JP6150192B2 - Ni基超耐熱合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Ni基超耐熱合金の製造方法に関するものである。
航空機エンジンや発電用ガスタービンの耐熱部材には、Al、Tiなどの合金元素を多く含む、γ’(ガンマプライム)相析出強化型のNi基超耐熱合金が利用されている。Ni基超耐熱合金は主に、Ni固溶体であるγ相(マトリックス)と、L1型の金属間化合物Ni(Al,Ti)であるγ’相(析出相)によって構成されている。エンジン効率向上のためには極力高温でタービンを運転させることが有効とされており、そのためには各タービン部材の耐用温度を高めることが必要である。Ni基超耐熱合金の耐用温度向上にはγ’相の量を高めることが有効であるため、高強度が求められる部材には、γ’相の析出量が多い合金が用いられる。加えて回転部品などで使用されるタービン部材には高い疲労強度が求められることが多く、この場合には、合金を溶解して凝固させた状態である鋳造組織に対して、更に熱間加工を付与することで再結晶を促進させ、マトリックス(基地)の結晶粒径を均質かつ微細な状態とした再結晶組織とすることで、はじめて実際の使用環境に耐えうるものとなる。
一方、Ni基超耐熱合金を所定の形状まで熱間加工する観点からすると、γ’相の量には制限がある。強化相であるγ’相の量が過多になると変形抵抗の高まりとともに熱間延性が低下し、熱間加工工程において材料割れの感受性が高まるためである。従って、Al、Tiなどの強化に寄与する成分の添加量は、熱間加工によらない鋳造合金に比べて限定されるのが一般的である。
実際に疲労強度が重視されるタービン部材の代表としては、タービンディスクやタービンケース、シャフトなどが挙げられる。これらはいずれも製品寸法が大きいあるいは長い部材であるために、これらの素材を高効率で且つ歩留り良く製造するには、製品の形状に応じて、高速鍛造機やリング圧延機などに代表される高速熱間加工機を適用して熱間加工を施すことが望ましいとされる。これらの高速熱間加工機は、同じく工業的に用いられる自由鍛造プレス機に比べて、少ない加熱回数で、且つ短い加工時間にて熱間加工がなされるために、高効率で所定の形状を得ることが出来るためである。
一方で、このような高速熱間加工機を使用した場合、一定の加工量をより短い加工時間で付与することとなり、結果として材料変形時の歪み速度が高まる。熱間加工における歪み速度の高まりは、Ni基超耐熱合金の変形抵抗を高めるので熱間延性が著しく低下する。高速鍛造機やリング圧延機を用いると自由鍛造プレス機を用いた場合と比べて、3倍以上の高い歪み速度のもとで熱間加工がなされる。
金属材料を高温域で熱間加工する際は、歪み速度の大小によって、変形抵抗や熱間加工性が異なり、歪み速度が速いと変形抵抗が増し、熱間延性は低下する傾向にある。これは歪み速度が速いほど、熱活性化過程である回復が生じず、加工中に高まる転位密度によって加工硬化が著しくなっていくためである。更にγ’相が多い合金を高い歪み速度で加工した場合、γ’相が転位の移動を阻害するので、更に大きな加工硬化を示す。従って、γ’相析出型の超耐熱合金はγ’相が多いほど、高歪み速度下で熱間延性が低下する。
このような事情から、高速熱間加工機やリング圧延機を用いてγ’相の多い合金を熱間加工を施すことは、自由鍛造プレス機を用いた場合よりも材料割れの感受性が高まり、加工が困難となる。実際に、高速熱間加工機やリング圧延機が適用可能とされる超耐熱合金は、自由鍛造プレスに比べて種類が限定される。
実際の鍛造や圧延といった熱間加工工程においては、熱間加工機周辺に特別な保熱機構を付与していない限り、被熱間加工材の表面が接触している外気あるいは金型やロールに向かって抜熱が生じるので、熱間加工時間の増加と共に表面温度は低下する。
Ni基超耐熱合金について表面温度の低下を伴いながら熱間加工を施す場合、その温度低下に伴って逐次析出するγ’相が転位の移動を妨げるので、一般的な構造用鋼等の場合の温度低下と比較して、熱間延性は著しく低下する。これはγ’相の析出温度域で温度低下が生じると、熱力学的な観点から、γ’相の析出可能量が増していくためである。表面近傍では抜熱に伴いγ’相が多量に析出してその量を増していくが、γ’相はその析出量が多いほど、またサイズが小さいほど、析出硬化機構の観点から変形抵抗が増して延性を低下させる。更に冷却中に析出するγ’相の寸法や析出量は冷却速度によるところが大きいが、大気中での自然放冷程度の速度の冷却が施された場合のγ’相は、非常に微細で量も多い。
このような事情から、多量のγ’相を有する高強度なNi基超耐熱合金を材料割れなく加工するには、一般に高度な熱間加工技術が必要とされており、好適な加熱温度の選定のみならず、短時間で加工を終えるための搬送設備や、被加工材の温度低下を抑制する保熱機構の導入といった種々の努力がなされるが、それでも安定して熱間加工できるNi基超耐熱合金の種類には制限がある。
従って、Ni基超耐熱合金の材料強度の観点と熱間加工性の観点は、一般にトレードオフの関係にあると言え、特に前記のような高速熱間加工機やリング圧延機を適用することのできるNi基超耐熱合金はγ’量の少ないものに限られているのが現状である。製品の高温強度を幾分損なってもなお、良好な熱間加工性が求められるNi基超耐熱合金の場合には、AlやTi、その他の強化元素を低減することで、γ’量を減らしてγ’固溶温度を下げ、かつ結晶粒界の融点が下がらないよう配慮することで、高温域にて熱間延性良好なγ単相域を広く作り出し、熱間加工の際に変形を強く阻害するγ’相の存在しないγ単相域にて熱間加工が施せるよう、合金設計されている。
代表的なNi基超耐熱合金を例にとると、次のことが言える。
比較的高強度でかつ熱間加工性にも優れるγ’相析出強化型Ni超耐熱合金の代表としてWaspaloyがある。この合金はγ’固溶温度が低く、高温域で広いγ単相域を有しているため、このγ単相域での熱間加工が比較的容易で、前記したような高歪み速度の熱間加工工程を施すことが可能である。
また、Waspaloy(Waspaloy(R)はユナイテッドテクノロジー社の登録商標)よりも高強度なNi基超耐熱合金として、Udimet720Li(Udimet(R)はスペシャルメタルズ社の登録商標)が挙げられる。この合金は、γ’析出量やγ’固溶温度がWaspaloyと比較して高く、熱間加工が最も困難なNi基超耐熱合金の一つとして数えられている。このような合金は、添加元素が多いために部分溶融温度も低く、γ’固溶温度以上の温度域では安定した熱間加工を施すことが出来ない。したがってこれに熱間加工を施す際には、γ相とγ’相の共存域で加工を行わなければならないが、自由鍛造プレス機による熱間加工は可能ではあるものの、γ’相が変形を阻害するために熱間加工が非常に困難である。したがってリング圧延等を用いた高歪み速度の熱間加工工程は、積極的には利用されていないのが現状である。
またUdimet720Liよりも更に高強度な超耐熱合金として、特許文献1に開示されているような高Coで且つ高Tiの合金がある。この合金はUdimet720Liと同様、従来の熱間加工プロセスによって製造可能な合金であるが、γ’析出量やγ’固溶温度がUdimet720Liと同等以上であるため、Udimet720Liと同等もしくはそれ以上に熱間加工が困難な合金である。
国際公開第WO2006/059805号パンフレット
プロシーディングス オブ ザ イレブンス インターナショナルシンポジウム オン スーパーアロイズ(ティーエムエス,2008)311−316ページ.
上述したようなγ’量の多いNi基超耐熱合金は高温強度が高く、例えばタービン部材として使用した場合には、優れた性能を発揮する。その一方で、このような合金は通常、安定した熱間加工が困難で、加工中に材料の内部及び表面で割れが発生しやすい。
また、タービン部材としての使用が期待される合金の形状は、長尺の丸棒材や大径のリング材といったものがあるが、このような形状へと熱間加工を施す場合には、歩留まりや品質の観点から高速鍛造機やリング圧延機を使用することが望まれる。これらの熱間加工機は高い歪み速度で加工されるので、従来γ’量の多い高強度合金の熱間加工は極めて困難であり、実際の適用はγ’量が低く強度の低い合金に限られていた。
一方、非特許文献1では、Udimet720Liの鍛造品について、1110℃に昇温した後の冷却速度が遅くなるほど熱間加工性が向上する実験結果が示されている。このような熱処理過程による熱間延性改善の知見は重要であるが、この試験条件は比較的遅い歪み速度である1/秒で行われている。
本発明の目的は、高い歪み速度下においても良好な熱間加工性を有するNi基超耐熱合金の製造方法を提供することである。
本発明者らは、航空機エンジンや発電用ガスタービン等に使用するのに十分な高強度を達成することが可能な種々の組成の合金について製造方法の検討を行ったところ、適切な加熱工程を選定し、且つ強化相であるγ’相が熱間加工を阻害しないような特定の熱間加工温度域を選定することで、高い歪み速度においても熱間加工性を大きく改善できることを見出した。
すなわち本発明は、質量%で、C:0.001〜0.050%、Al:1.0〜4.0%、Ti:3.0〜7.0%、Cr:12〜18%、Co:12〜30%、Mo:1.5〜5.5%、W:0.5〜2.5%、B:0.001〜0.050%、Zr:0.001〜0.100%、Mg:0〜0.01%、Fe:0〜5%、Ta:0〜3%、Nb:0〜3%、残部はNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、且つγ’相の固溶温度が1050℃以上の被熱間加工材を用いて、980℃〜1050℃であり、且つγ’相の固溶温度に対してマイナス30℃を上限とする温度範囲で10時間以上加熱する事前加熱工程と、事前加熱工程後の被熱間加工材を980℃〜1050℃であり、且つγ’相の固溶温度に対してマイナス30℃を上限とする温度範囲にて歪み速度2.0/秒以上の加工速度で熱間加工を施す熱間加工工程とを含むことを特徴とするNi基超耐熱合金の製造方法である。
本発明によれば、航空機エンジンや発電用ガスタービン等に使用されるNi基超耐熱合金の内、従来困難であったγ’析出量の多い高強度Ni基合金における高い歪み速度下での安定した熱間加工が可能となる。この結果、高歪み速度による加工を必要とする長尺のシャフトやリングディスク等々の様々な形状のNi基超耐熱合金が、安価で歩留りよく提供できる。
Ni基超耐熱合金(被熱間加工材)の破断絞りと試験温度の関係を示すグラフである。 Ni基超耐熱合金(被熱間加工材)に高い歪み速度を付与したと破断絞りと試験温度の関係を示すグラフである。 Ni基超耐熱合金(被熱間加工材)の温度低下に伴った場合を模擬した熱間延性変化を示すグラフである。 Ni基超耐熱合金(被熱間加工材)の温度低下に伴った場合を模擬した熱間延性変化を示すグラフである。
本発明の特徴は、γ’相量の多い高強度Ni基超耐熱合金において、十分な析出量が見込めるγ/γ’共存域で10時間以上加熱することで多量のγ’相を粗大化させ、且つその後、特定の温度域にて熱間加工を施すことで、従来の困難であった高速の熱間加工を可能とするものである。
これにより、従来では熱間加工が困難、あるいは熱間加工に多大な時間、エネルギーを要するようなNi基超耐熱合金に関して、被熱間加工材の適切な加熱工程、熱間加工における歪み速度等を適切に管理することで、合金の温度低下による著しい表面割れや、加工発熱による結晶粒の粗大化及び部分溶融を伴わない、良質な被熱間加工材を得ることが可能になる。以下に、本発明の構成要件を説明する。
本発明で規定するNi基超耐熱合金は、γ’相の析出量を30%以上とすることができる合金であり、γ’相の固溶温度が1050℃以上である。
γ’相の固溶温度は合金成分により定まり、以下で示すNi基超耐熱合金はγ’相の固溶温度が1050℃以上となるものである。γ’相の固溶温度が高い合金ほど、γ/γ’相共存域での熱間加工を対象とする本発明は有効に働くためである。一方、γ’相の固溶温度が1050℃未満の合金は、事前の加熱処理を経ても、成長・粗大化できるγ’相の体積率が少なく十分な効果が見込めない。加えて、このようなγ’相の固溶温度が低い合金は、同時に広いγ単相域を有し、このγ単相域で比較的容易に熱間加工が可能となるので、本発明を特別必要とはしないためである。
本発明で規定した合金成分範囲の限定理由について述べる。以下の成分値は質量%である。
<C:0.001〜0.050%>
Cは結晶粒界の強度を高める効果を有する。この効果は0.001%以上で現れるが、Cを過剰に含有した場合は、粗大な炭化物が形成され、強度、熱間加工性を低下させるため、0.050%を上限とする。Cの効果をより確実に得るための好ましい範囲は0.005〜0.040%であり、さらに好ましくは0.010〜0.040%であり、より好ましくは0.010〜0.030%である。
<Cr:12〜18%>
Crは耐酸化性、耐食性を向上させる元素である。その効果を得るには、12%以上が必要である。Crを過剰に含有すると、σ(シグマ)相などの脆化相を形成し、強度、熱間加工性を低下させるので、上限は18%とする。Crの効果をより確実に得るための好ましい範囲は、13〜17%であり、より好ましくは13〜16%である。
<Co:12〜30%>
Coは組織の安定性を改善し、強化元素であるTiを多く含有しても熱間加工性を維持することを可能とする。この効果を得るには、12%以上が必要である。Coが多くなるほど熱間加工性は向上する。しかし、Coが過剰になると、σ相やη(イータ)相といった有害相が形成されることで強度、熱間加工性が低下するため、上限は30%とする。強度と熱間加工性の両面で好ましい範囲は13〜28%であり、より好ましくは14〜26%である。
<Al:1.0〜4.0%>
Alは、強化相であるγ’(NiAl)相を形成し、高温強度を向上させる必須元素である。その効果を得るためには最低1.0%必要であるが、過度の添加は熱間加工性を低下させ、加工中の割れなどの材料欠陥の原因となるので、1.0〜4.0%に限定する。Alの効果をより確実に得るための好ましい範囲は1.5〜3.0%、さらに好ましくは1.8〜2.7%であり、より好ましくは1.9〜2.6%である。
<Ti:3.0〜7.0%>
Tiは、γ’相のAlサイトに置換することで、γ’相を固溶強化させ、高温強度を高める必須元素である。その効果を得るためには最低3.0%必要であるが、過度の添加はγ’相が高温で不安定となって高温での粗大化を招くとともに有害なη相を形成し、熱間加工性を損なうのでTiの上限を7.0%とする。Tiの効果をより確実に得るための好ましい範囲は3.5〜6.7%、さらに好ましくは4.0〜6.5%であり、より好ましくは4.5〜6.5%である。
<Mo:1.5〜5.5%>
Moはマトリックスの固溶強化に寄与し、高温強度を向上させる効果がある。この効果を得るためには、1.5%以上が必要であるが、Moが過剰となるとσ相などの脆化相を形成し高温強度を損なうため、上限を5.5%とする。Moの効果をより確実に得るための好ましい範囲は2.0〜3.5%であり、さらに好ましくは2.0〜3.2%であり、より好ましくは2.5〜3.0%の範囲である。
<W:0.5〜2.5%>
Moと同様に、マトリックスの固溶強化に寄与する元素であり、本発明では0.5%以上が必要である。Wが過剰となると有害な金属間化合物相が形成されて高温強度を損なうため、上限を2.5%とする。Moの効果をより確実に得るための好ましい範囲は0.7〜2.2%であり、さらに好ましくは1.0〜2.0%である。
<B:0.001〜0.050%>
Bは粒界強度を向上させ、クリープ強度、延性を改善する元素である。この効果を得るには最低0.001%が必要となる。一方でBは融点を低下させる効果が大きいこと、また、粗大なホウ化物が形成されると加工性が阻害されることから、0.050%を超えないように制御する必要がある。Bの効果をより確実に得るための好ましい範囲は0.005〜0.040であり、さらに好ましくは0.005〜0.030%であり、より好ましくは0.005〜0.020%である。
<Zr:0.001〜0.100%>
ZrはBと同様に粒界強度を向上させる効果を有しており、この効果を得るには最低0.001%が必要である。一方でZrが過剰となると、やはり融点の低下を招き、高温強度、熱間加工性が阻害されるため、上限は0.100%とする。Zrの効果をより確実に得るための好ましい範囲は0.005〜0.060%であり、さらに好ましくは0.010〜0.050%である。
<Mg:0〜0.01%>
Mgは、粒界に偏析し熱間延性を阻害する不可避の不純物であるSを、硫化物として固定することで、熱間延性を向上させる効果がある。このため必要に応じて添加しても良い。ただし、添加量が多くなると、余剰のMgが熱間延性を阻害する因子となるので、上限を0.01%とする。
<Fe:0〜5%>
Feは、安価な元素であり、このFeの含有を許容することで、被熱間加工材の原料コストを下げることが可能であるので、必要に応じて含有しても良い。ただし、Feの過剰な添加は、σ相の析出を容易にし、機械的性質を劣化させる原因となるので、上限は5%とする。
<Ta:0〜3%>
Taは、Tiと同様に、γ’相のAlサイトに置換することで、γ’相を固溶強化させ、高温強度を高める元素である。従ってAlの一部をTaで置換することで、その効果を得ることが可能であるので、必要に応じて添加しても良い。ただし、過度の添加はγ’相が高温で不安定となって、有害なη相やδ(デルタ)相を形成し、熱間加工性を損なうのでTaの上限を3%とする。
<Nb:0〜3%>
NbはTiやTaと同様に、γ’相のAlサイトに置換することで、γ’相を固溶強化させ、高温強度を高める元素である。従ってAlの一部をNbで置換することで、その効果を得ることが可能であるので、必要に応じて添加しても良い。ただし、過度の添加はγ’相が高温で不安定となって、有害なη相やδ(デルタ)相を形成し、熱間加工性を損なうのでNbの上限を3%とする。
以下に、本発明の各工程と、その条件の限定理由を述べる。
<被熱間加工材準備>
上記の成分を有する、本発明の被熱間加工材は、他のNi基超耐熱合金と同様に真空溶解によって製造することが好ましい。これによってAl、Tiといった活性元素の酸化を抑制し、介在物を低減することが可能となる。より高品位なインゴットを得るために、エレクトロスラグ再溶解、真空アーク再溶解といった2次、3次溶解を行っても良い。
またより金属組織が均質化されたインゴットを準備する目的で、初期のインゴットを粉末冶金法により製造してもよい。
上述のインゴット作製の後に、低い歪み速度で加工できるプレス鍛造等により被熱間加工材とし、マトリックスの結晶粒度が、ASTM結晶粒度番号で5以上となる金属組織を得ることが好ましい。より好ましくはASTM結晶粒度番号8以上であり、更に好ましくは、ASTM結晶粒度番号10以上である。
上記の被熱間加工材を製造する一例を述べると、1130〜1200℃の温度範囲で少なくとも2時間保持する均質化熱処理を行って、γ’相などの析出物を固溶させることで、材料を軟化させてその後の熱間加工を容易にすることができる。そして、均質化熱処理した被加工材を、0.03℃/秒以下の冷却速度でγ’相が析出する温度まで徐々に冷却する。この冷却条件により、γ’相の成長を促し、次いで、再び950〜1160℃(但し、γ’相固溶温度以下)に昇温して、2時間以上保持する熱処理を行い、その後、0.03℃/秒以下の冷却速度で冷却を行って、更にγ’相を成長させると良い。この工程にて、一次γ’相の平均粒子径を1μm以上に大きくすることができ、高い熱間加工性を付与する。
次に、前述の被加工材を用いて低い歪み速度で熱間プレス等の熱間加工を行う。熱間加工は800〜1125℃の範囲が好ましい。これは、強化相であるγ’相を部分的に母相中に固溶させ、材料の変形抵抗を低下させる目的のためである。そして、熱間加工の温度よりも高く、且つγ’相固溶温度よりも低い温度範囲に再加熱処理を行う。この再加熱処理により、再結晶が起こり、歪が除去されると共に、粗大な鋳造組織から微細な熱間加工組織へと変化し、これらによって熱間加工性を向上させることができる。この熱間加工と再加熱処理は必要に応じて複数回繰返すことも可能である。
<事前加熱工程>
上述のような被熱間加工材を用いて、980℃〜1050℃の温度範囲であり、且つγ’固溶温度に対してマイナス30℃を上限とする温度範囲で事前加熱工程を行う。この温度範囲は、γ/γ’相の共存領域の温度範囲であり、少なくとも合計10時間以上の加熱工程を経る必要がある。この事前加熱工程には、γ’相の成長及び粗大化を促す効果がある。γ’相が粗大なほど、塑性変形を容易にするので熱間延性が向上する。
この事前加熱工程では、例えば、γ’固溶温度が約1160℃の被熱間加工材であれば、事前加熱工程の温度範囲は980℃〜1050℃であるが、例えば、γ’固溶温度が約1060℃の被熱間加工材であれば、980〜1030℃の範囲となり、γ’固溶温度に応じて事前加熱工程の上限温度は変化する。
事前加熱工程の上限温度を規定する理由は、熱力学的平衡状態の観点から高温ほどγ相と平衡するγ’相の体積率は少なくなり、次の熱間加工工程での熱間延性改善効果が見込めないためである。事前に十分な体積率のγ’相を粗大な状態としておくことで、次の高歪み速度下の熱間加工中における表面温度低下に伴なったγ’相の析出量を最小限とすることが出来る。
下限温度を980℃とした理由は、γ’相の成長・粗大化速度をある程度以上は確保する必要があるためである。低温ほどγ相と平衡するγ’相の体積率は増加するが、一方で、原子の拡散速度が低下するため、γ’相の成長・粗大化速度が低下して、熱間延性向上の効果が得られ難いからである。
<加熱時間と加熱温度パターン>
上述のような被熱間加工材に対しての加熱時間については、最低10時間以上を必要とし、加熱時間の上限については、γ’相の粗大化が目的であるため特に規定しないが、作業効率の面において60時間以内とするのが好ましい。
なおここで言う加熱時間とは、例えば、γ’固溶温度が約1160℃の被熱間加工材であれば、980℃〜1050℃の範囲の温度範囲における経過時間であり、等温保持時間、或いは/更に、降温する時間も含んだ合計の時間である。
従って、例えば、γ’固溶温度が約1160℃の被熱間加工材であれば、加熱温度1100℃にて2時間保持した後に、冷却速度10.0℃/時間で冷却し、このまま980℃未満の温度まで冷却した場合には、1050℃〜980℃間の加熱時間は7.0時間となる。また、例えば、γ’固溶温度が約1160℃の被熱間加工材を加熱温度1100℃にて2時間保持した後に、冷却速度10.0℃/時間で冷却し、温度が1000℃となったときに一旦冷却を止めて、そのまま1000℃の等温下で10時間の保持を行った後に、更に冷却速度10.0℃/時間で冷却して、980℃未満の温度まで冷却した場合には、980℃〜1050℃の範囲の温度範囲における経過時間(加熱時間)は17時間となる。
降温時間をも含む理由については、この加熱工程の狙いが、一定以上の体積率を有するγ’相を効率よく成長・粗大化させることにあるためで、この効果を得るには、等温保持の過程のみならず、降温の過程を経ても効果が得られるためである。等温過程を経る場合には、γ’相は等温下でまず析出過程を経てγ’相の析出量が増していく。その後、γ’相の析出量が等温保持下の熱力学的平衡量に達した後には、粗大化の過程を経ることになる。
降温過程を経る場合には、降温過程と共に低温になるのでγ’相の熱力学的に平衡な析出量が増しながらγ’相は析出・成長する。従って、前記の980℃〜1050℃(但し、γ’固溶温度マイナス30℃が1050℃以下の場合においては、γ’固溶温度マイナス30℃が上限温度)の温度範囲にて、合計10時間以上の時間を経ることが、一定以上の体積率を有するγ’相を効率よく成長・粗大化させることになるためである。
なお、昇温時間を含まない理由は、昇温過程ではγ’相は固溶が進む方向となるため、前記の狙いに対しての効果は見込めないためである。
<高歪み速度による熱間加工>
前記のような事前加熱工程を経た被熱間加工材に対して、熱間加工を行う。この熱間加工で適用する加熱温度は980℃〜1050℃で且つ、γ’固溶温度に対してマイナス30℃を上限とする温度範囲である。この温度範囲は、γ/γ’相の共存領域の温度範囲であり、少なくとも歪み速度2.0/秒以上となる加工速度で熱間加工する必要がある。なお、ここで言う歪み速度とは、一回あたりの加工に対しての公称の歪み速度である。
なお、熱間加工時の加熱温度の範囲も上記と同様で、例えば、γ’固溶温度が約1160℃の被熱間加工材であれば、熱間加工の温度範囲は980℃〜1050℃であるが、例えば、γ’固溶温度が約1060℃の被熱間加工材であれば、980〜1030℃の範囲となり、γ’固溶温度に応じて熱間加工時の上限温度は変化する。
加熱温度が上限の1050℃(但し、γ’固溶温度マイナス30℃が1050℃以下の場合においては、γ’固溶温度マイナス30℃が上限温度)を超える場合、加熱温度が高くγ’相の固溶量が増加することになる。この場合、高歪み速度の熱間加工初期においては良好な熱間延性を示す可能性があるが、実用上、熱間加工後期においては被熱間加工材の表面温度が外気及び金型との接触による抜熱により低下したとき、表面の材料温度低下時に析出するγ’相の量は増すことになる。そのため抜熱に伴った熱間延性低下が著しくなり、熱間加工の継続が困難となる。従って、加熱温度に上限を設けることで、γ’相の固溶量を少なくし、抜熱時にγ’相が極力析出しないようにする必要がある。また高強度のNi基超耐熱合金においては、AlやTi、他の強化元素を多量に含んでいるためマトリックスの結晶粒界の融点が下がりやすく、かつマトリックスの粒内強度も強いため、高温側での相対的な結晶粒界の強度は低い。従って、熱間加工時に高温側で生じる粒界破壊に基づいた延性欠如温度(いわゆるゼロ延性温度)が低く、特に高歪み速度の変形においては、加工硬化率が高く更に粒内強度が高まる結果となるので、相対的な粒界強度は更に低くなり、延性欠如温度は更に低下する。加えて高歪み速度下での熱間加工中においては、材料内部の加工発熱量は、低歪み速度時に比べて高まるので、被加工材の温度が加工の最中に延性欠如温度に到達しないように、加熱温度を選択しておく配慮は、極めて重要となる。加熱温度の上限を適切に管理することは、被熱間加工材のマトリックス結晶粒径の粗大化を抑制し、微細な組織状態を維持するこにもなるため、微細な結晶粒による延性確保も期待できる。
加熱温度が下限の980℃未満となる場合、加熱温度が低いためマトリックスの変形抵抗が増加して、熱間延性が低下する。加えてγ’相の量も多くなるため変形抵抗は増加する。過度の変形抵抗の増加は、熱間加工機にかかる荷重の負荷が増大し、加工が困難となるため、下限の温度は980℃とする。
加熱時間については、残留応力の低減やγ’相の固溶量を適度に調整する観点から、30分以上とすることが好ましい。また作業効率の観点から、10時間以内とすることが好ましい。加熱時の温度パターンについては1050℃を超えてはならない。1050℃を超えると、事前加熱工程にて成長・粗大化させたγ’相が固溶して、熱間延性改善の効果を失うためである。
また、歪み速度が2.0/秒以上としたのは、例えば、リングミル等の高歪み速度の熱間加工を行う場合の歪み速度に相当するからである。高い歪み速度での熱間加工ほど、従来方法に対しての本発明の優位性は高まるので、上限は特に規定しない。歪み速度は2.0/秒以上であり、好ましくは4.0/秒以上、より好ましくは8.0/秒以上である。
(実施例1)
本発明の効果を、高γ’量合金のNi基超耐熱合金において確認するため、二種の被熱間加工材A及びBを用意した。また比較例として、本発明の対象外となる低γ’量合金の被熱間加工材Cを用意した。被熱間加工材AはUdimet720Liに相当するNi基超耐熱合金であり、被熱間加工材Bは特許文献1に相当するNi基超耐熱合金である。被熱間加工材Aの合金は、γ’固溶温度が約1155℃、γ’析出量が約45%であり、被熱間加工材Bの合金は、γ’固溶温度が約1170℃、γ’析出量が約50%の合金である。被熱間加工材CはWaspaloyに相当するNi基超耐熱合金でありγ’固溶温度が約1040℃、γ’析出量が約25%である。従って、被熱間加工材A及びBは、γ’相量の観点から最も熱間加工が困難とされる化学組成を有する合金である。なお、γ’析出量は市販計算ソフトJMatPro(Version 8.0.1、Sente Software Ltd.社製品)を用いて計算した。ここでのγ’析出量とは、製品として一般的な時効処理温度である温度760℃の平衡状態下におけるγ’相の量である。この温度下におけるγ’析出量を採用した理由としては、一般に時効処理後のγ’析出量が、製品としての強度を大きく左右する値となるためである。
被熱間加工材Aは市販されたビレットである。また、被熱間加工材Cは工業的な溶解法である真空誘導炉・真空アーク再溶解法の二重溶解法を用いて作製した円柱状のNi基超耐熱合金インゴットに、常法により熱間鍛造を施してビレットとした。
被熱間加工材Bは、工業的な溶解法である真空誘導炉・エレクトロスラグ再溶解法・真空アーク再溶解法の三重溶解法を用いて作製した円柱状のNi基超耐熱合金インゴットに、熱間鍛造を施したものである。被熱間加工材Bは次のように作製した。用いた熱間加工機は、低い歪み速度で加工できるプレス機を用いた。
先ず、均質化熱処理として、1180℃で30時間にわたり保持して加熱した後、0.03℃/秒の冷却速度で室温まで冷却した。次に、1150℃で60時間にわたり保持して加熱した後、0.03℃/秒の冷却速度で室温まで冷却する熱処理を行って被加工材とした。この被熱間加工材を、プレス機による熱間自由鍛造を行った。
被熱間加工材を、1100℃で1.33の熱間加工比で据え込み鍛造を行った後、1150℃に昇温し、5時間保持する再加熱工程を行って再結晶を促進させた。次いで、この再加熱させた被熱間加工材を、1100℃まで0.03℃/秒の冷却速度で冷却した後、φ440mm相当の直径まで戻す鍛伸作業を行った。
更に、前記の鍛伸した被熱間加工材を、再度、1150℃に加熱して5時間保持して、再結晶を促進させた後、1100℃まで0.03℃/秒の冷却速度で冷却し、そして、2回目となる1.33の熱間加工比の据え込み鍛造を実施した。
その後は、1回目の据え込み鍛造後の手順と同様に、1150℃に再加熱して5時間の保持を行い、次いで1100℃まで0.03℃/秒の冷却速度で冷却した後、φ440mm相当の直径まで戻す2回目の鍛伸作業を行った。
更に1150℃に加熱して5時間保持した後、1100℃まで0.03℃/秒の冷却速度で冷却し、今度は、最終的な寸法が約φ290mm×1600mmLになるまで鍛伸作業を行って熱間鍛造材(ビレット)とした。
以上の鍛造工程中において、材料を1150℃に加熱した回数は、計4回である。この鍛造過程中で実施する1150℃の加熱処理により、金属組織の再結晶が促進され、その結果、熱間加工性は良好な状態を維持し、特に加工がより難しい加工初期、すなわち不均質な鋳造凝固組織を有するインゴットの熱間加工を行う段階であっても、著しい表面割れを殆ど伴わず、また内部割れは一切生じずに、熱間加工を進めてビレットを製造することができた。
これら被熱間加工材A及びB、Cの化学成分を表1に示し、金属組織の評価結果を表2に示す。
Figure 0006150192
Figure 0006150192
前記の被熱間加工材A及びBについて、機械加工にて素材を切り出し、一部について事前加熱工程となる加熱処理を施した。被熱間加工材A及びBについては、事前加熱工程を施していない比較例のものは、それぞれA1及びB1とした。事前加熱工程を付与した本発明例のものは、加熱条件ごとでA2、A3及びB2とした。また被熱間加工材Cについては事前加熱工程を施さなかった。
表3に、各被熱間加工材に施した事前加熱工程について示す。なお、本発明で規定する事前加熱温度の温度の上限は、被熱間加工材A(γ’固溶温度が約1155℃)は1050℃、被熱間加工材B(γ’固溶温度が約1170℃)は1050℃となる。また、表3で示す被熱間加工材B2については、事前加熱処理を2段で行ったものであり、1段目の加熱から5℃/時間で降温し、温度が1000℃に到達した段階で一旦冷却を止め、2段目の加熱として1000℃で2時間等温保持後に108℃/時間で降温しているものである。そのため、980℃〜1050℃の温度範囲内に被熱間加工材B2がとどまった時間が事前加熱工程の時間である。
Figure 0006150192
上記の事前加熱工程を経た被熱間加工材に対して、実際の大型部材における等温下での熱間加工工程を模擬した高速引張試験を実施した。
等温下での引張試験は熱間加工中に殆ど温度低下を伴わない大型部材の内部を模擬している。試験条件としては、試験温度を900℃〜1125℃、歪み速度を0.1/秒と10/秒とした。歪み速度0.1/秒は、通常の自由鍛造プレスの歪み速度を模擬しており、10/秒は本発明の適用範囲である高速熱間加工を模擬している。
まず、本発明の適用範囲外となる測定データとして、事前加熱工程を施していない被熱間加工材A1及びB1、Cの試験温度と破断絞りとの関係を図1に示す。
図1によれば、歪み速度が0.1/秒と低速であれば、本発明を適用しない場合でも、被熱間加工材A1及びB1はいずれも、熱間加工可能温度域が広く確保されているため、熱間加工は比較的容易であることが示唆される。対して、歪み速度が10/秒と高速になると、被熱間加工材A1及びB1については、0.1/秒の条件と比べて熱間加工性が低下することがわかる。これは高歪み速度下の塑性変形においては、マトリックスの加工硬化が著しく進むことに加えて、γ’相の存在がそれを助長するためである。特に被熱間加工材BはAよりも高強度のNi基超耐熱合金であるため、その傾向が強く、熱間加工可能温度域は殆ど存在しないことがわかる。一方で、被熱間加工材Cは歪み速度10/秒において低温域及び高温域のいずれの場合も安定した熱間加工性を示す。これは被熱間加工材Cはγ’相の析出量が少なく、γ’相の固溶温度も低いため、γ’相による変形の阻害を殆ど受けないためである。なお、被熱間加工材B1の方がCよりもγ’相の析出量が多いにもかかわらず、950℃〜1075℃付近の温度域で破断絞りが同等である理由は、マトリックスの結晶粒径の差と考えられる。被熱間加工材B1はCよりもマトリックス結晶粒径が微細であるため、γ’相の多さとの兼ね合いから、結果として同等レベルになっていると思われる。
次に、事前加熱工程を付与した被熱間加工材A2、A3及びB2の歪み速度10/秒における破断絞りを、図1の歪み速度10/秒の測定データと共に、図2に示す。
図2より、本発明の適用範囲外の事前加熱工程を施した被熱間加工材A2は、事前加熱工程を施していないA1と比較して殆ど同等であり、変化は見られない。
本発明の適用範囲内の事前加熱工程を施した被熱間加工材A3は、A1及びA2と比較して、試験温度1000℃以下となる低温側では破断絞りは改善することが分かった。
次に、本発明の適用範囲内の事前加熱工程を施した被熱間加工材B2については、事前熱処理を施していないB1と比べて、広い温度域で全体的に破断絞りが向上していることが分かる。被熱間加工材B2の方が、A3よりも事前加熱処理による破断絞りの向上が見られるのは、被熱間加工材Bの方が、γ’相の多い高強度材であるためと思われる。
(実施例2)
次に、被熱間加工材A1〜A3及びB1、B2、Cについて、実機での作業を想定して実際の大型部材における表面温度低下を伴った熱間加工を模擬した高速引張試験を実施した。ここでの表面温度低下とは、熱間加工中に外気及び金型との接触によって生じる抜熱を想定している。γ’相の析出量の多い合金は、材料表面の温度低下に伴って生じるγ’相の析出が著しい。したがって材料温度低下による熱間延性の低下も著しく、大きな抜熱を伴う実際の熱間加工は、より困難となることが想定される。
このような実工程を模擬するため、試験条件を第一加熱工程として1000℃〜1100℃として10〜20分の加熱保持を行い、続いて抜熱を模擬した冷却速度として200℃/分の冷却過程を施した後、初期加熱温度に対してマイナス50℃〜200℃の温度低下をさせた段階で冷却を止め、5秒の保持を行った後に、歪み速度10/秒で高速引張試験を行った。まず被熱間加工材A1〜A3及びCの試験結果を図3に示す。
図3より、事前加熱工程を施していないA1と本発明の適用範囲外の事前加熱工程を施しているA2の破断絞りの値はほとんど同じである。これはCよりも大きく熱間延性に劣るため、高速熱間加工が困難であることが示唆されている。一方、本発明の適用範囲内の事前加熱工程を施しているA3は加熱温度に対してマイナス100℃となる低温域まで高い破断絞りを示し、Cと同等もしくはそれ以上の良好な熱間延性が得られていることがわかる。
次に、被熱間加工材B1、B2及びCの試験結果を図4に示す。
図4より、本発明の適用範囲内の事前加熱工程を施したB2は、事前加熱工程を施していないB1よりも破断絞り値が格段に向上していることがわかり、温度低下による延性低下が低く抑えられていることがわかる。このことは熱間加工中の表面温度低下による割れ感受性の影響を、低く抑えられているということである。熱間加工性良好なCと比較しても同等以上の熱間延性といえ、高強度合金が安定して、高速熱間加工できることを示唆している。特に難加工性の被加工材BのNi基超耐熱合金であっても高速熱間加工が可能であることが分かる。このことから、特にγ’析出量が45%を超えるNi基超耐熱合金への本発明の適用は効果的である。
以上よりγ’析出量の多い高強度のNi基超耐熱合金においても、高歪み速度下の熱間加工が可能な製造方法を提供できることが示された。
本発明のNi基超耐熱合金の製造方法は、航空機エンジンや発電用ガスタービンに使用されるNi基超耐熱合金の内、従来困難であったγ’析出量の多い高強度Ni基合金における高い歪み速度下での安定した熱間加工が可能となる。この結果、高歪み速度による熱間加工を必要とする長尺のシャフトや大型のリングディスク等々の様々な形状のNi基超耐熱合金が、安価で歩留りよく提供できる。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.001〜0.050%、Al:1.0〜4.0%、Ti:3.0〜7.0%、Cr:12〜18%、Co:12〜30%、Mo:1.5〜5.5%、W:0.5〜2.5%、B:0.001〜0.050%、Zr:0.001〜0.100%、Mg:0〜0.01%、Fe:0〜5%、Ta:0〜3%、Nb:0〜3%、残部はNi及び不可避的不純物からなる組成を有し、且つγ’相の固溶温度が1050℃以上の被熱間加工材を用いて、
    980℃〜1050℃であり、且つγ’相の固溶温度に対してマイナス30℃を上限とする温度範囲で10時間以上加熱する事前加熱工程と、
    事前加熱工程後の被熱間加工材を980℃〜1050℃であり、且つγ’相の固溶温度に対してマイナス30℃を上限とする温度範囲にて歪み速度2.0/秒以上の加工速度で熱間加工を施す熱間加工工程と、
    を含むことを特徴とするNi基超耐熱合金の製造方法。

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