JP5381677B2 - 溶接ワイヤの製造方法 - Google Patents
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インゴット製造工程(1)は、特定のNi基超合金組成を有する第1の合金インゴットを、第1の溶解法を用いて製造する工程である。上記Ni基超合金は、以下のような元素を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる。その添加元素の種類、成分割合および限定理由などは、次の通りである。なお、成分割合の単位は、特に断りのない限り、質量%である。
Cは、合金中でTi、Nb、CrおよびMoと化合して炭化物を生成し、高温強度を高めるとともに、結晶粒の粗大化を防止する。また粒界炭化物を析出させるためにも重要な元素である。その効果を得るため、C含有量の下限を0.01%以上とする。C含有量の下限は、好ましくは、0.02%以上、より好ましくは、0.03%以上であると良い。
Siは合金溶解時に脱酸剤として添加され、含有Siは合金の耐酸化性を向上させる。但し、Siの含有量が1%を超えると合金の延性が低下する。このため、Si含有量を1%以下とする。Si含有量の上限は、好ましくは、0.5%以下、より好ましくは、0.2%以下であると良い。
Mnは、Siと同様に合金溶解時に脱酸剤として添加される。Mn含有量が1%を超えると合金の高温での耐酸化性が悪くなるばかりでなく、延性を害するη相(Ni3Ti)の析出を助長する。このため、Mn含有量を1%以下とする。Mn含有量の上限は、好ましくは、0.5%以下、より好ましくは、0.2%以下であると良い。
Crは、マトリックスに固溶し、合金の耐高温酸化性および耐腐食性を向上させる。合金が十分な耐高温酸化性および耐腐食性を維持するためにはCr含有量は多い方が望ましい。その効果を得るため、Cr含有量の下限を5%以上とする。Cr含有量の下限は、好ましくは、8%以上、より好ましくは、10%以上であると良い。
MoおよびWはオーステナイト相に固溶し、固溶強化によって合金の高温強度を向上させるとともに合金の熱膨張係数を下げる。この効果はMoの方がWより大きく、Wのみで好ましい熱膨張係数を得るには多量の添加が必要となり、コストや合金の重量が増大してしまう。そこで、Mo含有量の下限を5%超とすることで、コスト、重量を過剰に増大させず、その効果を得ることができる。Mo含有量の下限は、好ましくは、5.5%以上、より好ましくは、6%以上であると良い。一方、多量のMo単独添加は脆化相を析出し、加工性が低下する。そのため、Mo含有量の上限を10%以下とする。Mo含有量の上限は、好ましくは9%以下、より好ましくは、8%以下であると良い。Wは、Moほど熱膨張係数を下げる効果は小さいものの、Moより脆化相は析出しにくい。そのため、Moと複合添加することができるが、W含有量の上限は、20%未満とする。W含有量の上限は、好ましくは15%以下、さらに好ましくは、10%以下であると良い。
AlはNiと化合してγ’相(Ni3Al)を生成せしめる主要な金属元素である。Al含有量が過少になるとγ’相の析出が十分でなくなり、TiやNbとTaが多量に存在する場合にγ’相が不安定になり、η相やδ相が析出して脆化を引き起こす。そのため、Al含有量の下限を0.8%以上とする。Al含有量の下限は、好ましくは、0.9%以上、より好ましくは、1.1%以上であると良い。
Tiは、Alと同様にNiと化合してγ’相(Ni3(Al,Ti))を形成し、合金を析出強化させる。また、Tiは合金の熱膨張係数を低下させ、γ’相の析出強化を促進させる。このような効果を得るため、Ti含有量の下限を0.30%以上とする。Ti含有量の下限は、好ましくは、0.40%以上、より好ましくは、0.50%以上であると良い。
Nbは、合金中でAlやTiと同じくNiとの金属間化合物であるγ’相を生成させ且つγ’相を強化させる。Nbは、さらにγ’相の結晶粒の巨大化を防ぐ効果もある。また、Nbは、溶接割れ感受性を改善する元素である。このような効果を得るため、Nb含有量の下限を1.5%超とする。
Feは、合金のコストを低減するために添加され、または、合金にW、Mo等の成分を調整するために添加する母合金に粗製のフェロアロイを用いることにより合金に含有される。Feは、合金の高温強度を低下させ、熱膨張係数を高くする。このため、できる限り少ない方が望ましい。もっとも、4.0%以下であれば高温強度および熱膨張係数に及ぼす影響が小さい。そのため、Fe含有量の上限を4.0%以下とする。Fe含有量の上限は、好ましくは、2.0%以下、より好ましくは、1.0%以下であると良い。
Al、TiおよびNbは、γ’相を構成する元素であり、十分なNi量が存在する場合には、γ’相の析出体積率はこれら元素の原子%の総和に比例する。また、高温強度はγ’相の体積率に比例することから、これらの元素の総和に比例して高温強度は増加する。
上述のAl、TiおよびNbの合計の含有量に加え、さらに、十分な強度を保ちつつ溶接性を確保するため、原子%比で、Nb/(Al+Ti)の値を0.35〜0.60とする。これにより、溶接割れ感受性を改善することが可能となる。原子%比で、Nb/(Al+Ti)の値は、好ましくは、0.40〜0.50であると良い。
Bは、合金の結晶粒界に偏析して合金のクリープ破断強度を高める。BはTiの含有量が多い合金中でη相の析出を抑える効果がある。その効果を得るため、B含有量の下限を0.0005%以上とする。B含有量の下限は、好ましくは、0.0010%以上、より好ましくは、0.0020%以上であると良い。
Zrは、合金の結晶粒界に偏析して合金のクリープ破断強度を高める。ZrはB同様、Tiの含有量が多い合金中でη相の析出を抑える効果がある。その効果を得るため、Zr含有量の下限を0.0005%以上とする。Zr含有量の下限は、好ましくは、0.0010%以上、より好ましくは、0.0020%以上であると良い。
Taは、Nb同様合金中でAlやTiと同じくNiとの金属間化合物であるγ’相を生成させ且つγ’相を強化させる。また、Taは、溶接割れ感受性を改善する元素である。しかし、Taは、コストおよび重量の観点から単独添加は好ましくなく、Nbとの複合添加が好ましい。よって、Nb+(1/2)Taの値の下限を1.5%超とする。Nb+(1/2)Taの値の下限は、好ましくは、1.8%以上、より好ましくは、2.0%以上であると良い。
Al、Ti、NbおよびTaは、γ’相を構成する元素であり、十分なNi量が存在する場合には、γ’相の析出体積率はこれら元素の原子%の総和に比例する。また、高温強度はγ’相の体積率に比例することから、これらの元素の総和に比例して高温強度は増加する。
Taを含有する場合、十分な強度を保ちつつ溶接性を確保するため、原子%比で、(Nb+Ta)/(Al+Ti)の値を0.35〜0.60とすると良い。これにより、溶接割れ感受性を改善することが可能となる。原子%比で、(Nb+Ta)/(Al+Ti)の値は、好ましくは、0.40〜0.50であると良い。
Coは、合金に固溶して合金の高温強度を高くする。このような効果は他の元素(固溶強化生成元素)に比較して小さい。また、Coは高価である。上記効果と合金製造コストの低減とのバランスなどの観点から、Co含有量の上限を、5.0%以下とする。Co含有量の上限は、好ましくは、3.0%以下、より好ましくは、1.0%以下であると良い。
不可避的不純物元素の中でPは粒界に偏析し、溶接性を劣化させる元素である。Pの多量添加は著しく溶接性を劣化させる。そのため、P含有量の上限を0.020%以下とする。P含有量の上限は、好ましくは、0.010%以下、より好ましくは、0.005%以下であると良い。
不可避的不純物元素の中でSは粒界に偏析し、溶接性を劣化させる元素である。Sの多量添加は著しく溶接性を劣化させる。そのため、S含有量の上限を0.0020%以下とする。S含有量の上限は、好ましくは、0.0010%以下、より好ましくは、0.0008%以下であると良い。
インゴット製造工程(2)は、インゴット製造工程(1)にて得られた第1の合金インゴットに対して、さらに、VAR法(Vacuum Arc Remelting:真空アーク再溶解法)、ESR法(Electro Slag Remelting:エレクトロスラグ再溶解法)、VAR法−VAR法、ESR法−VAR法、VAR法−ESR法、または、ESR法−ESR法のいずれかの溶解法を適用し、第2の合金インゴットを製造する工程である。なお、上記「X法−Y法」の記載は、X法を実施した後、Y法を実施することを意味する。
均質化処理工程は、上記インゴット製造工程(2)にて得られた第2の合金インゴットに対して1150℃以上で1時間以上の均質化処理を施す工程である。
熱間加工工程は、上記均質化処理された合金に対して950℃〜1150℃で熱間加工を行う工程である。
固溶化処理工程は、上記熱間加工された合金に対して1100℃〜1200℃で5分以上の固溶化処理を行う工程である。
伸線加工工程は、上記固溶化処理された合金に対して加工率10〜80%で伸線加工を行う工程である。
真空溶解法(VIF法)により、表1、表2に示す組成を有する第1の合金インゴット150kgを鋳造した。次いで、得られた第1の合金インゴットに対して、さらに、VAR法、ESR法の2次溶解、あるいは、VAR法およびESR法を両方行う3次溶解を実施し、第2の合金インゴットを製造した。
・溶接電流:150(A)
・溶接電圧:12(V)
・溶接速度:80(mm/分)
・ワイヤ直径:1.2mm
・ワイヤ送給速度:300(mm/分)
・予熱なし
・シールドガスAr:15(L/分)
・溶接姿勢:下向き
Claims (6)
- 質量%で、
C :0.01〜0.15%、
Si:1%以下、
Mn:1%以下、
Cr:5%〜20%、
Mo:5%超〜10%、
W :20%未満、
Mo+(1/2)W:5%超〜15%、
Al:0.8%〜1.5%未満、
Ti:0.30%〜0.85%、
Nb:1.5%超〜3.0%、および、
Fe:4.0%以下を含有し、
原子%で、
Al+Ti+Nb:3.0〜5.9%、
原子%比で、
Nb/(Al+Ti):0.35〜0.60であり、
残部がNiおよび不可避的不純物からなる組成を有する第1の合金インゴットを、第1の溶解法を用いて製造するインゴット製造工程(1)と、
得られた第1の合金インゴットに対して、さらに、VAR法、ESR法、VAR法−VAR法、ESR法−VAR法、VAR法−ESR法、または、ESR法−ESR法のいずれかの溶解法を適用し、第2の合金インゴットを製造するインゴット製造工程(2)と、
得られた第2の合金インゴットに対して1150℃以上で1時間以上の均質化処理を施す均質化処理工程と、
前記均質化処理された合金に対して950℃〜1150℃で熱間加工を行う熱間加工工程と、
前記熱間加工された合金に対して1100℃〜1200℃で5分以上の固溶化処理を行う固溶化処理工程と、
前記固溶化処理された合金に対して加工率10〜80%で伸線加工を行う伸線加工工程と、
を有することを特徴とする溶接ワイヤの製造方法。 - 前記第1の合金インゴットは、質量%で、
B :0.0005%〜0.020%、および
Zr:0.0005%〜0.20%から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接ワイヤの製造方法。 - 前記第1の合金インゴットは、質量%で、
Ta:3.0%以下、
Nb+(1/2)Ta:1.5%超〜3.5%、
を含有し、
原子%で、
Al+Ti+Nb+Ta:3.0〜5.9%、
原子%比で、
(Nb+Ta)/(Al+Ti):0.35〜0.60であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接ワイヤの製造方法。 - 前記第1の合金インゴットは、質量%で、
Co:5.0%以下、
を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の溶接ワイヤの製造方法。 - 前記第1の溶解法は、真空溶解法であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の溶接ワイヤの製造方法。
- 前記固溶化処理された合金の平均結晶粒径が100μm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の溶接ワイヤの製造方法。
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