JP2019521084A - コントースボディ−単鎖標的結合物質 - Google Patents

コントースボディ−単鎖標的結合物質 Download PDF

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Abstract

本明細書において、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分とスペーサードメインとを含む環状融合ポリペプチドであって、該スペーサードメインがポリペプチドでありかつ少なくとも25個のアミノ酸残基を含み、該結合ドメインの第1部分がポリペプチドでありかつ該スペーサードメインのN末端に第1リンカーを介して融合されており、該結合ドメインの第2部分がポリペプチドでありかつ該スペーサードメインのC末端に第2リンカーを介して融合されており、該結合ドメインの第1部分と該結合ドメインの第2部分とが互いに連結されて、標的に特異的に結合する結合部位を形成する、環状融合ポリペプチドが報告される。

Description

本発明は標的結合分子の分野に属する。本明細書において、結合ドメインの第1フラグメントと結合ドメインの第2フラグメントとの間に位置するスペーサードメインを含む単鎖結合物質を報告する。
発明の背景
1974年にKoehlerとMilsteinが最初のモノクローナル抗体を開発して以来、ヒトの治療に適した抗体の開発には、多くの努力が注がれてきた。利用可能になった最初のモノクローナル抗体は、マウスおよびラットで開発された。人間の治療に使用した場合、これらの抗体は、抗齧歯類抗体ゆえの望ましくない副作用を引き起こした。そのような望ましくない副作用を低減し、さらには排除するために、多くの努力が注がれてきた。
ここ数年、市場に出るヒトモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体の数は増加の一途を辿っている。周知の例として、Hoffmann-La Roche、バーゼルのHerceptin(登録商標)およびMabThera(登録商標)が挙げられる。
その上、野生型四鎖Y字状抗体フォーマットから派生した新しい抗体フォーマットも開発されている。これらのフォーマットは主として二重特異性および多重特異性フォーマットである。総説として、例えばKontermann, R., mAbs 4(2012)182-197(非特許文献1)を参照されたい。
US 2009/0175867(特許文献1)において、エフェクター機能を有する単鎖多価結合タンパク質が報告されている。
WO 2014/131711(特許文献2)において、第2抗原結合部分および第3結合部分がFcドメインに、直接または免疫グロブリンヒンジ領域を介して、融合されていてもよい、二重特異性抗体が報告されている。
EP 15176083(特許文献3)において、完全長抗体と比較して分子量が低減している新規抗体フォーマットおよびその使用が報告されている。
WO 2007/048022(特許文献4)は、抗体-ポリペプチド融合タンパク質ならびにその生産方法および使用方法を開示している。
WO 2007/146968(特許文献5)は、エフェクター機能を有する単鎖多価結合タンパク質を開示している。
EP 1 378 520は(特許文献6)、環状単鎖三重特異性抗体を開示している。
US 2009/0175867 WO 2014/131711 EP 15176083 WO 2007/048022 WO 2007/146968 EP 1 378 520
Kontermann, R., mAbs 4(2012)182-197
本明細書において、新規標的結合物質としての単一環状ポリペプチドを報告する。この環状ポリペプチドでは、N末端部が結合部位の第1部分を含み、C末端部が結合部位の第2部分を含む。結合部位の第1部分と結合部位の第2部分は互いに連結することで、完全なまたは機能的な結合部位を形成する。これにより、ポリペプチドは環化する。連結は非共有結合的または共有結合的であることができる。連結が共有結合的である場合、それはペプチド結合によるのではなく、例えばジスルフィド結合による。
本明細書において報告する一局面は、標的に(特異的に)結合し、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分とスペーサードメインとを含む、(環状)(単鎖)融合ポリペプチドであって、
- スペーサードメインが、(フォールディング後に構造ドメインを形成する)ポリペプチドであり、
- 結合ドメインの第1部分が、ポリペプチドであり、かつスペーサードメインのN末端に(直接または)第1(ペプチド性)リンカーを介して融合されており、
- 結合ドメインの第2部分が、ポリペプチドであり、かつスペーサードメインのC末端に(直接または)第2(ペプチド性)リンカーを介して融合されており、
- (同じ(単鎖)融合ポリペプチド中の)結合ドメインの第1部分および結合ドメインの第2部分が、(互いに連結して/互いに連結されて/互いに共有結合的または非共有結合的に結合して)標的に特異的に結合する(機能的)結合部位を形成する、
(環状)(単鎖)融合ポリペプチドである。
一態様において、(環状)(単鎖)融合ポリペプチドは、スペーサードメインのN末端側に結合ドメインの部分を正確に1つ含み、かつ、スペーサードメインのC末端側に同じ結合ドメインの、ただし異なる部分を正確に1つ含む。
一態様において、結合ドメインの第1部分は抗体重鎖可変ドメインであり、かつ結合ドメインの第2部分は抗体軽鎖可変ドメインであるか、またはその逆である。
一態様において、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分は、共有結合的に、互いに連結される。一態様において、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分は、ペプチド結合以外の結合によって互いに共有結合的に連結される。好ましい一態様において、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分は、ジスルフィド結合によって互いに共有結合的に連結される。
一態様において、結合ドメインの第1部分は抗体重鎖Fabフラグメント(VH+CH1)であり、かつ結合ドメインの第2部分は抗体軽鎖Fabフラグメント(VL+CL)であるか、またはその逆である。
一態様において、結合部位は、抗体重鎖可変ドメインと抗体軽鎖可変ドメインとの対を含まない/抗体可変ドメインを含まない。
好ましい一態様において、スペーサードメインは少なくとも25個のアミノ酸残基を含む。一態様において、スペーサードメインは少なくとも50個のアミノ酸残基を含む。一態様において、スペーサードメインは少なくとも100個のアミノ酸残基を含む。
一態様において、(環状)(単鎖)融合ポリペプチドはエフェクター機能を発揮する。一態様において、エフェクター機能はADCCまたは/およびCDCである。
一態様において、スペーサードメインは、抗体ヒンジ領域またはそのフラグメントと抗体CH2ドメインまたはそのフラグメントとを含む。一態様において、ヒンジ領域および抗体CH2ドメインまたはそれらのフラグメントは、ヒトIgG1サブクラスのものである。一態様において、ヒンジ領域および抗体CH2ドメインはSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を有する。
一態様において、スペーサードメインは、抗体ヒンジ領域またはそのフラグメントと、抗体CH2ドメインと、抗体CH3ドメインまたはそのフラグメントとを含む。一態様において、ヒンジ領域、抗体CH2ドメイン、および抗体CH3ドメイン、またはそれらのフラグメントは、ヒトIgG1サブクラスのものである。一態様において、ヒンジ領域、抗体CH2ドメイン、および抗体CH3ドメインは、SEQ ID NO:31〜51からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。好ましい一態様において、ヒンジ領域、抗体CH2ドメインおよび抗体CH3ドメインは、SEQ ID NO:32またはSEQ ID NO:33またはSEQ ID NO:38またはSEQ ID NO:39またはSEQ ID NO:40またはSEQ ID NO:41のアミノ酸配列を有する。
一態様において、第1および/または第2リンカーはペプチド性リンカーである。
一態様において、標的に(特異的に)結合する(環状)(単鎖)融合ポリペプチドは、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分とスペーサードメインとを含み、
- スペーサードメインは、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:40およびSEQ ID NO:41からなる群より選択されるアミノ酸配列を有し、
- 結合ドメインの第1部分は抗体重鎖Fabフラグメントであり、かつ結合ドメインの第2部分は抗体軽鎖Fabフラグメントであるか、またはその逆であり、
- 結合ドメインの第1部分は、SEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:65の第1ペプチド性リンカーを介して、スペーサードメインのN末端に融合されており、かつ結合ドメインの第2部分は、SEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:65の第2ペプチド性リンカーを介して、スペーサードメインのC末端に融合されており、第1および第2ペプチド性リンカーは互いに独立して選択され、かつ
- 抗体重鎖Fabフラグメントおよび抗体軽鎖Fabフラグメントは(互いに連結することで)標的に(特異的に)結合する(機能的)結合部位を形成する。
一態様において、(環状)(単鎖)融合ポリペプチドは、N末端からC末端に向かって、スペーサードメインの前(すなわちスペーサードメインのN末端側)に抗体可変ドメインを正確に1つ含み、スペーサードメインの後(すなわちスペーサードメインのC末端側)に抗体可変ドメインを正確に1つ含む。
一態様において、標的は、細胞表面抗原であるか、または細胞表面受容体の可溶性リガンドである。
一態様において、結合ドメインは、通常のFab、CrossFab、またはDutaFabである。
一態様において、結合ドメインは通常のFabであり、結合ドメインの一方の部分が、抗体重鎖可変ドメイン(VH)と第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1)の少なくともN末端フラグメント(または完全な第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1))とを含み、かつそれぞれ他方の結合ドメインが、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体軽鎖定常ドメイン(CL)の少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体軽鎖定常ドメイン(CL))を含むか、またはその逆である。
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CH1を含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CLを含むか、またはその逆である。
一態様において、結合ドメインはCrossFabであり、結合ドメインの両部分は抗体可変ドメインと抗体定常ドメインの少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体定常ドメイン)とを含み、可変ドメインと定常ドメインとの対は互いに天然ではない形で連結していて、重鎖ドメインと軽鎖ドメインとのドメイン交差/交換を有する。一態様において、交換は、VHとVLの交換またはCH1とCLの交換である。
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CH1を含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CLを含む。
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CLを含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CH1を含む。
結合ドメインの(コグネイト)部分の連結は、CrossFabにおけるドメイン交換だけでなく、電荷の導入によって、さらに促進することができる。場合により、(多環状)(二量体環状)融合ポリペプチドは、少なくとも第1(環状)融合ポリペプチドと第2(環状)融合ポリペプチドとを含む。
一態様において、(多環状)融合ポリペプチドは、
(a) 第1抗原に(特異的に)結合するFabを結合部位として含む第1(環状)融合ポリペプチド、および
(b) 第2抗原に特異的に結合するFabを結合部位として含む第2(環状)融合ポリペプチド
を含み、(第2環状融合ポリペプチドの)Fab中の可変ドメインVLおよびVHは互いに置き換えられている。
(a)の(環状)融合ポリペプチドは、(b)で報告するような修飾を含有しない。
(b)の(環状)融合ポリペプチドにおいて、
抗体軽鎖フラグメント内では、
可変軽鎖ドメインVLが、Fabの可変重鎖ドメインVHで置き換えられ、
かつ
抗体重鎖フラグメント内では、
可変重鎖ドメインVHが、Fabの可変軽鎖ドメインVLで置き換えられている。
一態様では、
(i) (多環状融合ポリペプチドの)第1(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、正荷電アミノ酸で置換され、かつ(多環状融合ポリペプチドの)第1(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸またはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、負荷電アミノ酸で置換されているか、
または
(ii) (多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、正荷電アミノ酸で置換され、かつ(多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸またはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、負荷電アミノ酸で置換されている。
好ましい一態様では、
(i) (多環状融合ポリペプチドの)第1(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)もしくはヒスチジン(H)で独立して(好ましい一態様ではリジン(K)もしくはアルギニン(R)で独立して)置換され、かつ(多環状融合ポリペプチドの)第1(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸もしくはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、グルタミン酸(E)、もしくはアスパラギン酸(D)で独立して置換されているか、
または
(ii) (多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)もしくはヒスチジン(H)で独立して(好ましい一態様ではリジン(K)もしくはアルギニン(R)で独立して)置換され、かつ(多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸もしくはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、グルタミン酸(E)もしくはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている。
一態様では、(多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabat EUインデックスによる124番目および123番目に対応する位置にあるアミノ酸は、Kで置換されている。
一態様では、(多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目および213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、Eで置換されている。
一態様において、結合ドメインはDutaFabであり、結合ドメインの一方の部分は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)と第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1)の少なくともN末端フラグメント(または完全な第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1))とを含み、かつそれぞれ他方の結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体軽鎖定常ドメイン(CL)の少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体軽鎖定常ドメイン(CL))とを含み、結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)との相補的な対の中に2つの非オーバーラップパラトープを含み、第1パラトープは、VLドメインのCDR1およびCDR3ならびにVHドメインのCDR2からの残基を含み、第2パラトープは、VHドメインのCDR1およびCDR3ならびにVLドメインのCDR2からの残基を含む。
本明細書において報告する一局面は、本明細書において報告する第1(環状)融合ポリペプチドと本明細書において報告する第2(環状)融合ポリペプチドとを含む(二環状)融合ポリペプチドであって、第1(環状)融合ポリペプチドおよび第2(環状)融合ポリペプチドが同一であるかまたは異なり、かつ第1(環状)融合ポリペプチドのスペーサードメインが、第2(環状)融合ポリペプチドのスペーサードメインに(共有結合的に)コンジュゲートされている、(二環状)融合ポリペプチドである。
一態様において、(二環状)融合ポリペプチドは、
- 第1標的に(特異的に)結合し、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分とスペーサードメインとを含む、第1(環状)(単鎖)融合ポリペプチドであって、
- スペーサードメインが、SEQ ID NO:32またはSEQ ID NO:38またはSEQ ID NO:40のアミノ酸配列を有し、
- 結合ドメインの第1部分が抗体重鎖Fabフラグメントであり、かつ結合ドメインの第2部分が抗体軽鎖Fabフラグメントであるか、またはその逆であり、
- 結合ドメインの第1部分が、SEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:65の第1ペプチド性リンカーを介して、スペーサードメインのN末端に融合されており、かつ結合ドメインの第2部分が、SEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:65の第2ペプチド性リンカーを介して、スペーサードメインのC末端に融合されており、第1および第2ペプチド性リンカーが互いに独立して選択され、
かつ
- 抗体重鎖Fabフラグメントおよび抗体軽鎖Fabフラグメントが(互いに連結することで)第1標的に(特異的に)結合する(機能的)結合部位を形成する、
第1(環状)(単鎖)融合ポリペプチドと、
- 第2標的に(特異的に)結合し、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分とスペーサードメインとを含む、第2(環状)(単鎖)融合ポリペプチドであって、
- スペーサードメインが、SEQ ID NO:33またはSEQ ID NO:39またはSEQ ID NO:41のアミノ酸配列を有し、
- 結合ドメインの第1部分が抗体重鎖Fabフラグメントであり、かつ結合ドメインの第2部分が抗体軽鎖Fabフラグメントであるか、またはその逆であり、
- 結合ドメインの第1部分が、SEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:65の第1ペプチド性リンカーを介して、スペーサードメインのN末端に融合されており、かつ結合ドメインの第2部分が、SEQ ID NO:64またはSEQ ID NO:65の第2ペプチド性リンカーを介して、スペーサードメインのC末端に融合されており、第1および第2ペプチド性リンカーが互いに独立して選択され、
かつ
- 抗体重鎖Fabフラグメントおよび抗体軽鎖Fabフラグメントが、(互いに連結することで)第2標的に(特異的に)結合する(機能的)結合部位を形成する、
第2(環状)(単鎖)融合ポリペプチドと
を含む。
一態様において、(環状)(単鎖)融合ポリペプチドのそれぞれは、N末端からC末端に向かって、スペーサードメインの前(すなわちスペーサードメインのN末端側)に抗体可変ドメインを正確に1つ含み、スペーサードメインの後(すなわちスペーサードメインのC末端側)に抗体可変ドメインを正確に1つ含む。
一態様において、標的は、細胞表面抗原であるか、または細胞表面受容体の可溶性リガンドである。
一態様において、結合ドメインは、通常のFab、CrossFab、またはDutaFabである。
一態様において、結合ドメインの1つまたはそれぞれは、通常のFabであり、結合ドメインの一方の部分が、抗体重鎖可変ドメイン(VH)と第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1)の少なくともN末端フラグメント(または完全な第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1))とを含み、かつそれぞれ他方の結合ドメインが、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体軽鎖定常ドメイン(CL)の少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体軽鎖定常ドメイン(CL))とを含む。
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CH1を含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CLを含むか、またはその逆である。
一態様において、結合ドメインの1つまたはそれぞれはCrossFabであり、結合ドメインの両部分は抗体可変ドメインと抗体定常ドメインの少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体定常ドメイン)とを含み、可変ドメインと定常ドメインとの対は互いに天然ではない形で連結していて、重鎖ドメインと軽鎖ドメインとのドメイン交差/交換を有する。一態様において、交換は、VHとVLの交換またはCH1とCLの交換である。
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CH1を含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CLを含む。
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CLを含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CH1を含む。
コグネイト結合ドメインの連結は、CrossFabにおけるドメイン交換だけでなく、電荷の導入によって、さらに促進することができる。この場合、(多環状)(二量体環状)融合ポリペプチドは、少なくとも第1(環状)融合ポリペプチドと第2(環状)融合ポリペプチドとを含む。
一態様において、(多環状)融合ポリペプチドは、
(a) 第1抗原に(特異的に)結合するFabを結合部位として含む第1(環状)融合ポリペプチド、および
(b) 第2抗原に(特異的に)結合するFabを結合部位として含む第2(環状)融合ポリペプチド
を含み、(第2(環状)融合ポリペプチドの)Fab中の可変ドメインVLおよびVHは互いに置き換えられている。
(a)の(環状)融合ポリペプチドは、(b)で報告するような修飾を含有しない。
(b)の(環状)融合ポリペプチドにおいて、
抗体軽鎖フラグメント内では、
可変軽鎖ドメインVLが、Fabの可変重鎖ドメインVHで置き換えられ、
かつ
抗体重鎖フラグメント内では、
可変重鎖ドメインVHが、Fabの可変軽鎖ドメインVLで置き換えられている。
一態様では、
(i) (多環状融合ポリペプチドの)第1(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、正荷電アミノ酸で置換され、かつ(多環状融合ポリペプチドの)第1(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸またはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、負荷電アミノ酸で置換されているか、
または
(ii) (多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、正荷電アミノ酸で置換され、かつ(多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸またはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、負荷電アミノ酸で置換されている。
好ましい一態様では、
(i) (多環状融合ポリペプチドの)第1(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)もしくはヒスチジン(H)で独立して(好ましい一態様ではリジン(K)もしくはアルギニン(R)で独立して)置換され、かつ(多環状融合ポリペプチドの)第1(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸もしくはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、グルタミン酸(E)もしくはアスパラギン酸(D)で独立して置換されているか、
または
(ii) (多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)もしくはヒスチジン(H)で独立して(好ましい一態様ではリジン(K)もしくはアルギニン(R)で独立して)置換され、かつ(多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸もしくはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、グルタミン酸(E)もしくはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている。
一態様では、(多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabat EUインデックスによる124番目および123番目に対応する位置にあるアミノ酸は、Kで置換されている。
一態様では、(多環状融合ポリペプチドの)第2(環状)融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目および213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、Eで置換されている。
一態様において、結合ドメインの1つまたはそれぞれはDutaFabであり、結合ドメインの一方の部分は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)と第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1)の少なくともN末端フラグメント(または完全な第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1))とを含み、かつそれぞれ他方の結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体軽鎖定常ドメイン(CL)の少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体軽鎖定常ドメイン(CL))とを含み、結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)との相補的な対の中に2つの非オーバーラップパラトープを含み、第1パラトープは、VLドメインのCDR1およびCDR3ならびにVHドメインのCDR2からの残基を含み、第2パラトープは、VHドメインのCDR1およびCDR3ならびにVLドメインのCDR2からの残基を含む。本明細書において報告する一局面は、本明細書において報告する環状融合ポリペプチドをコードする単離された核酸である。
本明細書において報告する一局面は、全体として本明細書において報告する二量体(環状)融合ポリペプチドをコードする、一対の単離された核酸である。
本明細書において報告する一局面は、本明細書において報告する核酸または本明細書において報告する一対の核酸を含む宿主細胞である。
本明細書において報告する一局面は、(環状または二環状)融合ポリペプチドを生産する方法であって、本明細書において報告する宿主細胞を(環状または二環状)融合ポリペプチドが生産されるように培養する工程、および細胞または培養培地から(環状または二環状)融合ポリペプチドを回収する工程を含む、方法である。
本明細書において報告する一局面は、本明細書において報告する(環状)融合ポリペプチドと細胞毒性作用物質とを含むイムノコンジュゲートである。
本明細書において報告する一局面は、本明細書において報告する(環状)融合ポリペプチドまたは本明細書において報告する(二量体)(環状)融合ポリペプチドと薬学的に許容される担体とを含む薬学的製剤である。
本明細書において報告する一局面は、医薬として使用するための、本明細書において報告する(環状)融合ポリペプチドまたは本明細書において報告する二量体(環状)融合ポリペプチドである。
本明細書において報告する一局面は、医薬の製造における、本明細書において報告する(環状)融合ポリペプチドまたは本明細書において報告する二量体(環状)融合ポリペプチドの使用である。
発明の詳細な説明
I.定義
ノブ・イントゥ・ホール(knob into hole)二量体化モジュールおよび抗体工学におけるそれらの使用は、Carter P.; Ridgway J.B.B.; Presta L.G.: Immunotechnology, Volume 2, Number 1, February 1996 , pp.73-73(1)に記載されている。
ヒト免疫グロブリン軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関する一般的情報は、Kabat, E.A., et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に与えられている。
本明細書において、重鎖および軽鎖のすべての定常領域および定常ドメインのアミノ酸位置は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)に記載のKabatナンバリングシステムに従ってナンバリングされ、これを本明細書では「ナンバリングはKabatに従う」という。具体的に述べると、κアイソタイプおよびλアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLには、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のKabatナンバリングシステム(647〜660頁参照)が使用され、定常重鎖ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2、およびCH3)には、Kabat EUインデックスナンバリングシステム(661〜723頁参照)が使用され、この場合、本明細書では、「ナンバリングはKabat EUインデックスに従う」ということによってさらに明確にされる)。
本発明の実行に有用な方法および手法は、例えばAusubel, F.M. (ed.), Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I〜III (1997); Glover, N.D., and Hames, B.D., ed., DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes IおよびII (1985), Oxford University Press; Freshney, R.I. (ed.), Animal Cell Culture - a practical approach, IRL Press Limited(1986); Watson, J.D., et al, Recombinant DNA, Second Edition, CHSL Press (1992); Winnacker, EX., From Genes to Clones; N.Y., VCH Publishers (1987); Celis, J., ed., Cell Biology, Second Edition, Academic Press (1998); Freshney, R.I., Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, second edition, Alan R. Liss, Inc., N.Y. (1987)に記載されている。
組換えDNA技術の使用により、核酸の誘導体を生成させることが可能になる。そのような誘導体は、例えば、個々のヌクレオチド位置またはいくつかのヌクレオチド位置が、置換、改変、交換、欠失、または挿入によって修飾されたものであることができる。そのような修飾および誘導体化は、例えば部位特異的突然変異誘発法を使って実行することができる。当業者は、そのような修飾を容易に実行することができる(例えばSambrook, J., et al, Molecular Cloning: A laboratory manual (1999) Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA; Hames, B.D., and Higgins, S.G., Nucleic acid hybridization - a practical approach(1985)IRL Press, Oxford, England参照)。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上そうでないことが明らかである場合を除き、複数の指示対象を包含することに留意しなければならない。したがって例えば、「細胞(a cell)」と書いた場合、それは、複数のそのような細胞および当業者に公知のそれらの等価物を包含する、などとなる。同様に、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の」および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書では、相互可換的に使用されうる。「を含む(comprising)」、「を包含する(including)」および「を有する(having)」という用語が、相互可換的に使用されうることにも留意されたい。
「約」という用語は、その後ろに続く数値の±20%の範囲を表す。一態様において、約という用語は、その後ろに続く数値の±10%の範囲を表す。一態様において、約という用語は、その後ろに続く数値の±5%の範囲を表す。
「アフィニティー」とは、ある分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合的相互作用の総計の強さを指す。別段の表示がある場合を除き、本明細書において使用する場合、「結合アフィニティー」は、結合対のメンバー(例えば抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合アフィニティーを指す。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティーは、一般に、解離定数(kd)によって表すことができる。アフィニティーは、本明細書に記載する方法を含む、当技術分野において公知の一般的方法によって測定することができる。
「アミノ酸配列タグ」という用語は、ペプチド結合を介して互いに接続された、特異的結合特性を有するアミノ酸残基の配列を表す。一態様において、アミノ酸配列タグはアフィニティータグまたは精製タグである。一態様において、アミノ酸配列タグは、Argタグ、Hisタグ、Flagタグ、3×Flagタグ、Strepタグ、Nanoタグ、SBPタグ、c-mycタグ、Sタグ、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合ドメイン、キチン結合ドメイン、GSTタグ、またはMBPタグである。一態様において、アミノ酸配列タグは、SEQ ID NO:01(RRRRR)またはSEQ ID NO:02(RRRRRR)、またはSEQ ID NO:03(HHHHHH)、または
Figure 2019521084
、または
Figure 2019521084
、または
Figure 2019521084
、または
Figure 2019521084
、または
Figure 2019521084
、または
Figure 2019521084
、または
Figure 2019521084
、または
Figure 2019521084
、または
Figure 2019521084
、または
Figure 2019521084
、または
Figure 2019521084
、またはSEQ ID NO:15(セルロース結合ドメイン)、またはSEQ ID NO:16(セルロース結合ドメイン)、または
Figure 2019521084
、またはSEQ ID NO:18(GSTタグ)、またはSEQ ID NO:19(MBPタグ)から選択される。
「アミノ酸置換」という用語は、前もって決定された親アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なる「置換え」アミノ酸残基で置き換えることを表す。1つまたは複数の置換え残基は「天然のアミノ酸残基」(すなわち遺伝暗号によってコードされているもの)であってよく、アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu);リジン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);スレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);およびバリン(Val)からなる群より選択されうる。一態様において、置換え残基はシステインではない。本明細書におけるアミノ酸置換の定義には、1つまたは複数の非天然アミノ酸残基による置換も包含される。「非天然アミノ酸残基」とは、ポリペプチド鎖中の隣接アミノ酸残基に共有結合的に結合することができる、上に列挙した天然アミノ酸残基以外の残基を表す。非天然アミノ酸残基の例としては、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、aibおよび他のアミノ酸残基類似体、例えばEllman, et al, Meth. Enzym. 202 (1991) 301-336に記載されているものが挙げられる。そのような非天然アミノ酸残基を生成させるには、Norenら(Science 244 (1989) 182)および/またはEllmanら(前掲)の方法を使用することができる。簡単に述べると、これらの方法では、サプレッサーtRNAを非天然アミノ酸残基で化学的に活性化してから、インビトロ転写およびRNAの翻訳を行う。非天然アミノ酸は、化学ペプチド合成、および、それに続く、これらのペプチドと組換え生産されたポリペプチドとの、例えば抗体または抗体フラグメントとの融合によって、ペプチドに組み込むこともできる。
「抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)」という用語はFc受容体結合によって媒介される機能であり、エフェクター細胞の存在下で抗体Fc領域によって媒介される標的細胞の溶解を指す。ADCCは、一態様では、新鮮単離PBMC(末梢血単核球)などのエフェクター細胞の存在下または単球もしくはNK(ナチュラルキラー)細胞のようなバフィーコートからの精製エフェクター細胞の存在下で、標的を発現する赤血球系細胞(例えば組換え標的を発現するK562細胞)の調製物を、本明細書において報告するFc領域を含む多環状融合ポリペプチドで処理することによって測定される。標的細胞をCr-51で標識してから、多環状融合ポリペプチドと共にインキュベートする。標識細胞をエフェクター細胞と共にインキュベートし、放出されたCr-51について上清を分析する。対照には、標的内皮細胞を多環状融合ポリペプチドなしでエフェクター細胞と共にインキュベートすることを含める。FcγRIおよび/またはFcγRIIAを組換え発現する細胞または(本質的にFcγRIIIAを発現する)NK細胞などのFcγ受容体発現細胞への結合を測定することによって、ADCCを媒介する初期段階を誘発する多環状融合ポリペプチドの能力を調べる。好ましい一態様では、NK細胞上のFcγRへの結合を測定する。
「に結合する」という用語は、結合部位のその標的への結合、例えば抗体重鎖可変ドメインと抗体軽鎖可変ドメインとを含む抗体結合部位のそれぞれの抗原への結合を表す。この結合は、例えばBIAcore(登録商標)アッセイ(GE Healthcare、スウェーデン国ウプサラ)を使って、決定することができる。
例えば、BIAcore(登録商標)アッセイの考えうる一態様では、抗原を表面に結合し、表面プラズモン共鳴(SPR)によって抗体結合部位の結合を測定する。結合のアフィニティーは、ka(会合定数:複合体を形成する会合に関する速度定数)、kd(解離定数:複合体の解離に関する速度定数)およびKD(kd/ka)の各項によって定義される。あるいは、SPRセンサーグラムの結合シグナルを、共鳴シグナルの高さおよび解離挙動に関して、リファレンスの応答シグナルと直接比較することができる。
「CH1ドメイン」という用語は、抗体重鎖ポリペプチドのうち、およそEU位置118からEU位置215まで(EUナンバリングシステム)にわたる部分を表す。一態様において、CH1ドメインは
Figure 2019521084
のアミノ酸配列を有する。
「CH2ドメイン」という用語は、抗体重鎖ポリペプチドのうち、およそEU位置231からEU位置340まで(KabatによるEUナンバリングシステム)にわたる部分を表す。一態様において、CH2ドメインは
Figure 2019521084
のアミノ酸配列を有する。CH2ドメインは、別のドメインと密接には対を形成していない点でユニークである。むしろ、無傷のネイティブFc領域の2つのCH2ドメインの間には、2つのN結合型分岐糖質鎖が差し挟まれている。この糖質はドメイン-ドメイン対形成の代用となって、CH2ドメインの安定化に役立つことができると推測されている。Burton, Mol. Immunol. 22 (1985) 161-206。
「CH3ドメイン」という用語は、抗体重鎖ポリペプチドのうち、およそEU位置341からEU位置446までにわたる部分を表す。一態様において、CH3ドメインは
Figure 2019521084
のアミノ酸配列を有する。
抗体またはFc領域の「クラス」は、重鎖またはそのフラグメントが保有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。5つの主要クラス、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分割することができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
本明細書において使用する「細胞毒性作用物質」という用語は、細胞機能を阻害もしくは妨げ、かつ/または細胞の死または破壊を引き起こす物質を指す。細胞毒性作用物質としては、放射性同位体(例えばAt-211、I-131、I-125、Y-90、Re-186、Re-188、Sm-153、Bi-212、P-32、Pb-212、およびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えばメトトレキサート、アドリアマイシン(adriamicin)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);成長阻害性作用物質;酵素およびそれらのフラグメント、例えば核酸分解酵素;抗生物質;毒素、例えば細菌、真菌、植物または動物由来の低分子量毒素または酵素活性毒素(それらのフラグメントおよび/または変異体を含む);ならびに以下に開示するさまざまな抗腫瘍作用物質または抗がん作用物質が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
「補体依存性細胞傷害(CDC)」という用語は、補体の存在下で、本明細書において報告する抗体のFc領域によって誘発される細胞の溶解を指す。CDCは、一態様では、標的を発現するヒト内皮細胞を、補体の存在下で、本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドで処理することによって測定される。一態様では、細胞をカルセインで標識する。多環状融合ポリペプチドが、30μg/mlの濃度で20%またはそれ以上の標的細胞の溶解を誘発するのであれば、CDCが見いだされる。補体因子C1qへの結合はELISAにおいて測定することができる。そのようなアッセイでは、原則として、ある濃度範囲の多環状融合ポリペプチドでELISAプレートをコーティングし、そこに精製ヒトC1qまたはヒト血清を加える。C1q結合は、C1qに対する抗体とそれに続くペルオキシダーゼ標識コンジュゲートによって検出される。結合の検出(最大結合Bmax)は、ペルオキシダーゼ基質ABTS(登録商標)(2,2'-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホネート])に関して、405nmにおける光学密度(OD405)として測定される。
本明細書において使用する「ドメイン交差」という用語は、抗体重鎖VH-CH1フラグメントとその対応するコグネイト抗体軽鎖との対において、すなわち抗体結合アームにおいて(すなわちFabフラグメントにおいて)、少なくとも1つの重鎖ドメインがその対応軽鎖ドメインで置換され、その逆の置換もなされている点で、ドメイン配列が天然配列から逸脱していることを表す。ドメイン交差には3つの一般的タイプ、すなわち(i) VL-CH1ドメイン配列を有するドメイン交差軽鎖とVH-CLドメイン配列を有するドメイン交差重鎖フラグメント(またはVH-CL-ヒンジ-CH2-CH3ドメイン配列を有する完全長抗体重鎖)とをもたらすCH1ドメインとCLドメインとの交差、(ii) VH-CLドメイン配列を有するドメイン交差軽鎖とVL-CH1ドメイン配列を有するドメイン交差重鎖フラグメントとをもたらすVHドメインとVLドメインとのドメイン交差、および(iii) VH-CH1ドメイン配列を有するドメイン交差軽鎖とVL-CLドメイン配列を有するドメイン交差重鎖フラグメントとをもたらす完全軽鎖(VL-CL)と完全VH-CH1重鎖フラグメントとのドメイン交差(「Fab交差」)がある(上述のドメイン配列はいずれもN末端からC末端に向かう方向に示されている)。
対応する重鎖ドメインおよび軽鎖ドメインに関して本明細書において使用する「互いに置き換えられる」という用語とは、上述のドメイン交差を指す。したがって、CH1ドメインとCLドメインとが「互いに置き換えられている」場合、それは、項目(i)で述べたドメイン交差と、その結果生じる重鎖および軽鎖ドメイン配列とを指す。したがって、VHとVLとが「互いに置き換えられている」場合、それは、項目(ii)で述べたドメイン交差を指し、CH1ドメインとCLドメインが「互いに置き換えられており」かつVH1ドメインとVLドメインとが「互いに置き換えられている」場合、それは、項目(iii)で述べたドメイン交差を指す。ドメイン交差を含む二重特異性抗体は、例えばWO 2009/080251、WO 2009/080252、WO 2009/080253、WO 2009/080254およびSchaefer, W. et al, Proc. Natl. Acad. Sci USA 108 (2011) 11187-11192において報告されている。
本明細書において報告する方法で生産される多重特異性抗体は、本質的に、上記項目(i)で述べたCH1ドメインとCLドメインとのドメイン交差または上記項目(ii)で述べたVHドメインとVLドメインとのドメイン交差を含むFabフラグメントを含む。同じ抗原に特異的に結合するFabフラグメントは、同じドメイン配列を有するように構築される。したがって、あるドメイン交差を有するFabフラグメントが多重特異性抗体に2つ以上含まれている場合、それらのFabフラグメントは同じ抗原に特異的に結合する。
「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指し、それが由来する抗体クラスによってさまざまである。抗体エフェクター機能の例として、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC); Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)のダウンレギュレーション;およびB細胞活性化が挙げられる。
Fc受容体結合依存的エフェクター機能は、抗体のFc領域と、造血細胞上の特殊化した細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)との相互作用によって媒介されうる。Fc受容体は免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、免疫複合体の貪食による抗体被覆病原体の除去と、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)による赤血球およびFc領域を提示する他のさまざまな細胞標的(例えば腫瘍細胞)の溶解とを、どちらも媒介することが示されている(例えばVan de Winkel, J.G. and Anderson, C.L., J. Leukoc. Biol. 49 (1991) 511-524参照)。FcRは、免疫グロブリンアイソタイプに対するそれぞれの特異性によって規定され、IgGタイプのFc領域に対するFc受容体はFcγRと呼ばれる。Fc受容体結合は、例えばRavetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492; Capel, P.J., et al, Immunomethods 4 (1994) 25-34; de Haas, M., et al, J. Lab. Clin. Med. 126 (1995) 330-341; Gessner, J.E., et al, Ann. Hematol. 76 (1998) 231-248に記載されている。
IgGタイプの抗体のFc領域に対する受容体(FcγR)の架橋は、貪食、抗体依存性細胞性細胞傷害、および炎症性メディエーターの放出、ならびに免疫複合体クリアランスおよび抗体生産の調節を含む、多種多様なエフェクター機能の引き金を引く。ヒトでは、3つのFcγRクラスが特徴決定されており、それらは以下のとおりである。
- FcγRI(CD64)は、単量体IgGに高いアフィニティーで結合し、マクロファージ、単球、好中球および好酸球上に発現する。アミノ酸残基E233〜G236、P238、D265、N297、A327およびP329(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)のうちの少なくとも1つにおけるIgGのFc領域中の修飾は、FcγRIへの結合を低減する。IgG1およびIgG4中に置換された233〜236番目のIgG2残基は、FcγRIへの結合を103分の1に低減し、抗体感作赤血球細胞に対するヒト単球応答を排除した(Armour, K.L., et al, Eur. J. Immunol. 29 (1999) 2613-2624)。
- FcγRII(CD32)は、複合体化したIgGに、中〜低アフィニティーで結合し、広く発現している。この受容体は2つのサブタイプFcγRIIAおよびFcγRIIBに分けることができる。FcγRIIAは、死滅に関与する多くの細胞(例えばマクロファージ、単球、好中球)に見いだされ、死滅プロセスを活性化することができるようである。FcγRIIBは、阻害プロセスにおいて役割を果たすと思われ、B細胞、マクロファージならびに肥満細胞および好酸球上に見いだされる。これは、B細胞上では、さらなる免疫グロブリン生産および例えばIgEクラスへのアイソタイプスイッチングを抑制する機能を果たすようである。FcγRIIBは、マクロファージ上では、FcγRIIAによって媒介される貪食を阻害するように作用する。このB型は、好酸球および肥満細胞上では、IgEがその別個の受容体に結合することによるこれらの細胞の活性化を抑制するのに役立ちうる。FcγRIIAに対する結合の低減は、例えばアミノ酸残基E233〜G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292およびK414(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)のうちの少なくとも1つに突然変異を有するIgG Fc領域を含む抗体に見いだされる。
- FcγRIII(CD16)は中〜低アフィニティーでIgGに結合し、2つのタイプが存在する。FcγRIIIAはNK細胞、マクロファージ、好中球ならびに一部の単球およびT細胞上に見いだされ、ADCCを媒介する。FcγRIIIBは好中球に高発現している。FcγRIIIAへの結合の減少は、例えばアミノ酸残基E233〜G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338、およびD376(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)のうちの少なくとも1つに突然変異を有するIgG Fc領域を含む抗体に見いだされる。
Fc受容体に対するヒトIgG1上の結合部位のマッピング、上述の突然変異部位ならびにFcγRIおよびFcγRIIAへの結合を測定するための方法は、Shields, R.L., et al. J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604に記載されている。
作用物質、例えば薬学的製剤の「有効量」とは、所望の治療結果または予防結果を達成するのに、必要な投薬量および期間で、有効な量を指す。
「エピトープ」という用語は、所与の標的のうち、その標的と結合部位との間の特異的結合に要求される部分を指す。エピトープは、連続的である場合、すなわち標的中に存在する隣り合った構造要素によって形成される場合もあるし、不連続である場合、すなわち標的の一次配列中では、例えば標的としてのタンパク質のアミノ酸配列中では、異なる位置にあるが、体液などの自然環境中で標的がとる三次元構造中では近接している構造要素によって形成される場合もある。
本明細書において使用する「Fc受容体」という用語は、受容体に付随する細胞質ITAM配列の存在を特徴とする活性化受容体を指す(例えばRavetch, J.V. and Bolland, S., Annu. Rev. Immunol. 19 (2001) 275-290参照)。そのような受容体はFcγRI、FcγRIIAおよびFcγRIIIAである。「FcγRの結合がない」という用語は、10μg/mlの抗体濃度において、NK細胞への本明細書において報告する抗体の結合が、WO 2006/029879において報告されている抗OX40L抗体LC.001について見いだされる結合の10%またはそれ未満であることを表す。
IgG4は低減したFcR結合を示すが、他のIgGサブクラスの抗体は強い結合を示す。ただし、Pro238、Asp265、Asp270、Asn297(Fc糖質の喪失)、Pro329、Leu234、Leu235、Gly236、Gly237、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434、およびHis435は、改変されると、同様に低減したFcR結合を与える残基である(Shields, R.L., et al. J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604; Lund, J., et al, FASEB J. 9 (1995) 115-119; Morgan, A., et al, Immunology 86 (1995) 319-324;およびEP 0 307 434)。
一態様において、本明細書において報告する環状単鎖融合ポリペプチドのスペーサードメインは抗体Fc領域である。
一態様において、本明細書において報告する環状融合ポリペプチド中のFc領域は、IgG1サブクラスまたはIgG2サブクラスのものであり、突然変異PVA236、GLPSS331、および/またはL234A/L235A/P329Gを含む。
一態様において、本明細書において報告する環状融合ポリペプチド中のFc領域は、IgG1サブクラスのものであり、かつ突然変異L234A/L235Aを含む。一態様において、環状融合ポリペプチド中のFc領域は、突然変異P329Gをさらに含む。一態様において、本明細書において報告する環状融合ポリペプチド中のFc領域は、IgG1サブクラスのものであり、かつ突然変異L234A/L235A/P329G(ナンバリングはいずれもKabatのEUインデックスに従う)を含む。
一態様において、本明細書において報告する環状融合ポリペプチド中のFc領域は、IgG4サブクラスのものであり、かつ突然変異L235Eを含む。一態様において、環状融合ポリペプチド中のFc領域は、突然変異S228Pをさらに含む。一態様において、環状融合ポリペプチド中のFc領域は、突然変異P329Gをさらに含む。一態様において、本明細書において報告する環状融合ポリペプチド中のFc領域は、IgG4サブクラスのものであり、かつ突然変異S228P/L235E/P329G(ナンバリングはいずれもKabatのEUインデックスに従う)を含む。
「Fc領域」という用語は、本明細書では、定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を画定するために使用される。この用語は、ネイティブ配列Fc領域および変異型Fc領域を包含する。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、重鎖のCys226から、またはPro230から、またはAla231から、カルボキシル末までにわたる。ただしFc領域のC末端リジン(Lys447)は存在しても存在しなくてもよい。
本明細書において報告する環状融合ポリペプチドは、Fc領域を、一態様ではヒト由来のFc領域を含みうる。一態様において、Fc領域は、ヒト定常領域のすべての部分を含む。Fc領域は、補体活性化、C1q結合、C3活性化、およびFc受容体結合に直接関与する。C1qへの結合は、Fc領域中の所定の結合部位によってもたらされる。そのような結合部位は、現在の当技術分野では公知であり、例えばLukas, T.J., et al, J. Immunol. 127 (1981) 2555-2560; Brunhouse, R., and Cebra, J.J., Mol. Immunol. 16 (1979) 907-917; Burton, D.R., et al, Nature 288 (1980) 338-344; Thommesen, J.E., et al, Mol. Immunol. 37 (2000) 995-1004; Idusogie, E.E., et al, J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184; Hezareh, M., et al, J. Virol. 75 (2001) 12161-12168; Morgan, A., et al, Immunology 86 (1995) 319-324;およびEP 0 307 434に記載されている。そのような結合部位は、例えばL234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331、およびP329(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)である。サブクラスIgG1、IgG2およびIgG3の抗体が、通常、補体活性化、C1q結合およびC3活性化を示すのに対し、IgG4は補体系を活性化せず、C1qに結合せず、C3を活性化しない。「抗体のFc領域」は、当業者には周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて画定される。一態様において、Fc領域はヒトFc領域である。一態様において、Fc領域は、突然変異S228Pおよび/またはL235Eおよび/またはP329G(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)を含むヒトIgG4サブクラスのものである。一態様において、Fc領域は、突然変異L234AおよびL235Aを含み、任意でP329Gを含む(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)、ヒトIgG1サブクラスのものである。
「ヒンジ領域」という用語は、野生型抗体重鎖中でCH1ドメインとCH2ドメインとを接合している部分、例えばKabatのEUナンバーシステム(number system)で216番目あたりから230番目あたりまで、またはKabatのEUナンバーシステムで226番目あたりから230番目あたりまでを表す。他のIgGサブクラスのヒンジ領域は、IgG1サブクラス配列のヒンジ領域システイン残基との整列によって決定することができる。
ヒンジ領域は、通常、同一のアミノ酸配列を有する2つのポリペプチドからなる二量体分子である。ヒンジ領域は、一般的には、約25個のアミノ酸残基を含み、かつ、フレキシブルであり、付随する標的結合部位が独立して動くことを可能にする。ヒンジ領域は、3つのドメイン、すなわち上部(upper)、中央(middle)、および下部(lower)ヒンジドメインに細分することができる(例えばRoux, et al., J. Immunol. 161 (1998) 4083参照)。
一態様において、ヒンジ領域はアミノ酸配列
Figure 2019521084
を有し、XはSまたはPである。一態様において、ヒンジ領域はアミノ酸配列
Figure 2019521084
を有し、XはSまたはPである。一態様において、ヒンジ領域はアミノ酸配列CPXCP(SEQ ID NO:25)を有し、XはSまたはPである。
「野生型Fc領域」という用語は、自然に見いだされるFc領域のアミノ酸配列と同一なアミノ酸配列を表す。野生型ヒトFc領域としては、ネイティブヒトIgG1Fc領域(非AおよびAアロタイプ)、ネイティブヒトIgG2Fc領域、ネイティブヒトIgG3Fc領域、およびネイティブヒトIgG4Fc領域、ならびにその天然変異体が挙げられる。野生型Fc領域を以下に示す:SEQ ID NO:26(IgG1、白人アロタイプ)、SEQ ID NO:27(IgG1、アフリカ系アメリカ人アロタイプ)、SEQ ID NO:28(IgG2)、SEQ ID NO:29(IgG3)およびSEQ ID NO:30(IgG4)。
「変異型(ヒト)Fc領域」という用語は、少なくとも1つの「アミノ酸突然変異」によって「野生型」(ヒト)Fc領域アミノ酸配列とは異なっているアミノ酸配列を表す。一態様において、変異型Fc領域はネイティブFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有し、例えばネイティブFc領域中に約1〜約10個のアミノ酸突然変異、一態様では約1〜約5個のアミノ酸突然変異を有する。一態様において、(変異型)Fc領域は野生型Fc領域と少なくとも約80%の相同性を有し、一態様において、変異型Fc領域は少なくとも約90%の相同性を有する。一態様において、変異型Fc領域は少なくとも約95%の相同性を有する。
変異型(ヒト)Fc領域は、含まれているアミノ酸突然変異によって規定される。したがって、例えばP329Gという用語は、親(野生型)Fc領域との比較でアミノ酸位置329にプロリンからグリシンへの突然変異を有する変異型Fc領域を表す(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)。野生型アミノ酸の実体は明記されていなくてもよく、その場合、上述の変異体は329Gと呼ばれる。「突然変異」という用語は、天然アミノ酸への変化も非天然アミノ酸への変化も表す(例えばUS 6,586,207、WO 98/48032、WO 03/073238、US 2004/0214988、WO 2005/35727、WO 2005/74524、Chin, J.W., et al, J. Am. Chem. Soc. 124 (2002) 9026-9027; Chin, J.W. and Schultz, P.G., ChemBioChem 11 (2002) 1135-1137; Chin, J.W., et al, PICAS United States of America 99 (2002) 11020-11024; Wang, L. and Schultz, P.G., Chem. (2002) 1-10参照)。
IgG1サブクラスの野生型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、227番目のシステイン残基で始まり446番目のグリシン残基で終わる以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異T366S、L368A、およびY407Vを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異T366Wを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異L234AおよびL235Aを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異L234A、L235A、T366S、L368A、およびY407Vを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異L234A、L235A、およびT366Wを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異L234A、L235A、およびP329Gを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異L234A、L235A、P329G、T366S、L368A、およびY407Vを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異L234A、L235A、P329G、およびT366Wを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異L234A、L235A、P329G、Y349C、T366S、L368A、およびY407Vを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異L234A、L235A、P329G、S354C、およびT366Wを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異L234A、L235A、P329G、S354C、T366S、L368A、およびY407Vを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異L234A、L235A、P329G、Y349C、およびT366Wを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異I253A、H310A、およびH435Aを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異H310A、H433A、およびY436Aを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異M252Y、S254T、およびT256Eを有するIgG1サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
IgG4サブクラスの野生型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異S228PおよびL235Eを有するIgG4サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異S228P、L235E、およびP329Gを有するIgG4サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異S228P、L235E、P329G、T366S、L368A、およびY407Vを有するIgG4サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
突然変異S228P、L235E、P329G、およびT366Wを有するIgG4サブクラスの変異型ヒトFc領域のポリペプチド鎖は、以下のアミノ酸配列を有する:
Figure 2019521084
「フレームワーク」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメインFR1、FR2、FR3およびFR4からなる。したがって、HVR配列とFR配列は一般にVH(またはVL)中に、以下の順序で現れる: FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、本明細書では相互可換的に使用されて、ネイティブ抗体構造と実質的に類似する構造を有する抗体を指す。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養」という用語は、相互可換的に使用され、外因性核酸が導入されている細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を包含し、それらには、初代形質転換細胞とそこから派生する子孫とが継代数を問わずに包含される。子孫は、核酸内容物が親細胞と完全には同一でなくて、変異を含有してもよい。最初に形質転換された細胞において選別または選択されたものと同じ機能または生物学的活性を有する突然変異型子孫は、ここに包含される。
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVRからのアミノ酸残基とヒトFRからのアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。ある特定の態様において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質上すべてを含み、その可変ドメインでは、HVR(例えばCDR)のすべてまたは実質上すべてが非ヒト抗体のものに対応し、FRのすべてまたは実質上すべてがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含みうる。抗体の、例えば非ヒト抗体の、「ヒト化型」とは、ヒト化を受けた抗体を指す。
本明細書において使用する「超可変領域」または「HVR」という用語は、抗体可変ドメインのうち、配列が超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」)、かつ/または構造上明確なループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触部」)を含有するアミノ酸残基ストレッチを含む領域のそれぞれを指す。一般に、抗体は6つのHVRを含み、3つはVHに(H1、H2、H3)、そして3つはVL(L1、L2、L3)にある。
HVRは、
(a) アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917);
(b) アミノ酸残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)、31〜35b(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)に存在するCDR(Kabat, E.A. et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242);
(c) アミノ酸残基27c〜36(L1)、46〜55(L2)、89〜96(L3)、30〜35b(H1)、47〜58(H2)および93〜101(H3)に存在する抗原接触部(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996));および
(d) アミノ酸残基46〜56(L2)、47〜56(L2)、48〜56(L2)、49〜56(L2)、26〜35(H1)、26〜35b(H1)、49〜65(H2)、93〜102(H3)および94〜102(H3)を含む(a)、(b)、および/または(c)の組み合わせ
を含む。
別段の表示がある場合を除き、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えばFR残基)は、本明細書では、前掲のKabatらに従ってナンバリングされる。
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の分子、例えば限定するわけではないが細胞毒性作用物質などにコンジュゲートされた、本明細書において報告する環状融合ポリペプチドである。
「個体」または「対象」は哺乳動物である。哺乳動物として、家畜(例えばウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えばヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、および齧歯類(例えばマウスおよびラット)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ある特定の態様において、個体または対象はヒトである。
「単離された」環状融合ポリペプチド、すなわち二環状融合ポリペプチドまたは多環状融合ポリペプチドは、その天然環境の構成要素から分離されたものである。いくつかの態様において、環状融合ポリペプチドは、例えば電気泳動(例えばSDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えばイオン交換または逆相HPLC)による決定で、純度95%超または99%超まで精製される。純度を評価するための方法に関する総説として、例えばFlatman, S. et al, J. Chromatogr. B 848 (2007) 79-87を参照されたい。
「単離された」核酸とは、その天然環境の構成要素から分離された核酸分子を指す。単離された核酸には、その核酸を通常含有する細胞に含まれている核酸分子が包含されるが、この核酸分子は染色体外に存在するか、その天然の染色体位置とは異なる染色体上の位置に存在する。
「(多)環状融合ポリペプチドをコードする単離された核酸」とは、それぞれが環状融合ポリペプチドの単鎖ポリペプチドをコードする、1つの(ホモ多量体(多)環状融合ポリペプチド)または複数の(ヘテロ多量体(多)環状融合ポリペプチド)核酸分子を指し、かつ、単一ベクター中または別々のベクター中のそのような核酸分子、および宿主細胞中の1つまたは複数の場所に存在するそのような核酸分子を包含する。
「軽鎖」という用語は、ネイティブIgG抗体の短い方のポリペプチド鎖を表す。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの一方に割り当てることができる。ヒトκ軽鎖定常ドメインについてはSEQ ID NO:52を、またヒトλ軽鎖定常ドメインについてはSEQ ID NO:53を参照されたい。
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、例えば天然の突然変異を含有しまたはモノクローナル抗体の生産時に生じ、存在量が一般に少量である、変異型抗体などといった考えうる変異型抗体を除けば、前記集団を構成する個々の抗体は同一であり、かつ/または同じエピトープに結合する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基を指向する。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示しており、何か特定の方法による抗体の生産を必要とするとみなしてはならない。例えば本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定するわけではないがハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法などといったさまざまな手法によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的方法は、本明細書において説明する。
「裸の環状融合ポリペプチド」とは、何らかの部分(例えば細胞毒性部分)または放射性ラベルにコンジュゲートされていない環状融合ポリペプチドを指す。裸の環状融合ポリペプチドは薬学的製剤中に存在しうる。
「ネイティブ抗体」とは、さまざまな構造を有する天然の免疫グロブリン分子を指す。例えばネイティブIgG抗体は、ジスルフィド結合された2本の同一軽鎖および2本の同一重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各重鎖は、N末端からC末端に向かって、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインともいう可変領域(VH)と、それに続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)とを有し、第1定常ドメインと第2定常ドメインとの間にヒンジ領域が位置する。同様に、各軽鎖は、N末端からC末端に向かって、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインともいう可変領域(VL)と、それに続く定常軽鎖(CL)ドメインとを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの一方に割り当てることができる。
「添付文書」という用語は、治療製品の市販パッケージに通例含まれていて、適応症、用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌および/または当該治療製品の使用上の注意に関する情報を含んでいる説明書を指すために使用される。
「パラトープ」という用語は、所与の抗体分子のうち、標的と結合部位との間の特異的結合に必要な部分を指す。パラトープは、連続的である場合、すなわち結合部位中に存在する隣り合ったアミノ酸残基によって形成される場合もあるし、不連続である場合、すなわちアミノ酸残基の一次配列中では、例えばアミノ酸残基のCDRのアミノ酸配列中では、異なる位置にあるが、結合部位がとる三次元構造中では近接しているアミノ酸残基によって形成される場合もある。
「ペプチド性リンカー」という用語は、天然起源および/または合成起源のリンカーを表す。ペプチド性リンカーは、20種類の天然アミノ酸を、ペプチド結合によって接続されるモノマービルディングブロックとする、アミノ酸の線状鎖からなる。この鎖は、1〜50アミノ酸残基、好ましくは1〜28アミノ酸残基、とりわけ好ましくは3〜25アミノ酸残基の長さを有する。ペプチド性リンカーは、反復アミノ酸配列または天然ポリペプチドの配列を含有しうる。ペプチド性リンカーは、環状融合ポリペプチドのドメインが正しく折りたたまれることおよびドメインが適正に提示されることを可能にすることによって、それらのドメインがそれぞれの生物学的活性を発揮できることを保証する機能を有する。好ましくは、ペプチド性リンカーは、グリシン、グルタミン、および/またはセリン残基に富むように設計された「合成ペプチド性リンカー」である。これらの残基は、例えば5アミノ酸までの小さな繰り返し単位、例えば
Figure 2019521084
に配置される。
この小さな繰り返し単位を2〜5回繰り返すことで、例えば
Figure 2019521084
などのマルチマー単位を形成させることができる。マルチマー単位のアミノ末端および/またはカルボキシ末端には、任意の天然アミノ酸を6個まで追加することができる。他の合成ペプチド性リンカーは、例えばリンカー
Figure 2019521084
中のセリンなど、10〜20回繰り返される単一アミノ酸で構成され、アミノ末端および/またはカルボキシ末端に任意の天然アミノ酸をさらに6個まで含みうる。すべてのペプチド性リンカーは核酸分子によってコードすることができるので、組換え発現させることができる。リンカーはそれ自体がペプチドであるから、抗融合性ペプチド(antifusogenic peptide)は、2つのアミノ酸の間に形成されるペプチド結合によって、リンカーに接続される。
リファレンスポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、どの保存的置換も配列同一性の一部とはみなさずに、配列同一性パーセントが最大になるように配列を整列し、必要であればギャップを導入した後に、リファレンスポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当技術分野における技量の範囲内にあるさまざまな方法で、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公に利用できるコンピュータソフトウェアを使って、達成することができる。当業者は、配列を整列するための適当なパラメータを、比較する配列の全長にわたって最大のアラインメントを得るのに必要な任意のアルゴリズムを含めて、決定することができる。ただし、本明細書における目的には、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使って、アミノ酸配列同一性%値を生成させる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはGenentech, Inc.によって作成されたものであり、ソースコードは米国著作権局(20559ワシントンD.C.)に利用者向け文書と共に登録申請され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc.(カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)から公的に入手するか、またはソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN-2プログラムは、digital UNIX V4.0DなどのUNIXオペレーティングシステム上で使用するためにコンパイルすべきである。すべての配列比較パラメータはALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
アミノ酸配列比較にALIGN-2を使用する場合、所与のアミノ酸配列Bに対する、または所与のアミノ酸配列Bとの、または所与のアミノ酸配列Bと対比した、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(これは、所与のアミノ酸配列Bに対して、または所与のアミノ酸配列Bと、または所与のアミノ酸配列Bと対比して、ある特定のアミノ酸配列同一性%を有する、または含む、所与のアミノ酸配列Aと、言い換えることもできる)は、次のように計算される。
分率X/Y×100
Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2が、そのプログラムによるAとBとのアラインメントにおいて、完全一致(identical match)と記録したアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合に、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%が、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と一致しなくなることは、理解されるであろう。別段の具体的言明がある場合を除き、本明細書において使用するアミノ酸配列同一性%値はすべて、すぐ上の段落で説明したように、ALIGN-2コンピュータプログラムを使って得られる。
「薬学的製剤」という用語は、そこに含有される活性成分の生物学的活性が有効であることを許すような形態にあって、その製剤を投与されることになる対象にとって、許容できないほどに毒性な追加の構成成分を含有しない調製物を指す。
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって非毒性である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
本明細書において使用する場合、「処置(treatment)」(およびその文法上の変形、例えば「処置する(treat)」または「処置すること(treating)」)は、処置される個体の自然の過程を変化させようとする臨床的介入を指し、これは、予防のために行うか、臨床的病変の経過中に行うことができる。処置の望ましい効果としては、疾患の発生または再発を防止すること、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的帰結の縮減、転移の防止、疾患進行速度を減じること、疾患状態の改善または一時的軽減、および寛解または予後の改善が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発達を遅延させるためまたは疾患の進行を遅くするために使用される。
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体重鎖または抗体軽鎖のうち、抗原への抗体の結合に関与するドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は一般に類似する構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)とを含んでいる(例えばKindt, T.J. et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007) 91頁参照)。抗原結合特異性を付与するには単一のVHドメインまたはVLドメインで十分でありうる。さらにまた、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体からのVHドメインまたはVLドメインを使ってそれぞれ相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることによって、単離することができる(例えばPortolano, S., et al, J. Immunol. 150 (1993) 880-887; Clackson, T., et al, Nature 352 (1991) 624-628参照)。
本明細書において使用する「ベクター」という用語は、それがつながっている別の核酸を増殖させる能力を有する核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクターも、それが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターも包含する。ある特定のベクターは、それらが機能的につながれた核酸の発現を指示する能力を有する。そのようなベクターを本明細書では「発現ベクター」という。
以下に、構造と特異性が異なる環状融合ポリペプチドを使って、本発明を例示する。これらは本発明を例示するために提示されるにすぎない。これを限定と解釈する必要はない。真の範囲は特許請求の範囲に記載される。
II.本明細書において報告する環状融合ポリペプチド
本発明は、少なくとも部分的には、(完全長)重鎖のC末端への軽鎖可変ドメインの融合またはその逆が、それぞれのVHドメインおよびVLドメインの機能的結合部位の形成をもたらすという発見、すなわち単一ポリペプチド鎖内での可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインとの対が、鎖内環化によって機能的なVH/VL対を、そしてそれにより、機能的結合部位を形成するという発見に基づいている。
本発明は、少なくとも部分的には、単一(環状)ポリペプチドを含む標的結合物質を提供することができるという発見に基づいている。この(環状)ポリペプチドにおいて、N末端部は結合ドメインの第1部分を含み、C末端部は結合ドメインの第2部分を含む。結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分は(互いに連結することで)、完全なまたは機能的な結合部位を形成する。これにより、ポリペプチドは環化する。
本発明は、少なくとも部分的には、個々の抗体可変ドメインを、例えばFc領域ポリペプチドなど、中央スペーサードメインのそれぞれN末端およびC末端に接続しているペプチド性リンカーの長さを変更することにより、結果として生じる(二環状)二量体融合ポリペプチドにおける2つの結合部位のジオメトリ/距離を調節することができるという発見に基づいている。
本発明は、少なくとも部分的には、二量体、すなわち二環状、融合ポリペプチドの結合ジオメトリが、第1リンカーおよび第2リンカーの長さ(すなわちリンカー長比)に応じて変化しうるという発見に基づいている。これにより、2つのFab様結合アームの相対的なジオメトリを固定することが可能である。
本明細書では、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分とスペーサードメインとを含む環状融合ポリペプチドであって、
- スペーサードメインが、ポリペプチドであり、例えばフォールディング後に構造ドメインを形成し、
- 結合ドメインの第1部分が、ポリペプチドであり、かつスペーサードメインのN末端に第1(ペプチド性)リンカーを介して融合されており、
- 結合ドメインの第2部分が、ポリペプチドであり、かつスペーサードメインのC末端に第2(ペプチド性)リンカーを介して融合されており、
- (同じ融合ポリペプチド中の)結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分とが、互いに連結されて、標的に特異的に結合する(機能的)結合部位を形成する、
環状融合ポリペプチドが開示される。
結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分は、非共有結合的または共有結合的に、互いに連結されうる。連結が共有結合的である場合、それはペプチド結合以外の結合によるもの、例えばジスルフィド結合によるものである。
スペーサードメインは、フォールディング後に構造ドメインを形成するポリペプチドである。したがってスペーサードメインは、100アミノ酸残基未満であることができるが、結合モチーフを固定するために、構造的に制限される必要がある。例示的なスペーサードメインは五量体コイル-コイル、抗体ヒンジ領域もしくは抗体Fc領域またはそれらのフラグメントである。
本明細書において報告する環状融合ポリペプチドは単鎖ポリペプチドである。環状融合ポリペプチドの一般構造を図1に示す。
本明細書において、本明細書において報告する第1環状融合ポリペプチドと本明細書において報告する第2環状融合ポリペプチドとを含み、第1および第2環状融合ポリペプチドは同一であるかまたは異なり、かつ第1環状融合ポリペプチドのスペーサードメインが、少なくとも1つの非ペプチド結合によって、一態様では、少なくとも1つのジスルフィド結合によって、第2環状融合ポリペプチドのスペーサードメインにコンジュゲートされている、二量体の、すなわち二環状の融合ポリペプチドも報告する。
この場合、スペーサードメインは二量体化ドメインである。すなわちスペーサードメインの構造的特性は、二量体化機能の提供である。
同様に、三量体、すなわち三環状、融合ポリペプチドおよび四量体、すなわち四環状、融合ポリペプチドも、それぞれ三量体化ドメインまたは四量体化ドメインをスペーサードメインとして使用すれば、得ることができる。
本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドはコントースボディ(Contorsbody)とも呼ばれる。二環状融合ポリペプチド/コントースボディの一般構造を図2A(二量体化スペーサードメインあり)および図2B(二量体化スペーサードメインなし)に示し、三環状融合ポリペプチド/コントースボディの一般構造を図3に示し、四環状融合ポリペプチド/コントースボディの一般構造を図4A(四量体化スペーサードメインあり)および図4B(四量体化スペーサードメインなし)に示す。
二量体化ドメインの一例としてスペーサードメインが抗体Fc領域であり、結合ドメインが抗体のFab重鎖フラグメントおよびFab軽鎖フラグメントである場合、この特別なコントースボディは抗体フォーマットである。普通のIgG抗体と比較して、コントースボディは、重鎖と軽鎖ではなく一つの鎖だけを使用している。コントースボディの特殊性は、Fc領域コード配列が重鎖Fabフラグメントと軽鎖Fabフラグメントの間に位置することである。
以下に、この特別なコントースボディを使って、本明細書において報告する二環状融合ポリペプチドの特別な特性を示す。Fabフラグメントだけでなく、単離された可変ドメインも、結合部位の部分として使用することができるだろう。
重鎖Fabフラグメントと軽鎖Fabフラグメントとの間に二量体化ドメインとして「ヒンジ-CH2-CH3」スペーサードメインを有する本明細書において報告する単鎖融合ポリペプチドは、それらのFc領域を介して二量体化し、それにより、2つのFabを提示する抗体の完全なFc部分を形成していて、2つのFabは互いに対してそれぞれの配向に固定される。対照的に、普通のIgGタイプ抗体では、2つのFabがよりフレキシブルであり、まったく異なる配向を有する。
コントースボディでは、使用するリンカーの長さによって、2つの結合部位の相対的なジオメトリを調整することができる。IgGタイプの普通の抗体と、例示的態様における本明細書において報告する二環状融合ポリペプチドについて、結合部位間の配向および空間的距離を図5に示す。
IgGタイプの通常の抗体の結合部位間の空間的距離は約80オングストロームまたはそれ以上である。本明細書において報告する二環状融合ポリペプチドの結合部位間の空間的距離は、二環状融合ポリペプチドを形成している個々の環状融合ポリペプチドにおけるペプチド性リンカーの長さおよび長さの比に応じて、約20オングストローム〜約50オングストロームの間であることができる。意図したジオメトリに応じてペプチド性リンカーが選択される。一態様において、ペプチド性リンカーは、SEQ ID NO:54〜SEQ ID NO:70からなるペプチド性リンカーの群から、互いに独立して選択される。
II.1.本明細書において報告する単一特異性多環状融合ポリペプチド
単一特異性多環状融合ポリペプチドは、2つまたはそれ以上の、本明細書において報告する環状融合ポリペプチドを含み、それら環状融合ポリペプチドのそれぞれは、同じ標的上の同じエピトープに特異的に結合する、すなわち同じ結合部位を含む。
例示的な単一特異性多環状融合ポリペプチドは抗Her2コントースボディ(SEQ ID NO:96の環状融合ポリペプチドを含む)である。これは、環状融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するベクターを、HEK293細胞にトランスフェクトすることによって生産された。
培養上清のFc領域含有部分を抽出するには、通常のプロテインAアフィニティークロマトグラフィーが適していることが見いだされた。あるいは、精製用にGSGペプチド性リンカーを介して接続されたヘキサヒスチジンC末端タグ(SEQ ID NO:03)を使用することができる。
第2精製工程では、主として環状融合ポリペプチドの高次構造物である生成物関連不純物(IgGタイプの抗体については、わずかな凝集体もクロマトグラムにみられる)から環状融合ポリペプチドを分離するために、分取用サイズ排除クロマトグラフィーを使用した(例えば図15参照)。このような構築物の典型的な収量は平均すると10mg/リットルである。抗Her2コントースボディをいくつかのバッチで発現させた(0.5リットル〜2リットル振とうフラスコ規模)。生成物品質を質量分析によって分析した(図6参照)。生成物の実体は95%超の純度グレードで確認された。
二環状型(図2A参照)および四環状型(図4B参照)の抗Her2コントースボディの結合は、分子のアフィニティーおよびアビディティを通常のIgGタイプの抗Her2抗体と比較して評価するために2つの異なる設定で、表面プラズモン共鳴(SPR、例えばBIAcore)を使って決定した。
第1設定(以下の表の1;アフィニティー用)では、SPRチップ表面にコンジュゲートされた抗ヒトFc領域抗体によって、各抗Her2コントースボディを捕捉した。分析物としてHer2細胞外ドメイン(ECD)を使用した。第2設定(以下の表の2;アビディティ用)では、抗Her2抗体ペルツズマブ(Perjeta(登録商標)として市販されている)をチップ表面に固定化し、Her2のECDをそれによって捕捉した。分析物として各コントースボディを使用した。分析物の濃度系列を使って、IgGタイプリファレンス抗体トラスツズマブ、二価抗Her2コントースボディおよび四価抗Her2コントースボディのアビディティを測定した。どちらの設定でもリファレンスとして抗Her2抗体トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)として市販されている)を使用した。
Figure 2019521084
コントースボディは通常のIgGタイプの抗体と比較してはるかにコンパクトである。
抗Her2コントースボディを増殖アッセイにおいて試験した。化学的に架橋されたトラスツズマブFabを使用したScheerら(Scheer et al, PLoS One 7 (2012) e51817)と同様に、抗Her2コントースボディは、細胞表面の受容体を動員し、活性化シグナルを促進した。トラスツズマブは、受容体ストークドメイン上に位置するHer2エピトープに対する結合物質であり、受容体を互いに離れた状態に保ち、その結果、増殖を拮抗している。図7は、トラスツズマブと、二環状抗Her2コントースボディおよび四環状抗Her2コントースボディの両方との、差異的効果が、それぞれ抗増殖性および増殖促進性であることを示している。
抗Her2コントースボディのFcRn受容体に結合する能力を決定した。IgGタイプIgG1サブクラスの抗体であるトラスツズマブと比較して、ヒトFcRn受容体に対する両抗Her2コントースボディの結合は驚くほど高く、二環状コントースボディおよび四環状コントースボディでは、それぞれ、およそ10倍および30倍であった(図8A参照)。カニクイザルFcRnに対して、トラスツズマブおよびコントースボディは、同様に挙動し(図8B参照)、二量体コントースボディはトラスツズマブより4.5倍親和性が高く、四量体コントースボディは61倍親和性が高かった。
抗Her2コントースボディの抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を引き出す能力を評価した。FcγRへの結合によって、IgGはADCCの引き金を引くことができる。図9に、抗Her2コントースボディおよびトラスツズマブのADCCキネティックを示す。
トリプトファン自己蛍光によると、第1熱変性温度Tm1は、コントースボディの場合、約63℃である。静的光散乱を使って、約66℃という凝集開始温度が、コントースボディについて決定された。動的光散乱を使って、約66℃という凝集開始温度が、コントースボディについて決定された。どの実験でも、製剤は20mM His/His*HCl、140mM NaCl中の1mg/mLコントースボディとした。
混合Fabが形成されていないことは質量分析によって確認することができた。
二環状単一特異性コントースボディの他の例は、抗cMETコントースボディ(SEQ ID NO:97の環状融合ポリペプチド)および異なる可変ドメインを有する抗CD20コントースボディ((1)SEQ ID NO:98の環状融合ポリペプチド;(2)SEQ ID NO:99の環状融合ポリペプチド)である。以下の表に、これらのコントースボディの発現率、収量、および品質を記載する。
Figure 2019521084
コントースボディはいずれも、HEK-293細胞中で一過性に発現させ、収量は2〜15mg/Lの範囲であった。プロテインAカラム後の生成物は85%超であり、SECカラムクロマトグラフィーによって副生成物から一般に96%超の純度まで精製される。
II.2.多重特異性多環状融合ポリペプチド
多重特異性多環状融合ポリペプチドは、2つまたはそれ以上の、本明細書において報告する環状融合ポリペプチドを含み、環状融合ポリペプチドのそれぞれは、異なる標的および/または同じ標的上の異なるエピトープに特異的に結合する、すなわち特異性が異なる少なくとも2つの結合部位を含む。
この理論に拘束されるわけではないが、単鎖ポリペプチド中の結合部位の対応するドメインの自己集合の方が、鎖間連結より優勢である、すなわち言い換えると、単一環状融合ポリペプチドの発現後は、結合部位の個々の非機能的ドメインが連結して、機能的結合部位を形成すると考えられる。例えば、機能的結合部位がFabであり、スペーサードメインがFc領域である場合、Fab部分、すなわち重鎖フラグメント(VH-CH1)および軽鎖フラグメント(VK-CK)は、結合能を有する構成的なFab部分を形成し、集合したこの第1環状融合ポリペプチドの孤立したハーフFc部分は、別の環状融合ポリペプチドと構成的に連結して、二環状融合ポリペプチド(2つの単一環状融合ポリペプチドの二量体を含むコントースボディ)を形成する。多重特異性多環状融合ポリペプチドを得るには、単離された環状融合ポリペプチドのヘテロ二量体化を促進する必要がある。例示的なヘテロ二量体化促進要素の一つは、ノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)技術による突然変異である。
結果として生じる二重特異性コントースボディの2つの結合部位のジオメトリ/距離を変化させるために、Fc領域スペーサードメインの各N末端およびC末端にあるリンカーの長さを変更することが可能であり、同じことは単一特異性コントースボディにもいえる。
結合部位相互の相対的位置を変化させることによって、結合部位のジオメトリ/距離を変更することができる。
例えば、結合部位としてのFabの場合、重鎖Fabフラグメントおよび軽鎖Fabフラグメントのドメインの配列は、逆にすること、すなわち例えば重鎖Fabフラグメントはそれぞれドメイン配列VH-CH1またはCH1-VH(N末端からC末端に向かって)を有すること、同様に軽鎖Fabフラグメントはドメイン配列VL-CLまたはCL-VL(N末端からC末端に向かって)を有すること、または混合状態であることができる。リンカーが、(N末端からC末端に向かって)スペーサードメインの前後、例えばFc領域の前後に存在するとすれば、Fabフラグメントは、スペーサードメインに対するその配向が限定される。結果として、VHドメインの相対的位置は、Fc領域に近いか(本明細書では「VH-in」と呼ぶ)、またはFc領域から離れているか(本明細書では「VH-out」と呼ぶ)になる(図10および図11参照)。
CrossMab技術、すなわち一つのアームにおけるドメイン交換を使って、集合挙動に変更を加えることも可能である。これは、交換アームまたは非交換アームにおける電荷変異体と、さらに組み合わせることができる。二重特異性二環状融合ポリペプチドの生産に使用される各配向を有する抗cMET環状融合ポリペプチドの例示的な鎖を、図12に示す(これら異なる鎖の組み合わせのVH-out、VH-in、ならびにそれぞれの発現率、収量および品質を、以下の表に記載する)。
Figure 2019521084
VH-out-ノブ=SEQ ID NO:100、
VH-in-ノブ=SEQ ID NO:101、
VH-out-ホール=SEQ ID NO:102、
VH-out-ホール-CH-CL交差=SEQ ID NO:103、
VH-in-ホール-VH-VL交差=SEQ ID NO:104。
本明細書において報告する環状融合ポリペプチドは、結果として生じる単鎖ポリペプチドの配列中に例えばハーフFc領域などの多量体化ドメインを挿入することができる限り、任意のタイプの二元または多元複合体を含みうる。そのような多元複合体の一例は、ペプチドが負荷されたMHC-I複合体である。各コントースボディを図13に図示する。
MHC-Iが媒介するキラー細胞の動員および細胞除去に基づく効果は、MHC-I IgGタイプ抗体融合物と本明細書において報告する二環状融合ポリペプチドとの間で同等である(図14)。
一般的に適用可能な、通常の多重特異性抗体を作製するための手法は、本明細書において報告する多重特異性多環状融合ポリペプチドを作製するためにも使用および採用することができる。
例えば多重特異性抗体を作製するための手法として、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え同時発現(Milstein, C. and Cuello, A.C., Nature 305 (1983) 537-540、WO 93/08829、およびTraunecker, A. et al, EMBO J.10 (1991) 3655-3659参照)、および「ノブ・イン・ホール」工学(例えばUS 5,731,168参照)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。多重特異性抗体は、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果を工作すること(WO 2009/089004); 2つまたはそれ以上の抗体またはフラグメントを架橋すること(例えばUS 4,676,980およびBrennan, M. et al, Science 229 (1985) 81-83参照);ロイシンジッパーを使って二重特異性抗体を生産すること(例えばKostelny, S.A. et al, J. Immunol. 148 (1992) 1547-1553参照);二重特異性抗体フラグメントを作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えばHolliger, P. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993) 6444-6448参照);および単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えばGruber, M et al, J. Immunol. 152 (1994) 5368-5374参照);および例えばTutt, A. et al, J. Immunol. 147 (1991) 60-69に記載されているように三重特異性抗体を調製することによって作製してもよい。
すべての局面の一態様において、本明細書において報告する環状融合ポリペプチドは、少なくとも2種類の環状融合ポリペプチドのヘテロ二量体化を必要とする多重特異性多環状融合ポリペプチドである。
同様に、本明細書において報告する一局面は、第1環状融合ポリペプチドが第1標的に特異的に結合し、第2環状融合ポリペプチドが第2標的に特異的に結合し、それぞれがスペーサードメインとしてヘテロ二量体化ドメインを含んでいる、多量体、好ましくは二量体の、本明細書において報告する環状融合ポリペプチドである。
コントースボディに含まれているFc領域は、FcRエフェクター機能を有する(野生型; SEQ ID NO:31)ことができるか、または、FcRエフェクター機能を有さない(FcγIIIエフェクター機能を有さず突然変異L234A、L235A、P329Gを有する(SEQ ID NO:37); FcRnエフェクター機能を有さず突然変異I253A、H310A、H435A(SEQ ID NO:44)もしくはH310A、H433A、Y436A(SEQ ID NO:45)を有する;ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)ことができる。
結合部位は、抗体重鎖可変ドメインと抗体軽鎖可変ドメインとの対を含む抗体結合部位、MHC様ドメインとβ-2-ミクログロブリンとを含むFcRn、または一対のDARPIN(設計されたアンキリンリピートドメイン(designed ankyrin repeat domain))、タンデムscFv、および一列に並んだ2つのアンチカリンから選択することができる。
一般に、2つの結合部位の配向を固定するために幾何学的制約が要求されるたびに、コントースボディを使用することができる。
一態様において、スペーサードメインはタグを含む。一態様において、タグは、環状融合ポリペプチドのC末端にコンジュゲートされる。
一態様において、スペーサードメインは多量体化ドメインを含む。一態様において、多量体化ドメインは、抗体Fc領域およびその変異体ならびにテトラネクチンドメインおよびその変異体からなる群より選択される。
スペーサードメインは、多量体を形成する単一のコイルドメインであるか、多量体化することが知られていて、多量体アセンブリとして、それ自身の機能をコントースボディにもたらす、機能的な天然タンパク質であることができる。例えば、Myc/Max/Madファミリー二量体またはロイシンジッパーは二量体コイルコイルを作り、COMP(軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質)は、間にジスルフィド架橋を有し、頭尾型配向を有する、五量体コイルコイル様の系を作る。頭尾型配向を有する系は、Fabを180°に固定させるのに役立つジスルフィド架橋を有するコイルコイルの二量体化ドメインであるSARAH(ヒトMST1のC末端二量体化ドメイン(残基431〜487))のように、他にもいくつかある。テネイシンC(TNC)三量体化ドメインも使用できるだろう。
III.結合部位
III.1.抗体フラグメント由来の結合部位
ある特定の態様において、本明細書において報告する環状融合ポリペプチド中の結合部位は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(VL)から構成される。
ある特定の態様において、環状融合ポリペプチドの結合部位は抗体フラグメントである。抗体フラグメントとしては、Fab、Fab'、Fab'-SHおよびFvフラグメントが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ある特定の抗体フラグメントに関する総説として、Hudson, P.J. et al, Nat. Med. 9 (2003) 129-134を参照されたい。scFvフラグメントの総説として、例えばPlueckthun, A., In; The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol.113, Rosenburg and Moore(eds.), Springer-Verlag, New York (1994), pp.269-315を参照されたい。また、WO 93/16185; US 5,571,894およびUS 5,587,458も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFabフラグメントに関する議論については、US 5,869,046を参照されたい。
抗体フラグメントは「二重作用性Fab(Dual Acting Fab)」、すなわち「DAF」であることもできる(例えばUS 2008/0069820参照)。
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部または一部または軽鎖可変ドメインの全部または一部を含む抗体フラグメントである。ある特定の態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体(Domantis, Inc.、マサチューセッツ州ウォルサム;例えばUS 6,248,516参照)である。
抗体フラグメントは、本明細書に記載するように、さまざまな手法によって、例えば限定するわけではないがインタクト抗体のタンパク質分解消化および組換え宿主細胞(例えば大腸菌またはファージ)による生産などによって、作製することができる。
結合部位がFabである場合、Fabは通常のFab、CrossFabまたはDutaFabであることができる。
通常のFabの場合、結合ドメインの一方の部分は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)と第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1)の少なくともN末端フラグメント(または完全な第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1))とを含み、それぞれ他方の結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体軽鎖定常ドメイン(CL)の少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体軽鎖定常ドメイン(CL))とを含む。これらのドメインの順序は、それらの連結および(機能的)結合部位の形成が可能である限り(すなわち妨げられない限り)、どの順序でもよい。
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CH1を含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CLを含む。
CrossFabの場合、結合ドメインの両部分は抗体可変ドメインと抗体定常ドメインの少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体定常ドメイン)とを含み、可変ドメインと定常ドメインとの対は互いに天然ではない形で連結していて、重鎖ドメインと軽鎖ドメインとのドメイン交差/交換によって得られる。これはVHとVLとの交換またはCH1とCLとの交換であることができる。これらのドメインの順序は、それらの連結および(機能的)結合部位の形成が可能である限り(すなわち妨げられない限り)、どの順序でもよい。
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CH1を含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CLを含む。
一態様において、結合ドメインの一方の部分は、N末端からC末端に向かって、VH-CLを含み、かつ結合ドメインの他方の部分は、N末端からC末端に向かって、VL-CH1を含む。
多環状融合ポリペプチドの場合、コグネイト結合ドメインの連結は、CrossFabにおけるドメイン交換だけでなく、電荷の導入によって、さらに促進することができる。この場合、多環状融合ポリペプチドは、少なくとも第1環状融合ポリペプチドと第2環状融合ポリペプチドとを含む。
一態様において、多環状融合ポリペプチドは、
(a) 第1抗原に特異的に結合するFabを結合部位として含む第1環状融合ポリペプチド、および
(b) 第2抗原に特異的に結合するFabを結合部位として含む第2環状融合ポリペプチド
を含み、(第2環状融合ポリペプチドの)Fab中の可変ドメインVLおよびVHは互いに置き換えられている。
(a)の環状融合ポリペプチドは、(b)において報告するような修飾を含有しない。
(b)の環状融合ポリペプチドにおいて、
抗体軽鎖フラグメント内では、
可変軽鎖ドメインVLが、Fabの可変重鎖ドメインVHで置き換えられ、
かつ
抗体重鎖フラグメント内では、
可変重鎖ドメインVHが、Fabの可変軽鎖ドメインVLで置き換えられている。
一態様では、
(i) 多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、正荷電アミノ酸で置換され、かつ多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸もしくはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、負荷電アミノ酸で置換されているか、
または
(ii) 多環状融合ポリペプチドの第2環状融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、正荷電アミノ酸で置換され、かつ多環状融合ポリペプチドの第2環状融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸もしくはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、負荷電アミノ酸で置換されている。
好ましい一態様では、
(i) 多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)もしくはヒスチジン(H)で独立して(好ましい一態様ではリジン(K)もしくはアルギニン(R)で独立して)置換され、かつ多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸もしくはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、グルタミン酸(E)もしくはアスパラギン酸(D)で独立して置換されているか、
または
(ii) 多環状融合ポリペプチドの第2環状融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabatによる124番目に対応する位置にあるアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)もしくはヒスチジン(H)で独立して(好ましい一態様ではリジン(K)もしくはアルギニン(R)で独立して)置換され、かつ多環状融合ポリペプチドの第2環状融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目に対応する位置にあるアミノ酸もしくはKabat EUインデックスによる213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、グルタミン酸(E)もしくはアスパラギン酸(D)で独立して置換されている。
一態様では、多環状融合ポリペプチドの第2環状融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabat EUインデックスによる124番目および123番目に対応する位置にあるアミノ酸は、Kで置換されている。
一態様では、多環状融合ポリペプチドの第2環状融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目および213番目に対応する位置にあるアミノ酸は、Eで置換されている。
好ましい一態様では、多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabat EUインデックスによる124番目および123番目に対応する位置にあるアミノ酸はKで置換され、かつ多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目および213番目に対応する位置にあるアミノ酸はEで置換されている。
一態様では、多環状融合ポリペプチドの第2環状融合ポリペプチドの定常ドメインCLにおいて、Kabat EUインデックスによる124番目および123番目に対応する位置にあるアミノ酸はKで置換され、多環状融合ポリペプチドの第2環状融合ポリペプチドの定常ドメインCH1において、Kabat EUインデックスによる147番目および213番目に対応する位置にあるアミノ酸はEで置換され、多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドの可変ドメインVLにおいて、Kabatによる38番目に対応する位置にあるアミノ酸はKで置換され、多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドの可変ドメインVHにおいて、Kabatによる39番目に対応する位置にあるアミノ酸はEで置換され、多環状融合ポリペプチドの第2環状融合ポリペプチドの可変ドメインVLにおいて、Kabatによる38番目に対応する位置にあるアミノ酸はKで置換され、かつ多環状融合ポリペプチドの第2環状融合ポリペプチドの可変ドメインVHにおいて、Kabatによる39番目に対応する位置にあるアミノ酸はEで置換されている。
DutaFabの場合、結合ドメインの一方の部分は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)と第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1)の少なくともN末端フラグメント(または完全な第1抗体重鎖定常ドメイン(CH1))とを含み、かつそれぞれ他方の結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体軽鎖定常ドメイン(CL)の少なくともN末端フラグメント(または完全な抗体軽鎖定常ドメイン(CL))とを含み、該結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)との相補的な対の中に2つの非オーバーラップパラトープを含み、第1パラトープは、VLドメインのCDR1およびCDR3ならびにVHドメインのCDR2からの残基を含み、第2パラトープは、VHドメインのCDR1およびCDR3ならびにVLドメインのCDR2からの残基を含む。
一態様において、第1パラトープは、VLドメインのCDR1およびCDR3ならびにVHドメインのCDR2からの残基を含み、第2パラトープは、VHドメインのCDR1およびCDR3ならびにVLドメインのCDR2からの残基を含む。
一態様において、結合部位の重鎖可変ドメインはヒトVH3ファミリー重鎖配列に基づき、結合部位の軽鎖可変ドメインはヒトVκ1ファミリー軽鎖配列に基づく。
一態様において、結合部位の重鎖可変ドメインはヒトVH3ファミリー重鎖配列に基づき、結合部位の軽鎖可変ドメインはヒトVλ1ファミリー軽鎖配列に基づく。
III.2.キメラ抗体およびヒト化抗体由来の結合部位
ある特定の態様において、本明細書において報告する環状融合ポリペプチド中の結合部位は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(VL)から構成される。ある特定の態様において、可変ドメインは、キメラ抗体、例えばヒト化抗体に由来するキメラドメインである。
「フレームワーク」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメインFR1、FR2、FR3およびFR4からなる。したがって、HVR配列とFR配列は一般にVH(またはVL)中に、以下の順序で現れる: FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
本明細書において使用する「超可変領域」または「HVR」という用語は、抗体可変ドメインのうち、配列が超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」)、かつ/または構造上明確なループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触部」)を含有する領域のそれぞれを指す。一般に、抗体は6つのHVRを含み、3つはVHに(H1、H2、H3)、そして3つはVL(L1、L2、L3)にある。
HVRは、
(a) アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196 (1987) 901-917);
(b) アミノ酸残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、89〜97(L3)、31〜35b(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)に存在するCDR(Kabat, E.A. et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991), NIH Publication 91-3242);
(c) アミノ酸残基27c〜36(L1)、46〜55(L2)、89〜96(L3)、30〜35b(H1)、47〜58(H2)および93〜101(H3)に存在する抗原接触部(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996));および
(d) アミノ酸残基46〜56(L2)、47〜56(L2)、48〜56(L2)、49〜56(L2)、26〜35(H1)、26〜35b(H1)、49〜65(H2)、93〜102(H3)および94〜102(H3)を含む(a)、(b)、および/または(c)の組み合わせ
を含む。
別段の表示がある場合を除き、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えばFR残基)は、本明細書では、前掲のKabatらに従ってナンバリングされる。
ある特定の態様において、キメラ抗体はヒト化抗体である。通例、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティーを保ちつつヒトに対する免疫原性を低減するために、ヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR、(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する、1つまたは複数の可変ドメインを含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば抗体の特異性またはアフィニティーを回復または改良するために、非ヒト抗体(例えばHVR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
ヒト化抗体およびそれらの作製方法については、例えばAlmagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13 (2008) 1619-1633に総説があり、例えばRiechmann, I. et al, Nature 332 (1988) 323-329; Queen, C. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 10029-10033; US 5,821,337、US 7,527,791、US 6,982,321およびUS 7,087,409; Kashmiri, S.V. et al, Methods 36 (2005) 25-34(特異性決定領域(SDR)移植に関する記載がある); Padlan, E.A., Mol. Immunol. 28 (1991) 489-498(「リサーフェイシング(resurfacing)」に関する記載がある); Dall'Acqua, W.F. et al, Methods 36 (2005) 43-60(「FRシャフリング」に関する記載がある);ならびにOsbourn, J. et al, Methods 36 (2005) 61-68およびKlimka, A. et al, Br. J. Cancer 83 (2000) 252-260(FRシャフリングへの「誘導選択(guided selection)」アプローチに関する記載がある)にも、さらに記載されている。
ヒト化に使用しうるヒトフレームワーク領域としては、「ベストフィット」法を使って選択されるフレームワーク領域(例えばSims, M.J. et al., J. Immunol. 151(1993)2296-2308参照);特定サブグループの軽鎖または重鎖可変領域のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えばCarter, P. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89(1992)4285-4289;およびPresta, L.G. et al, J. Immunol. 151(1993)2623-2632参照);ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えばAlmagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13(2008)1619-1633参照);およびFRライブラリーのスクリーニングによって得られるフレームワーク領域(例えばBaca, M. et al, J. Biol. Chem. 272(1997)10678-10684およびRosok, M.J. et al, J. Biol. Chem. 271(19969 22611-22618参照)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
III.3.ヒト抗体由来の結合部位
ある特定の態様において、本明細書において報告する環状融合ポリペプチド中の結合部位は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(VL)から構成される。ある特定の態様において、可変ドメインはヒト抗体に由来する。
ヒト抗体は、当技術分野において公知のさまざまな手法を使って生産することができる。ヒト抗体は、van Dijk, M.A. and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. Pharmacol. 5 (2001) 368-374およびLonberg, N., Curr. Opin. Immunol. 20 (2008) 450-459に概説されている。
ヒト抗体は、抗原による攻撃に応答して無傷のヒト抗体またはヒト可変領域を有する無傷の抗体を生産するように変更が加えられたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製しうる。そのような動物は、典型的には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有しており、それらは内在性免疫グロブリン遺伝子座と置き換わっているか、または染色体外に存在するか、もしくはその動物の染色体にランダムに組み込まれている。そのようなトランスジェニックマウスでは、内在性免疫グロブリン遺伝子座は一般に不活化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法に関する総説として、Lonberg, N., Nat. Biotech. 23(2005)1117-1125を参照されたい。また、例えばXENOMOUSE(商標)技術が記載されているUS 6,075,181およびUS 6,150,584; HUMAB(登録商標)技術が記載されているUS 5,770,429; K-M MOUSE(登録商標)技術が記載されているUS 7,041,870; VELOCIMOUSE(登録商標)技術が記載されているUS 2007/0061900;免疫再構成マウスが記載されているWO 2007/131676も参照されたい。そのような動物によって生成させた無傷の抗体からのヒト可変領域には、さらに変更を加えることができる。
ヒト抗体はハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株については記載がある(例えばKozbor, D., J. Immunol. 133 (1984) 3001-3005; Brodeur, B.R. et al, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York (1987), pp.51-63;およびBoerner, P. et al, J. Immunol. 147 (1991) 86-95を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成させたヒト抗体も、Li, J. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103(2006)3557-3562に記載されている。さらなる方法として、例えばUS 7,189,826(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の生産に関する記載がある)およびNi, J., Xiandai Mianyixue 26 (2006) 265-268(ヒト-ヒトハイブリドーマに関する記載がある)に記載されているものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers, H.P. and Brandlein, S., Histology and Histopathology 20 (2005) 927-937およびVollmers, H.P. and Brandlein, S., Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27 (2005) 185-191にも記載されている。
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成させることもできる。そのような可変ドメイン配列は、次に、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための手法を以下に説明する。
III.4.ライブラリー由来の抗体結合部位
ある特定の態様において、本明細書において報告する環状融合ポリペプチド中の結合部位は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)および抗体軽鎖可変ドメイン(VL)から構成される。ある特定の態様において、可変ドメインは、1種類または複数種類の所望の活性を有する抗体について、コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離される。
例えば当技術分野では、ファージディスプレイライブラリーを作成し、所望の結合特徴を保有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするためのさまざまな方法が公知である。そのような方法は、例えばHoogenboom, H.R. et al, Methods in Molecular Biology 178 (2001) 1-37に総説があり、また例えばMcCafferty, J. et al, Nature 348 (1990) 552-554; Clackson, T. et al, Nature 352 (1991) 624-628; Marks, J.D. et al, J. Mol. Biol. 222 (1992) 581-597; Marks, J.D. and Bradbury, A., Methods in Molecular Biology 248 (2003) 161-175; Sidhu, S.S. et al, J. Mol. Biol. 338 (2004) 299-310; Lee, C.V. et al, J. Mol. Biol. 340 (2004) 1073-1093; Fellouse, F.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101 (2004) 12467-12472;およびLee, C.V. et al, J. Immunol. Methods 284 (2004) 119-132に、さらに記載されている。
ある特定のファージディスプレイ法では、Winter, G. et al., Ann. Rev. Immunol. 12 (1994) 433-455に記載されているように、VH遺伝子とVL遺伝子のレパートリーを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって個別にクローニングし、それらをファージライブラリーでランダムに組み換えた後、そのライブラリーを抗原結合性ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは典型的には、抗体フラグメントを、単鎖Fv(scFv)フラグメントとして、またはFabフラグメントとして、ディスプレイする。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に対する高アフィニティー結合部位を与える。あるいは、Griffiths, A.D. et al, EMBO J. 12 (1993) 725-734に記載されているように、免疫化を一切行わずに、ナイーブレパートリーを(例えばヒトから)クローニングすることで、広範な非自己抗原に対する抗体、そしてまた自己抗原に対する抗体の、単一の供給源とすることもできる。最後に、Hoogenboom, H.R. and Winter, G., J. Mol. Biol. 227(1992)381-388に記載されているように、幹細胞から非再編成V遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使って高度に可変なCDR3領域をコードすると共に、インビトロで再編成を行うことにより、ナイーブライブラリーを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーが記載されている特許公報としては、例えば、US 5,750,373、ならびにUS 2005/0079574、US 2005/0119455、US 2005/0266000、US 2007/0117126、US 2007/0160598、US 2007/0237764、US 2007/0292936、およびUS 2009/0002360が挙げられる。
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体フラグメントは、本明細書では、ヒト抗体またはヒト抗体フラグメントとみなされる。
IV.ヘテロ多(二)量体化ドメイン
個々の環状融合ポリペプチドが正しく連結してヘテロ多環状融合ポリペプチドを形成することを確実にするには、さまざまな技術を使用することができる。それらの一つは、いわゆる「ノブ・イン・ホール」工学である(例えばUS 5,731,168)。多環状融合ポリペプチドは、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果を工作すること(WO 2009/089004); 2つまたはそれ以上の環状融合ポリペプチドを架橋すること(例えばUS 4,676,980およびBrennan, M. et al, Science 229 (1985) 81-83参照);ロイシンジッパーを使って二環状融合ポリペプチドを生産すること(例えばKostelny, S.A. et al, J. Immunol. 148 (1992) 1547-1553参照)によって作製してもよい。
ヘテロ二量体化をサポートすることを目的とするCH3修飾のためのいくつかのアプローチは、例えば、WO 96/27011、WO 98/050431、EP 1870459、WO 2007/110205、WO 2007/147901、WO 2009/089004、WO 2010/129304、WO 2011/90754、WO 2011/143545、WO 2012/058768、WO 2013/157954、WO 2013/096291に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
通例、当技術分野において公知のアプローチでは、1つの操作されたCH3ドメインを含む重鎖が同じ構造の別の重鎖とはもはやホモ二量体化できない(例えば、CH3操作第1重鎖は別のCH3操作第1重鎖とはもはやホモ二量体化できず、CH3操作第2重鎖は別のCH3操作第2重鎖とはもはやホモ二量体化できない)ように、第1重鎖のCH3ドメインと第2重鎖のCH3ドメインをどちらも相補的に操作する。これにより、1つの操作CH3ドメインを含む重鎖は、相補的に操作されたCH3ドメインを含む別の重鎖とのヘテロ二量体化を強いられる。この態様のために、第1重鎖のCH3ドメインと第2重鎖のCH3ドメインは、第1重鎖と第2重鎖とはヘテロ二量体化を強いられ、第1重鎖および第2重鎖は(例えば立体的理由で)もはやホモ二量体化することができないように、アミノ酸置換によって相補的に操作される。
上に言及し含めた、重鎖ヘテロ二量体化をサポートするための当技術分野において公知のさまざまなアプローチは、第1抗原に特異的に結合する第1抗体由来の「非交差Fab領域」と第2抗原に特異的に結合する第2抗体由来の「交差Fab領域」とを上述の特定アミノ酸置換と組み合わせて含む本明細書において報告する多重特異性抗体の提供において使用される、さまざまな代替的選択肢であると考えられる。
本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドの(コントースボディ)のCH3ドメインは、例えばWO 96/027011、Ridgway, J.B., et al, Protein Eng. 9 (1996) 617-621;およびMerchant, A.M., et al, Nat. Biotechnol. 16 (1998) 677-681にいくつか例を挙げて詳述されている「ノブ・イントゥ・ホール」技術によって、改変することができる。この方法では、2つのCH3ドメインの相互作用面が、これら2つのCH3ドメインを含有する両重鎖のヘテロ二量体化が増大するように、改変される。(2つの重鎖の)2つのCH3ドメインのそれぞれは「ノブ」であることができ、その場合、他方は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入は、ヘテロ二量体をさらに安定化し(Merchant, A.M., et al., Nature Biotech. 16 (1998) 677-681; Atwell, S., et al, J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)、収量を増加させる。
好ましい一態様において、本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドは、「ノブ鎖」(すなわち第1環状融合ポリペプチド)のCH3ドメイン中にT366W突然変異を含み、「ホール鎖」(すなわち第2環状融合ポリペプチド)のCH3ドメイン中にT366S、L368A、Y407V突然変異を含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。例えば「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349C突然変異を導入し、「ホール鎖」のCH3ドメインにE356C突然変異またはS354C突然変異を導入することなどによって、CH3ドメイン間に追加の鎖間ジスルフィド架橋を使用することもできる(Merchant, A.M., et al., Nature Biotech.16 (1998) 677-681)。したがって、別の好ましい一態様において、本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドは、2つのCH3ドメインの一方にY349CおよびT366W突然変異を含み、かつ2つのCH3ドメインの他方にE356C、T366S、L368AおよびY407V突然変異を含むか、または本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドは、2つのCH3ドメインの一方にY349CおよびT366W突然変異を含み、かつ2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368AおよびY407V突然変異を含む(一方のCH3ドメイン中の追加Y349C突然変異と他方のCH3ドメイン中の追加E356CまたはS354C突然変異とが鎖間ジスルフィド架橋を形成する)(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
ただし、上記に代えてまたは上記に加えて、EP 1 870 459A1に記載されている他のノブ・イン・ホール技術を使用することもできる。一態様において、本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドは、「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409DおよびK370E突然変異を含み、かつ「ホール鎖」のCH3ドメインにD399KおよびE357K突然変異を含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
一態様において、本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドは、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W突然変異を、また「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368AおよびY407V突然変異を含み、さらに「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409DおよびK370E突然変異を、また「ホール鎖」のCH3ドメインにD399KおよびE357K突然変異を含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
一態様において、本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドは、2つのCH3ドメインの一方にY349CおよびT366W突然変異を、また2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368AおよびY407V突然変異を含むか、本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドは、2つのCH3ドメインの一方にY349CおよびT366W突然変異を、また2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368AおよびY407V突然変異を含み、さらに「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409DおよびK370E突然変異を、また「ホール鎖」のCH3ドメインにD399KおよびE357K突然変異を含む(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
「ノブ・イントゥ・ホール技術」とは別に、多環状融合ポリペプチドの重鎖のCH3ドメインを修飾してヘテロ二量体化を強制するための他の方法も、当技術分野では公知である。これらの技術、とりわけWO 96/27011、WO 98/050431、EP 1870459、WO 2007/110205、WO 2007/147901、WO 2009/089004、WO 2010/129304、WO 2011/90754、WO 2011/143545、WO 2012/058768、WO 2013/157954およびWO 2013/096291に記載されているものは、ここでは、本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドとの組み合わせで、「ノブ・イントゥ・ホール技術」の代替的選択肢として考えられる。
本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドの一態様では、多環状融合ポリペプチドの第1重鎖および第2重鎖のヘテロ二量体化をサポートするために、EP 1870459に記載のアプローチが使用される。このアプローチは、両者間、すなわち第1重鎖と第2重鎖との間のCH3/CH3ドメイン境界面にある特別なアミノ酸位置に、反対の電荷を有する荷電アミノ酸を導入することに基づく。
したがって、この態様は、抗体の三次構造において、第1重鎖のCH3ドメインと第2重鎖のCH3ドメインとが、それぞれの抗体CH3ドメイン間に位置する境界面を形成し、第1重鎖のCH3ドメインと第2重鎖のCH3ドメインのそれぞれのアミノ酸配列は、環状融合ポリペプチドの三次構造において、それぞれ、該境界面内に位置する一組のアミノ酸を含み、一方の重鎖のCH3ドメイン中の境界面に位置する一組のアミノ酸のうち、第1のアミノ酸は正電荷アミノ酸で置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメイン中の境界面に位置する一組のアミノ酸のうち、第2のアミノ酸は負荷電アミノ酸で置換されている、本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドに関する。この態様による多環状融合ポリペプチドを、本明細書では、「CH3(+/-)操作多環状融合ポリペプチド」ともいう(「+/-」はそれぞれのCH3ドメインに導入された反対電荷を有するアミノ酸を意味する)。
本明細書において報告するCH3(+/-)操作多環状融合ポリペプチドの一態様において、正荷電アミノ酸はK、RおよびHから選択され、負荷電アミノ酸はEまたはDから選択される。
本明細書において報告するCH3(+/-)操作多環状融合ポリペプチドの一態様において、正荷電アミノ酸はKおよびRから選択され、負荷電アミノ酸はEまたはDから選択される。
本明細書において報告するCH3(+/-)操作多環状融合ポリペプチドの一態様において、正荷電アミノ酸はKであり、負荷電アミノ酸はEである。
本明細書において報告するCH3(+/-)操作多環状融合ポリペプチドの一態様において、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、409番目のアミノ酸RはDで置換され、番目のアミノ酸KはEで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、399番目のアミノ酸DはKで置換され、357番目のアミノ酸EはKで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドの一態様では、多環状融合ポリペプチドの第1重鎖および第2重鎖のヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2013/157953に記載のアプローチが使用される。本明細書において報告する該多環状融合ポリペプチドの一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはKで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、351番目のアミノ酸LはDで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。本明細書において報告する該多環状融合ポリペプチドの別の態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはKで置換され、351番目のアミノ酸LはKで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、351番目のアミノ酸LはDで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
本明細書において報告する前記多環状融合ポリペプチドの別の態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはKで置換され、351番目のアミノ酸LはKで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、351番目のアミノ酸LはDで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。加えて、他方の重鎖のCH3ドメインには、次に挙げる置換のうちの少なくとも1つが含まれている:349番目のアミノ酸YがEで置換されている置換、349番目のアミノ酸YがDで置換されている置換、および368番目のアミノ酸LがEで置換されている置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。一態様において、368番目のアミノ酸LはEで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドの一態様では、多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドと第2環状融合ポリペプチドとのヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2012/058768に記載のアプローチが使用される。本明細書において報告する該多環状融合ポリペプチドの一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、351番目のアミノ酸LはYで置換され、407番目のアミノ酸YはAで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはAで置換され、409番目のアミノ酸KはFで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。別の一態様では、上述の置換に加えて、他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、411番目(元々はT)、399番目(元々はD)、400番目(元々はS)、405番目(元々はF)、390番目(元々はN)および392番目(元々はK)のアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。好ましい置換は、
- N、R、Q、K、D、E、およびWから選択されるアミノ酸による411番目のアミノ酸Tの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- R、W、YおよびKから選択されるアミノ酸による399番目のアミノ酸Dの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- E、D、R、およびKから選択されるアミノ酸による400番目のアミノ酸Sの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- I、M、T、S、V、およびWから選択されるアミノ酸による405番目のアミノ酸Fの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、
- R、K、およびDから選択されるアミノ酸による390番目のアミノ酸Nの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、ならびに
- V、M、R、L、F、およびEから選択されるアミノ酸による392番目のアミノ酸Kの置換(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)
である。
(WO 2012/058768に従って操作された)本明細書において報告する前記多環状融合ポリペプチドの別の一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、351番目のアミノ酸LはYで置換され、407番目のアミノ酸YはAで置換されており、他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはVで置換され、409番目のアミノ酸KはFで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。本明細書において報告する該多環状融合ポリペプチドの別の一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、407番目のアミノ酸YはAで置換されており、他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはAで置換され、409番目のアミノ酸KはFで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。最後に挙げた態様では、該他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、392番目のアミノ酸KはEで置換され、411番目のアミノ酸TはEで置換され、399番目のアミノ酸DはRで置換され、400番目のアミノ酸SはRで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドの一態様では、多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドと第2環状融合ポリペプチドとのヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2011/143545に記載のアプローチが使用される。本明細書において報告する該多環状融合ポリペプチドの一態様では、両重鎖のCH3ドメインにおけるアミノ酸修飾は、368番目および/または409番目に導入される(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドの一態様では、多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドと第2環状融合ポリペプチドとのヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2011/090762に記載のアプローチが使用される。WO 2011/090762は「ノブ・イントゥ・ホール」技術によるアミノ酸修飾に関する。本明細書において報告するCH3(KiH)操作多環状融合ポリペプチドの一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはWで置換されており、他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、407番目のアミノ酸YはAで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。本明細書において報告するCH3(KiH)操作多環状融合ポリペプチドの別の一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、366番目のアミノ酸TはYで置換されており、他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、407番目のアミノ酸YはTで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
IgG2アイソタイプである本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドの一態様では、多環状融合ポリペプチドの第1重鎖および第2重鎖のヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2011/090762に記載のアプローチが使用される。
本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドの一態様では、多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドと第2環状融合ポリペプチドとのヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2009/089004に記載のアプローチが使用される。本明細書において報告する該多環状融合ポリペプチドの一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、392番目のアミノ酸KまたはNは負荷電アミノ酸で(好ましい一態様ではEまたはDで、好ましい一態様ではDで)置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、399番目のアミノ酸D、356番目のアミノ酸EもしくはD、または357番目のアミノ酸Eは正荷電アミノ酸で(好ましい一態様ではKまたはRで、好ましい一態様ではKで)置換されている(好ましい一態様では399番目または356番目のアミノ酸がKで置換されている)(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。さらなる一態様では、前述の置換に加えて、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、409番目のアミノ酸KまたはRは負荷電アミノ酸で(好ましい一態様ではEまたはDで、好ましい一態様ではDで)置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。さらに一つの態様では、前述の置換に加えて、または前述の置換に代えて、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、439番目のアミノ酸Kおよび/または370番目のアミノ酸Kは互いに独立して負荷電アミノ酸で(好ましい一態様ではEまたはDで、好ましい一態様ではDで)置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドの一態様では、多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドと第2環状融合ポリペプチドとのヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2007/147901に記載のアプローチが使用される。本明細書において報告する該多環状融合ポリペプチドの一態様では、一方の重鎖のCH3ドメインにおいて、253番目のアミノ酸KはEで置換され、282番目のアミノ酸DはKで置換され、322番目のアミノ酸KはDで置換されており、かつ他方の重鎖のCH3ドメインにおいて、239番目のアミノ酸DはKで置換され、240番目のアミノ酸EはKで置換され、292番目のアミノ酸KはDで置換されている(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
本明細書において報告する多環状融合ポリペプチドの一態様では、多環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドと第2環状融合ポリペプチドとのヘテロ二量体化をサポートするために、WO 2007/110205に記載のアプローチが使用される。
本明細書において報告するすべての局面および態様の一態様において、多環状融合ポリペプチドは二環状融合ポリペプチドまたは三環状融合ポリペプチドである。好ましい一態様において、多環状融合ポリペプチドは二重特異性二環状融合ポリペプチドである。
本明細書において報告するすべての局面の一態様において、多環状融合ポリペプチドは、IgGタイプ抗体の定常ドメイン構造を有する。本明細書において報告するすべての局面のさらなる一態様において、多環状融合ポリペプチドは、多環状融合ポリペプチドが、ヒトサブクラスIgG1のFc領域、または突然変異L234AおよびL235Aならびに任意でP329Gを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域を含むことを特徴とする。本明細書において報告するすべての局面のさらなる一態様において、多環状融合ポリペプチドは、多環状融合ポリペプチドがヒトサブクラスIgG2のFc領域を含むことを特徴とする。本明細書において報告するすべての局面のさらなる一態様において、多環状融合ポリペプチドは、多環状融合ポリペプチドがヒトサブクラスIgG3のFc領域を含むことを特徴とする。本明細書において報告するすべての局面のさらなる一態様において、多環状融合ポリペプチドは、多環状融合ポリペプチドが、ヒトサブクラスIgG4のFc領域、または追加の突然変異S228PおよびL235Eならびに任意でP329Gを有するヒトサブクラスIgG4のFc領域を含むことを特徴とする。
V.変異体
ある特定の態様では、本明細書において提供する環状融合ポリペプチドのアミノ酸配列変異体が考えられる。例えば環状融合ポリペプチドの結合アフィニティーおよび/または他の生物学的特性を改良することが望ましいことがあるだろう。環状融合ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、その環状融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に適当な修飾を導入することによって調製するか、またはペプチド合成によって調製することができる。そのような修飾としては、例えば環状融合ポリペプチドのアミノ酸配列からの欠失、および/または環状融合ポリペプチドのアミノ酸配列への挿入、および/または環状融合ポリペプチドのアミノ酸配列内での残基の置換が挙げられる。最終コンストラクトが所望の特徴、例えば抗原結合性を保有する限り、最終コンストラクトに到達するために、欠失、挿入、および置換をどのように組み合わせてもよい。
(a) 置換、挿入、および欠失変異体
ある特定の態様では、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する環状融合ポリペプチド変異体が提供される。置換突然変異導入の対象となる部位としてHVRおよびFRが挙げられる。以下の表では保存的置換を「好ましい置換」という見出しの下に示す。より実質的な変化は、以下の表では「例示的な置換」という見出しの下に提供されており、アミノ酸側鎖クラスに関してさらに後述するとおりである。アミノ酸置換を関心対象の環状融合ポリペプチドに導入し、生成物を所望の活性について、例えば保持/改良された抗原結合、減少した免疫原性、または改良されたADCCもしくはCDCなどについて、スクリーニングすることができる。
Figure 2019521084
アミノ酸は共通する側鎖の特性に従って分類することができる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性: Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性: Asp、Glu;
(4)塩基性: His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基: Gly、Pro;
(6)芳香族: Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスと交換することを必然的に伴うと考えられる。
置換変異体の一タイプは、親環状融合ポリペプチド(例えばヒト化抗体またはヒト抗体に由来する結合部位を含むもの)の1つまたは複数の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる研究のために選択される、結果として生じた変異体は、親環状融合ポリペプチドとの比較である特定の生物学的特性に修飾(例えば改良)(例えば増大した親和性、低減した免疫原性)を有し、かつ/または親環状融合ポリペプチドのある特定の生物学的特性を実質的に保持していると考えられる。例示的な置換変異体はアフィニティー成熟環状融合ポリペプチドであり、これは、例えばファージディスプレイに基づくアフィニティー成熟法、例えば本明細書に記載する方法を使って、都合よく生成させることができる。簡単に述べると、1つまたは複数のHVR残基を突然変異させ、変異体環状融合ポリペプチドをファージ上にディスプレイさせ、特定の生物学的活性(例えば結合アフィニティー)についてスクリーニングする。
改変(例えば置換)は、例えば環状融合ポリペプチドのアフィニティーを改良するために、HVRに加えることができる。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち体細胞での成熟過程中に高頻度に突然変異を起こすコドンによってコードされる残基(例えばChowdhury, P.S., Methods Mol. Biol. 207 (2008) 179-196)および/または抗原と接触する残基に加えることができ、その結果生じる変異体VHまたはVLを結合アフィニティーについて試験する。二次ライブラリーを構築し、そこから再選択することによるアフィニティー成熟は、例えばHoogenboom, H.R.らが、Methods in Molecular Biology 178 (2002) 1-37に記載している。アフィニティー成熟のいくつかの態様では、さまざまな方法のいずれか(例えばエラープローンPCR、鎖シャフリング、またはオリゴヌクレオチド特異的変異導入)によって、成熟のために選択された可変遺伝子に、多様性が導入される。次に二次ライブラリーを作成する。次に、所望のアフィニティーを有する任意の環状融合ポリペプチド変異体を同定するために、ライブラリーをスクリーニングする。多様性を導入するための別の方法は、数個のHVR残基(例えば一度に4〜6残基)をランダム化するHVR指向的アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異導入法やモデリングなどを使って、特異的に同定することができる。特にCDR-H3およびCDR-L3は標的とされることが多い。
ある特定の態様では、その改変が、意図した抗原を結合する環状融合ポリペプチドの能力を実質的に低減しない限り、置換、挿入または欠失が、1つまたは複数のHVR内に存在してもよい。例えば、結合アフィニティーを実質的に低減しない保存的改変(例えば本明細書において提供する保存的置換)をHVRに加えることができる。そのような改変は例えばHVR中の抗原接触残基以外でありうる。上掲の変異体VH配列および変異体VL配列のある特定の態様では、各HVRは改変されていないか、1、2、または3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
変異導入の標的とすることができる環状融合ポリペプチドの残基または領域を同定するための有用な一方法は、Cunningham, B.C. and Wells, J.A., Science 244 (1989) 1081-1085に記載されているように、「アラニンスキャニング変異導入法」と呼ばれる。この方法では、残基または標的残基群(例えばarg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電残基)を同定し、それを中性アミノ酸または負荷電アミノ酸(例えばアラニンまたはポリアラニン)で置き換えて、環状融合ポリペプチドとその標的との相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。最初の置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸の場所に、さらなる置換を導入してもよい。これに代えて、またはこれに加えて、環状融合ポリペプチドとその標的との間の接触点を同定するための標的-環状融合ポリペプチド複合体の結晶構造。そのような接触残基および近隣残基は、置換の候補として標的にするか、除外することができる。変異体をスクリーニングして、それらが所望の特性を含んでいるかどうかを決定することができる。
アミノ酸配列挿入には、単一アミノ酸残基および複数アミノ酸残基の配列内挿入だけでなく、1残基から100残基またはそれ以上を含有するポリペプチドまで、さまざまな長さのアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合も含まれる。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する環状融合ポリペプチドが挙げられる。環状融合ポリペプチド分子の他の挿入変異体として、酵素への(例えばADEPTの場合)、または環状融合ポリペプチドの血清中半減期を増加させるポリペプチドへの、環状融合ポリペプチドのN末端またはC末端に対する融合が挙げられる。
(b) グリコシル化変異体
ある特定の態様において、本明細書において提供する環状融合ポリペプチドは、環状融合ポリペプチドのグリコシル化度が増加または減少するように改変される。環状融合ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加またはグリコシル化部位の欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が生成または除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって、都合よく達成することができる。
環状融合ポリペプチドがFc領域を含む場合は、そこに取り付けられる糖質を改変することができる。哺乳動物細胞によって生産されるネイティブFc領域を含む環状融合ポリペプチドは、典型的には、分岐したバイアンテナ型オリゴ糖を含み、これは一般的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって取り付けられる(例えばWright, A. and Morrison, S.L., TIBTECH 15 (1997) 26-32参照)。オリゴ糖は、さまざまな糖質、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびにバイアンテナ型オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに取り付けられたフコースを含みうる。いくつかの態様では、改良されたある特定の特性を有する環状融合ポリペプチド変異体を作製するために、本発明の環状融合ポリペプチド中のオリゴ糖の修飾を行うことができる。
一態様では、Fc領域に(直接または間接的に)取り付けられたフコースを欠く糖質構造を有する環状融合ポリペプチド変異体が提供される。例えばそのような環状融合ポリペプチドにおけるフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%または20%〜40%でありうる。フコースの量は、例えばWO 2008/077546に記載されているようにMALDI-TOF質量分析によって測定されるAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を、Asn297に取り付けられたすべての糖構造(例えば複合型、混成型および高マンノース型構造)の和との比較で算出することによって決定される。Asn297とは、Fc領域の297番目(Fc領域残基のEUナンバリング)付近に位置するアスパラギン酸残基を指すが、抗体中の軽微な配列変動ゆえに、Asn297は、297番目の上流側または下流側±3アミノ酸付近、すなわち294番目と300番目の間に位置する場合もありうる。そのようなフコシル化変異体は改良されたADCC機能を有しうる(例えばUS 2003/0157108; US 2004/0093621参照)。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例として、US 2003/0157108; WO 2000/61739; WO 2001/29246; US 2003/0115614; US 2002/0164328; US 2004/0093621; US 2004/0132140; US 2004/0110704; US 2004/0110282; US 2004/0109865; WO 2003/085119; WO 2003/084570; WO 2005/035586; WO 2005/035778; WO 2005/053742; WO 2002/031140; Okazaki, A. et al, J. Mol. Biol. 336 (2004) 1239-1249; Yamane-Ohnuki, N. et al, Biotech. Bioeng. 87 (2004) 614-622が挙げられる。脱フコシル化環状融合ポリペプチドを生産する能力を有する細胞株の例としては、タンパク質フコシル化欠損性のLec13 CHO細胞(Ripka, J. et al., Arch. Biochem. Biophys. 249 (1986) 533-545; US 2003/0157108;およびWO 2004/056312、とりわけ実施例11)、およびα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えばYamane-Ohnuki, N. et al., Biotech. Bioeng. 87 (2004) 614-622; Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng. 94 (2006) 680-688; WO 2003/085107参照)が挙げられる。
例えば環状融合ポリペプチドのFc領域に取り付けられたバイアンテナ型オリゴ糖がGlcNAcによってバイセクト(bisect)されているバイセクト型オリゴ糖を有する環状融合ポリペプチド変異体が、さらに提供される。そのような環状融合ポリペプチド変異体は、低減したフコシル化および/または改良されたADCC機能を有しうる。そのような抗体変異体の例は、例えばWO 2003/011878、US 6,602,684号およびUS 2005/0123546に記載されている。Fc領域に取り付けられたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する環状融合ポリペプチド変異体も提供される。そのような環状融合ポリペプチド変異体は改良されたCDC機能を有しうる。そのような抗体変異体は、例えばWO 1997/30087、WO 1998/58964、およびWO 1999/22764に記載されている。
(c) Fc領域変異体
ある特定の態様では、本明細書において提供する環状融合ポリペプチドのFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入することにより、Fc領域変異体を生成させうる。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含みうる。
ある特定の態様において、本発明では、全部ではなく一部のエフェクター機能を保有する環状融合ポリペプチド変異体が考えられる。これは、その環状融合ポリペプチド変異体を、インビボ半減期は重要であるが、ある特定のエフェクター機能(例えば補体およびADCC)は不必要であるか有害であるような応用にとって、望ましい候補にする。CDC活性および/またはADCC活性の低減/欠乏を確認するために、インビトロおよび/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行うことができる。例えば、環状融合ポリペプチドがFcγR結合を欠く(それゆえにおそらくはADCC活性を欠く)が、FcRn結合能は保持していることを保証するために、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行うことができる。ADCCを媒介するための主要細胞であるNK細胞がFc(RIIIだけを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9 (1991) 457-492の464頁のTable 3に要約されている。関心対象の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、US 5,500,362(例えばHellstrom, I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83 (1986) 7059-7063、およびHellstrom, I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 (1985) 1499-1502参照)、US 5,821,337(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166 (1987) 1351-1361参照)に記載されている。あるいは、非放射性のアッセイ法を使用してもよい(例えばフローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc.、カリフォルニア州マウンテンビュー)、およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、ウィスコンシン州マディソン)参照)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。これに代えて、またはこれに加えて、関心対象の分子のADCC活性は、インビボで、例えばClynes, R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(1998)652-656に開示されているような動物モデルで、評価することもできる。抗体がC1qに結合することができず、したがってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合アッセイを行うこともできる(例えばWO 2006/029879およびWO 2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい)。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えばGazzano-Santoro, H. et al., J. Immunol. Methods 202 (1996) 163-171; Cragg, M.S. et al., Blood 101 (2003) 1045-1052;およびCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103 (2004) 2738-2743を参照されたい)。FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期決定も、当技術分野において公知の方法を使って行うことができる(例えばPetkova, S.B. et al., Int. Immunol. 18 (2006: 1759-1769参照)。
低減したエフェクター機能を有する、Fc領域を含む環状融合ポリペプチドとしては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329のうちの1つまたは複数の置換を有するものが挙げられる(US 6,737,056)。そのようなFc領域突然変異体としては、残基265および297がアラニンに置換されているいわゆる「DANA」Fc領域突然変異体(US 7,332,581)を含めて、アミノ酸位置265、269、270、297、および327のうちの2つまたはそれ以上に置換を有するFc領域突然変異体が挙げられる。
FcRへの結合が改良または縮減されているある特定のFc領域を含む環状融合ポリペプチド変異体については記載がある(例えばUS 6,737,056、WO 2004/056312、およびShields, R.L. et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604参照)。
ある特定の態様では、環状融合ポリペプチド変異体が、ADCCを改良する1つまたは複数のアミノ酸置換を有するFc領域、例えばFc領域の298、333、および/または334番目(残基のEUナンバリング)に置換を有するFc領域を含む。
いくつかの態様では、例えばUS 6,194,551、WO 99/51642、およびIdusogie, E.E. et al., J. Immunol. 164 (2000) 4178-4184に記載されているように、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)の改変(すなわち改良または縮減)をもたらす改変が、Fc領域に加えられる。
増加した半減期を有し、胎児への母体IgGの移行の原因となる新生児型Fc受容体(FcRn)(Guyer, R.L. et al., J. Immunol. 117 (1976) 587-593、およびKim, J.K. et al., J. Immunol. 24 (1994) 2429-2434)に対する結合が改良されている抗体が、US 2005/0014934に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改良する1つまたは複数の置換を内包するFc領域を含む。そのようなFc変異体として、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つまたは複数に置換を有するもの、例えばFc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(US 7,371,826)。
Fc領域変異体の他の例については、Duncan, A.R. and Winter, G., Nature 322 (1988) 738-740、US 5,648,260、US 5,624,821、およびWO 94/29351も参照されたい。
すべての局面の一態様において、環状融合ポリペプチドは、
(i) 任意で突然変異P329G、L234A、およびL235Aを有する、ヒトIgG1サブクラスのホモ二量体Fc領域、または
(ii) 任意で突然変異P329G、S228P、およびL235Eを有する、ヒトIgG4サブクラスのホモ二量体Fc領域、または
(iii) 任意で突然変異P329G、L234A、L235A、I253A、H310A、およびH435Aを有する、もしくは任意で突然変異P329G、L234A、L235A、H310A、H433A、およびY436Aを有する、ヒトIgG1サブクラスのホモ二量体Fc領域、または
(iv) (a)一方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366Wを含み、かつ他方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366S、L368A、およびY407Vを含むか、もしくは
(b) 一方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366WおよびY349Cを含み、かつ他方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366S、L368A、Y407V、およびS354Cを含むか、もしくは
(c) 一方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366WおよびS354Cを含み、かつ他方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366S、L368A、Y407V、およびY349Cを含む、
ヘテロ二量体Fc領域
または
(v) Fc領域ポリペプチドはどちらも突然変異P329G、L234A、およびL235Aを含み、かつ
(a) 一方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366Wを含み、かつ他方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366S、L368AおよびY407Vを含むか、もしくは
(b) 一方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366WおよびY349Cを含み、かつ他方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366S、L368A、Y407V、およびS354Cを含むか、もしくは
(c) 一方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366WおよびS354Cを含み、かつ他方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366S、L368A、Y407V、およびY349Cを含む、
ヒトIgG1サブクラスのヘテロ二量体Fc領域、
または
(vi) Fc領域ポリペプチドはどちらも突然変異P329G、S228P、およびL235Eを含み、かつ
(a) 一方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366Wを含み、かつ他方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366S、L368AおよびY407Vを含むか、もしくは
(b) 一方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366WおよびY349Cを含み、かつ他方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366S、L368A、Y407V、およびS354Cを含むか、もしくは
(c) 一方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366WおよびS354Cを含み、かつ他方のFc領域ポリペプチドが突然変異T366S、L368A、Y407V、およびY349Cを含む、
ヒトIgG4サブクラスのヘテロ二量体Fc領域、
または
(vii) (i)、(ii)、および(iii)のうちの1つと(vi)、(v)、および(vi)のうちの1つとの組み合わせ
を含む(位置はいずれもKabatのEUインデックスに従う)。
本明細書において報告するすべての局面の一態様において、CH3ドメインを含む環状融合ポリペプチドは、追加のC末端グリシン-リジンジペプチド(G446およびK447、ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)を含む。本明細書において報告するすべての局面の一態様において、CH3ドメインを含む環状融合ポリペプチドは、追加のC末端グリシン残基(G446、ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)を含む。
本明細書において報告する環状融合ポリペプチドは、一態様において、突然変異PVA236、L234A/L235Aおよび/またはGLPSS331(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)を有するヒトサブクラスIgG1のFc領域であるか、サブクラスIgG4のFc領域であることを特徴とする、Fc領域を含む。さらなる態様において、環状融合ポリペプチドは、E233、L234、L235、G236、D270、N297、E318、K320、K322、A327、A330、P331、および/またはP329(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)に少なくとも1つの突然変異を含有する任意のIgGクラスの、一態様ではIgG1またはIgG4サブクラスのFc領域を含むことを特徴とする。環状融合ポリペプチドが、突然変異S228Pを含有するか、突然変異S228PおよびL235Eを含有する、ヒトIgG4サブクラスのFc領域(Angal, S., et al, Mol. Immunol. 30 (1993) 105-108)(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)を含むことは、さらなる一態様である。
本明細書において報告する環状融合ポリペプチドに含まれるFc領域ポリペプチドのC末端は、アミノ酸残基PGKで終わる完全なC末端であることができる。C末端は、C末端アミノ酸残基のうちの1つまたは2つが除去された短縮型C末端であることができる。好ましい一態様において、C末端は、アミノ酸残基PGで終わる短縮型C末端である。
(d) システイン操作環状融合ポリペプチド
ある特定の態様では、1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作環状融合ポリペプチドを作製することが望ましい場合がある。特定の態様では、置換される残基が環状融合ポリペプチドの接近可能部位に存在する。それらの残基をシステインで置換すると、それによって環状融合ポリペプチドの接近可能部位に活性チオール基が配置されることになり、本明細書においてさらに説明するように、それを使って、環状融合ポリペプチドを他の部分、例えば薬物部分またはリンカー-薬物部分にコンジュゲートすることで、イムノコンジュゲートを作製することができる。ある特定の態様では、本明細書において報告する環状融合ポリペプチドの、とりわけコントースボディの、次に挙げる残基のうちの任意の1つまたは複数をシステインで置換することができる:軽鎖のV205(Kabatナンバリング)、重鎖のA118(EUナンバリング)、および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン操作環状融合ポリペプチドは、例えばUS 7,521,541に記載されている抗体と同様にして生成させることができる。
(e) 環状融合ポリペプチド誘導体
ある特定の態様では、当技術分野において公知であり容易に入手することができる追加の非タンパク質部分を含有するように、本明細書において提供する環状融合ポリペプチドをさらに修飾してもよい。環状融合ポリペプチドの誘導体化に適した部分として水溶性ポリマーが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性ゆえに、製造上の利点を有しうる。ポリマーは任意の分子量であってよく、分岐型であっても非分岐型であってもよい。環状融合ポリペプチドに取り付けられるポリマーの数はさまざまであってよく、2つ以上のポリマーが取り付けられる場合、それらは同じ分子または異なる分子であることができる。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、例えば限定するわけではないが、改良しようとする環状融合ポリペプチドの特定の特性または機能、その環状融合ポリペプチド誘導体が所定の条件下で治療に使用される予定であるかどうかなどといった、考慮事項に基づいて決定することができる
別の態様では、環状融合ポリペプチドと、放射線へのばく露によって選択的に加熱することができる非タンパク質性部分とのコンジュゲートが、提供される。一態様において、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kam, N.W. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102 (2005) 11600-11605)。放射線は任意の波長であってよく、例えば限定するわけではないが、通常の細胞は傷つけない波長ではあるものの、非タンパク質性部分を、抗体-非タンパク質性部分に近接している細胞が死滅する温度まで加熱する波長が挙げられる。
(f) 血液脳関門シャトルコンジュゲート
ある特定の態様において、本明細書において提供する環状融合ポリペプチドは、当技術分野において公知であり容易に利用することができる1つまたは複数の血液脳関門シャトルモジュールを含有するように、さらに修飾してもよい。
血液脳関門シャトルモジュールは、血液脳関門受容体に対する結合特異性を有することを特徴とする。この結合特異性は、血液脳関門シャトルモジュールを本明細書において報告する環状融合ポリペプチドに融合することによって得るか、治療標的に対する結合特異性と血液脳関門受容体に対する結合特異性とを含む多重特異性(単または多)環状融合ポリペプチドの結合特異性の一つとして、血液脳関門受容体に対する結合特異性を導入することによって得ることができる。
1つまたは複数の血液脳関門シャトルモジュールは、本明細書において報告する環状融合ポリペプチドの軽鎖または重鎖の任意の末端に融合することができる。好ましい一態様では、血液脳関門シャトルモジュールが環状融合ポリペプチドのC末端に融合される。好ましい一態様では、血液脳関門シャトルモジュールが環状融合ポリペプチドのN末端に融合される。
1つまたは複数の血液脳関門シャトルモジュールは、直接的に、またはペプチド性リンカーを介して、それぞれの環状融合ポリペプチドに融合することができる。好ましい一態様において、ペプチド性リンカーはアミノ酸配列
Figure 2019521084
または
Figure 2019521084
または(G4S)6(SEQ ID NO:70)を有する。
血液脳関門シャトルモジュールは、抗体scFvフラグメントまたはFabであることができる。一態様において、血液脳関門シャトルモジュールは、N末端からC末端に向かって順に軽鎖可変ドメイン-軽鎖定常ドメイン-ペプチド性リンカー-重鎖可変ドメイン-重鎖定常ドメイン1を含むscFvである。
一態様において、血液脳関門シャトルモジュールは、(G4S)6ペプチド性リンカー(SEQ ID NO:70)を有する抗トランスフェリン受容体抗体8D3のヒト化変異体のscFvフラグメントまたはFabである。
そのヒト化変異体という用語は、マウス8D3抗体のHVRをヒトフレームワークに移植し、任意で、フレームワーク領域(FR)および/または超可変領域(HVR)のそれぞれに互いに独立して1〜3個の突然変異を導入することによって得られた分子を表す。
抗トランスフェリン受容体抗体8D3(例えばBoado, R.J., et al, Biotechnol. Bioeng.102 (2009) 1251-1258参照)は、重鎖可変ドメインがSEQ ID NO:71のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変ドメインがSEQ ID NO:72(変異体1)またはSEQ ID NO:73(変異体2)のアミノ酸配列を有する、マウス抗体である。
一態様において、血液脳関門シャトルモジュールは、抗トランスフェリン受容体抗体299のヒト化変異体のscFvフラグメントまたはFabである(WO2017/055541参照)。
そのヒト化変異体という用語は、299抗体のHVRをヒトフレームワークに移植し、任意で、フレームワーク領域(FR)および/または超可変領域(HVR)のそれぞれに互いに独立して1〜3個の突然変異を導入することによって得られた分子を表す。
抗トランスフェリン受容体抗体299は、重鎖可変ドメインがSEQ ID NO:74のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変ドメインがSEQ ID NO:75のアミノ酸配列を有する、ウサギ抗体である。
一態様において、トランスフェリン受容体結合特異性を有する血液脳関門シャトルモジュールは、(a) SEQ ID NO:76のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b) SEQ ID NO:77のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c) SEQ ID NO:78、79または80のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d) SEQ ID NO:81のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e) SEQ ID NO:82のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f) SEQ ID NO:83のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
一態様において、血液脳関門シャトルモジュールは、トランスフェリン受容体に対する結合部位を形成するSEQ ID NO:84の重鎖可変ドメインとSEQ ID NO:85の軽鎖可変ドメインとの対を少なくとも1つは含む。
一態様において、血液脳関門シャトルモジュールは、トランスフェリン受容体に対する結合部位を形成するSEQ ID NO:86の重鎖可変ドメインとSEQ ID NO:87の軽鎖可変ドメインとの対を少なくとも1つは含む。
一態様において、血液脳関門シャトルモジュールは、トランスフェリン受容体に対する結合部位を形成するSEQ ID NO:88の重鎖可変ドメインとSEQ ID NO:87の軽鎖可変ドメインとの対を少なくとも1つは含む。
一態様において、血液脳関門シャトルモジュールは、抗トランスフェリン受容体抗体494のヒト化変異体のscFvフラグメントまたはFabである(EP 15187820参照)。
そのヒト化変異体という用語は、494抗体のHVRをヒトフレームワークに移植し、任意で、フレームワーク領域(FR)および/または超可変領域(HVR)のそれぞれに互いに独立して1〜3個の突然変異を導入することによって得られた分子を表す。
抗トランスフェリン受容体抗体494は、重鎖可変ドメインがSEQ ID NO:89のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変ドメインがSEQ ID NO:90のアミノ酸配列を有する、マウス抗体である。
一態様において、血液脳関門シャトルモジュールは、ヒトトランスフェリン受容体(huTfR)およびカニクイザルトランスフェリン受容体(cyTfR)に特異的に結合する抗トランスフェリン受容体抗体のscFvフラグメントまたはFabである。ある特定の態様において、抗トランスフェリン受容体抗体は、
- ヒトトランスフェリン受容体(huTfR)およびカニクイザルトランスフェリン受容体(cyTfR)に結合し、かつ/または
- ヒトトランスフェリン受容体に対して、カニクイザルトランスフェリン受容体に対する抗トランスフェリン受容体抗体128.1のオフ速度に等しいかそれ未満(すなわち最大限がこのオフ速度)のオフ速度を有し、オフ速度は表面プラズモン共鳴によって決定され、抗トランスフェリン受容体抗体128.1は、SEQ ID NO:91の重鎖可変ドメインとSEQ ID NO:92の軽鎖可変ドメインとを有し、かつ/または
- ヒトトランスフェリン受容体に対して、0.1 1/s〜0.005 1/s(両端を含む)のオフ速度で結合する。
本明細書において報告する一局面は、ヒトトランスフェリン受容体およびカニクイザルトランスフェリン受容体に特異的に結合し、
(i) SEQ ID NO:74の重鎖可変ドメインに由来するヒト化重鎖可変ドメインと
(ii) SEQ ID NO:75の軽鎖可変ドメインに由来するヒト化軽鎖可変ドメインと
を含む、抗トランスフェリン受容体抗体であり、
該抗体は、ヒトトランスフェリン受容体に対して、カニクイザルトランスフェリン受容体に対する抗トランスフェリン受容体抗体128.1のオフ速度に等しいかそれ未満(すなわち、以下)のオフ速度を有し、
オフ速度は表面プラズモン共鳴によって決定され、
抗トランスフェリン受容体抗体128.1は、SEQ ID NO:91の重鎖可変ドメインとSEQ ID NO:92の軽鎖可変ドメインとを有する。
一態様において、抗体は、軽鎖可変ドメインの80番目に、プロリンアミノ酸残基(P)を有する(ナンバリングはKabatに従う)。
一態様において、抗体は、軽鎖可変ドメインの91番目に、アスパラギンアミノ酸残基(N)を有する(ナンバリングはKabatに従う)。
一態様において、抗体は、軽鎖可変ドメインの93番目に、アラニンアミノ酸残基(A)を有する(ナンバリングはKabatに従う)。
一態様において、抗体は、重鎖可変ドメインの100g番目に、セリンアミノ酸残基(S)を有する(ナンバリングはKabatに従う)。
一態様において、抗体は、重鎖可変ドメインの100g番目に、グルタミンアミノ酸残基(Q)を有する(ナンバリングはKabatに従う)。
一態様において、抗体は、重鎖可変ドメインの65番目に、セリンアミノ酸残基(S)を有する(ナンバリングはKabatに従う)。
一態様において、抗体は、重鎖可変ドメインの105番目に、グルタミンアミノ酸残基(Q)を有する(ナンバリングはKabatに従う)。
一態様において、抗体は、軽鎖可変ドメインの80番目にプロリンアミノ酸残基(P)、軽鎖可変ドメインの91番目にアスパラギンアミノ酸残基(N)、軽鎖可変ドメインの93番目にアラニンアミノ酸残基(A)、重鎖可変ドメインの100g番目にセリンアミノ酸残基(S)、重鎖可変ドメインの65番目にセリンアミノ酸残基(S)、および重鎖可変ドメインの105番目にグルタミンアミノ酸残基(Q)を有する(ナンバリングはKabatに従う)。
一態様において、抗体は、軽鎖可変ドメインの80番目にプロリンアミノ酸残基(P)、軽鎖可変ドメインの91番目にアスパラギンアミノ酸残基(N)、軽鎖可変ドメインの93番目にアラニンアミノ酸残基(A)、重鎖可変ドメインの100g番目にグルタミンアミノ酸残基(Q)、重鎖可変ドメインの65番目にセリンアミノ酸残基(S)、および重鎖可変ドメインの105番目にグルタミンアミノ酸残基(Q)を有する(ナンバリングはKabatに従う)。
本明細書において報告する一局面は、ヒトトランスフェリン受容体(huTfR)に特異的に結合し、
(i) SEQ ID NO:88のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列と
(ii) SEQ ID NO:87のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と
を含む、抗トランスフェリン受容体抗体であり、
該抗体は、SEQ ID NO:88の重鎖可変ドメイン(VH)配列とSEQ ID NO:87の軽鎖可変ドメイン(VL)配列とを含む抗体とほぼ同じオフ速度を有する。
一局面では、血液脳関門受容体に結合する一価結合実体にペプチド性リンカーを介してコンジュゲートされた本明細書において報告する環状融合ポリペプチドが、ここに提供される。
一局面では、一方の環状融合ポリペプチドが血液脳関門受容体に結合する一価結合実体にペプチド性リンカーを介してコンジュゲートされている本明細書において報告する二環状融合ポリペプチドが、ここに提供される。
一局面では、両方の環状融合ポリペプチドがそれぞれ独立して、血液脳関門受容体に結合する一価結合実体にペプチド性リンカーを介してコンジュゲートされている、本明細書において報告する二環状融合ポリペプチドが、ここに提供される。このコンジュゲートは、血液脳関門受容体に結合する一価結合実体を、2つ含む。
一態様において、血液脳関門受容体に結合する一価結合実体は、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドからなる群より選択される。
一態様において、血液脳関門受容体に結合する一価結合実体は、血液脳関門受容体リガンド、scFv、Fv、scFab、VHHからなる群より選択される分子、好ましい一態様ではscFvまたはscFabからなる群より選択される分子を含む。
一態様において、血液脳関門受容体は、トランスフェリン受容体、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1およびヘパリン結合性上皮成長因子様成長因子からなる群より選択される。好ましい一態様において、血液脳関門受容体はトランスフェリン受容体である。
一態様において、血液脳関門受容体に結合する一価結合実体は、トランスフェリン受容体を指向する1つのscFabまたは1つのscFv、より具体的にはSEQ ID NO:93、94、または95のアミノ酸配列内に含まれるトランスフェリン受容体中のエピトープを認識するscFabまたはscFvを含む。
一態様において、血液脳関門受容体に結合する一価結合実体は、環状融合ポリペプチドのC末端にリンカーによってカップリングされる。
一態様において、ペプチド性リンカーは、少なくとも15アミノ酸の長さを有する、より好ましくは18〜25アミノ酸の長さを有する、アミノ酸配列である。
好ましい一態様において、コンジュゲートは、脳エフェクター実体として(脳標的に特異的に結合する)本明細書において報告する環状融合ポリペプチド、配列
Figure 2019521084
のリンカーおよび血液脳受容体であるヒトトランスフェリン受容体に結合する一価結合実体としての1つのscFabを含み、scFabは環状融合ポリペプチドのC末端にリンカーによってカップリングされており、scFabは、SEQ ID NO:93、94、または95のアミノ酸配列内に含まれるヒトトランスフェリン受容体中のエピトープを認識する。
好ましい一態様において、コンジュゲートは、脳エフェクター実体として(脳標的に特異的に結合する)本明細書において報告する二環状融合ポリペプチド、配列
Figure 2019521084
の2つのリンカー、および血液脳受容体であるヒトトランスフェリン受容体に結合する一価結合実体としての2つのscFabを含み、scFabのそれぞれは異なる環状融合ポリペプチドのC末端に1つのリンカーによってカップリングされており、scFabは、SEQ ID NO:93、94または95のアミノ酸配列内に含まれるヒトトランスフェリン受容体中のエピトープを認識する。
一態様において、第1環状融合ポリペプチドは第1二量体化モジュールを含み、第2環状融合ポリペプチドは第2二量体化モジュールを含んでいて、それら2つの環状融合ポリペプチドのホモ二量体化および/またはヘテロ二量体化を可能にする。
一態様において、第1環状融合ポリペプチドのヘテロ二量体化モジュールはノブ重鎖Fc領域であり、第2環状融合ポリペプチドのヘテロ二量体化モジュールはホール重鎖Fc領域である(ノブ・イントゥ・ホール戦略による;例えばWO 96/027011; Ridgway, J.B., et al, Prot. Eng. 9 (1996) 617-621; Merchant, A.M., et al, Nat. Biotechnol. 16 (1998) 677-681参照)。ジスルフィド架橋の導入はヘテロ二量体をさらに安定化し(Merchant, A.M., et al, Nat. Biotech.16 (1998) 677-681; Atwell, S., et al, J. Mol. Biol. 270 (1997) 26-35)、収量を増加させる。
一態様において、第1環状融合ポリペプチドのホモ二量体化モジュールは重鎖Fc領域であり、第2環状融合ポリペプチドのホモ二量体化モジュールは重鎖Fc領域であり、両Fc領域は、アミノ酸置換S364G、L368F、D399KおよびK409Dによって修飾されている(アミノ酸の位置はKabatのEUインデックスに従ってナンバリングされている)。これらの修飾/突然変異は、同一鎖間での誘引的相互作用は維持するが、異なる鎖の反発につながる。
一態様において、第1環状融合ポリペプチドのヘテロ二量体化モジュールはノブ重鎖Fc領域であり、第2環状融合ポリペプチドのヘテロ二量体化モジュールはホール重鎖Fc領域であって(ノブ・イントゥ・ホール戦略による)、一方のFc領域はアミノ酸置換S364G、L368F、D399K、およびK409Dによって修飾されている(アミノ酸の位置はKabatのEUインデックスに従ってナンバリングされている)。これらの修飾/突然変異はホール鎖間の誘引的相互作用を低減し、ヘテロ二量体化を促進する。
「EUナンバリングシステム」または「EUインデックス」は、免疫グロブリン重鎖定常領域中の残基に言及する場合に、一般に使用されている(例えば、参照により本明細書に特に組み入れられるKabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)において報告されているEUインデックス)。
本明細書において報告する環状融合ポリペプチドコンジュゲートは、血液脳関門を横切って環状融合ポリペプチドを輸送するために使用することができる。
一態様において、ヒトトランスフェリン受容体に結合する一価結合実体としてのscFabにそのC末端においてカップリングされた環状融合ポリペプチドは、N末端からC末端に向かって次に挙げる構造を有する。
・環状融合ポリペプチド。
・環状融合ポリペプチドのC末端をscFabのVLドメインのN末端にカップリングするペプチド性リンカー、好ましい一態様において、ペプチド性リンカーはアミノ酸配列
Figure 2019521084
を有する。
・scFabの可変軽鎖ドメイン(VL)およびCκ軽鎖ドメイン。
・scFabのCκ軽鎖ドメインのC末端をscFabのVHドメインのN末端にカップリングするペプチド性リンカー、好ましい一態様において、ペプチド性リンカーはアミノ酸配列(G4S)4GG(SEQ ID NO:69)である。
・scFab抗体の可変重鎖ドメイン(VH)およびIgG CH1重鎖ドメイン。
一態様において、ヒトトランスフェリン受容体に結合する一価結合実体としてのscFvにそのC末端においてカップリングされている環状融合ポリペプチドは、N末端からC末端に向かって次に挙げる構造を有する。
・環状融合ポリペプチド。
・環状融合ポリペプチドのC末端をscFv抗体フラグメントのVLドメインのN末端にカップリングするペプチド性リンカー、好ましい一態様においてペプチド性リンカーはアミノ酸配列
Figure 2019521084
を有するペプチドである。
・可変軽鎖ドメイン(VL)。
・可変軽鎖ドメインのC末端をscFvのVHドメインのN末端にカップリングするペプチド性リンカー、好ましい一態様においてペプチド性リンカーはアミノ酸配列(G4S)4GG(SEQ ID NO:69)を有するペプチドである。
・scFv抗体フラグメントの可変重鎖ドメイン(VH)。
1つの血液脳関門シャトルモジュール
一局面において、環状融合ポリペプチドまたは多環状融合ポリペプチドは、正確に1つの血液脳関門結合特異性またはシャトルモジュールを含み、したがって少なくとも二重特異性であり、その血液脳関門結合特異性またはシャトルモジュールは、
- SEQ ID NO:71および72または73の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体8D3の可変ドメインのヒト化変異体、または
- SEQ ID NO:88の重鎖可変ドメインとSEQ ID NO:87の軽鎖可変ドメインとの対、または
- SEQ ID NO:89および90の抗ヒトトランスフェリン受容体抗体494の可変ドメインのヒト化変異体
を含み、
それにより、該血液脳関門結合特異性またはシャトルモジュールは血液脳関門越しに(多)環状融合ポリペプチドを輸送する。
1つまたは2つの血液脳関門シャトルモジュール
一局面において、環状融合ポリペプチドまたは多環状融合ポリペプチドは、1つまたは2つの血液脳関門結合特異性またはシャトルモジュールを含み、したがって少なくとも二重特異性であり、該血液脳関門シャトル結合部位またはモジュールは、血液脳関門受容体(BBB-R)に低いアフィニティーで結合する抗体に由来し(BBB-R結合特異性)、それにより、血液脳関門受容体に低いアフィニティーで結合する抗体に由来する血液脳関門結合特異性またはシャトルモジュールは、血液脳関門越しに(多)環状融合ポリペプチドを輸送する。
一態様において、BBB-Rは、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体(IGF受容体)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、およびヘパリン結合性上皮成長因子様成長因子(HB-EGF)からなる群より選択される。別のそのような局面において、BBB-RはヒトBBB-Rである。そのような一局面において、BBB-RはTfRである。別のそのような局面において、BBB-RはTfRであり、抗体はTfR活性を阻害しない。別のそのような局面において、BBB-RはTfRであり、抗体はトランスフェリンへのTfRの結合を阻害しない。
一態様において、抗体は、BBB-Rによるそのネイティブリガンドのうちの1種類または複数種類への結合を損なわない。そのような一態様において、抗体は、ヒトトランスフェリンへのヒトトランスフェリン受容体(hTfR)の結合を阻害しないような形で、hTfR)に特異的に結合する。
一態様において、BBB-R結合特異性は、BBB-Rに対して約1nM〜約100μMのIC50を有する。一態様において、IC50は約5nM〜約100μMである。一態様において、IC50は約50nM〜約100μMである。一態様において、IC50は約100nM〜約100μMである。一態様において、BBB-R結合特異性は、BBB-Rに対して約5nM〜約10μMのアフィニティーを有する。一態様において、BBB-R結合特異性は、環状融合ポリペプチドにコンジュゲートされているか環状融合ポリペプチドに含まれている場合に、BBB-Rに対して約30nM〜約1μMのアフィニティーを有する。一態様において、BBB-R結合特異性は、環状融合ポリペプチドにコンジュゲートされているか環状融合ポリペプチドに含まれている場合に、BBB-Rに対して約50nM〜約1μMのアフィニティーを有する。一態様において、BBB-Rに対するBBB-R結合特異性または環状融合ポリペプチドコンジュゲートのアフィニティーは、スキャッチャード分析を使って測定される。一態様において、BBB-Rに対するBBB-R結合特異性または環状融合ポリペプチドコンジュゲートのアフィニティーは、BIACORE分析を使って測定される。一態様において、BBB-Rに対するBBB-R結合特異性または環状融合ポリペプチドコンジュゲートのアフィニティーは、競合ELISAを使って測定される。
血液脳関門シャトル含有コンジュゲートの使用
別の一態様では、BBB-Rに低いアフィニティーで結合する抗体または抗体フラグメントに環状融合ポリペプチドが、カップリングされ、それによって環状融合ポリペプチドへのCNSの曝露を増大させる、環状融合ポリペプチドへのCNSの曝露を増大させる方法が、本明細書において提供される。
「カップリングされる」という用語は、抗BBB-R抗体結合特異性が少なくとも二重特異性環状融合ポリペプチドに第2の結合特異性として導入される場合を包含する。「カップリングされる」という用語は、抗BBB-R抗体結合特異性が環状融合ポリペプチドにおいて独立した結合特異性としてコンジュゲートされる場合も包含する。
一態様において、環状融合ポリペプチドへのCNS曝露の増大は、BBB-Rに対して低下したアフィニティーを有さない典型的抗体とカップリングした環状融合ポリペプチドのCNS曝露との比較で測定される。一態様において、環状融合ポリペプチドへのCNS曝露の増大は、投与後の血清中に見いだされる量と比較したCNS中に見いだされる環状融合ポリペプチドの量の比として測定される。一態様において、CNS曝露の増大は、0.1%を上回る比をもたらす。一態様において、環状融合ポリペプチドへのCNS曝露の増大は、カップリングされた抗BBB-R抗体が存在しない場合の環状融合ポリペプチドのCNS曝露との比較で測定される。一態様において、環状融合ポリペプチドへのCNS曝露の増大は、イメージングによって測定される。一態様において、環状融合ポリペプチドへのCNS曝露の増大は、1種類または複数種類の生理学的症状の変容などといった間接的読出しによって測定される。
対照に投与された環状融合ポリペプチドのCNSにおける停留を増大させる方法は、環状融合ポリペプチドが、環状融合ポリペプチドのCNSにおける停留が増大するように、BBB-Rに低いアフィニティーで結合する抗体または抗体フラグメントにカップリングされる。
別の一態様では、対象のCNSにおいて有効であるように環状融合ポリペプチドの薬物動態および/または薬力学を最適化する方法であって、環状融合ポリペプチドが、BBB-Rに低いアフィニティーで結合する抗体または抗体フラグメントにカップリングされ、該抗体または抗体フラグメントが、環状融合ポリペプチドにカップリングされた後のBBB-Rに対するそのアフィニティーが、CNSにおける環状融合ポリペプチドの薬物動態および/または薬力学を最適化するような、環状融合ポリペプチドにコンジュゲートされた抗体または抗体フラグメントのBBB越しの輸送量をもたらすように選択される、方法が、本明細書において提供される。
別の一態様では、BBB-Rに結合する、環状ポリペプチドにカップリングされている抗体または抗体フラグメントで、哺乳動物を処置する工程を含み、抗体が、BBB-Rに対して低いアフィニティーを有するように選択されており、それによって、抗体およびカップリングされた環状融合ポリペプチドのCNS取り込みを改良する、哺乳動物における神経障害を処置する方法が、本明細書において提供される。一態様において、処置する工程は障害症状の軽減または排除をもたらす。別の一局面において、処置する工程は神経障害の改善をもたらす。
すべての前記の局面の一態様において、抗BBB-R抗体は、BBB-Rに対して、約1nM〜約100μMのIC50を有する。別のそのような態様において、IC50は約5nM〜約100μMである。別のそのような一態様において、IC50は約50nM〜約100μMである。別のそのような一態様において、IC50は約100nM〜約100μMである。別の一態様において、抗体は、BBB-Rに対して、約5nM〜約10μMのアフィニティーを有する。別の一態様において、抗体は、環状融合ポリペプチドにカップリングされている場合に、BBB-Rに対して約30nM〜約1μMのアフィニティーを有する。別の一態様において、抗体は、環状融合ポリペプチドにカップリングされている場合に、BBB-Rに対して約50nM〜約1μMのアフィニティーを有する。一態様において、BBB-Rに対する抗BBB-R抗体または環状融合ポリペプチドコンジュゲートのアフィニティーは、スキャッチャード分析を使って測定される。別の一態様において、BBB-Rに対する抗BBB-R抗体または環状融合ポリペプチドコンジュゲートのアフィニティーは、BIACORE分析を使って測定される。別の一態様において、BBB-Rに対する抗BBB-R抗体または環状融合ポリペプチドコンジュゲートのアフィニティーは、競合ELISAを使って測定される。
別の一態様では、環状融合ポリペプチドコンジュゲートが標識される。別の一態様において、抗BBB-R抗体またはフラグメントは、BBB-Rによるそのネイティブリガンドのうちの1種類または複数種類への結合を損なわない。別の一態様において、抗BBB-R抗体は、ヒトトランスフェリンへのhTfRの結合を阻害しないような形で、hTfRに特異的に結合する。別の一態様において、環状融合ポリペプチドコンジュゲートは哺乳動物に投与される。別の一態様において、哺乳動物はヒトである。別の一態様において、哺乳動物は神経障害を有する。別の一態様において、神経障害は、アルツハイマー病(AD)、卒中、認知症、筋ジストロフィー(MD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、嚢胞性線維症、アンジェルマン症候群、リドル症候群、パーキンソン病、ピック病、パジェット病、がん、および外傷性脳損傷からなる群より選択される。
血液脳関門シャトルとしての非共有結合性複合体
非共有結合性複合体の一部は、ハプテンに対する第1結合特異性と血液脳関門受容体(BBBR)に対する第2結合特異性とを有する二重特異性抗体である血液脳関門シャトルモジュール(BBBシャトルモジュール)である。そのようなBBBシャトルモジュールは、血液脳関門上のトランスサイトーシス可能な細胞表面標的(例えばTfR、LRPまたは他の標的、BBB-R)を認識すると同時に、ハプテン化された環状融合ポリペプチドに結合する。
より詳しく述べると、環状融合ポリペプチドはハプテンにコンジュゲートされ、血液脳関門シャトルのハプテン結合部分との複合体を形成する。この複合体は明確かつ安定であり、ハプテン化された環状融合ポリペプチドを血液脳関門越しに特異的に送達する。ハプテン化された環状融合ポリペプチドは血液脳関門シャトルと非共有結合的に複合体を形成するので、ハプテン化された環状融合ポリペプチドは、一方で、循環中に存在する間はその送達媒体(=血液脳関門シャトル=二重特異性抗体)に結合しているが、他方で、トランスサイトーシス後は効率よく放出されることも可能である。ハプテンとのコンジュゲーションは、環状融合ポリペプチドの活性を妨害することなく達成することができる。血液脳関門シャトルは異常な共有結合的付加を含有しないので、免疫原性のリスクは一切なくなる。ハプテン化された環状融合ポリペプチドとハプテン特異的結合部位を含有する二重特異性抗体との複合体は、環状融合ポリペプチドに良好な生物物理学的挙動を付与する。その上、そのような複合体は、その充填物(load)を、二重特異性抗体の第2結合特異性によって認識される抗原をディスプレイする細胞または組織にターゲティングすることもできる。
環状融合ポリペプチドは、血液脳関門シャトル(=二重特異性抗体)との複合体を形成しているだけでなく、ハプテン化されているにもかかわらず、その機能性を保っている。加えて、二重特異性抗体の血液脳関門受容体結合部位は、複合体を形成したハプテン化された環状融合ポリペプチドの存在下で、その結合特異性およびアフィニティーを保っている。本明細書において報告するハプテン化された環状融合ポリペプチドと二重特異性抗体との複合体は、環状融合ポリペプチドを、血液脳関門受容体を発現する細胞に特異的にターゲティングするために使用することができる。ハプテン化された環状融合ポリペプチドは二重特異性抗体には非共有結合的にカップリングされるので、環状融合ポリペプチドは、内部移行またはトランスサイトーシス後に放出されることができる。
VI.組換え法および組換え組成物
環状融合ポリペプチド様の抗体は、例えばUS 4,816,567に記載されている組換え法および組換え組成物を使って生産しうる。一態様では、本明細書に記載する環状融合ポリペプチドをコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、1つの環状融合ポリペプチドを含むアミノ酸配列を、また任意で第2環状融合ポリペプチドを含むアミノ酸配列を(例えば二環状融合ポリペプチドの第1環状融合ポリペプチドおよび第2環状融合ポリペプチドを)コードしうる。さらなる一態様では、そのような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば発現ベクター)が提供される。さらなる一態様では、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一態様では、宿主細胞が、(1)環状融合ポリペプチド(ホモマー型またはホモ多量体の環状融合ポリペプチド)を含むアミノ酸配列および任意で、ヘテロ二量体二環状融合ポリペプチドの場合には、第2環状融合ポリペプチドを含む第2アミノ酸配列をコードする核酸と、任意で、多環状融合ポリペプチドの場合にはさらなる環状融合ポリペプチドのアミノ酸配列をコードするさらなる核酸とを含むベクター、または(2)ヘテロ二量体二環状融合ポリペプチドの場合には、第1環状融合ポリペプチドを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1ベクターと、第2環状融合ポリペプチドを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2ベクターとを含む(例えばそれらのベクターで形質転換されている)。一態様において、宿主細胞は真核生物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ球系細胞(例えばY0、NS0、Sp20細胞)である。一態様では、環状融合ポリペプチドを作製する方法であって、上記で提供した環状融合ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を、環状融合ポリペプチドの発現に適した条件下で培養する工程、および、任意で、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から環状融合ポリペプチドを回収する工程を含む、方法が提供される。
環状融合ポリペプチドを組換え生産するには、抗体をコードする核酸、例えば上述のものを単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のために、1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は従来の方法を使って容易に生産しうる。
環状融合ポリペプチドをコードするベクターのクローニングまたは発現のための適切な宿主細胞としては、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞が挙げられる。例えば環状融合ポリペプチドは、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要でない場合は特に、細菌中で生産しうる。細菌における抗体フラグメントおよびポリペプチドの発現については、例えばUS 5,648,237、US 5,789,199およびUS 5,840,523を参照されたい(大腸菌における抗体フラグメントの発現についての記載があるCharlton, K.A., In: Methods in Molecular Biology、Vol. 248, Lo, B.K.C. (ed.), Humana Press, Totowa, NJ (2003), pp.245-254も参照されたい)。発現後に、環状融合ポリペプチドを細菌細胞ペーストから可溶性画分に単離して、さらに精製することができる。
原核生物だけでなく、糸状菌または酵母などの真核微生物も、グリコシル化経路が「ヒト化」されていて部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する環状融合ポリペプチドの生産をもたらす真菌株および酵母株を含めて、環状融合ポリペプチドをコードするベクターのための適切なクローニング宿主または発現宿主である(Gerngross, T.U., Nat. Biotech.22 (2004) 1409-1414; Li, H. et al, Nat. Biotech.24 (2006) 210-215参照)。
グリコシル化された環状融合ポリペプチドを発現させるための適切な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎生物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎生物細胞の例として、植物細胞および昆虫細胞が挙げられる。特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と一緒に使用しうるバキュロウイルス株は、数多く同定されている。
植物細胞培養を宿主として利用することもできる(例えばUS 5,959,177、US 6,040,498、US 6,420,548、US 7,125,978およびUS 6,417,429(トランスジェニック植物において抗体を生産するためのPLANTIBODIES(商標)技術に関する記載がある)参照)。
脊椎動物細胞も宿主として使用しうる。例えば、懸濁状態での成長に適応した哺乳動物細胞株は役立ちうる。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胎児腎臓株(Graham, F.L. et al., J. Gen Virol. 36 (1977) 59-74に記載の293または293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, J.P., Biol. Reprod. 23 (1980) 243-252などに記載のTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳房腫瘍(MMT060562);Mather, J.P. et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383 (1982) 44-68などに記載のTRI細胞; MRC5細胞;およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株として、DHFR- CHO細胞(Urlaub, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980) 4216-4220)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体生産に適したある特定の哺乳動物宿主細胞株の総説としては、例えばYazaki, P. and Wu, A.M., Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C.(ed.), Humana Press, Totowa, NH (2004) pp.255-268を参照されたい。
VII.アッセイ
本明細書において提供する環状融合ポリペプチドは、ポリペプチドのその標的への結合を決定するための当技術分野において公知のさまざまなアッセイによって、同定すること、スクリーニングすること、またはそれらの物理的/化学的特性および/もしくは生物学的活性を特徴決定することができる。
VIII.イムノコンジュゲート
本発明は、1つまたは複数の細胞毒性作用物質、例えば化学療法剤または化学療法薬、成長阻害性作用物質、毒素(例えばタンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物由来の酵素活性毒素、またはそれらのフラグメント)、または放射性同位体にコンジュゲートされた本明細書において報告する環状融合ポリペプチドを含むイムノコンジュゲートも提供する。
一態様において、イムノコンジュゲートは、環状融合ポリペプチドが、以下に限定するわけではないが以下を含む1つまたは複数の薬物にコンジュゲートされている、環状融合ポリペプチド-薬物コンジュゲートである:メイタンシノイド(US 5,208,020、US 5,416,064およびEP 0 425 235 B1参照);アウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(US 5,635,483、US 5,780,588、およびUS 7,498,298参照);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(US 5,712,374、US 5,714,586、US 5,739,116、US 5,767,285、US 5,770,701、US 5,770,710、US 5,773,001およびUS 5,877,296; Hinman, L.M. et al, Cancer Res. 53 (1993) 3336-3342;およびLode, H.N. et al, Cancer Res. 58 (1998) 2925-2928参照);アントラサイクリン、例えばダウノマイシンまたはドキソルビシン(Kratz, F. et al, Curr. Med. Chem. 13 (2006) 477-523; Jeffrey, S.C. et al, Bioorg. Med. Chem. Lett. 16 (2006) 358-362; Torgov, M.Y. et al, Bioconjug. Chem. 16 (2005) 717-721; Nagy, A. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (2000) 829-834; Dubowchik, G.M. et al, Bioorg. & Med. Chem. Letters 12 (2002) 1529-1532; King, H.D. et al, J. Med. Chem. 45 (20029 4336-4343;およびUS 6,630,579号参照);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン類、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセル;トリコテセン;およびCC1065。
別の一態様において、イムノコンジュゲートは、以下に限定するわけではないが以下を含む酵素活性毒素またはそのフラグメントにコンジュゲートされた、本明細書において報告する環状融合ポリペプチドを含む:ジフテリア毒素A鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害因子、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害因子、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセン類。
別の一態様において、イムノコンジュゲートは、放射性コンジュゲートが形成されるように放射性原子にコンジュゲートされた、本明細書において報告する環状融合ポリペプチドを含む。放射性コンジュゲートの生産にはさまざまな放射性同位体を利用することができる。例として、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212およびLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートを検出に使用する場合、それは、シンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばTC99mまたはI123を含むか、核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られている)用のスピンラベル、例えば、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、または鉄を含みうる。
環状融合ポリペプチドと細胞毒性作用物質のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジプイミデートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などといった、さまざまな二官能性タンパク質カップリング剤を使って作製しうる。例えばリシンイムノトキシンは、Vitetta, E.S. et al., Science 238 (1987) 1098-1104に記載されているように調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、環状融合ポリペプチドに放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするための例示的キレート剤である(WO 94/11026参照)。リンカーは、細胞における細胞毒性薬の放出を容易にする「切断可能リンカー」でありうる。例えば酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari, R.V. et al., Cancer Res. 52 (1992) 127-131;US 5,208,020)を使用しうる。
本明細書におけるイムノコンジュゲートでは、架橋試薬を使って調製された、例えば限定するわけではないが(Pierce Biotechnology, Inc.、米国イリノイ州ロックフォードから)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、およびSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を使って調製された、上述のコンジュゲートが特に考えられるが、それらに限定されるわけではない。
IX.診断および検出のための方法および組成物
ある特定の態様において、本明細書において提供する環状融合ポリペプチドはいずれも、生物学的試料におけるその標的の存在を検出するのに役立つ。本明細書において使用する「検出する」という用語は、定量的検出または定性的検出を包含する。ある特定の態様において、生物学的試料は血液、血清、血漿、細胞、または組織を含む。
一態様では、診断方法または検出方法に使用するための、環状融合ポリペプチドが提供される。さらなる一局面では、生物学的試料における環状融合ポリペプチドの標的の存在を検出する方法が提供される。ある特定の態様において、本方法は、生物学的試料を、本明細書に記載の環状融合ポリペプチドと、環状融合ポリペプチドによるその標的への結合を許容する条件下で、接触させる工程、および環状融合ポリペプチドとその標的との間に複合体が形成されるかどうかを検出する工程を含む。そのような方法はインビトロ法またはインビボ法でありうる。一態様において、環状融合ポリペプチドは、該環状融合ポリペプチドによる治療に適格な対象を選択するために使用される。
ある特定の態様では、標識された環状融合ポリペプチドが提供される。ラベルとしては、直接的に検出されるラベルまたは部分(例えば蛍光ラベル、発色団ラベル、高電子密度ラベル、化学発光ラベル、および放射性ラベル)、ならびに例えば酵素反応または分子相互作用などによって間接的に検出される部分、例えば酵素またはリガンドが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。例示的ラベルとして、放射性同位体32P、14C、125I、3H、および131I、発蛍光団、例えば希土類キレート化合物またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(US 4,737,456)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を使って色素前駆体を酸化する酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼまたはマイクロペルオキシダーゼと共役させた複素環オキシダーゼ、例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベル、安定フリーラジカルなどが挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
X.薬学的製剤
本明細書に記載する環状融合ポリペプチドの薬学的製剤は、所望の純度を有するそのような環状融合ポリペプチドを1種類または複数種類の随意の薬学的に許容される担体(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. (ed.)(1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製される。薬学的に許容される担体は、使用される投薬量および濃度において受容者にとって一般に無毒性であり、これには、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリ(ビニルピロリドン);アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;単糖、二糖、および他の糖質、例えばグルコース、マンノース、またはデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);および/または非イオン界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)などがあるが、それらに限定されるわけではない。本明細書における、例示的な薬学的に許容される担体としては、間質薬物分散剤、例えば可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えばヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えばrhuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.)が、さらに挙げられる。rhuPH20を含むある特定の例示的sHASEGPおよびその使用方法は、US 2005/0260186およびUS 2006/0104968に記載されている。一局面では、sHASEGPが、1種類または複数種類の追加グリコサミノグリカナーゼ、例えばコンドロイチナーゼと併用される。
例示的な凍結乾燥抗体製剤はUS 6,267,958に記載されている。水性抗体製剤としてはUS 6,171,586およびWO 2006/044908に記載されているものが挙げられ、後者の製剤はヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
本明細書における製剤は、処置される特定適応症の必要に応じて、2種類以上の活性成分、好ましくは互いに有害な影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有しうる。そのような活性成分は、適宜、意図した目的に有効な量で組み合わされて存在する。
活性成分は、例えばコアセルベーション法または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入するか、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)に封入するか、またはマクロエマルションに封入することができる。そのような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th, Osol, A. (ed.)(1980)に開示されている。
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の適切な例としては、環状融合ポリペプチドを含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスであって、マトリックスがフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態にある、半透過性マトリックスが挙げられる。
インビボ投与に使用される製剤は一般に滅菌状態にある。滅菌性は例えば滅菌濾過膜による濾過などによって容易に達成することができる。
XI.治療方法および治療組成物
本明細書において提供する環状融合ポリペプチドはいずれも治療方法に使用しうる。
一局面では、医薬として使用するための環状融合ポリペプチドが提供される。さらなる局面では、疾患の処置において使用するための環状融合ポリペプチドが提供される。ある特定の態様では、処置方法において使用するための環状融合ポリペプチドが提供される。ある特定の態様において、本発明は、個体に有効量の環状融合ポリペプチドを投与する工程を含む、疾患を有する個体を処置する方法において使用するための環状融合ポリペプチドを提供する。そのような一態様において、本方法は、個体に、有効量の少なくとも1つの追加治療用物質を投与することを、さらに含む。上記の態様のいずれにおいても「個体」は好ましくはヒトである。
さらなる一局面において、本発明は、医薬の製造または調製における環状融合ポリペプチドの使用を提供する。一態様において、医薬は疾患を処置するための医薬である。さらなる一態様において、医薬は、疾患を有する個体に有効量の医薬を投与する工程を含む、疾患の処置方法において使用するための医薬である。そのような一態様において、本方法は、個体に、有効量の少なくとも1つの追加治療用物質を投与することを、さらに含む。上記の態様のいずれにおいても「個体」はヒトでありうる。
さらなる一局面において、本発明は、疾患を処置するための方法を提供する。一態様において、本方法は、そのような疾患を有する個体に、有効量の環状融合ポリペプチドを投与する工程を含む。そのような一態様において、本方法は、個体に、有効量の少なくとも1つの追加治療用物質を投与することを、さらに含む。上記の態様のいずれにおいても「個体」はヒトでありうる。
さらなる一局面において、本発明は、例えば上記の治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書において提供する環状融合ポリペプチドのいずれかを含む薬学的製剤を提供する。一態様において、薬学的製剤は、本明細書において提供する環状融合ポリペプチドのいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の一態様において、薬学的製剤は、本明細書において提供する環状融合ポリペプチドのいずれかと、少なくとも1つの追加治療用物質とを含む。
本明細書において報告する環状融合ポリペプチドは、単独で、または他の作用物質と組み合わせて、治療に使用することができる。例えば本発明の環状融合ポリペプチドは、少なくとも1つの追加治療用物質と同時投与しうる。
上記のそのような併用療法は、併用投与(この場合は2つまたはそれ以上の治療用物質が同じ製剤または別個の製剤に含まれている)を包含すると共に、個別投与も包含し、その場合は、本発明の環状融合ポリペプチドの投与を、1種類または複数種類の追加治療用物質の投与の前に、1種類または複数種類の追加治療用物質の投与と同時に、および/または1種類または複数種類の追加治療用物質の投与の後に、行うことができる。一態様において、環状融合ポリペプチドの投与と追加治療用物質の投与は、互いに約1ヶ月以内、または約1、2もしくは3週間以内、または約1、2、3、4、5もしくは6日以内に行われる。適合する本明細書の環状融合ポリペプチドは放射線療法と併用することもできる。
本明細書の環状融合ポリペプチド(および任意の追加治療用物質)は、非経口投与、肺内投与および鼻腔内投与、そして局所処置にとって望ましい場合は、病巣内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入としては、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が挙げられる。投薬は、投与が短期間であるか慢性的であるかにも一部依存して、任意の適切な経路で、例えば静脈内注射または皮下注射などの注射によって、行うことができる。限定するわけではないが、単回投与、またはさまざまな時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含む、さまざまな投薬スケジュールが、本明細書では考えられる。
本明細書の環状融合ポリペプチドは、優良医療規範(good medical practice)に合致する方法で、製剤化され、調合され、かつ投与される。この文脈において考慮すべき因子としては、処置される特定障害、処置される特定哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、作用物質の送達部位、投与の方法、投与のスケジューリング、および医療従事者に公知の他の因子が挙げられる。環状融合ポリペプチドは、問題の障害を防止または処置するために現在使用されている1種類または複数種類の作用物質と共に製剤化する必要があるわけではないが、任意でそのようにしてもよい。そのような他の作用物質の有効量は、製剤中に存在する環状融合ポリペプチドの量、障害または処置のタイプ、および上で述べた他の因子に依存する。これらは、一般に、上述したものと同じ投薬量および投与経路で使用されるか、本明細書に記載する投薬量の約1〜99%で、または実験的/臨床的に適当であると決定された任意の投薬量および任意の経路で使用される。
疾患の防止または処置に関して、本明細書の環状融合ポリペプチドの適当な投薬量(単独で使用する場合、または1種類もしくは複数種類の他の追加治療用物質と併用する場合)は、処置すべき疾患のタイプ、環状融合ポリペプチドのタイプ、疾患の重症度および経過、環状融合ポリペプチドを防止のために投与するのか治療のために投与するのか、治療歴、患者の病歴および環状融合ポリペプチドに対する応答、ならびに担当医の裁量に依存することになる。環状融合ポリペプチドは、患者に1回で、または一連の処置で、適切に投与される。疾患のタイプおよび重症度に依存して、例えば1回または複数回の独立した投与によるか、または持続注入によるかを問わず、約1μg/kg〜15mg/kg(例えば0.5mg/kg〜10mg/kg)の環状融合ポリペプチドを、患者に投与するための初回候補投薬量とすることができる。典型的な1日量は、上述の因子に依存して約1μg/kgから100mg/kgまで、またはそれ以上に及ぶかもしれない。数日またはそれ以上にわたる反復投与の場合、状態に依存して、処置は一般に、疾患症状の所望の抑制が起こるまで、持続される。環状融合ポリペプチドの例示的投薬量の一つは約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲にあるだろう。したがって約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kgまたは10mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)の1つまたは複数の用量を患者に投与することができる。そのような用量は(例えば患者が環状融合ポリペプチドの投与を約2回〜約20回、例えば約6回受けることになるように)間欠的に、例えば毎週または3週ごとに投与することができる。高用量の初回負荷量を投与した後に、それより低い用量を1回または複数回投与することができる。ただし他の投薬レジメンも役立ちうる。この治療の進行は、従来の手法およびアッセイによって容易に監視される。
上記の製剤または治療方法はいずれも、環状融合ポリペプチドの代わりに、または環状融合ポリペプチドに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを使って実行しうると理解される。
XII.製造品
本発明の別の局面では、障害の処置、防止および/または診断に有用な材料が入っている製造品が提供される。製造品は、容器、および容器上のまたは容器に付属するラベルまたは添付文書を含む。適切な容器として、例えば瓶、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど、さまざまな材料から形成されうる。容器は、組成物を単独で、または状態を処置、防止および/または診断するのに有効な別の組成物と組み合わせて保持し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば容器は静注用バッグであるか、皮下注射針で突き刺すことができる栓を有するバイアルであることができる)。組成物中の少なくとも1つの活性作用物質は、本発明の環状融合ポリペプチドである。ラベルまたは添付文書は、組成物が、選択された状態を処置するために使用されることを示す。さらにまた、製造品は、(a) 本発明の環状融合ポリペプチドを含む組成物が入っている第1容器と、(b) さらなる細胞毒性作用物質または他の治療用物質を含む組成物が入っている第2容器とを含みうる。本発明のこの態様の製造品は、さらに、特定の状態を処置するために当該組成物を使用できることを示す添付文書を含みうる。これに代えて、またはこれに加えて、製造品はさらに、薬学的に許容される緩衝液、例えば静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液などを含む第2(または第3)の容器を含みうる。これは、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料、例えば他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジなどを、さらに含みうる。
本明細書において言及するあらゆる文献(科学文献、書物または特許)は参照により本明細書に組み入れられる。
以下の実施例および図面は本発明の理解を助けるために提供されるものであり、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載される。記載した手順には、本発明の要旨から逸脱することなく、変更を加えることができると理解される。
本明細書において報告する環状融合ポリペプチドの一般構造の略図。 本明細書において報告する二環状融合ポリペプチドの一般構造の略図。 本明細書において報告する二環状融合ポリペプチドの一般構造の略図。 本明細書において報告する三環状融合ポリペプチドの一般構造の略図。 本明細書において報告する四環状融合ポリペプチドの一般構造の略図。 本明細書において報告する四環状融合ポリペプチドの一般構造の略図。 IgGタイプの普通の抗体および本明細書において報告する例示的二環状融合ポリペプチドの結合部位間の配向および空間的距離。 質量分析による本明細書において報告する環状融合ポリペプチドの生成物品質分析。 増殖に関するトラスツズマブと、二環状および四環状抗Her2コントースボディとの、それぞれの差異的効果。 FcRnに対する本明細書において報告する例示的二環状融合ポリペプチドの結合。 FcRnに対する本明細書において報告する例示的二環状融合ポリペプチドの結合。 抗Her2コントースボディおよびトラスツズマブのADCCキネティック。 「VH-in」配向(Fc領域に近い)および「VH-out」配向(Fc領域から離れている)にあるVHドメインの相対的な位置および配向の略図。 「VH-in」配向(Fc領域に近い)および「VH-out」配向(Fc領域から離れている)にあるVHドメインの相対的な位置および配向の略図。 本明細書において報告する二重特異性二環状融合ポリペプチドの生産に使用された各配向を有する抗cMET環状融合ポリペプチドの例示的な鎖。 一方の環状融合ポリペプチドは結合部位としてVH/VL対を含み、他方の環状融合ポリペプチドは、結合部位としてペプチドが負荷されたMHC-I複合体を含む、本明細書において報告する二環状融合ポリペプチド。 MHC-I IgGタイプ抗体融合物および図13に示す本明細書において報告する二環状融合ポリペプチドの、MHC-Iが媒介するキラー細胞の動員および細胞除去に基づく効果。 異なるコントースボディ型のUV消光クロマトグラム(280nm)。
XIII.実施例
以下は本発明の方法および組成物の実施例である。上述の一般的説明を考慮すれば、他にもさまざまな態様を実施しうると理解される。
材料および方法
組換えDNA法
Sambrook, J. et al, Molecular cloning: A laboratory manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載されているように、標準的方法を使ってDNAをマニピュレートした。分子生物学的試薬は製造者の説明書に従って使用した。
遺伝子およびオリゴヌクレオチド合成
所望の遺伝子セグメントは、Geneart GmbH(ドイツ国レーゲンスブルク)において、化学合成によって調製された。合成された遺伝子フラグメントを増殖/増幅用の大腸菌(E. coli)プラスミドにクローニングした。サブクローニングされた遺伝子フラグメントのDNA配列をDNAシークエンシングによって検証した。あるいは、短い合成DNAフラグメントを、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドのアニーリングによって集合させるか、PCRによって集合させた。各オリゴヌクレオチドは、metabion GmbH(ドイツ国プラネック-マルティンストリート)によって調製された。
試薬類
市販の化学品、抗体およびキットはすべて、別段の言明がある場合を除き、製造者のプロトコールに従って、提供された製品をそのまま使用した。
実施例1
環状融合ポリペプチド用の発現プラスミドの構築
本明細書において報告する環状融合ポリペプチドを発現させるために、次に挙げる機能的要素を含む転写単位を使用した。
- イントロンAを含むヒトサイトメガロウイルスからの前初期エンハンサーおよびプロモーター(P-CMV)、
- ヒト重鎖免疫グロブリン5'-非翻訳領域(5'UTR)、
- マウス免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
- 各環状融合ポリペプチドをコードする核酸、および
- ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGH pA)。
基本的/標準的な哺乳動物発現プラスミドは、発現させようとする所望の遺伝子を含む発現単位/カセットの他に、
- 大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18由来の複製起点、および
- 大腸菌におけるアンピシリン耐性を付与するβ-ラクタマーゼ遺伝子
を含有する。
実施例2
環状融合ポリペプチドの発現
環状融合ポリペプチドの一過性発現は、トランスフェクション試薬293-free(Novagen)を使用し、懸濁培養に適応したHEK293F(FreeStyle 293-F細胞; Invitrogen)細胞において行った。
細胞を、125ml振とうフラスコ中で、融解後に、少なくとも4回は、希釈によって継代した(体積30ml)(37℃、7%CO2、湿度85%、135rpmでインキュベート/振とうする)。
細胞を250mlの体積で3×105細胞/mlまで拡大培養した。3日後に、細胞を分割し、1リットル振とうフラスコ中、250mlの体積に、7×105細胞/mlの密度で新たに播種した。トランスフェクションは、24時間後に、1.4〜2.0×106細胞/ml前後の細胞密度で行われることになる。
トランスフェクション前に、250μgのプラスミドDNAを、予熱(水浴; 37℃)したOpti-MEM(Gibco)で、10mlの最終体積に希釈した。その溶液を穏やかに混合し、最長5分間、室温でインキュベートした。次に333.3μlの293-freeトランスフェクション試薬を、DNA-OptiMEM溶液に加えた。その後、その溶液を穏やかに混合し、15〜20分間、室温でインキュベートした。混合物の全量を、250mlのHEK細胞培養体積で、1L振とうフラスコに加えた。
37℃、7%CO2、湿度85%、135rpmで6日間または7日間、インキュベート/振とうする。
上清を、2,000rpm、4℃で10分間の第1遠心分離工程によって収穫した。次に、4,000rpm、4℃で20分間の第2遠心分離のために、上清を新しい遠心フラスコに移した。その後、無細胞上清を0.22μmボトルトップフィルタで濾過し、冷凍庫(-20℃)で保存した。
実施例3
環状融合ポリペプチドの精製
抗体を含有する培養上清を濾過し、2つのクロマトグラフィー工程によって精製した。PBS(1mM KH2PO4、10mM Na2HPO4、137mM NaCl、2.7mM KCl)、pH7.4で平衡化したHiTrap MabSelectSuRe(GE Healthcare)を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって、抗体を捕捉した。結合していないタンパク質を平衡緩衝液で洗浄することによって除去し、抗体を50mMクエン酸緩衝液、pH2.8で回収し、溶出後直ちに、1Mトリス塩基、pH9.0でpH6.0に中和した。Superdex 200(商標)(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィーを、第2精製工程として使用した。このサイズ排除クロマトグラフィーは20mMヒスチジン緩衝液、0.14M NaCl、pH6.0中で行った。抗体含有溶液を、Biomax-SKメンブレンを装着したUltrafree-CL遠心フィルタユニット(Millipore、マサチューセッツ州ビルリカ)で濃縮し、-80℃で保存した。
実施例4
抗Her2環状融合ポリペプチドの結合
表面プラズモン共鳴Her2受容体結合
チップ表面: CM5チップ。
T: アッセイ設定1および2の場合、それぞれ37℃および25℃。
ランニング緩衝液: PBS+0.05%(v/v)Tween 20。
希釈緩衝液: ランニング緩衝液+0.1%BSA。
分析物: アッセイ設定1の場合、c(HER2 ECD)=0.41〜900nM;
アッセイ設定2の場合、c(二量体抗Her2コントースボディ)=3.7〜300nM、
c(四量体抗Her2コントースボディ)=1.85〜150nM、
c(トラスツズマブ)=3.7〜300nM。
リガンド: アッセイ設定1の場合、抗ヒトFc領域抗体を介して結合した二量体および四量体抗Her2コントースボディ、トラスツズマブ;
アッセイ設定2の場合、ペルツズマブを介して結合したHer2-ECD。
応答単位数は分子量に正比例する。分析物結合の理論的最大は、Her2 ECDの公知の結合レベルに基づく。100%=1分子の二量体抗Her2コントースボディまたはトラスツズマブは、それぞれ2分子のHER2 ECDに結合し; 1分子の四量体抗Her2コントースボディは4分子のHER2 ECDに結合する。
実施例5
ADCCアッセイ-ACEA
BT-474細胞を、Accutaseで「可溶化」し、培地中でカウントし、2×10E5細胞/mlの細胞密度にした。50μlの培地を96ウェルプレートの各ウェルにピペッティングし、バックグラウンド効果をACEAで測定し、最後に、50μlの細胞懸濁液/ウェル(=10,000細胞/ウェル)を加えた。プレートをACEAに入れて、15分後のセルインデックス(cell index)を測定した。次に培地をピペッティングによって除去し、洗浄工程をAIM-V培地で行い、50μlの抗体を三つの異なる濃度で加えた。ナチュラルキラー細胞をカウントし、細胞密度が6×10E5になるように、AIM-Vに入れた。50μl(E/Tは3:1で30,000細胞/ウェル)をACEAに加え、セルインデックスを5分ごとに測定した。24時間後に実験を停止し、2時間後および4時間後にADCCを算出した。
実施例6
二量体抗Her2環状融合ポリペプチドの質量スペクトル分析
PNGase FはRoche Diagnostics GmbHから入手した(14.3U/μl;リン酸ナトリウム、EDTAおよびグリセロールに溶解した状態)。IgG抗体のヒンジ領域中で特異的に切断するプロテアーゼを、消化の前に凍結乾燥物から新たに再構成した。
PNGase Fによる酵素的脱グリコシル化
50μgのコントースボディを10mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.1で最終濃度0.6mg/mlまで希釈し、1μlのPNGase Fにより、37℃で16時間、脱グリコシル化した。
酵素的切断
脱グリコシル化された試料を200mMトリス緩衝液、pH8.0で最終濃度0.5mg/mlまで希釈してから、IgG特異的プロテアーゼにより、37℃で1時間、消化した。
ESI-QTOF質量分析
2%ギ酸(v/v)を含む40%アセトニトリルを使って、Sephadex G25カラム(Kronlab、5×250mm、TAC05/250G0-SR)でのHPLCにより、試料を脱塩した。TriVersa NanoMateイオン源(Advion)を装着したmaXis 4G UHR-QTOF MSシステム(Bruker Daltonik)でのESI-QTOF MSによって、全質量を決定した。較正はヨウ化ナトリウム(Waters ToF G2-Sample Kit 2 Part: 700008892-1)で行った。消化されたコントースボディについて、データ収集を1000〜4000m/z(ISCID: 30eV)で行った。生質量スペクトルを評価し、個々の相対モル質量に変換した。結果の視覚化のために、プロプライエタリ・ソフトウェアを使って、デコンボリューションされた質量スペクトルを作成した。

Claims (14)

  1. 標的に特異的に結合し、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分とスペーサードメインとを含む、第1融合ポリペプチドであって、
    - 該スペーサードメインが、ポリペプチドであり、かつ少なくとも25個のアミノ酸残基を含み、
    - 該結合ドメインの第1部分が、該スペーサードメインのN末端に直接融合されたまたは第1リンカーを介して融合されたポリペプチドであり、
    - 該結合ドメインの第2部分が、該スペーサードメインのC末端に直接融合されたまたは第2リンカーを介して融合されたポリペプチドであり、
    - 同じ単鎖融合ポリペプチド中の該結合ドメインの第1部分と該結合ドメインの第2部分とが連結して、該標的に特異的に結合する機能的結合部位を形成する、
    第1融合ポリペプチドと、
    標的に特異的に結合し、結合ドメインの第1部分と結合ドメインの第2部分とスペーサードメインとを含む、第2融合ポリペプチドであって、
    - 該スペーサードメインが、ポリペプチドであり、かつ少なくとも25個のアミノ酸残基を含み、
    - 該結合ドメインの第1部分が、該スペーサードメインのN末端に直接融合されたまたは第1リンカーを介して融合されたポリペプチドであり、
    - 該結合ドメインの第2部分が、該スペーサードメインのC末端に直接融合されたまたは第2リンカーを介して融合されたポリペプチドであり、
    - 同じ単鎖融合ポリペプチド中の該結合ドメインの第1部分と該結合ドメインの第2部分とが連結して、該標的に特異的に結合する機能的結合部位を形成する、
    第2融合ポリペプチドと
    を含み、
    該第1融合ポリペプチドと該第2融合ポリペプチドが同一であるかまたは異なり、かつ該第1融合ポリペプチドのスペーサードメインが、該第2融合ポリペプチドのスペーサードメインに共有結合的にコンジュゲートされている、
    二量体融合ポリペプチド。
  2. 前記結合ドメインの第1部分が抗体重鎖可変ドメインであり、かつ前記結合ドメインの第2部分が抗体軽鎖可変ドメインであるか、またはその逆である、請求項1に記載の二量体融合ポリペプチド。
  3. 前記結合ドメインの第1部分が抗体重鎖Fabフラグメントであり、かつ前記結合ドメインの第2部分が抗体軽鎖Fabフラグメントであるか、またはその逆である、請求項1または2に記載の二量体融合ポリペプチド。
  4. 抗体可変ドメインを含まない、請求項1に記載の二量体融合ポリペプチド。
  5. 前記結合ドメインの第1部分と前記結合ドメインの第2部分とが、互いにジスルフィド結合により共有結合的に連結されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二量体融合ポリペプチド。
  6. 前記スペーサードメインが、抗体ヒンジ領域またはその(C末端)フラグメントと抗体CH2ドメインまたはその(N末端)フラグメントとを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二量体融合ポリペプチド。
  7. 前記スペーサードメインが、抗体ヒンジ領域またはそのフラグメントと、抗体CH2ドメインと、抗体CH3ドメインまたはそのフラグメントとを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の二量体融合ポリペプチド。
  8. 前記第1リンカーおよび/または前記第2リンカーがペプチド性リンカーである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の二量体融合ポリペプチド。
  9. 全体として請求項1に記載の二量体融合ポリペプチドをコードする、一対の単離された核酸。
  10. 請求項9に記載の一対の核酸を含む、宿主細胞。
  11. 融合ポリペプチドまたは二量体融合ポリペプチドが生産されるように、請求項10に記載の宿主細胞を培養する工程、および、該細胞または培養培地から該融合ポリペプチドまたは該二量体融合ポリペプチドを回収する工程を含む、該融合ポリペプチドを生産する方法。
  12. 請求項1に記載の二量体融合ポリペプチドと薬学的に許容される担体とを含む、薬学的製剤。
  13. 医薬として使用するための、請求項1に記載の二量体融合ポリペプチド。
  14. 医薬の製造における、請求項1に記載の二量体融合ポリペプチドの使用。
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