JP2017150053A - アルミニウム系多孔質体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面に酸化被膜を有するアルミニウム粉末およびアルミニウム合金粉末を用いて、これらの粉末が強固に結合して充分な強度を有する且つ骨格が圧壊時に粉砕されて生成した粉砕粉の量が少ない三次元網目状構造を有するアルミニウム系多孔質体を提供する。
【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる骨格が三次元状に連結する骨格を有し、前記骨格により三次元状に連結する気孔が形成されたアルミニウム系多孔質体であって、前記アルミニウム系多孔質体は、荷重を加えた際にひずみ量の増加に従って応力量が増加した後、骨格の圧壊に伴って応力がほぼ横ばいとなり、その後応力が増加する応力−ひずみ線図を示すとともに、前記骨格の圧壊時に粉砕されて生成した粉砕粉の量が変形前アルミニウム系多孔質体全体質量の2質量%以下であるアルミニウム系多孔質体とする。
【選択図】図3
【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる骨格が三次元状に連結する骨格を有し、前記骨格により三次元状に連結する気孔が形成されたアルミニウム系多孔質体であって、前記アルミニウム系多孔質体は、荷重を加えた際にひずみ量の増加に従って応力量が増加した後、骨格の圧壊に伴って応力がほぼ横ばいとなり、その後応力が増加する応力−ひずみ線図を示すとともに、前記骨格の圧壊時に粉砕されて生成した粉砕粉の量が変形前アルミニウム系多孔質体全体質量の2質量%以下であるアルミニウム系多孔質体とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、三次元状に連結する骨格を有し、前記骨格により三次元状に連通する連通孔が形成される三次元網目状構造を有するアルミニウム系多孔質体とその製造方法に関するものである。
三次元状に連結する骨格を有し、その骨格により三次元状に連通する連通孔が形成される三次元網目状構造を有する多孔質体は、連通する連通孔にガスあるいは液体等の流体を通過させるとともに、これらの流体を濾過処理するフィルタ(特許文献1)、これらの流体を骨格表面に担時した触媒により改質する触媒用担体(特許文献2)、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の電池の電極材料(特許文献3)などの多方面に用いられている。
アルミニウムは導電性、耐腐食性に優れており、また軽量であり比強度に優れるとともに、資源が豊富で、リサイクル性にも優れる材料である。このため、軽量化や環境・エネルギー負荷の低減等が強く求められる各種分野製品にアルミニウムまたはアルミニウム合金が大幅に使用されている。例えば、自動車や飛行機等の交通分野では、アルミニウム合金製の車両部品や機体が利用されており、軽量化に伴う省エネルギー化と高強度化の両立が図られている。また、伝熱材料としてのアルミニウムまたはアルミニウム合金は伝熱特性が優れているために、パソコン、ラジエータ、エアコン、インタークーラーなどの電気機器の熱交換器部材に使用されている。
上述の構造部材の一層の軽量化や、高性能な衝撃吸収体、断熱材、消音材、熱交換器部材等の提供を可能とするアルミニウム多孔質体が開発されている(非特許文献1)。三次元網目状構造を有するアルミニウム多孔質体の製造方法としては、種々の技術がある。特許文献4には、溶融アルミニウムを増粘剤により増粘させた後に、発泡剤として水素化チタンを添加し、水素化チタンの熱分解反応で生じる水素ガスにより、溶融アルミニウムを発泡させて固化させる発泡溶融法が知られている。特許文献5には連通孔を有する発泡樹脂骨格表面を導電化処理して電気アルミニウムメッキした後、加熱して樹脂を分解除去する方法が開示されている。特許文献6には連通孔を有する発泡樹脂に有機高分子結合剤とアルミニウム粉末を主成分とする金属粉末との混練物を浸漬、スプレー等して塗着した後、加熱して樹脂を分解除去するとともに金属粉末を焼結してアルミニウム焼結材を得る方法が記載されている。
袴田昌、高馬渕、スペーサー法による微細孔ポーラス金属の創製と特性評価、軽金属、2012、62、313−321。
前述の特許文献4に開示されたアルミニウム多孔質体製造方法には、数mmの大きな閉気孔を有するものであり、開気孔構造を持つアルミニウム多孔質体の作製が困難などの問題がある。特許文献5の電気メッキ法はメッキ槽などの電着装置を必要とするため、設備費用が高くなる。また、製造できるアルミニウム多孔質体の厚みが限られており、自在に多孔質体の寸法を変化させることが困難である。
特許文献6のように、連通孔を有する発泡樹脂に有機高分子結合剤とアルミニウム粉末との混練物を浸漬あるいはスプレー等して塗着した後、水素気流中520℃にて2時間加熱して樹脂を分解除去するとともに金属微小体を焼結する方法においては、アルミニウム粉末は表面に強固な酸化皮膜(アルミナ:Al2O3)を有しており、上記方法で焼結してもアルミニウム粉末のごく一部で結合するに過ぎず、脆く、強度が極めて低いものしか製造することができない。
よって、本発明は、表面に酸化被膜を有するアルミニウム粉末およびアルミニウム合金粉末を用いて、これらの粉末が強固に結合して充分な強度を有する三次元網目状構造を有するアルミニウム系多孔質体を提供することを目的とする。
本発明者らは、粉末の結合が乏しいアルミニウム多孔質体は、強度が低いとともに、骨格が圧壊時に粉砕されて生成する粉砕粉の量が多くなることに着目し研究を行ったところ、粉砕粉の量により、アルミニウム多孔質体の骨格を形成する粉末の結合の状態を把握できるという知見、および粉砕粉の量をある程度以下とした場合にはアルミニウム多孔質体の骨格を形成する粉末の結合が充分であり、強度の高いアルミニウム多孔質体とすることができるという知見を得た。
本発明のアルミニウム多孔質体は、これらの知見によるものであり、三次元状に連結する骨格を有するとともに骨格により三次元状に連結する気孔が形成された金属多孔質体であって、前記骨格が、アルミニウムもしくはアルミニウム合金からなり、荷重を加えた際にひずみ量の増加に従って応力量が増加した後、骨格の圧壊に伴って応力がほぼ横ばいとなり、その後応力が増加する応力−ひずみ線図を示すとともに、前記骨格の圧壊時に粉砕されて生成した粉砕粉の量が変形前アルミニウム多孔質体全体質量の2質量%以下である。このような本発明のアルミニウム多孔質体においては、気孔率が90%以上であることが好ましい。
アルミニウム系多孔質体は、三次元状に連結する骨格を有するとともに骨格により三次元状に連結する気孔が形成された樹脂構造体に、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を主原料とする金属粉末を付着させた後、加熱して樹脂構造体を分解、消失させるとともに、さらにアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の融点より高温に加熱することで得られる。ここで、本発明者らは、この金属粉末の付着において、分散媒として水溶液を用い、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を主原料とする金属粉末を水溶液中に分散させたアルミニウムスラリー中に樹脂構造体を浸漬して付着させると、水溶液中の水がアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を腐食し、この腐食により加熱工程を経ても充分な粉末どうしの結合が得難くなっているという知見を得た。
また、分散媒として用いる水溶液中に、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を主原料とする金属粉末と化学結合する界面活性剤を含有させたものを用いると、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の表面に存在するアルミニウム酸化皮膜の上に、さらに化学結合する界面活性剤の吸着層が形成され、アルミニウム酸化皮膜の化学安定性と金属腐食防止効果が高まり、このアルミニウム粉末もしくはアルミニウム合金粉末の腐食を防止して、加熱時の粉末の結合を安定にして、圧壊時に生成する粉砕粉の量をある程度以下としたアルミニウム多孔質体を得ることができるという知見を得た。
本発明のアルミニウム多孔質体の製造方法は、これらの知見によるものであり、三次元状に連結する骨格を有するとともに骨格により三次元状に連結する気孔が形成された樹脂構造体に、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を主原料とする金属粉末と、前記金属粉末と化学結合する界面活性剤を含有する高分子水溶液からなるアルミニウムスラリーを付着させた後、加熱して樹脂構造体を分解、消失させ、さらにアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の融点より高温に加熱するものである。本発明のアルミニウム多孔質体の製造方法においては、前記アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の平均粒径が、1μm以上、かつ50μm以下であることが好ましく、前記アルミニウムスラリーが、さらに消泡剤を含むことが好ましい。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明によれば、表面に酸化被膜を有するアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を用いて、高強度かつ緻密化される骨格が有するアルミニウム系多孔質体を提供することができる。
(2)本発明では、簡便な粉末冶金法により、結着剤と、安定剤および焼結促進剤として機能する界面活性剤を含有する水溶液中にアルミニウムまたはアルミニウム合金を主原料とする金属粉末を分散させたアルミニウムスラリーを利用して、軽量かつ高強度なアルミニウム系多孔質を製造することができる。
(3)本発明のアルミニウム系多孔質体は、応力を加えた際に応力の増加に従ってひずみ量が増加した後、骨格の圧壊にともなってひずみ量がほぼ横ばいとなるプラトー領域を示すが、骨格の圧壊時に粉砕されて生成した粉砕粉の量が極めて少ない特性を示す等の効果が得られる
(4)原料として平均粒径が約1〜50μmのアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を用いて、気孔率90%以上で、高強度で優れた110kPa以上の平均圧縮応力を有するアルミニウム系多孔質体を製造することができる。
(5)本発明は、アルミニウム骨格が緻密化かつ高強度を特徴とする粉末冶金法によるアルミニウム系多孔質体の製造の範囲を拡大し、特に近年、軽量化かつ高熱伝導率が求められている自動車をはじめとする各種輸送機器または熱交換器の多孔質体部材の製造法に適用することる
(1)本発明によれば、表面に酸化被膜を有するアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を用いて、高強度かつ緻密化される骨格が有するアルミニウム系多孔質体を提供することができる。
(2)本発明では、簡便な粉末冶金法により、結着剤と、安定剤および焼結促進剤として機能する界面活性剤を含有する水溶液中にアルミニウムまたはアルミニウム合金を主原料とする金属粉末を分散させたアルミニウムスラリーを利用して、軽量かつ高強度なアルミニウム系多孔質を製造することができる。
(3)本発明のアルミニウム系多孔質体は、応力を加えた際に応力の増加に従ってひずみ量が増加した後、骨格の圧壊にともなってひずみ量がほぼ横ばいとなるプラトー領域を示すが、骨格の圧壊時に粉砕されて生成した粉砕粉の量が極めて少ない特性を示す等の効果が得られる
(4)原料として平均粒径が約1〜50μmのアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を用いて、気孔率90%以上で、高強度で優れた110kPa以上の平均圧縮応力を有するアルミニウム系多孔質体を製造することができる。
(5)本発明は、アルミニウム骨格が緻密化かつ高強度を特徴とする粉末冶金法によるアルミニウム系多孔質体の製造の範囲を拡大し、特に近年、軽量化かつ高熱伝導率が求められている自動車をはじめとする各種輸送機器または熱交換器の多孔質体部材の製造法に適用することる
以下、本発明の実施形態を説明する。
[連通孔発泡樹脂フォーム]
本実施形態において、連通孔発泡樹脂フォームとしては、三次元状に連結する骨格を有し、その骨格により三次元状に連結する気孔が形成される三次元網目状構造体を用いる。この連通孔発泡樹脂フォームは骨格表面にアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を付着させて担持するものであり、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末が3次元構造を形成するための鋳型材となる。この連通孔発泡樹脂フォームは基材としてアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末が焼結するまでの間に、加熱されて分解、消失する。この連通孔発泡樹脂フォームは、具体的には、ポリウレタンフォームが最も一般的に用いられるが、他にシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂のフォーム等を用いることができる。具体的なポリウレタンフォームの例としては、(株)ブリヂストン製の商品名エバーライトSFがある。空孔の径であるセル数は、特に限定するものではないが、40ppi(平均セル中心径0.64mm)、20ppi(平均セル中心径1.27mm)、13ppi(平均セル中心径1.95mm)、8ppi(平均セル中心径3.18mm)などが好ましく、特に20ppi、13ppiが更に好ましい。セルが細かすぎると、この後で行う付着工程で目詰まりが生じやすく、最終形態のアルミニウム多孔質体の気体、液体の流れが悪くなる。また、セルが粗すぎるとアルミニウム多孔質体自体の比表面積や熱伝導率が低下する。
本実施形態において、連通孔発泡樹脂フォームとしては、三次元状に連結する骨格を有し、その骨格により三次元状に連結する気孔が形成される三次元網目状構造体を用いる。この連通孔発泡樹脂フォームは骨格表面にアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を付着させて担持するものであり、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末が3次元構造を形成するための鋳型材となる。この連通孔発泡樹脂フォームは基材としてアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末が焼結するまでの間に、加熱されて分解、消失する。この連通孔発泡樹脂フォームは、具体的には、ポリウレタンフォームが最も一般的に用いられるが、他にシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂のフォーム等を用いることができる。具体的なポリウレタンフォームの例としては、(株)ブリヂストン製の商品名エバーライトSFがある。空孔の径であるセル数は、特に限定するものではないが、40ppi(平均セル中心径0.64mm)、20ppi(平均セル中心径1.27mm)、13ppi(平均セル中心径1.95mm)、8ppi(平均セル中心径3.18mm)などが好ましく、特に20ppi、13ppiが更に好ましい。セルが細かすぎると、この後で行う付着工程で目詰まりが生じやすく、最終形態のアルミニウム多孔質体の気体、液体の流れが悪くなる。また、セルが粗すぎるとアルミニウム多孔質体自体の比表面積や熱伝導率が低下する。
[アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末]
本実施形態において、連通孔発泡樹脂フォームに付着させる粉末は、熱伝導率が高いアルミニウム粉末を用いるが、アルミニウム粉末に替えて、アルミニウムを強化する成分を予め合金化したアルミニウム合金粉末を用いってもよい。たとえば、Al(アルミニウム)にCu(銅)、Mn(マンガン)、Mg(マグネシウム)、Si(ケイ素)等の合金化元素を予め合金化したアルミニウム合金粉末を用いた場合は、骨格がアルミニウム合金で形成され、多孔質体の強度を向上させることができる。なお、AlにCu、Mn、Mg、Si等の合金化元素を添加することにより、熱伝導率はAl単体の場合よりも低下するが、ベース金属がAlであるため、充分に高い熱伝導率を維持することができる。また、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、一般的に、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末は、表面に数nm程度の酸化皮膜(アルミニウム酸化物)を有している。
本実施形態において、連通孔発泡樹脂フォームに付着させる粉末は、熱伝導率が高いアルミニウム粉末を用いるが、アルミニウム粉末に替えて、アルミニウムを強化する成分を予め合金化したアルミニウム合金粉末を用いってもよい。たとえば、Al(アルミニウム)にCu(銅)、Mn(マンガン)、Mg(マグネシウム)、Si(ケイ素)等の合金化元素を予め合金化したアルミニウム合金粉末を用いた場合は、骨格がアルミニウム合金で形成され、多孔質体の強度を向上させることができる。なお、AlにCu、Mn、Mg、Si等の合金化元素を添加することにより、熱伝導率はAl単体の場合よりも低下するが、ベース金属がAlであるため、充分に高い熱伝導率を維持することができる。また、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、一般的に、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末は、表面に数nm程度の酸化皮膜(アルミニウム酸化物)を有している。
[付着工程]
基体(連通孔発泡樹脂フォーム)の樹脂骨格に付着させるアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末は、細い基体の樹脂骨格表面に密に付着できることから微細なものが好ましい。粉末が大きくなると基体の樹脂骨格表面に密に付着させることが難しくなるとともに、粉末の質量が増加することにより、基体の樹脂骨格表面に付着し難くなったり、脱落し易くなる。この観点からアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末は、平均粒径が50μm以下のものを用いることが好ましい。さらに、平均粒径が50μm以下であるとともに、粒径が100μmを超える粉末を含まないものであることが好ましい。ただし、Alは活性な金属であるため、あまりに微細な粉末は取扱いが難しくなる。この観点からアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末は、平均粒径が1μm以上のものを用いることが好ましい。これらアルミニウム粉末の具体例としては、エカグラニュラー株式会社製の商品名25E、35C、ミナルコ株式会社製の、噴霧アルミニウム粉#300A、#500A、#600Fなどがある。
基体(連通孔発泡樹脂フォーム)の樹脂骨格に付着させるアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末は、細い基体の樹脂骨格表面に密に付着できることから微細なものが好ましい。粉末が大きくなると基体の樹脂骨格表面に密に付着させることが難しくなるとともに、粉末の質量が増加することにより、基体の樹脂骨格表面に付着し難くなったり、脱落し易くなる。この観点からアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末は、平均粒径が50μm以下のものを用いることが好ましい。さらに、平均粒径が50μm以下であるとともに、粒径が100μmを超える粉末を含まないものであることが好ましい。ただし、Alは活性な金属であるため、あまりに微細な粉末は取扱いが難しくなる。この観点からアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末は、平均粒径が1μm以上のものを用いることが好ましい。これらアルミニウム粉末の具体例としては、エカグラニュラー株式会社製の商品名25E、35C、ミナルコ株式会社製の、噴霧アルミニウム粉#300A、#500A、#600Fなどがある。
本実施形態において、連通孔発泡樹脂フォーム骨格にアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を付着させる付着工程は、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を分散媒中に分散させた。この分散液中に連通孔発泡樹脂フォームを浸漬した後、連通孔発泡樹脂フォームを乾燥させる方法である。分散媒としては、水やアルコール等の揮発性を有する液体が使用できる。しかしながら、分散媒としてアルコール等の揮発性を有する液体を用いる場合、揮発した液体が環境中に放出されると、人体等に影響を与える虞があるため、揮発した液体が環境中に流出しないよう防止するとともにこれを回収するため設備が必要となり、装置が大型化するとともに、これをメンテナンスのための労力が必要となる。このため、本発明においては、分散媒として水を使用する。
分散媒として水を使用するにあたり、乾燥後に付着させた金属粉末が衝撃や振動で容易に脱落しないようにするために、分散媒に結着剤を溶解した液を用いる。この場合の結着材としては、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、水溶性セルロースなどを使用できる。例えば、水を分散媒とする場合、濃度数%程度となるポリビニルアルコールを溶解した高分子水溶液を用いる。これに、アルミニウム粉末を添加して分散液とするが、その量は分散液が付着工程で作業しやすい粘度であればよい。
水を分散媒とする場合、アルミニウム酸化皮膜の化学安定性と金属腐食防止効果を高める且つ分散液中での粒子分散性や粘度安定性の改善も図るため、アルミニウム酸化皮膜の上にさらに化学結合する界面活性剤の吸着層を形成し、アルミニウム粉末と化学結合する界面活性剤を含有するものとする。この場合の界面活性剤としては陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が使用できる。更に詳細的には、シラン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、カルボン酸エステル系界面活性剤、カテコール系界面活性剤、アミン系界面活性剤、チオール系界面活性剤、アルキン系界面活性剤、アルケン系界面活性剤などが使用できる。特に、有機リン化合物がお好もしい。界面活性剤の好ましい添加量は分散媒100質量部に対し、0.1〜10.0質量部、より好ましくは0.5〜5.0質量部である。
好ましい有機リン化合物の例として下記の化合物が挙げられる リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノウェール酸、エポキシ化合物またはアクリル化合物とリン酸の反応によるリン酸エステル。また、特に好ましい化合物は炭素数10〜18の脂肪族リン酸モノエステルで、下記のような構造を有するものの混合物である。
脂肪族リン酸モノエステル:R−O−PO(OH)2
脂肪族リン酸モノエステルとしては、具体的には下記のような化合物が挙げられる。イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、ヘキシルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ノニルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ドデシルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、テトラデシルアシッドホスフェート、ヘキサデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、プロピルフェニルアシッドホスフェート、ブチルフェニルアシッドホスフェートおよびブトキシエトキシエチルアシッドホスフェート等のリン酸モノエステル化合物。また、有機リン化合物としては重合体も含まれる。
前記アルミニウム系粉末分散高分子水溶液(アルミニウムスラリー)は、必要に応じて消泡剤を添加してもよい。これら消泡剤の具体例としては、日信化学株式会社製の商品名AF−103、SK−14、ADEKA株式会社製の商品名25R−1、LG−109、LG−299、和光純薬工業株式会社製の商品名消泡剤Lなどがある。消泡剤の好ましい添加量はアルミニウム分散液100質量部に対し、0.1〜1.0質量部、より好ましくは0.2〜0.5質量部である。
基体にアルミニウムスラリーを付着させた後、余分の分散液は絞って排除する。絞る方法は特に限定されないが、一定間隔に固定した2本のロールに挟んで通過させる方法とすると、基体に付着するアルミニウムスラリーの量を一定とすることができるので好ましい。その後、分散媒を揮発させるため恒温槽で加熱するが、その温度は連通孔発泡樹脂フォームが変形しない程度に設定するのが好ましい。
[加熱工程]
上記付着工程により基体の骨格表面にアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を付着させた連通孔発泡樹脂フォームを加熱する。第一段階は、樹脂性の連通孔発泡樹脂フォームを加熱分解して除去する。上記説明で挙げた樹脂製連通孔発泡樹脂フォームであれば、500℃程度までで十分である。
上記付着工程により基体の骨格表面にアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を付着させた連通孔発泡樹脂フォームを加熱する。第一段階は、樹脂性の連通孔発泡樹脂フォームを加熱分解して除去する。上記説明で挙げた樹脂製連通孔発泡樹脂フォームであれば、500℃程度までで十分である。
第二段階として、非酸化性雰囲気中で、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の融点以上に加熱し、金属粉末同士を溶融接着させる。アルミニウム粉末は、図2(a)に示すように、表面に強固な酸化被膜(アルミニウム酸化物:Al2O3)を有しており、通常の焼結(融点の90%程度の温度での加熱)においては、アルミニウム粉末表面の酸化被膜がバリヤとなって焼結による粉末どうしの拡散接合を阻害するため、焼結が進行しない。しかしながら、加熱温度がアルミニウム(融点:660.4℃)もしくはアルミニウム合金の融点を超えると、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の表面は酸化被膜(アルミニウム酸化物:Al2O3)で覆われており、アルミナの融点は2072℃と高いためアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の表面の酸化被膜が溶融せず、これらの粉末の内部が溶融することとなる。このようにして内部で溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金は、図2(b)に示すように、粉末の表面の酸化被膜を破って粉末表面に濡れて覆うとともに、各粉末から発生した溶融アルミニウムまたは溶融アルミニウム合金が混ざり合い結合する。さらに、600℃以上加熱の際に、アルミニウム酸化皮膜の上に化学結合する界面活性剤の吸着層が焼失されるとともに、アルミニウム粉末の表面酸化被膜に割れ目を生じさせることにより、溶融アルミニウムの拡散接合を促進することが考えられる。その結果、多孔質体表面にアルミニウム粉末由来の空洞(隙間)が減少して緻密化されるアルミニウム骨格またはアルミニウム合金骨格が形成される。
この第二段階の加熱は、加熱工程における雰囲気が大気等の酸化性の雰囲気であると、粉末表面の酸化被膜を破って露出した溶融アルミニウムまたは溶融アルミニウム合金が直ちに酸化され、粉末表面に濡れて覆ったり各粉末から発生した溶融アルミニウムまたは溶融アルミニウム合金が混ざり合うことが阻止され、粉末同士の結合が阻害される。このため、加熱工程における雰囲気は窒素ガス、不活性ガス等の非酸化性の雰囲気とすることが望ましい。なお、上記の加熱工程は、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の表面の酸化被膜を除去することは目的ではないため、水素ガスもしくは水素混合ガス等の還元性の雰囲気である必要はないが、還元性の雰囲気は非酸化性の雰囲気であるため、還元性の雰囲気としてもよい。また、圧力が10-3Pa以下の減圧雰囲気(真空雰囲気)としてもよい。
なお、加熱温度は連通孔発泡樹脂フォームに付着させたアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の融点を超える温度であれば粉末を溶融できるが、融点を大きく超える温度で加熱すると余分なエネルギーが必要となるとともに、溶融したアルミニウムまたはアルミニウム合金の粘度が低下して型崩れが生じ易くなることから、加熱温度は融点+100℃までとすることが好ましい。
[気孔率]
アルミニウム系多孔質体の気孔率は使用する連通孔発泡樹脂フォームの気孔率に依存する。気孔率が大きくなれば通気抵抗は小さくなる。
上記の製造方法によって製造したアルミニウム系多孔質体の三次元網目状構造は、樹脂製基体の三次元網目状構造がそのまま維持されたものとなる。したがって、樹脂製基体の三次元網目状構造を変更することで、アルミニウム系多孔質体の三次元網目状構造を変更することができ、アルミニウム系多孔質体全体の気孔率、気孔の大きさを所望のものに調整することが可能である。具体的には、気孔率は85〜95%のものとすることができ、気孔の大きさは30〜4000μmのものとすることができ、6〜80ppi(セル数/25.4mm)の多孔質体を容易に製造することができる。気孔率が大きくなれば通気抵抗は小さくなるが、同時に熱伝導性が低下するため、用途に応じて通気抵抗と熱伝導性のバランスを勘案して適宜決定すればよい。なお、連通孔発泡樹脂フォームの気孔率が小さいとアルミニウム粉末が連通孔に詰まりやすくなる。このため、使用する連通孔発泡樹脂フォームの気孔率は95%以上であることが好ましく、得られるアルミニウム系多孔質体の気孔率は90%以上であることが好ましい。
アルミニウム系多孔質体の気孔率は使用する連通孔発泡樹脂フォームの気孔率に依存する。気孔率が大きくなれば通気抵抗は小さくなる。
上記の製造方法によって製造したアルミニウム系多孔質体の三次元網目状構造は、樹脂製基体の三次元網目状構造がそのまま維持されたものとなる。したがって、樹脂製基体の三次元網目状構造を変更することで、アルミニウム系多孔質体の三次元網目状構造を変更することができ、アルミニウム系多孔質体全体の気孔率、気孔の大きさを所望のものに調整することが可能である。具体的には、気孔率は85〜95%のものとすることができ、気孔の大きさは30〜4000μmのものとすることができ、6〜80ppi(セル数/25.4mm)の多孔質体を容易に製造することができる。気孔率が大きくなれば通気抵抗は小さくなるが、同時に熱伝導性が低下するため、用途に応じて通気抵抗と熱伝導性のバランスを勘案して適宜決定すればよい。なお、連通孔発泡樹脂フォームの気孔率が小さいとアルミニウム粉末が連通孔に詰まりやすくなる。このため、使用する連通孔発泡樹脂フォームの気孔率は95%以上であることが好ましく、得られるアルミニウム系多孔質体の気孔率は90%以上であることが好ましい。
[アルミニウム多孔質体]
上記のようにして製造されたアルミニウム多孔質体は、水溶液を分散媒として用いた場合であっても、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の腐食が防止され、粉末どうしの結合が充分で強度の高いアルミニウム多孔質体となる。
上記のようにして製造されたアルミニウム多孔質体は、水溶液を分散媒として用いた場合であっても、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の腐食が防止され、粉末どうしの結合が充分で強度の高いアルミニウム多孔質体となる。
このようなアルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の腐食を防止したアルミニウム多孔質体と、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の腐食を防止しないアルミニウム多孔質体を比較すると、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の腐食を防止したアルミニウム多孔質体は、粉末どうしの結合が充分であるため、圧縮強度を測定した際に得られる応力−ひずみ線図において、応力がほぼ横ばいになる領域(プラトー領域)の平均圧縮応力が高くなるとともに、圧縮強度を測定した際に骨格が粉砕されて生成される粉砕粉の量が少なくなる。
アルミニウム系多孔質体の圧縮強度測定は、例えば、万能材料試験機(材料強度試験機)を用いて行うことができる。この場合、最大圧縮強度500Nの材料強度試験機を用いることが好ましい。圧縮強度測定においては、立方体の試験体を用いて一定な速度で圧縮され、圧縮荷重が増加するとともにひずみ量と応力を測定し、応力−ひずみ線図を作成する。得られた応力−ひずみ線図から、応力がほぼ横ばいになる領域(プラトー領域)に至ったとき、すなわちひずみ20〜30%の平均圧縮応力を求める。また、アルミニウム系多孔質体が圧縮される際に、骨格が粉砕してアルミニウム粉砕粉が生成する。その多孔質体圧壊後生成した粉砕粉質量比率は下記の式1に従って計算する。
式1:圧壊後生成した粉砕粉質量比率=((圧縮降伏試験実施前アルミニウム多孔質重量W1)−(圧縮降伏試験実施後アルミニウム多孔質重量W2))×100%
上記のようにして測定したひずみ20〜30%の平均圧縮応力(プラトー領域の平均圧縮応力)と粉砕粉質量比率を比較すると、粉砕粉質量比率が2質量%を超えるものは、ひずみ20%〜30%の平均圧縮応力が100kPaに満たない、強度の低いアルミニウム多孔質体となる。その一方で、粉砕粉質量比率が2質量%以下のものは、ひずみ20%〜30%の平均圧縮応力が100kPaを超えるものとなり、粉砕粉質量比率が1.5質量%以下のものは110kPaを超える強度の高いアルミニウム多孔質体となる。このことから、本発明のアルミニウム多孔質体は、粉砕粉質量比率を2質量%以下とする。なお、このことについては、後述の実施例において実証する。
三次元網目状構造を有する樹脂製の連通孔発泡樹脂フォームとして、縦100mm、横100mm、厚み20mmのポリウレタンフォーム(商品名エバーライトSF、(株)ブリヂストン製)を使用した。セル数は13ppiである。
平均粒径5μmの純アルミニウム粉末として、エカグラニュラー株式会社製の商品名 25Eを用いた。結着材としては、日本合成化学工業株式会社製のポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールGH−23)を用いた。分散媒は純水を用い、結着材を1質量%溶解した。純アルミニウム粉末と、この液は質量比で3:5で混合し、アルミニウム粉末分散高分子水溶液(アルミニウムスラリー)を作製した。その分散液に3.1質量%の分子量600以上のモノエチルアシッドホスフェート(脂肪族リン酸モノエステル)且つ0.1質量%以下のリン酸(85.0%、和光純薬工業株式会社)を添加し、アルミニウム粉末分散液を均一にする。
また、前記アルミニウム分散液組成物に、0.25質量%日信化学株式会社製のリン酸AF−103または和光純薬工業株式会社製の消泡剤Lを添加し、より均一的に操作性が高いアルミニウム粉末分散液を作製した。
上述のアルミニウム粉末分散液に、樹脂製の連通孔発泡樹脂フォームを浸漬して、次いで余分なスラリーを除去した。その後、80℃の恒温槽中で60分乾燥させて、アルミニウム粉末が付着した連通孔発泡樹脂フォームを用意した。これを、気体雰囲気を制御可能な電気炉中に設置して、非酸化性雰囲気である窒素中で室温から昇温し500℃で1時間保持して脱脂した。その後、圧力を10-3Paの減圧雰囲気(真空雰囲気)としてから昇温し、アルミニウムの融点以上である665℃にて1時間加熱し、試料番号01〜06のアルミニウム系多孔質試料を作製した。
これに対し、前述のポリビニルアルコール結着材を1質量%の含有する水溶液に純アルミニウム粉末を質量比で3:5で混合し、アルミニウム粉末分散高分子水溶液(アルミニウムスラリー)を作製した。アルミニウム粉末分散高分子水溶液に化学結合する界面活性剤か且つ消泡剤を添加しないことで、比較例とする試料番号07〜14のアルミニウム系多孔質試料を作製した。
試料番号01〜14のアルミニウム系多孔質体試料について、圧縮降伏試験を行って圧縮荷重を増加させたときのひずみ量と応力を測定し、応力−ひずみ線図を作成した。そして、作成した応力−ひずみ線図から、応力がほぼ横ばいになる領域(プラトー領域)に至ったときの平均圧縮応力を求め、その結果を表1に併記した。
試料番号01〜14のアルミニウム系多孔質体試料について、圧縮降伏試験前後のアルミニウム多孔質体試料の質量を測り、上記の式1により圧壊後生成した粉砕粉質量比率を求め、その結果を表1に併記した。
表1に示すように、本発明例の試料番号01〜06のアルミニウム系多孔質体試料では、気孔率が90%以上となり、高い気孔率を示している。また、01〜06の試料において、圧壊試験後生成した粉砕粉重量比率は2.0%以下であり、多孔質体骨格の粉砕粉質量比率が低い値となっている。一方、比較例である試料番号07〜14のアルミニウム系多孔質試料において圧縮降伏試験後生成した粉砕粉質量比率は2.35%〜5.98%であり、圧縮試験中により多量の粉砕粉が生成される。
また、試料番号01〜06のアルミニウム系多孔質体では、プラトー領域に達するまでに110kPa以上の平均圧縮応力を示した。圧縮降伏試験の結果を図4を参照して詳細に説明する。試料番号02の本発明例のアルミニウム系多孔質体試料では、変形初期に塑性変形してひずみ量の増加に従い応力が増加するが、その後は、ひずみ量が60%増加しても一定応力となっている。これは、アルミニウム系多孔質体試料の連通孔が圧縮されて潰されながら変形が進行している状態である。さらに荷重が増加してひずみ量が増加しアルミニウム系多孔質体試料が緻密化されると、通常の金属試料の場合と同様に荷重を増加するとひずみ量が増加するとともに応力が増加する傾向を示している。この変形挙動は表面緻密化にしたアルミニウム系多孔質体試料の典型的な変形挙動である。
得られたアルミニウム系多孔質体の外観および走査型電子顕微鏡で観察したSEM像を図5に示す。図5より、三次元状に連結する骨格を有すると共に連通気孔を有する三次元網目アルミニウム多孔質体となっていることが確認された。また、図5に示すように、本発明例である試料番号02と試料番号04のアルミニウム系多孔質体試料は、溶融アルミニウムが隣り合う粉末を結合するとともに、多孔質体の骨格表面は高度的に滑らかとなりネック部が消失して連続する金属表面となっている。一方、比較例である試料番号07のアルミニウム多孔質体のSEM像に示すように、アルミニウム粉末の一部で固相拡散により結合するのみであり、ネック部(粉末の結合部)が完全に成長しておらず元の粉末の形状が確認できる。
また、図5より本発明例である試料番号02および試料番号04の試料は、多孔質体の骨格表面にアルミニウム粉由来の空洞(隙間)が消失し、極めて平らになるアルミニウム骨格であることが分かる。これに対し、比較例である試料番号07の試料は、多孔質体の骨格表面が凹凸であり、数μm程度の微小な空洞が存在していることが分かる。この現象は、本発明例のアルミニウム系多孔質体骨格にあるアルミニウム粒子がより緻密化され、圧縮の際に骨格の破裂が発生しにくい且つ高圧縮強度化に繋がると示唆される。
圧縮降伏試験後のアルミニウム系多孔質体試料をX線断層撮影を用いて観察した画像を図6に示す。図6より、本発明例である試料番号02において、連通孔は圧壊されているもののアルミニウム多孔質体に明確的な骨格の破断が観察されなかった。
以上のように、本発明例のアルミニウム系多孔質体試料は滑らかな骨格表面且つアルミニウム粉末由来の表面空洞が消失して高度的に連続する金属骨格表面があり、荷重を加えた際に骨格の弾性変形が行い、生成した粉砕部の重量が変形前アルミニウム多孔質体全体重量の2.0質量%以下であることを特徴とする高強度アルミニウム系多孔質体である。
Claims (5)
- アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる骨格が三次元状に連結する骨格を有し、前記骨格により三次元状に連結する気孔が形成されたアルミニウム系多孔質体であって、 前記アルミニウム系多孔質体は、荷重を加えた際にひずみ量の増加に従って応力量が増加した後、骨格の圧壊に伴って応力がほぼ横ばいとなり、その後応力が増加する応力−ひずみ線図を示すとともに、
前記骨格の圧壊時に粉砕されて生成した粉砕粉の量が変形前アルミニウム系多孔質体全体質量の2質量%以下であるアルミニウム系多孔質体。 - 気孔率が90%以上である請求項1に記載のアルミニウム系多孔質体。
- 三次元状に連結する骨格を有するとともに骨格により三次元状に連結する気孔が形成された樹脂構造体に、アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末を主原料とする金属粉末と、前記金属粉末と化学結合する界面活性剤を含有する高分子水溶液からなるアルミニウムスラリーを付着させた後、加熱して樹脂構造体を分解、消失させ、さらにアルミニウム粉末もしくはアルミニウム合金粉末の融点より高温に加熱するアルミニウム多孔質体の製造方法。
- 前記アルミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末の平均粒径が、1μm以上、かつ50μm以下である、請求項3に記載のアルミニウム系多孔質体の製造方法。
- 前記アルミニウムスラリーが、さらに消泡剤を含む、請求項3および4に記載のアルミニウム系多孔質体の製造方法。
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