持温度Thは、理論上、Ni基超耐熱合金の素材が溶融し始める温度(固相線温度)未満となる。また、上記の加熱保持温度Thに達してからの棒材の保持時間は、2時間以上とすることが好ましい。そして、10時間以下が現実的である。好ましくは、7時間以下である。より好ましくは、4時間以下である。これにより、成分組成の均一化にも効果(ソーキング効果)がある。
他の具体例に、上記成分組成を有するNi基超耐熱合金を製造する方法が提供される。この方法は、硬さが500HV以上であり断面組織中に最大径が75nm以下の結晶粒を有する合金材料(alloy material)を準備する準備工程と、前記素材に500℃以下の温度で塑性加工を行なって、硬さが500HV以上の合金を得る加工工程とを含む。ここで、加工の出発材料である合金材料は、上記に説明したNi基超耐熱合金であり、例えば、上記に説明した線材である。本発明においては、上記の硬さが500HV以上であり断面組織中に最大径が75nm以下の結晶粒を有するNi基超耐熱合金に、500℃以下の温度での塑性加工を繰り返したときに、その途中毎に断面組織中のナノ結晶粒が増えて行き(形成され続ける)、塑性加工性が維持される現象を見出した。その際、合金の硬さは、500HV以上を維持するか、或いは若干増加する。これによって、「断面組織中にナノ結晶粒を有した」Ni基超耐熱合金は、初期の塑性加工性に優れて、かつ、その優れた塑性加工性が、続く塑性加工でも維持されていく。そして、全ての塑性加工が完了したNi基超耐熱合金もまた、断面組織中にナノ結晶粒を有しており、これを最終製品形状の細線とすることが可能である。
塑性加工後のNi基超耐熱合金は、γ相とγ’相とが延伸方向に延びた線状組織になる。かかる組織を有し、上述のように500HV以上の硬さを有するNi基超耐熱合金は、剛性を確保する観点から好ましい。一方、所定の寸法、形状に塑性加工した後、最終製品として供給するときに、必要に応じて、熱処理を施すことにより所望の等軸結晶組織にすることができる。かかる熱処理の温度は、例えば再結晶温度(あるいは、500℃を超える温度)である。この熱処理によって、例えば、硬さを500HV未満に調整することが可能であり、最終製品を輸送形態や使用形態に見合った形態に曲げたり、コイル状にしたり、切断したりするのが容易になる。
上述の製造方法により、例えば冷間塑性加工のみによって縮径し、中間製品形状のものから、最終製品形状の細線までの様々な形態のNi基超耐熱合金を提供することもできる。
次に、Ni基超耐熱合金溶接材の使用方法について説明する。
溶接材は、例えば、航空機エンジンや発電用のガスタービンに用いられるブレード等の耐熱部品の摩耗、欠損、欠陥等に対する補修、耐熱部品の特定の部位に対する肉盛、耐熱部品を構成する複数の部材の接合等に用いることができる。溶接材の材質はその目的・用途に応じて選定すればよい。例えば、不可避的不純物以外の成分元素(主成分元素)を溶接する相手材(母材ともいう)のそれと合わせる態様、700℃におけるガンマプライム相の平衡析出量の差が母材の平衡析出量に対して5%以内にする態様、これらの態様を組み合わせた態様などを、適宜用いることができる。例えば、補修の場合は、溶接材の組成が、母材の組成と実質的に同一(例えば、不可避的不純物元素以外の各元素の含有量の母材との差が母材の含有量に対して5%以内)であることが好ましい。
母材とは異なる材質・組成の材料を溶接材として用いることで、溶接部分と母材との性状・特性を調整することも可能である。例えば、溶接性を優先して、ガンマプライム相の平衡析出量が母材よりも少ない溶接材を用いることもできる。一方、溶接部分の高温強度が母材の高温強度よりも高くなることを期待して溶接材のガンマプライム相の平衡析出量を母材のそれよりも高くなるような組成を選定してもよい。溶接部分の硬さを母材のそれよりも高くすることもできるし、溶接部分の耐酸化性を母材のそれよりも高くすることもできる。
母材は、析出硬化型Ni基超耐熱合金の他、固溶強化型Ni基超耐熱合金であってもよい。また、母材は、粉末冶金合金、普通鋳造合金、一方向凝固合金、単結晶合金、鍛造合金、のいずれでもよい。
溶接材の使用時は、溶接材として単独の材質を使用してもよいし、複数の異なる材質を一緒に使用してもよい。溶接材の機能・特性を調整するために、表面に被覆層を設けることも可能である。例えば、溶接材をフラックス材で被覆するなどして、溶接材とともにフラックス材を用いることもできる。
溶接材は、上述の冷間塑性加工をしたままの状態(上述の熱処理を施した状態も含む)、またはそれに切削、研削、研摩等の加工を施した状態のいずれの状態で用いてもよい。冷間塑性加工をしたままの状態では、表面は酸化層が形成されている状態になりうる。要求される仕様に対して酸化層が少なければ、酸化層を有する状態で溶接材を使用することができる。ただし、酸化層は溶接性を阻害するので、酸化層は少ないことが好ましい。かかる観点からは、冷間塑性加工後の表面の酸化層を研削等の加工によって除去した溶接材を用いることが好ましい。かかる加工の方法としては、例えばセンタレス加工を用いることができる。
加工後の溶接材の線径(直径)は、例えば、5mm以下、4mm以下、3mm以下といったものから、果ては2mm以下、1mm以下といった更に細いものである。一方、線状の溶接材としての剛性を確保する観点からは、線径(直径)が0.5mm以上であることが好ましい。そして、線状の溶接材として提供される細線の長さは、上記の線径に対して、例えば、50倍以上、100倍以上、300倍以上といった更に長いものである。
溶接方法はこれを特に限定するものではないが、例えば析出硬化型Ni基超耐熱合金はAl,Ti等の、酸素との親和性が高い元素を多く含むため、酸化を生じにくいTIG溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接などを用いることが好ましい。シールドガスにはアルゴン、アルゴンとヘリウムの混合ガスなどが用いられるため、溶接中のAl,Ti等の消耗、酸素の増加が抑えられ、溶接材からの溶接部分の組成変動を抑制することができる。溶接材は、直線状のまま溶接装置に供給されてもよいし、コイルから巻き出して供給されてもよい。
ガンマプライム相の平衡析出量が大きい析出硬化型Ni基超耐熱合金に溶接を行う場合、ガンマプライム相が析出した状態では溶接が困難である。そのため、例えば、溶接する母材に対して溶体化処理を行い、γ’相をγ相に固溶させた後に溶接することが行われる。上述の溶接材もガンマプライム相の平衡析出量が大きい析出硬化型Ni基超耐熱合金であるため、かかる溶接材自体にも溶体化処理を行い、γ’相をγ相に固溶させた形態で溶接に供してもよい。また、溶体化処理温度、冷却速度等を制御することで、析出したγ’相を大きくして、溶接性を調整することもできる。上述の硬さを調整する熱処理がこの溶体化処理を兼ねてもよい。母材と溶接材とで析出しているγ’相の量や大きさの相対関係を調整することもできる。溶接部分は熱容量が小さく、冷却速度が大きくなるため、かかる点が組織へ与える影響を考慮して溶接材や溶接の条件を設定することが好ましい。上述した、冷間塑性加工後の熱処理によって、γ’相の析出状態も調整することもできる。また、溶接性を高めるために、溶接の際に母材を加熱することもできる。
溶接後、溶接歪の開放、溶接で析出したγ’相の固溶等の目的で溶体化処理が行われる。さらに、γ’相を析出させて所定の特性を発現させるため、時効処理などの熱処理が行われる。例えば、ガンマプライム相の平衡析出量が母材と同等の溶接材、または母材と実質的に同じ材質・組成の溶接材を用いることで、溶接後の母材と溶接部分とで、γ’相の大きさや析出量などのミクロ組織的特徴を近似したものにしてもよい。
真空溶解によって準備した溶湯を鋳造して、直径100mm、質量10kgの円柱状のNi基超耐熱合金Aのインゴットを作製した。Ni基超耐熱合金Aの成分組成を表1に示す。表1には、上記のインゴットの「γ’モル率」および「γ’固溶温度(ソルバス温度)Ts」も示す。これらの値は、市販の熱力学平衡計算ソフト「JMatPro(Version 8.0.1,Sente Software Ltd.社製品)」を用いて計算した。この熱力学平衡計算ソフトに、表1に列挙された各元素の含有量を入力して、上記の「γ’モル率」および「γ’固溶温度Ts」を求めた。このNi基超耐熱合金Aのインゴットに保持温度Th:1200℃、保持時間:8時間の熱処理を施し、炉冷してから、このインゴットの長さ方向に平行方向に直径6.0mm、長さ60mmの棒材を採取して、この棒材を塑性加工のための素材とした。この棒材の硬さは320HVであった。この棒材に、室温(25℃)で、加工率が31%の「スエジング加工1」(表2の合金1−2に記載のもの)を行って、本発明例1のNi基超耐熱合金の線材(溶接材)[線径5.0mm]を作製した。本発明例1のNi基超耐熱合金の線材は、良好な表面状態を保って作製することができた。そして、本発明例1のNi基超耐熱合金の線材の硬さは、595HVであった。なお、加工率は、上記で説明した式(1)により求めた。
図1は、本発明例である合金No.1−2の線材の断面ミクロ組織のEBSD像を示したものである。この断面ミクロ組織は、線材の長手方向に半割した断面において、線材の表面から中心軸に向かって1/4D入った位置(位置A)の断面から採取した組織である(Dは線材の線径を示す)。そして、EBSDの測定条件は、走査型電子顕微鏡「ULTRA55(Zeiss社製)」に付属したEBSD測定システム「OIM Version 5.3.1(TSL Solution社製)」を使用して、倍率:10000倍、スキャンステップ:0.01μmとし、結晶粒の定義は方位差15°以上を粒界とした。このとき、EBSD像に確認されたナノ結晶粒の最大径(最大長さ)は、小さいもので約25nmであり、この値以上の最大径のナノ結晶粒の有無および個数を確認した。図1より、本発明例の合金No.1−2の線材は、その断面組織中に最大径が75nm以下のナノ結晶粒(例えば、丸囲み内にある濃色点)を有していた。合金No.1−2の線材の長手方向に半割した断面において、線材の表面の位置(位置B)の断面および線材の中心軸の位置(位置C)の断面からも組織を採取して、上記と同様のEBSDによる解析を行った。そして、位置A、B、Cからそれぞれ2ヶ所採取した計6ヶ所の断面組織について、図1と同じ視野面積(2μm×3μm)でカウントされた最大径が75nm以下のナノ結晶粒の総数を、総視野面積(6μm×6)で割って求めた、上記のナノ結晶粒の単位面積あたりの個数密度は「8個/μm」であった。
他方、合金No.1−1は、室温(25℃)でスエジング加工を行ったが、加工後の線径5.5mmであり、加工率(減面率)は16.0%であった。この断面ミクロ組織を、合金No.1−2と同じ要領で観察したところ、図6に示すとおり、最大径が75nm以下のナノ結晶粒は観察されなかった。また、硬さも480HVであった。
本発明例の合金No.1−2の線材に、室温(25℃)で、表2に示した加工率の「スエジング加工3〜10」を、順次、累積しながら行って、棒材からの累積加工率を増加させた合金No.1−3から合金No.1−10までのNi基超耐熱合金の線材(溶接材)をそれぞれ作製した。なお、各スエジング加工どうしの間で熱処理は行っていない。合金No.1−3から合金No.1−10までの線材も、何れも良好な表面状態を保って作製することができた。そして、これらの線材も、その断面組織中に最大径が75nm以下のナノ結晶粒を有していた(図中では黒色の粒として見える)。図2〜図5は、本発明例の合金No.1−4、No.1−5、No.1−7、No.1−9の断面ミクロ組織のEBSD像を、それぞれの順番で示したものである。この断面ミクロ組織の採取位置および、EBSDの測定条件は、図1と同じ要領である。そして、これらの線材について、合金No.1−1と同じ要領で、その断面組織中にある75nm以下のナノ結晶粒の単位面積あたりの個数密度を測定した。また、線材の硬さも測定した。これら測定結果を、本発明例1のものと併せて、表2に示す
表2の結果より、ナノ結晶粒が一旦生成したNi基超耐熱合金に、さらに冷間による塑性加工を加えていくことで、ナノ結晶粒の数が増加することがわかる。しかし、ナノ結晶粒の数が増えていく一方で、Ni基超耐熱合金の硬さは塑性加工率の増加によらず、ほぼ一定であった。このため、スエジング加工により線径が1.0mmである本発明例No.1−10の線材にまで冷間で塑性加工することができた。これを合金No.1−2の線材を出発材料(つまり、硬さが500HV以上であり断面組織中に最大径が75nm以下の結晶粒を有する合金材料)とすると、この合金材料の線材からの累積加工率が96%に及び、当初の棒材素材からの累積加工率であれば97%にも及ぶ塑性加工を冷間で行うことができた。さらに、本発明例の合金No.1−10の線材は、上記の大きな累積加工率による塑性加工以降も、さらに冷間で塑性加工を行うことができる状態であった。すなわち、本発明例の加工後の合金の硬さは、加工率にかかわらずほぼ一定(595HV〜605HV)であったことから一旦、最大径が75nm以下の結晶粒が形成され、500HV以上の硬さを有する合金材料は、続けて冷間加工を行なうことが可能であることがわかる。
真空溶解によって準備した溶湯を鋳造して、直径100mm、質量10kgの円柱状のNi基超耐熱合金Bのインゴットを作製した。Ni基超耐熱合金Bの成分組成を表3に示す。表3に示す「γ’モル率」および「γ’固溶温度Ts」も、市販の熱力学平衡計算ソフト「JMatPro(Version 8.0.1,Sente Software Ltd.社製品)により計算した。このNi基超耐熱合金Bのインゴットに保持温度Th:1250℃、保持時間:8時間の熱処理を施し、炉冷してから、このインゴットの長さ方向と平行の方向に直径6.0mm、長さ60mmの棒材を採取して、この棒材を塑性加工のための素材とした。この棒材の硬さは、381HVであった。この棒材に、実施例1と同様に、順次、スエジング加工を行なって、合金No.2−1からNo.2−6までの線材を作製した。
表4の結果より、合金No.2−1の線材は、スエジング加工後の線径は5.5mmであり、加工率(減面率)は16.0%であった。この断面ミクロ組織には、最大径が75nm以下のナノ結晶粒は観察されなかった。また、硬さも494HVであった。
他方、合金No.2−2からNo.2−6までの線材(溶接材)は、加工率(減面率)は30%以上であり、いずれもその断面組織中に最大径が75nm以下のナノ結晶粒が観察され、加工率の増加に伴ってナノ結晶粒の個数密度も増大した。これらの合金の硬さはいずれも500HV以上であったが、実施例1の結果と異なり、加工率の増加に伴って硬さは僅かに増加する傾向が見られた。加工が進んだ線材では600HV以上の硬さであった。
真空溶解によって準備した溶湯を鋳造して、直径100mm、質量10kgの円柱状のNi基超耐熱合金Cのインゴットを作製した。Ni基超耐熱合金Cの成分組成を表5に示す。表5に示す「γ’モル率」および「γ’固溶温度Ts」も、市販の熱力学平衡計算ソフト「JMatPro(Version 8.0.1,Sente Software Ltd.社製品)により計算した。このNi基超耐熱合金Cのインゴットに保持温度Th:1200℃×保持時間:8hの熱処理を施し、炉冷してから、このインゴットの長さ方向と平行の方向に直径6.0mm、長さ60mmの棒材を採取して、この棒材を塑性加工のための素材とした。この棒材の硬さは、389HVであった。この棒材に、実施例1と同様に、順次スエジング加工を行なって、合金No.3−1からNo.3−10までの線材を作製した。
表6の結果より、合金No.3−1の線材は、スエジング加工後の線径は5.5mmであり、加工率(減面率)は16.0%であった。この断面ミクロ組織には、最大径が75nm以下のナノ結晶粒は観察されなかった。また、硬さも468HVであった。
合金No.3−2からNo.3−10までの線材(溶接材)は、加工率(減面率)は30%以上であり、いずれもその断面組織中に最大径が75nm以下のナノ結晶粒が観察され、加工率の増加に伴ってナノ結晶粒の個数密度も増大した。これらの合金の硬さはいずれも500HV以上であったが、実施例1と同様、加工率にかかわらず概ね一定(524HV〜542HV)であった。
実施例1の合金No.1−9の線材を出発材料にして、これに、室温(25℃)で、4パスでなる孔型ダイス伸線加工を行なって、途中、合金No.4−1、4−2、4−3の線材を経て、最終的に、合金No.4−4の線材(溶接材)を作製した。直径が1mm未満の線材まで問題なく、加工を行うことができた。なお、各パス間で熱処理は行っていない。加工率は、上記で説明した式(1)により求めた。
上記した4パス間の途中で、合金No.4−1、4−2、4−3の硬さは、順番に、593HV、602HV、598HVであった。そして、いずれの線材も、その断面組織中に最大径が75nm以下のナノ結晶粒が観察され、加工率の増加に伴ってナノ結晶粒の個数密度も増大した。そして、表7の通り、4パスのダイス伸線加工を終えて得た合金No.4−4の線材は、その断面組織中に最大径が75nm以下のナノ結晶粒が1μmあたり620個観察され、硬さは593HVであった。そして、合金No.4−1から4−4までの線材の硬さはいずれも500HV以上であり、実施例1と同様、加工率にかかわらず概ね一定(593HV〜602HV)であった。
実施例1と同様にして表8に示す組成を有するインゴットを準備し、熱間加工を経て、直径6.0mm、長さ60mmの棒材を採取して、この棒材を塑性加工のための素材とした。なお、表8には不可避不純物元素の一部の分析結果も示した。実施例1等と同様にして求めた「γ’モル率」および「γ’固溶温度Ts」はそれぞれ68.6%、1188℃であった。この棒材に、この棒材に、実施例1と同様に、順次スエジング加工を行なって、線径2.7mmのNi基超耐熱合金の線材(溶接材)を作製した(No.5−7)。
No.5−7のNi基超耐熱合金の線材は、良好な表面状態を保って作製することができた。No.5−7の線材の炭素およびガス成分元素の含有量を分析した結果を表10に示す。表8および表10の結果から明らかなように、線材の形態における酸素等のガス成分元素の含有量は、インゴットの形態における含有量と実質的な差はなく、0.002質量%以下である。特許文献2に開示されるような粉末材に比べても酸素量は大幅に低く、低酸素量の溶接材が得られていることが確認された。
線材(溶接材)における酸素量の増加が抑えられ、0.002質量%以下の酸素含有量が維持されているのは、溶接材の形態が線材であることの他に、細線化の工程が冷間塑性加工によるものであること、冷間塑性加工の途中で熱処理を行っていないこと、の寄与が大きく、かかる事情は上述の他の実施例(実施例1〜4)においても同様である。
No.5−7の線材の断面の光学顕微鏡写真(観察倍率:500倍)を図7に、走査電子顕微鏡写真(観察倍率:3000倍)を図8に示す。この断面の観察位置は、図1等の場合と同様である。図7および8に示すように、冷間塑性加工の結果、すなわち塑性加工組織として、長手方向に沿った断面の組織観察において、炭化物1が集合的な流れ2を呈しており、長手方向に紐状に連なった複数の炭化物群を有していることが確認された。また、同様に冷間塑性加工の結果、すなわち塑性加工組織として、図8には、やや暗い色調で見えるγ’相3が長手方向に沿って展伸されており、γ’相の集合的な流れも確認された。No.5−7のNi基超耐熱合金の線材の硬さも上述の実施例と同様に500HV以上であった。
以上、各実施例のNi基超耐熱合金は、塑性加工性に優れており、かかるNi基超耐熱合金を冷間で塑性加工することで、任意の線径の線材(溶接材)に加工できることを確認した。
1 炭化物
2 集合的な流れ
3 γ’相

Claims (3)

  1. 700℃におけるガンマプライム相の平衡析出量が35モル%以上の成分組成を有し、径が0.5〜5mmである線状のNi基超耐熱合金溶接材であって、
    長手方向に沿った断面の組織観察において長手方向に連なった炭化物群を有し、
    酸素含有量が0.002質量%以下であるNi基超耐熱合金溶接材。
  2. 700℃におけるガンマプライム相の平衡析出量が66モル%以上の成分組成を有する請求項1に記載されたNi基超耐熱合金溶接材。
  3. 前記Ni基超耐熱合金が500HV以上の硬さを有する、請求項1または2に記載されたNi基超耐熱合金溶接材。

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