JP2019214775A - アルミニウム系多孔質体及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム系多孔質体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】骨格が緻密であり、高強度であるアルミニウム系多孔質体を提供する。【解決手段】3次元状に連結する骨格1を有し、骨格1により3次元状に連通する気孔2が形成され、骨格1がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金によって形成されるアルミニウム系多孔質体であって、骨格1はリンを含み、アルミニウム系多孔質体は、プラトー領域の平均応力が100kPa以上である、アルミニウム系多孔質体である。【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム系多孔質体及びその製造方法に関する。
3次元状に連結する骨格を有し、その骨格により3次元状に連通する気孔が形成される3次元網目状構造を有する多孔質体は、連通する気孔にガスあるいは液体等の流体を通過させるとともに、これらの流体を濾過処理するフィルタ(特許文献1)、これらの流体を骨格表面に担時した触媒により改質する触媒用担体(特許文献2)、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の電池の電極材料(特許文献3)等の多方面に用いられている。
アルミニウムは導電性、耐腐食性に優れており、また軽量であり比強度に優れるとともに、資源が豊富で、リサイクル性にも優れる材料である。このため、軽量化や環境・エネルギー負荷の低減等が強く求められる各種分野製品にアルミニウム又はアルミニウム合金が大幅に使用されている。例えば、自動車や飛行機等の交通分野では、アルミニウム合金製の車両部品や機体が利用されており、軽量化に伴う省エネルギー化と高強度化の両立が図られている。また、アルミニウム及びアルミニウム合金はそれぞれ伝熱特性が優れているために、伝熱材料に好ましく用いることができ、例えば、パソコン、ラジエータ、エアコン、インタークーラー等の電気機器の熱交換器部材に使用されている。
上述の構造部材のさらなる軽量化や、高性能な衝撃吸収体、断熱材、消音材、熱交換器部材等の提供を可能とするアルミニウム多孔質体が開発されている(非特許文献1)。
3次元網目状構造を有するアルミニウム多孔質体の製造方法としては、種々の技術がある。特許文献4には、溶融アルミニウムを増粘剤により増粘させた後に、発泡剤として水素化チタンを添加し、水素化チタンの熱分解反応で生じる水素ガスにより、溶融アルミニウムを発泡させて固化させる発泡溶融法が提案されている。特許文献5には、連通孔を有する発泡樹脂骨格表面を導電化処理して電気アルミニウムメッキした後、加熱して樹脂を分解除去する方法が開示されている。
特許文献6には、連通孔を有する発泡樹脂に有機高分子結合剤とアルミニウム粉末を主成分とする金属粉末との混練物を浸漬、スプレー等して塗着した後、加熱して樹脂を分解除去するとともに金属粉末を焼結してアルミニウム焼結材を得る方法が記載されている。
特許文献7には、樹脂製の3次元網目状構造体の骨格表面に、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末を付着させ、非酸化性かつ10−3Pa以下の減圧雰囲気中で加熱して、樹脂を除去するとともにアルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末を溶融するアルミニウム系多孔質体の製造方法が記載されている。
特開2012−110851号公報 特開2010−201390号公報 特開2010−272425号公報 特開平6−212314号公報 特開2013−194308号公報 特公昭61−053417号公報 特許6132026号公報
袴田昌、高馬渕、スペーサー法による微細孔ポーラス金属の創製と特性評価、軽金属、2012、62、313−321。
特許文献4に開示される発泡溶融法では、得られるアルミニウム多孔質体が数mmの大きな気孔を有するようになり、開気孔構造であり、かつ高強度のアルミニウム多孔質体を作製するのが難しい問題がある。
特許文献5に開示される電気メッキ法では、メッキ槽などの電着装置を必要とするため、設備費用が高くなる問題がある。また、製造できるアルミニウム多孔質体の厚さが限られており、多孔質体の寸法を自在に変化させることが難しい問題がある。
特許文献6には、連通孔を有する発泡樹脂に、有機高分子結合剤とアルミニウム粉末との混練物を浸漬あるいはスプレー等して塗着した後、水素気流中520℃にて2時間加熱して樹脂を分解除去するとともに金属微小体を焼結する方法が開示されている。アルミニウム粉末は表面に強固な酸化被膜(アルミナ:Al)を有しており、特許文献6に開示される方法に従ってアルミニウム粉末を焼結しても、アルミニウム粉末の間の結合が酸化被膜によって阻害されて、得られるアルミニウム焼結材は、脆く、強度が低下する問題がある。
特許文献7の開示によれば、アルミニウム系多孔質体は、減圧下で高温で熱処理されることで、隣り合う粉末が結合してネック部が消失し連続する金属面を形成する。しかし、特許文献7に開示される製造条件では、減圧下において初めて連続する金属表面が形成されるものであり、大気圧下では焼結が十分に進行しない問題がある。
また、特許文献7に開示される10−3Pa以下の減圧雰囲気とするためには、拡散ポンプを有する真空炉が必要となり設備費用が高くなる問題がある。さらに、特許文献7に開示される減圧雰囲気は真空焼結となるため、昇温・降温に時間を要する問題がある。
また、圧力条件以外にも製造条件をさらに改善することで、減圧条件において骨格の緻密性をより高めて、より高強度のアルミニウム系多孔質体を得ることが望まれる。
本発明の一実施形態は、骨格が緻密であり、高強度であるアルミニウム系多孔質体を提供することを一目的とする。
一実施形態は、以下を要旨とする。
[1]3次元状に連結する骨格を有し、前記骨格により3次元状に連通する気孔が形成され、前記骨格がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金によって形成されるアルミニウム系多孔質体であって、前記骨格はリンを含み、前記アルミニウム系多孔質体は、プラトー領域の平均応力が100kPa以上である、アルミニウム系多孔質体。
[2]圧縮による応力−ひずみ線図において、ひずみ量が20%〜30%の領域の平均応力が100kPa〜300kPaである、[1]に記載のアルミニウム系多孔質体。
[3]気孔率が95%以上である、[1]又は[2]に記載のアルミニウム系多孔質体。
[4]3次元状に連結する骨格を有し、前記骨格により3次元状に連通する気孔が形成される樹脂フォームに、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末と、前記アルミニウム粉末及び/又は前記アルミニウム合金粉末と化学結合する界面活性剤と、水とを含むアルミニウム系スラリーを付着させ、前記アルミニウム系スラリーが付着した樹脂フォームを熱処理し前記樹脂フォームを分解除去し、次いで非酸化性雰囲気下で前記アルミニウム粉末及び/又は前記アルミニウム合金粉末の融点以上に熱処理する、アルミニウム系多孔質体の製造方法。
[5]前記アルミニウム粉末及び/又は前記アルミニウム合金粉末の平均粒子径は、1μm〜50μmである、[4]に記載のアルミニウム系多孔質体の製造方法。
一実施形態によれば、骨格が緻密であり、高強度であるアルミニウム系多孔質体を提供することができる。
図1は、一実施形態によるアルミニウム系多孔質体の構造を模式的に示す部分拡大図である。 図2は、一実施形態によるアルミニウム系多孔質体の製造方法における、粉末間の結合状態を模式的に示す図であり、図2(a)は、付着工程後の粉末の状態を示す模式図であり、図2(b)は加熱工程における粉末の状態を示す模式図である。 図3は、実施例のアルミニウム系多孔質体と比較例のアルミニウム系多孔質体の応力−ひずみ線図である。 図4は、実施例のアルミニウム系多孔質体と比較例のアルミニウム系多孔質体の骨格表面のSEM像を示す。
一実施形態によるアルミニウム系多孔質体としては、3次元状に連結する骨格を有し、骨格により3次元状に連通する気孔が形成され、骨格がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金によって形成されるアルミニウム系多孔質体であって、骨格はリンを含み、アルミニウム系多孔質体は、プラトー領域の平均応力が100kPa以上である、ことを特徴とする。
これによれば、骨格が緻密であり、高強度であるアルミニウム系多孔質体を提供することができる。
以下、アルミニウム系多孔質体をAl系多孔質体とも記す。
本発明者らは、Al系多孔質体を原料粉末を焼結させて得る場合に、原料粉末の結合が乏しいAl系多孔質体は、強度が低下することがあり、さらに、焼結後のAl系多孔質体の骨格表面に原料粉末に由来する凹凸形状が観察されることに着目し研究を行ったところ、Al系多孔質体の応力特性を確認することで、Al系多孔質体の骨格を形成する原料粉末の結合状態を把握できるという知見を得た。
また、本発明者らは、焼結後のAl系多孔質体の骨格表面のSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行って、Al系多孔質体の骨格を形成する原料粉末が十分に結合されていることで、高強度のAl系多孔質体を得ることができるという知見を得た。原料粉末が十分に結合された状態は、焼結後のAl系多孔質体の表面が、原料粉末由来の凹凸形状の発生が防止されて、平滑で緻密な焼結面であることから確認することができる。
さらに、Al系多孔質体の骨格にリンが含まれることで、骨格の緻密性が高まり、より高強度のAl系多孔質体を得ることができる。Al系多孔質体を原料粉末を焼結させて得る場合では、骨格中のリンは原料に由来して存在するものであり、原料粉末とともにリン成分が焼結されることで、原料粉末の間の結合をより強固として、より緻密で高強度の骨格を得ることができる。
一実施形態によるアルミニウム系多孔質体は、3次元状に連結する骨格を有し、骨格により3次元状に連通する気孔が形成される3次元網目状構造を有することが好ましい。アルミニウム系多孔質体の骨格は、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金によって形成されることが好ましい。
骨格の断面形状は特に限定されないが、円形、楕円形、三角形、四角形等の多角形等であってよい。骨格の外径は、0.1〜0.3mmであることが好ましい。
骨格は中空状であっても、中実状であってもよい。中空状の骨格は、外径が0.1〜0.5.mm、内径が0.04〜0.3mm、骨格の外壁の断面方向の厚さが0.03〜0.3mmであることが好ましい。
骨格は、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、又はこれらの組み合わせによって形成することができる。
アルミニウムとしては、Al:95質量%以上で、残部がC、N、O等の不純物からなり、他の金属元素を含まないものを用いることができる。アルミニウム合金としては、例えば、アルミニウムと、Cu、Mn、Mg、Si等から選択される1種以上の金属との合金を用いることができる。
骨格を形成するアルミニウム及び/又はアルミニウム合金は、密度比が90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。この密度比は、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の理論密度に対する、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金によって形成される骨格の密度の比である。
ここで、骨格の密度は、アルキメデス法による実測が不可能なため、画像分析ソフトウエア(三谷商事株式会社製WinROFF等)を用いて、骨格断面の画像を自動二値化処理したり、該画像をグレースケールに変換して適当な閾値を設定したりすることにより、測定を行うことができる。
アルミニウム系多孔質体は、骨格によって3次元状に連通する気孔が形成される。
この気孔によって、多孔質体を軽量化するとともに、衝撃吸収性、断熱性、消音性、熱交換性等に優れる材料とすることができる。
気孔の大きさは、30μm〜4000μmが好ましく、500μm〜4000μmがより好ましく、1000μm〜3500μmがさらに好ましい。ここで、気孔の大きさは、円相当直径である。
アルミニウム系多孔質体は、圧縮による応力−ひずみ線図において、ひずみ量の増加に従って応力が増加する領域、次に応力がほぼ一定となるプラトー領域、次に応力が増加する領域を示すことが好ましい。
プラトー領域は、圧縮応力―ひずみ線図において、ち密化開始以前において、応力がほぼ一定の比較的小さな勾配の応力変化で変形が進行する変形領域である。
Al系多孔質体のプラトー領域では、Al系多孔質体の骨格の圧壊にともなって、圧縮による応力がほぼ一定となる。
アルミニウム系多孔質体は、プラトー領域の平均応力が100kPa以上が好ましく、150kPa以上がより好ましく、180kPa以上がさらに好ましい。
アルミニウム系多孔質体は、圧縮による応力−ひずみ線図において、ひずみ量が20%〜30%の領域の平均応力が100kPa〜300kPaであることが好ましく、120kPa〜300kPaがより好ましく、150kPa〜280kPaがさらに好ましい。
Al系多孔質体の圧縮強度測定は、例えば、万能材料試験機(材料強度試験機)を用いて行うことができる。この場合、最大圧縮強度500Nの材料強度試験機を用いることが好ましい。圧縮強度測定においては、立方体の試験体を用いて一定の速度で試験体を圧縮し、圧縮荷重を増加させながら応力とひずみ量を測定し、応力−ひずみ線図を作成することができる。
得られた応力−ひずみ線図から、応力がほぼ横ばいになる領域(プラトー領域)を確認し、プラトー領域の平均応力を求めることができる。
また、得られた応力−ひずみ線図から、ひずみ量が20%〜30%の領域の平均応力を求めることができる。
アルミニウム系多孔質体は、降伏応力が100kPa以上が好ましく、150kPa以上がより好ましく、200kPa以上がさらに好ましい。
アルミニウム系多孔質体は、これに限定されないが、降伏応力が500kPa以下が好ましく、300kPa以下がより好ましい。
これによって、高強度であるとともに、加工性に優れるAl系多孔質体を得ることができる。
アルミニウム系多孔質体の骨格は、リンを含むことが好ましい。このリンは、Al系多孔質体を作製する際の原料に由来して、Al系多孔質体に混入されるものを含む。
Al系多孔質体にリンが含まれることで、プラトー領域の平均応力を大きくすることができ、また、降伏応力を大きくすることができ、Al系多孔質体の強度をより高めることができる。
アルミニウム系多孔質体全量に対して、リンは、1μg/g〜1000μg/gが好ましく、10μg/g〜500μg/gがより好ましく、100μg/g〜300μg/gがさらに好ましい。
リンの含有量は、Al系多孔質体を溶媒に溶解し、溶液中のリンを測定することで確認することができる。溶液中のリンの測定には、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)を用いることができる。
アルミニウム系多孔質体は、全体の気孔率が90%〜99%が好ましく、95%〜98%がより好ましい。これによって、多孔質体を軽量化するとともに強度の低下を防止し、衝撃吸収性、断熱性、消音性、熱交換性等に優れる材料とすることができる。
ここで、Al系多孔質体の全体の気孔率は、質量と縦・横・高さを測定して見かけ密度を求め、アルミニウムまたはアルミニウム合金の理論密度で除して密度比(%)を求め、100からこの密度比を引くことで求めることができる。
アルミニウム系多孔質体の目粗さは、6ppi〜80ppiが好ましい。
特に熱交換器用にAl系多孔質体を用いる場合は、Al系多孔質体の目粗さが6ppi以上であることで、開気孔の多孔質体として、比表面積を十分に確保し、熱交換性をより改善することができる。
Al系多孔質体この目粗さが80ppi以下、好ましくは30ppi以下、より好ましくは23ppi以下であることで、微細な気孔をある程度制限し、多孔質体の表面ともに内部の熱交換性をより改善することができる。
ここで、Al系多孔質体の目粗さは、Al系多孔質体表面の1インチに観察される孔部の数(ppi、ポアパーインチ)で表され、株式会社キーエンス製「ワンショット3D測定マイクロスコープ」や実体顕微鏡等によって測定することができる。
アルミニウム系多孔質体の比表面積は、300m−1〜3000m−1が好ましく、500m−1〜2000m−1がより好ましい。
ここで、Al系多孔質体の比表面積は、ガス吸着法によって測定することができる。
以下、アルミニウム系多孔質体を製造する方法の一例について説明する。なお、一実施形態によるアルミニウム系多孔質体は、以下の製造方法によって製造されたものに限定されない。
一実施形態によるアルミニウム系多孔質体の製造方法としては、3次元状に連結する骨格を有し、骨格により3次元状に連通する気孔が形成される樹脂フォームに、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末と、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末と化学結合する界面活性剤と、水とを含むアルミニウム系スラリーを付着させ、アルミニウム系スラリーが付着した樹脂フォームを熱処理し樹脂フォームを分解除去し、次いで非酸化性雰囲気下でアルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末の融点以上に熱処理する方法がある。
これによれば、骨格が緻密であり、高強度であるアルミニウム系多孔質体を製造することができる。
以下、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末を総称してAl系粉末とも記す。また、アルミニウム系スラリーをAl系スラリーとも記す。
本発明者らは、樹脂フォームへのAl系粉末の付着において、Al系粉末を分散媒中に分散させたAl系スラリー中に樹脂フォームを浸漬させる際に、分散媒として水を用いると、分散媒である水がAl系粉末を腐食することがあり、この腐食により熱処理工程を経てもAl系粉末の間で十分な結合が得難くなるという知見を得た。
また、本発明者らは、分散媒として、Al系粉末と化学結合する界面活性剤を水に添加した水溶液を用いると、Al系粉末の表面に存在するアルミニウム酸化被膜の上に、さらに化学結合する界面活性剤の吸着層が形成され、アルミニウム酸化被膜の化学的安定性と金属腐食防止効果が高まり、Al系粉末の腐食を防止して、熱処理工程でのAl系粉末の間で安定な結合を得ることができるという知見を得た。
そして、熱処理後の焼結体であるAl系多孔質体の表面に、原料粉末由来の凹凸の発生を防止して、平滑で緻密な焼結面を得ることができる。このような平滑で緻密な焼結面を備えることで、Al系多孔質体の強度をより高めることができる。
樹脂フォームとしては、3次元状に連結する骨格を有し、その骨格により3次元状に連通する気孔が形成される3次元網目状構造体を用いることが好ましい。樹脂フォームの外観形状、細孔特性等は、Al系多孔質体の最終的な形状等に応じて、適宜設定することができる。
樹脂フォームは、骨格表面にAl系粉末を付着させて担持するものであり、Al系粉末が3次元網目状構造を形成するための鋳型材となる。樹脂フォームは、熱処理によってAl系粉末が焼結するまでの間に、加熱分解されて、除去されることが好ましい。
樹脂フォームは、加熱分解によって除去される特性から、樹脂を好ましく用いることができる。具体的には、樹脂フォームとしては、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等のフォームを挙げることができ、中でもポリウレタンフォームが好ましい。ポリウレタンフォームの市販品としては、例えば、株式会社ブリヂストン製の商品名エバーライトSF等が挙げられる。
樹脂フォームのセル数は、1ppi〜100ppiが好ましく、6ppi(平均セル中心径4.23mm)〜40ppi(平均セル中心径0.64mm)がより好ましい。樹脂フォームのセル数は、樹脂フォームの1インチに観察される気孔の数(ppi、ポアパーインチ)で表される。
セルが細かすぎると、この後で行う付着工程で目詰まりが生じやすくなる問題がある。この目詰まりによって、最終形態のAl系多孔質体の気孔が独立気孔となることがあり、また、比表面積が低下することがある。特に、熱交換器用としては、通風抵抗が低下し、熱交換性が十分に得られない問題がある。
強制空冷方式の熱交換器用としては、13ppi(平均セル中心径1.95mm)〜25ppi(平均セル中心径1.27mm)が好ましい。
また、自然空冷方式の熱交換器用としては、6ppi〜8ppiが好ましい。
樹脂フォームの全体の気孔率は、95%以上が好ましい。樹脂フォームの気孔率が高いことで、Al系粉末が樹脂フォームの気孔に詰まることを防止することができる。
また、気孔率が95%以上の樹脂フォームを用いることで、製造条件に応じて、得られるアルミニウム系多孔質体の気孔率を90%以上とすることができる。
アルミニウム系スラリーは、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末と、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末と化学結合する界面活性剤と、水とを含むことが好ましい。
このAl系スラリーの溶媒は水系であることが好ましい。アルコール等の揮発性を有する溶媒を用いる場合、揮発した溶媒が環境中に放出されないように、溶媒を回収するための設備が必要になる。このため、溶媒には、水を好ましく用いることができる。
水系のAl系スラリーに、Al系粉末と化学結合する界面活性剤が含まれることで、Al系粉末表面のアルミニウム酸化被膜の上にさらに化学結合する界面活性剤の吸着層を形成することができ、アルミニウム酸化被膜の化学的安定性を高めるとともに、金属腐食防止効果を高めることができ、さらにスラリー中での粒子分散性とともに、スラリーの粘度安定性を改善することができる。
Al系スラリーには、結合剤、消泡剤等の添加剤がさらに含まれてもよい。
アルミニウム粉末には、Al:95質量%以上で、残部がC、N、O等の不純物からなるアルミニウム粉末等を用いることができる。アルミニウムは軽量で伝熱特性に優れるため、Al系多孔質体をより軽量化でき、また、熱交換器用として好適に用いることができる。
アルミニウム合金粉末には、AlにCu、Mn、Mg、Si等の合金化元素を予め合金化したアルミニウム合金粉末等を用いることができる。アルミニウム合金粉末を用いて、Al系多孔質体を作製することで、骨格がアルミニウム合金で形成され、より高強度の多孔質体を得ることができる。
Al系スラリーは、アルミニウム粉末及びアルミニウム合金粉末の中から1種を単独で含んでもよく、2種以上を混合して含んでもよい。
なお、アルミニウムにCu、Mn、Mg、Si等の合金化元素を添加することにより、熱伝導率はアルミニウム単体の場合よりも低下するが、ベース金属がAlであるため、充分に高い熱伝導率を維持することができる。
アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末には、一般的な製品として、表面に10Å程度の酸化被膜(アルミナ:Al)が形成されるものを用いることができる。
アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末の平均粒子径は、1μm〜50μmが好ましい。アルミニウム粉末及びアルミニウム合金粉末の中から2種以上を組み合わせて用いる場合は、少なくとも1種の平均粒子径が上記範囲であることが好ましく、全ての平均粒子径が上記範囲であることがより好ましい。
Al系粉末は、樹脂フォームの細かい樹脂骨格表面に密に付着させるために微細であることが好ましい。Al系粉末が大きくなると、樹脂フォームの樹脂骨格表面に密に付着させることが難しくなり、また、Al系粉末の質量が増加することにより、樹脂フォームの樹脂骨格表面に付着し難くなり、脱落し易くなる。この観点から、Al系粉末の平均粒子径は50μm以下が好ましい。さらに、Al系粉末は、平均粒子径が50μm以下であるとともに、粒子径が100μmを超える粉末を含まないものが好ましい。
アルミニウムは活性な金属であるため、あまりに微細な粉末は取扱いが難しくなる。この観点から、Al系粉末の平均粒子径は1μm以上が好ましい。
ここで、平均粒子径は、レーザ回折法やRo−tap法によって測定することができる。
Al系スラリー全体に対するAl系粉末の濃度は、20質量%〜70質量%が好ましく、30質量%〜60質量%がより好ましい。
界面活性剤としては、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末と化学結合する特性を有することが好ましい。
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等を挙げることができる。界面活性剤の具体例としては、リン系界面活性剤、シラン系界面活性剤、カルボン酸エステル系界面活性剤、カテコール系界面活性剤、アミン系界面活性剤、チオール系界面活性剤、アルキン系界面活性剤、アルケン系界面活性剤等を挙げることができる。
界面活性剤は、分散媒100質量部に対し、0.1質量部〜20.0質量部で配合されることが好ましく、より好ましくは5.0質量部〜15.0質量部である。
界面活性剤としては、なかでもリン系界面活性剤を好ましく用いることができ、有機リン化合物がより好ましい。
有機リン化合物としては、例えば、リン酸エステル、リンを含む重合体等を好ましく用いることができる。リン酸エステルとしては、脂肪族リン酸モノエステル;芳香族リン酸モノエステル;ポリオキシエチレンアルキルフェノール酸、エポキシ化合物、またはアクリル化合物とリン酸の反応によるリン酸エステル等;又はこれらの誘導体を挙げることができる。
有機リン化合物としては、下記式で表される炭素数10〜18の脂肪族リン酸モノエステルを好ましく用いることができる。下記式において、Rは炭素数10〜18の飽和炭化水素基である。
脂肪族リン酸モノエステル:R−O−PO(OH)
リン酸エステルとしては、具体的には、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ヘキシルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ノニルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ドデシルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、テトラデシルアシッドホスフェート、ヘキサデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート等の脂肪族リン酸モノエステル;ブトキシエチルアシッドホスフェート、ブトキシエトキシエチルアシッドホスフェート等のアルコキシ基を有する脂肪族リン酸モノエステル;フェニルアシッドホスフェート、プロピルフェニルアシッドホスフェート、ブチルフェニルアシッドホスフェート等の芳香族リン酸モノエステル等を挙げることができる。
上記した有機リン化合物は1種で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
Al系スラリーには、有機高分子結合剤等の結合剤をさらに添加することができる。
有機高分子結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂、水溶性セルロース等を挙げることができる。
例えば、Al系スラリーは、ポリビニルアルコール樹脂を水に溶解したポリビニルアルコール水溶液に、Al系粉末を添加して作製することが好ましい。ポリビニルアルコール水溶液中のポリビニルアルコール分の濃度は、特に制限されず、Al系粉末が樹脂フォームに付着しやすく、また、扱いやすいスラリー粘度となる程度が好ましい。
結合剤は、Al系スラリー全量に対し、0.1質量%〜1.0質量%で配合することが好ましい。
Al系スラリーには、消泡剤をさらに添加することができる。
消泡剤としては、例えば、日信化学工業株式会社製の商品名AF−103、SK−14;ADEKA株式会社製の商品名25R−1、LG−109、LG−299;富士フイルム和光純薬株式会社製の商品名消泡剤L等を挙げることができる。
消泡剤は、分散媒100質量部に対し、0.1〜1.0質量部で配合することが好ましく、より好ましくは0.2〜0.5質量部である。
次に、樹脂フォームにAl系スラリーを付着させる方法について説明する。樹脂フォーム及びAl系スラリーには、上記したものを用いることができる。
樹脂フォームをAl系スラリーに浸漬させて、その後に取り出し、余分なAl系スラリーを取り除く。余分なAl系スラリーを取り除く方法としては、樹脂フォームを全体的に圧縮して絞る方法がある。例えば、一定間隔に配置した一対のロールの間に樹脂フォームを挟んで通過させてAl系スラリーを除去することで、除去後の樹脂フォームに付着するAl系スラリーの量をより均一にすることができる。
Al系スラリーが付着した樹脂フォームは、その後に乾燥させることが好ましい。これによって、樹脂フォームの骨格表面に付着しているスラリーから溶媒等の揮発成分を除去することができる。乾燥温度は、特に制限されず、揮発成分が揮発又は蒸発する温度以上が好ましく、また、樹脂フォームが熱処理によって変形又は分解しない温度以下が好ましい。
次に、Al系粉末を付着させた樹脂フォームを熱処理し、Al系多孔質体を製造する方法について説明する。
熱処理工程は、熱処理によって樹脂フォームを分解し除去する第1段階と、さらに高温の熱処理によってAl系粉末を焼結させる第2段階とを有することが好ましい。
第1段階において、熱処理温度は600℃以下が好ましく、500℃以下がより好ましい。また、第1段階において、熱処理温度は250℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましい。
これによって、樹脂フォームを加熱分解し、除去することができる。そして、樹脂製の骨格を除去し、Al系粉末で形成される骨格を、好ましくは中空状の骨格を残すことができる。
樹脂フォームに付着したAl系粉末には、スラリーに由来して界面活性剤が含まれる。この界面活性剤の少なくとも一部は、アルミニウム酸化被膜表面に化学結合している。
第1段階において熱処理することで、樹脂フォームが加熱分解されるとともに、アルミニウム酸化被膜表面に化学結合している界面活性剤が縮合重合する。そして、界面活性剤が重合することで、樹脂フォームが除去された後に、界面活性剤が添加された状態のAl系粉末が骨格の形状を維持するように作用する。
また、界面活性剤がAl系粉末に添加されていることで、Al系粉末の粒子間の隙間が増大しないようにして、Al系粉末が骨格の形状を維持するようにすることができる。
界面活性剤を用いない場合は、骨格の形状からAl系粉末が脱離しやすくなり、焼結前後でのハンドリンク性が悪くなることがある。また、後述するように焼結性が低下することがある。
第1段階の熱処理は、非酸化性雰囲気下、酸化性雰囲気下で行うことができ、好ましくは非酸化性雰囲気下である。第1段階の熱処理が非酸化性雰囲気下であることで、樹脂フォームの加熱分解をより促進することができる。
非酸化性雰囲気としては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス、水素ガス、水素混合ガス等の還元性ガス等を用いることができ、なかでも、不活性ガスを好ましく用いることができる。
非酸化性雰囲気において、酸素濃度は、10ppm以下が好ましい。
第2段階では、非酸化性雰囲気下でアルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末の融点以上に熱処理することが好ましい。例えば、アルミニウムの融点(660.4℃)以上である。これによって、Al系粉末が溶融して、より緻密な骨格を形成することができる。
Al系粉末10は、図2(a)に示すように、表面に強固な酸化被膜11を有している。また、通常の焼結では、アルミニウムの融点の90%程度の温度で熱処理される。通常の焼結では温度が低いため、Al系粉末の表面の酸化被膜がバリヤとなって、焼結による粉末どうしの拡散接合を阻害するため、焼結が進行しない問題がある。
アルミニウムの融点が660.4℃であるのに対し、酸化被膜であるアルミナの融点は2072℃と高い。熱処理温度がアルミニウム又はアルミニウム合金の融点を超えると、Al系粉末の表面の酸化被膜は溶融しない状態で、酸化被膜の内部でアルミニウム及び/又はアルミニウム合金が溶融するようになる。
このようにして酸化被膜の内部で溶融したアルミニウム及び/又はアルミニウム合金12は、図2(b)に示すように、Al系粉末の表面の酸化被膜11を破ってAl系粉末表面に濡れて覆うとともに、Al系粉末から発生した溶融アルミニウム及び/又は溶融アルミニウム合金12が混ざり合い結合するようになる。
さらに、660℃以上加熱の際に、アルミニウム粉末の表面酸化被膜に割れ目を生じさせることにより、溶融アルミニウムの拡散接合を促進することが考えられる。
このようにしてAl系粉末を焼結して骨格を形成することで、Al系多孔質体の骨格に、Al系粉末に由来する空洞及び隙間の発生を防止することができ、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成される骨格を緻密化することができる。
具体的には、第2段階の熱処理温度は、660℃以上が好ましく、665℃以上がより好ましい。
第2段階の熱処理温度は、これに限定されないが、760℃以下が好ましく、700℃以下がより好ましく、680℃以下がさらに好ましい。
第2段階の熱処理温度が高くなると、余分なエネルギーを要する上に、溶融アルミニウム又は溶融アルミニウム合金の粘度が低下して型崩れが発生する可能性があるため、熱処理温度はAl系粉末の融点+100℃以下に制限することが好ましい。
第2段階の熱処理は、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。
この第2段階の熱処理は、熱処理工程における雰囲気が大気等の酸化性の雰囲気であると、Al系粉末の表面の酸化被膜を破って露出した溶融アルミニウム又は溶融アルミニウム合金が直ちに酸化され、流動性が低下することがある。溶融アルミニウム等の流動性が低下すると、酸化被膜の外側表面を濡らしながら覆うことが阻害され、又は、複数のAl系粉末から酸化被膜を破って露出した溶融アルミニウム等が互いに混ざり合うことが阻害され、Al系粉末の間で結合が阻害される問題がある。
非酸化性雰囲気としては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス、水素ガス、水素混合ガス等の還元性ガス等を用いることができ、なかでも、不活性ガスを好ましく用いることができる。還元性ガスを用いる場合は、Al系粉末表面の酸化被膜が除去されない程度に、ガス濃度を調整することが好ましい。
非酸化性雰囲気において、酸素濃度は、10ppm以下が好ましい。
また、第2段階の熱処理は、大気圧雰囲気で行うことができるが、圧力が10−3Pa以下の減圧雰囲気としてもよい。
上記したアルミニウム系多孔質体の製造方法にしたがえば、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金によって形成される骨格を形成することができる。Al系多孔質体の外観形状、気孔率、気孔の大きさ等は、樹脂フォームの形状をそのまま維持するため、樹脂フォームの形状を変更することで調整することができる。また、樹脂フォームの形状、Al系スラリーの特性、熱処理条件等に応じて、熱処理後の骨格を、樹脂製の骨格が存在していた部分が空洞部となった中空状とすることができる。
Al系多孔質体の骨格を形成するアルミニウム及び/又はアルミニウム合金には、製造条件によっては、原料の粒子表面に形成されていた酸化被膜、すなわちアルミナ(Al)が内部に分散するようになる。
アルミナは硬質な材料であるため、基地となるアルミニウム及び/又はアルミニウム合金に分散して基地を強化することができる。多孔質体の骨格にアルミナが分散することで、骨格の強度をより高めることができる。
以下、本発明を一実施例を用いて説明する。以下の例示によって、本発明は限定されない。
3次元網目状構造を有する樹脂製の樹脂フォームとして、ポリウレタンフォーム(商品名エバーライトSF、株式会社ブリヂストン製)を使用した。このポリウレタンフォームは、気孔率(全体の体積に対する連通孔の体積の割合)が95%であり、連通孔の大きさが円相当直径で1000μmであった。また、このポリウレタンフォームのセル数は20ppiであった。
平均粒子径5μmの純アルミニウム粉末として、エカ・グラニュラー社製の商品名25Eを用いた。結着材としては、ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールGH−23、日本合成化学工業株式会社製)を用いた。分散媒は純水を用い、結着材を1質量%溶解し、高分子水溶液を得た。純アルミニウム粉末と、この高分子水溶液を質量比3:5で混合し、アルミニウム系スラリーを作製した。これをスラリーAとした。
上記スラリーAに分子量100以上のモノエチルアシッドホスフェート(脂肪族リン酸モノエステル)を添加し、均一に混合した。これをスラリーBとした。
上記スラリーAに、上記ポリウレタンフォームを浸漬して、次いで余分なスラリーを除去した。その後、80℃の恒温槽中で60分乾燥させて、アルミニウム粉末が付着したポリウレタンフォームを用意した。これを、気体雰囲気を制御可能な電気炉中に設置して、非酸化性雰囲気中で室温から昇温し500℃で1時間以上保持して脱脂した。その後、非酸化性雰囲気であるアルゴン中でアルミニウムの融点以上にて1時間熱処理し、試料番号Aのアルミニウム系多孔質体を作製した。
スラリーAに代えてスラリーBを用いた以外は上記と同様にして試料番号Bのアルミニウム系多孔質体を作製した。
試料番号A、Bのアルミニウム系多孔質体試料について、圧縮降伏試験を行って圧縮荷重を増加させたときのひずみ量と応力を測定し、応力−ひずみ線図を作成した。その結果を図3に示す。そして、作成した応力−ひずみ線図から、応力がほぼ横ばいになる領域(プラトー領域)に至ったときの平均応力を求めた。その結果を表1に示す。
また、図3において、実施例である試料番号Bではち密化開始応力の前に図示するようにプラトー領域が確認された。比較例である試料番号Aではち密化開始応力の前に応力がほぼ横ばいになる領域がなくプラトー領域が確認されなかった。
試料番号A、Bのアルミニウム系多孔質体試料について、降伏応力を算出した。その結果を表1に示す。
試料番号A、Bを約10mg石英ビーカーにはかり取り、1ml塩酸を添加し、100℃で10分間加熱、溶解させた。その後溶解した溶液を100mlのメスフラスコに移し、超純水でメスアップし、ICP−MSでリン成分を定量分析した。その結果を表1に示す。
このとき用いた計算式は下記のとおりである。
リン含有量=(試料測定値―空試験測定値)×希釈倍率×母液量(100ml)÷秤量した量
実施例である試料番号Bは、リンを含むスラリーBを用いて作製したため、多孔質体にリンが含まれた。試料番号Bは、プラトー領域の平均応力が大きく、また、降伏応力も大きくなった。
比較例である試料番号Aは、多孔質体にリンが検出されなかった。試料番号Aは、プラトー領域の平均応力が小さく、また、降伏応力も小さくなった。
また、実施例及び比較例のアルミニウム系多孔質体のSEM(走査型電子顕微鏡)観察による骨格表面の写真を図4に示す。
図4から、実施例の骨格表面は凹凸形状が少なく平滑であり、アルミニウムの焼結面が緻密であることが確認された。
また、比較例の骨格表面は凹凸形状が多く、アルミニウムの焼結面に隙間や空洞が観察された。
一実施形態によるアルミニウム系多孔質体は、プラトー領域の平均応力が大きく、また、降伏応力が大きく、高強度な多孔質体として好適に用いることができる。一実施形態によるアルミニウム系多孔質体の製造方法は、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末ととともに界面活性剤を含む水系のスラリーを用いることで、緻密で高強度の骨格を形成することができ、高強度なアルミニウム系多孔質体の製造ラインに好適である。
1 骨格
2 気孔
10 アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末
11 酸化被膜
12 溶融アルミニウム及び/又は溶融アルミニウム合金

Claims (5)

  1. 3次元状に連結する骨格を有し、前記骨格により3次元状に連通する気孔が形成され、前記骨格がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金によって形成されるアルミニウム系多孔質体であって、前記骨格はリンを含み、前記アルミニウム系多孔質体は、プラトー領域の平均応力が100kPa以上である、アルミニウム系多孔質体。
  2. 圧縮による応力−ひずみ線図において、ひずみ量が20%〜30%の領域の平均応力が100kPa〜300kPaである、請求項1に記載のアルミニウム系多孔質体。
  3. 気孔率が95%以上である、請求項1又は2に記載のアルミニウム系多孔質体。
  4. 3次元状に連結する骨格を有し、前記骨格により3次元状に連通する気孔が形成される樹脂フォームに、アルミニウム粉末及び/又はアルミニウム合金粉末と、前記アルミニウム粉末及び/又は前記アルミニウム合金粉末と化学結合する界面活性剤と、水とを含むアルミニウム系スラリーを付着させ、前記アルミニウム系スラリーが付着した樹脂フォームを熱処理し前記樹脂フォームを分解除去し、次いで非酸化性雰囲気下で前記アルミニウム粉末及び/又は前記アルミニウム合金粉末の融点以上に熱処理する、アルミニウム系多孔質体の製造方法。
  5. 前記アルミニウム粉末及び/又は前記アルミニウム合金粉末の平均粒子径は、1μm〜50μmである、請求項4に記載のアルミニウム系多孔質体の製造方法。
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